JP4549878B2 - 高純度水性シリカゾルの製造方法 - Google Patents
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Description
研磨用粒子としては、従来、シリカゾルやヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナなどが用いられている。
しかしながら、珪砂中には不純分としてAl、Ti、Fe、Mg、Caなどの金属が多く含まれるため、得られる水性シリカゾルにはこれらの金属イオン量と連動してアルカリ金属(通常Na)が多く残存し、半導体基板の研磨材として用いるには不向きな場合があった。
特開昭61−158810号公報(特許文献3)には、所定濃度のアルカリ珪酸塩水溶液を強酸型陽イオン交換体に接触させ、次に酸を加え、限外濾過を行い、更に陰イオン交換体および陽イオン交換体に接触させ、アンモニアを加え、続いて粒子成長させてなる方法が開示されている。
さらに、キレート剤を添加して金属イオンを捕捉する場合は、残存するキレート剤及び金属イオンを捕捉したキレート剤を除去するために、限外濾過膜で繰り返し洗浄する必要があり、生産効率が悪いという問題点がある上に、繰り返し洗浄を行っても完全にはキレート剤を除去できず、残存したキレート剤が研磨特性に影響を及ぼす可能性があった。
このような異形粒子を含むシリカゾルにおいてもNaやKなどの含有量が少ない高純度なシリカゾルが求められていた。
(1)シード液の製造工程: シリカ濃度が3〜23重量%の水性シリカゾルに必要に応じて酸を加えることにより、そのpHを1.8〜6.0の範囲に調整し、40〜300℃で加熱してpHを3.4〜7.8に調整し、強塩基性陰イオン交換体に接触させ、更に強酸性陽イオン交換体に接触させてシード液を製造する。
(2)ビルドアップ工程: 前記シード液にアルカリを加えてpHを10〜12.5の範囲に調整し、温度を20〜98℃に保持しながら、酸性珪酸液を連続的にあるいは断続的に添加して、シリカ微粒子がビルドアップした水性シリカゾルを製造する。
(3)不純物除去工程: 前記ビルドアップした水性シリカゾルに酸を加えてpHを0〜3.0の範囲に調整し、40〜300℃で加熱した後に、強塩基性陰イオン交換体に接触させ、更に強酸性陽イオン交換体に接触させて水性シリカゾル中の不純物を除去する。
前記シード液の製造工程の水性シリカゾルが、次の工程(A)と工程(B)を含む製造方法により調製されたものであることが好ましい。
工程(A): シリカ濃度1〜10重量%の珪酸アルカリ水溶液に強酸性陽イオン交換体を接触させて酸性珪酸液を得る。
工程(B): 該酸性珪酸液にアルカリを添加してpHを10〜12.5に調整し、20〜98℃に加熱した後、更に工程(A)の方法で得られた酸性珪酸液を徐々に加えて、水性シリカゾルを得る。
前記工程(1)または工程(3)で使用する酸が塩酸、硫酸、硝酸、スルファミン酸または蟻酸のいずれかであることが好ましい。
前記工程(2)で使用するアルカリが、アンモニア水、アンモニアガスまたは水溶性アミン類の水溶液から選ばれるものであることが好ましい。
本発明の製造方法において、原料として使用する水性シリカゾルは、珪酸アルカリを原料として調製されたものが好ましい。珪酸アルカリの種類としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、第4級アンモニウムシリケートなどが何れも使用可能であり、好適には1号水ガラス、2号水ガラス、3号水ガラス等の名称で市販されている珪酸ナトリウムが選ばれる。
珪酸アルカリの製造方法は、格別に限定されるものではなく、公知の製造方法を適用できる。このような製造方法として、例えば、特開平9−110416号公報に開示されるような珪酸アルカリガラスカレットを珪酸カルシウムアルカリよりなる種結晶の存在下に水に溶解して珪酸アルカリ水溶液を得た後、該珪酸アルカリ水溶液を濾過してなる珪酸アルカリ水溶液の製造方法、特開平6−171924号公報に開示されるような軟質珪石に水酸化アルカリ(AOH;A:アルカリ金属)水溶液を加えて、該珪石中の珪酸分を溶解させることでA2O・nSiO2の組成を有する珪酸アルカリ水溶液を製造するに際し、水溶液中に過酸化水素を添加して軟質珪石に由来する還元物質を酸化させることを特徴とする珪酸アルカリ水溶液の製造方法などが挙げられる。
本発明の製造方法においては、原料となる水性シリカゾルとして、通常は、限外濾過膜等を使用して、シリカ濃度を3〜23重量%の範囲とした水性シリカゾルが使用される。シリカ濃度が23重量%を超える水性シリカゾルを使用した場合にはシリカゾルの増粘やゲル化を生じる場合がある。同じくシリカ濃度が3重量%未満の場合は、最終的に得られる水性シリカゾルの製造効率が低下する。
最初に前記水性シリカゾルに必要に応じて酸を加えて、そのpHを1.8〜6に調整する。さらにpH調整した水性シリカゾルを40℃〜300℃で加熱することにより、粒子表面及び内部からアルカリが放出され、水性シリカゾルのpHは3.4〜7.8に上昇する。この加熱については、通常は30分〜5時間程度行われる。水性シリカゾルを前記の条件で加熱処理をする事により、粒子が2〜5個体程度に会合した異形粒子のシードが形成される。pHがこの範囲から外れる場合は粒子が会合しないか、もしくは会合してもごく僅かとなる。
加熱が終了した水性シリカゾルに、強塩基性陰イオン交換体を接触させ、好適にはそのpHを9以上に調整し、更に強酸性陽イオン交換体を接触させて、好適にはそのpHを6以下に調整し、溶出した不純物イオンを除去する。接触方法としては、例えば、陰イオン交換体または陽イオン交換体が充填されたカラム中に水性シリカゾルを通液させることにより行うことができ、水性シリカゾルについては、強塩基性陰イオン交換体および強酸性陽イオン交換体に接触させる前に純水を加えてシリカ濃度を調整しても良い。
イオン交換が終了した水性シリカゾルについては、必要に応じて水希釈などで濃度調整を行いシード液とする。
前記工程で調製したシード液のpHを10〜12.5の範囲に調整する。pH調整は、pH10以上のアンモニア水、水溶性アミン類、などをシード液に添加して行うか、アンモニアガスを前記シード液に供給しても良い。pHが12.5を超えると、得られる水性シリカゾルが異形化していない粒子を多く含むものとなり、pHが10を下回る場合は、新たな核が生成し、異形粒子の成長が不充分となる。
pH調整したシ−ド液の温度を20〜98℃の範囲に保持しながら、酸性珪酸液を連続的に、または断続的に添加して、シリカ微粒子を成長させる。
シ−ド液中のシリカ微粒子の粒径を成長、即ちビルドアップを行う際には、シ−ド液の温度を20℃以上、好ましくは20〜98℃の範囲の一定温度に保持する。シ−ド液の温度が20℃未満では、添加された酸性珪酸液中の珪酸の溶解速度および溶解されたシリカのシ−ド上への析出速度などが遅くなり、このため酸性珪酸液の添加速度を遅くせざるを得ない。一方、シ−ド液の温度を高くすれば、前述の溶解速度および析出速度を速くすることができるので有利であるが、粒径を制御することが困難となり望ましくない。
尚、所望によりシード液に酸性珪酸液を添加した後に、20〜98℃で0.5〜12時間程、加温を続けても良い。加温を続けることにより、より安定な水性シリカゾルを得ることができる。
前記ビルドアップ工程により得られた水性シリカゾルに酸を加える。水性シリカゾルについては、通常は、限外濾過膜等を使用して、シリカ濃度を30重量%以下、好適には25重量%以下としたものを使用する。30重量%を超える場合にはシリカゾルの増粘やゲル化を生じる場合がある。シリカ濃度が著しく希薄な場合は、製造効率が低下する。酸の種類については、シリカ微粒子から陽イオンを溶出させる効果を考慮すると、無機酸または有機酸の強酸が用いられ、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、スルファミン酸、蟻酸等が選ばれる。なお、酸を水性シリカゾルに添加する際には、通常、酸の濃度が1〜20%の水溶液にして添加する。
加熱終了後の水性シリカゾルに、強塩基性陰イオン交換体を接触させ、好適にはpHを9以上に調整し、更に強酸性陽イオン交換体を接触させて、好適にはpHを6以下に調整して、溶出した不純物イオンを除去する。接触方法としては、例えば、陰イオン交換体または陽イオン交換体が充填されたカラム中に水性シリカゾルを通液させることにより行うことができ、水性シリカゾルについては、強塩基性陰イオン交換体および強酸性陽イオン交換体に接触させる前に純水を加えてシリカ濃度を調整しても良い。
本発明の製造方法において、原料として使用する水性シリカゾルの調製方法については、前記の通りであるが、その好適な態様については次のような態様を挙げることができる。
更に、シリカ微粒子の表面をシリカ、アルミナなどの無機化合物を用いて修飾することにより分散性、耐光性等に優れたゾルとすることも可能であり、このような処理方法としては公知の方法を採用することができる。また、本願出願人による特開平7−315832号公報に記載された方法、即ち、結晶性アルミナ微粒子が水に分散したアルカリ性アルミナゾルに重合性珪素化合物を添加して熟成する方法などを適用することができる。
また、本発明の製造方法で得られる高純度水性シリカゾルは、シリカ微粒子中の不純物残存量がナトリウム1ppm以下で、カリウム1ppm以下となる。
A) 酸性珪酸液の調製
シリカ濃度7%の珪酸ナトリウム(3号水ガラス)7000gを限外モジュール(旭化成社製SIP-1013)に通液し濾水を回収し精製水ガラスを得た。得られた精製水ガラスに純水を添加しシリカ濃度5%に調整した。そして5%濃度の希釈水ガラス6500gを強酸性陽イオン交換樹脂SK1BH(三菱化学社製)2.2Lに空間速度3.1で通液させることで酸性珪酸液6650gを得た。得られた酸性珪酸液のシリカ濃度は 4.6%であった。この酸性珪酸液を純水で希釈して3%濃度に調整した。
上記で得られた3%濃度の酸性珪酸液221.3gと純水219.6gを混合したものに、15%濃度のアンモニア水(関東化学社製)295gを添加した。この液のpHは11.4となった。この液を83℃で30分加熱し、引き続き3%濃度の酸性珪酸液5,911gを18時間かけて添加した。添加終了後1時間加熱を継続した。得られたシリカゾルの粒子径を粒子径測定装置PAR-III(大塚電子社製)を使用して、動的光散乱法で測定したところ平均粒子径は24nmであった。
B)で得られたシリカゾルを限外ろ過膜でシリカ濃度が21%になるまで濃縮した。
D) 酸添加による陽イオン溶出
濃縮したシリカゾルに10%濃度の塩酸を攪拌しながら添加しpHを1.0に調整した。調整後、90℃で1時間加熱した。加熱したシリカゾルに純水を添加してシリカ濃度5%に調整した。
D)で得られたシリカゾルを強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学社製SANUPC)500mlに空間速度6.0で通液し陰イオンを除去した。引き続き、強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)300mlに空間速度12で通液させ、陽イオンを除去した。
F) 濃縮
イオン交換したシリカゾルをロータリーエバポレーターで20%濃度まで濃縮した。得られた水性シリカゾルの平均粒子径を動的光散乱法により測定したところ、平均粒子径は24nmであった。
G) 会合化処理
上記シリカ濃度20重量%の水性シリカゾルに純水を添加してシリカ濃度10%に調整し、さらに10%濃度の塩酸を添加してシリカゾルのpHを2.5に調整した。この水性シリカゾルを攪拌しながら60分間90℃に保った後、室温まで冷却した。この水性シリカゾルのpHは4.7であった。ついで純水を加えて5%濃度に希釈した。
G)で得られた水性シリカゾルを強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学社製SANUPC)500mlに空間速度6.0で通液し陰イオンを除去し、pHを測定したところ9.9だった。引き続き、強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)300mlに空間速度12で通液させ、陽イオンを除去した。得られた水性シリカゾルの濃度は4.5%、pHは4.7であった。これをロータリーエバポレーターで6%濃度まで濃縮した。
I) シリカ微粒子のビルドアップ
シリカ濃度6%の水性シリカゾル428.7gに15%濃度のアンモニア水310.3gを加え、攪拌しながら温度を87℃にし、87℃のまま30分間保った。そして、温度を87℃に保ちながら、予め準備してあった3%濃度の酸性珪酸液4,142.7gを14時間かけて添加し、添加終了後はさらに87℃で1時間保ち、室温まで冷却させた。得られた水性シリカゾルの動的光散乱法による粒子径測定の結果は58nmであった。
J) 濃縮
I)で得られた水性シリカゾルを限外ろ過膜で16%濃度まで濃縮した。
K) 酸添加による陽イオン溶出
前記濃縮した水性シリカゾルに10%濃度の塩酸を攪拌しながら添加しpHを1.0に調整した。調整後、90℃で1時間加熱して、シリカ微粒子中からNa、Kなどの陽イオンを溶出させた。加熱した水性シリカゾルに純水を添加してシリカ濃度5%に調製した。
希釈ゾルを強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学社製SANUPC)500mlに空間速度6.0で通液し陰イオンを除去し、pHを測定したところ10.4だった。引き続き、強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)300mlに空間速度12で通液させ、陽イオンを除去し、pHを測定したところ5.8だった。このようにして、高純度水性シリカゾルを得た。
L)で得られた高純度水性シリカゾルをロータリーエバポレーターでシリカ濃度16%まで濃縮した。得られた水性シリカゾルの動的光散乱法による粒子径Dpは58nm、透過型電子顕微鏡で測定した一次粒子径Dtは38nmであった。従って、これらの比Dp/Dtの値は1.5となる。尚、一次粒子径Dtの値は、透過型電子顕微鏡H−800(日立製作所製)を用い、シリカゾルを25万倍に拡大した写真を撮影し、その写真から200個以上の粒子について、その短径をノギスで測定して平均値を求め、これを一次粒子径Dtとした。
高純度水性シリカゾルに含まれるNa、Kは、それぞれ1ppm以下であった。尚、実施例1以下、全ての実施例と比較例における製造条件、最終生成物の平均粒子径と観察結果を、表1に纏めて記載する。
その結果、得られた水性シリカゾルの平均粒子径は29nmであった。また、TEM観察の結果は、5〜15nm程度の小粒子と25nm程度の粒子が存在しており、平均粒子径の測定は困難であった。
Claims (6)
- 次の(1)シード液の製造工程、(2)ビルドアップ工程、および(3)不純物除去工程からなる高純度水性シリカゾルの製造方法。
(1)シード液の製造工程: シリカ濃度が3〜23重量%の水性シリカゾルに必要に応じて酸を加えることにより、そのpHを1.8〜6.0の範囲に調整し、40〜300℃で加熱してpHを3.4〜7.8に調整し、強塩基性陰イオン交換体に接触させ、更に強酸性陽イオン交換体に接触させてシード液を製造する。
(2)ビルドアップ工程: 前記シード液にアルカリを加えてpHを10〜12.5の範囲に調整し、温度を20〜98℃に保持しながら、酸性珪酸液を連続的にあるいは断続的に添加して、シリカ微粒子がビルドアップした水性シリカゾルを製造する。
(3)不純物除去工程: 前記ビルドアップした水性シリカゾルに酸を加えてpHを0〜3.0の範囲に調整し、40〜300℃で加熱した後に、強塩基性陰イオン交換体に接触させ、更に強酸性陽イオン交換体に接触させて水性シリカゾル中の不純物を除去する。
- 前記ビルドアップ工程の後に20〜98℃で0.5〜12時間加熱することを特徴とする請求項1記載の高純度水性シリカゾルの製造方法。
- 前記シード液の製造工程の水性シリカゾルが、次の工程(A)と工程(B)を含む製造方法により調製されたものである請求項1記載の高純度水性シリカゾルの製造方法。
工程(A): シリカ濃度1〜10重量%の珪酸アルカリ水溶液に強酸性陽イオン交換体を接触させて酸性珪酸液を得る。
工程(B): 該酸性珪酸液にアルカリを添加してpHを10〜12.5に調整し、20〜98℃に加熱した後、更に工程(A)の方法で得られた酸性珪酸液を徐々に加えて、水性シリカゾルを得る。
- 前記工程(A)における珪酸アルカリ水溶液が珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムまたは第4級アンモニウムシリケートのいずれかの水溶液であり、前記工程(B)におけるアルカリが、アンモニア水、アンモニアガスまたは水溶性アミン類の水溶液から選ばれるものである請求項3記載の高純度水性シリカゾルの製造方法。
- 前記工程(1)または工程(3)で使用する酸が塩酸、硫酸、硝酸、スルファミン酸または蟻酸のいずれかである請求項1記載の高純度水性シリカゾルの製造方法。
- 前記工程(2)で使用するアルカリが、アンモニア水、アンモニアガスまたは水溶性アミン類の水溶液から選ばれるものである請求項1記載の高純度水性シリカゾルの製造方法。
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