以下、本発明の好適な実施の形態を図面を参照しながら説明する。一般的なOCB型液晶表示装置については上述したので、以下の各実施の形態においては、上述したOCB型液晶表示装置と異なる点を中心に説明する。なお、本明細書においては、用語「厚み方向」「手前・奥方向」「左右方向」を用いるが、それぞれが有する意味は、図25に示されている。なお、ゲート線22A、B、C…の配列を考慮して、図25では、手前と奥とを逆にしている。まず、第1群の本発明に係る液晶表示装置の好適な実施の形態を、以下の実施の形態1において説明する。
(実施の形態1)
(実施の形態1−1)
この実施の形態においては、ソース電極21を介して交流矩形波電圧を画素電極23に印加することによって手前・奥方向の横電界81を画素電極23の間に生じさせることによって初期化を促進する。
図1は、本実施の形態1−1においてソース線21、ゲート線22、および対向電極31に印加される電圧を縦軸とし、時間を横軸としたOCB型液晶表示装置を初期化する際の駆動波形を示している。なお、図1には、ソース線21、ゲート線22、画素電極23、および駆動手段(駆動回路)の概略図も併せて示している。なお、説明を容易にするという観点から、他の図においては、駆動手段(駆動回路)の表記を省略する。
まず、第1段目のゲート線22Aに駆動信号としてプラス10Vの電圧を印加することにより画素電極23Aaのスイッチング素子4Aaを「オン」にする。これにより、ソース電極42とドレイン電極43との間が電気的に接続される。ソース線21aには交流矩形波電圧が印加されているが、スイッチング素子4Aaがオンになった時には、図1に示すように、ソース線21aにプラス7Vの電圧が印加されている。従って、ソース線21aからソース電極42およびドレイン電極43を介してプラス7Vの電圧が画素電極23Aaに印加される。
次に、第1段目のゲート線22Aに再びマイナス10Vの電圧を印加することによって画素電極23Aaのスイッチング素子4Aaをオフにする。スイッチング素子4がオンになる時間は約20μ秒である。これと同時に第2段目のゲート線22Bにプラス10Vの電圧を印加することにより画素電極Baのスイッチング素子4Baを「オン」にする。ソース線21aには交流矩形波電圧が印加されているが、スイッチング素子4Baがオンになった時には、図1に示すように、ソース線21aにマイナス7Vの電圧が印加されている。従って、ソース線21aからソース電極42およびドレイン電極43を介してマイナス7Vの電圧が画素電極23Baに印加される。これを第3段目以降のゲート線22C…についても繰り返す。
すべてのゲート線22について順次プラス10Vの電圧を印加することによって、縦一列の画素電極23aにソース線21aから上記のように交流矩形波電圧を印加すると、図2に示すように、奇数行目の画素電極23Aa、Ca…には、プラスの電圧が印加される。偶数行目の画素電極23Ba、Da…には、マイナスの電圧が印加される。
そうすると、図2に示すように、奇数行目の画素電極23Aa、Ca…と、偶数行目の画素電極23Ba、Da…との間には、それぞれ電界が発生する。この電界は、液晶表示装置の横方向(厳密には手前・奥方向)に向いているので、以下、「横電界」(参照符号:81)と呼ぶ。後述する他の横電界と区別するため、厳密には「手前・奥方向の横電界」(参照符号:81)という場合がある。
このように生じた横電界81はスプレイ配向からベンド配向への転移を促進する。その理由は判然とはしていないが、図3に示すように、画素電極23上に位置する液晶分子51aについては、画素電極23と対向電極31(図3においては図示せず)との間に電位差が生じた場合、点線で示したようにその長軸方向LQLSがちょうど液晶表示装置に厚み方向に平行となるように起きあがろうとする。一方、縦方向に隣接する画素電極23の間に挟まれた液晶分子51bについては、画素電極23と対向電極31との間の電位差だけでなく、上述した横電界81もかかるので、点線で示したようにその長軸方向LQLSがちょうど矢印C1のようにひねられるようにしてソース線21に平行な方向にも向こうとする。このように、液晶5内でその長軸LQLSがそれぞれ異なる方向に向こうとする液晶分子51が生じると、そこで不安定な「擾乱」状態が発生する。この不安定な「擾乱」状態が生じると、スプレイ配向からベンド配向へ転移しやすくなると考えられている。なお、画素電極23と対向電極31との間に電位差が生じている限り、液晶5のどこかでスプレイ配向からベンド配向へ転移すれば、当該箇所から液晶5全体にスプレイ配向からベンド配向への転移が広がる。液晶5全体がベンド配向になった後に、表示させたい画像に対応した電圧を各画素電極23に印加することによって表示が行われる。
本実施の形態1−1においては、画素電極23は、ゲート線22とは異なる層に設けることが好ましい。なぜなら、本実施の形態においては、上記のように、手前・奥方向に隣接する2つの画素電極23の間で横電界81が生じる。しかし、画素電極23とゲート線22とが同一の層に位置する場合には、手前・奥方向に隣接する2つの画素電極23の間に生じる横電界81が、スイッチング素子4をオン・オフするためにゲート線22に印加される電圧から影響を受けることになる。従って、ゲート線22に印加される電圧からの影響を最小限にするためには、ゲート線22と画素電極23との間に絶縁層(図示せず)を挟むことが好ましい。この絶縁層は一般的には「平坦化膜」とも呼ばれており、厚みが2μm以上3μm以下の樹脂から構成されていることが好ましい。理由は実施の形態1−2において後述するが、画素電極23は、ソース線21とも異なる層に設けることが好ましい。ゲート線22と画素電極23との間に絶縁層(図示せず)を挟む場合には、本発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の平面図である図4に示すように、平面視において画素電極23の手前側の側縁および奥側の側縁がゲート線22または共通容量線25に重なり合う(図面ではゲート線22に重なり合っている)。また、図4に示すように、画素電極23をゲート線22とソース線21とも異なる層に設ける場合には、平面視において画素電極23の左側および右側の側縁がソース線21に重なり合う。
図1に示すように、このようなソース線21を介して交流矩形波電圧を画素電極23に印加している際には、対向電極31にも電圧を印加することにより画素電極23と対向電極31との間の電位差を大きくすることが好ましい。好ましい電位差は、8V以上30V以下である。このような電位差を画素電極23と対向電極31との間に発生させることによって、厚み方向の電位差が大きくなるので、スプレイ配向からベンド配向への転移が促進される。
画素電極23と対向電極31との間の電位差が8V未満であると、スプレイ配向からベンド配向への転移が促進されにくい場合がある。逆にこの電位差を30V以上とすることは、液晶表示装置としての設計の観点から困難である場合が多い。より好ましい電位差は20V以上25V以下である。また、対向電極31に印加する電圧は一定に維持することが好ましい。
本発明者らは、図5に示すように、画素電極23に電圧を印加し始めてから50ミリ秒が経過する前に対向電圧32に一定電圧を印加し始めることが好ましいという知見も見いだした。言い換えれば、画素電極23に電圧を印加し始めてから50ミリ秒が経過した後に対向電圧32に一定電圧を印加し始めた場合には、液晶分子51がスプレイ配向からベンド配向へ転移しにくいことを見いだした。より好ましくは、画素電極23および対向電極31に同時に電圧を印加する。この理由について、以下、詳述する。
液晶表示装置に電源を入れた瞬間には、図5において電圧ノイズ27が入るおそれがあるため、一般的に画素電極23に電圧を印加し始める前の一定の期間、全ての画素電極23の電圧を0Vにする。この期間を「リセット期間」(参照符号:28)という。
このリセット期間28が経過した後、各画素電極23は、ゲート線22がオンになった期間にソース線21から電圧を印加され、ゲート線22がオフになった後には、対向電極31との間に当該電圧を保持する。そして、全てのゲート線22に順に駆動電圧が印加されて全ての画素電極23に電圧が印加された後には、再び第1段目のゲート線22Aに駆動電圧が印加され、第1段目のスイッチング素子4Aがオンになり、ソース線21から電圧が再度印加される。全てのゲート線22に順に駆動電圧を印加して全ての画素電極23に電圧を印加するためには、約16.6ミリ秒必要である。この後は、上述したのと全く同様に、第1段目のスイッチング素子4Aがオフになり、第1段目のスイッチング素子4Aがオンになる。これが繰り返される。
但し、画素電極23に長時間同一極性の電圧を印加することにより液晶分子51が長時間同一の方向に向いて動かない状態が続いた場合には、液晶分子51が電圧の変動に対応しなくなって、「焼き付き」という現象が生じるおそれがある。そのため、図5に示すように、画素電極23にプラスの電位が加えられてそれを保持した後に、再度第1段目のスイッチング素子4Aをオンにしてソース線21から電圧を印加する際には、当該画素電極23にはマイナスの電位を加えることが一般的である。もちろん、図5における画素電極23Bの電位のように、プラスとマイナスとを入れ替えても同様である。言い換えれば、各画素電極23においては、16.6ミリ秒ごとにプラスとマイナスとの間で極性が入れ替わる。
16.6ミリ秒×3=約50ミリ秒であるので、画素電極23に電圧を印加し始めてから50ミリ秒を経過した後に対向電圧32に一定電圧を印加し始めた場合には、各画素電極23には順にプラス、マイナス、およびプラス(またはマイナス、プラス、およびマイナス)の電圧が印加されることになる。この50ミリ秒の間において対向電極31の電圧が0Vである場合には、液晶分子51には±7Vの電圧が印加されることになる。これでは、リセット期間を設けた意味がなくなり、これにより液晶分子51がスプレイ配向からベンド配向へ転移しにくくなると考えられている。
本実施の形態1−1においては、画素電極23の形状を矩形とし得る。図6のように画素電極の端部から先端が尖った突起を設けることにより横電界を生じさせることも公知であるが、そのような突起を画素電極に設けることと比較すれば、本実施の形態のような矩形の画素電極を作成することの方が容易である。なお、本実施の形態1−1においては、ソース線21に印加される交流矩形波電圧は±7V、ゲート線22に印加される電圧はマイナス10V(オフ時)およびプラス10V(オン時)としたが、これは例示にすぎない。また、オン時にゲート線22にマイナスの電圧を印加して、オフ時にはゲート線22にプラスの電圧を印加するようにしてもよい。
(実施の形態1−2)
この実施の形態1−2においては、手前・奥方向の横電界81だけでなく、左右方向の横電界82を画素電極23の間に生じさせることによって初期化を促進する。
配向膜6によって規定される液晶分子51の配向方向がソース線21に平行である場合、すなわち、液晶分子51の長軸LQLSがソース線21に平行である場合には、横電界81を発生させるだけではあまり効果的ではない。なぜなら、縦方向に隣接する画素電極23の間に挟まれた液晶分子51bの長軸LQLSがはじめからソース線21に平行になっているため、上記「ひねり(矢印C1)」が発生せず、液晶分子51a・51bの両方とも同じ方向(すなわち、厚み方向)に向こうとするからである。
そこで、図7に示すように、奇数欄目のソース線21a、c…を介して各画素電極23a、c…に入力される交流矩形波電圧の極性と、偶数欄目のソース線21b、d…を介して各画素電極23a、c…に入力される交流矩形波電圧の極性とが逆になるようにすることが好ましい。
この場合、まず、第1段目のゲート線22Aに駆動信号としてプラス10Vの電圧を印加することにより第1段目の画素電極23Aa、Ab、Ac…のスイッチング素子4Aa、Ab、Ac…を「オン」にする。これらのスイッチング素子4Aa、Ab、Ac…がオンになった時には、図7に示すように、ソース線21a、c…にプラス7Vの電圧が印加されている。従って、ソース線21a、c…からソース電極42およびドレイン電極43を介してプラス7Vの電圧が画素電極23Aa、Ac…に印加される。一方、スイッチング素子44Aa、Ab、Ac…がオンになった時には、図7に示すように、ソース線21b、d…にはマイナス7Vの電圧が印加されている。従って、ソース線21b、d…からソース電極42およびドレイン電極43を介してマイナス7Vの電圧が画素電極23Ab、Ad…に印加される。
次に、第1段目のゲート線22Aに再びマイナス10Vの電圧を印加することによって第1段目の画素電極23Aのスイッチング素子4A、Ab、Ac…をオフにする。これと同時に第2段目のゲート線22Bにプラス10Vの電圧を印加することにより第2段目の画素電極23Ba、Bb、Bc…のスイッチング素子4Ba、Bb、Bc…を「オン」にする。スイッチング素子4Ba、Bb、Bc…がオンになった時には、図7に示すように、ソース線21a、c…にマイナス7Vの電圧が印加されている。従って、ソース線21a、c…からソース電極42およびドレイン電極43を介してマイナス7Vの電圧が画素電極23Ba、Bc…に印加される。一方、スイッチング素子4Ba、Bb、Bc…がオンになった時には、図7に示すように、ソース線21b、d…にはプラス7Vの電圧が印加されている。従って、ソース線21b、d…からソース電極42およびドレイン電極43を介してプラス7Vの電圧が画素電極23Bb、Bd…に印加される。
すべてのゲート線22について順次プラス10Vの電圧を印加することによって、各画素電極23にソース線21から上記のように交流矩形波電圧を印加すると、図8に示すように、奇数行目・奇数欄目の画素電極23Aa、Ca、Ac、Cc…および偶数行目・偶数欄目の画素電極23Bb、Db、Db、Dd…には、プラスの電圧が印加される。偶数行目・奇数欄目の画素電極23Ba、Da、Bc、Dc…および奇数行目・偶数欄目の画素電極23Ab、Cb、Ad、Cd…には、マイナスの電圧が印加される。
そうすると、図8に示すように、奇数行目の画素電極23Aa、Ca、Ea…と、偶数行目の画素電極23Ba、Da、Fa…との間だけでなく、奇数欄目の画素電極23Aa、Ba、Ca、Da…と偶数欄目の画素電極23Ab、Bb、Cb、Db…との間にもそれぞれ電界82が発生する。この電界82は、液晶表示装置の横方向(厳密には左右方向)に向いているので、以下、「横電界82」と呼ぶ。先述した「手前・奥方向の横電界81」と区別するため、厳密には「左右方向の横電界82」という場合がある。
このようにすれば、たとえ配向膜6によって規定される液晶分子51の配向方向がソース線21に平行であって、ゲート線22上に存在する液晶分子51bが手前・奥方向の横電界81からは影響を受けない場合であっても、液晶分子51の長軸LQLSと直交する方向の左右方向の横電界82により、図12に示すようにソース線21上に存在する液晶分子51cが矢印C2のようにひねられる。そのため、液晶5内でその長軸LQLSがそれぞれ異なる方向に向こうとする液晶分子51(画素電極23上に存在する液晶分子51aおよびソース線上に存在して横電界82により矢印C2の方向にひねられる液晶分子51c)が必ず生じることになるので、スプレイ配向からベンド配向への転移を促進することができる。
本実施の形態1−2においては、画素電極23は、ソース線21とは異なる層に設けることが好ましい。なぜなら、本実施の形態においては、上記のように、左右方向に隣接する2つの画素電極23の間で横電界82が生じる。しかし、画素電極23とソース線21とが同一の層に位置する場合には、左右方向に隣接する2つの画素電極23の間に生じる横電界82が、ソース線21に印加される電圧から影響を受けることになる。従って、ソース線21に印加される電圧からの影響を最小限にするためには、図4に示すように、実施の形態1−1と同様に、ソース線21と画素電極23との間に絶縁層(図示せず)を挟むことが好ましい。なお、この他については、実施の形態1−1と同様である。
また、配向膜6によって規定される液晶分子51の配向方向がソース線21に平行ではない場合においては、手前・奥方向の横電界81のみにより、液晶5内でその長軸LQLSがそれぞれ異なる方向に向こうとする液晶分子51が生じる。従って、このような場合には、図9に示すように、左右方向に隣接する2つの画素電極23a、23b、23c…に入力される電圧の極性が同一となるように画素電極23に電圧を印加するようにしてもよい。
(実施の形態1−3)
この実施の形態1−3においては、左右方向の横電界82を画素電極23の間に生じさせることによって初期化を促進する。
上記のように、配向膜6によって規定される液晶分子51の配向方向がソース線21に平行であるの場合などのように、手前・奥方向の横電界81は不要である場合がある。この場合、以下のようにして左右方向の横電界82のみを生じさせるようにしてもよい。
図10に示すように、本実施の形態1−3においては、各ソース線21a、b…を介して各画素電極23a、b…に入力される交流矩形波電圧の極性を同一にする。
実施の形態1−1、1−2と全く同様にゲート線22およびスイッチング素子4を動作させる。こうすると、図11に示すように、奇数段目の画素電極23Aa、Ab、Ac、Ad…と偶数段目の画素電極23Ba、Bb、Bc、Bb…との間にそれぞれ左右方向の横電界82が発生する。但し、実施の形態1−1において説明したような、手前・奥方向の横電界81は発生しない。実施の形態1−2において説明したように、液晶分子51の長軸LQLSと直交する方向の左右方向の横電界82により、図12に示すようにソース線21上に存在する液晶分子51cが矢印C2のようにひねられる。そのため、液晶5内でその長軸LQLSがそれぞれ異なる方向に向こうとする液晶分子51(画素電極23上に存在する液晶分子51aおよびソース線上に存在して横電界82により矢印C2の方向にひねられる液晶分子51c)が必ず生じることになるので、スプレイ配向からベンド配向への転移を促進することができる。この実施の形態1−2は、特に配向膜6によって規定される液晶分子51の配向方向がソース線21に平行である場合に好ましい実施の形態である。なお、この他については、実施の形態1−1と同様である。
(実施の形態1−4)
この実施の形態1−4においては、手前・奥方向に隣接する2つの画素電極23の間において手前・奥方向の横電界81および左右方向の横電界82の両者を生じさせることによって初期化を促進する。
実施の形態1−1においても詳述したように、配向膜6によって規定される液晶分子51の配向方向がソース線21に平行である場合、すなわち、液晶分子51の長軸LQLSがソース線21に平行である場合には、手前・奥方向の横電界81を発生させるだけではあまり効果的ではない。そのため、実施の形態1−2においては、左右方向に隣接する2つの画素電極23同士の間で左右方向の横電界82を生じさせている。本実施の形態1−4においては、画素電極23の形状を所定の形状にすることによって、手前・奥方向に隣接する2つの画素電極23同士の間の間でも左右方向の横電界82を生じさせる。以下、これについて詳細に説明する。
図13に示すように、本実施の形態1−4においては、2つの画素電極23α・23βが手前・奥方向に隣接している。奥側には画素電極23αが、手前側には画素電極23βが位置しているとして説明する。
画素電極23αの手前側の端縁231αからは、第1突出部232αが延び出している。一方、画素電極23βの奥側の端縁233βからは、第2突出部234βが延び出している。そして、平面視においては、第1突起部232αおよび第2突起部234βはいずれもゲート線22と重なり合っている。このように第1突起部232αと第2突起部234βとが咬み合うようにして、図2のように手前・奥方向に隣接する画素電極23間において異なる極性の電圧を印加すれば、図13に示すように、第1突起部232αと画素電極23βとの間および第2突起部234βと画素電極23αとの間において手前・奥方向の横電界81が生じると共に、第1突起部232αと第2突起部234βとの間において左右方向の横電界82が生じる。
このようにすれば、図3および図12において示したように、配向膜6によって規定される液晶分子51の配向方向に拘わらず、液晶5内でその長軸LQLSがそれぞれ異なる方向に向こうとする2種類の液晶分子51が生じることになる。従って、先述したように、この2種類の液晶分子51が生じることにより「擾乱」状態が生じ、スプレイ配向からベンド配向への転移が促進される。特に、配向膜6によって規定される液晶分子51の配向方向がソース線21と平行であると共に画素電極23が完全に矩形である場合には、実施の形態1−2において説明したように、「擾乱」が生じない場合がある。そのため、配向膜6によって規定される液晶分子51の配向方向がソース線21と平行である場合には、本実施の形態1−4のように第1突起部232αおよび第2突起部234βを画素電極23α・23βにそれぞれ設けることが特に好ましい。
第1突起部232αおよび第2突起部234βがあまりにも小さすぎると、第1突起部232αと第2突起部234βとの間において左右方向の横電界82が生じにくくなる。そのため、図13に示すように、第1突起部232αの先端は、第2突起部234βの先端よりも手前側にある(言い換えれば、第2突起部234βの先端は、第1突起部232αの先端よりも奥側にある)ことが好ましい。
第1突起部232αおよび第2突起部234βの大きさは特に限定されないが、一例を挙げれば、これらの突起部の幅は約1μm以上10μm以下(好ましくは約5μm)であり、突起部同士の距離もまた、約1μm以上10μm以下(好ましくは約5μm)である。
第1突起部232αおよび第2突起部234βは、画素電極23α・βにそれぞれ1つずつ設けられていればよい。しかし、より多くの箇所で擾乱状態を生じさせた方がスプレイ配向からベンド配向への転移が促進される。そのため、2つの第1突起部232αおよび1つの第2突起部234βをそれぞれ画素電極23α・23βに設けて、2つの第1突起部232αの間に1つの第2突起部234βを位置させることが好ましい。さらに好ましくは、図13に示すように、複数個の第1突起部232αおよび複数個の第2突起部234βをそれぞれ画素電極23α・23βに設け、これらの複数個の第1突起部232αおよび複数個の第2突起部234βを櫛歯のように互いに咬み合わせる。すなわち、隣接する2つの第1突起部232αの間に1つの第2突起部234βが位置すると共に、隣接する2つの第2突起部234βの間に1つの第1突起部232αが位置することがさらに好ましい。
図13では、画素電極23αの端縁231αと第1突起部232αとがなす角度θ1が90°となっているが、液晶5内でその長軸LQLSがそれぞれ異なる方向に向こうとする2種類の液晶分子51が生じることによる「擾乱」状態が生じれば足る。そのため、この角度θ1は90°に限られず、10°以上170°以下であればよい。10°未満である場合には、上記2種類の液晶分子51がなす角度が小さすぎて、擾乱状態が生じにくくなる場合がある。一方、170°を越えても、同様の問題が生じる。画素電極23βの端縁233βと第2突起部234βとがなす角度θ2についても、上記と同様に、図13および図11においては90°となっているが、角度θ2は90°に限られない。角度θ2もまた、10°以上170°以下であればよい。但し、設計の容易性を考慮すれば、角度θ1および角度θ2は、それぞれ90°であることが好ましい。
第1突起部232αおよび第2突起部234βの他の例としては、図14を挙げることができる。この場合、画素電極23の端縁231と凸部236とがなす角度をθ3とすると、図14に示すように、左右方向の横電界82は角度(90°−θ3)だけ左右方向からずれている。この構造は、隣接する第2突起部234βの間に第1突起部232αが位置している構造であるが、「画素電極23αの手前側の側縁には凸部236αが設けられ、画素電極23βの奥側の側縁には凹部237βが設けられ、これらの凸部236αと凹部237βとが咬み合っている」とも表記され得る。このような構造によっても、上記と同様、必ず液晶5内でその長軸LQLSがそれぞれ異なる方向に向こうとする2種類の液晶分子51が生じることによる「擾乱」状態が生じる。従って、スプレイ配向からベンド配向への転移が促進される。なお、図14に示すように、凸部236の先端には頂点235が存在することが好ましい。
第1突起部232αおよび第2突起部234βのさらに他の例としては、図15を挙げることができる。この場合、手前・奥方向の横電界81もまた、手前・奥方向からずれている。この図15においては、画素電極23の端縁231と凸部236とがなす角度をθ4とすると、図14に示すように、手前・奥方向の横電界81は角度θ4だけ手前・奥方向からずれている。このような構造によっても、上記と同様、必ず液晶5内でその長軸LQLSがそれぞれ異なる方向に向こうとする2種類の液晶分子51が生じることによる「擾乱」状態が生じる。従って、スプレイ配向からベンド配向への転移が促進される。
本実施の形態1−4においては、上記のように、第1の突起部232αと第2の突起部234βとの間で手前・奥方向の横電界81および左右方向の横電界82を十分生じさせるために、画素電極23は、絶縁層(図示せず)を挟んでゲート線22とは異なる層に設けられる。実施の形態1−2と同様、画素電極23は、絶縁層(図示せず)を挟んでソース線21とも異なる層に設けられることが好ましい。
第1の突起部232αおよび第2の突起部234βは、図13に示すように、頂点235をそれぞれ有することが好ましい。図13において破線で示したように、第1の突起部232αの頂点235が面取りされて大きなアール(具体的には半径が1μmを越えるようなアール)がつけられている場合には、液晶5内でその長軸LQLSがそれぞれ異なる方向に向こうとしている液晶分子51の長軸LQLSが向く方向の変化が緩やかになってしまう。そのため、スプレイ配向からベンド配向へ転移しやすくなる「擾乱」が十分に生じないおそれがある。そのため、液晶5内でその長軸LQLSがそれぞれ異なる方向に向こうとしている液晶分子51の長軸LQLSが向く方向の変化を急峻にするため、第1の突起部232αおよび第2の突起部234βは、頂点235をそれぞれ有することが好ましい。
この実施の形態1−4においては、手前・奥方向に隣接する2つの画素電極23α・23βにそれぞれ異なる極性の電圧が印加されればよい。従って、左右方向に隣接する2つの画素電極23の極性は同一であってもよく、異なっていてもよい。但し、左右方向に隣接する2つの画素電極23の極性が異なっていれば、実施の形態1−2において説明したように、左右方向に隣接する2つの画素電極23の間に左右奥方向の横電界82が生じ、これによってもスプレイ配向からベンド配向への転移が促進される。従って、左右方向に隣接する2つの画素電極23の極性も異なっていることが好ましい。
なお、第1の突起部232αは画素電極23αとは別個に形成されてもよいが、作成が容易であるという観点から、第1の突起部232αは透明な画素電極23αと一体的に形成されることが好ましい。なお、透明な画素電極23を形成する材料としては、錫・インジウム酸化物(ITO)を挙げることができる。第2の突起部234βと画素電極23βとについても同様である。
(実施の形態1−5)
この実施の形態1−5においては、左右方向に隣接する2つの画素電極23の間において手前・奥方向の横電界81および左右方向の横電界82の両方を生じさせることによって初期化を促進する。
図16に示すように、実施の形態1−4とほぼ同様に、左右方向に隣接する2つの画素電極23α・23βのそれぞれに、第3突起部238αおよび第4突起部239βを設ける。これらの第3突起部238αおよび第4突起部239βは、平面視においてソース線21と重なり合っている。なお、説明を容易にするため、画素電極23αが左側に、画素電極23βが右側に位置することとする。
左右方向に隣接する2つの画素電極23α・23βにそれぞれ異なる極性の電圧を印加すれば、実施の形態1−4と同様に、第3突起部238αと右側の画素電極23βとの間および第4突起部239βと左側の画素電極23αとの間において左右方向の横電界82が生じる。そして、第3突起部238αと第4突起部239βとの間に手前・奥方向の横電界81が生じる。これにより「擾乱」状態が引き起こされ、スプレイ配向からベンド配向への転移が促進される。
この実施の形態1−5においては、左右方向に隣接する2つの画素電極23α・23βにそれぞれ異なる極性の電圧が印加されればよい。従って、手前・奥方向に隣接する2つの画素電極23の極性は同一であってもよく、異なっていてもよい。但し、手前・奥方向に隣接する2つの画素電極23の極性が異なっていれば、実施の形態1−1において説明したように、手前・奥方向に隣接する2つの画素電極23の間に手前・奥方向の横電界81が生じ、これによってもスプレイ配向からベンド配向への転移が促進される。従って、手前・奥方向に隣接する2つの画素電極23の極性が異なっていることが好ましい。また、図14および図15のような第1突起部232および第2突起部234を、図16に転用してそれぞれ第3突起部238および第4突起部239としてもよい。
(実施の形態1−6)
この実施の形態1−6は、実施の形態1−4および実施の形態1−5を組み合わせている。すなわち、図17に示すように、画素電極23の手前側の側縁に第1突起部232を、画素電極23の奥側の側縁に第2突起部234を、画素電極23の右側の側縁に第3突起部235を、画素電極23の左側の側縁に第4突起部236を設けている。そして、これらの突起部232〜236は、手前・奥方向および左右方向に隣接する画素電極23にも同様に設けられたこれらの各突起部232〜236との間で手前・奥方向の横電界81および左右方向の横電界82を生じさせる。
この実施の形態1−6においては、手前・奥方向および左右方向に隣接する画素電極23との間で手前・奥方向の横電界81および左右方向の横電界82を発生させる。そのため、手前・奥方向に隣接する2つの画素電極23にそれぞれ印加される電圧の極性は逆であると共に、左右方向に隣接する2つの画素電極23にそれぞれ印加される電圧の極性もまた逆であることが好ましい。また、図14および図15のような第1突起部232および第2突起部234を、図16に転用してそれぞれ第3突起部238および第4突起部239としてもよい。
なお、積層技術およびフォト利祖エッチング技術を知る当業者は、上記の実施の形態1に係る液晶表示装置を適切に作成し得る。
(実施の形態2)
次に、第2群の本発明に係る液晶表示装置の好適な実施の形態を、以下の実施の形態2において説明する。
(実施の形態2−1)
図26は実施の形態2−1に関る液晶表示装置の1画素の構成を示す平面図であり、図27はA−A’線の断面図を示すものである。
図において、10は画素電極であり、これと対向電極28の間に印加された電圧で液晶層21を動作させて表示を行う。画素電極にはスイッチングのための薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)6がドレイン電極7を介して接続されている。1はゲート配線であり薄膜トランジスタのオンオフを走査する。5は画素電極に電圧供給するためのソース配線である。2は共通配線であり、これと画素電極の重なり部で蓄積容量11を形成している。蓄積容量は、画素電極上に形成された液晶容量に対する並列容量として機能し、TFTのリーク電流などによる画素電位の低下を防止する。12は、ラビングなどによる液晶の配向処理方向を示している。
22と23は基板であり、液晶21を挟持している。24と25は偏光表示を行うための偏光板である。偏光板には、その基板側面に、偏光の位相を調整してコントラストや視野角特性を向上させるための位相板が必要に応じて貼り合せられている。26はゲート電極8とソース電極5の間にある第1の絶縁膜、27はTFTを保護するための第2の絶縁膜である。偏光板24の下側には、図示しないが表示のためのバックライトが配置されており、バックライトからの光を遮断あるいは透過することにより表示が行われる。29はカラー表示を行うためのカラーフィルター、30は画素周辺の光漏れを遮光するためのブラックマトリクスである。以上は、従来の液晶表示装置とほぼ同じものである。
本発明の液晶表示装置では、以上の構成に加え、共通配線2を分枝させて突出電極3を形成している。これにより、ソース配線5と突出電極3の間の空隙部4に基板面内方向の電界を発生させて、スプレイ配向からベンド配向への転移が容易に起こるようにしている。以下、この効果について説明する。
本実施形態の液晶表示装置においては、初期化(転移)のための準備ステップとして、ソース電極の電位を0ボルトとしながら、ゲート電極に15〜20ボルト程度のオン電位を与えてTFTをオン状態とする。この結果、画素電極に0ボルト電位が書き込まれる。液晶表示装置は複数のゲート電極を持っているが、これを走査して各ラインごとに電位を書き込んでもよいし、全てのゲート電極にオン電圧を与えて全画素を一括して電位書き込みしてもよい。
この時、共通電極および突出電極の電位を0ボルトとしておけば、突出電極、ソース配線、画素電極は同電位(0ボルト)となり、画素部とソース配線部の液晶層には電界が印加されない。すべての画素に0ボルト電位を書きこんだ後、ゲート電極をも0ボルトとすれば、液晶層に印加される電界を完全になくすことができて、さらに望ましい状態が得られるが、ゲート電極に電圧が印加した状態で次のステップに移っても以下の説明には変わりがない。
上記の準備ステップの結果、本実施形態の液晶表示装置は、図28に断面図を示すような初期状態になる。図において、31は液晶分子を示している。液晶層にかかる電界がないので、液晶分子はラビングによる配向処理の方向に長軸を向けて並んでいる。図は、配向処理方向に直交する方向の断面図であるので、液晶分子の長軸はほぼ紙面の奥行き方向に向けて配列している。実際には、液晶分子は紙面奥行き方向に数度から十数度のプレチルト角をもっているが、図ではこれを省略している。
一方、この状態では液晶はスプレイ配向状態にあるので、ラビング方向(図26のb−b’方向)の断面においては、図45のPのように液晶分子は配列している。
図29は、本実施形態の液晶表示装置における初期化(転移)の第1ステップを示す断面図である。突出電極を0ボルトに保ちながら、ソース電極に電圧印加すると、間隙部4に基板面内方向の電界E1が発生する。これにより、間隙部の液晶層の中央部にある液晶分子41が電界E1の方向に向けられる。間隙部の界面にある液晶分子42と43は配向処理のアンカリング効果により、電界を印加してもほとんど動かない。この結果、間隙部の液晶分子は、図のz方向に軸をもってねじれて配列する。一方、間隙部以外の部分においては液晶分子は、図28と同様の配列状態にある。従って、その境界部に液晶配列状態の遷移領域44・45が形成される。
ソース電極に印加する電圧は、高い方がねじれ構造を形成しやすいが、5ボルト以上であれば実用的には十分であり、信号側ドライバーICの性能も考え合わせると5ボルトから10ボルト程度が望ましい。また、ソース電極に印加する電圧は、数十〜数十キロヘルツの交流電圧が望ましい。周波数が低すぎる場合は、配線付近でイオンが偏在したりして表示にむらが生じることがあり、周波数が高すぎる場合は、ソース配線の時定数により波形に歪が生じて十分な電圧が印加されなくなるからである。15型で1280×720画素を持つ液晶表示装置の場合、下限は10Hz、上限は50kHzであった。
十分なねじれ状態を得るためには、液晶の応答時間と同等程度以上に横電界の印加状態を続けることが望ましい。液晶の応答時間が数ミリ秒であることを考慮すると、1ミリ秒以上、望ましくは5ミリ秒以上続けた後、次のステップに移るのが望ましい。
図30は、初期化(転移)の第2ステップを示す断面図である。対向電極28に電圧印加することにより、基板面に垂直な電界E2を液晶層に印加し、液晶分子51を基板面から立上がらせる。図31はこの時のベンド配向の広がりを模式的に示した平面図である。まず、電界E2の印加により横電界の印加された間隙部4の付近にベンド配向部が形成され、次いで61の方向にベンド配向部が広がっていき、やがて画素全体がベンド配向となる。本実施形態の液晶表示装置によれば、従来のものより各段に容易かつ確実に、スプレイ配向からベンド配向への転移を行わせることができた。
この理由については以下のように考えられる。即ち、第1のステップで形成された液晶配列状態の遷移領域44・45は、他の部分に比べて液晶の配列が不安定となっている。スプレイ配向とベンド配向は、不連続な2つの配向状態であるため、両者間の転移にはエネルギーポテンシャルの壁を乗り越える必要があるが、上記の遷移領域では液晶の配列に不安定要因があるため、このエネルギーポテンシャルの壁が比較的低くなっている。従って、ここに第2の電界E2を印加することにより比較的容易にベンド配向状態を形成できる。
対向電極に印加する電圧は高い方が転移時間が短いが、一方で電源回路への負担が大きくなる。両者を同時に満足する条件として、実用的には10ボルト以上30ボルト以下の電圧が望ましい。周波数は、0.1ヘルツから50ヘルツ程度の間が望ましい。対向電極は全画面に形成されているため大きな電気容量を持っているので、数百ヘルツ以上の高い周波数は、電力の増加や駆動回路の極性スイッチングの負担を増大させるので望ましくない。
なお、上記の説明においては、初期化(転移)のための準備ステップとして、ソース電極の電位を0ボルトとしながら、ゲート電極にオン電位を与えてTFTをオン状態とするものとした。この準備ステップの効果は、立上げ時に液晶の配列状態を毎回等しくすることにより安定な転移性能を得るものであるが、場合によりこの準備ステップは省略することもできる。その理由は、上記の説明のように第1と第2のステップにより転移操作を行うことができるからである。
なお、図26では突出電極3と画素電極10とは全く重なり合っていないが、空隙部4が存在すれば液晶分子にひねりは加えられるので、図46に示すように、突出電極3の一部と画素電極10とが重なり合っていてもよい。
(実施の形態2−2)
図32は実施の形態2−2に関る液晶表示装置の動作を説明するための断面図である。図は、第1の実施形態の説明における図30に相当するものである。
本実施形態は、第1の実施形態において画素電極にも電位を与えることにより、突出電極3と画素電極10の間にある第2の間隙部71にも基板面内方向の電界E3を発生させるものである。これにより、従来の液晶配列状態の遷移領域44・45に加えて、新たな遷移領域72を発生させている。
第1の実施形態に対する、本実施形態の効果は、第1には遷移領域の数が増えることによリ転移の始まる確率が増大して、より確実に転移が行われることである。第2の効果は、新たな遷移領域72は画素電極10により近いところにあるため、実際に表示を行う画素領域の転移が早期に完了するので、結果的に機器の立上げ時間を短くできることにある。画素電極部は基板22側の電極に隙間がないため対向電極に電圧を加えた場合に縦電界が安定的に発生するが、この画素電極部の近くに新たな遷移領域72を設けているので、転移が安定的に行えるという第3の利点もある。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、初期化(転移)のための準備ステップとして、ソース電極の電位を0ボルトとしながら、ゲート電極に15〜20ボルト程度のオン電位を与えてTFTをオン状態とする。この時、共通電極および突出電極の電位を0ボルトとしておき、突出電極、ソース配線、画素電極を同電位(0ボルト)とし、画素部とソース配線部の液晶層に電界が印加されないようにする。このステップは、第1の実施形態で説明したように、場合により省略することができる。
第1のステップとして、ゲート電極にオン電圧を印加しながらソース配線に正電圧(例えば+5ボルト)を供給し、画素電極を正電圧+5ボルトに充電する。
第2のステップとして、ゲート電極にオン電圧を印加しながらソース配線に負電圧(例えば+5ボルト)を供給し、画素電極を正電圧−5ボルトに充電する。
これらのステップを通じて、共通配線、および突出電極の電位を0ボルトとしておくと、図32に示すように、突出電極3とソース配線5の間に電界E1が、突出電極3と画素電極10の間に電界E3が発生する。これらの電界はともに基板面にほぼ平行な方向に生じており、間隙部4・71における液晶層中央部の液晶分子41・73を面内方向に回転させ、2つの間隙部にねじれ状態を生じさせる。
第3のステップとして、第1と第2のステップを交互に繰り返す。これにより、間隙部に印加する電圧を交流とする。
第4のステップは、対向電極に電圧印加することにより、基板面に垂直な電界を液晶層に印加し、液晶分子を基板面から立上がらせるものである。これにより、第1の実施形態と同様に、垂直電界の印加により、横電界の印加された間隙部4・71の付近にベンド配向部が形成されて、主に画素電極の方向にベンド配向部が広がっていき、やがて画素全体がベンド配向となる。本実施形態の液晶表示装置によれば、従来のものより各段に容易かつ確実に、スプレイ配向からベンド配向への転移を行わせることができた。
(実施の形態2−3)
図33は、実施の形態2−3に関る液晶表示装置の動作を説明するための1画素の構成を示す平面図である。図は、第1の実施形態の説明における図26に相当するものである。
第1または第2の実施形態においては、突出電極が直線形状でありその周辺の空隙部に印加される電界の方向は液晶配向方向に垂直な方向であった。本実施形態の液晶表示装置では、図33に示すように突出電極3、ソース配線5および画素電極10のエッジ部分を屈曲形状にして、図中に矢印で示す電界方向81が液晶配向方向に垂直な方向から右回りに回転した方向となる領域と、左回りに回転した方向となる領域の2つの領域を、空隙部4・82に作り出している。
第1や第2の実施形態に対する本実施形態の効果は、空隙部における液晶が右向きに回る領域と左向きに回る領域を確実に形成することにより、転移が安定的に行えるという点にある。
空隙部における液晶が右向きに回る領域と左向きに回る領域を形成することの効果について、以下に説明する。
まず、液晶分子が基板面内に回転しておらず、また、ねじれ構造を持っていない場合について、その転移操作における問題点を説明する。図34は、このような場合の転移操作における液晶分子の配向を模式的に示した断面図である。液晶分子91は初期状態においては、図34(a)に示すスプレイ配向となっている。上下基板の電極間に電圧が印加されると液晶分子は電界に平行に配列しようとするため、それぞれの液晶分子には図34(b)に示すような回転トルクがかかる。トルクの方向は液晶分子の電圧無印加時のチルト角の方向に依存し、上半分にある液晶分子92には時計回りの回転トルクが、下半分にある液晶分子93には反時計回りの回転トルクがかかる。上下基板のちょうど中央にある液晶分子94は、初期状態が基板に平行であるため、回転方向が特定できない。最終的には、図34(c)に示すベンド配向状態となるが、液晶層の中央部にある液晶分子94の回転方向が時計回りとなる状態を経由する領域と、反時計回りとなる状態を経由する領域の2つの領域ができる。このため、転移発生が不安定であり転移に時間がかかったり、2つの領域間のディスクリネーション・ラインが表示期間まで残ってコントラスト低下の要因となったりする。
第1や第2の実施形態においては、図35に示すスプレイ配向状態の液晶に対して横方向の電界を印加して図36に示すようなねじれ状態の配向を得、これに基板法線方向の電界を印加して転移操作を行った。図36に示す断面図は、横電界を印加した時に液晶層の中央部にある液晶分子の左側を手前方向に回転させ、右側を奥行き方向に回転させるトルクがかかるとしたものである。図の下から上に向かって液晶分子の回転方向を見た場合、断面図の下半分では液晶分子は時計回りに90度ねじれており(以下R90°と略記)、上半分では液晶分子は反時計回りに90度ねじれている(以下L90°と略記)。この場合、上下基板界面の液晶分子のチルト角が相殺されるので、液晶層中央にある液晶分子101は基板に対してほとんど起き上がらず、チルト角がほぼ0度となる。従って、基板法線方向の電界を印加した場合に、この液晶分子が立上がる方向が一義的に定まらず、転移発生が不安定になることがある。
図37は、本実施形態の液晶表示装置において、横方向の電界を印加した場合の液晶分子の配列を示した断面図である。本実施形態においては、液晶層中央にある液晶分子の回転方向が異なる2領域が隣接している。図はこの隣接部を示したもので、図の左側は、液晶層の中央部にある液晶分子の左側を手前方向に回転させ、右側を奥行き方向に回転させるトルクがかかっており、下半分はR90°、上半分はL90°の状態にある。一方、図の右側は、液晶層の中央部にある液晶分子の左側を奥行き方向に回転させ、右側を手前方向に回転させるトルクがかかっており、下半分はL90°、上半分はR90°の状態にある。
これらの領域が隣接しているので、図に破線で示すように、左側の下半分にあるR90°の部分と、右側の上半分にあるR90°の部分が液晶分子の熱ゆらぎ現象や交流電界の切替りに伴う液晶分子の揺れなどによって結合することがある。そういう領域では、液晶分子は下側基板から上側基板に向かって、右向きに連続的に180度ねじれた状態(R180°)となる。この場合、上下基板界面のチルト角の影響で、液晶層中央の液晶分子101にはチルト角が生じる。
このような領域が形成されれば、転移を容易に生じさせることができる。図38はその様子を示すもので、(a)に示すように中央部の液晶分子101がチルトを持ち、180度ねじれた状態にある液晶層に電圧を印加することにより、(b)のように安定した方向に中央部の液晶分子101を立ち上げることができ、その結果(c)に示すベンド状態を容易に形成することができる。
本実施形態の液晶表示装置では、転移のきっかけとして180度ねじれ状態を形成しているが、ねじれ状態の形成のためにカイラル材を添加してしていないので、転移が生じた後では液晶の配向にねじれ構造がほとんど残らず、印加電圧が低い場合にも良好なベンド配向が維持される。このため、視野角特性の低下、白表示の着色、応答速度の低下といった課題が生じることがない。
なお、上記の説明では上半分と下半分のねじれ角はそれぞれ90度であるとしたとしたが、これはこのように限定されるものではない。結合領域の液晶のねじれ角は、上下の基板界面の液晶の配向方位によって定まり、これが平行に配向処理されていれば、上下部分の元もとのねじれ角に関係なくねじれ角は180度となる。従って、横電界印加時に中央部の液晶分子が2つの領域で逆向きのトルクを受けるようにすれば、上下部分のねじれ角に関わらず良好なベンド状態を形成することができる。
本実施形態の液晶表示装置は、第2の実施形態での説明と同様に駆動される。こうすれば、間隙部4・82のそれぞれにねじれ電界が逆となる領域を形成することができ、良好な転移特性を得ることができる。
(実施の形態2−4)
図39は、実施の形態2−4に関る液晶表示装置の動作を説明するための1画素の構成を示す平面図である。
本実施形態は、第3の実施形態と同様に、図中に矢印で示す電界方向81が液晶配向方向に垂直な方向から右回りに回転した方向となる領域と、左回りに回転した方向となる領域の2つの領域を、空隙部4に作り出している。
第3の実施形態では、突出電極3の両側の空隙部を屈曲させてこのような領域を形成していたが、本実施形態では、突出電極3とソース配線5の間のみで空隙部を屈曲させている。これにより、画素電極10を広げることができ、開口率を高めて明るい表示を行うことができるという特徴がある。本実施形態の液晶表示装置は、例えば、実施形態1での説明と同様に駆動される。
本実施形態の液晶表示装置も第3の実施形態と同様、カイラル材を添加することなく、ねじれ構造を誘起し、これを転移の核として用いている。このため、転移が生じた後では液晶の配向にねじれ構造がほとんど残らず、印加電圧が低い場合にも良好なベンド配向が維持される。従って、視野角特性の低下、白表示の着色、応答速度の低下といった課題が生じることがない。
なお、本実施形態においても第3の実施形態と同様、上半分と下半分のねじれ角は90度に限定されるものではなく、横電界印加時に中央部の液晶分子が2つの領域で逆向きのトルクを受けるようにすれば、上下部分のねじれ角に関わらず良好なベンド状態を形成することができる。
(実施の形態2−5)
図40は、実施の形態2−5に関る液晶表示装置の動作を説明するための断面図である。本実施形態は、第1の実施形態では全領域に対向配置されていた対向電極28のうち、空隙部4・152の付近にある部分を取り除いたことにある。こうすることによって、図40に示す断面では対向電極が28aと28bの2つに分かれる。
図で対向電極28a・28bと突出電極3の間に電圧を加えると、電界E1とE3には斜め方向の成分が生じ、液晶層中央にある液晶分子151が電界の傾斜方向に傾きながらねじれ配向する。この後、薄膜トランジスタ6を介して画素電極10に電位を与え、対向電極28bとの間に縦電界を印加することにより、転移を行わせる。
本実施形態においては、空隙部において斜め方向の電界を印加しているので、縦電界を印加した際に液晶層中央の液晶分子が立上がる方向が一定する。従って、第3の実施形態の図34で説明したように、液晶の転移が不安定になったり、時間がかかったりすることがない。
なお、上記の説明では対向電極の一部を取り除いて斜め電界成分を発生させたが、突出電極と画素電極、または、突出電極と信号配線の間の高低レベルに差がある場合には、同様の効果を得ることができる。このレベル差は、1マイクロメートル以上であることが望ましく、1マイクロメートル以上であれば、なお良好な結果を得ることができる。この構成は、例えば、信号配線の上に設けた第2の絶縁膜を絶縁樹脂とすることによって形成することができる。
(実施の形態2−6)
第3あるいは第4の実施形態では、例えば図33や図39に示されるように、平面図において電界方向が液晶配向方向に垂直な方向から右回りに回転した方向となる領域と、左回りに回転した方向となる領域の2つの領域を、空隙部に作り出す構成について説明した。これにより、図37の断面図で対角上に存在する、右ねじれ90度(R90°)どうし、あるいは左ねじれ90度(L90°)どうしの部分が結合し、180度のねじれ状態を形成して転移を容易にしている。ところが、右ねじれと左ねじれのいずれが結合するかについては十分な選択性がなく、わずかながら不安定要因が存在する。
本実施形態は、第5の実施形態に示す構成、即ち、例えば図40に示されるような横電界印加時に断面図において斜め方向の成分を発生させる構成を、第3あるいは第4の実施形態で説明した構成に組合せたものである。斜め電界の存在により右ねじれ180度(R180°)と左ねじれ180度(L180°)のいずれか一方がエネルギー的により安定となるため、各領域でねじれ状態がいずれか一方に選択され、第3あるいは第4の実施形態に比べてさらに安定的に転移を行わせることができる。
(実施の形態2−7)
上記の各実施形態では、まず横電界を加えた後に縦電界を印加して転移を行わせたが、いずれの実施形態においても、画素領域に縦電界を印加した後、横電界を印加する方法も有効である。この場合、縦電界を印加して数ミリ秒から1秒程度待って、画素領域の液晶をほぼ立ち上がった状態にした後に、突出電極付近に横電界を印加して液晶を回転させるのがよい。
具体的な方法の一例について、図26と図27を用いて説明する。まず、初期化(転移)のための準備ステップとして、ソース電極の電位を0ボルトとしながら、ゲート電極に15〜20ボルト程度のオン電位を与えてTFTをオン状態とする。この時、共通電極および突出電極の電位を0ボルトとしておき、突出電極、ソース配線、画素電極を同電位(0ボルト)とし、画素部とソース配線部の液晶層に電界が印加されないようにする。このステップは、場合により省略することができる。
第1のステップとして、対向電極28に+25ボルトを印加すると、画面のほぼ全領域にわたって縦電界が印加される。
第2のステップとして共通配線2に+25ボルトを印加すると、突出電極3の電位も+25ボルトとなり、この付近の縦電界がほぼなくなるとともに、突出電極3とソース配線5の間、および突出電極3と画素電極10の間に横電界が印加される。
第3のステップとして、薄膜トランジスタ6をオン状態としながらソ−ス配線5に電圧供給すれば、画素電極10の電位が変動し横電界成分を交流化することができる。このステップは、場合により省略することができる。
なお、第3のステップにおいて、画素電極電位は対向電極の電位(+25ボルト)をまたぐように設定すれば、対向電極電位を中心とした理想的な交流電圧が印加できるが、ソース側の駆動ICに大きな出力電圧が要求される。これを避けるために画素電極電位を、例えば、+5ボルトと−5ボルトの間で交流とすることも可能である。この場合ば、その交流成分が横電界として働き、対向電極(+25ボルト)との間には、平均電圧の0ボルトとの間の電界が縦電界として働く。
また、対向電極28と共通配線2を同電位としておき、これらを+25ボルトと−25ボルトの間で交流駆動してもよい。
本実施形態の液晶表示装置においても、従来のものより各段に容易かつ確実に、スプレイ配向からベンド配向への転移を行わせることができた。
なお、上記のいずれの実施形態においても、横電界を印加する領域は突出電極付近に限定されているので、画素領域の内部にまで横電界が及んでコントラストなどの光学性能が低下するのを防止することができる。一方、縦電界の印加される領域はほぼ全面に渡っており、ここに横電界領域あるいはその周辺の遷移領域を含んでいるので、スムーズに転移が開始するという利点がある。
(実施の形態2−8)
上記のいずれの実施形態においても、遷移部分や横電界発生部の周辺にベンド配向部が生じてしまえば横電界は必要でなくなる。本実施形態では、ある程度転移が広がった後でソース配線への供給電圧を調整し、横電界を止めたり、あるいは横電界の強度を弱めた。これにより、横電界の影響により一度生じたベンド配向が乱されて表示異常が生じたり、コントラストが低下するのを防ぎ、また横電界発生のための電力を削減することができる。より具体的には、第1から第6の実施形態では、例えば縦電界を印加して数ミリ秒から数十ミリ秒後にソース電圧の印加を止めることが有効である。第7の実施形態では、例えば縦電界を印加して数ミリ秒から数十ミリ秒後にソース電圧の印加を止めることが有効である。
(実施の形態2−9)
上記の第1から第8の実施形態の液晶表示装置において、横電界により液晶の配向が変化する領域を遮蔽するように、ブラックマトリクスによる遮光部を形成した。具体的には、図27においては間隙部4を覆うように、図32においては間隙部4・71を覆うように、図40においては間隙部4・152を覆うようにブラックマトリクス30を形成した。
実際に液晶表示装置が表示を行っている時には、表示パターンにより、ソース配線、共通配線、画素電極は様々な電位をとり、これらの空隙部に横電界が生じてしまう。この部分をブラックマトリクスで覆うことにより、横電界に液晶が応答して生じる光もれを遮光して、コントラストの高い表示を行うことができる。
なお、図26においては、さらに突出電極3と画素電極10の間の部分も遮光するのがさらに効果的であった。
(実施の形態2−10)上記の各実施形態において、液晶にわずかなカイラル材を添加して、特定方向のねじれをエネルギー的に優勢にすれば、さらに良好な転移性能が得られる。
従来例の液晶表示装置では、液晶層に電界が印加されていない場合にも180度ねじれが安定となる量のカイラル材を添加しているが、本実施形態では、カイラル材の添加量を電界が印加されていない場合にはねじれのないスプレイ配向が安定となる程度に抑えている。
従来の構成では、多量のカイラル材を添加しているため、転移が生じた後に液晶の配向にねじれ構造が残って、印加電圧が低い場合にベンド配向が損なわれ、視野角特性の低下、白表示の着色、応答速度の低下といった課題が生じる。一方、本実施形態では、カイラル材の添加量が少ないので、転移が生じた後に液晶の配向にねじれ構造がほとんど残らず、印加電圧が低い場合にもベンド配向が損なわれることがない。従って、視野角特性の低下、白表示の着色、応答速度の低下といった課題が生じることがない。
以下、本実施形態の転移性能について説明する。実施形態3で、図37と図38を用いて示したように、横電界、あるいは横電界と縦電界を印加した際に、特定のねじれ方向が優勢となれば転移性能が向上する。本実施形態では、カイラル材による電界印加時に左右いずれかのねじれがエネルギー的に安定となるので、優勢側のねじれ構造が誘起されやすく、良好な転移性能が得られる。次に、カイラル材の添加量について説明する。カイラル材を添加した液晶材料の自発ピッチをPs、セル厚をdとすると液晶分子の自然なねじれ角φは
φ=±360×(d/Ps) (度)
で表される。複号はねじれの方向を示している。
一方、OCB型の液晶表示装置では配向処理は平行方向である。従って、実際には電圧印加がない場合のねじれ角は、0度、±180度、±360度、……に限定される。φが±90度の間にあれば、実際のねじれ角は0度、φが90度を越えると180度ねじれが安定となる。従って、Psがセル厚の4倍以上になるようにすれば、ねじれ角が0度のスプレイ配向が安定となる。この条件を満たすカイラル添加量は、Psとカイラル添加量の間にはほぼ反比例の関係があるので、これを用いて定めてもよいし、カイラルピッチの実測から定めることもできる。
なお、上記の範囲内であってもカイラルの添加量が多すぎると、動作時にねじれ構造が残って、表示性能が若干悪化する場合があるので、カイラル添加量は少ない方がよい。実験によれば、Psが30度以下であるようにカイラル添加量を設定するのが望ましく、10度以下であるようにすれば、さらに高画質が得られる。
(実施の形態2−11)
上記の各実施形態において、縦電界と横電界で印加周波数を変えたところ、転移性能の安定度が向上した。縦電界と横電界で印加周波数が等しい場合には、相互の電界の干渉が生じるので、両電界の位相差によっては十分な転移性能が得られない場合がある。本実施形態の方法によれば、このような干渉を防ぐことができ、安定な転移性能が得られる。
2つの電界の周波数をずらす場合には、横電界の周波数を高く、縦電界の周波数を低く設定するのが望ましい。第1の理由は、縦電界は一方を対向電極として広い面積に発生させるているので、容量負荷が大きく、周波数を高めると電源への負荷が大きくなるからである。一方で、横電界は電界印加部分が限定されており、容量負荷が小さい。第2の理由は、横電界は場合により印加時間を短くすることもあるので、周波数が低いと直流成分が残ってしまい、表示むらの原因となる場合があるからである。
実験によれば、横電界は10ヘルツ以上、より望ましくは30ヘルツ以上が良好な結果を与えた。縦電界は0.1ヘルツから50ヘルツ程度の間、より望ましくは0.1ヘルツから10ヘルツの間であり、横電界の周波数以上であることが望ましい。
(実施の形態2−12)
図41は、上記の各実施形態に説明したいずれかの液晶表示装置163に、コントローラ部とインターフェース(I/F)部を設けて液晶モニター169としたものである。液晶表示装置はパネル部161とバックライト部162を有している。165は電源スイッチである。インターフェース部は画像信号164を受けて、これをコントローラに送る。コントローラ部は、パネル部に画像表示用の表示制御信号166を、バックライト部にバックライト制御信号168を送っている。
本実施形態の液晶モニターでは、初期化制御信号167をパネル部に供給して、転移を行わせている。液晶表示装置およびその転移操作は、上記第1から第10の実施形態で説明した方法を用いることができる。電源スイッチ165が投入されたときや、レジューム後に立上がる時に、初期化制御信号がパネル部に送られ、転移操作が行われる。これらの場合、バックライトの点灯を転移操作から若干遅らせることにより、転移時の画面の乱れを使用者に見せることなく転移操作を行うことができる。また、レジューム時には、バックライトをオフ状態として、画像信号も送られていないが、初期化信号を供給して、定期的に転移操作を行っておいて、使用が再開されたときの立上げ時間を短くすることもできる。
(実施の形態2−13)
図42は、上記の各実施形態に説明したいずれかの液晶表示装置163をCPUと組合せ、キーボード、マウス、タッチパネルなどからの入力信号171の処理部を設けて液晶表示装置付きコンピュータ172としたものである。他の部分は、実施形態12と同様に動作する。
本実施形態の液晶表示装置付コンピュータも、実施形態12での説明と同様に、初期化制御信号167をパネル部に供給して転移を行わせている。液晶表示装置およびその転移操作は、上記第1から第10の実施形態で説明した方法を用いることができる。初期化時にバックライトの点灯を転移操作から若干遅らせることにより、転移時の画面の乱れを使用者に見せることなく転移操作を行うことができることや、レジューム時にバックライトをオフ状態としながら初期化信号を供給して定期的に転移操作を行っておいて、使用が再開されたときの立上げ時間を短くすることもできるのも上記の説明と同様である。
また、同様のブロック図の構成により、液晶表示装置付モバイル端末を構成することもできる。この場合、電池駆動をする時には図中の電源コードは不要である。
(実施の形態2−14)
図43は、上記の各実施形態に説明したいずれかの液晶表示装置163に、チューナ部とインターフェース(I/F)部を設けて液晶テレビなどの映像表示機器182としたものである。液晶表示装置は、第11の実施形態と同様に、パネル部161とバックライト部162を有している。165は電源スイッチである。チューナ部は映像信号181を受けて、これをコントローラに送る。コントローラ部は、パネル部に映像表示用の表示制御信号166を、バックライト部にバックライト制御信号168を送っている。
本実施形態の液晶テレビでは、初期化制御信号167をパネル部に供給して、転移を行わせている。この液晶テレビにおいても、液晶表示装置およびその転移操作は、上記第1から第10の実施形態で説明した方法を用いることができる。主電源スイッチ165が投入されたときや、リモコンスイッチで表示が立上がる時に、初期化制御信号がパネル部に送られ、転移操作が行われる。これらの場合、バックライトの点灯を転移操作から若干遅らせることにより、転移時の画面の乱れを使用者に見せることなく転移操作を行うことができる。また、リモコンスイッチで表示がオフにされた時には、バックライトをオフ状態として、画像信号も送られていないが、初期化信号を供給して、定期的に転移操作を行っておいて、リモコンスイッチで表示が再開されたときの立上げ時間を短くすることもできる。
以上説明したように、本発明による表示装置は、液晶分子の配向が電圧無印加時とは異なった状態で表示中は動作する液晶表示装置において、液晶分子を基板面内のねじれ成分を含む方向に回転させる第1の電界を発生する第1の電界発生手段と、前記液晶分子を基板面から立ち上らせる電界を発生する第2の電界発生手段とを有するものである。これにより、液晶にねじれ成分を含むような電界を加えることにより、ねじれ配向、あるいはねじれ状態に類した配向を作り出して、表示中の配向状態への転移を容易に行わせている。
また、本発明による液晶表示装置の駆動方法は、第1の電界により液晶分子をねじれ成分を含む方向に回転させる第1のステップと、第2の電界により液晶分子を基板面にほぼ垂直な方向に立ち上らせる第2のステップとをこの順で行なうものである。これにより、第1のステップでは、液晶にねじれ成分を含むような電界を加えることにより、ねじれ配向、あるいはねじれ状態に類した配向を作り出して、表示中の配向状態への遷移状態として機能させる。第2のステップでは、縦電界によりこの近傍から転移を開始させ、転移領域を拡大成長していき、表示領域全体の転移を行う。このようなステップにより、表示中の配向状態への転移を容易に行わせている。
本発明による液晶表示装置の別の駆動方法は、第1の電界により液晶分子を基板面にほぼ垂直な方向に立ち上らせる第1のステップと、第2の電界により液晶分子をねじれ成分を含む方向に回転させる第2のステップとをこの順で行なうものである。これにより、第1のステップでは、縦電界を加えることにより、縦電界印加領域の液晶分子を立ち上った状態にセットする。第2のステップでねじれ成分を含むような電界を加えて、ねじれ配向、あるいはねじれ状態に類した配向を作り出して、表示時の配向状態への遷移状態を作りだし、転移核として機能させる。このようなステップにより、表示中の配向状態への転移を容易に行わせている。
(その他の事項)
上記の説明においては、液晶5としてOCBモードの液晶を例に挙げて説明した。しかし、本発明はOCBモードの液晶に限られず、表示状態における配向状態と非表示状態における配向状態とが異なり、画像を表示させる前に非表示状態の配向状態から表示状態の配向状態へ初期化することが必要である液晶に対して用いられ得る。