JP4542267B2 - バチルス・ラテロスポルス株由来の殺虫性毒素および遺伝子 - Google Patents

バチルス・ラテロスポルス株由来の殺虫性毒素および遺伝子 Download PDF

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Description

【0001】
発明の背景
昆虫およびその他の害虫は、農作物の損害およびこれらの害虫を防除された状態に保つ費用として農場経営者に年間何十億ドルもの出費を強いている。農業生産環境において害虫によって引き起こされる損害には、農作物の収量の減少、農作物の品質の低下、および収穫コストの増加が含まれる。
【0002】
ハムシモドキ幼虫(corn rootworm)(鞘翅目害虫の一つ)は、重大な植物害虫である。米国のトウモロコシは、ハムシモドキ幼虫(ディアブロティカ(Diabrotica)種)による根の摂食のために毎年大規模な損害を受けている。ハムシモドキ幼虫群の被害を受ける米国のトウモロコシは毎年ほぼ930万エーカーに上ると推定されている。ハムシモドキ幼虫群には、西部ハムシモドキ幼虫(Diabrotica virgifera virgifera)、北部ハムシモドキ幼虫(Diabrotica barberi)および南部ハムシモドキ幼虫(Diabrotica undecimpunctata howardi)が含まれる。
【0003】
それぞれのディアブロティカ種のライフサイクルは類似している。ハムシモドキ幼虫の卵は土壌中に産卵される。新たに孵化した幼虫(第一齢)は土壌中にとどまり、トウモロコシの比較的細い枝分かれした根を餌にする。西部および北部ハムシモドキ幼虫のより後期齢の幼虫は、植物に水分および無機養素を運ぶ根内組織へと侵入する。ほとんどの場合、幼虫は成長中の最も新しい根を餌にするために移動する。幼虫が根内部を貫通することによって障害が引き起こされ、これは根表面に生じる褐色の長い瘢痕、根内部の貫通、または種々の程度の脱落として認められる。根が脱落した植物は通常、豪雨および激しい風を伴う嵐によって抜去される。南部ハムシモドキ幼虫の幼虫も、西部および北部ハムシモドキ幼虫の幼虫と同様に根を食べて育つ。さらに南部ハムシモドキ幼虫はまだ土壌面の付近にある茎の成長点も食べるが、これは植物の立枯れおよび死滅の原因となる。
【0004】
ハムシモドキ幼虫は約3週間摂食した後に根から抜け出し、土壌中で蛹化する。成虫は土壌から現れ、トウモロコシ花粉および他の多くの種類の花粉、さらにはトウモロコシの毛を食べる。緑色の毛が摂食されると受粉レベルが低下し、穀粒の不十分な配列および収穫量の低下をもたらすことがある。西部ハムシモドキ幼虫はトウモロコシの葉も食べるが、これは植物の成長を遅くし、稀には、いくつかのトウモロコシ品種を死滅させることもある。
【0005】
これらのディアブロティカ(Diabrotica)種の土壌棲息性幼虫は、トウモロコシの根を食べ、倒伏を引き起こす。倒伏は最終的にはトウモロコシの収穫量を減少させ、しばしば植物の死滅の原因ともなる。成虫はトウモロコシの毛を食べることによって受粉を減少させ、一株当たりのトウモロコシの収穫量に有害な影響をもたらす。さらに、ディアブロティカ属の成虫および幼虫は、ウリ類の作物(キュウリ、メロン、カボチャなど)ならびに商業的に生産される多くの野菜および農作物、さらには家庭菜園で育成されるものも侵食する。
【0006】
ハムシモドキ幼虫を防除するための殺虫薬の年間コストおよびハムシモドキ幼虫の被害によって生じる農作物の年間の損害の総額は、米国では毎年10億ドルを上回ると推定されている(Meycalf, R.L.[1986]、「ディアブロティカ種害虫の研究方法(Methods for the Study of Pest Diabrotica」)、Drysan, J.L.およびT.A.Miller[編]、Springer-Verlag、New York、NY、pp.vii〜xv)。米国では毎年約2億5000万ドルに相当する殺虫薬がハムシモドキ幼虫の防除のために用いられている。中西部では、アイオワ州とネブラスカ州でそれぞれ6000万ドルおよび4000万ドルに相当する殺虫薬が1990年に用いられている。殺虫薬を使用してさえ、ハムシモドキ幼虫は毎年約7億5000万ドルに相当する農作物の損害を引き起こしており、中西部では最も重大なトウモロコシの害虫となっている。
【0007】
ハムシモドキ幼虫の防除は、輪作(crop rotation)および不定根系(adventitious root system)の成長を促すための高窒素レベルの適用といった栽培法によって部分的に対策が講じられてきた。しかし、望ましいレベルの防除を確実に得るためには、化学殺虫薬(chemical insecticide)に依拠する部分が最も大きい。化学殺虫薬は土壌の上に集積するか、またはその中に取り込まれる。輪作の使用は、農地利用に対する経済的要請によって制限される。さらに一部の地域では、二年冬眠性(または越冬性)をもつ北部ハムシモドキ幼虫が新たに出現し、輪作に混乱をもたらしている。
【0008】
ハムシモドキ幼虫を防除するための殺虫薬の使用にはいくつか欠点がある。殺虫薬の継続的使用により、耐性昆虫が出現する可能性が生まれる。極めて大量の幼虫、大雨、殺虫薬散布装置の不適切な調整などの状況は防除の不良をもたらすことがある。殺虫薬の使用はしばしば、土壌ならびに上水道および下水道の汚染といった環境面での懸念を生じる。一般大衆も、食品中に認められる可能性のある化学物質の残存量に関心を抱くようになっている。殺虫薬を用いる作業が、それを使用する人々に危険をもたらすおそれもある。このため、合成化学殺虫薬が環境に有害な結果をもたらす可能性に関する検討は増しており、正確な評価がなされつつある。広く用いられている合成化学殺虫薬の例には、DDT、ミレックス(mirex)、キーポーン、リンデン、アルドリン、クロルデン、アルディカーブおよびディルドリンなどの有機塩素、クロルピリフォス、パラチオン、マラチオンおよびダイアジノンなどの有機リン酸塩、ならびにカルバメートが含まれる。殺虫薬の使用に対して新たに厳しい規制が課せられ、いくつかの有効な殺虫薬が市場から排除されたことは、損害をもたらし、被害額も大きい害虫を駆除するための経済的かつ有効な選択肢の制限につながるおそれがある。
【0009】
有機合成化学殺虫薬の使用に伴う問題のために、これらの薬剤の使用を制限しようという需要、および代替的な駆除薬を見いだそうという需要が明らかに存在する。合成化学殺虫薬の取り替え、およびこれらの薬剤の生物的殺虫薬(biological pesticide)との併用により、環境中の有毒化学物質の濃度を下げることが可能と考えられる。
【0010】
知名度が高まりつつある生物的殺虫薬の一つが、土壌微生物バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)である。土壌微生物バチルス・チューリンギエンシス(B.t.)はグラム陽性胞子形成性細菌である。B.t.のほとんどの菌株は殺虫活性を示さない。いくつかのB.t.株は芽胞近傍に結晶性タンパク質封入体を形成し、これを特徴とする。これらの「δエンドトキシン」は、典型的には特異的な殺虫活性を有し、非特異的宿主範囲を有するエンドトキシンとは異なっている。これらの封入体はしばしば顕微鏡下では明瞭な形状を示す結晶として認められる。このタンパク質は害虫に対して非常に毒性が強く、毒性活性の点で特異的な可能性がある。特定のB.t.毒素遺伝子が単離され、配列決定されている。B.t.結晶性タンパク質の遺伝子のクローニングおよび大腸菌における発現は、15年以上前に発表された文献に記載されている(Schnepf, H.E.、H.R.Whiteley[1981]Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2893〜2897)。さらに、遺伝子工学技術を用いて、B.t.毒素を農業環境に供給するための新たな手法の開発が進んでおり、これらには、昆虫抵抗性のためのB.t.毒素遺伝子による遺伝子操作がなされた植物の使用、および毒素送達媒体としての安定化された完全微生物細胞の使用が含まれる(Gaertner,F.H., L.Kim[1988]TIBTECH 6:S4-S7)。したがって、単離されたB.t.エンドトキシン遺伝子の商業的な価値は高まりつつある。
【0011】
過去15年の間、B.t.殺虫剤の商業的使用は主として鱗翅目昆虫(イモムシ)に属する害虫の狭い範囲に限られていた。鱗翅目害虫への商業的な殺虫剤としては、長年にわたってB.チューリンギエンシス亜種クルスタキ(kurstaki)の胞子および結晶の調製物が用いられてきた。例えば、B.チューリンギエンシス変種クルスタキ(kurstaki)HD-1は、多くの鱗翅目昆虫の幼虫に対して毒性を有する、結晶性d-エンドトキシンを産生する。
【0012】
しかしながら、近年研究者達はもっと広い害虫に対して特異性を持つB.t.殺虫剤を発見した。例えば、B.t.の他の種、即ちイスラエレンシス(israelensis)およびモリソニ(morrisoni)(tenebrionis、B.t.M-7)はそれぞれ、双翅目および鞘翅目に属する昆虫を制御するために商業的に用いられている(Gaertner, F.H.[1989]「殺虫性タンパク質のための細胞送達システム:生きた微生物および生きていない微生物(Cellular Delivery Systems for Insecticidal Proteins:Living and Non-Living Microorganisms)」、作物保護剤の制御送達(Controlled Delivery of Crop Protection Agents)、R.M. Wilkins編、Taylor and Francis、New York and London、1990、pp.245〜255)。クーチ(Couch, T.L.)(1980)「バチルス・チューリンゲンシス・イスラエレンシス変種の蚊病原性(Mosquito Pathogenicity of Bacillus thuringiensis var. israelensis)」、Developments in Industrial Microbiology 22:61〜76、およびビーグル(Beegle, C.C.)(1978)「農業生態系における虫生細菌の使用(Use of Entomogenous Bacteria in Agroecosystems)」、Developments in Industrial Microbiology 20:97〜104も参照のこと。クリーグ(Krieg, A.)、フガー(A.M. Huger)、ランゲンブルッフ(G.A. Langenbruch)、シュネッター(W. Schnetter)(1983)Z. ang. Ent. 96:500〜508はバチルス・チューリンゲンシス・テネブリオニス変種(Bacillus thuringiensis var. tenebrionis)を記載しており、これは鞘翅目の2種類の甲虫に対して有効と報告されている。これらは、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)およびハンノキハムシ(Agelastica alni)である。
【0013】
最近、B.t. の新しい亜種が同定され、活性のあるδ-エンドトキシンタンパク質に応答する遺伝子が単離されている(Hofte,H., H.R.Whiteley [1989] Microbiological Reviews 52(2):242-255)。HofteおよびWhiteleyはB.t.結晶タンパク質遺伝子を4つの主なクラスに分類した。このクラスはCryI(鱗翅目昆虫特異的)、CryII(鱗翅目昆虫および双翅目昆虫特異的)、CryIII(鞘翅目昆虫特異的)、CryIV(双翅目昆虫特異的)である。その他の害虫に対して特異的に毒性を持つ株の発見も報告されている(Feitelson, J.S.、J. Payne、L. Kim[1992]Bio/ Technology 10:271〜275)。CryVは、線虫特異的な毒素のクラスの1つを命名するとして提唱されている。ランバート(Lambert)ら(Lambert, B.、L. Buysse、C. Decock、S. Jansens、C. Piens、B. Saey、J. Seurinck、K. van Audenhove、J. Van Rie、A. Van Vliet、M. Peferoen[1996]Appl. Environ. Microbiol 62(1):80〜86)およびシェブレフ(Shevelev)ら([1993]FEBS Lett. 336:79〜82)は、鱗翅目昆虫に対して有効なCry9毒素の特徴を記載している。刊行されている国際公開公報第94/05771号および国際公開公報第94/24264号も、鱗翅目の害虫に対して有効なB.t.単離株を記載している。グリーブス(Gleave)ら([1991]JGM 138:55〜62)およびスムレビッチ(Smulevitch)ら([1991]FEBS Lett. 293:25〜26)もB.t.毒素を記載している。現在ではほかにも数多くのクラスのB.t.遺伝子が同定されている。
【0014】
結晶性タンパク質に関するヘフテおよびホワイトリーの1989年の命名および分類法は、毒素の推定アミノ酸配列および宿主範囲の双方に基づくものであった。この体系は、5つの主要なクラスに分けられる14の異なる種類の毒素遺伝子をカバーするように改変された。配列決定がなされたバチルス・チューリンギエンシス結晶性タンパク質遺伝子の数は、現時点で50種を上回っている。アミノ酸の同一性のみに基づく改訂版の命名法が提唱されている(Crickmoreら[1996]、無脊椎動物病理学会(Society for Invertebrate Pathology)、第29回年次会合(29th Annual Meeting)、バチルス・チューリンギエンシスに関する第3回国際会議(IIIrd International Colloquium on Bacillus thuringiensis)、University of Cordoba、Cordoba、Spain、9月1〜6日、要旨)。別のクラスとされたcytAおよびcytBを除き、毒素遺伝子にはすべて「cry」という呼び名が残された。第1序列のローマ数字はアラビア数字に換えられ、第3序列の括弧は除去された。上記の例外を除いて最初の名称の多くは残されたが、番号は再分類された。「バチルス・チューリンゲンシス結晶性タンパク質に関する命名法の改定(Revisions of the Nomenclature for the Bacillus thuringiensis Pesticidal Crystal Proteins)」、クリックモア(N. Crickmore)、ツァイグラー(D.R. Zeigler)、ファイテルソン(J. Feitelson)、シュネフ(E. Schnepf)、ファンリー(J. Van Rie)、レレクルス(D. Lereclus)、バウム(J. Baum)およびディーン(D.H. Dean)、Microbiology and Molecular Biology Reviews(1998)Vol. 62:807〜813、ならびにクリックモア(Crickmore)、ツァイグラー(Zeigler)、ファイテルソン(Feitelson)、シュネフ(Schnepf)、ファンリー(Van Rie)、レレクルス(Lereclus)、バウム(Baum)およびディーン(Dean)、「バチルス・チューリンゲンシス毒素の命名法(Bacillus thuringiensis toxin nomenclature)」(1999)http://www.biols.susx.ac.uk/Home/Nei1_Crickmore/ Btlindex.htmlも参照のこと。このシステムは、自由に入手可能なアプリケーションであるCLUSTAL WおよびPHYLIPを用いている。PHYLIPパッケージに含まれるNEIGHBORアプリケーションは、算術平均(UPGMA)アルゴリズムを用いている。
【0015】
広範にわたる研究および資源の投資がなされた結果、新たなB.t.単離株およびB.t.単離株の新たな用途に関する他の特許も発行されている。概説については、ファイテルソン(Feitelson)ら、前記を参照のこと。しかし、新たなB.t.単離株および既知のB.t.単離株の新たな用途の発見は、依然として経験的で予測不能な技術にとどまっている。
【0016】
ファブレット(Favret)およびユーステン(Yousten)([1985]J. Invert. Path. 45:195〜203)は、バチルス・ラテロスポルス(Bacillus laterosporus)株の殺虫活性の試験を行ったが、これらの菌株が示した毒性が低レベルであったことから、これらの菌株は生物的防除薬(biocontrol agent)の候補とはならないと結論している。モンタルディ(Montaldi)およびロス(Roth)(172 J. Bac. 4;April 1990;pp.2168〜2171)は、バチルス・ラテロスポルス胞子嚢の副胞子小体に関する電子顕微鏡検査を行っている。ボーン(Bone)ら(米国特許第5,045,314号)は、B.ラテロスポルスのいくつかの菌株の胞子が、動物に寄生する線虫の卵孵化および/または幼虫の発生を抑制することを報告した。アロンソン(Aronson)ら(米国特許第5,055,293号)は、P5(ATCC 53694)と命名された胞子形成性バチルス・ラテロスポルスを記載している。バチルス・ラテロスポルスNRS-590株はそこで陰性対照として用いられている。アロンソン(Aronson)らは、B.l. P5株がハムシモドキ幼虫の極めて若齢の幼虫を侵襲して即時的またはその後に障害を与えるか、またはハムシモドキ幼虫を根に向かわせるトウモロコシ根のシグナルに対する幼虫の受容または応答を阻止するものと推測している。国際公開公報第94/21795号および国際公開公報第96/10083号は、ある種の害虫に対して有効と称する毒素を記載している。国際公開公報第98/18932号は、さまざまな種類の昆虫に対して有効な数多くの新たなクラスの微生物毒素を記載している。そこでは種々のプローブおよびプライマーも開示されている。オーロバ(Orlova)ら(64 Appl. Env. Micro. 7、July 1998、pp.2723〜2725)は、バチルス・ラテロスポルスのある種の菌株の結晶性封入体は蚊防除用の候補として用いうる可能性があると報告している。
【0017】
B.t.毒素を農業に首尾よく用いるための障壁となっているものには、昆虫によるB.t.毒素耐性の発生が含まれる。これに加えて、ある種の昆虫はB.t.の影響に対する抵抗性をもつことがある。この後者には、メキシコワタミゾウムシ(boll weevil)およびタマナヤガ(black cutworm)、ならびにこれまでにB.t.δ-エンドトキシンに対する明らかな感受性が認められていない大部分の種の成虫が含まれる。B.t.トランスジェニック植物における耐性管理戦略は大きな関心を集めているが、植物において、多様な昆虫を効率的に駆除するのに適したレベルで首尾よく発現し得る遺伝子を開発することに対しては、依然として多大な需要がある。
【0018】
発明の簡単な概要
本発明は、非哺乳動物に対する害虫、特に植物に対する害虫の駆除に有用な材料および方法に関する。1つの態様において、本発明は、バチルス・ラテロスポルス単離株から入手しうる新規な殺虫性毒素および毒素コード遺伝子を提供する。1つの好ましい態様において、標的害虫はハムシモドキ幼虫である。本発明の毒素には、本バチルス・ラテロスポルス株の培養物の上清から入手しうる熱不安定性の可溶性毒素が含まれる。本発明の毒素には、これらの菌株から入手しうるより小型の熱不安定性毒素も含まれる。
【0019】
本発明はさらに、本発明の毒素をコードするヌクレオチド配列を提供する。本発明のヌクレオチド配列は、以前に記載された毒素とは異なる毒素をコードする。また、本発明のヌクレオチド配列を、殺虫性毒素をコードする遺伝子の同定および特徴決定に用いることもできる。
【0020】
本発明の一つの態様において、微生物に高度の増殖をもたらすような条件の下で、本発明のバチルス(Bacillus)単離株を培養することができる。一本鎖のゲノム核酸を提供するように微生物を処理した後、このDNAを本発明に係るヌクレオチド配列を用いて特徴付ける。この方法によって毒素をコードする遺伝子の特徴的な断片を増幅し、毒素をコードする遺伝子の存在を同定する。
【0021】
好ましい態様において、本発明は、形質転換された植物細胞が標的害虫によって摂食される組織において殺虫性毒素を発現するように、少なくとも一つの本発明の殺虫薬毒素を製造するために形質転換された、植物および植物細胞に関する。さらに、毒素を混合および/または組み合わせたものを、本発明にしたがって用いることができる。
【0022】
本明細書において開示されている遺伝子構築物による植物の形質転換は、当業者に周知の方法を用いて行うことができ、一般的には、植物における毒素の発現を最適化するために遺伝子を修飾する段階を含む。
【0023】
配列の簡単な説明
配列番号:1はMISプローブである。
【0024】
配列番号:2はWARプローブである。
【0025】
配列番号:3はMIS-フォワードプライマーである。
【0026】
配列番号:4はMIS-リバースプライマーである。
【0027】
配列番号:5は、B.l. MB438株由来のMIS毒素遺伝子からのヌクレオチド配列である。
【0028】
配列番号:6は、B.l. MB438株由来のMIS毒素遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0029】
配列番号:7は、B.l. MB438株由来のMIS毒素のポリペプチド配列である。
【0030】
配列番号:8は、B.l. MB438株由来のWAR毒素遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0031】
配列番号:9は、B.l. MB438株由来のWAR毒素のポリペプチド配列である。
【0032】
配列番号:10は、B.l. MB439株由来のMIS毒素からのヌクレオチド配列である。
【0033】
発明の詳細な開示
本発明は、非哺乳動物の害虫、特に植物の害虫の防除に有用な材料および方法に関する。1つの態様において、本発明は、バチルス・ラテロスポルス(B.l.)単離株から入手可能な新規な殺虫性毒素および毒素コード遺伝子を提供する。1つの好ましい態様において、標的害虫はハムシモドキ幼虫である。本発明の毒素には、本バチルス・ラテロスポルス株の培養物の上清から入手しうる熱不安定性の可溶性毒素が含まれる。これらの菌株から入手しうるMIS型およびWAR型の毒素について以下に詳細に説明する。本発明の毒素には、これらの菌株から入手しうるより小型の熱不安定性毒素も含まれる。
【0034】
本発明はさらに、本発明の毒素をコードするヌクレオチド配列を提供する。本発明のヌクレオチド配列は、以前に記載された毒素とは異なる毒素をコードする。本発明のその他のヌクレオチド配列を、当技術分野で周知の診断および分析手順に用いることも可能である。例えば、殺虫性毒素をコードする遺伝子の同定および特徴決定のために、プローブ、プライマーおよび部分配列を用いることができる。
【0035】
本発明の1つの態様においては、微生物の高度の増殖が生じる条件下で、本バチルス単離株を培養しうる。1本鎖ゲノム核酸を得るために微生物を処理した後に、本発明によるヌクレオチド配列を用いてそのDNAの特徴決定を行う。毒素コード遺伝子の特徴的な断片がこの手順によって増幅されることにより、毒素コード遺伝子の存在が同定されることになる。
【0036】
1つの好ましい態様において、本発明は、標的害虫により消費される組織中で形質転換植物細胞が殺虫性毒素を発現するように、本発明の殺虫性毒素の少なくとも1つを産生するように形質転換がなされた植物細胞に関する。さらに、毒素の混合物および/または組み合わせを本発明に従って用いることもできる。いくつかの好ましい態様では、MIS毒素およびWAR毒素をともに用いる。
【0037】
本明細書に開示する遺伝子構築物による植物の形質転換は、当業者に周知の技法を用いて実現可能であり、典型的には、植物における毒素の発現が最適化されるような遺伝子の改変を含むと思われる。
【0038】
本発明による有用な単離株は、農業研究部特許培養物コレクション(Agricultural Research Service Patent Culture Collection)(NRRL)、北部地域研究センター(Northern Regional Research Center)、1815 North University Street、Peoria、Illinois 61604、USAの永久コレクションに寄託される予定である。培養物の貯蔵番号は以下の通りである:
Figure 0004542267
【0039】
本特許出願のために寄託された培養物は、37 CFR 1.14および35 U.S.C. 122の下で権利が与えられると特許商標庁長官が定めている者に対する、本特許出願が審理中の間の培養物の入手を保証する条件下で寄託された。寄託物は、本出願の対応物またはその後継物が出願される国における外国特許法により必要とされる場合には入手可能と考えられる。しかし、寄託物を入手可能であることが、行政措置によって付与される特許権の緩和の下で本発明を実施する特許実施権を意味するわけではないことを理解されたい。
【0040】
さらに、本培養寄託物は、微生物の寄託に関するブダペスト条約(Budapest Treaty for the Deposit of Microorganisms)の条項に準拠して保管され、公的に利用可能とされると考えられ、すなわち、それらは寄託物のサンプルの供給に関する最新の請求から少なくとも5年間という一定の期間にわたって汚染されていない生きた状態に保つために必要なすべての管理の下で保管され、いかなる場合にも、寄託日から少なくとも30年間、または培養物の開示を生じる可能性のある任意の特許の有効期間にわたって保管されるものと考えられる。本寄託者は、請求がなされた時に寄託物の状態が理由となって寄託所が供給を行えない場合には、寄託物を交換すべき義務を負うことを認識している。本培養寄託物の公的な入手可能性に対するすべての制限は、それらを開示する特許が許可された時点で変更不能な形で撤廃されると考えられる。
【0041】
本明細書で言及する単離株の変異株は、当技術分野で周知の手順によって作製することができる。例えば、単離株に対するエチルメタンスルホン酸(EMS)突然変異誘発により、胞子形成不能変異株を入手しうる。当技術分野で周知の手順により、紫外光およびニトロソグアニジンを用いて変異株を作製することもできる。
【0042】
1つの態様において、本発明は、非哺乳動物の害虫に対して有効なタンパク質毒素をコードするバチルス遺伝子の単離、特徴決定、および同定のためのヌクレオチドプライマーならびにプローブを含む材料および方法に関する。本明細書で述べるヌクレオチド配列を、新たな殺虫性バチルス単離株を同定するために用いることもできる。本発明はさらに、本明細書に開示する方法および材料を用いて同定される遺伝子、単離株および毒素にも関する。
【0043】
本明細書で提供される新規の毒素およびポリヌクレオチド配列は、いくつかのパラメーターによって定義される。本明細書で述べる毒素の1つの特徴は殺虫活性である。1つの特定の態様において、これらの毒素は西部ハムシモドキ幼虫に対する活性を有する。本発明の毒素および遺伝子をさらに、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列によって定義することもできる。分子の配列は、ある例示的な配列との相同性の点から、さらにはある例示的なプローブおよびプライマーとハイブリダイズする能力またはそれらによって増幅される能力の点から定義することができる。
【0044】
1つの好ましい態様において、本発明のMIS型の毒素の分子量は約70〜約100kDaであり、最も好ましくは、本毒素のサイズは約80kDaである。典型的には、これらの毒素は可溶性であり、かつ本明細書で述べるバチルス培養物の上清から入手しうる。これらの毒素は、非哺乳動物の害虫に対する毒性をもつ。1つの好ましい態様において、これらの毒素は西部ハムシモドキ幼虫に対する活性を有する。MISタンパク質はさらに、細胞内に孔を形成させる能力をもつ点からも有用である。これらのタンパク質は、例えば他のタンパク質などを含む、第2の実体とともに用いることができる。第2の実体とともに用いた場合、MISタンパク質は第2の作用物質の標的細胞内への流入を促進すると考えられる。1つの好ましい態様において、MISタンパク質は標的細胞内でMIS受容体と相互作用し、標的細胞における孔形成を引き起こす。第2の実体は毒素でもよく、細胞内に流入させることが望ましい別の分子でもよい。
【0045】
本発明はさらに、サイズが約30〜50kDaであり、最も典型的にはサイズが約40kDaであるWAR型の毒素に関する。典型的には、これらの毒素は可溶性であり、本明細書で述べるバチルス培養物の上清から入手しうる。
【0046】
本発明のMIS型およびWAR型の毒素は、本明細書で述べるプライマーを用いて同定することができる。
【0047】
もう1つの特有なタイプの毒素が、本発明のバチルス菌株によって産生されるものとして同定された。これらの毒素は、本発明のMIS型およびWAR型の毒素よりもはるかに小型である。これらの毒素は、MIS型およびWAR型の毒素と同じく、熱不安定性である。しかし、これらの毒素のサイズは概ね約10kDa〜約1kDaの範囲にある。これらの毒素も可溶性であり、本明細書で述べるバチルス培養物の上清から入手しうる。
【0048】
本明細書にて提供した開示により、当業者は、本明細書にて述べたさまざまな毒素およびポリヌクレオチド配列を容易に作出し、使用することができると考えられる。
【0049】
遺伝子および毒素
本明細書において、「野生型毒素」および「野生型遺伝子」という用語は、本単離物(MB438およびMB439)によって作製される遺伝子および毒素を意味する。本発明における遺伝子および毒素には、全長の野生型配列だけでなく、本明細書に特に例示された毒素の殺虫活性特性を保持している、これらの配列の断片、変種、変異体および融合タンパク質も含まれる。例えば、米国特許第5,605,793号は、ランダム断片化の後にDNAを再構成することによって分子多様性を増加させるための方法を記載している。さらに、改変された毒素が殺虫活性を保つ限りにおいて、本明細書に具体例として示す遺伝子および毒素に内部欠失(internal deletion)を加えることができる。複数のバチルス毒素または遺伝子からの部分を結合することにより作製されたキメラの遺伝子および毒素も、本発明の開示に従い用いることができる。本明細書において用いられるように、遺伝子の「変種」または「変異」という用語は、同じ毒素をコードするヌクレオチド配列、または同等の殺虫活性を有する毒素をコードするヌクレオチド配列を意味する。本明細書において用いられる「等価的毒素」という用語は、標的害虫に対して、説明されている毒素と同じか、本質的に同じ生物学的活性をもつ毒素を意味する。
【0050】
いくつかの方法を用いて、有効な毒素をコードする遺伝子を同定し得ることができることは、当業者には明らかであると思われる。本発明に係る有用な特定の遺伝子は、上記の培養細胞寄託機関に寄託されている菌株から得てもよい。また、これらの遺伝子、またはその一部もしくは変異体を、例えば遺伝子合成機を用いて合成して作成することもできる。遺伝子の変異体は、点突然変異を作出する標準的な技術を用いて、容易に構築することができる。また、標準的な手順にしたがって、市販のエクソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼを用いて、これらの遺伝子の断片を作成することもできる。例えば、Bal31のような酵素や部位特異的突然変異を用いて、これらの遺伝子の末端からヌクレオチドを規則正しく切り出すことができる。また、さまざまな制限酵素を用いて、活性断片をコードする遺伝子を得ることもできる。これらの毒素の活性断片を直接的に得るために、プロテアーゼを用いてもよい。
【0051】
等価的毒素、および/または、これらの等価的毒素をコードする遺伝子は、B.t.菌株および/またはDNAライブラリーから、本明細書によって提供される指示に従って得ることができる。本発明の殺虫毒素を得るために、多くの方法がある。例えば、本明細書において開示され、請求されている殺虫毒素に対する抗体を用いて、タンパク質の混合物の中から別の毒素を同定、分離することができる。特に、最も定常的で、他のB.t.毒素から最も異なった毒素部位に対して抗体を作製することができよう。そして、これらの抗体を用いて、免疫沈殿や酵素結合免疫測定法(ELISA)、あるいは、ウェスタン・ブロッティングによって、特徴的な活性をもつ等価的毒素を特異的に同定することができる。本明細書において開示される毒素、あるいは、等価的毒素、あるいは、これらの毒素の断片に対する抗体は、当業における標準的な手法を用いて容易に調製することができる。そして、これらの毒素をコードする遺伝子を微生物から得ることができる。
【0052】
例示された毒素の殺虫効果を保持している断片および等価物も、本発明の範囲内にある。また、遺伝子コードの縮重のため、さまざまに異なったDNA配列が、本明細書に開示されたアミノ酸配列をコードすることができる。同じ毒素、または本質的に同じ毒素をコードする代替DNA配列を作成することは、当業者の技術の範囲内に当然含まれる。これらの変異DNA配列は、本発明の範囲内にある。本明細書において用いられるように「本質的に同じ」配列という語は、アミノ酸の置換、欠失、付加、または挿入を有し、殺虫効果に実質的に影響しない配列を意味する。殺虫活性を保持する断片もまた、この定義に含まれる。
【0053】
本発明の毒素および遺伝子を同定するための、さらに別の方法は、オリゴヌクレオチドプローブを用いることによる。これらのプローブは、検出可能な塩基配列である。プローブにより、本発明の毒素をコードする遺伝子を迅速に同定できる。本発明によりプローブとして用いられるヌクレオチドセグメントは、DNA合成機および標準的方法を用いて合成することができる。
【0054】
本発明において特定の毒素が、本明細書において特に例示されてきた。これらの毒素は、本発明の毒素を例示したものにすぎないので、本発明には、例示されている毒素の殺虫効果と同じ、または同様の効果をもつ変異体毒素または等価的毒素(および等価的毒素をコードするヌクレオチド配列)が含まれることは明白であると思われる。等価的毒素は、例示されている毒素とアミノ酸相同性を有する。このアミノ酸同一性は、典型的には60%よりも高く、好ましくは75%よりも高く、より好ましくは80%よりも高く、さらに好ましくは90%よりも高く、95%より高いこともありうる。こうした同一性は、標準的なアラインメント法を用いて測定され、好ましくは、本明細書の発明の背景のセクションに記載のように、クッリックモア(Crickmore)らによる方法を用いる。生物学的活性の原因となるか、または最終的に生物学的活性に関係する三次元構造の決定に関与する重要な毒素領域では、アミノ酸の相同性が最も高い。この点に関し、活性に対して重要ではない領域に起きた置換であるか、分子の三次元構造に影響しないような保存的アミノ酸の置換である場合には、一定のアミノ酸置換は認められ、予想されうる。例えば、アミノ酸は、次のように分類できよう。すなわち、非極性、非荷電性、塩基性、および酸性。同じ分類の別のアミノ酸で置換される保存的置換は、置換によって化合物の生物学的活性が実質的に変化しない限り、本発明の範囲に含まれる。下記の表1に、それぞれの分類に属するアミノ酸の例を列挙する。
【表1】
Figure 0004542267
【0055】
場合によっては、非保存的な置換が行われることもある。重要な要素は、これらの置換によって、毒素の生物学的活性が有意に損なわれてはならないということである。
【0056】
本明細書において、「単離された」ポリヌクレオチド、および/または「精製された」毒素とは、天然に存在する別の分子と結合していないときのこれらの分子を意味する。したがって、「単離精製された」とは、本明細書にて述べた「人の手」が関与していることを示す。キメラ毒素および遺伝子も、「人の手」が関与する。
【0057】
組換え宿主
本発明の毒素コード遺伝子を、広い範囲の微生物宿主や植物宿主に導入することができる。毒素遺伝子を発現させると、殺虫因子が直接的または間接的に産生され維持される。宿主植物の形質転換は好ましい。毒素を発現する組換え植物を摂食する害虫は、それによって毒素に接触する。例えば、シュードモナスなどの適当な微生物宿主を用いて、該微生物を害虫のいる場所に散布し、そこで増殖させ摂取させることができる。任意の様々な方法によって、結果として害虫を制御することができる。あるいは、毒素遺伝子をもつ微生物を、毒素活性を持続させ、細胞を安定させる条件の下で殺し処理することができる。処理した細胞は、毒素活性を維持しているため、標的害虫の周囲に適用することができる。バチルス毒素はまた、遺伝子を微生物宿主中に適したベクターを介して導入し、かつその後、生物環境中において宿主を適用することによって適用される。
【0058】
遺伝子の維持と発現を安定させる条件の下で、毒素をコードするバチルス遺伝子を宿主中に導入するために、さまざまな方法が利用できる。これらの方法は、当業者によく知られており、例えば米国特許第5,135,867号に開示されており、これは参照として本明細書に組み入れられる。
【0059】
本発明の毒素と機能的に等価な合成遺伝子を用いて、宿主を形質転換することもできる。合成遺伝子を製造するための方法は、例えば米国特許第5,380,831号に見られる。好ましい態様において、本発明の遺伝子は植物における発現に最適化される。
【0060】
細胞の処理
上述したように、毒素活性の持続期間を延ばし、細胞を安定化させるために、バチルスまたはバチルス毒素を発現する組換え細胞を処理することができる。生成される殺虫因子の微小カプセルは、細胞構造内にバチルス毒素を含む。細胞構造は、安定化され、微小カプセルが標的害虫の周囲に散布されたとき毒素を保護する。適当な宿主細胞には原核生物も真核生物も含まれる。宿主として、特に重要なのは原核生物、および菌類のような下等真核生物である。処理を行うとき、細胞は通常、完全な状態の、胞子状態ではなく実質的に増殖形態にある細胞である。
【0061】
例えば、バチルス毒素遺伝子を含む微生物などの微生物細胞の処理は、毒素の性質を損なうような効果を与えたり、毒素を保護する細胞の能力を失わせたりしない限り、化学的方法、物理的方法、または、化学的および/または物理的方法を組み合わせた方法により行うことができる。微生物の細胞を処理する方法が、米国特許第4,695,455号と第4,695,462号で開示されており、これらは参照として本明細書に組み入れられる。
【0062】
害虫を駆除するための方法および製剤
本発明の毒素および遺伝子を用いた害虫の駆除は、当業者に既知のさまざまな方法によって行うことができる。これらの方法には、例えばバチルス単離株を害虫(またはそれらの居住場所)に施用すること、組換え微生物を害虫(またはそれらの居住場所)に施用すること、および本発明の殺虫性毒素をコードする遺伝子によって植物を形質転換することが含まれる。形質転換は、標準的な技術を用いて当業者が行うことができる。これらの形質転換に必要な材料は、本明細書において開示されており、あるいは当業者に容易に入手することができる。
【0063】
誘引剤およびバチルス単離株の毒素を含むよう製剤化された飼料用顆粒剤、または本明細書で開示されているバチルス単離株から得られる遺伝子を含む組換え微生物は、土壌に施用することができる。製剤化された製造物は、種子コートとして、または作物の周期の後期段階での根処理剤もしくは植物体全体の処理剤として施用することもできる。バチルスの細胞の植物処理剤および土壌処理剤は、無機性鉱物(フィロケイ酸、炭酸、硫酸、リン酸など)、または植物性材料(粉末のトウモロコシ穂軸、籾殻、クルミの殻など)のようなさまざまな不活性物質と混合することによって、可溶性の粉末、顆粒、または粉粒として用いることができる。この製剤は、展着補助剤、安定化剤、別の殺虫添加剤、または界面活性剤を含み得る。液体製剤は、水様または非水様で、泡剤、ゲル剤、懸濁剤、乳化濃縮剤などとして用いることができる。成分には、流動化剤、界面活性剤、乳化剤、拡散剤、またはポリマーを含み得る。
【0064】
当業者には理解されると思われるが、殺虫剤の濃度は各製剤の性質によって非常に多様であり、特に濃縮液であるか、直接用いられるかによって異なる。殺虫剤は、重量にして少なくとも1%は含まれ、100%含まれることもある。乾燥製剤では殺虫剤の重量の約1〜95%である一方、液体製剤では一般的に、液相中の固体重量にして約1〜60%である。細胞を含む製剤では、約102〜約104細胞/ mgである。これらの製剤は、1ヘクタール当り、約50 mg(液体製剤または乾燥製剤)から1 kg以上が投与される。
【0065】
製剤は、スプレーや空中散布、振りかけることなどにより、害虫のいる環境、例えば土壌および葉に投与することができる。
【0066】
ポリヌクレオチドプローブ
DNAが、塩基相補性と呼ばれる基本的性質をもつことはよく知られている。天然には、DNAは通常逆向きの平行鎖が対合した形で存在し、各鎖の塩基が一方の鎖から反対側の鎖に向かって突き出している。一方の鎖上のアデニン塩基(A)は、常に反対鎖上のチミン塩基(T)と向かい合っており、またグアニン塩基(G)は、シトシン塩基(C)と向かい合っている。これらの塩基は、このように特異的に水素結合できることによって並置される。各別の結合は比較的弱いが、隣り合う水素結合した多くの塩基の総じた効果は、塩基が重なり合う効果とともに、二本の相補鎖を安定して結合させる。これらの結合は、高いpHまたは高温などの処理によって破壊されるために、これらの処理は、二本鎖の解離、または「変性」をもたらす。そしてDNAは、塩基の水素結合が熱力学的に適した条件に置かれると、DNA鎖は、アニールまたは「ハイブリダイズ」して、本来の二本鎖DNAを再形成する。適切な条件下で行えば、このハイブリダイゼーションは高度に特異的である。すなわち、非常に高度な塩基相補性をもつ鎖のみが、安定した二本鎖構造を形成し得る。ハイブリダイゼーションの特異性と反応条件との関係は、よく知られている。したがって、ハイブリダイゼーションを用いて、二片のDNAが塩基配列において相補的であるか否かを調べることができる。このハイブリダイゼーション機構により、目的とするDNA鎖の検出および特徴づけを容易に行うための、本発明のプローブの使用が促される。
【0067】
プローブは、RNA、DNA、もしくはPNA(ペプチド核酸)である。このプローブは、通常は少なくとも約10塩基であり、より一般的には少なくとも約17塩基であり、約100塩基以上でもよい。これよりも長いプローブを容易に用いることができ、そのようなプローブは例えば数キロ塩基長でもよい。プローブの配列は、少なくとも目的の毒素をコードする遺伝子の一部に、実質的に相補的であるように設計する。このプローブは、ハイブリダイズする配列に対して完全に相補的である必要はない。プローブは、当業者に周知の技術を用いて標識することができる。
【0068】
本発明をプローブとして用いる方法の一つでは、まずバチルス単離株の遺伝子バンクのサザンブロット解析によって、開示されている塩基配列に相同的なDNAセグメントをすべて同定する必要がある。したがって、生物学的な解析による助けを受けずに、多くの新規バチルス単離株および、あるバチルス単離株によって発現される各遺伝子産物の考えられる活性を予め知ることが可能である。このようなプローブ解析により、さまざまなバチルスの亜種に含まれる、商業的価値をもつ可能性のある殺虫性毒素遺伝子を迅速に同定することができる。
【0069】
本発明に係る有用なハイブリダイゼーション法の一つは、典型的にはまず初めに、目的のDNAサンプルを単離して、化学的に精製する。溶菌したバクテリア、またはバクテリアから単離した全分画核酸のいずれかを用いることができる。細胞のDNA(および/またはRNA)を解離させる既知の技術を用いて、細胞を処理する。DNAサンプルは、適切な制限酵素によって断片に切断する。この断片は通常、アガロースまたはアクリルアミドのゲル電気泳動によって、大きさにより分離する。目的とする断片を、固定化用膜に移す。
【0070】
本発明には、特別のハイブリダイゼーション技術が必須というわけではない。ハイブリダイゼーション技術は、改良されて、容易に応用できるようになる。
【0071】
次に、ハイブリダイゼーション用緩衝溶液の中で、プローブおよびサンプルを結合させ、アニーリングが起こるまで、適当な温度に維持する。その後、膜から異物を洗い流し、残ったサンプルおよび結合したプローブ分子を、一般的にはオートラジオグラフィーおよび/または液体シンチレーション計測により、検出および定量する。当技術分野において周知のとおり、プローブ分子および核酸サンプルが、両分子間で強い非共有結合を形成してハイブリダイズすれば、このプローブおよびサンプルは、本質的に同一であると合理的に推定することができる。プローブの標識が検出可能なため、ハイブリダイゼーションが起きたか否かを既知の方法により判定できる。
【0072】
ヌクレオチドセグメントをプローブとして用いる場合、放射性標識および非放射性標識などの、当業者に既知の適切な標識によりプローブを標識する。典型的な放射性標識には、32Pや35Sなどがある。非放射性標識には、例えばビオチンまたはチロキシンなどのリガンド、およびヒドロラーゼまたはペルオキシダーゼなどの酵素、ならびにルシフェリンのようなさまざまな化学発光物質、またはフルオロセインやその誘導体のような蛍光化合物が含まれる。国際公開公報第93/16094号で説明されているように、プローブ自身を蛍光化することができる。
【0073】
さまざまな程度のハイブリダイゼーションストリンジェンシーを用いることができる。よりストリンジェントな条件にするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。ストリンジェンシーは、温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間などによって調節することができる。好ましくは、例えばケラー(Keller)、G.H., M.M. マナク(Manak)(1987)DNAプローブ(DNA Probes)、ストックトンプレス(Stockton Press)、ニューヨーク、NY., pp. 169〜170において説明されているような当技術分野において周知の技術によって、中度から高度のストリンジェントな条件の下でハイブリダイゼーションを行う。この文献は参照として本明細書に組み入れられる。
【0074】
本明細書で用いられる場合、ハイブリダイゼーションの「中度から高度のストリンジェントな」条件とは、本出願人によって用いられた条件と同一、またはほぼ同一のハイブリダイゼーションの特異性の程度を達成する条件を意味する。中度から高度のストリンジェントな条件の例を、本明細書にて提供する。具体的には、標準的方法(Maniatis et al.)により、サザンブロットにて固定したDNAを、32Pで標識した遺伝子特異的プローブにてハイブリダイズさせた。一般的に、例示した毒素遺伝子と相同性をもつ標的配列の検出を可能にする中度から高度のストリンジェントな条件の下で、ハイブリダイゼーション、続いて洗浄を行った。二本鎖DNA遺伝子プローブについては、6×SSPE、5×デンハルト溶液、0.1% SDS、0.1 mg/ml変性DNA中で、DNAハイブリッドの融解温度(Tm)よりも20〜25℃低い温度で、一晩ハイブリダイゼーションを行った。融解温度は、次の公式で示される(Beltz, G.A., K.A. Jacobs, T.H. Eickbush, P.T. Cherbas,およびF.C. Kafatos [1983] 酵素学の方法(Methods of Enzymology)、R. Wu, L. Grossman、およびK. Moldave [編] アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク、100:266〜285)。
Tm = 81.5℃ + 16.6 Log[Na+] + 0.41(%G+C) - 0.61(%ホルムアミド) - 600/二本鎖の塩基対の長さ。
【0075】
洗浄は、典型的には次のようにして行われる:
(1)1×SSPE、0.1% SDS中、室温で15分間を2回(低ストリンジェントな洗浄)。
(2)0.2×SSPE、0.1% SDS中、Tm-20℃で15分間を1回(中ストリンジェントな洗浄)。
【0076】
オリゴヌクレオチドプローブについては、6×SSPE、5×デンハルト溶液、0.1% SDS、0.1 mg/mlの変性DNAの中で、ハイブリッドの融解温度(Tm)よりも10〜20℃低い温度で一晩ハイブリダイゼーションを行った。オリゴヌクレオチドプローブのTmは、次の公式によって決定される:
Tm (℃)= 2(T/A塩基対の数) + 4(G/C塩基対の数) (Suggs, S.V., T. Miyake, E.H. Kawashime, M.J. Johnson, K. Itakura、およびR.B. Wallace [1981] ICN-UCLAシンポジウム・精製遺伝子を用いた発生生物学(ICN-UCLA Symp. Dev. Biol. Using Purified Genes)、D.D. Brown[編]、 アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク、23:683〜693)。
【0077】
洗浄は、典型的には次のようにして行われる:
(1)1×SSPE、0.1% SDS中、室温で15分間を2回(低ストリンジェントな洗浄)。
(2)0.2×SSPE、0.1% SDS中、Tmよりも10〜20℃低い温度で15分間を1回(中ストリンジェントな洗浄)。
【0078】
一般的に、ストリンジェンシーを変えるために、塩および/または温度を変えることができる。>70程度の塩基長をもつ標識DNA断片については、以下の条件を用いることができる:
低度: 1または2×SSPE、室温
低度: 1または2×SSPE、42℃
中度: 0.2×または1×SSPE、65℃
高度: 0.1×SSPE、65℃。
【0079】
二本鎖の形成および安定性は、ハイブリッド二本鎖の間の実質的な相補性に依存し、前記のように、ある程度のミスマッチは許容されうる。したがって、本発明のプローブ配列には、突然変異(1箇所および複数)、欠失、記載の配列の挿入、およびこれらを組み合わせたもので、該突然変異、挿入、および欠失によっても、目的とする標的ポリヌクレオチドと安定したハイブリッドの形成が可能なものが含まれる。多くの方法により、突然変異、挿入、および欠失を、所定のポリヌクレオチド配列の中に作出することができ、これらの方法は、通常の技術をもつ当業者にも知られている。別の方法も、将来的には知られるようになると思われる。
【0080】
このように、開示した塩基配列の突然変異配列、挿入変異配列、欠失変異配列は、当業者に周知の方法によって、容易に調製することができる。これらの変異配列は、変異配列が本来の配列と実質的な配列相同性をもつ限り、例示されているプライマー配列と同じように用いることができる。本明細書にて用いられる場合、実質的な配列相同性とは、変異プローブが本来のプローブと同じ能力で機能することが十分に可能な相同性ということを意味する。好ましくは、この相同性は50%よりも高く、より好ましくは、この相同性は75%よりも高く、また最も好ましくは、この相同性は90%よりも高い。変異配列が、意図した能力で機能するために必要とされる相同性または同一性の程度は、配列の使用目的に依存する。配列の機能が向上するよう、または方法論的な利点を提供するように設計された突然変異、挿入変異、および欠失変異を作出することは、当技術分野の通常の技術を有する当業者の技術範囲の中に十分含まれる。
【0081】
PCR 技術
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、繰り返し酵素的に開始される核酸配列の合成である。この手順はよく知られており、当業者によって一般的に用いられている(Mullis、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、第4,800,159号;Saiki, Randall k., Stephen Scharf, Fred Faloona, Kary B. Mullis, Glenn T. Horn, Henry A. Erlich, Norman Arnheim [1985] 「β-グロビンのゲノム配列の酵素的増幅および鎌状血球貧血の診断のための制限酵素部位解析(Enzymatic Amplification of β-Globin Genomic Sequence and Restriction Site Analysis for Diagnosis of Sickle Cell Anemia)」 Science 230:1350-1354を参照のこと)。PCRは、標的配列の反対鎖にハイブリダイズする2つのオリゴヌクレオチドプライマーにはさまれる、目的のDNA断片の酵素的な増幅に基づいている。プライマーは、お互いに向かった3'末端を持つように方向が決められている。鋳型の熱変性、それらの相補配列へのプライマーのアニーリング、およびDNAポリメラーゼによる、アニールしたプライマーの伸長というサイクルを繰り返すことによって、PCRプライマーの5'末端によって区切られたセグメントが増幅される。各プライマーの伸長産物が、もう一方のプライマーの鋳型として働くので、各サイクルにおいて実質的に、その前のサイクルで産生されたDNA断片の量の倍になる。この結果、特異的な標的断片が、数時間の内に数百万倍まで、指数関数的に蓄積する。好熱細菌サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)から単離されたTaqポリメラーゼなどの熱安定性DNAポリメラーゼを用いることにより、増殖処理を完全に自動化することができる。使用することのできるこの他の酵素は、当業者に公知である。
【0082】
本発明のDNA配列は、PCR増幅用のプライマーとして用いることができる。PCR増幅を行うとき、プライマーと鋳型との間における、ある程度のミスマッチは許容することができる。したがって、例示したプライマーの突然変異、欠失、および挿入(特に、5'末端へのヌクレオチドの付加)は、本発明の範囲内に含まれる。通常の技術をもつ当業者に公知の方法によって、所定のプライマーに突然変異、欠失、および挿入を作出することができる。
【0083】
本明細書において引用されている参考文献はすべて、参照として本明細書に組み入れられる。
【0084】
以下は、本発明を実施するための処理手順を示した実施例である。これらの実施例は、制約的なものと考えるべきではない。別途記載がないかぎり、百分率はすべて重量により、溶媒の混合比率はすべて容量によるものである。
【0085】
実施例 1 ―本発明による有用なバチルス・ラテロスポルス単離株の培養
天然のバチルス・ラテロスポルス株、ならびにMISおよびWAR毒素を発現する組換えB.t.株を、TB(+グリセロール)液体培地中にて30℃および300RPMで25時間培養した。遠心処理によって細胞をペレット化し、上清(「SN」)をデカントして蓄えた。EDTAを1mMとなるように添加し、試料を-20℃で保存した。バイオアッセイでは回収した同日に新鮮な試料を用いた。凍結試料は、4℃で解凍し、遠心処理によってペレット化して固形物を除去した上でバイオアッセイ法または分画に用いた。
【0086】
実施例 2 ―ゲノム DNA の調製およびサザンブロット解析
ルリア・ベルターニ(LB)培地中で600nmの可視光下での光学密度が0.5〜0.8になるまで増殖させた種々のバチルス・ラテロスポルス株から全細胞DNAを調製した。DNAは、キアゲンDNAゲノミックチップ500/Gキット(Qiagen Genomic-tip 500/G kit)またはキアゲンDNAゲノミックチップ20/G、およびゲノムDNA緩衝液セット(Genomic DNA Buffer Set)(Qiagen Inc.、Valencia、CA)を、グラム陽性菌に対する手順に従って用いて抽出した。標準的な方法を用いて、調製した全ゲノムDNAを種々の制限酵素で消化し、0.8%アガロースゲル上での電気泳動にかけ、裏付(supported)ナイロン膜に固定した(Maniatis, T.、E.F. Fritsch、J. Sambrook[1982]「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY)。32P標識プローブを用いた標準的なサザンハイブリダイゼーション、またはDIG核酸標識・検出システム(Boebringer Mannheim;Indianapolis、IN)を用いる非放射性手法により、新規毒素遺伝子が検出された。
【0087】
約2.6kbpのMISプローブを配列番号:1に示す。約1.3kbpのWARプローブを配列番号:2に示す。これらのプローブは、「遺伝子合成装置(gene machine)」の使用を含むさまざまな方法で調製可能であるが、それらをB.t.単離株PS177C8からクローニングし、各遺伝子の5'および3'末端と相同なプライマーを用いてPCR増幅を行うこともできる。後者の場合には、DNA断片をゲル精製し、約25ngの各DNA断片を放射性検出のために32Pでランダムに標識化した。非放射性検出のためには、約300ngの各DNA断片をDIGハイ・プライム(DIG High Prime)キットでランダムに標識した。固定化DNAとランダムに標識したP32プローブとのハイブリダイゼーションは、以下の標準的なホルムアミド条件で行った:50%ホルムアミド、5×SSPE、5×デンハルト溶液、2%SDS、0.1mg/ml、42℃で一晩。ブロットを2×SSC、0.1%SDS、42℃の低ストリンジェントな条件下で洗浄し、フィルムに露出させた。
【0088】
MISまたはWARプローブのいずれか(表記の通り)によって検索したサザンブロット解析によって決定した、バチルス・ラテロスポルスMB438株およびMB439株由来の全細胞DNAの制限酵素断片長多型(RFLP)の結果を、以下の表2に示す。各バンドは、関心対象のMIS様またはWAR様オペロンの断片を少なくとも1つ含む。
【表2】
Figure 0004542267
【0089】
実施例 3 ―毒素遺伝子のクローニング
部分的に消化し、サイズ分画を行った9〜20kbの範囲のサイズのDNAから、バチルス・ラテロスポルスMB439株またはMB438株由来の全ゲノムDNAのラムダライブラリーを調製した。消化したDNAのサイズを望ましい範囲に最適化するために、1:10に希釈したNdeII酵素(約0.5単位)を用いて明確な消化時間を測定した。適切な時間をかけてDNAを消化した後に、0.7%アガロースゲル上で分離した。臭化エチジウム染色を用いてDNAを可視化し、9〜20kbpの範囲のサイズにあるDNAをゲルから切り出した。このゲル断片を、2mlの10mM Tris-HCl、1mM EDTA緩衝液、pH 8.0(TE)とともに透析チューブ(カットオフ値12〜14,000MW)に入れた。0.1×TAR緩衝液中でゲル断片から約30mAで1時間、DNAを電気的に溶出させた。DNAをチューブから出してTE緩衝液中に移し、エルチップ(Elutip)カラムおよびプロトコール(Schleicher and Schuell;Keene、NH)を用いて精製した。精製したDNAはエタノールで沈殿させ、10ul TE中に再懸濁した。
【0090】
精製し、分画したDNAを、BamHIで消化したラムダGEM-11アーム(Promega Corp.、Madison、WI)中にプロトコールに従ってライゲーションを行った。続いて、ライゲーションを行ったDNAを、ギガパックIIIゴールドパッケージングエキストラクト(Gigapack III Gold packaging extract)(Stratagene Corp.、La Jolla、CA)を用いてラムダファージ中にパッケージングした。大腸菌KW251株をパッケージングエキストラクトに感染させ、LBトップアガロースの入ったLBプレートに播いた。プラークをニトロセルロースフィルター上に移し、標準的な方法を用いてハイブリダイゼーション用に調製した(Maniatisら、前記)。32P標識プローブ(上記参照)を調製し、フィルターとハイブリダイズさせ、上記の通りに洗浄した。フィルターをコダック(Kodak)XAR-5フィルムに露出することにより、望ましいクローンを含むプラークを可視化した。プラークをプレートから単離し、ファージを寒天からSM緩衝液中に再懸濁した。ラムダソーブ(LambdaSorb)ファージ吸着剤(Promega、Madison、WI)を用いてファージ由来のDNAを調製した。ファージDNAが標的オペロンを含むことを確認するために、それに対して配列番号:3および配列番号:4をプライマーとして用いるPCRを行った。PCR反応によっていずれのDNA試料にも1kbバンドが得られ、このことから、これらのクローンがmis型遺伝子を含むことが再確認された。さらなる分析および発現のために、細菌ベクター中へのサブクローニングを引き続いて行えるような、関心対象のオペロンを含むより小型のDNA断片を同定するために、ファージDNAを種々の酵素で消化し、1%アガロースゲル上で分画した上で、サザン解析のためのブロッティングを行った。サザン解析は上記の通りに行った。MB438に関しては約10kbのサイズのHincII断片が同定された。この断片をゲル精製し、pBluescriptII(SK+)のEcoRV部位にクローニングした。この結果得られたプラスミドをpMYC2608と命名し、このプラスミドを含む組換え大腸菌株をMR957と命名した。
【0091】
実施例 4 MB438 MIS および WAR 遺伝子のシークエンシング
PCRで増幅したDNA断片上のMB438 mis遺伝子に関する部分DNA配列を決定した。MB438およびMB439由来の全細胞ゲノムDNAに対して、MISプライマー(配列番号:3および配列番号:4)を用いるPCRを行った。MB438からは約1kbpのDNA断片が得られ、これを続いて、供給元(Invitrogen、San Diego、CA)による記載の通りにPCR DNA TA-クローニングプラスミドベクターpCR2.1中にクローニングした。プラスミドをMB438 PCRの組換えクローンから単離し、プラスミドベクタープライマーT3およびT7を用いるPCRにより、約1kbpインサートの有無を検討した。続いて、QIAGEN(Santa Clarita、CA)社のミニプレップ(miniprep)キットを供給元による記載の通りに用いて、インサートを含むものをシークエンシング用鋳型として用いるために単離した。シークエンシング反応は、PEアプライドバイオシステムズ(PE Applied Biosystems)社のダイ・ターミネーター・サイクルシークエンシング・レディ・リアクションキット(Dye terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit)(Perkin-Elmer)を用いて行った。シークエンシング反応をABI PRISM 377自動シークエンサーで行った。配列データの収集、編集および構築には、PE ABI PRISM 377コレクション、ファクツラ(Factura)、およびPE ABI社のオートアセンブラ(AutoAssembler)ソフトウエアを用いた。MB438 mis型遺伝子の部分ヌクレオチド配列を配列番号:5として示す。
【0092】
MB438 MISおよびWAR遺伝子の完全配列は、pMYC2608から得たランダムな制限酵素断片からの配列データの構築、およびpMYC2608におけるDNAインサートのプライマーウォーキング法によって決定した。プラスミドpMYC2608由来の挿入DNAは、ポリリンカー制限酵素NotIおよびApaIを用いたベクターからの切り出し、0.7%アガロースゲル上での分離、およびQiaexIIキット(Qiagen Inc.;Valencia、CA)を用いたアガロースゲルからの精製によって単離した。続いて、ゲル精製した挿入DNAを制限酵素AluI、MseIおよびRsaIで消化し、1%アガロースゲル上で分離した。0.5〜1.5kbの範囲のDNA断片をゲルから切り出し、QiaexIIキットを用いて精製した。回収した断片をEcoRVで消化したpBluescriptII中にライゲーションし、XL10 Gold細胞への形質転換を行った。無作為に選択した形質転換株からミニプレップDNAを調製し、インサートを確認するためにNotIおよびApaIで消化した上で、シークエンシングに用いた。シークエンシング反応はdローダミン(dRhodamine)シークエンシングキット(ABI Prism/Perkin Elmer Applied Biosystems)を用いて行った。プロトコール(ABI Prism)に従って、配列をシークエンシングゲル上で泳動させ、ファクツラ(Factura)およびオートアセンブラ(AutoAssembler)プログラム(ABI Prism)を用いて分析した。MB438 mis遺伝子の完全ヌクレオチド配列を配列番号:6として示し、推定されるMB438 MISペプチド配列を配列番号:7として示す。MB438 war遺伝子の完全ヌクレオチド配列を配列番号:8として示し、推定されるMB438 WARペプチド配列を配列番号:9として示す。
【0093】
MB439 mis遺伝子の部分DNA配列を、PCRで増幅したDNA断片から決定した。MB439由来の全細胞ゲノムDNAに対して、配列番号:3および配列番号:4のプライマーを用いるPCRを行った。約1kbpのDNA断片が得られ、続いてこれを、供給元(Invitrogen、San Diego、CA)による記載の通りにPCR DNA TA-クローニングプラスミドベクターpCR-TOPO中にクローニングした。プラスミドをMB439 PCRの組換えクローンから単離し、プラスミドベクタープライマーT3およびT7を用いるPCRにより、約1kbpインサートの有無を検討した。続いて、QIAGEN(Santa Clarita、CA)社のミニプレップ(miniprep)キットを供給元による記載の通りに用いて、インサートを含むものを、シークエンシング用鋳型として用いるために単離した。シークエンシング反応は、PEアプライドバイオシステムズ(PE Applied Biosystems)社のダイ・ターミネーター・サイクルシークエンシング・レディ・リアクションキット(Perkin-Elmer)を用いて行った。シークエンシング反応をABI PRISM 377自動シークエンサーで行った。配列データの収集、編集および構築には、PE ABI PRISM 377コレクション、ファクツラ(Factura)、およびPE ABI社のオートアセンブラ(AutoAssembler)ソフトウエアを用いた。MB439 mis遺伝子の部分ヌクレオチド配列を配列番号:10として示す。
【0094】
実施例 5 ―バチルス・チューリンゲンシス( Bacillus thuringiensis )における発現のための MB438 MIS および WAR 毒素のサブクローニング
B.t.におけるMB438 MISおよびWAR毒素の発現は、クローニングしたゲノムDNA断片を、大腸菌およびB.t.宿主の両方で複製可能な高コピー数のシャトルベクター中にpMYC2608からサブクローニングすることによって行った。シャトルベクターpMYC2614は、pHT370(O. ArantesおよびD. Lereclus. 1991. Gene 108:115〜119)を改変したものであり、pBluescript II(Stratagene)のマルチクローニング部位の領域を含む。warおよびmis遺伝子を含むゲノムDNAインサートをNotIおよびApaI制限酵素を用いてpMYC2608から切り出し、ゲル精製した上で、pMYC2614のNotIおよびApaI部位とライゲーションした。この結果得られたB.t.シャトルプラスミドをpMYC2609と命名した。
【0095】
B.t.におけるMB438毒素遺伝子の発現を検討するために、エレクトロポレーションによってpMYC2609を非結晶性(Cry-)B.t.宿主であるCryB(A. Aronson、Purdue University、West Lafayette、IN)に形質転換した。この組換え株をMR557と命名した。PS177C8 WAR毒素に対して産生させた抗体によるイムノブロット法により、WAR毒素の発現が示された。MR557からの培養上清および細胞ペレット調製物を、以下の実施例8の記載の通りに、西部ハムシモドキ幼虫に対してアッセイした。
【0096】
実施例 6 MB438 および MB439 の西部ハムシモドキ幼虫でのバイオアッセイ法
実施例1における記載の通りに調製した上清試料を、215μl/1.36cmの比率で人工飼料の上にかけた。続いて、これらの調製物を生まれたばかりの西部ハムシモドキ幼虫に感染させ、25℃の暗所に4日間おいた。別に記す場合を除き、試料は感染後第4日における死亡率に関して評価した。
【0097】
表3は、MB438およびMB439の経時的推移に関するものである。MB438およびMB439では、22〜30h(MB438)および24〜39h(MB 439)の前後に活性の出現が認められる。菌株はすべてTBG培地上で増殖させた。これらの試料にはいずれも熱処理を行っていない。
【表3】
Figure 0004542267
【0098】
表4に報告した結果は、加熱によって、24時間および48時間培養したMB438およびMB439の新鮮な非熱処理試料にみられた活性の大部分またはすべてが消失することを示している。
【表4】
Figure 0004542267
【0099】
表5に報告した結果は、MB438およびMB439の活性が用量反応性であることを示している。菌株はすべてTBG培地上で増殖させた。これらの試料にはいずれも熱処理を行っていない。試料はすべて24時間培養したものである。
【表5】
Figure 0004542267
【0100】
実施例 7 ―分画試料の西部ハムシモドキ幼虫でのバイオアッセイ法
透析試料に関しては、培養上清のアリコートをセルロース透析チューブに移し、4℃で一晩攪拌しながら、25mM NaPO、1mM EDTA、pH 7に対して透析した。これにより、透析膜の指定分子量カットオフ値よりも小さいSNの流動性成分が除去される。孔径は6〜8kDおよび50kDであり、これらの試料は透析膜内に保持された成分の活性に関して検討されるもので「高分子量」と称してもよい。
【0101】
低分子量画分は、孔径1、3または10kDの膜を介した窒素ガス圧による4℃での限外濾過(「UF」)によって得た。この方法により、UF膜の指定分子量カットオフ値よりも小さな上清成分を含む溶液が得られた。これらの溶液を「透過液」と称する。
【0102】
表6に報告した結果は、MB438およびMB439の10kD未満の成分が活性を呈することを示している。すべての試料はTBG培地上で増殖させた。これらの試料にはいずれも熱処理を行っていない。試料はすべて24時間培養したものである。
【表6】
Figure 0004542267
【0103】
表7に報告した結果は、MB438およびMB439の10kD未満の成分が活性を呈し、それが高熱によって緩和され、かつ透析によって低分子量成分を除去しても活性は消失しないことを示している。試料はすべてTBG培地上で増殖させた24時間培養物である。
【表7】
Figure 0004542267
【0104】
表8に報告した結果は、MB438およびMB439が、1kD UF膜を透過しない10kD未満の成分に活性を有することを示している。試料はすべてTBG培地上で増殖させた24時間培養物である。
【表8】
Figure 0004542267
【0105】
実施例 8 MR957 および MR557 の生物活性
MR957の培養物を、16×150mmの蓋付プラスチックチューブに入れた5.0mlの培地(Difco TB premix;4g/lのグリセロール)中で増殖させた。培養物は回転ドラムによって37℃で24時間攪拌した。遠心処理によって細胞をペレット化し、上清をデカントして蓄えた。EDTAを1mMとなるように添加し、試料を20℃で保存した。細胞密度の測定に関しては、試料をボルテックス処理し、100μlの各培養液をファルコンチューブ(14mL;17×100mm)に移した。各チューブに4.9mLの蒸留水を添加することによって1:50希釈液を調製し、再びボルテックス処理を行った。ODの読み取りは分光光度計を600nmで用いることによって行った。組換えB.t.株は実施例1における記載の通りに増殖させた。
【0106】
大腸菌MR957クローンおよびB.チューリンゲンシスクローンMR557(それぞれMB438 misおよびwar遺伝子を含む)に関する西部ハムシモドキ幼虫のバイオアッセイは、本質的には実施例6に記載したものと同じ実験設計を用いて行った。MR948およびMR539は、毒素遺伝子インサートをもたないクローニングベクターを含む陰性対照株とした。大腸菌株の試験に関しては、上清または全培養試料は215ul/1.36cmの量を飼料の表面に適用し、細胞ペレット試料は5倍に濃縮した上で50ul/l.36cmの用量を飼料の上にかけた(表9)。B.t.株の試験に関しては、上清または全培養試料は215ul/1.36cmの用量を飼料の表面に適用し、細胞ペレット試料は5倍に濃縮した上でさまざまな比率で飼料の上にかけた(表10)。試料が気化した直後に幼虫約6〜8匹を飼料の上に移した。仮止め用鉄器具を用いてバイオアッセイ用プレートをマイラーシートで密封し、ガス交換が得られるように各ウェルの上部に針穴を開けた。試験開始から4日後の死亡率を評価した。
【0107】
これらの両方の試験の結果は、クローニングされたMB438 misおよびwar遺伝子が、CRWの相対的に高い死亡率の一因となることを示している。表9は、大腸菌粗培養調製物中にあるクローニングされたMB438毒素の西部ハムシモドキ幼虫に対する質的活性を示している。
【表9】
Figure 0004542267
【0108】
表10は、B.t.粗培養調製物中にあるクローニングされたMB438毒素の西部ハムシモドキ幼虫に対する用量依存的活性を示している。表9および表10において、太字の数字は死亡率であり、括弧内の数字は死亡した幼虫の数を試験に用いた幼虫の総数で割った値を示している。
【表10】
Figure 0004542267
【0109】
実施例 9 植物への毒素遺伝子の挿入
本発明の一つの局面は、本発明の殺虫性毒素をコードする遺伝子によって植物を形質転換することである。形質転換された植物は、標的害虫による攻撃に対して抵抗性である。
【0110】
当技術分野において周知のさまざまな技術を用いて、本明細書で開示されている殺虫性毒素をコードする遺伝子を植物細胞に挿入することができる。これらの技術には、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を形質転換因子として用いた、T-DNAによる形質転換、融合、インジェクション、バイオリスティクス(マイクロパーティクルガン)、またはエレクトロポレーション、ならびにその他に可能な方法が含まれる。
【0111】
形質転換にアグロバクテリウムを用いる場合には、挿入するDNAを特別のプラスミド、すなわち、中間ベクター、またはバイナリベクター中にクローニングしておかなければならない。T-DNA中の配列に相同な配列による相同的組換えによって、TiまたはRiプラスミドの中に、中間ベクターが組み込まれる。TiまたはRiプラスミドは、T-DNAの移行に必要なvir領域も含んでいる。中間ベクターは、アグロバクテリウムの中で自己複製することはできない。中間ベクターは、ヘルパープラスミド(接合)という手段によって、アグロバクテリウム・ツメファシエンス中に移行させることができる。バイナリベクターは、大腸菌の中でも、アグロバクテリウムの中でも自己複製することができる。それらは、右側および左側のT-DNA境界領域によって仕切られた、選択マーカー遺伝子およびリンカーもしくはポリリンカーを含んでいる。これらは、直接アグロバクテリウムの中に形質転換することができる(Holstersら、[1978] Mol. Gen. Genet. 163:181〜187)。宿主細胞として用いられるアグロバクテリウムは、vir領域をもつプラスミドを含んでいる。vir領域は、T-DNAを植物細胞の中に移行させるのに必要である。付加的なT-DNAを含んでいてもよい。このようにして形質転換したバクテリアを、植物細胞の形質転換に用いる。植物細胞の中にDNAを移行させるために、植物の外植片をアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefacies)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)とともに、都合よく培養することができる。そして、選抜のための抗生物質または殺生物剤を含む適当な培地の中で、感染した植物材料(例えば、葉片、茎の分節、根、ならびにプロトプラストまたは懸濁培養細胞)から全植物体を再生させることができる。そして、このようにして得られた植物を、挿入DNAが存在するかどうか調べることができる。
【0112】
インジェクションおよびエレクトロポレーションの場合には、プラスミドに特別に必要とされるものはない。例えば、pUC誘導体などの通常のプラスミドを用いることが可能である。バイオリスティクスによる形質転換では、プラスミドDNAまたは直鎖DNAを用いることができる。
【0113】
大腸菌の複製システムと、形質転換した細胞を選択を可能にするマーカーとを含む、多数のクローニングベクターを、高等植物の中に外因性遺伝子を挿入したものを調製するために利用することができる。このベクターは、例えば、pBR322、pUCシリーズ、M13mpシリーズ、pACYC184などを含む。したがって、バチルス毒素をコードする配列を、ベクターの適切な制限酵素部位に挿入することができる。この結果できたプラスミドを用いて、大腸菌を形質転換させる。適当な栄養培地で大腸菌を培養してから、回収して溶菌する。プラスミドを回収する。解析方法として、配列解析、制限酵素解析、電気泳動、およびその他の生化学的、分子生物学的手法が、一般的に用いられる。各操作の後、用いたDNA配列を切断して、次のDNA配列に連結させることができる。各プラスミドの配列は、同一の、または別のプラスミドにクローニングすることができる。望ましい遺伝子を植物の中に挿入する方法によっては、別のDNA配列が必要となると思われる。例えば、TiまたはRiプラスミドが、植物細胞の形質転換に用られる場合、挿入する遺伝子の隣接領域として、TiまたはRiプラスミドのT-DNAの少なくとも右側の境界配列、多くは左右の境界配列を連結させる必要がある。
【0114】
植物細胞の形質転換のためにT-DNAを使用することが、盛んに研究されており、欧州特許第120 516号;Hoekema (1985) :バイナリ植物ベクターシステム(The Binary Plant Vector System)、Offset-durkkerij Kanters B.V., Alblasserdam, 第5章;Fraleyら、Crit. Rev. Plant. Sci. 4:1〜46;およびAnら、(1985) EMBO J. 4: 277〜287で十分に説明されている。
【0115】
挿入DNAが、一旦ゲノムに組み込まれると、そこで比較的安定し、原則として再び出てくることはない。挿入されるDNAは通常、形質転換された植物細胞に殺生物剤または抗生物質に対する抵抗性を付与する選抜マーカーを含んでおり、これらにはとりわけ、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、またはクロラムフェニコールなどがある。したがって、それぞれに用いられるマーカーは、挿入DNAを含まない細胞を選抜するのではなく、形質転換された細胞の選抜を可能にするものでなければならない。
【0116】
形質転換された細胞を、通常の方式で、形態学的に正常な植物に再生させる。形質転換が生殖細胞系列に関わるときには、挿入DNAおよび対応する表現形質とが、後代の植物に伝達される。このような植物は、正常な方式で成長させることができ、形質転換されたものと同じ遺伝的因子、またはその他の遺伝的因子をもつ植物と交配させることができる。この結果できる雑種個体は、対応する表現型特性をもっている。
【0117】
本発明の好ましい態様において、植物に最適なコドンが使用されている遺伝子により、植物を形質転換することができる。例えば、米国特許第5,380,831号を参照のこと。
【0118】
本明細書にて述べた実施例および態様は、例示する目的のためだけのものであって、この観点からのさまざまな修飾あるいは変更が、当業者に示唆され、本出願の精神および範囲ならびに特許請求の範囲に含まれることを理解されたい。
【配列表】
Figure 0004542267
Figure 0004542267
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Figure 0004542267
Figure 0004542267

Claims (3)

  1. 以下からなる群より選択されるタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド:
    a. 配列番号:7と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:7によって定義される毒素の毒物活性を保持する、害虫であるハムシモドキ幼虫(corn rootworm)に対して毒物活性を有するタンパク質;
    b. 配列番号:9と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:9によって定義される毒素の毒物活性を保持する、害虫であるハムシモドキ幼虫に対して毒物活性を有するタンパク質;
    c. 配列番号:9のアミノ酸配列を含むタンパク質;ならびに
    d. 配列番号:7のアミノ酸配列を含むタンパク質。
  2. 請求項1記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、植物細胞または細菌性細胞。
  3. 請求項1記載のポリヌクレオチドによってコードされる単離されたタンパク質。
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