JP4538791B2 - 発振装置および弾性表面波素子の駆動方法 - Google Patents

発振装置および弾性表面波素子の駆動方法 Download PDF

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Description

本発明は、発振装置および弾性表面波素子の駆動方法に係り、特に電子機器の小型化、薄型化に好適な発振装置および弾性表面波素子の駆動方法に関する。
発振装置(回路)は現在、テレビ、携帯電話をはじめとする様々な無線通信機器の心臓部として用いられている。無線通信機は従来、その送信周波数帯および受信周波数帯が1つの周波数帯に決定されており、それを変更することはできなかった。したがって、2周波数帯を規定している無線通信機では、高い周波数帯を使用する送信機は高い周波帯を使用する受信機と、低い周波帯を使用する送信機は低い周波帯を使用する受信機とでなければ通信することができない。このため、無線通信を行うには、送信側と受信側とで周波数帯の合った通信機を選択する必要があった。
このような事情を鑑み、特許文献1のような無線通信機が提案されている。特許文献1に記載の無線通信機は、高い周波数帯の信号を受信/送信するための帯域フィルタと、低い周波数帯の信号を受信/送信するための帯域フィルタとを備え、送信又は受信する信号の周波数に応じて使用する帯域フィルタを切り替えることを可能な構成とした無線通信機である。
このような構成の無線通信機によれば、送信又は受信する信号の周波数帯に応じて相手方(通信機)の周波数帯を切り替えることができ、送信側と受信側との使用周波数帯を必要に応じて切り替えることが可能となり、1つの無線通信機で2つの周波数帯の信号に対応することができる。
特開平6−132847号公報
特許文献1に記載の無線通信機によれば、確かに2つの周波数帯の通信を1つの無線通信機によって担うことができる。
しかし近年、通信機器は小型化、薄型化を望まれる傾向が強く、携帯型の無線通信機器に関しては特にその傾向が強い。これに対し、特許文献1に記載の無線通信機は、複数の周波数帯に対応する帯域フィルタ、及びその周辺部品を備える分だけ、従来の無線通信機よりも部品数が多くなる。このことは、従来の無線通信機よりも大型化になることを意味し、市場の傾向に反することとなる。もちろん、従来の無線通信機を複数所持するよりも、その容積ははるかに縮減されるのは確かであるが、通信機自体が大型化されることは望まれることではない。
本願出願人は、複数の周波数帯の電波を1つの送受信機で、送受信し、しかも従来と変わらず小型・薄型な送受信機を提供するためには、無線通信機の心臓部である発振装置において複数の周波数帯の信号を発振することが出来れば良いと考えた。そこで、本発明では、1つの発振装置にて、周波数の異なる複数の高周波信号を出力することができる発信装置および弾性表面波素子の駆動方法を提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
第1の形態の弾性表面波素子の駆動方法は、圧電基板の一主面に複数の櫛歯状電極トランスデューサが並列に配設された弾性表面波素子の駆動方法であって、前記複数の櫛歯状電極トランスデューサの中から連続して隣り合う複数の櫛歯状電極トランスデューサを選択し、選択した前記櫛歯状電極トランスデューサに対して高周波信号を印加して弾性表面波を前記圧電基板の前記主面に励起させることを特徴とする弾性表面波素子の駆動方法。
また、適用例として、上記目的を達成するための本発明に係る発振装置は、1つの圧電基板の一主面に、パターン電極によって構成される少なくとも一対の反射器と、2つの櫛歯状電極の対から構成され、対を成す前記反射器の間に配設された複数の櫛歯状トランスデューサとを備えた弾性表面波素子と、前記複数の櫛歯状電極トランスデューサの1つである第1の櫛歯状電極トランスデューサと並列接続した増幅器と、前記複数の櫛歯状電極トランスデューサのうち前記第1の櫛歯状電極トランスデューサ以外の他の複数の前記櫛歯状電極トランスデューサと前記増幅器との間に設けられた接続切替回路と、を有する発振装置であって、前記接続切替回路は、前記第1の前記櫛歯状電極トランスデューサに隣接して連なる任意の数の前記他の櫛歯状電極トランスデューサを選択して、選択された前記他の櫛歯状電極トランスデューサを前記増幅器に並列接続可能であることを特徴とする。
また、上記のような構成の発振装置では、前記複数の櫛歯状電極トランスデューサは、互いに対応する位置に形成された前記櫛歯状電極の電極指が同一線上となるように形成されていると良い。
上記のような構成の発振装置によれば、弾性表面波素子の主面に配設された複数の櫛歯状電極トランスデューサに対して選択的に高周波信号を印加させることができる。このため、1つの弾性表面波素子によって共振周波数の異なる複数の弾性表面波を選択的に励起させることができる。よって、1つの発振装置にて、周波数の異なる複数の高周波信号を出力することができることとなる。
また、上記構成の発振装置によれば、発振中、少なくとも1つの櫛歯状電極トランスデューサに対しては継続的に高周波信号が印加されることとなるため、発振モードの切り替え(共振周波数の切り替え)時に、発振が瞬断される虞が無い。このため、発振モードの切り替え時に出力位相のズレを生じる事も無い。
また、上記のような構成の発振装置では、前記接続切替回路は、選択された前記他の櫛歯状電極トランスデューサの中から、任意の櫛歯状電極トランスデューサを構成する一対の櫛歯状電極のそれぞれを前記増幅器の入力側と出力側とに切替接続可能な構成とすると良い。
このような構成とすることにより、弾性表面波素子を構成する圧電基板上に、位相が180°ズレた弾性表面波を励起させることが可能となり、任意の共振周波数において、弾性表面波の伝搬効率を向上させることが可能となる。
また、前記櫛歯状電極トランスデューサは、櫛歯状電極の電極指の交差幅を同一に構成すると良い。
上記構成により、各櫛歯状電極トランスデューサによる発振を同期させることができるとともに、周波数精度、周波数偏移精度を向上させることができる。これは、弾性表面波素子における櫛歯状電極トランスデューサは、その交差幅を変えることによって出力する周波数に僅かな変化を起こさせることによる。このため、櫛歯状電極の電極指の交差幅を調整(制御)することにより、所望の周波数精度を実現させることができる。
また、本発明に係る弾性表面波素子の駆動方法は、圧電基板の一主面に複数の櫛歯状電極トランスデューサが並列に配設された弾性表面波素子の駆動方法であって、前記複数の櫛歯状電極トランスデューサの中から1つ又は連続して隣り合う複数の櫛歯状電極トランスデューサを選択し、選択した前記櫛歯状電極トランスデューサに対して高周波信号を印加して弾性表面波を前記圧電基板の前記主面に励起させることを特徴とする。
上記構成の弾性表面波素子の駆動方法において、前記高周波信号は、隣り合う前記櫛歯状電極トランスデューサ毎に位相を逆転させた信号であると良い。
また、選択した前記複数の櫛歯状電極トランスデューサは、連続して隣り合う複数の前記櫛歯状電極トランスデューサからなる組を複数有し、同じ前記組内の前記各櫛歯状電極トランスデューサに同位相の前記高周波信号を与え、隣接した前記組のそれぞれに互いに位相が逆転した前記高周波信号を与えても良い。
また、前記複数の組それぞれの前記櫛歯状電極トランスデューサの数は、互いに等しくしても良い。
以下、本発明の発振装置および弾性表面波素子の駆動方法に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明に係る一部の実施形態にすぎず、本発明の技術的範囲は以下の実施形態のみに限定されるものでは無い。
図1を参照して、本発明の発振装置に使用する弾性表面波素子(Surface Acoustic Wave:SAW素子)10について説明する。本実施形態に示すSAW素子10は、圧電基板12と、前記圧電基板12の一主面に導電性パターンによって形成された反射器14(14a〜14f)と、前記反射器14と同様に導電性パターンによって形成された櫛歯状電極トランスデューサ(Interdigital Transducer:IDT)16(16a〜16f)とを基本的な構成とする。
前記圧電基板12は、圧電性を有する単結晶、例えば、水晶、タンタル酸リチウム(LiTaO)、四ホウ酸リチウム(LiB)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)や、ZnO薄膜を備えたサファイア基板等で構成される。
また、前記圧電基板12上に配される反射器14やIDT16を形成する導電性パターンは、金や銅、アルミニウムといった導電性金属を蒸着やスパッタ等により薄膜形成し、エッチング(例えばフォトリソグラフィ技術)によりパターン形成したものである。
上記のような圧電基板12に対して上述したような導電性パターンによって形成される反射器14やIDT16は、下記形状で、下記のように配設される。
まず、反射器14について説明する。本実施形態のSAW素子10の反射器14は、梯子状に形成される。このような形状に形成された反射器14は、梯子でいうところの踏み板を構成する電極指15が、圧電基板12上において、弾性表面波の伝搬方向と直交するように配置される。また、当該反射器14は、圧電基板12上において線対称となるように、弾性表面波の伝搬方向に沿って配置される。本実施形態では、前述のように配置された2つの反射器14を一対と定義し、1つの圧電基板12上に複数(図1では6対)の対を成す反射器14を並列にかつ前記電極指15が同一線上となるように配置する。
次に、IDT16について説明する。IDT16は、同一形状を成す2つの櫛歯状電極16a1(16b1〜16f1),16a2(16b2〜16f2)の櫛歯状電極指17a(17a1,17a2)を互い違いに噛合わせて構成される。このように構成されるIDT16は、上述した対を成す2つの反射器14の間毎に相互に独立させて配設される。このとき、前記櫛歯状電極指17(17a他16b〜16fに形成された電極指)が、前記反射器14の電極指15と平行になるようにする。また、IDT16同士では、互いに対応する位置に形成された櫛歯状電極指17が、同一線上となるようにする。このように配設されたIDT16には、各IDT16毎に独立した一対の高周波信号の入出力端子を備える(対を成す櫛歯状電極の双方に、入力、又は出力のいずれか一方の役割を担う端子を備える)。
なお、図1には、IDT16及び一対の反射器14から構成されるパターン(弾性表面波パターン)18は、1つの圧電基板12上に6つ示されているが、2つ以上であれば、その数は奇数であること、偶数であることのどちらをも問わない。
上記のような構成のSAW素子10によれば、各IDT16に対して独立した入出力端子を備えるようにしたことにより、SAW素子10を構成する圧電基板12に配設された1つ、又は連続して隣り合う複数のIDT16に対して、選択的に高周波信号を印加することができる。これにより、圧電基板12の主面には共振周波数の異なる複数のモードの弾性表面波を励起させることができる。詳細すると、図2に示すように、前記IDT16の数に応じた発振モードを選択することができる(図2においては、S0からS5)。この場合、高周波信号を印加するIDT16の数が少ないほど(弾性表面波の振幅が小さいほど)出力される周波数が高く、高周波信号を印加するIDT16の数が多いほど(振幅が大きいほど)周波数が低くなる。すなわち、図2においては、最も周波数が高いのがS0モードであり、最も周波数が低いのがS5モードである。なお、図2においては、選択された発振モード毎に、必要とされるIDT16に対して同じ方向に高周波信号を印加することで、同相の発振モードを奏するようにしている。詳細すると、例えば櫛歯状電極16a1(16b1〜16f1)を高周波信号の入力側とし、櫛歯状電極16a2(16b2〜16f2)を信号の出力側と設定しているということである。
上記のような構成のSAW素子10では、周波数が高い場合には、圧電基板12に対するIDT16の割合が小さく(S0モードでは、一対のIDTのみに電圧が印加されるため)、弾性表面波の伝達効率が悪い。従って、隣り合うIDT16毎、又は幾つかのIDT16毎に組を構成し、印加する高周波信号の方向を逆転させる(入力する高周波信号の位相を逆転させる)ことで、同相・逆相の発振を交互に繰り返す発振モードとすることができる。これにより、圧電基板12に対しては高周波信号が印加されるIDT16の割合を増やしつつ、所望の周波数の弾性表面波を励起させることが可能となる。よって、高い周波数の弾性表面波を励起させる場合であっても、弾性表面波の伝達効率を向上させることができる。なお、組を成すIDT16同士には、同位相の高周波信号を印加するようにする。
このように弾性表面波を励起させた場合、図3に示すように隣り合うIDT16毎、又は組を構成したIDT16毎に、位相が180°ずれた振幅を繰り返すこととなる。すなわち、S(synchronize)モードの発振と、A(ansynchronize)モードの発振とを繰り返すのである。なお、SモードとAモードとの発振を同時に行う場合には、Sモードの波形とAモードの波形とが点対称の波形となるように、高周波信号を印加するIDT16の組合せを考慮する必要がある。また、図3においては、S0モードに対応した発振モードがA0モードであり、S1モードにはA1モード、S2モードにはA2モードがそれぞれ対応している。つまり、S0モードとA0モードとを励起させる場合には、隣り合うIDT16毎に印加する高周波信号を逆転させており、S1モードとS0モードとを励起させる場合には、隣り合う2つのIDT16を1組として設定し、隣り合う組毎に印加する高周波信号を逆転させている。同様に、S2モードとA2モードを励起させる場合には、隣り合う3つのIDT16を1組として設定し、隣り合う組毎に印加する高周波信号を逆転させている。逆にいえば、各組を構成するIDT16には、それぞれ位相が同相となるように高周波信号を入力しているのである。
また、上記構成のSAW素子10において、前記IDT16は、櫛歯状電極の電極指17の交差幅が同一となるように構成すると良い。
上記構成により、各IDT16による発振を同期させることができるとともに、周波数精度、周波数偏移精度を向上させることができる。これは、SAW素子10におけるIDT16は、その交差幅を変えることによって出力する周波数に僅かな変化を起こさせることによる。このため、IDT16を構成する櫛歯状電極指の交差幅を調整(制御)することにより、所望の周波数精度を実現させることができる。
次に、上記SAW素子10を用いた本発明に係る発振装置について図4を参照して説明する。上記SAW素子10を用いる発振装置20aは、前記SAW素子10と、前記SAW素子10に信号を伝達する増幅回路としての反転増幅器(以下、インバータという)22とを基本構成としており、前記SAW素子10は前記インバータ22の正帰還回路に備えられる。
前記インバータ22の出力側及び入力側には、それぞれ前記弾性表面波素子10を構成する複数のIDT16のうちの1つであるIDT16aの櫛歯状電極16a2と櫛歯状電極16a1とが並列接続されている。また、前記インバータ22の出力側及び入力側にはそれぞれ、前記IDT16aへの接続経路28とは別の分岐経路30が接続されている。当該分岐回路30には接続切替回路(セレクタ)24(24a,24b)が接続されており、前記分岐経路30は前記セレクタ24を介して他の複数のIDT16であるIDT16b〜16fを形成する櫛歯状電極に並列接続される。
前記セレクタ24は、各々接続されている櫛歯状電極への高周波信号の供給を選択的に行う役割を担う。そして、前記IDT16aに隣接するIDT16bや、当該IDT16bに対して連続して隣り合う複数のIDT16のうちの連続して隣り合う任意の数のIDT16を選択して高周波信号を入力することにより、図2に示すような複数の発振モードの弾性表面波を励起させることが可能となる。また、前記セレクタ24には、選択されたいずれかのIDT16(16b〜16f)へ印加する高周波信号の向き(入力側)を逆転させることで、図3に示すようなAモードの発振も可能にさせることができる。高周波信号を逆転させてIDT16へ入力するためには、双方のセレクタ24a,24b間で入力又は出力する信号の授受が為されなければならない。このため前記セレクタ24には、双方のセレクタ24a,24b間の電気的な橋渡しをするための接続経路32が設けられている。
このように構成される発振装置20aであれば、1つのSAW素子によって上述したような様々なモードの弾性表面波を励起させることができる。なお、前記セレクタ24には、各IDT16への分岐経路の接続を同期して行うためのモード切替制御部26が接続されている。また、前記モード切替制御部26には、モード切替信号入力端子26aが備えられ、当該モード切替信号入力端子26aに入力された信号に従って発振モードを切り替える。
また、上記構成の発振装置20aによれば、発振中、少なくともIDT16aに対しては継続的に高周波信号が印加されることとなるため、発振モードの切り替え(共振周波数の切り替え)時に、発振が瞬断される虞が無い。このため、発振モードの切り替え時に出力位相のズレを生じる事も無い。
次に、上記構成の発振装置20aを備えた通信機器について図5、図6を参照して説明する。まず、送信するためのデータ信号を重畳させた信号(電波)を送信するための機器である送信機について図5を参照して説明する。
本実施形態で示す送信機100は、送信信号を出力するための発振器20と、前記発振器20に対して送信するデータ信号(出力制御信号)を入力する出力制御信号入力端子40aと、前記発振器20から出力される送信信号を電波として放出するアンテナ44とを基本構成とする。
前記発振器20は、上述した発振装置20aと、発振装置20aからの出力信号を振幅変調(Amplitude Shift Keying:ASK)するための出力制御部40と、前記発振装置20aに付随するモード切替制御部26とを基本構成としている。
また、前記出力制御部40には、発振装置20aからの出力信号を入力する経路の他、上述した出力制御信号入力端子40aからの信号を入力するための出力制御信号入力経路が接続されている。
上記のような構成を有する送信機100によれば、必要に応じてモード切替信号入力端子26aにモード切替信号を入力することで、異なる周波数帯で通信を行うことが可能となる。したがって、ある周波数帯(チャンネル)で通信を行う際、他の通信機からの干渉やノイズ、その他の妨害波を受けるような場合に、妨害波等を避けることができるチャンネルに切り替えて通信を行うことができる。
また、本実施形態に示す送信機100では、前記出力制御信号入力経路には、変調切替回路42を介して分岐経路を備え、前記分岐経路を前記モード切替制御部26へ接続するようにしている。このため、前記モード切替制御部26は、モード切替信号入力端子26aからの信号、又は出力制御信号入力端子40aからの信号のいずれかが入力されることによりセレクタ24の接続制御を行い、発振モードの切り替えを行うこととなる。なお、出力制御信号入力端子40aからの信号によって発振モードの切り替えを行う場合、発振装置20aからの出力信号は、複数の発振モードから選択した二つの発振モードによる周波数変調(Frequency Shift Keying:FSK)が為されることとなるため、FSK通信用の信号となる。
また、前記変調切替回路42によって、出力制御信号がモード切替制御部26へ入力されるように設定されている場合には、出力制御部40に対しては発振装置からの出力信号のみが入力されるため、当該出力信号はそのままアンテナ44へ出力される。
このため、変調切替回路42によって出力制御信号が、出力制御部40へ入力されるように設定された場合にはASK通信信号が、モード切替制御部26へ入力されるように設定された場合にはFSK通信信号が、それぞれアンテナ44から放出されることとなる。
なお、変調切替回路42には、変調切替信号を入力するための変調切替信号入力端子42aを備えると良い。
上記のような構成の送信機100では、次のような効果を得ることができる。
まず、ASK通信を行う場合には、通信の際の消費電力が少なく、長時間の通信や待機時間の長い通信等を行うことができる。また、FSK通信を行う場合には、妨害波が多い場合であっても良好(良質)な通信を行うことが可能となる。
また、上述したように、発振装置20aによって出力する信号の周波数帯を切り替えることができるため、必要に応じてチャンネル(発振装置20aから出力される信号の周波数)を切り替えることで、妨害波(妨害信号)を回避して通信を行うことができる。
本実施形態で示した送信機100では、発振装置20aにおいて一定限度内の帯域幅において、複数の周波数の信号を切り替えて出力することができる。このため、多周波発振(多値変調)を行うことができる。
このような通信方式を可能とする上記送信機では、スペクトラム拡散(spectrum spread)通信を行うことも可能となる。具体的には、非常に短い時間間隔(0.1秒程度)でチャンネル(発振モード)を切り替えながらデータを送信する周波数ホッピング方式のスペクトラム拡散通信である。このような方式によれば、1チャンネルあたりの使用周波数帯の帯域幅が比較的狭い場合であってもスペクトラム拡散通信を行うことが可能となる。
スペクトラム拡散とは、デジタル信号を拡散符号と呼ばれる信号によって元の信号より広い帯域に拡散させた上で送信し、受信側で同じ拡散符号によって元のデジタル信号を復元する技術である。同技術を使用している公知な発明としては、近距離無線規格のブルートゥース(Bluetooth)や、CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重接続)方式の携帯電話などを挙げることができる。
このようなスペクトラム拡散通信では次のような効果を奏することができる。まず、同一帯域上で多くの通信が同時平行的に行うことができ、データ送信速度を向上させることができる。次に、通信時、他局に対する影響が殆ど無い。また、通信時におけるノイズや他のノードからの影響も殆ど受けないため、通信品質が高い。さらに、同じ拡散符号を利用しないと元の信号を復元できないため、信号内容を追跡、検出することが困難であり、秘匿性が高い。
なお、上記のような効果を奏する送信機であっても、使用する発振器は1つとなるため、通信機自体の大きさは、従来と変わらないもの、または従来よりも小さなものとすることができる。
次に、上記構成の送信機によって送信された送信信号を受信するための受信機について図6を参照して説明する。
受信機200は、送信機100から送信された電波(送信信号)を受信するためのアンテナ60と、受信機内部に配置され、前記受信信号と異なる周波数帯の高周波信号を出力する局部発振器50と、前記アンテナ60によって受信した受信信号と前記局部発振器50からの出力信号とを混合して中間周波(内部周波)信号を得る混合器(ミキサ)66と、前記ミキサ66を介して出力された中間周波信号を低周波信号へと復調するための検波器72とを基本的な構成とする。なお、このような構成の受信機を一般的に、スーパーヘテロダイン方式(Super Heterodyne System)の受信機という。
上記受信機200の基本的な構成要素はそれぞれ、ミキサ66の入力側にアンテナ60と局部発振器50とがそれぞれ接続され、ミキサ66の出力側には検波器72が接続される。詳細な構成としては、アンテナ60とミキサ66との間には受信信号から、設定された周波数帯の信号を得るための高周波濾波器(Radio Frequency Filter:RFフィルタ)62と、前記RFフィルタ62によって濾波された受信信号を増幅する高周波増幅器(Radio Frequency amplifier:RFアンプ)64とが備えられている。また、ミキサ66と検波器72との間には、ミキサ66から出力される中間周波信号のうち、設定された周波数の信号のみを得るための中間周波濾波器(Intermdeiate Frequency Filter:IFフィルタ)68と、前記IFフィルタ68によって濾波された中間周波信号を増幅するための中間周波増幅器(Intermdeiate Frequency amplifier:IFアンプ)70とが備えられている。
このように構成された受信機200では、アンテナ60からの受信信号と、局部発振器50から出力される出力信号とが、ミキサ66によってミキシングされ、中間周波信号が出力される。そして、中間周波信号は検波器72を介して低周波信号へ復調され、出力端子74へ出力される。なお、中間周波とは、受信信号の周波数と、局部発振器からの出力信号の周波数との周波数差を出力したものである。
本実施形態に示す受信機200では、局部発振器50に上述した複数の周波数帯の信号を出力することができる発振装置20aを採用する。このため、局部発振器50は、発振装置20aと、モード切替制御部26、及びモード切替信号入力端子26aとを基本的な構成要素とすることとなる。局部発振器50をこのような構成とすることにより、1つの局部発振器によって共振周波数の異なる複数の出力信号を得ることが可能となる。
このため、受信機としては、同一の中間周波数に変換可能な複数(本実施形態では6つ)の受信信号の周波数を得ることができることとなる。また、受信機内部の基本的構成要素は変わらないため、その大きさは従来と変わらない、または従来よりも小さなものとすることができる。
また、上述した送信機100と同様に、本実施形態で示す受信機では、ASK通信の信号と、FSK通信の信号との両方を受信することができるようにすることが望ましい。このため、本実施形態で示す受信機200には、ASK通信用の検波器(ASK検波器)76と、FSK通信用の検波器(FSK検波器)78とを備えるようにした。このため、前記ASK検波器76と前記FSK検波器78とのそれぞれの入力側には、IFアンプ70からの中間周波信号入力経路が接続され、出力側には出力端子への低周波信号出力経路が接続されている。そして、少なくとも中間周波信号入力経路にはASK検波器76とFSK検波器78とのいずれかを選択するための検波切替回路80aが備えられている。なお、低周波信号出力経路にも検波切替回路80bを備え、前記いずれかの検波器76,78のうち、選択されない検波器を信号の伝達経路から切り離すように構成しても良い。このような構成とすることにより、選択されなかった検波器、及び中間周波信号入力経路が、インピーダンスの不整合等の原因となるスタブ(stub)となることが無い。また、前記検波切替回路80a,80bのそれぞれには、複数の検波切替回路80の切り替えを同期して行うための検波切替制御部82を接続すると良い。そして、検波切替制御部82は、備えられた検波切替信号入力端子82aに入力される検波切替信号によって、検波切替回路80a,80bを同期させて切り替える。
FSK通信は、FSK通信信号をASK通信信号に変換した後に復調を行う。このため、前記FSK検波器78は、前記ASK検波器76に比べ、その構成が複雑となる。例えば、ASK用検波器76は、ダイオードによって整流し、コンデンサによって平滑(搬送波の除去)を行うといった工程で復調を行う。これに対し、FSK検波器78ではまず、振幅制限部78aで送信信号(受信信号)に混在する雑音成分を取り除く。次に周波数弁別部78bでFSK信号を2つのASK信号に分け、この2つのASK信号の双方に含まれる信号成分を合成して出力する。そして、デンファシス回路部78cにて、前記合成した信号のSN比(信号対雑音比)を改善し、復調を行う。
このように、FSK通信では、ASK通信に比べて復調が複雑になる反面、通信品質は高くなる。
上記構成の受信機200によれば、上記構成の送信機100からの送信信号を受信することができる。
上記実施形態に示したSAW素子では、複数のIDTの両側に配設され、それぞれ対を成す反射器は、各IDT毎に一対設ける構成としていた。しかしながら、反射波を考慮すれば、一対の大型な反射器によって複数のIDTを挟み込むような構成としても良い。
本発明の発振装置に用いるSAW素子の構成を示すブロック図である。 本発明の発振装置によって励起可能な発振モードを示す図である。 本発明の発振装置によって励起可能な発振モードの応用形態を示す図である。 本発明の発振装置の構成を示す図である。 本発明の発振装置を搭載した送信機の構成を示す図である。 本発明の発振装置を搭載した受信機の構成を示す図である。
符号の説明
10………弾性表面波素子(SAW素子)、12………圧電基板、14………反射器、15………電極指、16………櫛歯状電極トランスデューサ(IDT)、17………櫛歯状電極指、18………弾性表面波パターン、20………発振器、20a………発振装置、26………モード切替制御部、40………出力制御部、44………アンテナ、50………局部発振器、60………アンテナ、66………混合器(ミキサ)、72………検波器、100………送信機、200………受信機。

Claims (8)

  1. 1つの圧電基板の一主面に、パターン電極によって構成される少なくとも一対の反射器と、2つの櫛歯状電極の対から構成され、対を成す前記反射器の間に配設された複数の櫛歯状トランスデューサとを備えた弾性表面波素子と、
    前記複数の櫛歯状電極トランスデューサの1つである第1の櫛歯状電極トランスデューサと並列接続した増幅器と、
    前記複数の櫛歯状電極トランスデューサのうち前記第1の櫛歯状電極トランスデューサ以外の他の複数の前記櫛歯状電極トランスデューサと前記増幅器との間に設けられた接続切替回路と
    を有する発振装置であって、
    前記接続切替回路は、前記第1の前記櫛歯状電極トランスデューサに隣接して連なる任意の数の前記他の櫛歯状電極トランスデューサ選択して、選択された前記他の櫛歯状電極トランスデューサを前記増幅器に並列接続可能であることを特徴とする発振装置。
  2. 前記複数の櫛歯状電極トランスデューサは、互いに対応する位置に形成された前記櫛歯状電極の電極指が同一線上となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発振装置。
  3. 前記接続切替回路は、選択された前記他の櫛歯状電極トランスデューサの中から、任意の前記櫛歯状電極トランスデューサを構成する一対の前記櫛歯状電極のそれぞれを前記増幅器の入力側と出力側とに切替接続可能な構成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の発振装置。
  4. 前記櫛歯状電極トランスデューサは、前記櫛歯状電極の電極指の交差幅を同一に構成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の発振装置。
  5. 圧電基板の一主面に複数の櫛歯状電極トランスデューサが並列に配設された弾性表面波素子の駆動方法であって、
    前記複数の櫛歯状電極トランスデューサの中から連続して隣り合う複数の櫛歯状電極トランスデューサを選択し、
    選択した前記櫛歯状電極トランスデューサに対して高周波信号を印加して弾性表面波を前記圧電基板の前記主面に励起させることを特徴とする弾性表面波素子の駆動方法。
  6. 前記高周波信号は、隣り合う前記櫛歯状電極トランスデューサ毎に位相を逆転させた信号であることを特徴とする請求項5に記載の弾性表面波素子の駆動方法。
  7. 選択した前記複数の櫛歯状電極トランスデューサは、連続して隣り合う複数の前記櫛歯状電極トランスデューサからなる組を複数有し、
    同じ前記組内の前記各櫛歯状電極トランスデューサに同位相の前記高周波信号を与え、
    隣接した前記組のそれぞれに互いに位相が逆転した前記高周波信号を与えることを特徴とする請求項5に記載の弾性表面波素子の駆動方法。
  8. 前記複数の組それぞれの前記櫛歯状電極トランスデューサの数は、互いに等しいことを特徴とする請求項7に記載の弾性表面波素子の駆動方法。
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