JP4542957B2 - 電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法および装置 - Google Patents

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本発明は、発電機、電動機、変圧器などの電気機器を構成する積層鉄板鉄心のゆるみを検出する電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法および装置に関する。
発電機、電動機、変圧器などの積層鉄板鉄心を有する電気機器においては、鉄心をボルトや楔などで一体に結合しあるいは固定部に固定しているが、機器に印加される交流の電流による電磁振動や、交流の誘導電流、振動などにより、鉄心のゆるみが発生する。そのため、楔の打ち直しや、ボルトの再締め付けなどのメンテナンスが必要であるが、鉄心のゆるみ量や位置が適正に評価できないため、適正なメンテナンスが難しい。
下記特許文献1に開示されているような加振器を用いた方法では、加振によって鉄心に発生する振動周波数は、機器構造体の結合部材の機械的な共振周波数であるため、振動の振幅が大きくなり、機器構造体の結合部材のゆるみが精度良く検出できないという欠点がある。また、結合部材の振動振幅の大きさから結合部材のゆるみは検出できるが、鉄心のゆるみを計測しようとする場合は、そのゆるみ量を正確に把握することが難しい。
また、下記特許文献2に示されているように、ゆるみ量を計測したい鉄心にトルク計などを挿入し、鉄心の変形に伴う応力を測定することで鉄心のゆるみ量を定量的に測定しようとする方法もあるが、たわみ量により応力値は変化するため、たわみ量を正確に計測する必要がある。そのため、ダイヤルゲージなどでたわみ量、すなわち変位量を計測しなければならないが、特許文献2に示されているような方法ではダイヤルゲージの固定も難しく、正確な値を計測することは困難である。さらに、トルク計はトルクレンチの支点となる位置が変化すると、正確なトルク値を計測することができないが、特許文献2には支点を確定するための方法などが開示されておらず、定性的に鉄心のゆるみを検出することは可能でも、定量的にゆるみ量を検出することは困難である。
特開昭60−207013号公報 特開2000−354353号公報
上記のように、従来の技術では、機器構造体の結合部材のゆるみを検出することはできるが、そもそも結合部材が固定している鉄心などの構造物のゆるみ度合いの検出は難しい。また、検出されたゆるみ量から再締め付けなどのメンテナンスが必要なほどのゆるみが生じているかどうかの定量的判断を行うことは困難である。さらに、印加された振動の周波数が機器構造体の結合部材の機械的な共振周波数であった場合には、機器構造体の結合部材が共振振動を起こすので、ゆるみの発生によって振動振幅が増加したものであるか、あるいは共振による振動振幅の増加であるかの判定ができない。
そこで本発明は、変圧器や回転機などの電気機器を構成する積層鉄板鉄心のゆるみを機器構造体の結合部材の機械的な共振振動と区別して検出することのできる鉄心のゆるみ検出方法および装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の請求項1は、電気機器の積層鉄板鉄心と、前記積層鉄板鉄心の一方の端部である加振端に設置された加振器及び振動センサと、前記積層鉄板鉄心の他方の端部である検出端に設置された振動センサと、を備えた電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法において、前記加振器により複数の周波数からなる振動を前記積層鉄板鉄心に印加し、前記加振端及び検出端に設置された振動センサが受信した加振端振動信号および検出端振動信号の周波数別のパワースペクトルを求め、前記パワースペクトルを用いて前記加振端振動に対する前記検出端振動の減衰率を算出し、前記減衰率の経時変化率から前記積層鉄板鉄心にゆるみがあるか否かを判定表示することを特徴とする。
また請求項8は、電気機器の積層鉄板鉄心と、前記積層鉄板鉄心の一方の端部である加振端に設置された加振器及び振動センサと、前記積層鉄板鉄心の他方の端部である検出端に設置された振動センサと、を備えた電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出装置において、前記加振器から複数の周波数からなる振動を前記積層鉄板鉄心に印加する手段と、前記加振端及び検出端に設置された振動センサがそれぞれ受信した加振端振動信号および検出端振動信号の周波数別のパワースペクトルを求める周波数解析手段と、前記パワースペクトルを用いて前記加振端振動に対する前記検出端振動の減衰率を算出する減衰率算出手段と、前記減衰率の経時変化率から前記積層鉄板鉄心にゆるみがあるか否かを判定表示する判定表示手段と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、変圧器や回転機などの電気機器を構成する積層鉄板鉄心のゆるみを機器構造体の結合部材の機械的な共振振動と区別して検出することのできる電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法および装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に鉄心のゆるみ検出装置の機能ブロック図を示す。符号1は、積層鉄板からなるゆるみ検出の対象となる鉄心で、支持部材2aおよび支持部材2bで両側から挟まれて支持されている。支持部材2a、2bは適当な締め付け圧力で鉄心1に締め付け圧力を与えている。支持部材2aには加振器4が設置されて加振端を形成し、任意の振動信号を支持部材2aに印加することができる。加振器4は加振器アンプ5を介して信号発生器6に接続されている。信号発生器6は任意の振動信号を発生できるようになっており、時間的に振動の周波数が変化するスイープ信号や、複数の周波数成分を含んだ正弦波信号なども発生することができる。また支持部材2aおよび検出端を形成する支持部材2bには、それぞれ振動センサは3aおよび3bが設置されており、支持部材2aおよび2bの振動を検出する。
振動センサ3aおよび3bはそれぞれ周波数解析手段7に接続されて、ここでそれぞれの振動信号がフーリエ変換され、周波数別にパワースペクトルが算出される。パワースペクトルの算出結果はデータベース8に記録される。また、周波数解析手段7によって算出された周波数別のパワースペクトル値は減衰率算出手段9に入力されて減衰率が算出される。減衰率は、加振器4が設置された支持部材2aの振動信号のパワースペクトル値に対する支持部材2bの振動信号のパワースペクトル値の比で表される。減衰率は周波数解析手段7の周波数分解能に依存した周波数ごとに得られる。また、あるバンド幅(周波数帯域)を指定した場合は、その帯域のパワースペクトル値の平均値を用いた減衰率の算出も可能である。算出された減衰率はデータベース8に記録される。
減衰率変化算出手段10では、減衰率算出手段9で算出された減衰率とデータベース8に格納された過去の減衰率値を用いて、減衰率の変化率を算出する。算出された減衰率の変化率と減衰率算出手段9で算出された減衰率とは異常判定手段11において比較され、異常か正常かの判定が行なわれる。また、減衰率から鉄心のゆるみ量の推定を行う。異常の判定に使用されるしきい値や、判定ルール、鉄心ゆるみ量の推定モデルはデータベース8に格納されている。異常判定手段11にて判定された結果および、鉄心ゆるみの推定量は判定結果表示装置12に表示される。
図2は信号発生器6にて発生するスイープ信号の典型例を示す図である。スイープ信号は時間的に周波数が変化する加振信号であり、すべての周波数成分を含んでいるため、機械的な共振周波数以外の周波数成分での加振も可能である。また、周波数変化の幅や変化する時間も設定可能であり、それぞれの周波数の正確な加振を行うことができる。
図3は、20kHzから90kHzまで変化するスイープ信号を加振器4に印加して、支持部材2aおよび支持部材2bで計測された振動信号を周波数解析したパワースペクトルの図である。パワースペクトルaが支持部材2aの振動の周波数解析結果で、パワースペクトルbが支持部材2bの振動の周波数解析結果である。得られたそれぞれのパワースペクトル値の比率より振動信号の減衰率を算出する。
図4は、時間経過と共に鉄心1の締め付け圧力が減少して鉄心1のゆるみ量が増大したことによって、振動信号の減衰率が上昇する典型的な事象を示すグラフである。一般的な構造をもつ積層鉄板の鉄心1では、図4に示すような傾向が得られる。また、鉄心1の締め付け圧力には許容量があり、許容される限界値が締め付け圧力異常判定しきい値Psであり、それに対応した減衰率の許容値が減衰率異常判定しきい値Asである。締め付け圧力異常判定しきい値Psおよび減衰率異常判定しきい値Asはデータベース8に格納されている。また、振動信号の減衰率から鉄心1の締め付け圧力を算出するための多項モデル式もデータベース8に格納されている。
図5は、振動周波数をパラメータとして時間経過に伴う振動信号の減衰率の変化を示す図である。減衰率の典型的な経時変化例は図4で示したように、時間と共に増加する単調増加の傾向を示す。ただし、鉄心の構造によっては特定の周波数で単調増加の傾向を示さないものがある。図5の例の特徴周波数f1は単調増加を示さない例である。この例のように、特徴周波数f1での減衰率が減少に転じた時刻をt1、特徴周波数f2での減衰率が急増する時刻をt2とすると、それぞれの時刻において減衰率の異常判定しきい値を設定しなくても、t1の時点を注意レベル、t2の時点を危険レベルとして異常判定をすることが可能である。すなわち、特徴となる周波数での減衰率の変化率を監視することによって鉄心のゆるみ検出が可能となる。
このように本実施の形態の鉄心のゆるみ検出方法および装置においては、鉄心1に透過させる振動信号を複数の周波数にすることで、機械的な共振周波数以外の周波数を利用し、透過信号の振幅の減衰率から鉄心1のゆるみ量を検出することができる。
鉄心1に印加する振動源としては超音波発生器を用い、振動センサとしては電磁超音波探触子などを用いることができ、鉄心1に印加する振動信号を高い周波数とすることで、機械的共振周波数よりも高い周波数を印加することができ、かつ、非接触でも振動信号を印加できる。
鉄心1に印加する振動波形を短時間のみ振幅を有する時間局在波形で、かつ、波形の時間積分値がゼロである振動信号を印加することで、透過信号のウェーブレット変換などの信号処理が可能となり、透過する信号周波数をより高感度に検出することができる。時間局在波形には単一正弦波には含まれない複数の周波数成分の信号が合成されており、複数の周波数での透過率が計測できる。
鉄心1に印加する振動周波数として、鉄心1および鉄心1を支持する機器構造体の固有振動周波数を含んだ周波数帯域を用いることで、より正確に鉄心のゆるみを検出することができる。周波数が連続的に変化する信号を用いることによって機器構造体の固有振動周波数とは異なる周波数の信号を確実に印加することができる。また、鉄心1に印加する複数の周波数の振動波形の減衰率を用いて、より正確な減衰率を求め、鉄心のゆるみ量を正確に定量的に検出することができる。また、鉄心1に印加する振動源の設置位置を複数にすることで、より正確な振動波形の振幅の減衰率を得ると共に、鉄心1のゆるみが発生している部位を同定することができる。
鉄心1に印加する振動波形の周波数成分が単一ではなく、機器構造体の固有振動周波数とは異なる複数の周波数を同時に、あるいは個別に印加することで、時間的に周波数が変化するスイープ信号を用いなくても、鉄心1を透過する信号振幅の減衰率を正確に測定することができる。そして、機器構造体の固有振動周波数とは異なる周波数の信号を継続的に鉄心1に印加し、その減衰率を継続的にモニタリングすることによって、オンラインで常時監視することができる。
本発明の実施の形態の鉄心のゆるみ検出装置の構成を示す機能ブロック図。 スイープ信号の典型例を示し、本発明の実施の形態の鉄心のゆるみ検出装置の動作を説明する図。 振動信号を周波数解析したパワースペクトルを示し、本発明の実施の形態の鉄心のゆるみ検出装置の動作を説明する図。 振動信号の減衰率および鉄心締め付け圧力の経時変化を示し、本発明の実施の形態の鉄心のゆるみ検出装置の作用を説明する図。 特徴周波数をパラメータとして振動信号の減衰率の経時変化を示し、本発明の実施の形態の鉄心のゆるみ検出装置の作用を説明する図。
符号の説明
1…鉄心、2a,2b…支持部材、3a,3b…振動センサ、4…加振器、5…加振器アンプ、6…信号発生器、7…周波数解析手段、8…データベース、9…減衰率算出手段、10…減衰率変化算出手段、11…異常判定手段、12…判定結果表示装置。

Claims (10)

  1. 電気機器の積層鉄板鉄心と、前記積層鉄板鉄心の一方の端部である加振端に設置された加振器及び振動センサと、前記積層鉄板鉄心の他方の端部である検出端に設置された振動センサと、を備えた電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法において、
    前記加振器により複数の周波数からなる振動を前記積層鉄板鉄心に印加し、前記加振端及び検出端に設置された振動センサが受信した加振端振動信号および検出端振動信号の周波数別のパワースペクトルを求め、前記パワースペクトルを用いて前記加振端振動に対する前記検出端振動の減衰率を算出し、前記減衰率の経時変化率から前記積層鉄板鉄心にゆるみがあるか否かを判定表示することを特徴とする電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法。
  2. 前記積層鉄板鉄心に印加する振動は短時間のみ振幅を有する時間局在波形で、かつ、波形の時間積分値がゼロであることを特徴する請求項1記載の電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法。
  3. 前記積層鉄板鉄心に印加する振動は、前記積層鉄板鉄心および前記積層鉄板鉄心を支持する機器構造体の固有振動周波数とは異なる周波数を有していることを特徴する請求項1記載の電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法。
  4. 前記積層鉄板鉄心に印加する振動は時間的に周波数が変化するスイープ振動であることを特徴する請求項1記載の電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法。
  5. 前記積層鉄板鉄心に印加された振動のなかの複数の周波数の振動の減衰率を用いて、前記積層鉄板鉄心のゆるみが発生している部位を同定することを特徴する請求項1記載の電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法。
  6. 前記積層鉄板鉄心の複数の位置で前記振動を印加し、各位置で印加した振動の減衰率を用いて積層鉄板鉄心のゆるみ量および積層物のゆるみ発生部位を同定することを特徴する請求項1記載の電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法。
  7. 前記積層鉄板鉄心に印加する振動は、時間的に継続する正弦波であることを特徴する請求項1記載の電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出方法。
  8. 電気機器の積層鉄板鉄心と、前記積層鉄板鉄心の一方の端部である加振端に設置された加振器及び振動センサと、前記積層鉄板鉄心の他方の端部である検出端に設置された振動センサと、を備えた電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出装置において、
    前記加振器から複数の周波数からなる振動を前記積層鉄板鉄心に印加する手段と、前記加振端及び検出端に設置された振動センサがそれぞれ受信した加振端振動信号および検出端振動信号の周波数別のパワースペクトルを求める周波数解析手段と、前記パワースペクトルを用いて前記加振端振動に対する前記検出端振動の減衰率を算出する減衰率算出手段と、前記減衰率の経時変化率から前記積層鉄板鉄心にゆるみがあるか否かを判定表示する判定表示手段と、を有することを特徴とする電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出装置。
  9. 前記加振器の駆動信号は超音波発生器によって発生し、前記振動センサとして電磁超音波探触子を用いることを特徴する請求項8記載の電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出装置。
  10. 前記異常判定手段において用いる異常判定しきい値、判定ルールおよび積層物ゆるみ量の推定モデルを格納したデータベースを備えていることを特徴する請求項8記載の電気機器の積層鉄板鉄心のゆるみ検出装置。
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