JP4542571B2 - アライメント変更制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車輪のトー角等のアライメントを制御するアライメント変更制御装置に関する。
工場出荷時の車両の車輪(特に、後輪)のトー角は、走行安定性を考慮して設定されている。しかし、このようなトー角の設定は、燃費が最適になるような設定とはいえない。例えば、トーインに設定すると、車両の走行時における車輪の転がり抵抗が増大するからである。
トーインに設定するためには、特許文献1の全輪独立操舵装置等に開示されているように、左右の車輪のトー角が独立に制御できるものでなければならない。従って、例えば、車両のステアリング機構が左右連結にされている場合はトーインに設定することはできない。また、特許文献2の車両の進路推定装置には、ナビゲーション装置を用いた変速制御により燃費の向上を達成する旨が開示されている。
特公平6−47388号公報(請求項1、第2図など) 特開平11−51665号公報(段落0037など)
しかし、特許文献1および2は、車輪がトーインに設定されていることにより燃費が最適化されていないという上記問題点については具体的に言及しておらず、燃費向上の余地が残されている。
本発明は、このような事情を鑑みて、車輪のトー角を制御することにより燃費を向上させることを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、車両の走行状態の検出結果から、車両の直進状態を判定する直進状態判定手段と、車両の直進状態における燃費の向上に適した最適トー角を、運転手の当該車両における走行履歴に基づかないデータとして予め記憶しているアライメント記憶手段と、前記直進状態判定手段により車両が直進状態にあると判定された場合に、前記アライメント記憶手段に記憶された最適トー角に設定するアライメント設定手段と、を有し、直進状態が所定時間継続することで前記直進状態判定手段により、車両が直進状態であると判定された場合に、前記アライメント記憶手段に記憶された最適トー角に設定する、アライメント変更制御装置において、さらに、アライメントを、車両の走行中に燃費向上の試行対象となるトー角に設定し、前記設定されたトー角にて走行する際の燃費を算出する試行を、トー角を変更しつつ繰り返す燃費試行手段と、各試行において、試行対象となるトー角および当該トー角のときに算出された燃費を関連づけ、複数の異なるトー角に対応する燃費に関する情報を前記試行の結果として前記試行を行った時刻とともに記憶する燃費記憶手段と、前記燃費記憶手段から前記燃費に関する情報を読み出し、前記読み出した燃費に関する情報において、当該燃費が最大になるトー角を選択する選択手段とを有し、前記選択手段により選択されたトー角に設定することを特徴とする。
本発明により、車輪のトー角を制御することにより燃費を向上させることができる。
以下、本発明のアライメント変更制御装置の一例として、車輪のアライメントの一例である車輪のトー角を制御するトー角変更制御装置を実施するための最良の形態について説明する。説明の際には、添付した図面を適宜参照する。
1.実施の形態1
実施の形態1におけるトー角変更制御装置について説明する。実施の形態1は車両が直進状態にある場合に、燃費を向上させるために理論的には最適となるトー角に設定する技術に関するものである。以下、その詳細な説明をする。なお、図1は実施の形態1におけるトー角変更制御装置を適用した4輪車両としての全輪操舵装置の概略図であり、図2は左後輪側のトー角変更装置の構成図であり、図3はトー角変更装置のアクチュエータの構成図である。
1.1.全輪操舵装置の構成
図1に示すように、全輪操舵装置100は、前輪1L、1Rを転舵させる操作ハンドル3による操舵を補助する電動パワーステアリング装置110、前輪1L、1Rの転舵角と車速に応じて後輪2L、2Rをそれぞれ独立に転舵させるトー角変更装置120L、120R、電動パワーステアリング装置110およびトー角変更装置120L、120Rを制御する操舵制御装置130(以下、操舵制御ECU(Electronic Control Unit)と称する)、車速センサS、ヨーレートセンサS、横加速度センサSGSなど各種センサを含んで構成されている。
1.1.1.電動パワーステアリング装置
電動パワーステアリング装置110は、操作ハンドル3が設けられたメインステアリングシャフトと、ピニオン軸とが、2つのユニバーサルジョイント(自在継手)によって連結され、また、ピニオン軸の下端部に設けられたピニオンギアは、車幅方向に往復運動可能なラック軸のラック歯に噛合し、ラック軸の両端には、タイロッドを介して左右の前輪1L、1Rが連結されている。この構成により、電動パワーステアリング装置110は、操作ハンドル3の操舵時に車両の進行方向を変えることができる。ここで、ラック軸、ラック歯、タイロッドは転舵機構を構成する。なお、ピニオン軸はその上部、中間部、下部を、軸受を介してステアリングギアボックスに支持されている。
また、電動パワーステアリング装置110は、操作ハンドル3による操舵力を軽減するための補助操舵力を供給する電動機4を備えており、この電動機4の出力軸に設けられたウォームギアが、ピニオン軸に設けられたウォームホイールギアに噛合している。すなわち、ウォームギアとウォームホイールギアとで減速機構が構成されている。また、電動機4の回転子と電動機4に連結されているウォームギアとウォームホイールギアとピニオン軸とラック軸とラック歯とタイロッドなどにより、ステアリング系が構成される。
電動機4は、複数の界磁コイルを備えた固定子(図示せず)とこの固定子の内部で回動する回転子(図示せず)からなる3相ブラシレスモータであり、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換するものである。
ここで、操作ハンドル3に加えられる操舵トルクをTsとすると、一般的に操舵トルクTsは、
Ts=J・dθ/dt+C・dθ/dt+K(θ−θ
となることがわかっている。
ここで、θは操舵回転角であり、θは、電動機回転角を減速機構の回転比で除した値である。また、Jはステアリング系の慣性係数(イナーシャ)であり、Cはステアリング系の粘性係数(ダンパ)であり、Kはベース信号係数である。この式は車両特性や車両状態に無関係である。
また、電動パワーステアリング装置110は、操舵トルクTsを検出する操舵トルクセンサSと、電動機4を駆動する電動機駆動回路23と、電動機4の回転角を検出するレゾルバと、ピニオン軸に加えられるピニオントルクを検出するピニオントルクセンサと、ピニオントルクセンサの出力を増幅する差動増幅回路と、車速センサSとを備えている。
車速センサSは、車両の車速Vを単位時間あたりのパルス数として検出するものであり、車速信号を出力する。
1.1.2.操舵制御ECU
次に、操舵制御ECUについて説明する。操舵制御ECU130は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えるコンピュータおよびプログラム、周辺回路などからなっている。横加速度センサSGS、ヨーレートセンサS、車速センサSから車両の走行状態を表す横加速度、ヨーレート、車速が検出され、操舵制御ECU130に入力される。操舵制御ECU130は、横加速度、ヨーレート、車速による検出結果から、電動パワーステアリング装置110及び後輪2L、2Rのトー角を制御するトー角変更装置120L、120Rを制御する制御信号を出力する。
1.2.トー角変更装置の構成
次に、図2、図3を参照しながらトー角変更装置の構成を説明する。
図2は左後輪側のトー角変更装置を示す平面図、図3はトー角変更装置のアクチュエータの構造を示す概略断面図である。
トー角変更装置120L、120Rは、車両の左右の後輪2L、2Rにそれぞれ取り付けられるものであり、図3では、左後輪2Lを例にとりトー角変更装置120Lを示している。トー角変更装置120L、120Rは、アクチュエータ30、トー角変更制御装置(以下、トー角変更制御ECUと称する)37を備えている。なお、図2は、左側の後輪2Lのみを示しているが、右側の後輪2Rについても同様(対称)にして取り付けられている。なお、トー角変更制御ECU37は本発明のトー角変更制御装置に相当する。
車体のリアサイドフレーム11に略車幅方向に延びるクロスメンバ12の車幅方向端部が弾性支持されている。そして、略車体前後方向に延びるトレーリングアーム13の前端がクロスメンバ12車幅方向端部近くで支持されている。トレーリングアーム13の後端に後輪2L、2Rが固定されている。
トレーリングアーム13は、クロスメンバ12に装着される車体側アーム13aと、後輪2L、2Rに固定される車輪側アーム13bとが、略鉛直方向の回転軸13cを介して連結されて構成されている。これにより、トレーリングアーム13が車幅方向へ変位することが可能となっている。
前記アクチュエータ30は、その一端が車輪側アーム13bの回転軸13cより前方側の前端部にボールジョイント16を介して取り付けられ、他端がクロスメンバ12にボールジョイント17を介して取り付けられている。
図3に示すように、アクチュエータ30は、電動機31、減速機構33、送りねじ部35などを備えて構成されている。
電動機31は、正逆両方向に回転可能なブラシモータやブラシレスモータなどで構成されている。
減速機構33は、例えば、2段のプラネタリギア(図示せず)などが組み合わされて構成されている。
送りねじ部35は、円筒状に形成されたロッド35aと、スクリュー溝35bが形成されてロッド35aの内部に挿入されるナット35cと、スクリュー溝35bと噛合してロッド35aを軸方向に移動可能に支持するスクリュー軸35dとを備えて構成されている。スクリュー軸35dは、減速機構33および電動機31とともに細長形状のケース本体34内に収容され、減速機構33の一端が電動機31の出力軸と連結され、他端がスクリュー軸35dと連結されている。
電動機31からの動力が、減速機構33を介してスクリュー軸35dに伝達されてスクリュー軸35dが回転することで、ロッド35aがケース本体34に対して図示左右方向(軸方向)に伸縮自在に動作するようになっている。また、アクチュエータ30にはブーツ36が取り付けられて、外部からの埃や水などの異物が浸入しないようなっている。
また、アクチュエータ30には、ロッド35aの位置(伸縮量)を検出するストロークセンサ38が設けられている。このストロークセンサ38は、例えば、マグネットが内蔵され、磁気を利用して位置を検出できるようになっている。このように、ストロークセンサ38を用いて位置を検出することにより、後輪2L、2Rのトーイン、トーアウトの舵角(トー角)を個別に高精度に検出できるようになっている。
このように構成されたアクチュエータ30は、ロッド35aの先端に設けられたボールジョイント16がトレーリングアーム13の車輪側アーム13b(図2参照)に回動自在に連結され、ケース本体34の基端に設けられたボールジョイント17がクロスメンバ12(図2参照)に回動自在に連結されている。電動機31の動力によってスクリュー軸35dが回転してロッド35aが伸びる(図3の左方向)と、車輪側アーム13bが車幅方向外側(図2の左方向)に押圧されて、後輪2Lが左方向に旋回し、またロッド35aが縮む(図3の右方向)と、車輪側アーム13bが車幅方向内側(図2の右方向)に引かれて、後輪2Lが右方向に旋回する。
なお、アクチュエータ30のボールジョイント16が取り付けられる場所は、ナックルなど後輪2Lのトー角を変更できる位置であれば、車輪側アーム13bに限定されるものではない。また、本実施形態においてトー角変更装置120L、120Rはセミトレーリングアーム型独立懸架方式のサスペンションに対して適用した場合の例で示したがそれに限定されるものではなく、他の懸架方式のサスペンションにも適用できる。
また、アクチュエータ30には、トー角変更制御ECU37が一体に構成されている。トー角変更制御ECU37は、アクチュエータ30のケース本体34に固定され、ストロークセンサ38とコネクタなどを介して接続されて構成されている。
トー角変更制御ECU37には、車両に搭載された図示しないバッテリなどの電源から電力が供給される。また、操舵制御ECU130、電動機駆動回路23にも前記とは別系統でバッテリなどの電源から電力が供給される(図示せず)。
1.3.トー角変更制御ECUの構成
次に、図4を参照しながらトー角変更制御ECUの詳細な構成を説明する。
図4に示すように、トー角変更制御ECU37はアクチュエータ30を駆動制御する機能を有し、この機能を奏するコンピュータとしてCPU、RAM、ROMなどを有して構成されている。そして、この機能に対応する処理ルーチンを実施するプログラムがROMに格納されている。また、各トー角変更制御ECU37は、操舵制御ECU130と通信線を介して接続され、他方のトー角変更制御ECU37とも通信線を介して接続されている。
トー角変更制御ECU37は、直進状態判定部41、タイマ42、トー角設定部43、メモリ44および電動機駆動部45を備えている。直進状態判定部41において、操舵制御ECU130より車両の走行状態の検出結果である車速、操舵トルク、ヨーレート、横加速度の信号が入力され、車両の直進状態にあるか否かを判定する。車両が直進しているときは、操舵トルク、ヨーレート、横加速度がそれぞれほぼゼロであるが、そのような状態が所定時間継続しないと、直進状態にあるとはいい難い。例えば、操作ハンドル3を右方向にきった後に左方向にきるときに瞬間的に操舵トルクがゼロになったとしても直進状態とは判定しない。そこで、直進状態判定部41がタイマ42より時刻情報を検出し、操舵トルクなどがゼロになる状態が所定時間継続するか否かを判定する。なお、直進状態の判定には、車速、操舵トルク、ヨーレート、横加速度を総合的に考慮しても良い。
トー角設定部43は直進状態判定部41より直進状態が判定されたことを制御信号として入力されると、メモリ44に記憶されている最適トー角を読み出す。メモリ44に記憶されているトー角は、直進走行をしている場合に車輪が車両の前後方向と略平行となる角度、つまり、トー角がほぼ0°に設定されており、タイヤの転がり抵抗が理論的に最小になる値である。工場出荷時または当該車両の購入後若しくは修理後の整備においてこのトー角をメモリ44に記憶するように設計することが望ましい。
トー角設定部43は、メモリ44に記憶されたトー角に設定するように電動機制御信号を電動機駆動部45に出力する。この電動機制御信号は、電動機31に供給する電流値と電流を流す方向を含む信号である。電動機駆動部45は、FET(Field Effect Transistor)のブリッジ回路などで構成され、電動機制御信号に基づいて電動機31に電動機電圧を印加する。
1.4.直進状態において最適トー角に設定する処理
図5のフローチャートを参照しながらトー角変更制御ECUにおける最適トー角に設定する処理について説明する。図5において、車両の直進状態は操舵トルクTsを用いて判定することにする。直進状態の判定は、操作ハンドル3がきられていることを検出することで最も精度良く行われるものであり、その検出は操舵トルクTsに反映されるからである。また、この処理は走行中に行うことを前提にし、停止中、つまり、車速がゼロの状態では行わないようにする。また、後輪2R、2Lのトー角は、初期状態において、走行安定性を重視するために僅かながらトーインに設定されているものとする。
まず、走行中において、操舵トルクTs1が検出され、操舵トルクの信号が操舵制御ECU130より直進状態判定部41に入力される(ステップS01)。次に、入力された信号の操舵トルクTs1の絶対値が微小量αよりも小さいか否かが判定される(ステップS02)。微小量αの値は直進状態の判定の精度を調節するときに適宜設定変更することができる。操舵トルクTs1の絶対値が微小量αよりも小さければ(ステップS02でYes)、操舵トルクTs1を検出した時刻t1がタイマ42より検出される(ステップS03)。操舵トルクTs1の絶対値が微小量α以上であれば(ステップS02でNo)、車両が非直進状態であると判定される(ステップS09)。従って、トー角を車両の前後方向と略平行に設定することはなく終了する。ただし、操舵トルクTsの検出は走行中において一定の間隔で行い、図5の処理が繰り返される。
時刻t1の検出の後、暫く時間が経過したら時刻t2をタイマ42より検出する(ステップS04)。そして、時刻t2と時刻t1の時間差t2−t1が算出される(ステップS05)。時間差t2−t1が所定時間Tよりも大きければ(ステップS05でYes)、操舵トルクTs2が検出され、操舵トルクの信号が操舵制御ECU130より直進状態判定部41に入力される(ステップS06)。所定時間Tは操舵トルクがほぼゼロの状態が継続しているか否かを判定する基準となる時間であり、直進状態の判定の精度を調節するときに適宜設定変更することができる。時間差t2−t1が所定時間T以下であれば(ステップS05でNo)ステップS04に戻り、時刻t2を再度検出する。従って、所定時間Tが経過するまでは操舵トルクTs2が検出されないように処理される。
次に、検出された操舵トルクTs2の絶対値が微小量αよりも小さいか否かが判定される(ステップS07)。ステップS07の微少量αはステップS02のそれと同等の機能を果たすが、その値は同一である必要はない。操舵トルクTs2の絶対値が微小量αよりも小さければ(ステップS07でYes)、車両が直進状態にあると判定される(ステップS08)。所定時間Tの間、操舵トルクがほぼゼロの状態が継続したことになり、操作ハンドル3が殆どきられていないといえるからである。従って、車両が直進状態にあると判定され、その判定の制御信号がトー角設定部43に出力される。
一方、操舵トルクTs2の絶対値が微小量α以上であれば(ステップS07でNo)、車両が非直進状態にあると判定される(ステップS09)。従って、トー角を車両の前後方向と略平行に設定することはなく終了する。
車両が直進状態にあると判定された後、トー角設定部43において、メモリ44より最適トー角が読み出される(ステップS10)。次に、電動機制御信号を電動機駆動部45に出力し、電動機31を駆動することにより後輪2L、2Rが目的のトー角、つまり、車両の前後方向と略平行となるトー角に設定されて終了する(ステップS11)。
なお、直進状態から非直進状態、例えば、旋回時においては、後輪2L、2Rのトー角は、走行安定性を重視するために、旋回時において最適なトーインまたはトーアウトの状態に戻すようにすると良い。操舵トルクTsの絶対値が微少量α以上になったことを検出して、トーインまたはトーアウトになるように設定する。
1.5.まとめ
実施の形態1により以下の効果を奏する。つまり、車両が直進状態にあるときは、後輪2L、2Rが進行方向と略平行になるようにトー角を設定することができる。従って、直進しているときの後輪2L、2Rの転がり抵抗は理論的には最小になり、燃費を向上させることができる。そして、旋回時などの非直進状態においてはこのようなトー角の設定を行わないようにする。これにより、旋回時のような非直進状態におけるトー角の制御と干渉することが無いため、非直進状態の走行安定性を保持することができる。
2.実施の形態2
実施の形態2はナビゲーション装置を備えている車両において、走行中の車両がナビゲーション装置の情報を利用して直進状態になることを推定して、最適となるトー角に設定する技術に関するものである。以下、その詳細な説明をする。なお、図6はナビゲーション装置の構成図であり、図7は、ナビゲーション装置と通信線を介して接続されているトー角変更制御ECUの構成図である。
2.1.ナビゲーション装置の構成
図6を参照しながらナビゲーション装置の詳細な構成を説明する。この構成の基本的な部分は特許文献2に開示されている。
ナビゲーション装置60は、GPS(Global Positioning System)用コントローラ61、推測航法部62、マップマッチング部63、ナビゲーション部64、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)65、CD−ROMコントローラ66、表示制御部67、および表示装置68を備えて構成されている。
CD−ROM65は電子的な道路情報を含む地図情報を格納した地図情報格納部として機能する。CD−ROM65に格納された道路地図は、例えば全国地図を全体として構成する非常に多数のメッシュ区画を含む。各メッシュ区画の道路情報は、メッシュ区画内の道路や道路属性を表している。道路の各々は道路形状を表す多数の区分点(ノード)を含み、互いに隣り合うノードは一つの道路区間を画成している。その道路区間をリンクID(Identification)として特定する。つまり、一つのノードとそのノードを端部とするリンクIDを特定することにより、もう一つの端部となるノードを特定することができる。
道路情報は、各ノードの座標位置などの情報を含み、分岐点のノードまたは交差点のノードについてはこれらのノードに接続する道路を表す情報がリンクIDのデータ構造として含まれている。道路属性は、当該道路の名称、道路幅、直線、カーブ、傾斜などを含む。
現在の車両位置に対応する現ノードには、車両進行方向において一つ以上の道路区間が接続しており、1つ以上のリンクIDが特定されている。従って、現ノードが道路分岐点または交差点を表す分岐点ノードまたは交差点ノードでなければ、現ノードには一つの進路区間のみが接続しており、唯一のリンクIDが特定される。一方、現ノードが分岐点ノードまたは交差点ノードであれば、現ノードには2つ以上の進路区間が接続されており、各進路区間に対応したリンクIDが特定される。
GPS用コントローラ61は衛星航法システム(GPS)からの信号をアンテナより入力して車両の絶対位置を表す情報をナビゲーション部64に出力する。推測航法部62は地磁気センサSにより検出された方位および車速センサSにより検出された車速に基づいて車両の相対位置や車両の走行軌跡を表す情報をマップマッチング部63に出力する。
マップマッチング部63では、CD−ROMコントローラ66を介してCD−ROM65から出力された地図情報に含まれる道路情報と推測航法部62からの車両の走行軌跡とに基づいて、現在走行中の道路が特定される。そして、ナビゲーション部64では、GPS用コントローラ61より入力した絶対位置とマップマッチング部63より入力した相対位置に基づいて車両の現在位置が正確に求められ、現在位置情報が出力される。
表示制御部67は、CD−ROMコントローラ66を介してCD−ROM65から出力された道路情報、CD−ROMコントローラ66を介してナビゲーション部64から出力された現在位置情報を利用して走行道路まわりの道路地図を表示装置68に表示させるように構成されている。もし、運転手により目的地情報が入力されていれば車両の現在位置から目的地に至る推奨経路も表示装置68に表示させる。
2.2.ナビゲーション装置と接続したトー角変更制御ECUの構成
図7を参照して、ナビゲーション装置と通信線を介して接続されたトー角変更制御ECUの構成を説明する。トー角変更制御ECU37はナビ入力部46、直進状態推定部47、タイマ42、トー角設定部43、メモリ44、電動機駆動部45を備えて構成されている。基本的な機能は実施の形態1と共通するので、実施の形態1と同じ構成部分についての説明は省略する。
ナビ入力部46はナビゲーション装置60と通信線を介して接続するインターフェイスである。ナビゲーション装置60により求められた現在位置情報および道路情報を直進状態推定部47に出力する。また、ナビ入力部46は、現在位置情報に応じて当該現在位置に関連する道路情報に含まれるノードの情報及び当該ノードを端部とするリンクIDの情報を順次入力する。入力される道路情報には、車両の現在位置に対応する現ノードの情報だけでなく、現ノードを中心とした一定範囲内の領域に対応するメッシュ区画内にある道路情報、ノードの情報及び当該ノードを端部とするリンクIDの情報も含まれる。
直進状態推定部47において、現在の車両位置から所定時間後において直進することができるか否かについて推定される。ナビ入力部46より入力された現在位置情報および道路情報より、現ノードおよび現ノードを端部とするリンクIDを抽出する。抽出したリンクIDにより、一方の端部となる現ノードとは他方の端部となるノードを、車両が所定時間後に走行する車両の位置として特定する。特定した位置の道路の状態を道路情報より読み出し、その道路において直進することができれば直進状態として推定する。
トー角設定部43において、直進状態推定部47より直進状態が推定されたことを制御信号として入力されると、メモリ44に記憶されている最適トー角が読み出され、そのトー角に設定される。
2.3.推定した直進状態において最適トー角に設定する処理
図8のフローチャートを参照しながらトー角変更制御ECUにおける最適トー角に設定する処理について説明する。この処理は走行中に行うことを前提にし、停止中、つまり、車速がゼロの状態では行わないようにする。
まず、走行中において、ナビ入力部46により現在位置情報および道路情報が直進状態推定部47に入力される(ステップS21)。次に、現在位置情報および道路情報の入力に対し、車速が検出され、現在位置における車両の車速の信号が入力される(ステップS22)。次に、現在位置から所定時間Tだけ経過したときの車両の直進状態を推定するために、現在位置にいるときの時刻t1がタイマ42より検出される(ステップS23)。所定時間Tは、Tと車速とを乗算して算出される距離だけ車両が走行したときに直進しているか否かを推定する基準となる時間であり、直進状態の推定の精度を調節するときに適宜設定変更することができる。
時刻t1の検出の後、時刻t1より所定時間Tが経過した時刻t2における車両の位置を算出する(ステップS24)。Tと車速とを乗算して算出される距離を車両の移動距離とし、この移動距離と車両の現在位置の現ノード、当該現ノードを端部とするリンクID、当該リンクIDの他方の端部となるノードから走行すると予見される車両の位置を特定する。なお、この距離は車速だけでなく、操舵トルク、ヨーレート、横加速度も検出して総合的に算出しても良い。
次に、時刻t2において車両が走行すると予見される道路の状態を道路情報より読み出す(ステップS25)。ステップS24において車両が走行すると予見されるときに利用したリンクIDを用いて一方の端部となる現ノードとは他方の端部となるノードを読み出して、当該ノードの道路の状態を読み出す。読み出した結果、そのノードの道路が直線であるか否かが判定される(ステップS26)。
そのノードの道路が直線であると判定されれば(ステップS26でYes)、時刻t2において車両が直進状態になると推定される(ステップS27)。そのノードの道路が直線でないと判定されれば(ステップS26でNo)、時刻t2において車両が非直進状態になると推定されて、処理を終了する(ステップS28)。ただし、ナビゲーション装置60から入力される道路情報の読み出しは走行中において一定の間隔で行い、図8の処理が繰り返される。
直進状態になると推定された後、タイマ42より時刻情報が入力され、所定時間Tが経過して時刻t2が検出されたか否か判定する(ステップS29)。時刻t2が検出されれば(ステップS29でYes)、トー角を設定する制御信号がトー角設定部43に入力され、トー角設定部43において、メモリ44より最適トー角が読み出される(ステップS30)。その後、電動機制御信号を電動機駆動部45に出力し、電動機31を駆動することにより後輪2L、2Rが目的のトー角、つまり、車両の前後方向と略平行となるトー角に設定されて終了する(ステップS31)。時刻t2が検出されなければ(ステップS29でNo)、時刻t2が検出されるまでステップS30以降の処理を待機する。
なお、車両の現在位置の現ノードが分岐点ノードまたは交差点ノードでなければ、リンクIDおよび他方の端部となるノードを唯一に特定できるので、そのノードの道路の状態を推定すればよい。しかし、現ノードが分岐点ノードまたは交差点ノードであった場合には、リンクIDは複数特定される。この場合は、例えば、特許文献2に開示された方法により進路を推定して、リンクIDおよびそのリンクIDの他方の端部となるノードを特定すればよい。
2.4.まとめ
実施の形態2により以下の効果を奏する。つまり、車両が直進状態になると推定されるときは、その推定したタイミングに合わせて後輪2L、2Rが進行方向と平行になるようにトー角を設定することができる。従って、直進しているときの後輪2L、2Rの転がり抵抗は理論的には最小になり、燃費を向上させることができる。そして、直進状態を予見しているので、実際に直進状態を判定するときよりもいち早くトー角の設定を行い、より効率よく燃費を向上させることができる。
3.実施の形態3
実施の形態3は、走行中の車両において、後輪のトー角を意図的に変えていき、そのトー角における燃費を求めていくことにより、実質的に燃費が最大になるトー角を決定する技術に関するものである。以下、その詳細な説明をする。なお、図9は、トー角変更制御ECUの構成図である。
3.1.トー角変更制御ECUの構成
図9に示すように、トー角変更制御ECU37は直進状態判定部41、タイマ42、トー角設定部43、電動機駆動部45、燃費算出部48、燃費記憶テーブル49aを有する燃費情報記憶部49、最適燃費選択部50を備えて構成されている。基本的な機能は実施の形態1と共通するので、実施の形態1と同じ構成部分についての説明は省略する。
燃費算出部48は、燃料噴射装置 (以下、FI(Fuel Injection)と称する)80により電子制御式に噴射された燃料の量を検出して瞬間的な燃費を算出する。燃費を算出するタイミングはトー角設定部43より制御信号が出力されることにより決定される。トー角設定部43は直進状態判定部41より直進状態が判定されたことを制御信号として入力されると、燃費情報記憶部49を読み出し、燃費測定の試行対象となるトー角に設定する。このとき、電動機制御信号を電動機駆動部45に出力する一方で、燃費算出部48に制御信号を出力して燃費を算出させる。
燃費情報記憶部49は、トー角設定部43により設定されたトー角と燃費算出部48により算出された燃費を関連づけ、燃費に関する情報として複数の試行対象となるトー角毎に記憶する。記憶された燃費に関する情報を収集していくことにより、後述の燃費テーブル49a(図10参照)が作成される。なお、試行対象とするトー角は適宜設定変更することができるものであり、実質的に最大の燃費が得られるトー角の近傍の角度を選んでいけば良い。
最適燃費選択部50は、燃費情報記憶部49の燃費テーブル49aを読み出し、記憶されている燃費のうち最大のものを検索し、対応するトー角を抽出する。抽出したトー角の制御信号をトー角設定部43に出力する。トー角設定部43は、最適燃費選択部50により選択されたトー角に設定するため、電動機制御信号を電動機駆動部45に出力する。
3.2.燃費テーブル
図10を参照して、燃費テーブル49aに記憶される燃費に関する情報の構造ついて説明する。このテーブルの行には燃費を測定した順番を表す番号が連番で付されている。また、このテーブルの列の項目には、燃費の測定順に順次付される「番号」、試行対象となる「トー角」、そのトー角で測定した「燃費」、燃費の測定を開始したときの「開始時刻」、燃費の測定を終了したときの「終了時刻」が設けられている。例えば、番号「1」における燃費に関する情報について説明すると、トー角設定部43にて設定したトー角は0.1°にトーインしたものであり(トーインに設定した場合には「+」で表示する。)、2007年1月19日の8:00:00から8:03:00までの3分間燃費を測定している。開始時刻および終了時刻はタイマ42より入力される時刻情報により決定される。そして、燃費算出部48はその間燃費を測定し、算出された燃費は15.0(km/l)である。
このような測定を番号「2」、「3」、・・・として順次測定していき、試行対象のトー角に対する燃費のサンプルデータが収集される。
3.3.試行するトー角に対応する燃費に関する情報を収集する処理
図10の燃費テーブル49a、図11のフローチャートを参照しながら、試行するトー角に対応する燃費に関する情報を収集し、燃費テーブルを作成する処理について説明する。このとき、燃費の算出は直進状態において行うようにする。直進状態においてトー角を変えていくことは、旋回時などの非直進状態において変えることよりも、トー角の変更に伴うパワーロスが少なくなるからである。ただし、この燃費の算出は直進状態でも非直進状態でも行うことが可能である。
まず、走行中において、車速、操舵トルク、ヨーレート、横加速度を検出して走行状態を検出する(ステップS41)。走行状態の検出の方法は実施の形態1と同様である。その検出結果から直進しているか否かが判定される(ステップS42)。直進していれば(ステップS42でYes)、直進状態判定部41において、直進状態であると判定され、トー角設定部43にトー角の制御信号が入力される(ステップS43)。直進していなければ(ステップS42でNo)、燃費の算出は行わずに終了する。
トー角設定部43において、燃費情報記憶部49を読み出し、予め設定された試行対象とするトー角を決定し、燃費情報の収集を開始する(ステップS44)。まず、1番目の燃費情報の収集が開始され、図10の燃費テーブル49aにおいて番号「1」の行項目が検索される(ステップS45)。次に、番号「1」のトー角「+0.1」が抽出され、1番目のトー角が決定される。0.1°だけトーインに設定するように電動機制御信号を電動機駆動部45に出力して1番目のトー角が設定される(ステップS46)。1番目のトー角が決定されたとき、タイマ42より時刻情報が燃費情報記憶部49に入力され、燃費の算出を開始する時刻が入力される(ステップS47)。図10の燃費テーブル49aにおいて、1番目の開始時刻として2007年1月19日の8:00:00が入力される。
トー角が設定された後、燃費算出部48がFI80より噴出される燃料の量を検出して燃費を算出する(ステップS48)。1番目のトー角として+0.1°に設定された状態で、2007年1月19日の8:00:00から8:03:00までの3分間燃費を算出する処理が実行される。
燃費の算出処理を終了するため、その終了時刻を検出する(ステップS49)。タイマ42より時刻情報が燃費情報記憶部49に入力され、燃費の算出を終了する時刻(2007年1月19日の8:03:00)が1番目の「終了時刻」の項目に登録される。トー角設定部43において、当該終了の時刻情報が読み出され、燃費を算出する処理の終了制御信号が燃費算出部48に出力されることにより燃費の算出処理を終了する。次に、1番目のトー角における燃費を燃費テーブル49aに登録することにより、1番目の燃費情報を記憶する(ステップS50)。トー角として+0.1°に設定された状態で算出された燃費は15.0(km/l)であるので、番号「1」の「燃費」の項目には「15.0」のように登録される。
ステップS46からステップS50までの処理は試行対象となるトー角について全て繰り返される。即ち、試行対象となるトー角の個数がN個あったとして、i番目のトー角における燃費を算出し終えた場合、iとNが一致するか判定される(ステップS51)。iとNが一致すれば(ステップS51でYes)、燃費の算出処理を終了する。iとNが一致しなければ(ステップS51でNo)、i<Nであることを意味しており、番号iの数値を「1」だけ繰り上げる(ステップS52)。そして、i+1番目のトー角における燃費が算出され(ステップS46からステップS50)、i=Nとなるまで順次繰り返される。1番目のトー角である+0.1°における燃費が15.0(km/l)であると算出された後は、2番目のトー角として「+0.2°」に設定し、そのトー角における燃費算出の開始時刻、終了時刻、燃費が燃費テーブル49aに登録されていく。このような登録がN番目のトー角における燃費に関する情報が作成されるまで継続する。
3.4.燃費が最大になるトー角を選択し、そのトー角に設定する処理
図10の燃費テーブル49a、図12のフローチャートを参照しながら燃費が最大になるトー角を選択し、そのトー角に設定する処理について説明する。このとき、選択されたトー角に設定するタイミングは「3.3」と同様の理由から、直進状態において行うようにする。ステップS61からステップS63までの処理における直進状態の判定は「3.3」における図11のフローチャートのステップS41からステップS43と同様であるのでその説明を省略する。
車両が直進状態にあると判定された後、最適燃費選択部50により燃費テーブル49aが読み出される(ステップS64)。燃費テーブル49aを検索し、「燃費」の項目から最大の燃費の値を抽出し、その値に対応する番号を選択する(ステップS65)。図10の燃費テーブル49aにおいて、燃費の最大値は「15.2」であり、3番目が選択される。
次に、選択された番号に対応するトー角に設定するように、最適燃費選択部50から制御信号がトー角設定部43に入力される(ステップS66)。3番目のトー角として「+0.3°」が抽出されているので、0.3°だけトーインに設定するように後輪2R、2Lを駆動制御する。
3.5.まとめ
実施の形態3により以下の効果を奏する。つまり、燃費が最大となるトー角を記録して学習していく構成をとっているので、実質的に燃費が最大となるトー角を見つけ出すことができる。従って、運転手ごとに車両の走行に合った最適なトー角を経験的に見つけ出すことができる。そして、燃費に関する情報を定期的に収集し、燃費テーブル49aを更新していくことにより、タイヤの摩耗状況に合わせて適宜最適なトー角に設定することができる。
4.実施の形態4
実施の形態4はナビゲーション装置を備えている車両において、ナビゲーション装置により車両が同一経路を繰り返し走行していることを認識し、その同一経路を走行する場合において、後輪のトー角を意図的に変えていき、そのトー角における同一経路における燃費を求めていくことにより、実質的に燃費が最大になるトー角を決定する技術に関するものである。以下、その詳細な説明をする。なお、図13はナビゲーション装置の構成図であり、図16は、ナビゲーション装置と通信線を介して接続されているトー角変更制御ECUの構成図である。
4.1.ナビゲーション装置の構成
図13を参照しながらナビゲーション装置の詳細な構成を説明する。実施の形態2のナビゲーション装置(図6参照)の構成に加えてタイマ69、走行履歴テーブル70aを有する走行履歴記憶部70、同一経路特定部71が備えられている。実施の形態2と同じ構成部分についての説明は省略する。
走行履歴記憶部70は現在位置情報と地図情報に含まれる道路情報を関連づけ、走行履歴の情報として過去に走行した経路毎に記憶する。走行履歴の情報を収集していくことにより、後述の走行履歴テーブル70a(図14参照)が作成される。また、走行履歴の情報はトー角変更制御ECU37に送信される。
同一経路特定部71は、車両の走行する経路が過去に走行した経路と同一であるか否かを判定し、同一経路を特定し、特定した同一経路の情報をトー角変更制御ECU37に送信する。車両の現在位置情報および地図情報に含まれる道路情報から現在走行している経路を特定し、走行履歴テーブル70aを読み出す。そして、過去に走行した経路を検索し、現在走行している経路と同一であるか判定する。
表示制御部67には走行履歴および同一経路の情報が入力される。そして、表示制御部67を介して表示される表示装置68には、車両が現在走行している道路まわりの道路地図だけでなく、過去に走行したことがある経路である旨が表示される。例えば、道路を色違いで表示するなどして、過去に走行した回数を示唆するようにしても良い。
4.2.走行履歴テーブル
図14を参照して、走行履歴テーブル70aに記憶される走行履歴の情報の構造ついて説明する。このテーブルの行には走行履歴を測定した順番を表す番号が連番で付されている。また、このテーブルの列の項目には、過去に走行したことのある経路の始点のノードとなる「開始ノード」、その経路の終点のノードとなる「終了ノード」、開始ノードおよび終了ノードで結ばれる道路区間を特定する「リンクID」、開始ノード、終了ノードおよびリンクIDで定義づけされる「経路」、経路の開始ノードを通過した「開始時刻」、経路の終了ノードを通過した「終了時刻」が設けられている。
例えば、番号「1」における走行履歴の情報について説明する。まず車両は、開始時刻2007年1月12日8:00:00に開始ノード「a1」を通過したことを意味している。また、終了時刻2007年1月12日8:10:00に終了ノード「a2」を通過しており、そのとき、リンクID「LA1」に係る道路区間を経由していることを意味している。開始時刻および終了時刻はタイマ69より入力される時刻情報により決定される。現在位置情報および道路情報が読み出され、通過したノード、リンクIDに対応する経路の名称が「A1」であると特定され、番号「1」における走行履歴の情報として登録される。このような登録を番号「2」、「3」、・・・として順次行い、走行履歴のサンプルデータが収集される。
図14において、番号「1」の開始ノード、終了ノード、リンクIDは、番号「66」のそれらと一致しているので、経路「A1」は同一経路である。従って、車両が2007年1月15日の7:59:00から8:09:00までに経路「A1」を通過しているとき、走行履歴テーブル70aにおいて番号「66」の走行履歴の情報を作成するとともに、経路「A1」が同一経路であるという情報が表示制御部67およびトー角変更制御ECU37に出力される。また、番号「2」と番号「67」を比べると、開始ノード、終了ノード、リンクIDが一致するので、経路「A2」は同一経路として特定し、経路「A1」のときと同様の処理を行う。
なお、本実施の形態では開始ノードと終了ノードは互いに隣接しているものとする。従って、開始ノードと終了ノードが特定されれば、リンクIDが一意的に定まることになり、開始ノードとリンクIDが特定されれば、終了ノードが一意的に定まるものとする。しかし、本発明はこのような特定の方法に限定されるものではない。
4.3.ナビゲーション装置において同一経路を特定する処理
図14の走行履歴テーブル70a、図15のフローチャートを参照しながら、ナビゲーション装置において同一経路を特定する処理について説明する。
同一経路特定部71において、現在位置情報および地図情報に含まれる道路情報が入力されることにより、車両の現在位置の現ノード、リンクIDなどが抽出される(ステップS71)。次に走行履歴テーブル70aを読み出して、現在走行中の経路と同一の経路が存在するか検索する(ステップS72)。また、入力された現在位置情報および地図情報に基づいて、走行履歴の情報が新たに作成され、新しく作成された番号に対し、開始ノード、終了ノード、リンクID、経路、開始時刻、終了時刻が入力される。
図14の「開始ノード」の項目から、現在位置の現ノードと一致する開始ノードが存在するか否か検索される(ステップ73)。現ノードと一致する開始ノードがあれば(ステップS73でYes)、当該開始ノードに対応するリンクIDの一致について判定が行われる(ステップS74)。現ノードと一致する開始ノードがなければ(ステップS73でNo)、車両は過去に走行したことのない経路を走行していることを意味するので、新たに走行履歴の情報を生成し、走行履歴テーブルを更新して終了する(ステップS76)。
ステップS74において、現在走行している経路の道路区間に係るリンクIDと、現ノードと一致した開始ノードの対応するリンクIDが一致するか否かが判定される。リンクIDが一致すれば(ステップ74でYes)、当該リンクIDに対応する経路を同一経路として特定する(ステップS75)。特定された同一経路の情報は後述のトー角変更制御ECU37に出力される。また、同一経路の情報は表示制御部67を介して表示装置68に入力され、例えば、同一経路に対応する道路を色違いで表示するといった処理が行われる。
一方、リンクIDが一致することがなければ(ステップ74でNo)、車両は過去に走行したことのない経路を走行していることを意味するので、新たに走行履歴の情報を生成し、走行履歴テーブルを更新して終了する(ステップS76)。
4.4.ナビゲーション装置と接続したトー角変更制御ECUの構成
図16を参照して、ナビゲーション装置と通信線を介して接続されたトー角変更制御ECUの構成を説明する。トー角変更制御ECU37はナビ入力部46、タイマ42、トー角設定部43、電動機駆動部45、燃費算出部48、同一経路間燃費テーブル49bを有する燃費情報記憶部49、最適燃費選択部50を備えて構成されている。基本的な機能は実施の形態2と共通するので、実施の形態2と同じ構成部分についての説明は省略する。
ナビ入力部46には、ナビゲーション装置60より現在位置情報、道路情報、走行履歴、同一経路の情報が入力される。同一経路の情報の入力により、ナビ入力部46からトー角の制御信号がトー角設定部43に入力され、試行対象となるトー角の設定制御および燃費の算出処理が開始する。燃費算出部48は設定されたトー角において、入力された同一経路を走行するときの燃費を算出する。
燃費情報記憶部49は、トー角設定部43により設定されたトー角と燃費算出部48により算出された燃費を関連づけ、同一経路燃費に関する情報として、同一経路毎に、かつ、複数の試行対象となるトー角毎に記憶する。記憶された燃費に関する情報を収集していくことにより、後述の同一経路間燃費テーブル49b(図17参照)が作成される。
4.5.同一経路間燃費テーブル
図17を参照して、同一経路間燃費テーブル49bに記憶される同一経路間燃費に関する情報の構造ついて説明する。図17は、図14の走行履歴テーブル70aにおいて同一経路と判定された同一経路A1に関する燃費テーブルである。このテーブルの行には燃費を測定した順番を表す番号が連番で付されている。また、このテーブルの列の項目には、燃費の測定順に順次付される「番号」、試行対象となる「トー角」、そのトー角で測定した「燃費」、燃費の測定を開始したときの「開始時刻」、燃費の測定を終了したときの「終了時刻」が設けられている。例えば、番号「1」における同一経路間燃費に関する情報について説明すると、トー角設定部43にて設定したトー角は0.1°にトーインしたものであり、2007年1月15日の8:00:00から8:03:00までの3分間燃費を測定している。開始時刻および終了時刻はタイマ42より入力される時刻情報により決定される。そして、燃費算出部48はその間燃費を測定し、算出された燃費は15.0(km/l)である。
このような測定を番号「2」、「3」、・・・として順次測定していき、同一経路A1に関する試行対象のトー角に対する燃費のサンプルデータが収集される。更に、同一経路A2その他の同一経路についても、当該同一経路を通過するときに、燃費のサンプルデータが収集される。
4.6.試行するトー角に対応する同一経路間燃費に関する情報を収集する処理
図17の同一経路間燃費テーブル49b、図18のフローチャートを参照しながら、ある同一経路において試行するトー角に対応する同一経路間燃費に関する情報を収集し、同一経路間燃費テーブルを作成する処理について説明する。説明の前提として車両は同一経路A1を通過するものとする。
まず、走行中において、ナビ入力部46に同一経路の情報が、現在位置情報、道路情報、走行履歴とともに入力される(ステップS81)。同一経路の情報の入力により、車両が同一経路A1を走行していることが認識され、トー角設定部43にトー角の制御信号が入力される。トー角設定部43において、燃費情報記憶部49を読み出し、予め設定された試行対象とするトー角を決定し、燃費情報の収集を開始する(ステップS82)。
まず、1番目の燃費情報の収集が開始され、図17の同一経路間燃費テーブル49bのうち同一経路A1のテーブルにおいて番号「1」の行項目が検索される(ステップS83)。次に、番号「1」のトー角「+0.1」が抽出され、1番目のトー角が決定される。そして、0.1°だけトーインに設定するように電動機制御信号を電動機駆動部45に出力して1番目のトー角が設定される(ステップS84)。1番目のトー角が設定されたとき、タイマ42より時刻情報が燃費情報記憶部49に入力され、燃費の算出を開始する時刻が検出される(ステップS85)。図17の同一経路A1のテーブルにおいて、1番目の開始時刻として2007年1月15日の8:00:00が入力される。
トー角が設定された後、燃費算出部48がFI80より噴出される燃料の量を検出して同一経路A1を走行するときの燃費を算出する(ステップS86)。1番目のトー角として+0.1°に設定された状態で、2007年1月15日の8:00:00から8:03:00までの3分間、同一経路間燃費を算出する処理が実行される。
燃費の算出処理を終了するため、その終了時刻を検出する(ステップS87)。タイマ42より時刻情報が燃費情報記憶部49に入力され、燃費の算出を終了する時刻(2007年1月15日の8:03:00)が同一経路A1のテーブル内の1番目の「終了時刻」の項目に登録される。トー角設定部43において、当該終了の時刻情報が読み出され、同一経路間燃費を算出する処理の終了制御信号が燃費算出部48に出力されることにより燃費の算出処理を終了する。次に、1番目のトー角における燃費を同一経路間燃費テーブル49bのうち同一経路A1のテーブル内に登録することにより、1番目の燃費情報を記憶する(ステップS88)。トー角として+0.1°に設定された状態で算出された燃費は15.0(km/l)であるので、番号「1」の「燃費」の項目には「15.0」のように登録される。
ステップS84からステップS90までの処理は試行対象となるトー角について全て繰り返される。この繰り返しの処理およびその後の処理は、「3.3」の処理のステップS46からステップS52までの処理(図11参照)と同様であるので説明を省略する。結果的に、同一経路A1についての同一経路間燃費に関する情報がN個分作成される(図17参照)。これにて同一経路A1については処理を終了するが、車両が同一経路A2その他の同一経路を通過するときには、その度に図18の処理が行われる。
4.7.燃費が最大になるトー角を選択し、そのトー角に設定する処理
図17の同一経路間燃費テーブル49b、図19のフローチャートを参照しながら燃費が最大になるトー角を選択し、そのトー角に設定する処理について説明する。説明の前提として車両は同一経路A1を通過するものとする。
まず、走行中において、ナビ入力部46に同一経路の情報が、現在位置情報、道路情報、走行履歴とともに入力される(ステップS101)。同一経路の情報の入力により、車両が同一経路A1を走行していることが認識され、トー角設定部43にトー角の制御信号が入力される。
同一経路の情報がされた後、最適燃費選択部50により同一経路間燃費テーブル49bが読み出される(ステップS102)。そして、更に、同一経路間燃費テーブル49bのうち、入力された同一経路と同一である同一経路A1のテーブルを抽出する(ステップS103)。同一経路A1のテーブルを検索し、「燃費」の項目から最大の燃費の値を抽出し、その値に対応する番号を選択する(ステップS104)。図17の同一経路間燃費テーブル49bの同一経路A1のテーブルにおいて、燃費の最大値は「15.2」であり、3番目が選択される。
次に、選択された番号に対応するトー角に設定するように、最適燃費選択部50から制御信号がトー角設定部43に入力される(ステップS105)。同一経路A1のテーブル内の3番目のトー角として「+0.3°」が選択されているので、0.3°だけトーインに設定するように後輪2R、2Lを駆動制御する。
4.8.まとめ
実施の形態4により以下の効果を奏する。つまり、燃費が最大となるトー角を同一経路毎に記録して学習していく構成をとっているので、実質的に燃費が最大となるトー角を見つけ出すことができる。従って、運転手ごとに同一経路における最適なトー角を経験的に見つけ出すことができる。例えば、同一経路としては、運転手の自宅から勤め先までの通勤路が挙げられ、その運転手が、通勤の際、決まった通路を決まった時間に運転するといったケースが考えられる。このとき、通勤路を走行するときの最適トー角を上述のように経験的に見つけ出すことで、その運転手にとっては最良となる燃費の向上を達成することができる。
5.実施の形態5
実施の形態5は、給油がある度に後輪のトー角を意図的に変えていき、そのトー角における給油間の燃費(給油間燃費という。)を求めていくことにより、実質的に給油間燃費が最大になるトー角を決定する技術に関するものである。以下、その詳細な説明をする。図20は、トー角変更制御ECUの構成図である。
前提として、給油を行ってから次の給油を行うまでに車両が走行する経路はほぼ同一であるとする。例えば、運転手は通勤のために運転をしているとすれば、自宅から勤め先までの間、ほぼ決まった経路をほぼ決まった時間に通過するといったケースが考えられる。給油を行うときは通勤路途中にあるガソリンスタンドなどの給油所を利用することが一般的であると考えられる。従って、決まった経路しか通過しない車両においては、給油間の走行状態はほぼ同一であるといえるので、給油間燃費が最適化されるようなトー角を見つけ出すことにする。
5.1.トー角変更制御ECUの構成
図20に示すように、トー角変更制御ECU37は給油入力部51、タイマ42、トー角設定部43、電動機駆動部45、燃費算出部48、給油間燃費テーブル49cを有する燃費情報記憶部49、最適燃費選択部50を備えて構成されている。基本的な機能は実施の形態1、3と共通するので、実施の形態1、3と同じ構成部分についての説明は省略する。
給油入力部51は、給油が行われるときに開閉される給油口リッドを備えた給油口装置と通信線を介して接続した入力装置(図示せず)と通信線を介して接続するインターフェイスである。この入力装置は給油したときの給油量を入力することができ、給油量の情報が給油入力部51および燃費情報記憶部49に入力される。給油量の情報の入力により給油入力部51からトー角の制御信号がトー角設定部43に入力される。
燃費情報記憶部49において、給油量の入力があったとき、オドメーター81から総走行距離の値が入力され、また、タイマ42から時刻情報が入力される。そして、トー角設定部43により設定されたトー角、燃費算出部48にて算出された燃費、給油量、総走行距離および給油量を入力した時刻が関連づけられ、給油間燃費に関する情報として複数の試行対象となるトー角毎に記憶する。記憶された給油間燃費に関する情報を収集していくことにより、後述の給油間燃費テーブル49c(図21参照)が作成される。なお、試行対象とするトー角は適宜設定変更することができるものであり、実質的に最大の給油間燃費が得られるトー角の近傍の角度を選んでいけば良い。
5.2.給油間燃費テーブル
図21を参照して、給油間燃費テーブル49cに記憶される給油間燃費に関する情報の構造について説明する。このテーブルの行には燃費を測定した順番を表す番号が連番で付されている。また、このテーブルの列の項目には、燃費の測定順に順次付される「番号」、試行対象となる「トー角」、そのトー角で測定した「燃費」、入力された「給油量」、給油量が入力された時点におけるオドメーター81が示す「総走行距離」、給油量を「入力した時刻」が設けられている。一例として、番号「1」における給油間燃費に関する情報について説明すると、トー角設定部43にて設定したトー角は「+0.1」に設定されており、トー角を「+0.1」に設定した状態で走行した後に給油したときの給油量は80(l)であり、オドメーター81が示していた総走行距離は10,000(km)であり、その給油量を入力した時刻は2007年1月19日の8:03:00である。このとき、事前に、給油してトー角を「+0.1」に設定した時点の総走行距離を記憶しておくようにする。従って、総走行距離の差を算出し、その差を、トー角を「+0.1」に設定した状態で走行した後に給油したときの給油量80(l)で割ることにより、トー角を「+0.1」に設定した状態の燃費として「15.0」と算出される。
次の給油が2007年1月26日の8:12:00に行われたときに、番号「2」における給油間燃費に関する情報が作成される。番号「2」における給油間燃費に関する情報について説明すると、トー角設定部43にて設定したトー角は「+0.2」に設定されており、トー角を「+0.2」に設定した状態で走行した後に給油したときの給油量は80(l)であり、オドメーター81が示していた総走行距離は11,208(km)であり、その給油量を入力した時刻は2007年1月26日の8:12:00である。従って、前回給油したときの総走行距離の差が11,208−11,000=1,208(km)と算出され、その差を、トー角を「+0.2」に設定した後に給油したときの給油量80(l)で割ることにより、トー角を「+0.2」に設定した状態の燃費として「15.1」と算出される。
このような給油間燃費の算出を番号「3」、「4」、・・・として順次行い、給油間における試行対象のトー角に対する燃費のサンプルデータが収集される。
5.3.試行するトー角に対応する給油間燃費に関する情報を収集する処理
図21の給油間燃費テーブル49c、図22のフローチャートを参照しながら、給油間において試行するトー角に対応する給油間燃費に関する情報を収集し、給油間燃費テーブルを作成する処理について説明する。
まず、給油入力部51において、給油量が入力される(ステップS111)。給油量の入力により、給油がなされたことが認識され、トー角設定部43にトー角の制御信号が入力される。トー角設定部43において、燃費情報記憶部49を読み出し、予め設定された試行対象とするトー角を決定し、燃費情報の収集を開始する(ステップS112)。オドメーター81より、その開始時点での総走行距離が事前に燃費情報記憶部49に入力される(ステップS113)。
1番目の給油間燃費に関する情報の収集が開始され、図21の給油間燃費テーブル49cにおいて番号「1」の行項目が検索される(ステップS114)。次に、番号「1」のトー角「+0.1」が抽出され、1番目のトー角が決定される。0.1°だけトーインに設定するように電動機制御信号を電動機駆動部45に出力して1番目のトー角が設定される(ステップS115)。
1番目のトー角に設定された後、暫く走行して再び給油を行うことになったとする。すると、給油入力部51において、給油量が入力される(ステップS116)。次に、その給油量が入力された時刻をタイマ42より検出する(ステップS117)。次に、給油量が入力されたときにオドメーター81が示していた総走行距離を入力する(S118)。入力された給油量、総走行距離、給油量を入力した時刻は1番目の燃費情報として、給油間燃費テーブル49cに記憶される。
次に、燃費算出部48において、給油間燃費テーブル49cを読み出し、給油間燃費を算出する(ステップS119)。総走行距離の差を入力された給油量で割り、トー角「+0.1」における給油間燃費を算出する。算出された給油間燃費は、1番目の燃費情報として給油間燃費テーブル49cに記憶される(ステップS120)。
ステップS115からステップS120までの処理は試行対象となるトー角について全て繰り返される。即ち、試行対象となるトー角の個数がN個あったとして、i番目のトー角における給油間燃費を算出し終えた場合、iとNが一致するか判定される(ステップS121)。iとNが一致すれば(ステップS121でYes)、給油間燃費の算出処理を終了する。iとNが一致しなければ(ステップS121でNo)、i<Nであることを意味しており、番号iの数値を「1」だけ繰り上げる(ステップS122)。そして、i+1番目のトー角における燃費が算出され(ステップS115からステップS120)、i=Nとなるまで順次繰り返される。その結果、N個の試行対象のトー角における燃費情報が作成される。
5.4.燃費が最大になるトー角を選択し、そのトー角に設定する処理
図21の給油間燃費テーブル49c、図23のフローチャートを参照しながら燃費が最大になるトー角を選択し、そのトー角に設定する処理について説明する。
まず、給油入力部51において、給油量が入力される(ステップS131)。給油量の入力により、給油がなされたことが認識され、トー角設定部43にトー角の制御信号が入力される。
給油がなされた後、最適燃費選択部50により給油間燃費テーブル49cが読み出される(ステップS132)。給油間燃費テーブル49cを検索し、「燃費」の項目から最大の燃費の値を抽出し、その値に対応する番号を選択する(ステップS133)。図21の給油間燃費テーブル49cにおいて、燃費の最大値は「15.2」であり、3番目が選択される。
次に、選択された番号に対応するトー角に設定するように、最適燃費選択部50から制御信号がトー角設定部43に入力される(ステップS134)。給油間燃費テーブル49c内の3番目のトー角として「+0.3°」が選択されているので、0.3°だけトーインに設定するように後輪2R、2Lを駆動制御する。
5.5.まとめ
実施の形態5により以下の効果を奏する。つまり、燃費が最大となるトー角を給油の度に記録して学習していく構成をとっているので、実質的に燃費が最大となるトー角を見つけ出すことができる。従って、通勤などのように、決まった経路しか走行しないという運転手にとって、その経路を走行するときの燃費が最適となるトー角を経験的に見つけ出すことができる。
なお、上述した形態は、本発明を実施するための最良のものであるが、かかる形態に限定する趣旨ではない。従って、本発明の要旨を変更しない範囲内において、その実施形式を種々変形することが可能である。
実施の形態1、3において、トー角変更制御ECU37が直進状態判定部41を備え、車両の直進状態を判定している。しかし、操舵制御ECU130が直進状態判定部41を備える構成とし、直進状態判定部41が直進状態を判定したときに生成する制御信号を、後輪2R、2Lに対応するトー角変更制御ECU37のそれぞれに出力するといったトー角変更制御のシステムとしても良い。これにより、それぞれのトー角変更制御ECU37におけるトー角の変更制御を揃えることができる。
実施の形態2において、直進状態を推定するために、ナビゲーション装置の情報が用いられている。しかし、例えば、直進状態の推定を行うためには、他にも前方監視カメラから得られる撮像データおよび、レーザレーダ並びにミリ波レーダといった前方監視レーダ装置から得られる測定値を用いた構成を備えても良い。
また、実施の形態4において、ナビゲーション装置により同一経路を特定し、トー角変更制御装置により当該同一経路に対応するトー角を決定する構成をとっている。しかし、そのような構成に限定せず、例えば、車輪のトー角を可変に制御するトー角変更制御装置を搭載した車両における燃費管理装置であって、走行経路を複数の区間に区切った区間情報(図14参照)を記憶した記憶手段と、車両の走行位置を検出する走行位置検出手段(図6参照)と、前記走行位置検出手段により検出された走行位置が、前記記憶手段に記憶したどの区間に該当するか否かを検知する区間検知手段(図13参照)と、前記区間検知手段の検知結果に基づいて、区間が変わるごとにトー角の設定値を変更するトー角変更手段と、前記区間ごとに燃費を算出する手段と、区間ごとに、前記算出した燃費と前記設定したトー角とを対応付けて記憶手段に記憶させる燃費情報登録手段を備えた構成をとっても良い。この構成により、走行経路の区間毎に燃費を算出するので、実質的に燃費が最大になるトー角を走行経路の区間毎に決定することができる。従って、区間が変わるごとに車両の走行に合った最適なトー角を経験的に見つけ出すことができる。
また、例えば、実施の形態5において、総走行距離の差と給油量から燃費を算出する構成について説明したが、給油量ではなく、給油がなされた旨を入力し、給油後の所定期間だけの燃費を算出する構成であっても良い。給油がなされた旨の入力は次のようにすればよい。例えば、給油口装置の給油口リッドが開閉されることを検知するセンサを給油口リッド近傍に設け、給油口リッドが開いたときにその検知信号を給油入力部51に入力するものである。そして、試行対象のトー角が設定され、燃費算出処理を燃費算出部48に実行させる。燃費算出部48において、FI80より噴出される燃料の量を検出して所定期間内の燃費を算出することで、給油間の燃費を算出する。
また、上記形態では、車輪のアライメントの制御の一例として車輪のトー角の制御について説明した。しかし、車輪のアライメントの制御の一例として、この他にも車輪のキャンバー角の制御も可能である。キャンバー角の制御においては、アッパーアームやロアアーム等といった車輪の中心付近に連結して固定されているアームにアクチュエータを配置することが好ましい。
実施の形態1におけるトー角変更制御装置を適用した4輪車両としての全輪操舵装置の概略図である。 実施の形態1における左後輪側のトー角変更装置を示す平面図である。 実施の形態1におけるトー角変更装置のアクチュエータの構造を示す概略断面図である。 実施の形態1におけるトー角変更制御ECUの構成図である。 実施の形態1におけるトー角変更制御ECUにおける最適トー角に設定する処理についてのフローチャートである。 実施の形態2におけるナビゲーション装置の構成図である。 実施の形態2におけるトー角変更制御ECUの構成図である。 実施の形態2におけるトー角変更制御ECUにおける最適トー角に設定する処理についてのフローチャートである。 実施の形態3におけるトー角変更制御ECUの構成図である。 実施の形態3における燃費に関する情報を記憶した燃費テーブルの構成である。 実施の形態3における試行するトー角に対応する燃費に関する情報を収集し、燃費テーブルを作成する処理についてのフローチャートである。 実施の形態3における燃費が最大になるトー角を選択し、そのトー角に設定する処理についてのフローチャートである。 実施の形態4におけるナビゲーション装置の構成図である。 実施の形態4における走行履歴テーブルの構成である。 実施の形態4におけるナビゲーション装置において同一経路を特定する処理についてのフローチャートである。 実施の形態4におけるトー角変更制御ECUの構成図である。 実施の形態4における同一経路間燃費に関する情報を記憶した同一経路間燃費テーブルの構成である。 実施の形態4における試行するトー角に対応する同一経路間燃費に関する情報を収集し、同一経路間燃費テーブルを作成する処理についてのフローチャートである。 実施の形態4における燃費が最大になるトー角を選択し、そのトー角に設定する処理についてのフローチャートである。 実施の形態5におけるトー角変更制御ECUの構成図である。 実施の形態5における給油間燃費に関する情報を記憶した給油間燃費テーブルの構成である。 実施の形態5における試行するトー角に対応する給油間燃費に関する情報を収集し、給油間燃費テーブルを作成する処理についてのフローチャートである。 実施の形態5における燃費が最大になるトー角を選択し、そのトー角に設定する処理についてのフローチャートである。
符号の説明
1L、1R 前輪
2L、2R 後輪
3 操作ハンドル
4 電動機
GS 横加速度センサ
操舵トルクセンサ
車速センサ
11 リアサイドフレーム
12 クロスメンバ
13 トレーリングアーム
13a 車体側アーム
13b 車輪側アーム
13c 回転軸
16、17 ボールジョイント
23 電動機駆動回路
30 アクチュエータ
31 電動機
33 減速機構
34 ケース本体
35 送りねじ部
35a ロッド
35b スクリュー溝
35c ナット
35d スクリュー軸
36 ブーツ
37 トー角変更制御ECU
38 ストロークセンサ
100 全輪操舵装置
110 電動パワーステアリング装置
120L、120R トー角変更装置
地磁気センサ
41 直進状態判定部
42 タイマ
43 トー角設定部
44 メモリ
45 電動機駆動部
46 ナビ入力部
47 直進状態推定部
48 燃費算出部
49 燃費情報記憶部
49a 燃費テーブル
49b 同一経路間燃費テーブル
49c 給油間燃費テーブル
50 最適燃費選択部
60 ナビゲーション装置
61 GPS用コントローラ
62 推測航法部
63 マップマッチング部
64 ナビゲーション部
65 CD−ROM
66 CD−ROM用コントローラ
67 表示制御部
68 表示装置
69 タイマ
70 走行履歴記憶部
70a 走行履歴テーブル
71 同一経路特定部
80 FI
81 オドメーター

Claims (2)

  1. 車両の走行状態の検出結果から、車両の直進状態を判定する直進状態判定手段と、
    車両の直進状態における燃費の向上に適した最適トー角を、運転手の当該車両における走行履歴に基づかないデータとして予め記憶しているアライメント記憶手段と、
    前記直進状態判定手段により車両が直進状態にあると判定された場合に、前記アライメント記憶手段に記憶された最適トー角に設定するアライメント設定手段と、を有し、
    直進状態が所定時間継続することで前記直進状態判定手段により、車両が直進状態であると判定された場合に、
    前記アライメント記憶手段に記憶された最適トー角に設定する、アライメント変更制御装置において、
    さらに、
    アライメントを、車両の走行中に燃費向上の試行対象となるトー角に設定し、前記設定されたトー角にて走行する際の燃費を算出する試行を、トー角を変更しつつ繰り返す燃費試行手段と、
    各試行において、試行対象となるトー角および当該トー角のときに算出された燃費を関連づけ、複数の異なるトー角に対応する燃費に関する情報を前記試行の結果として前記試行を行った時刻とともに記憶する燃費記憶手段と、
    前記燃費記憶手段から前記燃費に関する情報を読み出し、前記読み出した燃費に関する情報において、当該燃費が最大になるトー角を選択する選択手段とを有し、
    前記選択手段により選択されたトー角に設定することを特徴とするアライメント変更制御装置。
  2. 前記直進状態判定手段は、進行方向前方における直進状態を推定可能な手段であり、
    前記アライメント設定手段は、前記直進状態判定手段により車両が直進状態になると推定された場合、前記アライメント記憶手段に記憶された最適トー角に設定することを特徴とする請求項1に記載のアライメント変更制御装置。
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