しかしながら、前記特許文献1に開示された方法では、工具の加工姿勢を変更しながら連続運転することはできるが、加工中にワーク形状データと円錐形状データとの距離演算を行いながら干渉判別が行われるため、処理に時間を要し、この点で効率的でない。
これに対し、一定の領域では予め適切な工具の加工姿勢を求めておき、この加工姿勢に従って加工を行うことにより加工能率を向上させることが考えられるが、工具の加工姿勢の設定は作業者の目視及び勘に頼って行われているのが現状であり、必ずしも適切な加工姿勢に設定されないという問題がある。適切でない加工姿勢が設定された場合は、工具とワークとの干渉を避けるために工具の突き出し量を大きく設定しなければならないため、工具の変形が生じ易く、この変形に伴う加工誤差や工具破損が問題になる。
そこで、本発明は、ワークを加工する回転工具の加工姿勢設定方法において、適切な工具の加工姿勢を短時間で設定することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、ワークを加工する回転工具の加工姿勢を設定する工具の加工姿勢設定方法であって、ワークの所定の加工領域において、製品形状情報と工具形状情報とに基づいて、製品形状面から前記工具の略半球状先端部の半径分外側の位置に複数の抽出点を設定する抽出点設定工程と、製品形状面を前記工具の先端部の半径分外側へオフセットさせたオフセット形状面を生成するオフセット形状面生成工程と、各抽出点毎に、該抽出点を視点とする放射状の視線で前記加工領域を覆う投影面に対して透視投影を行い、該投影面上でオフセット形状面により視線が遮蔽されない背景部の形状を算出する背景部形状算出工程と、各抽出点が特定の抽出点に一致するようにオフセット形状面を平行移動させて、各抽出点について背景部を重ね合せると共に、全ての背景部が重複する領域としての最小背景部の形状を算出する最小背景部形状算出工程と、特定の抽出点と前記最小背景部とを結ぶ角錐に内接し特定の抽出点を頂点とする円錐を求め、該円錐内に工具の加工姿勢を設定する工具加工姿勢設定工程とを有することを特徴とする。
ここで、前記各工程について、図面を用いて説明すると、まず抽出点設定工程では、例えば図1に示すような製品形状面についての各部の座標データや、図2に示すような先端部が中心Oの略半球状に形成された工具の半径rのデータに基づいて、図3に示すように、加工領域xに製品形状面から前記半径r分外側の位置に複数の抽出点P0、P1…を設定する。
次に、オフセット形状面生成工程では、図3に示すような製品形状面から工具の先端部の半径r分外側にオフセットさせたオフセット形状面を生成する。このとき、前記各抽出点P0、P1…は、オフセット形状面上に位置することになる。
そして、背景部形状算出工程では、各抽出点P0、P1…毎に、該抽出点を視点とする放射状の視線で前記加工領域を覆う投影面に対して透視投影を行う。
ここでの処理を抽出点P0における透視投影を例に説明すると、図4に示すように、抽出点P0を視点とした放射状の視線を設定し、加工領域の上方に配置された投影面上の画像を取得する。このとき、図5に示すように、投影面上にはオフセット形状面により視線が遮蔽されない背景部が形成される。そして、このような投影面上の背景部を求める処理を全ての抽出点P0、P1…ついて行う。
次に、最小背景部形状算出工程では、特定の抽出点として例えば抽出点P0を選択する。そして、図6に示すように、各抽出点P1、P2…から特定の抽出点P0に向かうベクトル、即ち各抽出点P1、P2…の移動量を調べ、図7に示すように、この移動量に基づいて各抽出点P1、P2…が特定の抽出点P0に一致するようにオフセット形状面を平行移動させる。このとき、図8に示すように、各抽出点P0、P1…について投影面上の背景部が重ね合せられ、全ての背景部が重複する領域としての最小背景部が得られることになる。
そして、工具加工姿勢設定工程では、図9に示すように特定の抽出点P0と前記最小背景部とを結ぶ角錐に内接し特定の抽出点P0を頂点とする円錐を求め、この円錐内に工具の加工姿勢を設定するようになっている。
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の工具の加工姿勢設定方法において、前記透視投影は、前記各抽出点を中心として工具の長さを半径とする球状の領域内に位置するオフセット形状面を用いて行われることを特徴とする。
この発明は、工具長が既知の場合に、透視投影において、投影面上の背景部を形成するためのオフセット形状面の領域を限定するものである。つまり、図10に抽出点P0の場合を示すように、抽出点P0を中心として工具長Lを半径とした球状の領域y内に位置するオフセット形状面を準備するのである。なお、ここでの工具長Lは、図2に示したように、工具先端部の半球面の中心Oから工具後端部までの長さに設定されている。
一方、請求項3に記載の発明は、ワークを加工する回転工具の加工姿勢を設定する工具の加工姿勢設定方法であって、ワークの所定の加工領域において、製品形状情報と保持部材及び該保持部材に保持された工具の形状情報とに基づいて、製品形状面から前記工具の略半球状先端部の半径分外側の位置に複数の抽出点を設定する抽出点設定工程と、各抽出点毎に、該抽出点を視点とする放射状の視線で前記加工領域を覆う投影面に対して透視投影を行い、該投影面上で製品形状面により視線が遮蔽されない背景部の形状を算出する背景部形状算出工程と、各抽出点が特定の抽出点に一致するように製品形状面を平行移動させて、各抽出点について背景部を重ね合せると共に、全ての背景部が重複する領域としての最小背景部の形状を算出する最小背景部形状算出工程と、特定の抽出点と前記最小背景部とを結ぶ角錐に内接し特定の抽出点を頂点とする円錐を求め、該円錐内に保持部材を設定する工具加工姿勢設定工程とを有することを特徴とする。
この発明では、図11に示すように、ホルダやアタッチメントのような工具を保持する保持部材を考える。ここでの各工程は、前記請求項1に記載の発明に対して、オフセット形状面ではなく製品形状面を用いて透視投影を行う点が異なるようになっている。図12に抽出点P0の場合を示すように、製品形状面により視線が遮られない視線により背景部が形成されることになる。
そして、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の工具の加工姿勢設定方法において、前記透視投影は、各抽出点を中心として工具の長さを半径とする球面と、該抽出点を中心として抽出点から保持部材上の反抽出点側の面までの距離を半径とする球面との間の領域内に位置する製品形状面を用いて行われることを特徴とする。
この発明は、保持部材の形状、寸法が既知の場合に、透視投影において、投影面上の背景部を形成するための製品形状面の領域を限定するものである。つまり、図13に抽出点P0の場合を示すように、抽出点P0を中心として工具長Lを半径とする球面と、抽出点P0を中心として抽出点P0から保持部材上の反抽出点P0側の面までの距離L′を半径とする球面との間の領域z内に位置する製品形状面を準備する。なお、ここでの工具長Lは、図2に示したものと同様である。
また、請求項5に記載の発明は、ワークを加工する回転工具の加工姿勢を設定する工具の加工姿勢設定方法であって、ワークの所定の加工領域において、製品形状情報と保持部材及び該保持部材に保持された工具の形状情報とに基づいて、製品形状面から前記工具の略半球状先端部の半径分外側の位置に複数の抽出点を設定する抽出点設定工程と、製品形状面を前記工具の先端部の半径分外側へオフセットさせたオフセット形状面を生成するオフセット形状面生成工程と、各抽出点毎に、該抽出点を視点とする放射状の視線で前記加工領域を覆う投影面に対して透視投影を行い、該投影面上でオフセット形状面により視線が遮蔽されない背景部の形状を算出する第1背景部形状算出工程と、各抽出点が特定の抽出点に一致するようにオフセット形状面を平行移動させて、各抽出点について背景部を重ね合せると共に、全ての背景部が重複する領域としての第1最小背景部の形状を算出する第1最小背景部形状算出工程と、特定の抽出点と前記第1最小背景部とを結ぶ角錐に内接し特定の抽出点を頂点とする第1の円錐を算出する第1の円錐算出工程と、各抽出点毎に、該抽出点を視点とする放射状の視線で前記加工領域を覆う投影面に対して透視投影を行い、該投影面上で製品形状面により視線が遮蔽されない背景部の形状を算出する第2背景部形状算出工程と、各抽出点が特定の抽出点に一致するように製品形状面を平行移動させて、各抽出点について背景部を重ね合せると共に、全ての背景部が重複する領域としての第2最小背景部の形状を算出する第2最小背景部形状算出工程と、特定の抽出点と前記第2最小背景部とを結ぶ角錐に内接し特定の抽出点を頂点とする第2の円錐を算出する第2の円錐算出工程と、前記第1の円錐及び第2の円錐の形状に基づいて、工具の加工姿勢を設定し、かつ保持部材を設定する工具加工姿勢設定工程とを有することを特徴とする。
この発明によれば、工具用の第1の円錐と保持部材用の第2の円錐とが得られることになる。製品形状によっては、図14に示すように、得られた第1の円錐の軸線t1と第2の円錐の軸線t2とが異なる場合もある。
さらに、請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の工具の加工姿勢設定方法において、前記保持部材を内包する円錐台形状を生成し、該円錐台形状を前記第2の円錐に略内接する軸線位置に配置すると共に、該円錐台形状の特定の抽出点側端部と特定の抽出点との間の距離に応じて工具長を設定する工具長設定工程を有することを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項1から請求項6のいずれかに記載の工具の加工姿勢設定方法において、前記投影面は、各抽出点からの距離が略等しい面で構成されていることを特徴とする。
前記投影面は、抽出点を中心とする多面体の各面、或いは抽出点を中心とする球面である。
そして、請求項8に記載の発明は、前記請求項1、請求項2、及び請求項5から請求項7のいずれかに記載の工具の加工姿勢設定方法において、オフセット形状面を用いて行われる透視投影は、頂点が各抽出点とされ、該抽出点が属するオフセット形状面上の平面に対する垂直方向に軸線が設定されると共に、頂角が所定角度の円錐を設定し、投影面上の背景部のうちの前記円錐内にある領域を背景部とすることを特徴とする。
図15に抽出点P0の場合を示すように、該抽出点P0を頂点とし、抽出点P0が属するオフセット形状面が含まれる平面PLに対する垂直方向に軸線sが設定されると共に、頂角が(180度−2ω)の円錐を設定する。ここで、前述のように抽出点P0について透視投影を行ったときに、投影面上には背景部表示されることになるが、図16に示すように、背景部のうちの前記円錐内に含まない領域を非背景部とする。
まず、請求項1に記載の発明によれば、得られた円錐内に工具の加工姿勢を設定することにより、所定の加工領域を加工するに際して工具とワークとが干渉することがない適切な加工姿勢が実現される。また、円錐の軸線方向に工具の加工姿勢が設定されたときに、工具とワークとの間隔が最も大きく確保されるので、加工の安全性が向上し、また、工具を同一姿勢としてより広範囲の領域に対する連続加工が可能となり、加工効率が向上することになる。
前記円錐を求めるときに、透視投影による画像処理で工具の加工姿勢の判定が行われるので、従来のように工具とワークとの位置関係を演算処理で判定するものに比べて、処理が簡素化され、短時間で適切な加工姿勢の設定が可能となる。さらに、抽出点が製品形状面から工具先端部の半径分外側の位置に設定されているので、工具とワークとの相対角度の変化に従って変化する工具先端部上のワークとの接触点を考慮する必要がなく、この点も処理の簡素化に寄与することになる。
一方、各抽出点で形成された背景部で円錐を求めて、これらの円錐から共通の円錐を求めるのではなく、各抽出点が特定の抽出点に一致するようにオフセット形状面を平行移動させ、各抽出点についてそれぞれの背景部を重ね合わせて生成した最小背景部を用いて円錐を求めるので、円錐を求めるための計算が一度の処理で行われることになって、処理の簡素化、短時間化が実現される。
また、製品形状面から工具の略半球状先端部の半径分外側にオフセットさせたオフセット形状面を用いて円錐が求められるので、径が一様な工具の場合は、得られた円錐内に収まる線分を考慮するだけでよいが、例えば切刃に対して大径とされたシャンクを有している場合は、該シャンクの径を切刃先端部の半径分縮小した形状を考えればよい。この場合も、シャンクが円錐内に収まる加工姿勢であればよく、加工姿勢が適切か否かが容易に判定される。
次に、請求項2に記載の発明によれば、工具の最大長さが既知の場合は、抽出点を中心として工具長を半径とした球状の領域内に位置するオフセット形状面が用いられるようになっているので、製品形状面全体に対するオフセット形状面を用いる場合に比べて、扱うデータ量が大幅に削減され、処理の簡素化が実現される。このとき、オフセット形状面における工具長を半径とした球状の領域外は、工具の加工姿勢にかかわらず、工具と干渉することはないため、前記領域外のオフセット形状面は用いる必要がないのである。
一方、請求項3に記載の発明によれば、得られた円錐内に工具に比べて大型でかつ複雑な形状となる保持部材が収まるか否かを判定することにより、該保持部材とワークとの干渉可能性が容易に判定されることになる。また、保持部材は、ワークとの接点を考慮する必要がないため、製品形状面を用いて透視投影が行われることにより、処理の簡素化、短時間化が実現されることになる。
また、請求項4に記載の発明によれば、保持部材の形状、寸法、及び工具長が既知の場合は、抽出点を中心として工具長を半径とする球面と、抽出点を中心として抽出点から保持部材上の反抽出点側の面までの距離を半径とする球面との間の領域に位置する製品形状面が用いられるようになっているので、製品形状全体を用いる場合に比べて、扱うデータ量が大幅に削減され、処理の簡素化が実現されることになる。このとき、製品形状面における、抽出点を中心とし、工具長を半径とした球面内、及び抽出点を中心として抽出点から保持部材上の反抽出点側の面までの距離とする球面外の領域は、保持部材の姿勢にかかわらず、保持部材と干渉することはないため、これらの領域の製品形状面を用いて透視投影を行う必要がない。
次に、請求項5に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明により工具用の第1の円錐を生成し、前記請求項3に記載の発明により保持部材用の第2の円錐を生成したものである。そして、第1の円錐に工具が収まり、かつ第2の円錐に保持部材が収まるときに、工具及び保持部材とワークとが干渉することなく、安全な加工が可能になる。ここで、保持部材は工具に比べて大型かつ複雑な形状であるから、例えば第2の円錐の軸線に工具の加工姿勢を設定することにより、保持部材とワークとの間隔に余裕を与えることが可能となる。
また、請求項6に記載の発明は、前記保持部材を内包する円錐台形状を生成し、この円錐台形状を第2の円錐の軸線方向に移動させ、円錐台形状が第2の円錐に略内接する軸線位置に配置する。そして、この状態の円錐台の工具側端面と特定の抽出点との距離に応じて工具長が設定されるので、工具及び保持部材とワークとの干渉が回避されつつ、可能な限り工具長の短縮が可能になる。
ところで、前述のように抽出点を視点としてオフセット形状面または製品形状面から離れる放射状の視線で投影面に透視投影される場合に、投影面が平面状に形成されているときは、投影面上の抽出点に近い垂直上方の部分は視線が密集し、抽出点から遠い周辺の部分は視線がまばらになる。この結果、視点の垂直上方付近では、描画された画像が非常に小さなものになって計算精度が低下し、視野の周辺では画像に歪みが生じやすく、こちらも精度が低下する可能性が高い。
これに対し、請求項7に記載の発明によれば、前記投影面は、各抽出点からの距離が略等しい面で構成されているので、投影面上に各視線の交点が略等間隔に位置することになって、前述の計算精度の低下が回避されることになる。
一方、工具の軸線とワーク表面とのなす角度が小さい場合に、加工の際にワークからの荷重が専ら工具の幅方向に作用するため、工具の撓み変形、破損が生じやすいという問題がある。
これに対し、請求項8に記載の発明によれば、図16に示したように、背景部のうちの円錐内に含まない領域が非背景部とされるので、ワークの面に対して角度が小さくなる加工姿勢の候補が除外され、前述の工具の変形、破損が事前に防止されることになる。
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。
まず、本実施の形態に係るNC工作機械1の構成を説明する。図17に示すように、このNC工作機械1は、アーム2に対して水平方向に360度回転可能に装着されると共に垂直方向に90度回転(折れ曲がり)可能とされたユニバーサルアタッチメント3を備え、該アタッチメント3の先端には、ホルダ4が装着され、該ホルダ4に工具が保持された構成となっている。工具は、先端が半球状に形成された切刃5と該切刃5よりやや大径とされたシャンク6とが形成されたポールエンドミルである。なお、以下の説明において、前記ユニバーサルアタッチメント3及びホルダ4を「アタッチメント部」という。
そして、前記アーム2の動作により工具は水平面内のxy軸及び垂直方向のz軸に沿って移動可能となっており、この3軸に加えて、前記ユニバーサルアタッチメント3には、水平方向に伸びる回転中心軸としてのB軸、及び垂直方向に伸びる回転中心軸としてのC軸が設定されている。NC工作機械1のコンピュータ10は、作業者により入力されたデータに基づいて、これらの5軸の制御を行うようになっている。なお、ユニバーサルアタッチメント3は、図17に示すようにB軸回りは下向きから横向きまでの0〜90度の範囲を5度刻みで制御可能となっており、また図18に示すようにC軸回りは水平面内で0〜360度の範囲を5度刻みで制御可能となっている。
一方、本実施の形態では前記NC工作機構1でワークを加工することにより、図19に示すような自動車のバンパー成形用の金型を製造する。この金型の製品形状は、表面の凹凸が入り組み、複雑な形状となっている。
次に、図19の製品形状における左右の面及び下面に囲まれた角部に設定された加工領域Xを加工する場合に、適切な工具の加工姿勢を設定する方法について説明する。ここで、適切な加工姿勢とは、工具及びアタッチメント部とワークとが干渉しない加工姿勢であり、このような加工姿勢を設定すると共に、シャンク6の長さ、ホルダ4、アタッチメント3の設計を行うためのコンピュータ10の動作を、図20〜22のフローチャートに従って説明する。
まず、ステップS1で、NC工作機械1のコンピュータ10は各種データを入力する。ここで入力するデータは、製品形状の多面体モデルMの座標データ、工具半径rのデータ、加工領域を表すm個の抽出点P1〜Pmの座標データ、及び工具軸方向の合計N本のベクトルv11〜vbcの成分データである。
多面体モデルMの座標データは、図19に示した金型の製品形状を複数の多角形で構成される多面体で近似し、図23に示すような多面体モデルMを作成したときの各多角形の各頂点の座標データである。また、前記工具半径rは、図24に示すように切刃先端部に形成される半球面の半径の値である。なお、前記多面体モデルMは、請求項1、3、5に記載の製品形状面に相当する。
加工領域Xは、多面体モデルMに接する切刃先端部の中心点Oに対応位置する点群で構成される。ここでは図25に拡大して示すように、主に下面及び左右の面でなる角部に分布するm個の抽出点P1〜Pmにより加工領域Xが構成されている。これらの抽出点P1〜Pmは、工具の中心点Oの加工軌跡上に存在することになる。
また、前記工具軸方向のN本のベクトルv11〜vbcは、B、C軸回りを5度ピッチで傾きを変えたN本のベクトルである。例えば図17に示したようにB軸回りに5度ピッチでv11〜vb1が設定され、図18に示したようにC軸回りに5度ピッチでv11〜v1cが設定される。そして、これらでなるN本のベクトルv11〜vBCのB軸及びC軸成分のデータをコンピュータ10に入力するようになっている。なお、前記N本とは、B軸回りの19本とC軸回りの72本とを乗算した本数である。
なお、このステップS1は、請求項1、3、5に記載の工具の加工姿勢設定方法における抽出点設定工程に相当する。
次に、ステップS2で、各工具軸方向のベクトルv11〜vBCについて、その軸方向での工具の接近し易さを示す円錐の頂角ang11〜angBCのテーブル(図示せず)、及びアタッチメント部の接近し易さを示す円錐の頂角ANG11〜ANGBCのテーブル(図示せず)を定義し、それらの全ての値に180度を初期値として代入する。
ここで、図26に示すように、抽出点Pxの加工に際して、Pxを頂点、ベクトルvijを軸線とする円錐を考えたときに、円錐の頂角angij、ANGijが大きいほど、余裕のある加工が可能となる。つまり、円錐の頂角angijが大きい方が工具とワークとの間隔を広く確保できるので、加工の安定性が向上すると共に、円錐の頂角ANGijが大きい方が、アタッチメント部とワークとの間隔を広く確保できると共に、工具の突き出し量(切刃5及びシャンク6のトータルの長さ)を短く設定できることになるので、工具の撓みに起因する加工誤差や工具破損が起き難い。また、工具の突き出し量を比較的長く設定した場合であっても、アタッチメント部とワークとの間の間隔が拡大されることになるので、アタッチメントとワークとが干渉する事故も発生し難くなる。そして、頂角angij、ANGijが180度のときに、円錐が抽出点Pxを含み、ベクトルvijに垂直な平面Tとなり、工具及びアタッチメント部が抽出点Pxに最も接近し易い状態となる。
次に、ステップS3で、図27に示すように加工領域Xにおけるm個の抽出点P1〜Pmのうちから任意の点を選び出し(ここではPm)、これを代表点Pとする。さらに、図28に示すように、代表点P以外の抽出点P1〜Pm−1から代表点Pに向かう(m−1)本のベクトルw1〜wm−1のxyz成分を記憶する。
次に、ステップS4で、図29に示すように、代表点Pを中心とする正20面体を定義し、その各面(三角形の面)を面F1〜F20とする。なお、このステップS4は、請求項7に記載の発明の趣旨に相当する。
そして、ステップS5で、iに1を代入し、ステップS6〜S16で、正20面体のうちの面F1についての処理を行う。
まず、ステップS6で、iが20以下か否かを判定し、ここではi=1であるからステップS7に進み、代表点Pを視点とし、代表点Pから面F1の重心G1を通るベクトルV1定義し、透視投影のための処理を行う。
ステップS7における透視投影を行うための処理は、図29に示すように代表点Pを始点として面F1の重心G1を通るベクトルV1を定義し、図30に示すようにベクトルV1の方向が画面垂直となるように画面のview方向を定義し、図31に示すようにベクトル視点Pが画面中央に位置するように面F1を表示する処理である。
また、この透視投影における視野の広さは三角形の面F1が画面全体に描かれるように設定する。これは、図30に示すように、代表点Pを頂点とし、ベクトルV1方向に軸線が伸びる頂角135度の円錐を設定し、代表点Pから円錐内の視野を見た状態である。そして、この視野内で軸線周りに5度ピッチ、及び代表点Pを含み軸線に対して垂直となる平面と該軸線との間を5度ピッチとなるように放射状の視線e…eが設定される。
次に、ステップS8で、図32に示すように、面F1の表示画面(フレームバッファ)を背景色で塗りつぶす処理を行う。この背景色は、後述の背景部と遮蔽部とを識別するためのものである。
続いて、ステップS9で、jに1を代入し、ステップS10〜S13で、抽出点P1について、工具とアタッチメント部とのシルエットの描画処理を行う。
まず、ステップS10で、jがm以下か否かを判定し、jがm以下のときはステップS11に進み、抽出点P1が代表点Pに重なるように、多面体モデルMを構成する面、辺、頂点の位置をベクトルw1に従ってずらす処理を行う。そして、ステップS12、S13で、工具及びアタッチメント部のシルエットの描画処理をGPU(Graphic Processing Unit)で実行する。
前記ステップS11では、図33に示すように抽出点P1から代表点Pに向かうベクトルw1に従って、図34に示すように抽出点P1が代表点Pに一致するように多面体モデルMを移動させる。このとき、ベクトルw1のxyz成分データが多面体モデルMの各頂点のxyz座標データに加算されることになる。
ステップS12の工具についてのシルエットの描画処理は、図35のフローチャートに従って行われ、ステップS13のアタッチメント部についてのシルエットの描画処理は図36のフローチャートに従って行われる。
まず、工具についてのシルエットの描画処理は、図35のフローチャートにおけるステップS21において、多面体モデルMの全ての頂点、辺、面に、それらのオフセットにあたる球面、円筒面、及び厚板形状を配置し、オフセット形状面を生成する。例えば図37に示すような多面体モデルMにおける3つの面でなる頂点及び該頂点から伸びる3本の辺を有する部位について考えると、多面体モデルMの表面から表面に一定の距離(r)を隔てるオフセット形状面が生成され、頂点については球面、辺については円筒面を用いてオフセット形状面が生成される。
ここでは、図38(a)に示すように半径rの球面の中心を頂点に一致させ、図38(b)に示すように半径rの円筒の軸心を辺に一致させ、図38(c)に示すように面に対して両側に距離r離れた厚板形状を配置するのである。
次に、ステップS22において、ステップS21で配置した球面及び円筒面については、そのシルエットに関与する円と四角形に変換して描画し、厚板形状はそのまま描画する。
このステップS22では、まず、前記ステップS21で配置した球面及び円筒面がシルエットの輪郭に関与するものであるか否かを判定する。この判定は、球面或いは円筒面に連なる厚板形状表面を含むそれぞれの平面を考え、円筒面については図39(a)のように、該円筒面に連なる2つの平面H1、H2で囲まれた範囲内に抽出点P1が存在するときに、当該円筒面がシルエットの輪郭に関与すると判定し、描画対象とする。一方、図39(b)のように、これらの平面H1、H2に囲まれた範囲外に抽出点P1が存在するときは、当該円筒面は、シルエットの輪郭に関与しないと判定し、描画対象としない。例えば図40に示すような多面体モデルMにおける一部を考えると、7つの円筒面のうちに、シルエットの輪郭に関与する円筒面が2つ存在するという判定結果が得られる。
なお、球面については、球面の元となる頂点に接続する辺に付随する円筒面がシルエットに関与する時にとみ、当該球面もシルエットの輪郭に関与すると判定するようになっている。
一方、図41(a)に示すように、シルエットの輪郭に関与する球面は、抽出点P1を通る該球面の接線を考え、該接線と球面との接点の集合でなる円に変換するようになっている。また、図41(b)に示すように、シルエットの輪郭に関与する円筒面は、抽出点P1を通る該円筒面の接線を考え、該接線と円筒面との接点の集合でなる四角形(長方形)に変換するようになっている。そして、描画の際には変換した円或いは四角形を描画する。例えば図42に示すような多面体モデルMにおける一部を考えると、シルエットに関与する円筒面は四角形に変換されることになる。このように、シルエットの輪郭に関与しないものは描画対象から除外すると共に、描画対象の球面を円、及び円筒面を四角形に変換することにより、データの簡素化が図れ、処理時間の短縮化に寄与することになる。
なお、ステップS21、S22は、請求項1、5に記載の発明におけるオフセット形状面生成工程に相当する。
そして、ステップS23で、工具について透視投影を実行する。即ち、図43に示すように、ベクトルV1を視線中央とする透視投影を行い、図44に示すように、ステップS22で描画されたオフセット形状面に対して、外オフセット形状面に遮蔽される部分は背景色が見えず、オフセット形状面の隙間から背景色が垣間見えることになる。この結果、図45に示すように、面F1上には背景部と視線e…eがオフセット形状面に遮られた領域としての遮蔽部との境界β1が形成される。
なお、ステップS23は、請求項1に記載の発明における背景部形状算出工程、及び請求項5に記載の発明における第1背景部形状算出工程に相当する。
また、アタッチメント部についてのシルエットの描画処理は、図36のフローチャートのステップS31で、多面体モデルMの画像をそのまま描画し、ステップS32で、アタッチメント部について透視投影を行う。
前記ステップS31の描画処理では、前記工具用の描画処理とは異なり、オフセット形状面を作成しない。また、ステップS32では、図46に示すように、前記工具用の画像処理と同様に、多面体モデルMにより視線が遮られない背景部と視線が遮られる遮蔽部とを求め、図47に示すように、面F1には背景部と遮蔽部との境界γ1が形成されることになる
なお、このステップS32は、請求項3に記載の発明における背景部算出工程、及び請求項5に記載の発明における第2背景部形状算出工程に相当する。
そして、抽出点P1について、図45に示した境界β1が描画された面F1と、図47に示した境界γ1が描画された面F1とが一旦記憶される。
次に、ステップS13で、jにj+1を代入した後、ステップS10に戻り、ステップS10〜S12で前記と同様の処理を行う。即ち、ベクトルw2に従って多面体モデルMを構成する面、辺、頂点の位置をずらし、抽出点P2を代表点Pに一致させると共に、前記と同様の工具用の描画処理とアタッチメント部用の描画処理をそれぞれ行う。工具用の画像処理では、抽出点P2についての境界β2が得られ、この境界β2が描画された面F1を図45の面F1に重ね合わせた結果、図48に示すように、面F1上に境界β1、β2が描画された状態になる。また、アタッチメント部用の画像処理では、抽出点P2についての境界γ2が得られ、この境界γ2が描画された面F1を図47に示した面F1に重ね合わせた結果、図49に示すように、面F1上に境界γ1、γ2が描画された状態になる。
さらに、jが1からmの場合の全てについて、これらと同様の処理を行う。そして、工具用の画像処理で得られ、境界β3〜βmが描かれた面F1…F1を重ね合わせた結果、図50に示すように、面F1上に境界β1〜βmが入り混じった画像が表示された状態になる。また、アタッチメント部用の画像処理で得られ、境界γ3〜γmが描かれた面F1…F1を重ね合わせた結果、図51に示すように、面F1上に境界γ1〜γmが入り混じった画像が表示された状態になる。
なお、j=mのときは、抽出点Pmが代表点Pに相当するため、ステップS11における多面体モデルMをずらす処理が実質的に行われない。
次に、ステップS10でjがmより大きいと判定されたときに、ステップS15に進み、フレームバッファに描かれた面F1の画像から、最小背景部と遮蔽部との境界線β′、γ′を抽出する。そして、境界線β′、γ′とそれぞれ代表点Pを結ぶことで境界面β″、γ″を得る。
このとき、工具については、図50に示した面F1の画像を用いて、図52に示すような面F1内での共通の背景部としての最小背景部と遮蔽部との境界線β′を生成する。そして、図53に示すように、境界線β′と代表点Pとを結ぶことで、該境界線β′に応じた境界面β″(壁面)を有する角錐を生成する。
また、アタッチメント部については、図51に示した面F1の画像を用いて、図54に示すような面F1内での共通の背景部としての最小背景部と遮蔽部との境界線γ′を生成する。そして、図55に示すように、境界線γ′と代表点Pとを結ぶことで、該境界線γ′に応じた境界面γ″(壁面)を有する角錐を生成する。
なお、ステップS15は、請求項1、3における最小背景部形状算出工程、及び請求項5における第1、第2最小背景部形状算出工程に相当する。
次に、ステップS16で、全ての各工具軸方向v11〜vbcと境界面β″、γ″とのなす最小角度を調べ、その値の2倍の値がそれぞれang11〜angBC、ANG11〜ANGBCより小さければ、ang11〜angBC、ANG11〜ANGBCをその値に更新する。この角度を調べる作業は、前記図53、55に示した角錐に内接する円錐を作成し、円錐の頂角を調べる作業と同等である。
工具用の処理においては、まず、図53の角錐に代表点Pから伸びる工具軸方向のベクトルvklが含まれるか否かについての判定を行う。この判定は、代表点Pからベクトルvkl方向に伸びる直線と、図52に示した面F1との交点を求め、この交点が最小背景部に含まれるか否かを判定し、含まれる場合に当該工具軸方向vklについて、境界面β″とのなす最小角度を調べる。このとき最小背景部の輪郭を構成する全ての点と代表点Pとを結ぶ直線を考え、これらの直線と工具軸方向vklとのなす角θ′を調べる。図56に示すように、角度θ′が最も小さい直線に沿って円錐は角錐に内接し、その角度θ′の2倍が円錐の頂角の値となる。そして、この頂角の値がangklより小さければ、工具用のテーブルにおけるangklを頂角の値に更新する。
また、アタッチメント部用の処理においては、まず、図55の角錐に代表点Pから伸びる工具軸方向vmnが含まれるか否かについての判定を行う。この判定は、代表点Pからベクトルvmn方向に伸びる直線と、図54に示した面F1との交点を求め、この交点が最小背景部に含まれるか否かを判定し、含まれる場合に当該工具軸方向vmnについて、境界面γ″とのなす最小角度を調べる。このとき、面F1上に描かれた境界線γ′及び3角形の辺でなる最小背景部の輪郭を構成する全ての点と代表点Pとを結ぶ直線を考え、この直線と工具軸方向vmnとのなす角θ″を調べる。図57に示すように、角度θ″が最も小さい直線に沿って円錐は角錐に内接し、その角度θ″の2倍が円錐の頂角の値となる。そして、この頂角の値がANGmnより小さければ、アタッチメント部用のテーブルにおけるANGmnを頂角の値に更新する。
次に、ステップS17で、iにi+1を代入してステップS6に戻る。そして、面F2について前記面F1と同様の処理を行う。このときも、ステップS16で、円錐の頂角の値がang11〜angBC、ANG11〜ANGBCよりも小さければその値に更新する。さらに、この処理を全ての面F1〜F20について行い、ang11〜angBC、ANG11〜ANGBCを適宜更新する。
そして、ステップS6で、iが20より大きいと判定されたときに、つまり正20面体を構成する全ての面についての処理が完了すれば、ステップS18に進み、ANG11〜ANGBCのテーブルから、最大頂角ANGmaxを有する工具軸方向vmaxを最適な加工姿勢のものとして選ぶ。ここでは、図58に示すように、軸線がvmax方向となる2つの円錐ConeA、ConeBが得られた場合を示す。
ここで、円錐ConeA内にシャンク及び切刃が収まる工具軸方向であれば、これらとワークとの干渉が回避されることが判定される。工具のシルエットの描画処理においてはオフセット形状面を用いているため、図59に示すようにこの判定に際して、オフセットした分だけ径を小さくしたシャンク及び切刃のモデルを用いて判定を行うようになっている。このとき、切刃は径がゼロの線分になると共に、シャンクは、切刃とシャンクとの半径差に相当する径を有するものに縮小されることになる。
なお、ステップS16、S18は、請求項1、5に記載の発明における工具加工姿勢設定工程に相当する。
次に、ステップS19で、工具軸方向vmaxと、対応する円錐の頂角angmax及びANGmaxに基づいて、最適なシャンク長、ホルダ、アタッチメントなどを決定する。
このとき、まず図60に示すように、アタッチメント部において、ユニバーサルアタッチメント3のB軸から先端側とホルダ4との外枠を内包する円錐台を考え、アタッチメント部を図61に示すような円錐台に変換する。そして、この円錐台がConeB内に収まるか否かを判定し、収まるときにはアタッチメント部とワークとの干渉が避けられると判定できる。
また、図62に示すように、この円錐台をConeB内の軸線上を頂点の方向に移動させ、円錐台がConeBに略内接する軸線位置で固定する。そして、図63に示すように、この状態で円錐台の頂点側端面からConeA内に収まる形状でシャンク長、及びシャンクの径が設定される。これにより、アタッチメント部ないしシャンクとワークとの干渉が回避されつつ、シャンク長が短く設定されることになる。なお、これは請求項6に記載の発明の趣旨に相当する。
ところで、多面体モデルMの形状によっては、ConeAとConeBとの軸線が異なる場合もあるが、工具がConeA内に収まり、かつアタッチメント部がConeB内に収まる加工姿勢を設定すればよい。
なお、ステップS16、S19は、請求項3、5に記載の発明における工具加工姿勢設定工程に相当する。
以上のように、得られた円錐ConeA内に工具の加工姿勢を設定し、ConeB内にアタッチメント部を設定することにより、加工領域Xを加工するに際して工具及びアタッチメント部とワークとが干渉することがない適切な加工姿勢が実現される。また、円錐ConeA、ConeBが同一の軸線を有している場合は、この軸線方向に工具の加工姿勢が設定されたときに、工具とワークとの間隔が最も大きく確保されるので、加工の安全性が向上し、また、工具を同一姿勢としてより広範囲の領域に対する連続加工が可能となり、加工効率が向上することになる。
ここで、円錐ConeA、ConeBの軸線が異なる場合は、アタッチメント部が工具に比べて大型かつ複雑な形状であるという理由により、円錐ConeBの軸線上に工具の加工姿勢を設定することにより、アタッチメント部とワークとの間隔に余裕を与えることが可能となる。
一方、前記円錐ConeA、ConeBを求めるときに、透視投影による画像処理で工具の加工姿勢の判定が行われるので、従来のように工具とワークとの位置関係を演算処理で判定するものに比べて、処理が簡素化され、短時間で適切な加工姿勢の設定が可能となる。さらに、抽出点が多面体モデルMから切刃先端部の半径r分外側の位置に設定されているので、工具とワークとの相対角度の変化に従って変化する切刃先端部上のワークとの接触点を考慮する必要がなく、この点も処理の簡素化に寄与することになる。
また、各抽出点P1…Pmで形成された背景部で円錐を求めて、これらの円錐から共通の円錐を求めるのではなく、各抽出点P1…Pm−1が代表点Pに一致するようにオフセット形状面または多面体モデルMを平行移動させ、各抽出点P1…Pmについてそれぞれの背景部を重ね合わせて生成した最小背景部を用いて円錐ConeA、ConeBを求めるので、円錐ConeA、ConeBを求めるための計算が一度の処理で行われることになって、処理の簡素化、短時間化が実現される。
ところで、前述のように抽出点を視点としてオフセット形状面または多面体モデルMから離れる放射状の視線で投影面に透視投影される場合に、投影面が平面状に形成されているときは、投影面上の抽出点に近い垂直上方の部分は視線e…eが密集し、抽出点から遠い周辺の部分は視線e…eがまばらになる。この結果、視点の垂直上方付近では、描画された画像が非常に小さなものになって計算精度が低下し、視野の周辺では画像に歪みが生じやすく、こちらも精度が低下する可能性が高い。
これに対し、前述のように、前記投影面は、各抽出点からの距離が略等しくなる正20面体で構成されているので、投影面上に各視線e…eの交点が略等間隔に位置することになって、前述の計算精度の低下が回避されることになる。
ところで、本発明の第2の実施の形態として、前記工具の描画処理において、工具の最大長さが既知の場合は、以下のように描画範囲を限定してもよい。
即ち、図64に抽出点P1に関する透視投影を例に説明すると、抽出点P1を中心に工具の最大長さに対応する半径Rの球面内の領域Yについてのみをオフセット形状面が描画される。これは、工具の加工姿勢に関わらず、この領域Yの外で工具とワークとが干渉することがないからである。図65に示すように、加工領域の各抽出点P1〜Pm−1を代表点Pに重ね合わせたときも、それぞれのオフセット形状面の代表点Pから半径R内のものだけが描画されることになる。この結果、扱うデータが大幅に削減されて、処理の簡素化、高速化が実現される。
なお、この第2の実施の形態は、請求項2に記載の発明の趣旨に相当する。
また、本発明の第3の実施の形態として、前記アタッチメント部の描画処理では、アタッチメントの形状、寸法が既知である場合に、以下のように描画範囲を限定してもよい。
即ち、図66に抽出点P1に関する透視投影を例に説明すると、まず、代表点Pを中心として前述の半径Rの球面と、同じく代表点Pを中心としてアタッチメントの半抽出点側の面までの距離R′を半径とした球面とで囲まれる領域Zを考える。そして、多面体モデルMにおいて、この領域に囲まれた部分のみが描画される。これは、工具の加工姿勢に関わらず、この領域外でアタッチメント部とワークとが干渉することがないからである。図67に示すように、加工領域の各抽出点P1〜Pm−1を代表点Pに重ね合わせたときも、それぞれの多面体モデルMの代表点Pを中心として半径Rと半径R′との球面の間の範囲内だけが描画されることになる。この結果、扱うデータ量が大幅に削減されて、処理の簡素化、高速化が実現される。
なお、この第3の実施の形態は、請求項4に記載の発明の趣旨に相当する。
ところで、図68に示すような曲面でなる加工領域を加工する場合、同一姿勢で加工を進行するときに、工具の軸心と製品形状の面とのなす角が小さい場合が存在する場合、ワークから工具に対して径方向に大きな荷重が作用することになり、工具の変形、破損が懸念される。
これに対して、本発明の第4の実施の形態として、図69で抽出点P1に関する透視投影を例に説明すると、抽出点P1が属するオフセット形状面が含まれる平面PLに対する垂直方向に軸線sが設定されると共に、頂角が(180度−2ω)の円錐を考える。そして、投影面上に透視投影を行ったときに、図70に示すように、投影面上には背景部と、該投影面と円錐の周面とが交わる曲線が表示される。
そして、図71に示すように、円錐内の背景部はそのまま背景部とし、円錐外の背景部は遮蔽部とする。この円錐外の背景部の点と代表点Pを結ぶ直線方向に工具の加工姿勢が設定されたときは、工具の軸線とワークとの相対角度がω以下となって、前述の工具の径方向に大きな荷重が作用する状態になるので、円錐外の背景部を遮蔽部とすることにより、相対角度が小さくなる工具姿勢の候補が予め除外されることになる。なお、円錐の頂角(180度−2ω)は、例えば工具の径が小さいほど、或いは工具の強度が低いほど、大きくなるように設定される。
なお、この第4の実施の形態は、請求項8に記載の発明の趣旨に相当する。