JP4548683B2 - 顔料分散剤、顔料分散液およびインクジェット用インク - Google Patents
顔料分散剤、顔料分散液およびインクジェット用インク Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は分散剤、この分散剤を含有する顔料分散液および顔料分散液を含有するインクジェット用インクに関するものであり、特にカラープリンターなどに使用されるインクジェット用水系顔料インクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット用水系顔料インクは、水溶性高分子化合物、界面活性剤などのいわゆる分散剤を用いて顔料を水に分散して調製される。調製された水系顔料インクは、インクジェットノズルの目詰まり防止、保存安定性、吐出安定性などを確保するため、高度な凝集安定性や沈降安定性が要求される。顔料インクの凝集安定性や沈降安定性は、ほぼ使用する分散剤の性能によって決定される。これまでにノニオン−アニオン型界面活性剤、親水性ブロックと疎水性ブロックを有するブロック共重合体など、様々な分散剤が試みられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の分散剤では、顔料インクをインクジェットインクとして適正な粘度にすると凝集安定性や沈降安定性を十分に確保することが困難となり、分散剤濃度を増して顔料インクの凝集安定性や沈降安定性を確保するとインク粘度が上昇する、サーマルヘッドの場合焦げ付きが発生するなどの問題が起こり、インクの安定性とインクとしての性能を両立させることが困難であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題を解決するため鋭意検討した結果、特定の対イオンとイオン性ポリマーとから構成される分散剤を使用すると水系粒子分散液の沈降安定性が飛躍的に向上することを見出し本発明に到達した。
【0005】
すなわち、本発明は、
共重合体と対イオンから構成される分散剤であって、
前記共重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びイタコン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つのモノマーと、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル及び(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも一つのモノマーとを用いて得られる共重合体であり、
前記対イオンは、下記式(1)の構造を有することを特徴とする分散剤に関する。
式(1)
CH 3 −N + −{CH 2 CH 2 CON(CH 2 CH 2 OH) 2 } 3
【0006】
さらに本発明は、上記の分散剤と顔料を含むことを特徴とする顔料分散液に関する。
【0007】
さらに本発明は、上記の分散剤、顔料及び液媒体を含むインクジェット用インクに関する。
【0008】
従来の分散剤は、分散剤が顔料表面に吸着することで、分散剤の溶媒に対する親和性や、イオン性基の電荷による電気的反発、高分子鎖の容積制限効果、浸透圧効果などにより、顔料の溶媒による濡れ性の改善や分散安定性を得ている。しかしながら、分散に最も重要である電気二重層に関しての考慮がなされていない。
【0009】
顔料にイオン性の顔料分散剤が吸着した場合、顔料表面に電気二重層が形成されることが知られており、電気二重層間の電気的反発により顔料の凝集が防止されるが、この電気二重層の電荷は、対イオンの再結合や共存する電解質などの電荷により遮蔽され、分散に有効な電荷が小さくなる。本発明の対イオンは従来のナトリウム塩やアンモニウム塩に比較して、イオン周囲の有機基による立体障害が大きいため、顔料の表面電荷への再結合による電荷消滅を起こしにくく、表面の電荷の有効利用がなされるため、従来に比較して良好な分散安定性が得られるものと考えられる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の分散剤は、分子内にイオン性基を有するイオン性ポリマーと対イオンとからなる。イオン性基を有するポリマーとしては、カルボキシル基を有する化合物(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸など)、スルホン酸基を有する化合物(ビニルベンゼンスルホン酸、ポリアクリルアミドプロパンスルホン酸など)、リン酸基を有する化合物(ポリビニルアルコールリン酸化物など)などのイオン性のモノマーまたは、ポリマーと(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど)、スチレン、酢酸ビニルなど非イオン性モノマーの共重合体などが挙げられる。本発明においては、イオン性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びイタコン酸から選択される。また、本発明においては、非イオン性モノマーは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルから選択される。
【0011】
対イオンとしては、その分子量/価数の値が300〜2000、好ましくは400〜1500、より好ましくは500〜1000の範囲にあるイオン性分子を挙げることができる。分子量/価数の比が300以下では、分散安定効果が小さく、2000以上では添加量の増大や、顔料への吸着が起こりにくくなり、分散に要する時間が長くなるなどの問題が生じる。
【0012】
イオンの形態としては、第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオンまたはスルホニウムイオンなどを挙げることができる。
【0013】
第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオン、スルホニウムイオンを構成する置換基としては、分岐を有するアルキル、置換アルキル、ヘテロ原子(酸素、窒素、硫黄など)を含有する置換基などが挙げられる。1置換基当たりの分岐の数としては、1個以上が好ましく、2個以上の分岐を有するデンドリマー構造を有するものがさらに好ましい。このカチオンは、必要に応じて分岐を有さない置換基を含むこともできる。この場合カチオン分子当たりの分岐を有する置換基の数としては、2個以上が好ましい。
【0014】
分岐を有する置換基の導入方法としては、アルキルハライド、アルキル硫酸などを使用した通常のアルキル化反応、および不飽和モノマーとアンモニアのマイケル付加反応など、およびエステル化、アミド化などの一般的な合成反応が利用できる。また、置換基の1つ以上が、不飽和モノマーの重合体構造を付することもできる。
【0015】
好ましい対イオンとして、下記構造式を有する第4級アンモニウムイオンを挙げることができる。
【0016】
R1−N+{−R2−X}3
【0017】
R1は炭素数1〜6(以降C1〜C6のように表記する。)アルキル、アリールまたはアリール(C1〜C6)アルキルである。好ましくは、C1〜C4アルキルまたはアリール(C1〜C4)アルキルである。
【0018】
好ましいアルキルとして、メチル、エチル、プロピルなどを挙げることができる。好ましいアリールアルキルとしてベンジルなどを挙げることができる。
【0019】
R2はC1〜C20アルキレン、アリーレン、アリーレン(C1〜C20)アルキレンまたは−(CH2CH2O)n―(nは1以上の整数)である。好ましくは、C1〜C12アルキレン、アリーレン(C1〜C12)アルキレンまたは−(CH2CH2O)n―(nは1以上の整数)である。
【0020】
好ましいアルキルとして、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシルなどを挙げることができる。好ましいアリーレンアルキレンとして、フェニレンヘキシレン、フェニレンノニレン、フェニレンドデシレンなどを挙げることができる。
【0021】
Xは親水性基である。好ましくは、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、硫酸基、アミノ基、リン酸基、アミド基である。より好ましくは、カルボキシル基、水酸基、アミノ基またはアミド基である。
【0022】
アミノ基としては、1級、2級または3級アミノ基を用いることができる。2級または3級アミノ基の場合、置換基としてC1〜C6アルキル、あるいは水酸基またはカルボキシル基などの親水性置換基を有するC1〜C6アルキルを用いることができる。親水性置換基を有するアミノ基としては、−NHCH2CH2COOH、−N(CH2CH2OH)2、−N(CH2COOH)2、−N(CH2CH2COOH)2、−NHCOCH2CH2COOH、などを挙げることができる。
【0023】
アミド基は、窒素原子に置換基を有していてもよい。置換基としてC1〜C6アルキル、あるいは水酸基またはカルボキシル基などの親水性置換基を有するC1〜C6アルキルを挙げることができる。好ましいアミド基として、−CONH(CH2CH2OH)、−CON(CH2CH2OH)2などを挙げることができる。
【0024】
本発明では、対イオンとして、CH3−N+−{CH2CH2CON(CH2CH2OH)2}3 が用いられる。
【0025】
本発明の顔料分散液は、上記分散剤を液媒体に事前に添加した後、顔料を添加する、あるいは液媒体と顔料を混合した後、上記分散剤を添加して、ペイントシェイカーなどの当業者が適切に使用する方法により顔料を分散させることにより調製される。
【0026】
上記分散剤は、塩の形で通常の分散剤の形で添加してもよく、また水酸化物などの未中和状態で添加して、顔料表面に存在させたイオン性基などと直接塩形成をさせて顔料を分散安定化してもよい。
【0027】
上記分散剤の添加量としては、顔料の重量に対し、通常0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜20%がより好ましく、0.5〜10%がさらに好ましい。
【0028】
添加量が0.01%以下では、分散安定化効果が小さく、50%を越える場合は逆に凝集が生じたり、粘度の増加が起こるためこの範囲が好ましい。
【0029】
本発明で使用する顔料の種類は特に限定されないが、代表的なものを例示すると、カーボンブラック(中性、酸性、塩基性カーボンなど)、有機系顔料(キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料またはアゾ系顔料など)などが挙げられる。
【0030】
本発明のインクジェット用インクは、上記顔料分散液から構成される。必要に応じて水溶性有機溶剤、水溶性樹脂、有機アミン、界面活性剤、防腐剤、粘度調整剤、PH調整剤、キレート化剤などを添加することができる。
【0031】
インクジェット用インクに用いられる液媒体としては水又は水と水溶性有機溶剤の混合溶媒が好ましい。水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、インプロピルアルコールなどのアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−へキサントリオール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。これらの水溶性有機溶剤の中でも、多価アルコール類とエーテル類が好ましい。
【0032】
液媒体中の水溶性有機溶剤の含有割合は、95重量%以下が好ましく、0〜80重量%の範囲が特に好ましい。
【0033】
インクジェット用インクに必要に応じて添加する水溶性樹脂としては、例えば、にかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、アラビアゴム、フィッシュグリューなどの天然タンパク質やアルギン酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、芳香族アミド、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、アクリル、ポリエステルなどの合成高分子などが挙げられる。
【0034】
水溶性樹脂は、定着性や粘度調節、速乾性を上げる目的で、必要に応じて使用されるものであり、インクジェット用水系顔料インクに使用する場合のインク中の水溶性樹脂の含有割合は、30重量%以下が好ましく、20重量%以下が特に好ましい。
【0035】
インクジェット用インクに必要に応じて添加する有機アミンとしては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、2−アミノ−メチルプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−エチル−2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノエチルエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アンモニア、ピペリジン、モルフォリンなどが挙げられる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0037】
(実施例1:顔料分散剤の合成)
以下、2個以上の分岐を有するカチオンの製造方法について説明する。アクリル酸メチル58部、メタノール30部、28%アンモニア水11部を密閉容器に仕込み、50℃で12時間保持して、マイケル付加反応による、アンモニアのアクリル酸メチル3モル付加物を合成した。65〜110℃の温度での常圧蒸留により、大部分のメタノ一ルと未反応アクリル酸メチルを除去した後、n−へキサン、水で洗浄し、残存するメタノールとアクリル酸メチルを抽出分離した。この液を硫酸マグネシウムで脱水した後、温度約40℃でエバポレートし、n−へキサンを除去した。得られた3級アミン(A)のシリコンSE−30を充填剤とするガスクロマトグラフによる分析結果は、純度97.8%であった。
【0038】
次に、この3級アミン(A)46部に、54部(3級アミンの3倍モル)のジエタノールアミンを加え、約100〜120℃で3時間保持して、発生するメタノールを常圧単蒸留により除去しつつ、アミド化反応を行った。メチルレッドを指示薬として、0.1Nの硫酸で滴定することによりアミン含量を求め、理論アミン含量から反応率を求めたところ、4時間目の反応率が96%であった。120℃以下の常圧蒸留および、約50℃での減圧蒸留により、メタノールを除去して、3級アミン(A)と、ジエタノールアミンのアミド化物(A)を得た。
【0039】
次に、このアミド化物(A)55部、メタノール29部に、16部(アミド化物の等モル)のヨウ化メチルを加え、60℃で3時間保持して、N−メチル化反応を行い、メチルレッドを指示薬として、0.1Nの硫酸で滴定し、アミン価の減少により、N−メチル化反応の進行を確認した。アミン化が約0(メチルレッド指示薬添加時の色が赤(中性))を確認した後、40℃での減圧エバポレートにより、メタノール、未反応ヨウ化メチルを除去し、4級化物(A)を得た。この4級化物(A)をレーザーイオン化飛行時間型質量分析法で分析したところ、カチオンに相当する質量509にイオンが観測できた。
【0040】
次に、4級化物の20%メタノール溶液に等モルの酸化銀を加え、室温で30分間攪拌した後、発生したヨウ化銀の沈澱を濾紙を用いて濾別した。更に溶液の1重量%の活性炭を添加し、30分間攪拌して、溶存するヨウ化銀および酸化銀を吸着させ濾紙を用いて濾別した。こうして得られた、下記構造式のカチオン(カチオンAとする)の水酸化物を合成した。
カチオンA:CH3−N+−{CH2CH2CON(−CH2CH2OH)2}3
【0041】
得られたカチオンAの水酸化物を用いて、分岐を有するカチオンを対イオンとした顔料分散剤を作成した。
イソプロピルアルコール(61部)を溶媒として、沸点下、メタクリル酸(18部)とメタクリル酸2−エチルヘキシル(4.7部)の混合溶液、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(1.8部)のイソプロピルアルコール(14部)溶液を3時間で等速滴下し、1時間熟成した後、40℃で減圧エバポレートし、メタクリル酸/メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体(ポリマーB、重量平均分子量2万)を得た。
ついで、上記ポリマーB1部をメタノール10部に溶解させ、これにカチオンAの水酸化物4.8部を混合してカチオンAのポリマーB塩(顔料分散剤)を得た。
【0042】
(実施例2)
カチオンAのポリマーB塩を、大日本インキ株式会社製青色顔料(フタロシアニンブルーG、C.I.Pigment Blue 15:3)の5%水懸濁物の20グラムに、顔料の10重量%相当分添加した。これに、直径1ミリメートルのガラス製ビーズ20gを添加し、ペイントシェイカーで12時間震盪し、顔料を分散させた。この分散物中の顔料の分散状態を400倍の光学顕微鏡で観察したところ、1ミクロン以上の凝集塊は観察されず、良好な分散状態であった。
【0043】
(比較例1)
ポリマーB塩の代わりに、ステアリン酸のナトリウム塩を用いた以外は、実施例1と同様に実施して、顔料の分散状態を観察したところ、5ミクロン以上の凝集塊が全体的に発生していた。
【0044】
(実施例3)
実施例2の顔料分散液に11%のグリセリン、9%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル、10%のジエチレングリコールおよび0.1%のポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテルを加えてインクを作製した。インクの粘度は3.4cPであった。このインクをインクジェットプリンターのインクタンクに充填し、吐出試験をしたところ、かすれなく印字できた。また、このインクを60℃で1ヶ月間静置して安定性を試験したところ、沈澱はなく、インクジェットプリンターによる吐出試験でもかすれなく印字できた。
【0045】
(比較例2)
ポリマーBのNa塩を、大日本インキ株式会社製青色顔料(フタロシアニンブルーG、C.I.Pigment Blue 15:3)の5%水懸濁物の20グラムに、顔料の10重量%相当分添加した。これに、直径1ミリメートルのガラス製ビーズ20gを添加し、ペイントシェイカーで12時間震盪し、顔料を分散させた。
【0046】
この顔料分散液に11%のグリセリン、9%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル、10%のジエチレングリコールおよび0.1%のポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテルを加えてインクを作製した。このインクをインクジェットプリンターのインクタンクに充填し、吐出試験をしたところ、かすれなく印字できた。しかし、このインクを60℃で1ヶ月間静置して安定性を試験したところ、沈澱が生じ、インクジェットプリンターによる吐出試験では印字の際かすれを生じた。
【0047】
(参考例1)
スチレンモノマーを水に分散させ、過硫酸アンモニウムを重合開始剤として、70℃での重合を行い、平均粒径が1ミクロンの表面に硫酸基を有するポリスチレンラテックスの水分散体を作成した。
【0048】
この分散体を、カチオンAの水酸化物で中和し、1%の分散体濃度とした後、円筒状の容器内に入れ、高さ300mmの液柱とし、室温で放置し、沈降安定性を沈降界面の低下で評価した。この系は、60日間の放置で10mmの沈降界面の低下であり、沈降速度が非常に遅くなっていることがわかった。
【0049】
(比較例3)
実施例2のカチオンAの水酸化物を水酸化ナトリウムに変えた以外は、実施例2と同様に実施して、沈降界面の高さを評価した。この系は、60月間の放置で120mmの沈降界面の低下が生じ、実施例2と比較して、10倍以上の低下であった。
【0050】
(参考例2:顔料分散剤の合成)
1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物19.2gおよびトリエチルアミン20.2gをTHF100mlに溶解し、これにトリエタノールアミン5.0gを加えて室温で48時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮して残ったオイル状残渣に21.0gのジエタノールアミンを加え、約100〜120℃で3時間保持して、発生するメタノールを常圧単蒸留により除去しつつ、アミド化反応を行った。メチルレッドを指示薬として、0.1Nの硫酸で滴定することによりアミン含量を求め、理論アミン含量から反応率を求めたところ、7時間目の反応率が95%であった。120℃以下の常圧蒸留および、約50℃での減圧蒸留により、メタノールを除去してオイル状残渣を得た。
【0051】
次に、このオイル状残渣のメタノール溶液に、4.7gのヨウ化メチルを加え、60℃で3時間保持して、N−メチル化反応を行い、メチルレッドを指示薬として、0.1Nの硫酸で滴定し、アミン価の減少により、N−メチル化反応の進行を確認した。アミン価が約0(メチルレッド指示薬添加時の色が赤(中性))を確認した後、40℃での減圧下、メタノール、未反応ヨウ化メチルを除去し、4級化物(B)を得た。この4級化物(B)をレーザーイオン化飛行時間型質量分析法で分析したところ、カチオンに相当する質量1262にイオンが観測できた。
【0052】
次に、4級化物(B)の20%メタノール溶液に等モルの酸化銀を加え、室温で30分間攪拌した後、発生したヨウ化銀の沈澱を、濾紙を用いて濾別した。更に溶液の1重量%の活性炭を添加し、30分間攪拌して、溶存するヨウ化銀および酸化銀を吸着させ、濾紙を用いて濾別した。こうして得られた、下記構造式のカチオン(カチオンBとする)の水酸化物を合成した。
カチオンB:
CH3−N+−{CH2CH2OCO−Ph[CON(CH2CH2OH)2]2}3
【0053】
次に、上記ポリマーB0.5部をメタノール5部に溶解させ、これにカチオンBの水酸化物5.8部を混合してカチオンBのポリマーB塩を得た。
【0054】
(参考例3)
カチオンBのポリマーB塩を大日本インキ株式会社製青色顔料(フタロシアニンブルーG、C.I.Pigment Blue 15:3)の5%水懸濁物の20グラムに、顔料の10重量%相当分添加した。これに、直径1ミリメートルのガラス製ビーズ20gを添加し、ペイントシェイカーで12時間震盪し、顔料を分散させた。この分散物中の顔料の分散状態を400倍の光学顕微鏡で観察したところ、1ミクロン以上の凝集塊は観察されず、良好な分散状態であった。
【0055】
(参考例4)
参考例3の顔料分散液に11%のグリセリン、9%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル、10%のジエチレングリコールおよび0.1%のポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテルを加えてインクを作製した。インクの粘度は3.7cPであった。このインクをインクジェットプリンターのインクタンクに充填し、吐出試験をしたところ、かすれなく印字できた。また、このインクを60℃で1ヶ月間静置して安定性を試験したところ、沈澱はなく、インクジェットプリンターによる吐出試験でもかすれなく印字できた。
【0056】
【発明の効果】
本発明の分散剤は、水系媒体において分散粒子の沈降および凝集安定性を向上させる効果が高く、そのため本発明の分散剤を用いたインクジェット用水系顔料インクは適正なインク粘度で沈降安定性が向上する。
Claims (3)
- 共重合体と対イオンから構成される分散剤であって、
前記共重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びイタコン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つのモノマーと、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル及び(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも一つのモノマーとを用いて得られる共重合体であり、
前記対イオンは、下記式(1)の構造を有することを特徴とする分散剤。
式(1)
CH 3 −N + −{CH 2 CH 2 CON(CH 2 CH 2 OH) 2 } 3 - 請求項1に記載の分散剤と顔料を含むことを特徴とする顔料分散液。
- 請求項1に記載の分散剤、顔料及び液媒体を含むことを特徴とするインクジェット用インク。
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2000
- 2000-04-25 JP JP2000124814A patent/JP4548683B2/ja not_active Expired - Fee Related
Patent Citations (6)
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