JP4547085B2 - エアバッグ展開用弱化線部の加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、裏側にエアバッグを装着するステアリングハンドルカバーやインストルメントパネルといった車両用内装材にエアバッグ展開時に破断するように形成するエアバッグ展開用弱化線部の加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エアバッグ展開用弱化線部の加工方法として、特開平8−282420号公報により、レーザ照射ヘッドが内装材の裏面に対向した状態で内装材に対し弱化線部を形成すべき所定の軌跡に沿って移動するように、レーザ照射ヘッドと内装材との一方に対し他方を自動機により相対移動させ、内装材にレーザ照射ヘッドからレーザを照射して弱化線部を形成する方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例の如く、レーザ加工で弱化線部を形成する場合、レーザ照射ヘッドから照射されるレーザの焦点位置が内装材の厚さ方向にずれると、弱化線部の幅が適正範囲から外れ、弱化線部に所要の強度を持たせられなくなる。即ち、内装材のレーザ入射面(裏面)からレーザの焦点位置までの深さが浅くなり過ぎると、図6(B)に示す如く、弱化線部の幅が狭くなり過ぎて、エアバッグ展開時の破断性が悪くなり、一方、深くなり過ぎると、図6(C)に示す如く、弱化線部の幅が広くなり過ぎて、弱化線部が強度不足で不用意に破断してしまう可能性がある。然し、上記従来例では、焦点位置のずれで弱化線部の幅が適正範囲から外れてもこれを判別できなかった。
【0004】
本発明は、以上の点に鑑み、焦点位置のずれを簡単に判別し得るようにした信頼性の高い弱化線部の加工方法を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車両用の内装材にエアバッグ展開時に破断する弱化線部をレーザ加工で形成する方法において、
レーザ照射ヘッドに対し前記内装材を挟んで対向して設けられ、且つ、前記レーザ照射ヘッドから出力されるレーザを受光する受光センサを使用し、
前記内装材に対して前記レーザ照射ヘッドからのレーザの照射を開始するステップと、
前記レーザ照射ヘッドから照射されるレーザによって前記内装材に孔を形成するステップと、
前記受光センサの出力信号が所定レベルに上昇した時点で中断信号を出力するステップと、
前記レーザの照射を開始した時点から前記中断信号が発生されるまでにかかった加工時間を計測するステップと、
計測された前記加工時間が所定の許容範囲から逸脱したときに異常有りと診断するステップとを有することを特徴とする。
【0006】
内装材の裏面にレーザを照射すると、内装材の材料が裏面側から焼失し、遂には内装材の表面に孔が明き、レーザが受光センサに到達して、受光センサの出力信号が所定レベルに上昇する。ここで、材料の焼失速度は内装材のレーザ入射面(裏面)におけるエネルギー密度が大きくなる程速くなる。そのため、レーザ入射面からレーザの焦点位置までの深さが浅くなると、焼失速度が速くなって、レーザの照射開始時点から受光センサの出力信号が所定レベルに上昇するまでにかかる加工時間が短くなり、レーザ入射面からレーザの焦点位置までの深さが深くなると、焼失速度が遅くなって加工時間が長くなる。従って、本発明の如く、加工時間に基づいて焦点位置のずれを簡単に判別できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1を参照して、1はインストルメントパネルから成る車両用内装材を示す。
内装材1には、その裏側に装着したエアバッグ装置2に正対する領域の輪郭及び該領域を2分する中心線に沿う弱化線部3が形成されており、エアバッグ展開時に弱化線部3が破断し、弱化線部3で囲われる部分が1対のリッド4,4となって開放されるようにしている。また、内装材1の裏面に、各リッド4をその外側の内装材1の部分に連結するヒンジプレート5を取付け、エアバッグ展開時にリッド4が飛散することを防止している。尚、内装材1には、エアバッグ装置2に正対する領域を囲うようにして第1固定プレート6と、該領域の中心線の両側に位置させて1対の第2固定プレート7,7とが埋設されており、これら各固定プレート6,7に内装材1の裏面に突出するボルト6a,7aを植設し、第1固定プレート6に植設したボルト6aによりエアバッグ装置2と各ヒンジプレート5の外側縁部とを内装材1に固定し、各第2固定プレート7に植設したボルト7aにより各ヒンジプレート5の内側縁部を各リッド4に固定している。
【0008】
内装材1は、裏面側の樹脂製基材1aと、中間の発泡層1bと、樹脂製表皮1cとの3層構造になっいてる。内装材1の製造に際しては、基材1aと表皮1cとを夫々樹脂成形した後、図2(A)に示す如く、樹脂成形工程で基材1aに形成したボルト孔8にボルト6a,7aを挿通して第1と第2の固定プレート6,7を基材1aにセットし、この状態で表皮1cと基材1aとを型内にセットし、表皮1cと基材1aとの間に発泡樹脂を注入して発泡させることにより発泡層1bを形成する。このようにして内装材1の成形を完了した後、図2(B)に示す如く内装材1に弱化線部3を形成し、最後に、内装材1の裏面にボルト6a,7aを用いて図2(C)に示す如く1対のヒンジプレート5,5とエアバッグ装置2とを取付ける。
【0009】
図3は弱化線部3の加工設備を示している。この加工設備は、内装材1を保持するハンドリングロボット100と、CO2 レーザ発振器101と、レーザ発振器101からのレーザをミラー102を介して入射する固定式レーザ照射ヘッド103とを備えており、内装材1をその裏面にレーザ照射ヘッド103からのレーザが照射されるように保持し、この状態でレーザ照射ヘッド103が内装材1に対し弱化線部3を形成すべき所定の軌跡に沿って一定速度で移動するように、自動機たるハンドリングロボット100で内装材1をレーザ照射ヘッド103に対し相対移動させる。尚、内装材1に代えてレーザ照射ヘッド103をロボット等の自動機で移動することも可能である。図中104はメインコントローラであり、ハンドリングロボット100のロボットコントローラ105からメインコントローラ104に起動信号が入力された後、メインコントローラ104から図4に示す如く一定時間間隔でトリガパルスを発生させ、トリガパルスによりフリップフロップ106とレーザコントローラ107とを介してレーザ発振器101を作動させる。
【0010】
また、レーザ照射ヘッド103に対し内装材1を挟んで対向する受光センサ108を設け、受光センサ108の出力信号を比較器109に入力して、受光センサ108の出力信号が所定レベルに上昇したとき、比較器109から中断信号たるハイレベルの信号が発生され、この信号でフリップフロップ106の出力信号を反転させ、レーザコントローラ107によりレーザ発振器101の作動を停止させる。かくて、トリガパルスに同期してレーザ照射ヘッド103から内装材1にレーザが照射され、内装材1の材料が裏側から焼失して最終的に表皮1cに孔が明き、受光センサ108にこの孔を通してレーザが到達して、該センサ108の出力信号が所定レベルに上昇したところで次のトリガバルスが発生されるまでレーザ照射が中断される。そのため、内装材1に、図5に示すように、深さが周期的に変化する弱化線部3が形成される。尚、受光センサ108の出力信号が所定レベルに上昇した時点からレーザ照射が停止されるまでには若干の応答遅れがあり、その間に表皮1cの孔が大きくなるが、前記所定レベルはミクロンオーダの孔が明いたときのレベルに設定されており、応答遅れで孔径が大きくなっても目視できる程の大きさにはならず、内装材1の外観を損うことはない。また、レーザコントローラ107は、トリガパルスによりフリップフロップ106からハイレベルの駆動信号が入力されたとき、当初はレーザ出力を大きくしその後レーザ出力を下げるように機能し、上記応答遅れで表皮1cに大きな孔が明くことを防止している。
【0011】
また、メインコントローラ104には、ロボットコントローラ105からの信号に加えて、受光センサ108の出力信号と、比較器109の出力信号とが入力されており、これら信号に基づきメインコントローラ104で異常診断処理を行っている。異常診断処理の詳細は図5に示す通りであり、先ず、トリガパルスが発生されたか否かを判別し(S1)、トリガパルスが発生されたとき第1タイマの計時を開始すると共に(S2)、トリガパルスが弱化線部3の加工中に所定数発生される最後のトリガパルスであるか否かを判別し(S3)、最後のトリガパルスであれば、第2タイマの計時を開始する(S4)。次に、比較器109からハイレベルの信号、即ち、中断信号が発生されたか否かを判別し(S5)、中断信号が発生されたとき、その時点での第1タイマの計時時間TM1を記憶した後、第1タイマをリセットする(S6)。また、中断信号の発生時点での第3タイマの計時時間TM3を記憶した後、第3タイマをリセットしてから第3タイマの計時を開始する(S7)。更に、中断信号の発生回数のカウント値Cを前回値に1を加算した値に更新すると共に(S8)、受光センサ108の今回の出力信号のピーク値PHを検出して記憶する(S9)。
【0012】
次に、S6のステップで記憶した第1タイマの計時時間TM1が所定の下限値YTM1L以上で、且つ、所定の上限値YTM1H以下であるか否かを判別し(S10)、TM1がYTM1LとYTM1Hとの間の許容範囲から逸脱している場合には、異常有りと診断してその旨を表示し、以後の加工を中止する(S11)。ここで、TM1は、トリガパルスの発生時点、即ち、レーザの照射開始時点から受光センサ108の出力信号が所定レベルに上昇して中断信号が発生されるまでにかかった加工時間に等しい。加工時間TM1は、図6(A)に示す如く、内装材1のレーザ入射面たる裏面からレーザの焦点位置までの深さが適正であれば、許容範囲に入るが、焦点位置が図6(B)に示す如く浅くなり過ぎると、レーザ入射面におけるエネルギー密度の増加で材料の焼失速度が速くなって、下限値YTM1Lを下回り、焦点位置が図6(C)に示す如く深くなり過ぎると、材料の焼失速度が遅くなって、上限値YTM1Hを上回る。そして、弱化線部3の幅は、焦点位置が浅くなると狭くなり、深くなると広くなる。そのため、弱化線部3が所要の強度を持つように適正な幅で形成するには、焦点位置の深さが適正になるようにハンドリングロボット100を制御することが必要になる。然し、ハンドリングロボット100の制御精度の誤差やレーザ照射ヘッド103の調整誤差等により焦点位置の深さが不適正になることがある。そこで、TM1が許容範囲から逸脱したときは、焦点位置の深さが不適正であると判断し、異常表示を行うようにした。尚、TM1が許容範囲から逸脱したとき、焦点位置の深さが適正になるようにハンドリングロボット100のフィードバック補正を行うことも可能である。
【0013】
上記の如く加工時間TM1に基づく判別処理を行うと、次に、S7のステップで記憶した第3タイマの計時時間TM3が所定の下限値YTM3L以上で、且つ、所定の上限値YTM3H以下であるか否かを判別し(S12)、TM3がYTM3LとYTM3Hとの間の許容範囲から逸脱している場合には、異常有りと診断してその旨を表示し、以後の加工を中止する(S13)。TM3は、前回の中断信号の発生時点から計時を開始した第3タイマの今回の中断信号の発生時点における計時時間であり、中断信号の発生時間間隔を表す。ところで、内装材1の表面に明けられた孔のピッチが短くなると、孔と孔との間に残る残存材料の量が減少して弱化線部3の強度が低下し、孔のピッチが長くなると、弱化線部3の強度が高くなる。そのため、弱化線部3を所要の強度を持つように形成するには、孔のピッチも適正に管理することが必要になるが、トリガパルスの発生周期やハンドリングロボット100の動作速度の狂いで孔のピッチが不適正になる可能性がある。ここで、トリガパルスの発生周期が狂うと中断信号の発生時間間隔TM2もそれに応じて変化し、また、ハンドリングロボット100の動作速度が遅くなると、孔明け箇所の近傍の材料が大きく焼失している部分で次のレーザ照射が開始され早期に孔が明けられて、中断信号の発生時間間隔TM3が短くなる。そこで、TM3が許容範囲から逸脱したときは、トリガパルスの発生周期やハンドリングロボット100の動作速度の狂い等で孔のピッチが不適正になったと判断し、異常表示を行うようにした。
【0014】
上記の如く中断信号の発生時間間隔TM3に基づく判別処理を行うと、次に、S9のステップで記憶したピーク値PHが所定の上限値YPH以下であるか否かを判別する(S14)。ピーク値PHは、中断信号の発生時点からレーザ照射が中断されるまでの応答遅れで受光センサ108の出力信号が最大になったときの値であり、内装材1の表面に明けられた孔の径を表すパラメータになる。PH>YPHになったときは、孔が目視できる大きさになつている。そこで、この場合は、異常有りと診断してその旨を表示し、以後の加工を中止する(S15)。尚、本実施形態では、受光センサ108の出力信号の強度を表す値としてピーク値PHを用いたが、受光センサ108の出力信号の波形面積を用い、波形面積が所定値を上回ったときに異常表示を行うようにしても良い。
【0015】
上記の如く受光センサ108の出力信号強度に基づく判別処理を行うと、次に、終了信号が入力されたか否かを判別し(S16)、終了信号が入力されるまではS1のステップに戻って上記の判別処理を繰り返す。終了信号は、レーザ照射ヘッド103が内装材1に対し弱化線部3を形成すべき所定の軌跡の全長に亘って移動されたときにロボットコントローラ105から発生されるようになっており、メインコントローラ104に終了信号が入力されたときは、その時点での第2タイマの計時時間TM2を記憶した後、第2タイマをリセットする(S17)。第2タイマは、最後のトリガパルスが発生されたところで計時を開始するため、TM2は最後のトリガパルスが発生されてから終了信号が発生されるまでにかかった時間を表す。ハンドリングロボット100が正常に動作し、レーザ照射ヘッド103が内装材1に対し所定の軌跡に沿って所定速度で移動されたときは、TM2が所定の許容範囲に入るはずである。そこで、この許容範囲の下限値と上限値を夫々YTM2L,YTM2Hとして、YTM2L≦TM2≦YTM2Hか否かを判別し(S18)、TM2<YTM2L、または、TM2>YTM2Hであるときは、異常有りと診断してその旨を表示するようにした(S19)。
【0016】
また、トリガパルスの発生周期やハンドリングロボット100の動作速度の狂い、更には、レーザの照射不良といった異常を生じずに正常に弱化線部3の加工が行われた場合には、弱化線部3全体の孔明け箇所の数は所定値になる。そこで、孔明け箇所の数を表す中断信号の発生回転のカウント値Cが所定値YCになっているか否を判別し(S2D)、C≠YCであるときは、異常有りと診断してその旨を表示し(S21)、C=YCと判別されたとき、合格と表示するようにした(S22)。
【0017】
以上、インストルメントパネルから成る内装材1に弱化線部3をレーザ加工で形成する方法に本発明を適用した実施形態について説明したが、ステアリングハンドルカバーといった他の車両用内装材にエアバッグ展開用弱化線部をレーザ加工で形成する場合にも同様に本発明を適用できる。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、レーザの焦点位置のずれで弱化線部の幅が適正範囲から外れるといった異常を生じたとき、これを簡単に判別でき、低コストで信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エアバッグ装置を装着した状態の内装材の断面図。
【図2】(A)内装材の基材に対する固定プレートの組付状態を示す斜視図、(B)弱化線部の加工工程を示す斜視図、(C)エアバッグ装置とヒンジプレートの組付工程を示す斜視図。
【図3】弱化線部の加工設備の概略側面図。
【図4】(A)弱化線部の加工工程における各種信号の変化を示すタイムチャート、(B)弱化線部の長手方向に沿った拡大断面図。
【図5】異常診断のためのプログラムを示すフローチャート。
【図6】(A)レーザの焦点位置が適正であるときの弱化線部の断面形状と加工時間とを示す図、(B)焦点位置が浅いときの弱化線部の断面形状と加工時間とを示す図、(C)焦点位置が深いときの弱化線部の断面形状と加工時間とを示す図。
【符号の説明】
1…内装材
2…エアバッグ装置
3…弱化線部
103…レーザ照射ヘッド
108…受光センサ
TM1…加工時間
Claims (1)
- 車両用の内装材にエアバッグ展開時に破断する弱化線部をレーザ加工で形成する方法において、
レーザ照射ヘッドに対し前記内装材を挟んで対向して設けられ、且つ、前記レーザ照射ヘッドから出力されるレーザを受光する受光センサを使用し、
前記内装材に対して前記レーザ照射ヘッドからのレーザの照射を開始するステップと、
前記レーザ照射ヘッドから照射されるレーザによって前記内装材に孔を形成するステップと、
前記受光センサの出力信号が所定レベルに上昇した時点で中断信号を出力するステップと、
前記レーザの照射を開始した時点から前記中断信号が発生されるまでにかかった加工時間を計測するステップと、
計測された前記加工時間が所定の許容範囲から逸脱したときに異常有りと診断するステップとを有することを特徴とするエアバッグ展開用弱化線部の加工方法。
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