JP4536627B2 - 信号処理装置および音像定位装置 - Google Patents

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Description

クロストークキャンセル補正機能等のスピーカから聴取者の耳へ至る空間伝搬経路の伝達特性をキャンセルする機能を備え、これを基に音場形成を行う音像定位装置に関する。
従来、クロストークキャンセル機能を備えた音像定位装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。右のスピーカから左耳に到達する成分、あるいはその逆をクロストークといい、これを打ち消す機能をクロストークキャンセルという。このクロストークキャンセルは、左側の耳には左側のスピーカの音のみ、左側の耳には左側のスピーカの音のみ聞こえるようにして、スピーカそのものの定位を無くす技術である。この技術は、音源から視聴者の耳までの頭部伝達関数をモデル化して、逆行列等による演算により、視聴者の耳の地点でクロストークを打ち消すような音波をディジタル音源に加工して発声させるものである。そして、係るクロストークキャンセルは、例えば、前方のフロア型スピーカを使用して、後方からの頭部伝達関数を用いてリア側からの音像定位を行なったり、自由自在な音場形成を行う場合には、その効果を発揮させるために必要となる。
特許文献1では、ダミーヘッドを用いて測定した頭部伝達関数を予め測定した結果を用いて、クロストークキャンセルや音場形成を行うステレオ音響装置等が開示されている。
ところが、頭部伝達関数を用いてクロストークキャンセルや、リア定位の付加を行なった場合には、クロストークキャンセルは、その有効範囲がピンポイント的にしか効果を奏さず、また、個人差に影響される問題があった。そこで、特許文献2〜3の手段が開示されている。
特許文献2では、高周波について、頭部伝達関数が視聴者のそれとは異なる周波数特性上のピークやディップを再現しているため、音像定位を実現する際に、不自然な音質になるという理由で、不必要な周波数特性上のピークやディップを除去する音像定位制御方法が開示されている。
特開2001−086599号公報 特開平6−178398号公報
しかしながら、特許文献2のように、高周波のピークやディップを不要であるとして除去すれば、実際には、音像定位効果が十分でない問題があった。一方、ピーク、ディップをそのままにしておくと、個人差や、頭部伝達関数が効果を奏すると想定される位置からのずれにより、音質が不自然で聞きづらい場合がある問題があった。
そこで、本発明は、個人差や、頭部伝達関数が効果を奏すると想定される位置からのずれがあっても、音質が不自然だったり、聞きづらいといった問題を解決する音像定位装置の提供を目的とする。
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。
(1)本発明は、
聴取位置の前方に位置する2chスピーカに接続され、左音声信号、右音声信号、および、リア音声信号を含む複数の音声信号を2chの音声信号に合成する音像定位装置であって、
前記リア音声信号に対して、聴取位置の後方に位置する仮想音源から聴取者の耳へ至る空間伝達経路の伝達特性を付与するバーチャル特性付与フィルタと、
前記リア音声信号に対して、実際のスピーカの位置から聴取者の耳へ至る空間伝播経路の伝達特性をキャンセルするキャンセル化フィルタの周波数特のうち、高い周波数領域である7〜10kHzに存在するピークを平滑化した周波数特性に修正した修正フィルタと、前記高い周波数領域の一部をブーストしてピークを再形成し、前記再形成したピークの少なくとも中心周波数を調整するイコライザと、前記再形成したピークの少なくとも中心周波数の調整操作を受け付ける調整手段と、を有し、前記リア音声信号を前記修正フィルタおよび前記イコライザに通過させるクロストークキャンセルフィルタと、
前記バーチャル特性付与フィルタおよびクロストークキャンセルフィルタによって処理されたリア音声信号を左音声信号および右音声信号に足し込む加算器と、
備えた音像定位装置である。
本発明の信号処理装置は、耳へ至る空間伝搬経路の伝達特性をキャンセルするキャンセル化フィルタを想定して、そのフィルタの周波数特性のうち、高い周波数領域である7〜10kHzに存在するピークを平滑化した周波数特性に修正した修正フィルタを構成要件としている。この修正フィルタは、前記ピークを平滑化しており、これを用いて信号処理を行っているので、音質が不自然だったり、聞きづらいといった要素を解消している。しかし、このようにピークを削除すれば、音像定位が十分でないので、本発明では、ピーク部分を新たに追加すると共にこのピーク部分を前記調整手段により調整可能としている。これにより、音質が不自然という問題を解消するだけでなく、音源から耳までの空間伝搬(以下、「実頭部伝達関数」ということにする。)の個人個人の違いや、想定した位置からのずれに対応して、音像定位が十分となるような信号処理ができる。
なお、「スピーカから聴取者の耳へ至る空間伝搬経路の伝達特性をキャンセルするキャンセル化フィルタ」には、前述したクロストークキャンセル、即ち、右のスピーカから左耳に到達する成分、あるいはその逆の成分であるクロストークを打ち消す機能が含まれるのみならず、少なくとも、右のスピーカから右耳に到達する成分、あるいは左のスピーカから左耳に到達する成分の伝搬特性をキャンセルするものが含まれ、また聴取者の耳へ至る空間伝搬経路の伝達特性をキャンセルする機能であればこれ以外でも含まれる。
(2)本発明は、
前記調整手段は、前記再形成したピークの幅、ゲインをさらに調整する音像定位装置である。
このように構成すれば、前記クロストークキャンセルフィルタは、音像定位装置において(1)の効果を奏し、個人個人の頭部伝達関数や、想定した位置からのずれに対応して、効果的に空間伝搬経路の伝達特性をキャンセルすることができる。前記バーチャル特性付与フィルタは、クロストークキャンセルフィルタの効果が十分であることを前提とするから、(1)の構成のとおり、前記調整手段により調整可能としている。これにより、音質が不自然という問題を解消するだけでなく、個人個人の実頭部伝達関数(この「実頭部伝達関数」の定義は前述に記載。)や、想定した位置からのずれに対応して、音像定位の効果を十分発揮できる。
本発明によれば、音質が不自然という問題を解消するだけでなく、個人個人の頭部伝達関数や、想定した位置からのずれに対応して、音像定位を十分にするとことが可能となる。
次に、図1を用いて、本実施形態の音像定位装置について説明する。図1は、本実施形態に係る音像定位装置の再生時の構成を示す。
この音像定位装置の構成の概略を一言で述べると、以下のようになる。即ち、入力部分23、21、24のディジタル音声信号を取り込んで、DSP10がこの信号のディジタル処理を行い、D/A変換器22でアナログ音声信号に変換して、電子ボリューム41で音量を調整し、パワーアンプ42でこのアナログ音声信号をLchスピーカLS、RchスピーカRSに出力し音声を発する。
また、本実施形態の音像定位装置の機能は一言で述べると、図1に示すような、Lch、Rch、Cch、LSch、Rschの5chの音声信号をミックスダウンして、2chの実在する前方のスピーカLS、RSから、あたかも後ろにLSch、RSchのスピーカが実在しているような音像定位を作出することである。
さらに、その音像定位の手段を一言で述べると、DSP10において、これらの5chのディジタル音源データに、後方から人間の耳までの頭部伝達関数(詳細は後述する。)を用いて、リア定位付加131LD〜131RDの音響効果を付加することにより行う。そして、この音響効果の実効を図るためのクロストークキャンセル(詳細は後述する。)を用いて、これらの5chの音源を加工して、実在するスピーカLS、RSから出力する。以下これらの構成を順を追って説明する。
まず、図1の信号入力部は、DIR23、A/D変換器21、HDMI24(登録商標、以下同じ)に代表されるディジタルインターフェースを備えている(ただし、本実施形態の装置を構成するには必ずしもこれらすべてを必要とせず、また別の入力系統があってもよい。)。これらの信号入力部は、いずれも5chのデータを入力できるものとする。即ち、この5chは、Lch(左前)、Rch(右前)、Cch(センター前)、LSch(リア左)、RSch(リア右)のスピーカへ出力するディジタル音声入力である。Lchは、左前側の実在するスピーカの出力であり、Rchは、右前側の実在するスピーカの出力である。Cchは、本実施形態の装置では現実には存在せず、仮想状のものとなるが、図1のDSP10に示すように、本実施形態の装置では、Lch、Rchに振り分けて単純に合成して出力する。LSch、Rschは、後方のスピーカへの音声入力であるが、本実施形態の装置では架空のchであり、DSP10内で信号処理を行い、Lch、Rchに合成する。5chの、アンプ、スピーカの出力系統を用意するのは、必ずしも実際的でないため、本実施形態の装置では、前述した頭部伝達関数を用いて後方からの出力の音響効果を作り出し、架空の出力系統を補う。
DIR23は、ビットストリームのディジタル時系列音声データを入力することができる。
A/D変換器21は、アナログ信号、例えばマイクから入力した音声信号をディジタル時系列データに変換でき、そのデータをデコーダ14に送る。
HDMI23(High-DefinitionMultimedia Interface)は、音声および制御信号を合わせて受信する。
DSP10は、ポストプロセッシング用DSP13と、デコーダ14を含んでいる。DSP10は、前述の入力部分から入力したディジタル時系列データを加工して、D/A変換器22に送る。
D/A変換器22は、DSP10により生成したデータをアナログ信号に変換する。このアナログ信号は、音量を調整する電子ボリューム41とパワーアンプを介して、スピーカLS、RSにより音声に変換される。
なお、パワーアンプ42は、D/A変換器に変換する前にディジタル振幅を増幅して、その後高周波を取り除くことによりアナログ信号を得る、いわゆるディジタルアンプでも良い。
また、この音像定位装置は、上記の構成を制御するコントローラ32と、コントローラ32の制御データを蓄えるメモリ31と、コントローラ32に指示を行うユーザインターフェース33とを含んでいる。メモリ31には、図2、図3の説明で後述するモデル頭部伝達関数を、スピーカの存在する方向からそれぞれの両耳までの空間伝搬を模擬したデータテーブルとして格納している。このモデル頭部伝達関数は、所定の方向から耳までの空間伝達関数であり、現在すでにデータベース化されたものが既知となっている。これを用いて、後方からの音声があたかも発せられているような音響効果を作出できる。
次に、同じく図1を用いて、DSP10についてさらに詳しく説明する。DSP10は、デコーダ14とポストプロセッシング用DSP13を含んでいる。以下それぞれ説明する。
デコーダ14は前述した入力部分であるDIR23とA/D変換器21とHDMI24から入力したディジタル時系列データをデコードして、ポストプロセッシング用DSP13に送る。デコーダ14自体は、前述のようにこのディジタル時系列データとして5chの音声データを扱うことができる。即ちこの5chは、Lch(左前)、Rch(右前)、Cch(センター前)、LSch(リア左)、RSch(リア右)のスピーカへ出力するディジタル音声入力である。
ポストプロセッシング用DSP13は、これら5chの音声データを信号処理して2chのデータにミックスダウンし、擬似的な5ch信号として出力する。
このミックスダウンを行うため、本実施形態のシステムでは、図1に示すように、まずCchをLch、Rchにそれぞれ振り分けて、加算器135A、135BはこれらLch、Rchの信号に付加する。また、このようにミックスダウンする場合、LSch(リア左)、RSch(リア右)は、仮想的に後ろからも聞こえるようにする必要があるから、リア定位付加131およびクロストークキャンセル補正回路133を備えている。そして、図1に示すように、LSch(リア左)、RSch(リア右)のデータを加工して、Lch、Rchに付加するようにしている。
図1に示すような、リア定位付加131では、前述のように、あたかも後ろから聞こえるような擬似的効果を作出する。以下その方法について説明する。ここで、説明の容易のため、仮に、LSリアバーチャルスピーカLSV、RSリアバーチャルスピーカRSVが現実に存在し、LSch、RSchの音声そのものがスピーカLSV、RSVから発せられると仮定する。このように仮定すれば、LSchの音声が後方ダイレクト方向102Dを通って左耳M1に入ると共に、後方クロス方向102Cを通って、右耳M2に伝達される。この空間伝達を模擬するため、それぞれ、フィルタ131LD、フィルタ131LCでは、それぞれ、102D、102Cの経路の頭部伝達関数を用いる(以下、空間伝達を模擬した頭部伝達関数を以下、「モデル頭部伝達関数という。」。この「モデル頭部伝達関数」は、前述の実頭部伝達関数を模擬したものに相当する。)。以上、LSchについて説明したが、RSchの音声についても、聴取者の顔の向き103の線に関して説明上線対称(位置関係は線対称でなくともよい。)になり、同様な説明となる。
ここで、図1のリア定位付加131のフィルタ関数をまとめると以下のとおりになる。フィルタ131LDは、LSリアバーチャルスピーカLSVから左の耳M1までのモデル頭部伝達関数を用いる。
フィルタ131LCは、LSリアバーチャルスピーカLSVから右の耳M2までのモデル頭部伝達関数を用いる。
フィルタ131RDは、RSリアバーチャルスピーカRSVから右の耳M2までのモデル頭部伝達関数を用いる。
フィルタ131RCは、RSリアバーチャルスピーカRSVから左の耳M1までのモデル頭部伝達関数を用いる。
そして、図1のリア定位付加131では、これらのフィルタをLSch、RSchに畳み込んで、リアバーチャルスピーカLSV、RSVの音響特性を付加する。
次に、図1のクロストークキャンセル補正回路133について説明する。この補正回路133の目的は、リア定位付加131で構成したモデル頭部伝達関数の特性を両耳に届けるようにすることである。もし仮に、理想的なヘッドホンで、LSリア定位計算部131L、131Rの音声を聴取するのであれば、これが可能となる(ただし、ヘッドホンはそれ自身にピークやディップが多い特性を有するので必ずしもそのようにはならない。)。
しかし、ラウドスピーカを用いた本実施形態の装置では、前のスピーカRS、LSから音声を聴取するから、音波の空間伝達時に、前のスピーカRS、LSから両耳までの空間伝達によりデフォルメされてしまい、前述したLSリア定位付加の効果を十分発揮し得ないおそれがある。
そこで、擬似的にLSリア定位計算部131Lの出力を左の耳にのみ、RSリア定位計算部131Rの出力を右の耳にのみ入るように、前に存在する現実のスピーカから出力される音源を加工する。
図1のクロストークキャンセル補正回路133では、前のスピーカRS、LSから両耳までの空間伝達をシミュレーションした、または実験により実測した、頭部伝達関数を用いる。この頭部伝達関数も前述リア定位付加131と同様、前述の「モデル頭部伝達関数」に相当する(ただし、補正回路133では、主に前方の実スピーカからの耳まで伝搬する音声を模擬したものを用いる点で前述リア定位付加131が後方または左右方向からの伝搬を模擬したものと異なる。)。ここで、この頭部伝達関数は、後述する図2(A)、図2(B)に示すような周波数[Hz]対ゲイン[dB]の関係を持った関数である。このモデル頭部伝達関数は、前述したとおり、図1のメモリ31にデータテーブルとして格納している。コントローラ32は、図1のメモリ31に格納しているデータテーブルから、適切なモデル頭部伝達関数を(スピーカLS、RS)対(左耳、右耳)の4通りについて選択する。具体的には、以下のような関数を選択し、説明の便宜上、以下のように定める。即ち、
(LchスピーカLS→左耳)の経路の伝達関数をLD(Z)、
(LchスピーカLS→右耳)の経路の伝達関数をLC(Z)、
(RchスピーカRS→左耳)の経路の伝達関数をRC(Z)、
(RchスピーカRS→右耳)の経路の伝達関数をRD(Z)、
(それぞれ離散領域で、Z変換したものである。Zは遅延を表すものとする。以下「(Z)」は、省略する。)とする。このように定義すると、Lchダイレクト補正133LD、Lchクロス補正133LC、Rchクロス補正133RC、Rchダイレクト補正133RDの伝達関数LD、LC、RC、RDのフィルタの関数は、以下のように計算することで求められる。なお、以下の計算では、PEQ134は、無視している(PEQ134についての詳細は図3以降で説明する。)。
まず、両耳で聴取される音声は、図1で示すような後方のリアバーチャルスピーカLSV、RSVの音場を模擬した、リア定位計算部131の出力そのものを両耳に伝達するため、以下のように音場形成する必要がある。
Figure 0004536627
なお、”≒”は、左辺の音声をマイク等により電気信号に変換すれば等価になるということを表すものとする(以下、同じ。)。
次に、これらの後方から耳に伝達される成分は、頭部周囲の音響環境により、加算器135C、135Dの出力は、前方のスピーカからの頭部伝達関数によりデフォルメされて、上述の頭部伝達関数LD、LC、RC、RDを用いて、以下のように伝達されると考えられる。
Figure 0004536627
なぜなら、音声は重ね合わせにより計算できるからである。
したがって、図1の加算器135C、135Dで出力すべき音声信号は、以下のとおりになる。なお、前述のとおり、PEQ134は、無視している(PEQ134についての詳細は図3以降で説明する。)。
Figure 0004536627
以上の説明から、図1の加算器135C、加算器135Dで生成すべきディジタルデータは、この式で求めた前述の音声のバーチャルリアスピーカの成分に相当するディジタルデータである。よって、クロストークキャンセル補正回路133の伝達関数は、それぞれ、
Lchダイレクト補正は、RD/(RD×LD−RC×LC)、
Lchクロス補正は、 LC/(RD×LD−RC×LC)、
Rchクロス補正は、 RC/(RD×LD−RC×LC)、
Rchダイレクト補正は、LD/(RD×LD−RC×LC)、
となる。なお、「×」は、畳み込みを表し、Lchクロス補正133LC、Rchクロス補正RCを畳み込んだデータは、それぞれ加算器135Cにおいて、−1倍されて加算される。
以上のようにして、図1のクロストークキャンセル回路133、加算器135C、135Dを経たディジタル音声入力は、加算器135A、135BでLch、Rchのデータに加算される。そして、この加算されたデータは、2chのデータとしてD/A変換器22に出力され、電子ボリューム41とパワーアンプを介して、スピーカLS、RSにより音声に変換される。
なお、前述図1の説明で示したクロストークキャンセル補正の計算は、実際には時間遅延のタップ数が多く、計算に困難を伴う場合もある。そこで、実用的な範囲の近似として、クロス方向の影響をクロス方向の頭部伝達関数の逆関数をダイレクト方向側から加えてキャンセルすることが行なわれている(例えば特許文献1参照。)。
次に、図2〜図4を用いて、PEQ134の動作概念について説明する。
まず、図2を用いて、クロストークキャンセルのフィルタを具体的に説明する。図2は、クロストークキャンセルのフィルタのゲイン線図である。図2(A)は、図1の聴取者の顔の向き103から左側に30度方位を回した方向であって水平方向にLchスピーカLSがある場合のモデル頭部伝達関数を示している。図2(B)は、同様に、図1の聴取者の顔の向き103から右側に30度方位を回した方向であって水平方向にRchスピーカRSがある場合のモデル頭部伝達関数を示している。また、図2(A)のG1、図2(B)のG1’は、ダイレクト方向のモデル頭部伝達関数を表しており、図2(A)のG2、図2(B)のG2’は、クロス方向のモデル頭部伝達関数を現している。図2(A)、図2(B)に示すように、クロス方向のモデル頭部伝達関数G2、G2’は、ダイレクト方向のG1、G1’に比べてゲインが小さくなっている。これは、両耳の位置の違いによる伝搬距離差によるゲイン減少、顔による回折等に起因するものと考えられる。
なお、図2(A)、図2(B)に示すように、左右の頭部伝達関数は、聴取者の顔の向き103に関して説明上略線対称であり(位置関係は線対称でなくともよい。)、同様であるから、以後の説明では、Lchの頭部伝達関数を説明として用いる。
図2(C)に示すG3、G4のグラフは、クロストークキャンセルに用いるフィルタであり、G3が図1の補正回路133LDに相当し、G4が図1の補正回路133RCに相当する。図2(A)、(C)に示すように、図2(A)のG1と、図2(C)のG3は、略逆フィルタの関係にある。したがって、図1(A)に示す左ch→左耳M1のモデル頭部伝達関数LDの図2(A)に示すディップD1が、これらのフィルタに図2(C)のピークP1となって突き出ている。また、図2(C)に示すように、G4のグラフにも同様のピークP2がある。
なお、このように補正回路133LDの伝達関数が、モデル頭部伝達関数LDの、略逆フィルタとなっているが、このように、前述したクロストークではなく、ダイレクト方向の周波数特性をキャンセルする作用も、本発明の「スピーカから聴取者の耳へ至る空間伝搬経路の伝達特性をキャンセル」することに相当する。
ここで、図2(A)に示す頭部伝達関数の聴感上への影響について説明する。頭部伝達関数の周波数[Hz]の1kHz以下は位相差として知覚され、周波数[Hz]の1kHz〜7kHzはゲイン、音量感として知覚されるといわれている。これらの領域では、頭部伝達関数に個人差はあまりない。しかし、7kHz以上では、顔の形状が個人個人で異なるから、頭部伝達関数は、顔の形状による音声の干渉等により生じるディップの周波数、形状が異なる(図2(A)のD1、D2参照。)。これにより、クロストークキャンセルのフィルタG3、G4は、個人個人で異なる。したがって、モデル頭部伝達関数を用いて、理論どおりにこれらのクロストークキャンセルのフィルタを構成しても、効果が十分でなく、かつ、このピークにより聴感上、違和感を与える場合がありうる。本実施形態の装置では、図1のPEQ134を用いて、このような個人差に対応した調整を、以下の説明のとおり行う。
次に図3を用いて、本実施形態の装置のPEQ134(図1参照。)について説明する。図3は、PEQ134の動作概念図である。図1のPEQ134は図示しないが2段に分かれている。第1のフィルタは、図3(A)のP3、P4のように、補正回路133のフィルタのピークを除去するフィルタであり、具体的には9kHz以上の帯域を平滑化するフィルタである。このように直列に第1のフィルタを接続して聴感上の違和感を解消している。しかし、特許文献2と同様、このピークを除去すると、定位がきちんと定まらず、いわば、ぼあっとした感じを聴感上受けることになる。そこで、PEQ134ではさらに図3(B)のように再度ピークP5、P6を追加する第2のフィルタを設けて信号処理を行う。この追加はただ単にピークを復元するのではなく、以下、図4の説明で述べる調整手段を用いて追加するものである。
なお、実際の実装の形態としては、図1に示したようにクロストークキャンセル補正回路133と図3(A)で説明したようなピークを除去する第1のフィルタとを別々に設けて信号処理時に計算するのではなく、予めこれらを合わせて計算して、工場出荷時にメモリ31や図示しない外部記憶装置にフィルタ係数として記憶しておくのが、計算上また装置の簡易化の面から望ましい。例えば、前述の数式を用いて説明したクロストークキャンセル補正回路133のフィルタ係数は、本実施形態の装置の工場出荷時に予め、所定のスピーカと聴取者の顔の向き103(図1右部分参照。)との角度を想定して、1パターン以上用意しておき、そのフィルタに対して、予め図3(A)のような9kHz以上の周波数を平坦化した周波数特性のフィルタをフィルタ係数として用意しておくことができる。
一方、図3(B)に示したような調整は聴取者に合わせる必要があるから、工場出荷時に予め用意することはできず、実際の実装の形態としては、PEQ134は、図3(B)に示したようなピークを追加するような信号処理を行うイコライザとなる。
次に図4を用いて、本実施形態の装置の装置で、図3(B)で示したように再度追加したピークの調整方法について説明する。図4は、このようなピークを追加した場合にどのように調整するかを示す概念図である。前述のとおり、図3(B)のように単にピークを追加しただけでは、個人差に合わず聴き疲れするので、本実施形態の装置では、調整装置を設けてこのような個人差に対応する調整を行う。
図4(A)は、ピーク部分の中心周波数を調整するための概念図である。この図に示すようにピークPは、両矢印の方向に、破線の形状で示すようにピークを移動して、周波数を調整する。この周波数は7k〜10kHzの辺りに設定し、このピークの周波数を上下20%調整する。
図4(B)は、ピーク部分のゲインの調整方法を表す概念図である。この図に示すようにピークPを両矢印の方向に、即ち破線の形状で示すようにピークを移動して、ピーク部分のゲインを調整する。
図4(C)は、ピーク部分の幅またはQ値の調整方法を表す概念図である。この図に示すようにピークPを両矢印の方向に、即ち破線の形状で示すようにピークの幅を変動させて、ピーク部分の形状を調整する。なお、Q値は、ピークPの周波数の頂点から3dBゲインが下がったところのピーク形状の幅をいい、この幅を周波数の比で表したものである。
図4(D)は、図4(A)〜(C)で示した調整を行うための調整パネルの実施例である。周波数調整つまみ51と、ゲイン調整つまみ52、Q値調整つまみ53を備えている。これらは、円形の回転式つまみであり、聴取者が、これを回転させることにより、図4(A)〜(C)で示した方向にクロストークキャンセルを調整することができる。この調整パネルは、図1に示すようなPEQ134の4つの調整に合わせて、このような調整をする装置が4つ必要となる。ただし、この調整を、スピーカの配置を左右対称として、134LD=134RD、134LC=134RCの2つに省略することも可能である。
ただし、図2の説明で説明したように、図4で示したピークPは、ダイレクト方向の頭部伝達関数に起因するところが大きいから、図4(D)の周波数調整つまみ51の調整を連動させることにより、左右chで2つに簡略化する構成であっても良い。さらに、スピーカの配置を左右対称として、周波数調整つまみ51の調整を1つとすることもできる。また、この周波数は、顔の形状、両耳の到達距離差による音声の干渉によると考えられ、顔の狭い聴取者の場合、この到達距離差は小さく、ピークの周波数は大きくなる。そこで、周波数でなく、つまみには顔の幅で表示するものであっても良い。
なお、「発明を実施するための最良の形態」の説明の冒頭で概略として説明した事項や、本実施形態の装置で示した数値や、この図4(D)で示した調整パネル5の形状は、本発明を限定するものでなく、他の構成もありうる。
本実施形態に係る音像定位装置の構成について示す。 本実施形態に係る音像定位装置のクロストークキャンセルのフィルタのゲイン線図を示す。 本実施形態に係る音像定位装置のクロストークキャンセルのフィルタに追加するフィルタPEQについての概念図を示す。 本実施形態に係る音像定位装置のクロストークキャンセルのフィルタの調整方法を表す図を示す。
符号の説明
10−DSP
13−ポストプロセッシング用DSP
131−リア定位付加
131LD−フィルタ
131LC−フィルタ
131RC−フィルタ
131RD−フィルタ
131L−LSリア定位計算部
131R−RSリア定位計算部
133−クロストークキャンセル補正回路
133LD−Lchダイレクト補正
133LC−Lchクロス補正
133RC−Rchクロス補正
133RD−Rchダイレクト補正
134−PEQ
134LD−PEQ
134LC−PEQ
134RC−PEQ
134RD−PEQ
135A−加算器
135B−加算器
135C−加算器
135D−加算器
14−デコーダ
21−A/D変換器
22−D/A変換器
23−DIR
24−HDMI
31−メモリ
32−コントローラ
33−ユーザインターフェース
41−電子ボリューム
42−パワーアンプ
5−調整パネル
51−周波数調整つまみ
52−ゲイン調整つまみ
53−Q値調整つまみ
100−聴取者(ダミーヘッド)
101D−前方ダイレクト方向
101C−前方クロス方向
102D−後方ダイレクト方向
102C−後方クロス方向
103−聴取者の顔の向き
LS−Lchスピーカ
RS−Rchスピーカ
LSV−LSリアバーチャルスピーカ
RSV−RSリアバーチャルスピーカ
P−ピーク
P1〜P6−ピーク
D1−ディップ
M1−左の耳

Claims (2)

  1. 聴取位置の前方に位置する2chスピーカに接続され、左音声信号、右音声信号、および、リア音声信号を含む複数の音声信号を2chの音声信号に合成する音像定位装置であって、
    前記リア音声信号に対して、聴取位置の後方に位置する仮想音源から聴取者の耳へ至る空間伝達経路の伝達特性を付与するバーチャル特性付与フィルタと、
    前記リア音声信号に対して、実際のスピーカの位置から聴取者の耳へ至る空間伝播経路の伝達特性をキャンセルするキャンセル化フィルタの周波数特のうち、高い周波数領域である7〜10kHzに存在するピークを平滑化した周波数特性に修正した修正フィルタと、前記高い周波数領域の一部をブーストしてピークを再形成し、前記再形成したピークの少なくとも中心周波数を調整するイコライザと、前記再形成したピークの少なくとも中心周波数の調整操作を受け付ける調整手段と、を有し、前記リア音声信号を前記修正フィルタおよび前記イコライザに通過させるクロストークキャンセルフィルタと
    前記バーチャル特性付与フィルタおよび前記クロストークキャンセルフィルタによって処理されたリア音声信号を左音声信号および右音声信号に足し込む加算器と、
    を備えている音像定位装置
  2. 前記調整手段は、前記再形成したピークの幅およびゲインをさらに調整する、
    請求項1に記載の音像定位装置
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