JP4532854B2 - 検出素子および検出素子の製造方法 - Google Patents
検出素子および検出素子の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材上の所定の位置に標的物質に対して特異的に結合するプローブがスポット状に配置されてなる検出素子に関する。また、本発明は、プローブスポットがアレイ状に配置されてなるプローブ検出アレイ検出素子に関する。さらには、検出素子表面の表面組成および表面物性に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子工学、分子生物学などのバイオ分野の進歩により、感染症、癌や遺伝子疾患などについてDNA、RNAレベルでの診断が可能になってきた。DNA、RNAなどの核酸による診断に用いられるツールの一つとして、DNAチップ、DNAアレイが注目されてきている。DNAチップ、DNAアレイを始めとする診断ツールでは、核酸などのプローブを基材上に固定しておき、プローブと標的物質をハイブリダイズさせることにより検出を行なう。このDNA、RNA、核酸などの標的物質に対して特異的に結合可能なプローブをスポット状に固定したものとして、いくつかの検出素子が知られている。
【0003】
これらの検出素子を用いて標的物質をハイブリダイズさせることにより検出する前に、検出素子をブロッキング処理することが知られている。ブロッキング処理は検出素子表面、特にはプローブスポット外周部領域表面への標的物質の非特異的吸着を抑えることを目的として行なわれ、BSA溶液などへ浸漬処理することにより行なわれている。
【0004】
スポッティングなどの方法により予め用意されたプローブを用いてDNAチップ、DNAアレイなどのプローブを固定した基材を作成する場合、基材表面を高分子化合物などの材料により被覆処理しておくことによりプローブが結合できる状態にしておき、プローブを溶解させたプローブ媒体を処理した基材上に接触させることによりプローブを基材上に固定していた。基材上に固定されたプローブ形成領域外部の表面はプローブが結合できる状態であるため、標的物質が吸着しやすい状態にある。標的物質の非特異的吸着を抑制するための処理を行なった後に、標的物質を含む試料とハイブリダイズさせることにより検出処理が行なわれていた。具体的には、プローブ固定基材を形成する方法として基材上にカルボジイミド基を有する高分子化合物を担持させ、これにDNAプローブ水溶液をスポッティングすることによりプローブを基材上に固定する。DNAプローブを基材上に固定した後、基材を3%BSA溶液(3% Bovine Serum Alubumin(BSA)/0.2M NaCl/0.1M TrisHCl,0.05%Triton−X−100)で37℃30分インキュベートした後、洗浄,ハイブリダイズさせる方法が記載されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、基材上に固定されたプローブ形成領域外部の表面はプローブが結合できる状態であるため、標的物質が吸着しやすい状態にある。標的物質を含む試料とハイブリダイズさせた後に、プローブ形成領域外部に非特異的吸着をした標的物質を除去するための洗浄処理を行なった後に検出処理が行なわれていた。具体的には、プローブ固定基材として共有結合を形成し得る反応性置換基を有する鎖状分子が、一方の末端で表面に固定された固相担体と末端にチオール基を有するDNAプローブを液相で接触させることにより固定する。DNAプローブを基材上に固定した後、ハイブリダイゼーション溶液と共にインキュベートした後、0.1重量%SDSと2×SSCとの混合溶液、0.1重量%SDSと0.2×SSCとの混合溶液、および0.2×SSC水溶液で順次洗浄する方法が記載されている。(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平08−23975号公報
【特許文献2】
特開2001−178442号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来用いられていた標的物質に対して特異的に結合可能なプローブを基材上に固定した検出素子は、プローブ非配置領域表面,プローブスポット間隙領域表面がプローブ結合性を有する物質もしくは、プローブ吸着性を有する物質などにより被覆されているため、プローブ非配置領域表面,プローブスポット間隙領域表面に標的物質が吸着してしまう課題があった。プローブ非配置領域表面,プローブスポット間隙領域表面に標的物質が吸着してしまった場合、標的物質の検出確認が困難になるなどの問題が生じる。
【0008】
これを無くす為にブロッキング処理を行なうことにより標的物質の非特異的吸着を防ぐ必要があった。しかし、ブロッキング処理は、標的物質を検出する前に行なう必要があるために標的物質の検出に要する時間が長くなる、煩雑になるなどの課題がある。
【0009】
また、ブロッキング処理を行なわない場合においては、非特異的吸着によりプローブ非配置領域表面,プローブスポット間隙領域表面に吸着した標的物質を除去するため、洗浄処理を十分に行なう必要があった。十分な洗浄処理を行なう場合には標的物質の検出に要する時間が長くなる、煩雑になるばかりではなく、プローブと結合した標的物質が外れてしまうなどの課題が生じた。
【0010】
このため、標的物質の検出工程においてブロッキング処理,十分な洗浄処理を省略し、ハイブリダイゼーション後の簡易的な洗浄処理のみへと簡略化することができる、引いては、標的物質の検出を短時間で簡易的に行なうことができるプローブアレイが求められていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明に係る検出素子の製造方法は、酸化物の表面に、プローブがプローブ固定物質によって固定されたスポット状のプローブ固定領域を形成する工程を有しており、前記プローブと、前記プローブ固定物質とが、選択的に前記プローブ固定領域に固定され、前記プローブ固定領域外において前記酸化物の表面が露出しており、前記プローブ固定領域を形成する工程は、前記プローブと、前記プローブ固定物質とが共存する液体を前記酸化物の表面にスポッティングする工程である
ことを特徴とする。
【0012】
検出素子としては、プローブスポットを酸化物表面に形成することができる。検出素子がプローブアレイであって、検出対象領域内のプローブスポット外周領域表面の少なくとも一部が酸化物表面であっても良い。この検出素子によりプローブ非配置領域表面,プローブスポット間隙領域表面への標的物質吸着を低減し、ブロッキング処理工程の省略、洗浄処理工程の簡略化を行なうことができる。
【0013】
また、酸化物が酸化珪素もしくは/および酸化珪素化合物からなる材料を基材表面に用いた検出素子であると良い。酸化珪素がSiO2である検出素子を用いると良い。
【0014】
また、検出素子基材表面が樹脂基材上への酸化物形成よりなる表面であると良い。
【0015】
さらに、酸化物表面上に形成されたプローブ固定スポット上にプローブ固定スポットに結合固定してなるプローブを含むプローブ媒体をスポッティングすることにより形成されるものであると良い。上記プローブ固定スポットが樹脂基材上表面への酸化物形成よりなる表面上に形成されると良い。
【0016】
本発明によれば、標的物質の検出工程においてブロッキング処理,十分な洗浄処理を省略し、ハイブリダイゼーション後の簡易的な洗浄処理のみへと簡略化することができる。引いては、標的物質の検出を短時間で簡易的に行なうことができる検出素子を提供することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる標的物質に対して特異的に結合するプローブをスポット状に配置されてなる検出素子は、検出対象領域のプローブ非配置領域表面,プローブスポット間隙領域表面の少なくとも一部が酸化物表面である。また、本発明にかかるプローブスポットは酸化物表面に形成することができる。
【0018】
プローブとしては、標的物質と特異的に結合可能な物質であればどのような物質であってもよいが、核酸を含むことが好ましい。具体的には、一本鎖核酸プローブ、一本鎖DNAプローブ、一本鎖RNAプローブ、一本鎖PNAプローブなどが含まれる。
【0019】
これらのスポット状に配置されてなるプローブは基材上に固定されている。プローブを基材上にスポット状に形成する方法としては、ピン法,インクジェット法、フォトリソグラフィー技術を利用した方法などのさまざまな固定方法が知られているが、特に制約されるものではない。また、スポットの形状も、円、四角形、多角形、等様々な様態をとることができる。ただし、基材上にスポット密度を高密度に形成する観点からインクジェット法が好ましい。
【0020】
スポット径の大きさとしては、5μm〜500μmであると良い。
【0021】
プローブを基材上へ固定するための結合方法としては、イオン結合,水素結合,共有結合などのさまざまな結合形態が知られており特に制約されるものではないが、標的物質を検出するためのプローブを確実に結合しておく点から共有結合であることが好ましい。
【0022】
プローブスポットが配置される基材としては酸化物であることが好ましいが、検出対象領域のプローブ非配置領域表面もしくは/およびプローブスポット間隙領域表面の少なくとも一部が酸化物表面であれば良く、この限りではない。酸化物としては、アルミニウム,鉄,銅,チタンなどの酸化物材料の他、シリカなど材料が挙げられる。アルミニウム,鉄,銅,チタンなど金属表面は大気中の酸素と容易に反応し、表面上に酸化層を形成することが知られており、これらを酸化物表面として用いても良い。特には、珪素系化合物材料が好ましい。珪素系化合物の例としてはSiO2が挙げられる。珪素,珪素系化合物としては、石英,ガラスなどが挙げられるが、簡易的に使用することが可能である点からガラス材料が好適である。また、基材表面としてはこれらの酸化物が基材表面上に膜として形成されているものであっても構わない。具体的には、平坦性の良い樹脂基材にSiO2を成膜したものが挙げられる。樹脂基材としては検出素子とした時に平坦性が得られるものが好ましいが、特に制約されるものではない。樹脂基材としては、SiO2成膜処理および平坦性を考慮すると耐熱性の高いポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルフォン(PES)などが好適である。SiO2成膜方法としてはさまざまな方法が知られており、特に制約されるものではないが簡便である点からスパッタ法が好適である。SiO2膜の膜厚としては標的物質が吸着しない程度であれば良く、好ましくは0.01μm〜0.5μmの厚さであるとよい。また、酸化物以外の材料としては、樹脂基材が挙げられる。樹脂基材としては、プローブと結合性を有するものが好ましい。プローブと結合性を有する樹脂基材としては、カルボジイミド基,エポキシ基,イソシアネート基を有する樹脂が挙げられるが、プローブと結合性を有するものであれば良く、特にこれらに制約されるものではない。
【0023】
本実施形態に係る検出対象領域となるプローブ非配置領域表面もしくは/およびプローブスポット間隙領域表面としては、少なくとも一部が酸化物表面で形成されている。酸化物としては、アルミニウム,鉄,銅などの金属酸化物の他、シリカなど材料が挙げられる。特には、珪素,珪素化合物材料が好ましい。珪素酸化物としては、シリカ,石英,ガラス,SiO2などが挙げられるが、簡易的に使用することが可能である点からガラス材料が好適である。また、これらの酸化物が基材表面上に膜として形成されているものであっても構わない。さらには、酸化物以外の材料であって、一部が酸化物で被覆されているものであっても構わない。酸化物以外の材料としては、樹脂基材が挙げられる。樹脂基材としては、酸化物を成膜する事が容易であるものであれば良く、特にこれらに制約されるものではない。樹脂基材として具体的なものを挙げるのであれば、平坦性の良いプラスチック基板表面にSiO2を成膜したものが挙げられる。プラスチック基板材料としては検出素子とした時に平坦性が得られるものが好ましい。SiO2成膜処理および素子としての平坦性を考慮するとポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルサルフォンなどが好適である。
【0024】
SiO2成膜方法としてはさまざまな方法が知られており特に制約されるものではないが、簡便である点から蒸着法が好適である。SiO2膜の膜厚としては標的物質が吸着しない程度であれば良い。
【0025】
以下に本発明に係る検出方法について詳細に説明する。
【0026】
本発明に係る検出素子の製造方法は、少なくとも一部に酸化物表面を有する基材を準備する工程と、前記酸化物表面上に前記プローブをスポット状に配置し、該プローブを前記担体に固定化する工程と、を有することを特徴とする。
【0027】
上記の方法により、プローブがスポット状に配置されてなり、検出対象領域のプローブ非配置領域表面、プローブスポット間隙領域表面の少なくとも一部が酸化物表面でなる検出素子を簡便に形成することができる。
【0028】
より具体的な方法としては、以下の方法が挙げられる。
【0029】
第一の方法としては、予めプローブを基材上に固定する物質を含むプローブ固定媒体を調整しておき、所定の間隔となるように酸化物表面上にスポッティングを行なうことにより、プローブ固定スポットを形成しておく。次にプローブ固定スポット上に重なるように、予め調整しておいたプローブを含むプローブ媒体をスポッティングすることによりプローブを基材上に固定する方法である。プローブを基材上に固定する物質としては、プライマー,カップリング剤,シーラント,表面処理剤,表面改質剤,架橋剤,二価性試薬などが含まれる。これらの物質はプローブもしくはプローブに官能基が化学修飾されたプローブ官能基と結合する官能基を有するものであっても良い。官能基としてはエポキシ(CHOCH2)基,アミノ(NH2)基,メルカプト(SH)基,マレイミド基,クロロプロピル(C3H6Cl)基,イソシアネート(NCO)基などが含まれる。特にはプローブと結合しうる官能基としては、プローブ官能基との結合を考慮するとエポキシ基,マレイミド基,イソシアネート基が好ましい。また、これらのプローブを基材上に固定する物質は、基材上へ固定するための官能基を有するものであっても良く、官能基としてはアルコキシシリル(SiOR)基、シラノール(SiOH)基、アルコキシ(OR)基などが含まれる。特には基材上への固定容易性からアルコキシシリル基、シラノール基が好ましい。シラノール基はアルコキシシリル基の加水分解により形成されるものであっても良い。プローブとしては、基材への固定するための反応部位を有するものであっても良く、この反応部位としては、官能基、ビオチンなどが挙げられる。この反応部位は適当な長さのリンカーの一部として提供されたものが良い。例えば官能基としては、アミノ(NH2)基、カルボニル(COOH)基、メルカプト(SH)基、水酸(OH)基などの官能基が挙げられる。特にはプローブ官能基としては、プローブ官能基合成の容易性を考慮するとアミノ基が好ましく、プローブ官能基の反応性を考慮するとメルカプト基が好ましい。
【0030】
プローブとプローブを基材上に固定する物質は媒体中において反応することにより結合するものであっても良く、反応は官能基間での化学反応による共有結合であることが好ましい。これらプローブとプローブを基材上に固定する物質の各々の官能基組合せとして具体的なものをあげるのであれば、例えばプローブ官能基がアミノ基であり物質と結合しうる官能基がエポキシ基、プローブ官能基がアミノ基であり物質と結合しうる官能基がイソシアネート基、プローブ官能基がカルボニル基であり物質と結合しうる官能基がアミノ基、プローブ官能基がメルカプト基であり物質と結合しうる官能基がマレイミド基、プローブ官能基が水酸基であり物質と結合しうる官能基がエポキシ基の組合せが挙げられる。
【0031】
特にはプローブ官能基合成の容易性、物質と結合しうる官能基の反応性を考慮するのであればプローブ官能基がアミノ基であり物質と結合しうる官能基がエポキシ基であるものが好ましい。これらの組合せはプローブ媒体をプローブ固定用スポット上にスポッティングした際に容易に反応することが好ましく、反応させるために所定の条件下において処理をするもしくは、所定の試薬を添加するものであっても良い。プローブを基材上に固定する物質が官能基を有し、官能基がアルコキシシリル基、シラノール基である場合、物質として具体的なものをあげるのであれば、シランカップリング剤があげられる。シランカップリング剤において、アルコキシシリル基の加水分解によりシラノール基を形成される。シランカップリング剤におけるアルコキシシリル基とは異なるもう1種の官能基としては、上記にあげたエポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、クロロプロピル基である場合、シランカップリング剤はそれぞれエポキシシラン、イソシアネートシラン、メルカプトシラン、クロロプロピルシランである。これらのシランカップリグ剤は必要に応じて加水分解を行ない、固定媒体としても良い。プローブを基材上に固定する物質を含む固定媒体を酸化物表面上にスポッティングすることによりプローブ固定用スポットを形成し、プローブ固定用スポット上にプローブを含むプローブ媒体をスポッティングすることにより、検出対象領域のプローブ非配置領域表面、プローブスポット間隙領域表面の少なくとも一部が酸化物表面でなる検出素子を形成することができる。
【0032】
第二の方法としては、予めプローブおよびプローブを基材上に固定する物質を混合したプローブ媒体を調整しておき酸化物表面上にスポッティング、固定する方法である。プローブとしては、基材への固定するための反応部位を有するものであっても良く、この反応部位としては、官能基、ビオチンなどが挙げられる。この反応部位は適当な長さのリンカーの一部として提供されたものでもよい。例えば官能基としては、アミノ(NH2)基、カルボニル(COOH)基、メルカプト(SH)基、水酸(OH)基などの官能基が挙げられる。特にはプローブ官能基としては、プローブ官能基合成の容易性を考慮するとアミノ基が好ましく、プローブ官能基の反応性を考慮するとメルカプト基が好ましい。プローブを基材上に固定する物質としては、プライマー,カップリング剤,シーラント,表面処理剤,表面改質剤,架橋剤,二価性試薬などが含まれる。これらの物質はプローブもしくはプローブ官能基と結合する官能基を有するものであっても良く、官能基としてはエポキシ(CHOCH2)基,アミノ(NH2)基,メルカプト(SH)基,マレイミド基,クロロプロピル(C3H6Cl)基,イソシアネート(NCO)基などが含まれる。特にはプローブと結合しうる官能基としては、プローブ官能基との結合を考慮するとエポキシ基,マレイミド基,イソシアネート基が好ましい。また、これらのプローブを基材上に固定する物質は、基材上へ固定するための官能基を有するものであっても良く、官能基としてはアルコキシシリル(SiOR)基、シラノール(SiOH)基、アルコキシ(OR)基などが含まれる。特には基材上への固定容易性からアルコキシシリル基、シラノール基が好ましい。シラノール基はアルコキシシリル基の加水分解により形成されるものであっても良い。プローブとプローブを基材上に固定する物質は媒体中において反応することにより結合するものであっても良く、反応は官能基間での化学反応による共有結合であることが好ましい。これらプローブとプローブを基材上に固定する物質の各々の官能基組合せとして具体的なものをあげるのであれば、例えばプローブ官能基がアミノ基であり物質と結合しうる官能基がイソシアネート基、プローブ官能基がアミノ基であり物質と結合しうる官能基がエポキシ基、プローブ官能基がカルボニル基であり物質と結合しうる官能基がアミノ基、プローブ官能基がメルカプト基であり物質と結合しうる官能基がマレイミド基、プローブ官能基が水酸基であり物質と結合しうる官能基がエポキシ基の組合せが挙げられる。特にはプローブ官能基合成の容易性、物質と結合しうる官能基の反応性を考慮するのであればプローブ官能基がアミノ基であり物質と結合しうる官能基がエポキシ基であるものが好ましい。これらの組合せは媒体中での混合により反応することが好ましく、反応させるために所定の条件下において処理をするものであっても良い。プローブを基材上に固定する物質が官能基を有し、官能基がアルコキシシリル基、シラノール基である場合、物質として具体的なものをあげるのであれば、シランカップリング剤があげられる。シランカップリング剤において、アルコキシシリル基の加水分解によりシラノール基を形成される。シランカップリング剤におけるアルコキシシリル基とは異なるもう1種の官能基としては、上記にあげたエポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、クロロプロピル基である場合、シランカップリング剤はそれぞれエポキシシラン、イソシアネートシラン、メルカプトシラン、クロロプロピルシランである。これらのシランカップリグ剤は必要に応じて加水分解を行ない、プローブと混合させる。プローブおよびプローブを基材上に固定する物質を混合したプローブ媒体を酸化物表面上にスポッティングすることにより、プローブがスポット状に配置されてなり、検出対象領域のプローブ非配置領域表面、プローブスポット間隙領域表面の少なくとも一部が酸化物表面でなる検出素子を形成することができる。
【0033】
第三の方法としては、酸化物表面上にプローブと結合性を有する官能基を含む化合物を基材表面上に固定させる。酸化物としては金属酸化物,ガラスなどが挙げられる。具体的には簡便に使用することが容易であることからガラス基板が好適である。プローブと結合性を有する官能基を含む化合物としてはさまざまなものが挙げられるが、エポキシ基を含む化合物をあげることができる。具体的にはエポキシ基を有するシランカップリング剤であるγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランがある。γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランをコーティングした基板を作成した。コーティング方法としては、スピンコート法,スプレーコート法,ディップコート法などの方法があるが、スピンコート法によるコーティング方法が薄く均一にできることから好適である。この化合物を結合固定させた基材表面上に感光性樹脂を用いてプローブスポット形成領域に感光性樹脂が被覆されるようにパターニングを行ない、プローブスポット非形成領域の被覆化合物を露出させる。パターニングに用いる感光性樹脂としてはプローブスポット非形成領域への酸化物成膜の後に除去する点からポジ型レジストであることが好ましい。露出した基材表面をプラズマドライエッチング処理することによりプローブと結合性を有する官能基を含む化合物を分解除去し、酸化物表面を露出させた。このようにして、酸化物表面をプローブスポット非形成領域の表面とする。プローブスポット形成領域に被覆された感光性樹脂を除去する。除去する方法としては剥離液を用いて溶液中において除去する方法が簡易的である。感光性樹脂がポジ型である場合、除去をより簡易的に行なうために感光させた後に剥離処理を行なっても良い。プローブと結合性を有する官能基が露出したプローブスポット形成領域に、標的物質と特異的に結合するプローブを含むプローブ溶液をスポッティングすることによりプローブがスポット状に配置されてなり、検出対象領域のプローブ非配置領域表面、プローブスポット間隙領域表面の少なくとも一部が酸化物表面でなる検出素子を形成することができる。
【0034】
第四の方法としては、酸化物表面上にプローブと結合性を有する官能基を含む化合物を基材表面上に固定させる。酸化物としては金属酸化物,ガラスなどが挙げられる。具体的には簡便に使用することが容易であることからガラス基板が好適である。プローブと結合性を有する官能基を含む化合物としてはさまざまなものが挙げられるが、エポキシ基を含む化合物をあげることができる。具体的にはエポキシ基を有するシランカップリング剤であるγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランがある。γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランをコーティングした基板を作成した。コーティング方法としては、スピンコート法,スプレーコート法,ディップコート法などの方法があるが、スピンコート法によるコーティング方法が薄く均一にできることから好適である。この化合物を結合固定させた基材表面上に感光性樹脂を用いてプローブスポット形成領域に感光性樹脂が被覆されるようにパターニングを行ない、プローブスポット非形成領域の被覆化合物を露出させる。パターニングに用いる感光性樹脂としてはプローブスポット非形成領域への酸化物成膜の後に除去する点からポジ型レジストであることが好ましい。露出した基材表面上に酸化物を成膜、被覆することにより基材表面を酸化物表面とした。成膜する酸化物,膜厚としては特に制約されるものではないが、簡易的に成膜する事が可能であることからCuなどの金属が挙げられる。膜厚については標的物質が吸着するのを妨げるのに十分であれば良く、好ましくは10nm〜500μm、具体的には50nm程度であれば良い。このようにして、酸化物表面をプローブスポット非形成領域の表面とする。プローブスポット形成領域に被覆された感光性樹脂を除去する。除去する方法としては剥離液を用いる除去が簡易的である。感光性樹脂がポジ型である場合、除去をより簡易的に行なうために感光させた後に剥離処理を行なっても良い。プローブと結合性を有する官能基が露出したプローブスポット形成領域に、標的物質と特異的に結合するプローブを含むプローブ溶液をスポッティングすることによりプローブがスポット状に配置されてなり、検出対象領域のプローブ非配置領域表面、プローブスポット間隙領域表面の少なくとも一部が酸化物表面でなる検出素子を形成することができる。
【0035】
プローブがスポット状に配置されてなり、検出対象領域のプローブ非配置領域表面、プローブスポット間隙領域表面の少なくとも一部が酸化物表面でなる検出素子は、標的物質を検出するためのハイブリダイゼーション溶液でのインキュベーション前後でのブロッキング処理や十分な洗浄処理を行なう必要が無い。具体的にはハイブリダイゼーション溶液でのインキュベーション前にブロッキング処理を行なうことなく標的物質検出を行なうばかりではなく、ハイブリダイゼーション溶液でのインキュベーション後の洗浄においてもSDS,SSCなどの混合溶液、SSC水溶液を用いることなく、バッファ溶液でのハイブリダイゼーション溶液除去を行なうことで十分な検出を行なうことができる。
【0036】
【実施例】
以下実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。
【0037】
〔実施例1〕
(1)プローブの合成
標的物質に対して特異的に結合可能なプローブとして一本鎖DNAプローブを用いた。配列番号1の一本鎖DNAプローブを用意した。なお、配列番号:1の一本鎖DNA末端には5’末端の水酸基にリン酸基とヘキサメチレンを介してアミノ基を結合した18量体のオリゴマーを用意し、以下の実験に用いた。
配列番号:1
5’H2N−(CH2)6−O−PO2−O−ACTGGCCGTCGTTTTACA3’。
【0038】
(2)プローブ可溶化物質
プローブを有機溶媒に可溶化させる物質として塩化セチルピリジニウム(セチルピリジニウムクロライド)を用いた。塩化セチルピリジニウムが完全に溶解した水溶液とするために、50℃のウォーターバス中で加温した。
【0039】
(3)プローブ固定物質
プローブを基材上に固定する物質としてのイソシアネート基を有するシラン化合物(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)を含むシランカップリング剤(商品名:KBE−9007;信越化学工業(株)社製)を以下の実験に用いた。
【0040】
(4)プローブ固定媒体の調整
上記(3)のプローブ固定物質を20μl分注し、これに2−プロパノールを400μl、2−ブタノールを400μl、ジプロピレングリコールを200μl分注し、混合溶解させた。十分に攪拌、混合した後に分離していないことを確認した後、スポッティングにおいてノズルつまりが発生しないように濾過を行ない、プローブ固定媒体を調整した。
【0041】
(5)プローブ媒体の調整
上記(1)の配列番号:1の一本鎖DNAプローブを18nmolに分注、ドライアップしたものを用意し、これに20μlの純水を滴下、溶解させた。プローブを溶解させたプローブ水溶液にプローブを有機溶媒に可溶化させる物質の塩化セチルピリジニウムの約65mmol/l水溶液を5μl滴下、混合した。これによりDNAプローブが水溶液中より析出し、プローブ媒体が白濁した。
【0042】
ついで、有機溶媒であるジプロピレングリコール、2−プロパノールをそれぞれ200μl、400μl滴下し、5分間混合した。
【0043】
さらに水溶性高分子材料であるポリビニルアルコール(PVA)を濃度0.5質量%となるように純水中に溶解させた。完全に溶解させるためにホットバス中で80℃に加温しながら60分間攪拌した。不溶解物が無いことを確認した後、スポッティングにおいてノズルつまりが発生しないように濾過を行ない、PVA水溶液を調整した。
【0044】
上記のとおり調整したプローブ溶液中に、上記のとおり調製したPVA水溶液を50μl滴下した。最後に、プローブ媒体全量で1mlとなるように純水を滴下し、5分間混合した。混合した後、30分間放置し、プローブ媒体を調製した。
【0045】
(6)基板洗浄
1inch×3inchのシリカコートソーダライムガラス基板(厚み:約1.1mm)を純水ですすぎ、表面に付着した異物を除去した。これをUV/O3洗浄装置を用いて5分間処理し、表面に付着した有機物を除去した。UV/O3洗浄した基板をカセットに入れ、無機アルカリ系洗剤(商品名:セミクリーンKG;横浜油脂工業(株)社)の5vol%水溶液に浸漬しながら、超音波を5分間照射した。引き続き純水流水中でカセットごと基板を十分にすすぎ、ガラス基板およびカセットに付着した洗剤を水洗、除去した。十分にすすいだ後、純水中にカセットごとガラス基板を浸し、超音波洗浄を5分間行なった。超音波洗浄後、純水流水中で十分にすすぎ、ガラス基板およびカセットに付着したパーティクルを水洗、除去した。水洗後のガラス基板をカセットごとスピンドライ乾燥させた。基板の洗浄を確認するために、基板上における純水接触角を測定した。その結果、基板のすべての部位において接触角が充分に小さく濡れ拡がった状態(スプレッド状態)であった。
【0046】
(7)プローブ固定媒体のスポッティング
上記(4)で調整したプローブ固定媒体をインクジェット装置を用いて基材上にスポッティングを行なった。インクジェットヘッドにはピエゾジェットヘッドを用いた。ピエゾジェットヘッドにプローブ固定媒体を充填し、上記(6)で用意したガラス基板上にプローブ固定媒体をスポッティングした。ここでピエゾジェットヘッドの液体吐出面とガラス基板の液体付着面との距離は約0.5mmであった。スポッティング終了後、ガラス基板を目視により観察したところ、ガラス基板表面にマトリックス状のスポット配列が形成されていることが確認された。このようにしてプローブ固定媒体を基材上にスポッティングしたプローブ固定スポット基材を作製した。
【0047】
(8)プローブ媒体のスポッティング
上記(5)で調製したプローブ媒体をインクジェット装置を用いて基材上にスポッティングを行なった。インクジェットヘッドにはピエゾジェットヘッドを用いた。ピエゾジェットヘッドにプローブ媒体を充填し、上記(7)で作成したプローブ固定スポット基材上に、プローブ媒体がプローブ固定スポット上にスポッティングされるようにスポッティング位置を調整した後、スポッティングを行なった。スポッティング終了後、ガラス基板を顕微鏡により観察したところ、ガラス基板表面にマトリックス状のスポット配列が形成されていることが確認された。スポッティング終了後のガラス基板を60℃に加温したホットプレート上に15分間静置した。ホットプレートでの処理をした基板はデシケーター内に保管した。このようにしてプローブ固定基材(プローブアレイ)を作製した。
【0048】
(9)ブロッキング処理
上記(8)で作成したプローブ固定基材をブロッキング処理することなく、ハイブリダイゼーション処理を行なうこととした。
【0049】
(10)ハイブリダイゼーション処理
上記(1)の配列番号1の一本鎖DNAプローブと相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAプローブをDNA自動合成機で合成し、5’末端にローダミンを結合させて標識化した一本鎖DNAプローブを得た。この標識化一本鎖DNAを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に最終濃度50nMとなるように溶解し、この溶液中に上記(6)で得たプローブ固定基材を浸漬し、室温(45℃)で2時間ハイブリダイゼーション処理を行なった。その後、プローブアレイを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液で洗浄してプローブ核酸とハイブリダイズしなかった一本鎖DNAプローブを洗い流した。ついで、純水で余分な塩分を除去した後、窒素ブローによりプローブアレイを乾燥させた。次に該プローブアレイのスポットの蛍光を、蛍光スキャナ(商品名:GenePix4000B;Axon Instruments,Inc.製)を用いて蛍光強度を評価した。評価するにあたり、レーザーパワーを100%に設定し、PMTを400Vに設定した。
【0050】
(11)結果
上記(10)での蛍光スキャナ評価結果を解析したところ、標識化一本鎖DNAプローブと完全マッチである配列番号:1のDNAプローブのスポットでは、532nmでの蛍光強度が高い部位での輝度は4378であった。スポットの532nmでの蛍光強度積算値は2173768であった。また、DNAプローブのスポット部以外の蛍光強度を観察したところ50前後であった。各DNAプローブのスポットを蛍光で観察した状態では、各々のスポット形状がほぼ円形であり、同じプローブ媒体をスポッティングしたスポット間においては蛍光強度の差異は殆ど認められなかった。また、隣接するスポットとの間隔はほぼ均等であり、約300μmの間隔で格子状にスポットが配置されていることが観察された。
【0051】
〔実施例2〕
(1)プローブの合成
実施例1と全く同様にして一本鎖DNAプローブを用意した後、以下の実験に用いた。
【0052】
(2)プローブ可溶化物質
実施例1と全く同様にしてプローブ可溶化物質を用意した後、以下の実験に用いた。
【0053】
(3)プローブ固定物質
実施例1と同様にしてプローブ固定物質としてのイソシアネート基を有するシラン化合物(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)を含むシランカップリング剤(商品名:KBE−9007;信越化学工業(株)社製)を用意した後、以下の実験に用いた。
【0054】
(4)プローブ媒体の調整
上記(1)の配列番号:1の一本鎖DNAプローブを18nmolに分注、ドライアップしたものを用意し、これに20μlの純水を滴下、溶解させた。プローブを溶解させたプローブ水溶液にプローブを有機溶媒に可溶化させる物質の塩化セチルピリジニウムの約65mmol/l水溶液を5μl滴下、混合した。これによりDNAプローブが水溶液中より析出し、プローブ媒体が白濁した。DNAプローブを遠心沈降した後に、上記プローブ固定物質を30μl滴下した。十分に攪拌、混合した後に、30分間静置した。
【0055】
ついで、有機溶媒であるジプロピレングリコール、イソプロピルアルコールをそれぞれ500μl、1000μl滴下し、5分間混合した。
【0056】
さらに水溶性高分子材料であるポリビニルアルコール(PVA)を濃度0.5質量%となるように純水中に溶解させた。完全に溶解させるためにホットバス中で80℃に加温しながら60分間攪拌した。不溶解物が無いことを確認した後、スポッティングにおいてノズルつまりが発生しないように濾過を行ない、PVA水溶液を調整した。
【0057】
上記のとおり調整したプローブ溶液中に、上記のとおり調製したPVA水溶液を50μl滴下した。最後に、プローブ媒体全量で2mlとなるように純水を滴下し、5分間混合した。混合した後、30分間放置し、プローブ媒体を調製した。
【0058】
(5)基板洗浄
1inch×3inchのシリカコートソーダライムガラス基板(厚み:約1.1mm)を純水ですすぎ、表面に付着した異物を除去した。これをUV/O3洗浄装置を用いて5分間処理し、表面に付着した有機物を除去した。UV/O3洗浄した基板をカセットに入れ、無機アルカリ系洗剤(商品名:セミクリーンKG;横浜油脂工業(株)社)の5vol%水溶液に浸漬しながら、超音波を5分間照射した。引き続き純水流水中でカセットごと基板を十分にすすぎ、ガラス基板およびカセットに付着した洗剤を水洗、除去した。十分にすすいだ後、純水中にカセットごとガラス基板を浸し、超音波洗浄を5分間行なった。超音波洗浄後、純水流水中で十分にすすぎ、ガラス基板およびカセットに付着したパーティクルを水洗、除去した。水洗後のガラス基板をカセットごとスピンドライ乾燥させた。基板の洗浄を確認するために、基板上における純水接触角を測定した。その結果、基板のすべての部位においてスプレッド状態であった。
【0059】
(6)プローブ媒体のスポッティング
上記(4)で調製したプローブ媒体をインクジェット装置を用いて基材上にスポッティングを行なった。インクジェットヘッドにはピエゾヘッドを用いた。ピエゾジェットヘッドにプローブ媒体を充填し、上記(5)で用意したガラス基板上に、プローブ媒体をスポッティングした。ここでピエゾジェットヘッドの液体吐出面とガラス基板の液体付着面との距離は約0.5mmであった。スポッティング終了後、ガラス基板を顕微鏡により観察したところ、ガラス基板表面にマトリックス状のスポット配列が形成されていることが確認された。スポッティング終了後のガラス基板を80℃に加温したホットプレート上に5分間静置した。ホットプレートでの処理をした基板はデシケーター内に保管した。このようにしてプローブ固定基材(プローブアレイ)を作製した。
【0060】
(7)ブロッキング処理
上記(6)で作成したプローブ固定基材をブロッキング処理することなく、ハイブリダイゼーション処理を行なうこととした。
【0061】
(8)ハイブリダイゼーション処理
上記(1)の配列番号1の一本鎖DNAプローブと相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAプローブをDNA自動合成機で合成し、5’末端にローダミンを結合させて標識化した一本鎖DNAプローブを得た。この標識化一本鎖DNAを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に最終濃度50nMとなるように溶解し、この溶液中に上記(6)で得たプローブ固定基材を浸漬し、室温(45℃)で2時間ハイブリダイゼーション処理を行なった。その後、プローブアレイを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液で洗浄してプローブ核酸とハイブリダイズしなかった一本鎖DNAプローブを洗い流した。ついで、純水で余分な塩分を除去した後、窒素ブローによりプローブアレイを乾燥させた。次に該プローブアレイのスポットの蛍光を、蛍光スキャナ(商品名:GenePix4000B;Axon Instruments,Inc.製)を用いて蛍光強度を評価した。評価するにあたり、レーザーパワーを100%に設定し、PMTを400Vに設定した。
【0062】
(9)結果
上記(8)での蛍光スキャナ評価結果を解析したところ、標識化一本鎖DNAプローブと完全マッチである配列番号:1のDNAプローブのスポットでは、532nmでの蛍光強度が高い部位での輝度は5531であった。スポットの532nmでの蛍光強度積算値は3433756であった。また、DNAプローブのスポット部以外の蛍光強度を観察したところ40前後であった。各DNAプローブのスポットを蛍光で観察した状態では、各々のスポット形状がほぼ円形であり、同じプローブ媒体をスポッティングしたスポット間においては蛍光強度の差異は殆ど認められなかった。また、隣接するスポットとの間隔はほぼ均等であり、約300μmの間隔で格子状にスポットが配置されていることが観察された。
【0063】
〔実施例3〕
(1)プローブの合成
実施例1と全く同様にして一本鎖DNAプローブを用意した後、以下の実験に用いた。
【0064】
(2)プローブ可溶化物質
実施例1と全く同様にしてプローブ可溶化物質を用意した後、以下の実験に用いた。
【0065】
(3)プローブ固定物質
実施例1と同様にしてプローブ固定物質としてのイソシアネート基を有するシラン化合物(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)を含むシランカップリング剤(商品名:KBE−9007;信越化学工業(株)社製)を用意した後、以下の実験に用いた。
【0066】
(4)プローブ媒体の調整
実施例2と同様にしてプローブ媒体を調整、準備した後、以下の実験に用いた。
【0067】
(5)基板洗浄
1inch×3inchのポリカーボネート基板(厚み:約1.0mm)を十分に洗浄した後にEB蒸着法によりSiO2成膜を行なった。SiO2膜厚は約20nmとなるように成膜した。このようにしてシリカコートプラスチック基板を準備した。シリカコートプラスチック基板を純水ですすぎ、表面に付着した異物を除去した。これをUV/O3洗浄装置を用いて2分間処理し、表面に付着した有機物を除去した。UV/O3洗浄した基板をカセットに入れ、無機アルカリ系洗剤(商品名:セミクリーンKG;横浜油脂工業(株)社)の2vol%水溶液に浸漬しながら、超音波を1分間照射した。引き続き純水流水中でカセットごと基板を十分にすすぎ、ガラス基板およびカセットに付着した洗剤を水洗、除去した。十分にすすいだ後、純水中にカセットごとガラス基板を浸し、超音波洗浄を1分間行なった。超音波洗浄後、純水流水中で十分にすすぎ、ガラス基板およびカセットに付着したパーティクルを水洗、除去した。水洗後のガラス基板をカセットごとスピンドライ乾燥させた。基板の洗浄を確認するために、基板上における純水接触角を測定した。その結果、基板のすべての部位においてスプレッド状態であった。
【0068】
(6)プローブ媒体のスポッティング
実施例2と同様にしてプローブ媒体を上記(5)で用意したシリカコートプラスチック基板上にスポッティングを行なった。インクジェットヘッドにはピエゾヘッドを用いた。スポッティング終了後、シリカコートプラスチック基板を目視により観察したところ、ガラス基板表面にマトリックス状のスポットが形成されていることが確認された。スポッティング終了後のガラス基板を50℃に加温したホットプレート上に20分間静置した。ホットプレートでの処理をした基板はデシケーター内に保管した。このようにしてプローブ固定基材(プローブアレイ)を作製した。
【0069】
(7)ブロッキング処理
上記(6)で作成したプローブ固定基材をブロッキング処理することなく、ハイブリダイゼーション処理を行なうこととした。
【0070】
(8)ハイブリダイゼーション処理
実施例2と同様にしてハイブリダイゼーション処理を行なった。ついで、純水により塩分を除去、窒素ブローによりプローブアレイを乾燥させた後、蛍光スキャナ(商品名:GenePix4000B;Axon Instruments,Inc.製)を用いて蛍光強度を評価した。評価するにあたり、レーザーパワーを100%に設定し、PMTを400Vに設定した。以下の実験に用いた。
【0071】
(9)結果
上記(8)での蛍光スキャナ評価結果を解析したところ、標識化一本鎖DNAプローブと完全マッチである配列番号:1のDNAプローブのスポットでは、532nmでの蛍光強度が高い部位での輝度は4782であった。スポットの532nmでの蛍光強度積算値は2825648であった。また、DNAプローブのスポット部以外の蛍光強度を観察したところ45前後であった。各DNAプローブのスポットを蛍光で観察した状態では、各々のスポット形状がほぼ円形であり、同じプローブ媒体をスポッティングしたスポット間においては蛍光強度の差異は殆ど認められなかった。また、隣接するスポットとの間隔はほぼ均等であり、約300μmの間隔で格子状にスポットが配置されていることが観察された。
【0072】
〔実施例4〕
(1)プローブの合成
実施例1と全く同様にして一本鎖DNAプローブを用意した後、以下の実験に用いた。
【0073】
(2)プローブ可溶化物質
上記実施例1と全く同様にしてプローブを有機溶媒に可溶化させる物質を用意した後、以下の実験に用いた。
【0074】
(3)プローブ固定物質
実施例1と全く同様にしてプローブ固定物質であるイソシアネートシランカップリング剤を用意した後、以下の実験に用いた。
【0075】
(4)プローブ媒体の調整
実施例2と全く同様にして、プローブ媒体を調製した。
【0076】
(5)基板洗浄
実施例2と全く同様にして基板洗浄を行ない、ガラス基板を用意した。
【0077】
(6)プローブ媒体のスポッティング
上記(4)で調製したプローブ媒体を実施例2と全く同様にしてスポッティングを行ない、プローブ固定基材を作製した。スポッティング終了後、ガラス基板を顕微鏡により観察したところ、ガラス基板表面にマトリックス状のスポット配列が形成されていることが確認された。スポッティング終了後のガラス基板を80℃に加温したホットプレート上に5分間静置した。ホットプレートでの処理をした基板はデシケーター内に保管した。このようにしてプローブ固定基材(プローブアレイ)を作製した。
【0078】
(7)ブロッキング処理
上記(6)で作製したプローブ固定基材を1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液中より取り出した。次いでガラス基板を2%ウシ血清アルブミン水溶液を満たした容器中に浸漬して2時間放置し、ブロッキング処理を行なった。
【0079】
(8)ハイブリダイゼーション処理
実施例1と全く同様にしてハイブリダイゼーション処理を行なった。その後、プローブアレイを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液で洗浄してプローブ核酸とハイブリダイズしなかった一本鎖DNAプローブを洗い流した。ついで、純水で余分な塩分を除去した後、窒素ブローによりプローブアレイを乾燥させた。次に該プローブアレイのスポットの蛍光を、蛍光スキャナ(商品名:GenePix4000B;Axon Instruments,Inc.製)を用いて蛍光強度を評価した。評価するにあたり、レーザーパワーを100%に設定し、PMTを400Vに設定した。
【0080】
(9)結果
上記(8)での蛍光スキャナ評価結果を解析したところ、標識化一本鎖DNAプローブと完全マッチである配列番号:1のDNAプローブのスポットでは、532nmでの蛍光強度が高い部位での輝度は5180であった。スポットの532nmでの蛍光強度積算値は3136578であった。また、DNAプローブのスポット部以外の蛍光強度を観察したところ55前後であった。各DNAプローブのスポットを蛍光で観察した状態では、各々のスポット形状がほぼ円形であり、同じプローブ媒体をスポッティングしたスポット間においては蛍光強度の差異は殆ど認められなかった。また、隣接するスポットとの間隔はほぼ均等であり、約300μmの間隔で格子状にスポットが配置されていることが観察された。
【0081】
〔実施例5〕
(1)プローブの合成
実施例1と全く同様にして一本鎖DNAプローブを用意した後、以下の実験に用いた。
【0082】
(2)プローブ可溶化物質
実施例1と全く同様にしてプローブを有機溶媒に可溶化させる物質を用意した後、以下の実験に用いた。
【0083】
(3)プローブ固定物質
実施例1と全く同様にしてプローブ固定物質であるイソシアネートシランカップリング剤を用意した後、以下の実験に用いた。
【0084】
(4)プローブ媒体の調整
実施例2と全く同様にして、プローブ媒体を調製した。
【0085】
(5)基板洗浄
実施例2と全く同様にして基板洗浄を行ない、ガラス基板を用意した。
【0086】
(6)プローブ媒体のスポッティング
上記(4)で調製したプローブ媒体を実施例2と全く同様にしてスポッティングを行ない、プローブ固定基材を作製した。スポッティング終了後、ガラス基板を顕微鏡により観察したところ、ガラス基板表面にマトリックス状のスポット配列が形成されていることが確認された。スポッティング終了後のガラス基板を80℃に加温したホットプレート上に5分間静置した。ホットプレートでの処理をした基板はデシケーター内に保管した。このようにしてプローブ固定基材(プローブアレイ)を作製した。
【0087】
(7)ブロッキング処理
上記(6)で作製したプローブ固定基材を1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液中より取り出した。次いでガラス基板を2%ウシ血清アルブミン水溶液を満たした容器中に浸漬して2時間放置し、ブロッキング処理を行なった。
【0088】
(8)ハイブリダイゼーション処理
実施例1と全く同様にしてハイブリダイゼーション処理を行なった。その後、プローブアレイを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液で洗浄してプローブ核酸とハイブリダイズしなかった一本鎖DNAプローブを洗い流した。ついで、0.1重量%SDSと2×SSCとの混合溶液、0.1重量%SDSと0.1×SSCとの混合溶液、および0.1×SSC水溶液で順次洗浄を行ない、最後に純水で余分な塩分を除去した。スキャナで観察するために窒素ブローによりプローブアレイを乾燥させた。次に該プローブアレイのスポットの蛍光を、蛍光スキャナ(商品名:GenePix4000B;Axon Instruments,Inc.製)を用いて蛍光強度を評価した。評価するにあたり、レーザーパワーを100%に設定し、PMTを400Vに設定した。
【0089】
(9)結果
上記(8)での蛍光スキャナ評価結果を解析したところ、標識化一本鎖DNAプローブと完全マッチである配列番号:1のDNAプローブのスポットでは、532nmでの蛍光強度が高い部位での輝度は1060であった。スポットの532nmでの蛍光強度積算値は435472であった。また、DNAプローブのスポット部以外の蛍光強度を観察したところ50前後であった。各DNAプローブのスポットを蛍光で観察した状態では、各々のスポット形状が円形ではあるものの輪郭部が滲んだ状態であり、同じプローブ媒体をスポッティングしたスポット間においては蛍光強度の差異はあるものの有意差は殆ど認められなかった。また、隣接するスポットとの間隔はほぼ均等であり、約300μmの間隔で格子状にスポットが配置されていることが観察された。
【0090】
以上の実施例1および5、6の比較から、本実施形態に係る検出素子は、ブロッキング処理、または充分な洗浄を行なわない方法であっても、充分に高感度な検出が可能な素子として提供できることがわかる。
【0091】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば標的物質に対して特異的に結合するプローブをスポット状に固定されてなる検出素子の製造方法であって、酸化物の表面に、プローブがプローブ固定物質によって固定されたスポット状のプローブ固定領域を形成する工程を有しており、前記プローブと、前記プローブ固定物質とが、選択的に前記プローブ固定領域に固定され、前記プローブ固定領域外において前記酸化物の表面が露出しており、前記プローブ固定領域を形成する工程は、前記プローブと、前記プローブ固定物質とが共存する液体を前記酸化物の表面にスポッティングする工程であることにより、標的物質を効率良く、安定的に検出する検出素子を製造することができる。標的物質の検出を行ない、標的物質についての判断をする際に重要となるプローブ非配置領域表面における標的物質の吸着は殆ど無くすことができる。引いては、標的物質の検出を効果的に、高感度にできるようになる。
【0092】
また本発明によれば、標的物質の検出工程においてブロッキング処理,十分な洗浄処理を省略し、ハイブリダイゼーション後の簡易的な洗浄処理のみへと簡略化することができる。引いては、標的物質の検出を短時間で簡易的に行なうことができるようになる。
【0093】
更に本発明によれば少量の検体からでも標的物質に関するより多くの情報を、より正確に検査可能とすることができ、またそれを用いることでサンプル中に標的物質が存在するか否かをより正確、且つ迅速に判定できる。同様にこのプローブアレイを用いることでサンプル中の標的物質の構造をより正確に、且つ迅速に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化物基材上へのプローブスポット形成概略図
【図2】樹脂基材上へのプローブスポット形成概略図
【図3】プローブ固定スポット上へのプローブ固定概略図
【符号の説明】
1 プローブスポット
2 酸化物表面
3 酸化物
4 樹脂基材
5 プローブ固定スポット
Claims (3)
- 検出素子の製造方法であって、
酸化物の表面に、プローブがプローブ固定物質によって固定されたスポット状のプローブ固定領域を形成する工程を有しており、
前記プローブと、前記プローブ固定物質とが、選択的に前記プローブ固定領域に固定され、前記プローブ固定領域外において前記酸化物の表面が露出しており、
前記プローブ固定領域を形成する工程は、前記プローブと、前記プローブ固定物質とが共存する液体を前記酸化物の表面にスポッティングする工程である
ことを特徴とする検出素子の製造方法。 - 樹脂基材表面に前記酸化物の表面を形成する工程を更に有する請求項1に記載の検出素子の製造方法。
- 前記プローブ固定領域を形成する工程は、前記核酸プローブと、シラノール基を有するシランカップリング剤とが共存する液体を前記酸化物の表面にスポッティングする工程である請求項1または2に記載の検出素子の製造方法。
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