JP4549669B2 - 香料カプセル粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、香料成分を強固にカプセル化していながら、使用時には効率的に香りを放出することができる、香料カプセル粒子の製造方法及びそれを配合した香気組成物並びに洗剤組成物に関する。
従来から、各種食品,洗浄剤,化粧品等に賦香の目的で香料が使用されており、素材の持つ匂いの消臭や、消費者にとって心地良い香りを放出することでその商品価値を高めることが広く行われている。賦香方法としては、これまでに各種方法が開示され、例えば製品形態が粉体,固形状のものにおいては、スプレー等を用いて香料を吹き付ける直接賦香法が一般的である。これ以外の賦香方法としては、特許文献1に香料を何らかの担体に吸油させ、必要に応じてバインダーを添加し圧縮,押出し等の方法で成形する方法が、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に、香料を油として水溶性マトリックス形成剤の溶解した水中に乳化し乾燥することで、水溶性マトリックス中にカプセル化した香料粒子を得る方法が開示されている。
特表2001−521060号公報 特開平11−140482号公報 特表2001−152179号公報 特表2002−501976号公報
最も一般的な直接賦香法は、素材の持つ匂いの消臭の点では優れた方法であるが、組成物中に含まれる物質への接触に対して安定性が低い香料は配合困難で、賦香した時点から常に香料の揮散が起こり、長期保存時には香調の崩れや香りの消失が起こる等の課題がある。また、特許文献1の成形方法は、ある程度香料の揮散を抑制する効果があるものの、香料が完全にカプセル化されてはおらず、長期保存にも安定な賦香方法としては、満足できるレベルには至っていない。これら賦香方法に対し、特許文献2及び3記載の香料粒子は、水溶性マトリックス中に香料をカプセルとして保持しており、高い貯蔵安定性を備えているものと考えられる。しかしながら、香料含有量が25重量%以下と低く、香料当りの製造コスト低減や、組成物とした場合の組成自由度向上等を目的とした含有量アップ時の困難性については言及がない。また、特許文献4には、香料含有量50重量%程度の香料粒子の例示があるものの、乾燥法に凍結乾燥法を用いており、生産性に課題がある上、噴霧乾燥のような生産性に優れた乾燥時の香料含有率向上の困難性に関する言及はない。
一方、本発明者らは、乾燥法として生産性に優れた噴霧乾燥法を用いた場合の香料カプセル化の効率向上について鋭意検討を行った結果、揮発性の高い香料を高配合するに従い噴霧乾燥時の香料揮散ロスが増すことが判った。香料の揮散ロスが増すことは同時に、排風中に含まれる香料量が増すことを意味しており、香料のロスのみでなく、排風処理負荷の増大を意味する。また、揮発度が比較的低く実質的に噴霧乾燥中の香料ロスが問題とならない場合においても、香料カプセル粉末中でカプセル化不良となっている香料の比率が上昇し、長期保存時の調香の崩れや消失を引き起こす可能性が増すことが判った。
このような状況から、本発明の課題は、生産性に優れた噴霧乾燥法を用いながら、香料高配合時にもカプセル化効率の高い香料カプセル粒子の製造方法、及びそれを配合した香気組成物並びに洗剤組成物を提供することにある。
本発明者らは、香料高含有時にも、香料を効率的にカプセル化するためには、乳化液中での乳化油滴径及び噴霧乾燥粒子の粒径が非常に重要であることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、水溶性マトリックス形成剤が分散もしくは溶解した液中で香料を乳化し、それを噴霧乾燥する香料カプセル粒子の製造方法であって、固形分1g中の香料配合量X(−)、平均乳化油滴径d(μm)、及び噴霧乾燥により得られる香料粒子の平均粒径D(μm)が、式(I)を満たす、香料カプセル粒子の製造方法、及びこの方法により製造された香料カプセル粒子を含む香気組成物、並びにこの香気組成物、及び界面活性剤を含む洗剤組成物を提供する。
5000≧[(D/X)/d]≧50 (I)
本発明により、高香料含有率でありながら、カプセル化効率の高い香料カプセル粒子の製造が可能となり、安定性の点で従来技術では配合困難であった香料の配合や、染み出し等の観点から制限のあった組成物への香料配合量上限の引き上げが実現可能となる。また、本発明を周知の賦香方法と組合せることで、使用前の粉末,固形の状態の香りと、使用時の香り立ちや対象物への残香とで、その香調及び強さを変えられる等の、これまでにない香りシステムが経済的に実現可能となる。
[香料]
本発明において香料としては、その目的に応じて任意のものが用いられる。例えばグレープフルーツ油,ローズ油,芳油等の天然香料や、リモネン,メントール,シトロネロール,ジャスミン,ペンタライド等の合成香料及びそれらを調合した調合香料が挙げられる。これらは香料以外の成分、例えば溶剤等を含んでいても良い。しかし、香りと直接関係のない成分は、同量の香料成分を配合する場合に粒子中の液体成分量をいたずらに増し、マトリックス形成剤によるカプセル化効率を低下させることから、極力減量することが好ましい。また、揮発性の高い香料は、香料カプセルを水中に溶解した場合に、そのヘッドスペースに速やかに香り立ち、香りの印象を変えることができることから、本発明の好適な対象香料であり、その高揮発性香料成分は、25℃での蒸気圧が0.01mmHg以上が好ましく、0.1mmHg以上が更に好ましく、1mmHg以上が特に好ましい。本発明において、香料カプセル粒子に配合される香料の50重量%以上が、高揮発性香料成分であることが好ましい。
[マトリックス形成剤]
本発明に用いられるマトリックス形成剤は、香料を微細な油滴として分散・固定化するもので、水溶性でマトリックス形成能を持った物質であれば何れも使用可能である。例えば加工澱粉,ゼラチン分解物,寒天,カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。中でもデキストリン,マルトデキストリン等の加水分解澱粉や、エステル化,エーテル化等の澱粉誘導体は、好適に用いられる加工澱粉であり、加水分解澱粉が好ましく、その分解度により乾燥中の皮膜形成性や粒子の溶解性/吸湿性が制御可能である。この関係から加水分解度(DE値)が2〜20のデキストリンが好ましく、DE値5〜15のものが更に好ましい。また、吸湿性や褐変対策として、還元処理等により末端処理した加工澱粉の使用も可能である。
また、マトリックス中に含まれても良い成分として、多価アルコール類,糖類,カラギーナン,グリセリン,マルトース等の皮膜強度調整剤や、顔料,染料等の着色剤、抗酸化剤等が挙げられる。
[乳化作用物質]
本発明では、必要に応じ乳化作用物質を配合することができる。ここで、乳化作用物質とは、一般的な乳化剤のほか、乳化状態(互いに溶解しにくい2種の液体において、一方が連続相、他方が微粒子となって分散相を形成し、比較的安定な系を形成している状態を示す)を形成させ得る物質であれば、いずれでもかまわない。
乳化作用を有する物質の例としては、非イオン,陰イオン,陽イオン,両性等の一般界面活性剤や、保護コロイド能や界面活性能により乳化する高分子物質等があり、具体的には、以下のものが挙げられる。
・界面活性剤
グリセリン脂肪酸エステル,ショ糖脂肪酸エステル,ポリオキシアルキレンエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤;脂肪酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキル硫酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩,4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤;アルキルベタイン,アミンオキサイド等の両性界面活性剤が挙げられる。
・高分子物質
カチオン化セルロース,メチルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類;アルキル澱粉,カチオン化澱粉,オクテニルコハクサン澱粉等のデンプン類;アラビアガム,グアーガム,キサンタンガム等の多糖類;カゼインNa等のタンパク質;レシチン等のリン脂質;ポリビニルアルコール,カチオン基とアルキル基を1分子中に備えた合成ポリマー等の合成高分子が挙げられる。
これらの乳化作用物質の中でも、グリセリン脂肪酸エステル,ショ糖脂肪酸エステル,オクテニルコハクサン澱粉,アラビアガム等が刺激性が低く、食品,化粧品,洗浄剤等にも配合が可能なことから好ましく、エステル置換度の調整によりHLB調整が可能なことから、より微細な乳化油滴径が得られるグリセリン脂肪酸エステル,ショ糖脂肪酸エステルが更に好ましい。
また、乳化作用物質の配合量は、香料の種類や量、乳化作用物質の種類により調整する必要があり一概には決めがたいが、典型的な配合量としては、香料1重量部に対して、0.001〜1重量部の範囲を例示できる。また、これら乳化作用を有する物質は単独で用いることも出来るが、2種以上の混合物として用いることも可能である。
また、香料成分として、「香料の化学(日本化学工学会編)」の分類において炭化水素類,アルコール類に分類される香料成分を用い、乳化作用物質としてシュガーエステルを用いる組合せは、微細なエマルションが調整でき特に好適な組合せである。
[香料カプセル粒子の製造方法]
本発明においては、水溶性マトリックス形成剤が分散もしくは溶解した液中で香料を乳化し、それを噴霧乾燥して香料カプセル粒子を製造する際に、上記式(I)を満たす条件で行う。
本発明の香料カプセル粒子の好適な製造方法を以下に示す。但し、何らこの方法に限定されるものではない。
(1)乳化工程
適切に温度調整された水中に、マトリックス形成剤を分散もしくは溶解し、乳化剤と香料を添加し、ホモミキサー,ラインミキサー,高圧ホモジナイザー等の周知の方法にて乳化しエマルジョンを形成する。ここで特に粒子の構成成分の添加順序に制限はなく、水中に乳化剤を最初に投入し、十分に膨潤・溶解させてからマトリックス形成剤や香料を添加する方法や、全原料を同時に投入してから溶解,乳化する方法や、香料と乳化剤と水で乳化したのち、マトリックス形成剤を粉末あるいは水溶液で混合する方法のいずれも可能である。
(2)乾燥工程
公知の方法により噴霧乾燥を行い、水溶性マトリックス中にカプセル化した香料粒子を得る。噴霧形式は、1流体/2流体等のノズル噴霧も可能であるし、回転円盤等を用いた遠心噴霧も可能である。また、乾燥熱風の導入も噴霧に対して並流/向流いずれも可能である。また乾燥用熱風の温度条件は、高温での粒子の破裂や低温での能力低下を避けるため、送風温度で120〜220℃,排風温度で60〜130℃の範囲が好ましい。
(3)後工程
得られた香料カプセル粒子を、目的により2次加工することも可能である。例えば篩い分けによる微粉,粗粉の除去や、造粒操作による粒径,形状の加工やコーティング、顔料,染料による着色等が挙げられる。
本発明においては、香料高含有時には、カプセル化不良を起こしやすく、揮発性の高い香料においては噴霧乾燥中にロスされ易いため、上記式(I)を満たすように、固形分1g中の香料配合量X(−)、平均乳化油滴径d(μm)、及び噴霧乾燥により得られる香料粒子の平均粒径D(μm)を管理することが必要である。
ここで平均乳化油滴径d,乾燥香料粒子の平均粒径Dは、堀場製作所製のLA−920を用い、乳化液中の油滴径を測定する際には、分散媒に水を用いて噴霧乾燥前の乳化物について測定し、乾燥香料粒子の平均粒径を測定する場合にはエタノールを用いて測定し、メジアン径を平均粒径とした。また乾燥香料粒子の平均粒径測定用サンプルは、乾燥機からの付着物の混入が平均粒径データに影響しないよう、1000μm篩通過品を用いた。
式(I)の物理的な意味を説明すると、油性成分のカプセル化方法としてO/W型乳化物から乾燥する方法を取った場合のカプセル化向上方法について検討した結果、乾燥過程での乳化油滴の安定性が非常に重要なことを見出した。つまり、O/W型乳化物から乾燥する方法におけるカプセル化機構はマトリックス形成剤の形成する皮膜が水蒸気は透過するが対象油は透過しないような分子篩膜的な挙動をすることが支配因子ではなく、乳化油滴として安定に存在していることによっていることを発見した。また、対象油量が30重量%以上と高くなった場合には、O/W乳化液の状態でのマトリックス形成剤水溶液の濃度が下がるため、乾燥により得られるマトリックス形成剤皮膜が疎となり、前記分子篩膜的な皮膜が得られないことも判った。一方で乾燥過程での乳化油滴の安定性は、油滴自体の外力に対する強さと乾燥過程で油滴に生ずる応力の2面から決まると考えられる。油滴自体の強さは乳化油滴径に反比例することが知られており、乾燥過程での応力は、マトリックス形成剤層が収縮することに起因していると考えられ、マトリックス形成剤の初期濃度が低いことで収縮率が大きくなると言うことから油剤の含有量に比例し、乾燥時の曲げ応力や、曲率半径が小さくなる、熱風にさらされ急激な乾燥の起きる表面積が上がると言う観点から、香料粒子の粒径に反比例するものと考えられた。その結果、
乳化油滴の安定性∝油滴の強さ/乾燥応力∝[(1/d)/(X/D)]∝[(D/X)/d]
との関係を見出した。
式(I)の値を50以上、好ましくは200以上、更に好ましくは300以上とすることで、香料高含有時にも香料が良好にカプセル化された粒子が得られる。式(I)から判るように、式(I)の計算値の上昇は、乳化油滴径の低減,香料カプセル粒子の粒径の増大化の両方により実現可能であるが、乳化油滴径の低減は、香料種(分子構造)と乳化剤の組合せによるところが大きく、機械的な乳化力に頼る場合には、10MPa以上の高圧乳化機を必要とする等の問題や、適切な乳化剤が発見できない場合には、このような高圧乳化機を用いた場合にもゲル化等の現象により、微細な乳化液が調整できない場合も多い。そこで今回乳化油滴径以外のカプセル化向上方法を検討した結果、香料粒子の粒径がカプセル化に有効なことを見出したのである。このような本発明により多種多様な香料種について、良好な香料カプセル粒子が提供可能である。式(I)の値の上限は、良好な乾燥能力を得る観点から、5000以下、好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下である。
式(I)をさらに説明すると、通常、噴霧乾燥時には、比表面積を増大し、乾燥能力を高くするため、香料粒子の粒径を小さくする。その際の香料粒子の粒径としては、一般に、平均粒径10〜50μmの範囲である。その結果、例えば香料粒子の粒径=50μmでは、香料含有率50重量%、式(I)の値200のカプセル化状態を目指した場合、乳化油滴径を0.5μm以下と非常に微細な乳化油滴径とすることが必要となる。これに対し、本発明の香料粒子の粒径アップにより、例えば平均香料粒子の粒径200μmとすることで、乳化油滴径を特殊な乳化装置の不要な2.0μm以下の範囲とすることが可能となる。この意味から、本発明の好適な実施形態としては、通常の噴霧乾燥では乾燥能力の低下のため行わない様な条件、つまり香料粒子の粒径100μm以上と大きな香料粒子の粒径とすることである。香料粒子の実際の粒径範囲としては100〜300μm、更に好ましくは香料粒子の粒径150〜250μmの範囲である。ここで香料粒子の粒径が300μmを超える場合、極端な乾燥能力の低下や乾燥機内への付着,粒子の破裂が起きるために好ましくない。
また、香料カプセル粒子中の香料配合量については、30重量%以上が好ましく、30〜75重量%が更に好ましく、40〜65重量%が特に好ましく、45〜60重量%が最も好ましい。30重量%以上とすることで、香料当りの製造コストが低減されるだけでなく、これを配合し組成物とした際に、必要香料量を配合するのに必要な、粒子としての配合量が低減され、製品組成の自由度が向上される。また、75重量%以下でマトリックス形成剤の絶対量が不足せず、本発明範囲において十分に香料油滴をカプセル化できるので好ましい。
また、乳化液中での乳化油滴の大きさとしては、体積基準平均粒径で5μm以下が好ましく、3μm以下が更に好ましく、1μm以下が最も好ましい。5μm以下とすることで、噴霧可能な安定性を備えた乳化液とすることが可能となる。乳化液の調整方法としては任意の方法を用いることが可能であるが、目標乳化油滴径が小さくなるに従い、調整の為に必要な乳化機が例えば10MPa以上の高圧乳化機の様な高価な乳化機が必要となったり、対象香料種によっては、適切な乳化剤が見出せず、1μm以下の乳化油滴径とすること自体が困難な場合も多い。この点で、乳化油滴径については、より小さいことが好ましいが、コスト等の面から実用上の限界があるので0.05μm以上が好ましい。
[香気組成物及び洗剤組成物]
本発明の香気組成物は、上記のような方法により製造された香料カプセル粒子を含むものである。本発明の香気組成物中の香料カプセル粒子の含有量は特に限定されず、用途によって自由に変えることができるが、香りを付与するという観点では、0.2〜10重量%が好ましく、1〜5重量%が更に好ましい。
本発明の香料カプセル粒子が25℃での蒸気圧が0.01mmHg以上の高揮発性香料成分を含み、その成分を組成物中に0.3重量%以上含むように香料カプセル粒子を配合したものが更に好ましい。また、高揮発性香料成分の70重量%以上が、炭化水素類もしくはアルコール類に属する成分により構成され、乳化剤としてシュガーエステルを含む香料カプセル粒子を配合したものが好ましい。
また本発明の香気組成物の賦香方法は本発明の香料カプセル粒子単独に限られるものではなく、製品の目的に合わせ、例えば基剤の匂いを消臭する等の目的で、直接賦香や含浸成形品等の他の賦香方法の併用を何ら阻害するものではない。
本発明の香気組成物の好適な用途としては、食品,菓子,医薬品,医薬部外品等が挙げられるが、特に限定されるものではない。このような実施形態の内、特に好適な例としては、洗剤組成物、特に衣料用粉末洗剤があげられる。
衣料用粉末洗剤に求められる香料の意味付けは、各洗濯場面での異臭のマスキング効果とともに、場面に即した種類と強さの香りを放出することにある。しかし、例えば、手洗い洗濯時に適切な強さの香料量を直接賦香で賦香した場合、粉末状態では濃縮された状態となり、香りが強くなりすぎてしまう,組成物がべたつく等の問題がある。逆に粉末での匂いを主として直接賦香した場合には、使用前の揮発ロスや使用場面での洗濯液中への希釈により、適切な強さが発現できない等の課題がある。本発明ではこれら課題を香料カプセル粒子と直接賦香の併用により解決できる。また、香料カプセル粒子中の香料と直接賦香の香料種を異なる種類のものを用いることで、場面によって匂いの種類を変えることも可能である。
本発明の洗剤組成物は、本発明に係わる香気組成物と界面活性剤を含有する。界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル,ショ糖脂肪酸エステル,ポリオキシアルキレンエーテル等の非イオン界面活性剤;脂肪酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキル硫酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩,4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤;アルキルベタイン,アミンオキサイド等の両性界面活性剤が挙げられる。
本発明の洗剤組成物中の香料カプセル粒子の含有量は、0.1〜10重量%が好ましく、0.3〜5重量%が更に好ましい。また界面活性剤の含有量は10〜50重量%が好ましく、15〜30重量%が更に好ましい。
本発明の粉末洗剤に配合可能な他の成分としては、硬水軟化剤,アルカリ剤,酵素,分散剤,消泡剤,蛍光増白剤,再付着防止剤,布地柔軟化剤,漂白剤,漂白活性化剤等が挙げられる。
実施例1〜4及び比較例1〜6
表1に示す固形分組成を有する組成物5,000gの内、水と乳化剤を10Lステンレス容器に計量し、ラボ用ホモミキサー(特殊機化工業(株)製「ロボミックス(登録商標)」)でディスパー翼3000r/min、30分間攪拌した。次いでマトリックス形成剤(パインデックス#2、松谷化学工業(株)製)を投入し、更にディスパー翼5000r/min、10分間攪拌した。その後、揮発性の高い香料であるリモネン(25℃蒸気圧1.4mmHg)を投入し、表1に示す条件で乳化した。乳化した液を噴霧乾燥塔(東京理化器機(株)製SD−1型)に供給し、2流体ノズルにて微粒化した。表1中の乾燥条件にて乾燥し、サイクロンにて香料カプセル粒子を回収した。得られた香料カプセル粒子の平均粒径(D)、及び下記方法で測定した香料残存率を表1に示す。
<香料残存率の測定法>
100gのイオン交換水に香料として理論2gとなる量の香料カプセル粒子を溶かし、再溶解液を調整する。同液から水蒸気蒸留及びガスクロ分析により含有香料量を算出する。一方、噴霧乾燥を行っていない乳化液で同様の操作を行い、その値から抽出率を計算し、残存率を補正する。
香料カプセル粒子の含む香料量=(再溶解液から抽出された香料量/抽出率)
抽出率=(乳化液から抽出された香料量/乳化液中の理論香料量)
残存率=香料カプセル粒子の含む香料量/[(香料カプセル粒子重量−香料カプセル粒子の含む香料量)×{(香料カプセル粒子中理論香料含有量)/(香料カプセル粒子重量―香料カプセル中理論香料含有量)}]×100
なお、抽出率が80%未満の場合には、乳化剤が水蒸気蒸留の阻害物質となっているものと考えられることから、適切な解乳化剤(酵素,アルカリ等)を添加混合した後に、上記操作を行う。また、それでも抽出率が80%を超えない場合には、対象香料の揮発性が低いことが原因と考えられるため、乳化液もしくは、再溶解液から必要に応じて解乳化操作を行った後、適切な溶媒に直接抽出し、ガスクロマトグラフィー分析を行う。
<香料の抽出油率の測定>
香料カプセル粒子を適切な溶剤に浸漬し、抽出可能な香料の量を測定する。溶剤の選定条件としては、マトリックス形成剤を溶解せず、香料を溶解するものを選定する。本実施例では、溶剤にジエチルエーテルを選定し、浸漬時間を1時間とした。なお、抽出油は、粒子中に存在はしているが、カプセル化不良となっている香料量に相関しているものと考えられ、その比率が高くなるに従い、粉末状態でも保存時に揮散してしまう香料の比率が高くなることを示す。
Figure 0004549669
*1:商品名“ポイズC−80M” 花王(株)製
*2: 商品名“カゼインナトリウム” 三栄源エフエフアイ(株)製
*3:商品名“エマルスター30A”松谷化学工業(株)製
*4:商品名“DKエステル” 第一工業製薬(株)製
*5:乳化条件
条件1:ディスパー(特殊機化工業(株)製「ロボミックス」にディスパー翼を接続)、5,000r/min、20分間
条件2:ホモミキサー(特殊機化工業(株)製「ロボミックス」にホモミキサー翼を接続)、10,000r/min、60分間
条件3:ディスパー(特殊機化工業(株)製「ロボミックス」にディスパー翼を接続)、4,000r/min、10分間
条件4:ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、40MPa、3PASS
条件5:ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、20MPa、1PASS
条件6:ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、40MPa、1PASS
実施例5〜8
表2に示す組成物の内、水と乳化剤を300Lステンレス配合槽に仕込み、ディスパー翼により60分間攪拌する。マトリックス形成剤(パインデックス#2、松谷化学工業(株)製)を投入し、更にデイスパー翼で30分間攪拌する。その後、揮発性の高い香料であるリモネン(25℃蒸気圧1.4mmHg)を投入し、90分間攪拌した後、高圧乳化機(イズミフードマシナリー(株)製高圧ホモゲナイザー)を用い表2に示す条件で乳化した。得られた乳化液を、並流式噴霧乾燥塔(塔径3.2m,噴霧機:アシザワ・ニロアトマイザー(株)製RA−302MZ(ローター径120mm))に供給し、表2に示す条件で乾燥した。塔下部排出口から香料カプセル粒子を回収した。得られた香料カプセル粒子の平均粒径(D)、及び上記方法で測定した香料残存率を表2に示す。
Figure 0004549669
*1:商品名“ポイズC−80M” 花王(株)製
*2: 商品名“リョート・シュガーエステル” 三菱化学フーズ(株)製
また、上記評価結果について、計算値[(D/X)/d]を横軸に、リモネン残存率(%)を縦軸に整理したものを、図1に示す。
図1から、計算値[(D/X)/d]>50の範囲で高いリモネン残存率を示すことが判る。また、計算値[(D/X)/d]>300の範囲ではほぼリモネン残存率100%を達成しており、これは、乳化油滴径低減効果と香料粒子の粒径アップの相乗効果であることが確認できる。
比較例7,8
表3に示す固形分組成を有する組成物5,000gの内、水と乳化剤を10Lステンレス容器に計量し、ラボ用ホモミキサー(特殊機化工業(株)製「ロボミックス(登録商標)」)でディスパー翼3000r/min、30分間攪拌した。次いでマトリックス形成剤(パインデックス#2、松谷化学工業(株)製)を投入し、更にディスパー翼5000r/min、10分間攪拌した。その後、香料を投入し、表3に示す条件で乳化した。乳化した液を噴霧乾燥塔(東京理化器機(株)製SD−1型)に供給し、2流体ノズルにて微粒化した。表3中の乾燥条件にて乾燥し、サイクロンにて香料カプセル粒子を回収した。得られた香料カプセル粒子の平均粒径(D)、及び上記方法で測定した香料残存率を表3に示す。
表3に示す揮発性の低い香料(スズラン様香料)を用いた場合には、香料残存率が高くなるが、単に粒子中に留まっているだけで、カプセル化のレベルとして低いことが確認される。この結果より、本発明が揮発度の低い香料に対してもカプセル化に有用な技術であることが確認できる。
Figure 0004549669
*1:スズラン様調香香料(25℃蒸気圧 約0.1mmHg)
*2:商品名“ポイズC−80M” 花王(株)製
*3: ホモミキサー(特殊機化工業(株)製「ロボミックス」にホモミキサー翼を接続)、10,000r/min、60分間
処方例
一般的な衣料用粉末洗剤(香料なし:若干の活性剤,酵素臭がする)に、実施例7の香りカプセル粒子を香料量で1%,スズラン様の香料0.3%を直接賦香で配合し、粉末状態では、ほのかなスズランの匂いがする洗剤組成物を調製した。この洗剤を用いて手洗い洗濯を行ったところ、爽やかなオレンジ臭がひろがった。また同洗剤を50℃口開け1週間保存したところ、粉末状態での香りは大きく低下したが、手洗い洗濯を行ったところ、初期品と変わらぬ爽やかなオレンジ臭がひろがった。
この結果、洗剤に求められる場面毎の香りの種類と強さのコントロールが本発明により可能となったことがわかる。また、香料カプセルと直接賦香の比、香料の種類,量を変更することで、衣類への残香も含めた、場面別の香りの種類と強さのコントロールが可能となったことが示された。
実施例5〜8の評価結果について、計算値[(D/X)/d]を横軸に、リモネン残存率(%)を縦軸に整理した図である

Claims (8)

  1. (1)水溶性マトリックス形成剤が分散もしくは溶解した液中で香料を、ショ糖脂肪酸エステルを用いて乳化することで、乳化液を形成する工程
    (2)工程(1)で得られた乳化液を噴霧乾燥する工程
    を有する、香料カプセル粒子の製造方法であって、
    固形分1g中の香料配合量X(−[g/g])、平均乳化油滴径d(μm)、及び噴霧乾燥により得られる香料粒子の平均粒径D(μm)が、式(I)を満たし、
    水溶性マトリックス形成剤が加水分解度(DE値)2〜20のデキストリンであり、
    香料カプセル粒子に配合される香料の50重量%以上が、25℃での蒸気圧が、0.01mmHg以上の高揮発性香料成分であり、
    香料カプセル粒子の平均粒径が100〜300μmであり、
    香料カプセル粒子中の香料の配合量が45〜75重量%である、香料カプセル粒子の製造方法。
    5000≧[(D/X)/d]≧300 (I)
  2. 工程(1)において、乳化液中での平均乳化油滴径dが0.05〜5μmの範囲となるように乳化する、請求項1記載の製造方法。
  3. 工程(2)において、ノズル噴霧又は遠心噴霧した後、乾燥する、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 請求項1〜いずれかに記載の方法により製造された香料カプセル粒子を含む香気組成物。
  5. 香気組成物に対し、さらに直接賦香を行うことによって得られる請求項記載の香気組成物。
  6. 請求項1〜いずれかに記載の方法により製造された香料カプセル粒子が25℃での蒸気圧が0.01mmHg以上の高揮発性香料成分を含み、その成分を組成物中に0.3重量%以上含むように香料カプセル粒子を配合したものである、請求項4又は5記載の香気組成物。
  7. 高揮発性香料成分の70重量%以上が、炭化水素類もしくはアルコール類に属する成分により構成され香料カプセル粒子を配合したものである請求項記載の香気組成物。
  8. 請求項4〜7いずれか記載の香気組成物、及び界面活性剤を含む洗剤組成物。
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