以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
<本発明の一実施の形態による製品設計パラメータ決定支援システム>
図1は、本発明の一実施の形態による製品設計パラメータ決定支援システムの全体構成を示すシステムブロック図である。
本実施の形態による製品設計パラメータ決定支援システムは、開発対象製品に関する情報を入力するデータ入力部1と、演算結果を表示する結果表示部2と、製品機能と設計パラメータ間の品質影響度の構造化処理を行う品質影響度構造化処理部4および、構造化された品質影響度を用いて対象製品の実験計画を作成する実験計画作成部5および、実験計画に基づき実施された実験の評価結果から設計パラメータの適正化計算を行う設計パラメータ適正化処理部6を有するデータ演算部3と、演算に必要な情報を格納する複数のデータベース部からなるデータ格納部7から構成される。
データ入力部1は、開発対象となる製品の製品機能情報を入力する製品機能入力部11、該当製品の設計パラメータ情報を入力する設計パラメータ入力部12、該当製品の製品機能と設計パラメータ間の品質影響度モデルや、設計パラメータ間の相互影響度を構造化した設計パラメータ構造化モデルの編集作業を行う品質影響度モデル編集部13から構成される。製品機能入力部11および設計パラメータ入力部12にて入力されたデータは、データ演算部3内の品質影響度構造化処理部4に送られ、所定の処理を行い、データ格納部7内の品質影響度モデル情報74に登録される。また、品質影響度モデル編集部13は、編集対象とする製品を選択し、品質影響度モデル情報74に登録されている対象製品の製品機能情報、設計パラメータ情報、および品質影響度モデル情報や設計パラメータ構造化モデル情報を表示する。そして、表示された情報を編集した際、編集後のデータを品質影響度モデル情報74に登録する。
結果表示部2は、開発対象となる製品の実験計画を表示する実験計画表示部21、開発対象となる製品の設計パラメータの仕様を表示する設計パラメータ仕様表示部22、設計パラメータ仕様表示部22に表示される設計パラメータ仕様における製品機能の推定値を表示する製品機能推定値表示部23から構成される。実験計画表示部21では、対象製品の選択および実験計画作成に必要な情報を入力し、データ演算部3内の実験計画作成部5にて作成した実験計画を表示する。設計パラメータ仕様表示部22および製品機能推定値表示部23は、それぞれデータ演算部3内の設計パラメータ適正化処理部6にて計算された設計パラメータ仕様および製品機能の推定値を表示する。
品質影響度構造化処理部4は、データ格納部7内の実験結果履歴情報72または、製品不良履歴情報73を用いて対象製品の製品機能と設計パラメータ間の品質影響度の関係を表現する初期モデルを作成する品質影響度モデル作成部41、品質影響度モデル作成部41にて作成した品質影響度モデルを用いて設計パラメータ間の相互関係の構造化処理を行い、設計パラメータ間の相互関係が最小となる設計パラメータグループを作成する設計パラメータ構造化処理部42から構成される。品質影響度モデル作成部41では、データ入力部1内の製品機能入力部11および、設計パラメータ入力部12にて入力された製品の製品機能および設計パラメータに関して、実験結果履歴情報72または、製品不良履歴情報73から過去の類似する製品の製品機能や設計パラメータに関する情報を抽出し、品質影響度モデルの初期値を作成する。品質影響度モデル作成部41にて作成された品質影響度モデルおよび、設計パラメータ構造化処理部42にて作成された設計パラメータ構造化モデルはデータ格納部7内の品質影響度モデル情報74に登録される。
実験計画作成部5では、結果表示部2内の実験計画表示部21で選択された製品に関して、データ格納部7内の品質影響度モデル情報74から製品機能と設計パラメータ間の品質影響度モデルおよび、設計パラメータ構造化モデルからなる品質影響度モデルを取得し、同一実験における評価対象の設計パラメータグループを作成し、実験計画表示部21に出力する。
設計パラメータ適正化処理部6は、データ格納部7内の実験結果履歴情報72のうち、データ演算部3内の実験計画作成部5にて作成した実験計画に基づいて実施された実験結果情報を取得し、より詳細な品質影響度モデルを作成する品質影響度モデル更新処理部61、および品質影響度モデル更新処理部61にて作成した品質影響度モデルを用いて目標とする製品機能を満たす設計パラメータの適正値の計算および、その際の製品機能の推定を行う設計パラメータ適正化計算部62から構成される。
データ格納部7は、データ入力部1および結果表示部2およびデータ演算部3に接続されており、各部からの要求に応じて蓄積されているデータの引渡しや、新規データの登録を行う。データ格納部7には、過去製品の製造工程における製造ばらつきの測定結果の履歴を格納する製造ばらつき履歴情報71、実験における設計パラメータ毎の設定値とその測定値および、その際の製品機能の測定結果を格納する実験結果履歴情報72、過去の製品不良情報が蓄積される製品不良履歴情報73、開発対象とする製品の製品機能と設計パラメータ間の品質影響度を構造化した品質影響度モデル情報74が格納される。
例えば、製造ばらつき履歴情報71には、製品名称(またはコード)、処理工程名称(またはコード)、処理対象の部品ID(プロセス製品の場合は部材IDに相当する)、処理日時、処理を実施した製造装置、処理後の製造品質の測定項目(例えば寸法など)およびその測定結果などが含まれる。また、実験結果履歴情報72には、製品名称(またはコード)、部品名称(またはコード、プロセス製品の場合は工程名称となる)、設計パラメータ項目およびその設定値と測定値、製品機能項目および設定した設計パラメータ値における製品機能の測定結果などが含まれる。製品不良履歴情報73には、製品名称(またはコード)、部品名称(またはコード、プロセス製品の場合は工程名称に相当する)、不良となった製品機能項目、およびその原因となる設計パラメータ項目との関連情報などが含まれる。品質影響度モデル情報74は、製品名称(またはコード)と、製品機能項目毎の目標値(狙い値、上限値、下限値)、設計パラメータ毎の特性値(上限限界値、下限限界値、製造ばらつき)および設計パラメータ毎の実験水準数およびの最小変化量、開発対象である製品機能項目とその設計パラメータ間の品質影響度の関係を構造化した品質影響度モデル情報、設計パラメータ間の相互関係を構造化した設計パラメータ構造化モデル情報などが含まれる。
図2は、本実施の形態の製品設計パラメータ決定支援システムにおける設計パラメータの決定方法を示すフローチャートである。
まず、ステップ101において、開発対象となる製品の製品機能情報および、設計パラメータ情報を入力する。ここで、製品機能は製品に要求される機能のうち直接測定可能な指標である。また、設計パラメータは製品に要求される製品機能を満足させるために決定する必要があるパラメータである。そのため、設計パラメータは製品構造に関する構造設計パラメータや、製造方法に関する工程設計パラメータの両者を含むものである。設計パラメータ情報には設計パラメータの名称(またはコード)、その物理的な上/下限限界値、製造ばらつき)、実験水準数および設計パラメータの最小変化量などが含まれる。製品構造に関する設計パラメータ情報は、BOM(Bill Of Material:部品表)から取得することもできる。製造工程に関する設計パラメータ情報は、BOP(Bill Of Process:工程表)から取得することもできる。また、製造ばらつきの初期値として、データ格納部に蓄積されている過去の類似製品における設計パラメータの製造ばらつき実績を代入する。なお、設計パラメータによっては製造ばらつき情報を持たないものもある。製品機能情報には、製品機能の名称(またはコード)、目標値(狙い値、上限値、下限値)が含まれる。なお、例えば、消費電力のような製品機能は小さければ小さいほどよいため、その目標値はある上限値以下となる。このように製品機能の目標値は、機能項目によっては下限のみ、上限のみとなる場合もある。
次に、ステップ102において、データ格納部に蓄積された過去の製品開発履歴情報を用いて開発対象とする製品の製品機能と設計パラメータ間の品質の影響度合いを表す品質影響度モデルの初期値および、設計パラメータ間の相互関係を構造した設計パラメータ構造化モデルからなる品質影響度モデルを作成する。品質影響度モデルの初期値は、例えば、過去の類似製品の実験結果履歴情報を用いた統計処理により初期値を作成することができる。ここで、類似製品とは例えば前世代の製品や、同一のプラットフォームを有する派生製品などである。実験結果履歴情報には、実験を行った際の設計パラメータの設定値およびその際の製品機能の測定結果などが含まれる。また、過去の類似製品の不良履歴情報を用いて、過去に不良が発生した製品機能と設計パラメータとの関係から、品質影響度モデルを作成することもできる。製品不良履歴情報には、不良となった製品機能とその原因となる設計パラメータ項目との関連情報などが含まれる。一方、設計パラメータ構造化モデルの初期値は、先に作成した品質影響度モデルを用いた演算処理により自動的に作成することができる。また、製品構造に起因する設計パラメータ間の形状情報から自動的に作成することができる。例えば、二つの部品の接続部の形状に関する設計パラメータは、片方の部品の接続部の形状を変えた場合、もう一方の部品の接続部の形状も変更しなければならない。このような設計構造に関する情報は設計図面情報から取得することができる。具体的な作成方法は、後ほど図7を用いて説明する。
ステップ103において、前記ステップ102にて作成した品質影響度モデルの修正を行う。ここでは、設計者の知見に基づいて過去の事例からだけでは判断できない設計パラメータと製品機能間の品質影響度モデルや、設計パラメータ間の相互影響度の構造化モデルに関して修正を加える。
次に、ステップ104において、前記ステップ103にて作成した品質影響度モデルを用いて、開発対象となる製品の実験計画を作成する。具体的な実験計画の作成方法は、後ほど図12を用いて説明する。
次に、ステップ105において、前記ステップ104にて作成した実験計画に基づいて実験を実施する。そして、各実験における設計パラメータの設定値および、その際の製品機能の測定値を持つ実験結果はデータ格納部の実験結果履歴情報に蓄積される。
ステップ106では、前記ステップ105にて実施した各実験における設計パラメータの設定値および、その際の製品機能の測定値を含む実験結果情報をデータ格納部から取得する。
そして、ステップ107において、前記ステップ106にて取得した実験の実験結果情報を用いて、前記ステップ103までの時点で作成した品質影響度モデルの更新を行う。設計パラメータの設定値および製品機能の測定値間の因果関係を調べ、品質影響度モデルにおける設計パラメータと製品機能間の品質影響度の度合いを修正する。また、修正した設計パラメータと製品機能に関連する設計パラメータ構造化モデルが自動的に修正される。
次に、ステップ108において、前記ステップ107にて更新した品質影響度モデルを用いて、製造ばらつきを考慮した設計パラメータの適正化処理を行う。具体的な適正化処理方法は、後ほど図16を用いて説明する。
ステップ109において、前記ステップ108に実施した設計パラメータの適正化処理の結果から、設計パラメータ仕様情報およびその設計パラメータ仕様における製品機能の推定値情報を表示する。設計パラメータ仕様情報には各設計パラメータの適正値、公差、製造ばらつき実績および、他に相互関係を持つ設計パラメータ項目などが含まれる。製造ばらつき実績より要求される公差が小さい設計パラメータは強調して表示される。製品機能の推定値情報には前記ステップ108にて算出された設計パラメータ仕様における製品機能の平均値とそのばらつき(例えば、標準偏差値)および、該当製品機能の目標値および、目標と満足するかどうかの判定結果などが含まれる。ここで、目標を満足しない製品機能が存在する場合、前記ステップ108にて使用した製品機能の評価関数の調整や目標値の見直しなどを行い、目標を満足するまで繰り返しステップ108およびステップ109を実施する。
次に、ステップ110では、前記ステップ108にて算出された設計パラメータ仕様を用いた確認実験を行い、その際の製品機能の測定を行う。
ステップ111では、前記ステップ110にて行った確認実験における製品機能の測定値が目標を満たすかどうかの判定を行う。全ての製品機能が目標を満たす場合一連の処理を終了する。
目標を満足しない製品機能が存在する場合、ステップ112において、該当の製品機能に関する追加実験を行う。この場合、前記ステップ107にて作成した品質影響度モデルを用いて、該当する製品機能に関する品質影響度が求まっていない設計パラメータに関して品質影響度モデルを修正および追加の実験計画の作成を行う、追加実験を実施する。追加実験の計画は前記ステップ104にて行う処理方式と同じ方式を用いて、今回評価対象とする製品機能および、該当製品機能と相互関係を有する製品機能に関して同時に評価を行う。追加実験を実施した後、ステップ107以降を繰り返して実施する。
図22は、ハードディスクドライブのヘッダスライダ部の断面構造を模式的に示した図である。
ハードディスクドライブのヘッダスライダ部は、基板上に下層より基板保護膜、下部シールド膜、下部ギャップ膜、GMR膜、上部ギャップ膜、上部シールド膜、ライトギャップ膜、上部コア部がそれぞれ所定の厚さとなるように成膜されている。GMR膜は厚さだけでなく、幅方向の寸法も制御されている。
図3は、機械部品の組立製品の例として、ハードディスクドライブ開発における設計パラメータ情報の表示例を示すものである。
ハードディスクドライブは、まず大きくいくつかの構成要素に分解される。例えば、データが記録されるディスクや、ディスクに記録されたデータの再生、消去や、ディスクへのデータの記録を行うヘッダアッセンブリといった構成要素がある。また、一つの構成要素は複数の部品から構成されており、先ほど、ハードディスクドライブのヘッダアッセンブリ部の例では、ヘッダスライダ、スペーサ他の部品から構成されている。また、ヘッダスライダのヘッダ部は薄膜プロセスにより製造されるため、ヘッダスライダ部は、下部シールド膜、下部ギャップ膜、GMR膜といった部品に分解される。このように詳細に分解された部品毎に設定しなければならない設計パラメータを入力する。ヘッダスライダの例では、下部シールド膜の膜厚、下部シールド膜の膜厚、GMR膜の磁性膜材料のMn組成比、Fe組成比、Co組成比、膜厚、ヘッド部寸法などが設計パラメータとなる。その他に、ヘッダアッセンブリのスペーサ部品の隙間寸法、平坦性や、ディスクの基板ガラスの厚さなども設計パラメータとなる。
なお、評価に際してコストや時間や物理的な制約等により変更できないパラメータに関しては、設計パラメータには加えない。例えば、先ほどのヘッダスライダの下部シールド膜では、膜の材質は変更する自体は可能であるが、今回は変更しないため設計パラメータには加えていない。
図4は、図3に示すハードディスクドライブ開発の事例に対応した製品機能情報の表示例を示すものである。
ハードディスクドライブに要求される製品機能として、ディスクにデータを書き込む速度を示すディスク転送速度や、ハードディスクドライブを搭載するホストとの転送速度を示すインターフェイス転送速度や、ディスクに保存されたデータを検索するシーク時間や、ディスクの残留磁化や、GMRヘッドのインダクタンスなどがある。ディスク転送速度やインターフェイス転送速度は、速ければ速いほどよい指標であるため、目標となる上限は存在せず、目標とする下限値のみが設定される。同じように、シーク時間も短ければ短いほどよいため、目標となる下限値は存在せず、目標とする上限値のみが設定される。ディスクの残留磁化や、GMRヘッドのインダクタンスは動作タイミングに影響を与え、大きすぎても小さすぎても不具合が発生するため、目標の狙い値とその上下限値が設定される。
図23は、半導体LSIのトランジスタの断面構造を模式的に示した図である。
半導体LSIのトランジスタは、Si基板上に絶縁膜を埋め込んで非導通とした素子分離部を形成し、トランジスタの特性に応じたイオン種をSi基板内の素子部に注入し、n−well部やp−well部を作成する。Si基板の各well部の上部にソース、ドレイン部のイオン注入や拡散により形成する。また、Si基板上には絶縁膜と導通膜からゲート電極が形成される。
図5は、プロセス製品の例として、半導体LSIのトランジスタ開発における設計パラメータ情報の表示例を示すものである。
例えば、Si基板上にトランジスタを形成するため、各トランジスタ間を電気的に非導通にするための素子分離工程や、Si基板の不純物濃度を制御するイオン注入工程や拡散工程や、実際のトランジスタのスイッチ部となるゲート形成工程など多くの工程が必要となる。この場合、例えば、素子分離工程では素子分離の長さ、幅、深さ、溝の埋め込み量、溝の削り出し量などが設計パラメータとなる。イオン注入工程では場所毎のイオンの注入量が、拡散工程では温度や時間が設計パラメータとなる。イオン注入量などのように直接測定することが困難な設計パラメータでは、製造ばらつき情報が存在しないこともある。また、拡散時間のように制御性が高く、ばらつきが小さいものは特に製造ばらつきを入力する必要はない。また、ゲート形成工程では、ゲート酸化膜の膜厚や、ゲート寸法、ゲート膜厚、後処理として洗浄処理の有無などが設計パラメータとなる。洗浄処理の有無の設計パラメータは、「0」が無し、「1」が有りとして表現する。直接数値化できない設計パラメータは、このように組み合わせに応じて数値に割り付け表現する。
図6は、図5に示す半導体LSIのトランジスタの製品機能情報の表示例を示すものである。
トランジスタに要求される機能として、トランジスタのON/OFFを制御するしきい値電圧、トランジスタからリーク電流、スタンバイ時にソース−ドレイン間を流れるスタンバイ電流、シート抵抗、消費電力などがある。リーク電流やスタンバイ電流や消費電力は、小さければ小さいほどよい指標であるため、目標となる下限は存在せず、目標とする上限値のみが設定される。また、シート抵抗やしきい値電圧は電気回路設計時の動作特性に影響を与え、大きすぎても小さすぎても不具合が発生するため、目標の狙い値とその上下限値が設定される。
図7は、設計パラメータと製品機能間の品質影響度を表す品質影響度モデルの初期値を示す一例である。
この例では、設計パラメータはX1〜X5の5項目、製品機能はY1〜Y3の3項目を対象としている。そして、設計パラメータX1、X2は部品Aに関するパラメータであり、残りの設計パラメータX3、X4、X5は部品Bに関するパラメータである。この例では、製品機能Y1と設計パラメータX1、X3との間、製品機能Y2と設計パラメータX2、X4、X5との間、製品機能Y3と設計パラメータX3、X4との間に品質面での関係(これを品質影響度と呼ぶ)が見られる。言い換えると、設計パラメータX1または、X3の値を変えた場合(または意図せず変わってしまった場合)、製品機能Y1の値が変化することを意味する。品質影響度の表現方法として、製品機能と設計パラメータ間に品質影響が見られる組み合わせを線でつなぐネットワーク図と、製品機能と設計パラメータ間のマトリクスのうち品質影響が見られる組み合わせに関して「1」を代入し、それ以外には「0」を代入するマトリクス図がある。どちらの表現方法においても品質影響度の関係は等価であるため、どちらの表現方法でもよい。
図8は、設計パラメータ間の相互関係を構造化した設計パラメータ構造化モデルを示す一例である。
この例では、設計パラメータはX1〜X5の5項目を対象としている。そして、設計パラメータX1−X3間、X2−X4間、X2−X5間、X3−X4間、X4−X5間に相互関係が見られる。言い換えると、設計パラメータX1を変更する際、設計パラメータX3も同時に考慮して変更しなければならない。そして、設計パラメータX3を変更する際には、設計パラメータX4を考慮して変更しなければならない。この相互関係の表現方法として、相互関係が存在する設計パラメータ間を結線して設計パラメータ間の相互関係を表現するネットワーク図と、設計パラメータ間のマトリクスのうち、互いに相互関係を有する組み合わせに「1」を代入し、それ以外に「0」を代入して表現するマトリクス図がある。どちらの表現方法においても設計パラメータ間の相互関係は等価であるため、どちらの表現方法でもよい。
図9は、図2のステップ102における製品開発履歴情報を用いた品質影響度モデルの作成方法を示すフローチャートである。
まず、ステップ201において、データ格納部に蓄積されている実験結果履歴情報から、開発対象とする製品に類似する製品の実験結果履歴情報を取得する。前述の通り、類似製品とは例えば前世代の製品や、同一のプラットフォームを有する派生製品などである。また、実験結果履歴情報には、実験を行った際の設計パラメータの設定値とその測定値およびその際の製品機能の測定結果などが含まれる。
次に、ステップ202では、前記ステップ201にて取得した過去の実験結果履歴情報の統計処理を行い、製品機能と設計パラメータ間の品質影響度の関係を表す品質影響度モデルを作成する。図10に、実験結果履歴情報の統計処理による品質影響度モデルの作成方法の一例を示す。同図では、設計パラメータとしてX1〜X5の5項目、製品機能としてY1〜Y3の3項目を対象とする。過去の実験結果履歴情報のうち、5項目の設計パラメータの測定値と、3項目の製品機能の測定値のそれぞれの組み合わせに関して、相関解析を行いそれぞれの組み合わせにおける相関係数を計算する。相関係数は、2つのデータ間の相関の強さを示す指標であり、−1〜1までの値をとる。そして相関係数の絶対値が1に近いほど相関が高く、0に近くなるほど相関が低くなる。同図では、5項目の設計パラメータと3項目の製品機能の組み合わせで計15個の相関係数の絶対値を示している。例えば、設計パラメータX4と製品機能Y2の相関は散布図に示すように相関が高く、相関係数の絶対値の値も0.9と高い。ここで、相関係数の絶対値が0.7以上となるものを製品機能と設計パラメータ間に品質上の関係があるものとした場合、製品機能Y1と設計パラメータX1、X3、製品機能Y2と設計パラメータX2、X4、X5、製品機能Y3と設計パラメータX3、X4の組み合わせが品質影響度モデルにて影響度ありと表現される。ここでは、互いに影響がある組み合わせに「1」を、影響がない組み合わせに「0」を代入することにより、製品機能と設計パラメータ間の品質影響度を示す品質影響度モデルを作成することができる。この場合の品質影響度モデルは図7に示すものと同様になる。なお、設計パラメータによっては、測定値がなく設定値しか存在しないものもある。その場合は、設計パラメータの測定値に代わり設定値を用いて統計処理を実施する。
ステップ203では、データ格納部に蓄積されている製品不良履歴情報から、開発対象とする製品に類似する製品の過去の製品不良履歴情報を取得する。製品不良履歴情報には、不良となった製品機能とその原因となる設計パラメータ項目との関連情報などが含まれる。
次に、ステップ204にて、前記ステップ203にて取得した製品不良履歴情報を用いて、品質影響度モデルの更新を行う。図11に、製品不良履歴情報を用いた品質影響度モデルの作成方法の一例を示す。同図は、過去の製品不良の事例を製品機能に対する設計パラメータのツリー図で表現している。ここの事例では、半導体LSIのトランジスタのしきい値電圧が変動する原因として、ゲート寸法の変更や、Pイオン注入量の変更や、拡散時間の変更などが対応付けられている。この場合、開発対象とする製品のしきい値電圧の製品機能と、ゲート寸法、Pイオン注入量、拡散時間の設計パラメータ間に品質影響があるものとし、品質影響度モデルの該当箇所に影響ありの「1」を代入する。このように、その他の不良事例に関しても同様の処理を行い、品質影響度モデルを構築する。
次に、ステップ205において、前記ステップ204までに作成した品質影響度モデルを用いて設計パラメータ間の相互関係を計算し、設計パラメータ構造化モデルの初期値を作成する。そこで、品質影響度モデルを用いた設計パラメータ構造化モデルの初期値の作成方法を図7および図8を用いて説明する。この例では、前述の通り、設計パラメータとしてX1〜X5の5項目、製品機能としてY1〜Y3の3項目を対象とする。
まず、図7に示す品質影響度モデルにおいて、設計パラメータが影響を及ぼす製品機能を抽出する。例えば、設計パラメータX1の場合、製品機能Y1が抽出される。次に、抽出された製品機能に影響を及ぼす他の設計パラメータを抽出する。この場合、最初の設計パラメータと抽出された設計パラメータがある製品機能を介して互いに関係を持つため、設計パラメータ構造化モデルの該当組み合わせに相互関係が発生する。先ほどの製品機能Y1の場合は、設計パラメータX1の他に、設計パラメータX3が影響を与えるパラメータであるため、設計パラメータX1とX3の間に相互関係が発生する。同様に、設計パラメータX2の場合、まず製品機能Y2が抽出される。そして、製品機能Y2から設計パラメータX4,X5が抽出されるため、設計パラメータX2とX4、X2とX5間の相互関係が導出される。設計パラメータX3の場合、製品機能Y1とY3が抽出され、製品機能Y1から設計パラメータX1が、製品機能Y3から設計パラメータX4が抽出される。設計パラメータX4の場合、まず製品機能Y2とY3が抽出され、それぞれ設計パラメータX2,X5と、X3が抽出される。最後に設計パラメータX5の場合、まず製品機能Y2が抽出され、続いて設計パラメータX2,X4が抽出される。以上の相互関係を全て表現した設計パラメータ構造化モデルは、図8に示す設計パラメータ構造化モデルとなる。
次に、ステップ206において前記ステップ205にて作成した設計パラメータ構造化モデルを用いて、設計パラメータ間の相互関係が最小となる設計パラメータグループを作成するように設計パラメータの構成を変更する構造化処理を行う。この際、各設計パラメータグループ内に該当する設計パラメータの個数はできる限り小さい方が望ましい。この構造化処理方法の一例を、図12を用いて説明する。
図12に示す設計パラメータ構造化モデルの初期値は、図8に示す設計パラメータ構造化モデルと同じものである。この例では、設計パラメータとしてX1〜X5の5項目を対象としている。設計パラメータX1〜X5を2つのグループに分ける際の組み合わせを作成する。各設計パラメータグループ内に該当する設計パラメータの個数はできる限り小さい方が望ましいため、各グループ毎に2つないし、3つの設計パラメータを分離すればよい。その組み合わせは5項目の設計パラメータの中から2つの設計パラメータを選択する組み合わせと等価になるため、組み合わせ計算より10通りの組み合わせが作成される。そして、全10通りの組み合わせの中から2つの設計パラメータグループ間を結ぶ相互関係の線の数が一番少ない組み合わせを抽出する。例えば、設計パラメータグループ1={X1、X2}、設計パラメータグループ2={X3、X4、X5}の場合、グループ1とグループ2間の相互関係の数はX1−X3間とX2−X4間とX2−X5間の3つとなる。また、設計パラメータグループ1={X1、X3}、設計パラメータグループ2={X2、X4、X5}とした場合、グループ1とグループ2間の相互関係の数はX3−X4間の1つとなる。同様に、全組み合わせに関して、グループ間の相互関係の数を求めると、この例では、設計パラメータグループ1={X1、X3}、設計パラメータグループ2={X2、X4、X5}の場合が最小となる。そこで、設計パラメータ構造化モデルの並び替えを行い、2つの設計パラメータグループから構成される設計パラメータ構造化モデルが作成される。
図13は、図2のステップ104における品質影響度モデルを用いた実験計画の作成方法を示すフローチャートである。
まず、ステップ301において、データ格納部より開発対象となる製品の品質影響度モデル情報を取得する。品質影響度モデル情報には、製品機能と設計パラメータ間の品質影響度の関係を構造化した品質影響度モデル、設計パラメータ間の相互関係を構造化した設計パラメータ構造化モデルなどが含まれる。
次に、ステップ302において、前記ステップ301にて取得した品質影響度モデルのうち、図9のステップ206における構造化処理後の設計パラメータ構造化モデルから、設計パラメータグループ情報を取得する。図12に示す構造化処理後の設計パラメータ構造化モデルを用いて説明する。この例では、設計パラメータはX1〜X5の5項目を対象としている。そして、構造化処理により設計パラメータグループ1={X1、X3}、設計パラメータグループ2={X2、X4、X5}から構成される設計パラメータグループ情報が取得される。
次に、ステップ303において、前記ステップ302にて取得した設計パラメータグループ情報より、設計パラメータグループ毎に大実験を割り付け、大実験計画情報を出力する。大実験計画情報には、設計パラメータグループ毎に割り付けられた大実験ID、実験順序、該当する設計パラメータ一覧、先行実験とのインターフェイスパラメータ、実験水準数およびその水準値が含まれる。図14は、図12に示す設計パラメータグループ情報を用いて作成した大実験計画の表示例を示す。前述の設計パラメータグループのうち、大実験ID=1にグループ1を、大実験ID=2にグループ2を割り付けた。そのため、大実験ID=1における実験変数となる設計パラメータはX1とX3、大実験ID=2の実験変数となる設計パラメータはX2、X4、X5である。設計パラメータ毎の水準数の初期値は、設計パラメータ入力時設定した値が代入される。また、実験水準の初期値は設計パラメータ毎に設定された物理的な上下限限界値と、実験水準数から自動的に算出される。また、この段階では実験順序や先行実験とのインターフェイスパラメータは空欄である。
次に、ステップ304において、前記ステップ303にて出力された大実験計画情報に実験順序情報を設定する。順列を決める際、同じタイミングに行う順序の設定も可能である。図14の例では最初に大実験ID=2を行い、次に大実験ID=1を行う順序とした。
次に、ステップ305において、前記ステップ304にて設定した実験順序情報から決定された先行実験とのインターフェイスパラメータに関して、その基準値を設定する。図14の例では2番目に行う大実験ID=1のうち設計パラメータX3が先行実験における設計パラメータX4と相互関係を持つ(図12に示す設計パラメータ構造モデルを参照)。そのため、最初の実験を行う前に設計パラメータX3の設定値を基準値として決める必要がある。そして、大実験ID=1の実験において設計パラメータX3は、基準値から変更することができない。設計パラメータX3以外の設計パラメータは設定した実験水準に関して評価を行うことができる。
そして、ステップ306からステップ310までの処理を、大実験の順序毎に実験数分繰り返す。ステップ306では、対象となる大実験IDに関して、同一実験内の設計パラメータ間の交互作用を設定する。交互作用とは2つの設計パラメータの組み合わせによって発生する評価指標の変動要因である。図21は、2つの設計パラメータ間の交互作用が製品機能に与える影響として、交互作用有無の違いによる評価値の変化の違いを示すものである。交互作用がない場合、2つのパラメータは互いに独立であるため、パラメータ2の水準によらずパラメータ1の水準を1→2に変更した際の評価指標は減少する。交互作用がある場合、パラメータ2の水準によってパラメータ1の水準を1→2に変更した際の評価指標の挙動が異なる。そのため、その組み合わせを考慮した実験計画を作成しなければならない。図14の例では、大実験ID=2における設計パラメータX2、X4、X5間の交互作用の有無を設定している。この例では、X2−X4間およびX2−X5間に交互作用が存在する。
次に、ステップ307において、各設計パラメータの実験水準の修正が行われる。修正を行わない設計パラメータは、設計パラメータの物理的な上下限限界値と、実験水準数から自動的に算出された初期値を使用する。
次に、ステップ308において、実験対象となる設計パラメータの数やその水準数、また設計パラメータ間の交互作用の数からを満足する複数の実験計画表を出力し、その中から1つを選択する。実験計画表は各列にパラメータの水準レベルの組み合わせを表示した表で、例えば、タグチメソッドで用いられる直行表や、応答局面法で用いられる複合計画表などがある。設計パラメータの数やその水準や、交互作用の数に応じて適正規模の計画表を選択する。設計パラメータの数やその水準数、また設計パラメータ間の交互作用の数に応じた実験計画表の種類に関しては、前記非特許文献1を参照にされたい。
次に、ステップ309において、前記ステップ308にて選択した実験計画表の各列に対象となる設計パラメータを割り付ける。タグチメソッドで用いられる直行表では、交互作用を持つ設計パラメータを割り付ける列が予め決まっているため、その指示に従って割り付ける。
最後に、ステップ310において、対象となる大実験IDにおける小実験計画情報を出力する。小実験計画情報には、小実験ID毎の設計パラメータの水準レベルや、各設計パラメータ毎の水準レベルにおける設定値などが含まれる。図15は、図14における大実験ID=2の設計パラメータX2、X4、X5を2つの水準で全組み合わせ実験を行う際に小実験計画情報を示すものである。小実験ID毎の設計パラメータX2、X4、X5の水準レベルが表示される。また、設計パラメータX2、X4、X5の水準レベルにおける設定値も表示される。
図16は、図2のステップ107および、ステップ108における製造ばらつきを考慮し、品質影響度モデルを用いた設計パラメータの適正化処理方法を示すフローチャートである。
まず、ステップ401にて、データ格納部より図2のステップ106にて取得した実験結果の数値計算により製品機能と設計パラメータ間の品質影響度行列における各要素成分の係数を算出する。ここで、製品機能を表すベクトルをY、設計パラメータを表すベクトルをXとする。そして、製品機能ベクトルYと設計パラメータベクトルXの関係を、(1)式で表現する。
ここで、Aは設計パラメータベクトルに対応した列数、製品機能に対応した行数からなる品質影響度行列である。また、Bは製品機能ベクトルに対応したオフセット補正ベクトルとなる。なお、設計パラメータベクトルには、各設計パラメータ項目だけでなく、複数の設計パラメータ項目間の交互作用成分が加わる。そのため、設計パラメータベクトルにおける項目数は、対象とする設計パラメータ数以上となる。そして、例えば、実験結果の最小二乗法計算により、各実験の設計パラメータベクトルXにおける製品機能ベクトルYの測定値と(1)式にて計算される製品機能ベクトルの推定値の誤差が最小となるように品質影響度行列Aおよびオフセット補正ベクトルBの各要素の係数が決定される。図17は、図14に示す実験計画の実験結果情報を用いた品質影響度行列の算出方法を示す一例である。
前述の通り、この例では、設計パラメータはX1〜X5の5項目、製品機能はY1〜Y3の3項目を対象としている。また、設計パラメータグループ2={X2、X4、X5}、設計パラメータグループ1={X1、X3}順に評価実験を行っている。ここで、設計パラメータX3は先行実験における設計パラメータX4と相互関係を持ち(図12に示す設計パラメータ構造モデルを参照)、基準値として固定されているため、今回の設計パラメータ適正化処理の対象外となり、設計パラメータベクトルには含まれない。また、設計パラメータX2−X4間およびX2−X5間に交互作用が存在するため、設計パラメータベクトルに1次の交互作用の成分を追加する。そして、設計パラメータベクトルX={X1、X2、X4、X2*X4、X5、X2*X5}となる。また、製品機能ベクトルY={Y1、Y2、Y3}となる。そして、品質影響度行列Aは6×3の行列となる。そして、大実験ID=1の実験結果の最小二乗計算により、品質影響度行列Aの要素a11の係数が算出される。また、大実験ID=2の実験結果の最小二乗計算により、品質影響度行列Aの要素a22〜a62、a23〜a63の係数が算出される。
次に、ステップ402において、製品機能ベクトルの重み付けを行い適正化処理の目的関数を作成する。例えば、図17の製品機能ベクトルY={Y1、Y2、Y3}の目的関数fは、(2)式のようになる。
ここで、ΔY(i)は製品機能ベクトルの各要素の目標からの偏差量、Ytarget(i)、Yul(i)、Yll(i)はそれぞれ各製品機能の目標狙い値、上限値、下限値、g(i)は各製品機能の重み付け係数である。また、ΔY(i)は各製品機能の目標値によって計算式が異なる。製品機能が目標狙い値を持つ場合のΔY(i)は(3)式に、下限しきい値となる場合のΔY(i)は(4)式に、上限しきい値となる場合のΔY(i)は(5)式となる。
次に、ステップ403において、各設計パラメータ項目の製造ばらつき実績および物理的な限界しきい値より、各設計パラメータ項目の変更可能範囲を計算する。設計パラメータの製造ばらつき実績や物理限界しきい値は、図2のステップ101における設計パラメータの入力時に取得される。図18は、設計パラメータの製造ばらつきおよび限界値を用いた設計パラメータの変更可能範囲の計算方法の一例を示す図である。設計パラメータには物理的にそれ以上変更できない限界値を持っている。また、設計パラメータをある狙い値に設定しても、実際には製造ばらつきにより狙いからばらついた分布となる。そのため、製造ばらつきを考慮する場合、設計パラメータは物理限界から製造ばらつきを引いた分変更することができない。そのため、設計パラメータの変更可能範囲の上限は物理限界の上限値−製造ばらつきとなる。設計パラメータの変更可能範囲の下限は、物理限界の下限値+製造ばらつきとなる。ここで、製造ばらつきの値には3σを用いることが多い。
そして、ステップ404では、前記ステップ403にて計算した設計パラメータの変更可能範囲および製品機能の目標値より、設計パラメータおよび製品機能の制約条件を作成する。制約条件式では、設計パラメータおよび製品機能の対象範囲を不等式にて表現する。
そして、ステップ405では、前記ステップ401にて算出した品質影響度行列および、前記ステップ402にて作成した目的関数および、前記ステップ404にて作成した制約条件式を用いた数値計算処理を行い、制約条件を満たしかつ目的関数の値を最小とする設計パラメータの近似解を計算する。例えば、数値計算の手法には、線形計画法や二次計画法やNewton−Raphson法などがある。いずれも入力変数および出力変数間の関数および、出力変数の目的関数および、入力変数と出力変数の制約条件を設定し、所定の計算アルゴリズムを実行することにより、目的関数を最小(または最大)かつ制約条件を満たす入力変数の値が計算される。
次に、ステップ406において、設計パラメータの製造ばらつきを考慮した製品機能の推定値(平均およびばらつき)を前記ステップ401にて作成した品質影響度行列を用いて計算する。例えば、各設計パラメータは前記ステップ405にて算出した狙い値を中心に製造ばらつきを標準偏差とする正規分布に従うものと仮定する。モンテカルロ・シミュレーション法では、全ての設計パラメータに関してランダムに正規分布ばらつきを発生させ、その際の製品機能の推定値を(1)式を用いて計算する。この計算を繰り返し行うことにより、製品機能推定値の平均値およびそのばらつき(標準偏差)を計算することができる。
次に、ステップ407において、前記ステップ406にて計算した製品機能のばらつきを含めた推定値が目標を満たすかどうかの判定が行われる。例えば、製品機能の推定値の平均値±3σ(標準偏差)と、目標の上限しきい値、下限しきい値との比較が行われる。製品機能のばらつきを含めた推定値が目標を満たす場合、ステップ408に進む。一方、製品機能のばらつきを含めた推定値が目標から外れる場合、ステップ409に進む。
ステップ408では、各設計パラメータの公差を作成する。公差とは設計パラメータが許容できる変化量であるため、前記ステップ406にて設定されている製造ばらつきを公差とする。製造ばらつきが標準偏差(σ)で与えられる場合は、3σ値が公差となる。
また、ステップ409では、製品機能の推定値が目標から外れているため、設計パラメータの制約条件や、目的関数の重み付け係数の修正を行い、再度、ステップ405以降の処理を実施する。修正方法としては、目標から外れている製品機能の重み付け係数を大きくすればよい。また、目標から外れている製品機能に大きな影響を与える設計パラメータの製造ばらつきの値を小さくするように制約条件を変更すればよい。例えば、図17の例では、製品機能Y1の場合、設計パラメータX1の影響を受けるため、設計パラメータX1の製造ばらつきを小さくする必要がある。また、製品機能Y2の場合、設計パラメータX2、X4、X5の影響を受けるが、この中で製品機能Y2に対する感度が大きい設計パラメータ順に製造ばらつきを変更していく必要がある。ただし、この際、物理的にこれ以上小さくできない設計パラメータの製造ばらつきは変更しない。
図19は、図17に示す品質影響度行列を用いた設計パラメータ適正化処理を行った際の設計パラメータ仕様の計算結果の表示例を示す。前述の通り、この例では設計パラメータX1〜X5の5項目を対象としている。各設計パラメータ項目の適正値、公差、製造ばらつき実績や他の設計パラメータとのインターフェイス情報が表示される。例えば、設計パラメータX1では製造ばらつき実績が「30」であるのに対して、公差は「20」となっている。そのため、設計パラメータX1に関しては、製造ばらつきを小さくする必要があることがわかる。
図20は、図17に品質影響度行列を用いた設計パラメータ適正化処理を行った際の製品機能の推定値の計算結果の表示例を示す。前述の通り、この例では製品機能Y1〜Y3の3項目を対象としている。各製品機能の推定値(平均、ばらつき)や目標値(狙い、上限、下限)や判定結果が表示される。製品機能によっては狙いとなる目標値を持たず、上限または下限のみの目標となるものもある。また、判定結果が「NG」となる製品機能は、強調して表示される。
以上説明したように、本実施の形態の製品設計パラメータ決定支援システム、およびこのシステムにおける設計パラメータの決定方法によれば、製品機能および設計パラメータ間の相互作用の構造化を行い、相互作用が少ない設計パラメータグループの抽出ならびに設計パラメータグループに基づいた実験計画の作成機能を有することにより、要求される製品機能を短期間で効率的に満たし、かつ最初から相互関係に注意した繰り返しの少ない実験を実施することできる。
また、製品機能と設計パラメータ間の品質影響度の関係から製造ばらつきを考慮した製品機能の推定機能を有することにより、量産段階で発生する製造ばらつきの影響を考慮した設計パラメータの決定が可能となり、量産段階での製品不具合が発生せず、製品開発期間を短縮することができる。
<本発明の他の実施の形態による製品設計パラメータ決定支援システム>
図24は、本発明の他の実施の形態による製品設計パラメータ決定支援システムの全体構成を示すシステムブロック図である。
本実施の形態による製品設計パラメータ決定支援システムは、開発対象とする製品に関する情報を入力するデータ入力部1aと、演算結果を表示する結果表示部2aと、製品機能と設計パラメータ間の品質影響度の構造化処理を行う品質影響度構造化処理部4aおよび、インターフェイスパラメータの初期値の設定や調整を行うインターフェイスパラメータ調整処理部8および、構造化された品質影響度モデルを用いて対象製品の実験計画の作成や実験結果の解析を行う実験計画作成・解析部5aおよび、製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルを用いて要求される製品機能を満たすよう製造ばらつきを考慮した設計パラメータの適正化計算を行う設計パラメータ適正化処理部6aを有するデータ演算部3aと、演算に必要な情報を格納するデータ格納部7aから構成される。
データ入力部1aは、開発対象とする製品の製品機能情報を入力する製品機能入力部11a、該当製品の設計パラメータ情報を入力する設計パラメータ入力部12a、該当製品の製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルや、設計パラメータ間の相互影響度を構造化した設計パラメータ構造化モデルの編集作業を行う品質影響度モデル編集部13aから構成される。設計パラメータ入力部12aでは、対象の設計パラメータに該当する製造ばらつき情報をデータ格納部7a内の製造ばらつき履歴情報71aから取得し入力画面に表示する。製品機能入力部11aおよび設計パラメータ入力部12aにて入力されたデータは、データ演算部3a内の品質影響度構造化処理部4aまたはインターフェイスパラメータ調整処理部8に送られ、所定の処理を行い、データ格納部7a内の品質影響度モデル情報74aに登録される。また、品質影響度モデル編集部13aは、編集対象とする製品を選択し、品質影響度モデル情報74aに登録されている対象製品の製品機能情報、設計パラメータ情報、および品質影響度モデル情報や設計パラメータ構造化モデル情報を表示する。そして、表示された情報を編集した際、編集後のデータを品質影響度モデル情報74aに登録する。
結果表示部2aは、開発対象となる製品の実験計画を表示する実験計画表示部21a、開発対象となる製品の設計パラメータの仕様を表示する設計パラメータ仕様表示部22a、設計パラメータ仕様表示部22aに表示される設計パラメータ仕様における製品機能の推定値を表示する製品機能推定値表示部23aから構成される。実験計画表示部21aでは、品質影響度モデル情報74aに含まれる対象製品を選択し、選択した製品に関してデータ演算部3a内の実験計画作成・解析部5aにて作成した実験計画を表示する。設計パラメータ仕様表示部22aおよび製品機能推定値表示部23aは、それぞれデータ演算部3a内の設計パラメータ適正化処理部6aにて計算された設計パラメータ仕様および製品機能の推定値を表示する。
品質影響度構造化処理部4aは、データ格納部7a内の実験結果履歴情報72aまたは、製品不良履歴情報73aを用いて対象製品の製品機能−設計パラメータ間の品質影響度の関係を表現する初期モデルを作成する品質影響度モデル作成部41a、品質影響度モデル作成部41aにて作成した品質影響度モデルを用いて設計パラメータ間の相互影響度の構造化処理を行い、設計パラメータ間が互いに独立となるようにインターフェイスパラメータの設定および設計パラメータグループの作成を行う設計パラメータ構造化処理部42aから構成される。品質影響度モデル作成部41aでは、データ入力部1a内の製品機能入力部11aおよび、設計パラメータ入力部12aにて入力された製品の製品機能および設計パラメータに関して、実験結果履歴情報72aまたは、製品不良履歴情報73aから過去の類似する製品の製品機能や設計パラメータに関する情報を抽出し、品質影響度モデルの初期値を作成する。品質影響度モデル作成部41aにて作成された品質影響度モデルおよび、設計パラメータ構造化処理部42aにて作成されたインターフェイスパラメータおよび設計パラメータ構造化モデルはデータ格納部7a内の品質影響度モデル情報74aに登録される。
インターフェイスパラメータ調整処理部8では、設計パラメータ構造化処理部42aにて作成されたインターフェイスパラメータに関してその初期値の計算や、実験後のインターフェイスパラメータの調整処理を行う。インターフェイスパラメータ調整処理部8で調整されたインターフェイスパラメータおよび設計パラメータ構造化モデルはデータ格納部7a内の品質影響度モデル情報74aに登録される。
実験計画作成・解析部5aでは、結果表示部2a内の実験計画表示部21aで選択された製品に関して、データ格納部7a内の品質影響度モデル情報74aから製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルおよび、設計パラメータ構造化モデルからなる品質影響度モデルを取得し、評価対象とする設計パラメータに関して、実験計画表への割付を行い実験計画を作成し実験計画表示部21aに出力する。また、データ格納部7a内の実験結果履歴情報72aから該当する実験計画に基づいて実施された実験結果情報を取得し、より詳細な製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルを作成し、データ格納部7a内の品質影響度モデル情報74aに登録する。
設計パラメータ適正化処理部6aでは、データ格納部7a内の品質影響度モデル情報74aから対象製品の品質影響度モデルを取得し、目標とする製品機能を満たす設計パラメータの適正値の計算および、その際の製品機能の推定を行う。
データ格納部7aは、データ入力部1aおよび結果表示部2aおよびデータ演算部3aに接続されており、各部からの要求に応じて蓄積されているデータの引渡しや、新規データの登録を行う。データ格納部7aには、過去製品の製造工程における製造ばらつきの測定結果の履歴を格納する製造ばらつき履歴情報71a、実験における設計パラメータ毎の設定値とその測定値および、その際の製品機能の測定結果を格納する実験結果履歴情報72a、過去の製品不良情報が蓄積される製品不良履歴情報73a、開発対象とする製品の製品機能−設計パラメータ間の品質影響度を表す品質影響度モデルならび設計パラメータ間の相互影響度を構造化して表現する設計パラメータ構造化モデルから構成される品質影響度モデル情報74aが格納される。
例えば、製造ばらつき履歴情報71aには、製品名称(またはコード)、処理工程名称(またはコード)、処理対象の部品ID(プロセス製品の場合は部材IDに相当する)、処理日時、処理を実施した製造装置、処理後の製造品質の測定項目(例えば寸法など)およびその測定結果などが含まれる。また、実験結果履歴情報72aには、製品名称(またはコード)、部品名称(またはコード、プロセス製品の場合は工程名称となる)、設計パラメータ項目およびその設定値と測定値、製品機能項目および設定した設計パラメータ値における製品機能の測定結果などが含まれる。製品不良履歴情報73aには、製品名称(またはコード)、部品名称(またはコード、プロセス製品の場合は工程名称に相当する)、不良となった製品機能項目、およびその原因となる設計パラメータ項目との関連情報などが含まれる。品質影響度モデル情報74aは、製品名称(またはコード)と、製品機能項目毎の目標値(狙い値、上限値、下限値)、設計パラメータ毎の特性値(上限限界値、下限限界値、製造ばらつき)および設計パラメータ毎の実験水準数およびの最小変化量、開発対象である製品機能項目とその設計パラメータ間の品質影響度の関係を構造化した品質影響度モデル情報、設計パラメータ間の相互影響度を構造化した設計パラメータ構造化モデル情報などが含まれる。
図25は、本実施の形態の製品設計パラメータ決定支援システムにおける設計パラメータの決定方法を示すフローチャートである。
まず、ステップ501において、開発対象とする製品の製品機能に関する情報および設計パラメータに関する情報を入力する。ここで、製品機能は、製品に要求される機能の特性や性能を表す測定可能な指標である。また、設計パラメータは製品に要求される製品機能を満足させるために決定する必要があるパラメータである。そのため、設計パラメータは製品構造に関する構造設計パラメータや、製造方法に関する工程設計パラメータの両者を含む。設計パラメータの情報には設計パラメータの名称(またはコード)、その物理的な上/下限限界値、製造ばらつき、実験水準数および設計パラメータの最小変化量などが含まれる。製品構造に関する設計パラメータ情報は、BOM(Bill Of Material:部品表)から取得することもできる。製造工程に関する設計パラメータ情報は、BOP(Bill Of Process:工程表)から取得することもできる。また、製造ばらつきの初期値として、データ格納部に蓄積されている過去の類似製品における設計パラメータの製造ばらつき実績を代入する。なお、設計パラメータによっては製造ばらつき情報を持たないものもある。製品機能の情報には、製品機能の名称(またはコード)、目標値(狙い値、上限値、下限値)が含まれる。なお、例えば、消費電力といった製品機能はその値が小さいほどよいため、その目標値はある上限値以下となる。このように製品機能の目標値は、機能項目によっては下限のみ、上限のみとなる場合もある。
次に、ステップ502において、開発対象とする製品の製品機能と設計パラメータ間の品質影響度の度合いを表す品質影響度モデルの初期値を作成する。品質影響度モデルの初期値は、例えば、過去の類似製品の実験結果履歴情報を用いた統計処理により作成することができる。ここで、類似製品とは例えば前世代の製品や、同一のプラットフォームを有する派生製品などである。実験結果履歴情報には、実験を行った際の設計パラメータの設定値または実際の測定値およびその際の製品機能の測定結果などが含まれる。具体的な作成方法は、後ほど図27を用いて説明する。また、過去の類似製品の不良履歴情報を用いて過去に不良が発生した製品機能と設計パラメータとの関係から、品質影響度モデルを作成することもできる。製品不良履歴情報には、不良となった製品機能とその原因となる設計パラメータ項目との関連情報などが含まれる。具体的な作成方法は、前述した図11と同様である。自動作成された製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルは、設計者の知見に基づき表示画面を介して手動にて修正することができる。
ステップ503では、設計パラメータ間の相互影響度を表す設計パラメータ構造化モデルの初期値を作成する。設計パラメータ構造化モデルの初期値は、前記ステップ502にて作成した製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルを用いた演算処理により自動的に作成することができる。また、製品構造に起因する設計パラメータ間の形状情報から自動的に作成することができる。例えば、二つの部品の接続部の形状に関する設計パラメータは、片方の部品の接続部形状を変えた場合、もう一方の部品の接続部形状も変更しなければならない。このような設計構造に関する情報は設計図面情報から取得することができる。自動作成された設計パラメータ構造化モデルは、設計者の知見に基づき表示画面を介して手動にて修正することができる。
次に、ステップ504において、前記ステップ503にて作成した設計パラメータ構造化モデルの構造化処理を行い、設計パラメータグループ間のインターフェイスとなる設計パラメータおよび、他に独立な設計パラメータの集合である設計パラメータグループを作成する。具体的な設計パラメータグループおよびインターフェイスパラメータの作成方法は、後ほど図29を用いて説明する。
次に、ステップ505において、前記ステップ504にて作成したインターフェイスパラメータに関して実験を行い、インターフェイスパラメータの初期値を決定する。各実験における設計パラメータの設定値および、その際の製品機能の測定値を持つ実験結果はデータ格納部の実験結果履歴情報に蓄積される。
ステップ506では、前記ステップ504にて作成された設計パラメータグループ毎に実験計画を作成し、実験計画に基づいて実験を行い、各実験における設計パラメータの設定値および、その際の製品機能の測定値を含む実験結果情報を用いて製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルのうち該当する品質影響度係数を計算する。ステップ505および506における実験の作成方法および解析方法は、後ほど図32を用いて説明する。
ステップ507では、前記ステップ506にて更新した品質影響度モデルを用いて、製造ばらつきを考慮した設計パラメータの適正化処理を行う。具体的な適正化処理の計算方法は、後ほど図37を用いて説明する。
ステップ508では、前記ステップ507にて実施した設計パラメータの適正化処理時における製品機能の推定値を計算し、その推定値が目標を満たすかどうかの判定を行う。製品機能の推定値には前記ステップ507にて算出された設計パラメータ仕様における製品機能の平均値とそのばらつき(例えば、標準偏差値)が含まれる。全ての製品機能が目標を満足する場合、設計パラメータの適正値および製品機能の推定値を表示画面に出力して処理を終了する。一方、目標を満足しない製品機能が存在する場合、全ての製品機能が目標を満足するまで繰り返しステップ509およびステップ510を実施する。
ステップ509では、目標を満足しない製品機能に関連するインターフェイスパラメータを選択し、選択されたインターフェイスパラメータの調整を行うための追加実験計画を作成する。具体的なインターフェイスパラメータの調整方法は、後ほど図41を用いて説明する。
ステップ510では、前記ステップ509にて作成された追加実験計画に基づいて実験を行い、前記ステップ506と同様の方法にて、製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルのうち該当する品質影響度係数を算出する。
なお、機械部品の組立製品の例として、ハードディスクドライブなどが考えられるが、このハードディスクドライブのヘッダスライダ部の断面構造を模式的に示した図は前述した図22、ハードディスクドライブにおける設計パラメータ情報の一部を示す図は前述した図3、ハードディスクドライブの事例に対応した製品機能の一部を示す図は前述した図4、半導体LSIのトランジスタの断面構造を模式的に示した図は前述した図23と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、プロセス製品の例として、半導体LSIのトランジスタの設計パラメータの一部を示す図は前述した図5、半導体LSIのトランジスタの製品機能の一部を示す図は前述した図6と同様であるので、ここでの説明は省略する。
図26は、設計パラメータと製品機能間の品質影響度を表す品質影響度モデルの初期値を示す一例である。この例では、設計パラメータはX1〜X10の10項目、製品機能はY1〜Y5の5項目を対象としている。そして、設計パラメータX1、X2、X3は部品Aに関するパラメータ、設計パラメータX4、X5、X6は部品Bに関するパラメータ、残りの設計パラメータX7、X8、X9、X10は部品Cに関するパラメータである。この例では、製品機能Y1と設計パラメータX1、X2、X3との間に品質面での影響(これを品質影響度と呼ぶ)が見られる。言い換えると、設計パラメータX1またはX2またはX3の値を変えた場合(または意図せず変わってしまった場合)、製品機能Y1の値が変化する。この他に、製品機能Y2は設計パラメータX1、X3、X4との間に、製品機能Y3は設計パラメータX3、X5、X6、X8との間に、製品機能Y4は設計パラメータX5、X6、X7との間に、製品機能Y5は設計パラメータX5、X8、X9、X10との間に品質影響度が見られる。品質影響度の表現方法として、品質影響度が存在する製品機能と設計パラメータの組み合わせを線でつなぐネットワーク図と、製品機能と設計パラメータ間のマトリクスのうち品質影響度が存在する組み合わせに関して「1」を代入し、それ以外には「0」を代入するマトリクス図がある。どちらの表現方法においても品質影響度の関係は等価であるため、どちらの表現方法でもよい。
図27は、図25のステップ502における製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルの作成方法の一例である、過去の類似製品の実験結果履歴情報を用いた統計処理による品質影響度モデルの作成方法を示すものである。同図では、図26を例に設計パラメータとしてX1〜X10の10項目、製品機能としてY1〜Y5の5項目を対象とする。過去の実験結果履歴情報のうち、10項目の設計パラメータの測定値と、5項目の製品機能の測定値の全ての組み合わせに関して相関解析を行い、それぞれの組み合わせにおける相関係数を計算する。相関係数は2つのデータ間の相関の強さを示す指標であり、−1〜1までの値をとる。そして相関係数の絶対値が1に近いほど相関が高く、0に近くなるほど相関が低くなる。同図では、10項目の設計パラメータと5項目の製品機能の組み合わせで計50個の相関係数の絶対値を示している。
例えば、設計パラメータX5と製品機能Y5の相関は散布図に示すように相関が高く、相関係数の絶対値の値も0.85と高い。ここで、相関係数の絶対値が0.7以上となるものを製品機能と設計パラメータとの間に品質上の影響度があるものとした場合、製品機能Y1と設計パラメータX1、X2、X3、製品機能Y2と設計パラメータX1、X3、X4との間に、製品機能Y3と設計パラメータX3、X5、X6、X8との間に、製品機能Y4と設計パラメータX5、X6、X7との間に、製品機能Y5と設計パラメータX5、X8、X9、X10の組み合わせが品質影響度モデルにて影響度ありと表現される。ここでは、互いに影響がある組み合わせに「1」を、影響がない組み合わせに「0」を代入することにより、製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルを作成することができる。この場合の品質影響度モデルは、図26に示すものと同様になる。なお、設計パラメータによっては、測定値がなく設定値しか存在しないものもある。その場合は、設計パラメータの測定値に代わり設定値を用いて統計処理を実施する。
なお、図25のステップ502における製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルの作成方法の一例である、製品不良履歴情報を用いた品質影響度モデルの作成方法を示す図は前述した図11と同様であるので、ここでの説明は省略する。
図28は、図26を例に設計パラメータ間の相互影響度を構造化した設計パラメータ構造化モデルを示す一例である。この例では、設計パラメータはX1〜X10の10項目を対象としている。同図では例えば設計パラメータX1−X2間に相互影響度が見られる。言い換えると、設計パラメータX1を変更する際、設計パラメータX2も同時に考慮して変更しなければならない。他にも設計パラメータX1−X3間、X1−X4間、X2−X3間、X3−X4間、X3−X5間、X3−X6間、X3−X8間、X5−X6間、X5−X7間、X5−X8間、X5−X9間、X5−X10間、X6−X7間、X6−X8間、X8−X9間、X8−X10間、X9−X10間に相互影響度が見られる。この相互影響度の表現方法として、相互影響度が存在する設計パラメータ間を結線して設計パラメータ間の相互影響度を表現するネットワーク図と、設計パラメータ間のマトリクスのうち、互いに相互影響度を有する組み合わせに「1」を代入し、それ以外に「0」を代入して表現するマトリクス図がある。どちらの表現方法においても設計パラメータ間の相互影響度は等価であるため、どちらの表現方法でもよい。
同図に示す品質影響度モデルを用いた設計パラメータ構造化モデルの初期値の作成方法を、図26を用いて説明する。まず、図26に示す品質影響度モデルにおいて、設計パラメータが影響を及ぼす製品機能を抽出する。例えば、設計パラメータX1の場合、製品機能Y1が抽出される。次に、抽出された製品機能に影響を及ぼす他の設計パラメータを抽出する。この場合、最初の設計パラメータと抽出された設計パラメータがある製品機能を介して互いに関係を持つため、設計パラメータ構造化モデルの該当組み合わせに相互関係が発生する。先ほどの製品機能Y1の場合は、設計パラメータX1の他に、設計パラメータX2とX3が影響を与えるパラメータであるため、設計パラメータX1−X2間およびX1−X3間に相互関係が発生する。また、設計パラメータX1は、製品機能Y1の他に製品機能Y2とも影響を与えるため、製品機能Y2も抽出される。そして、製品機能Y2から設計パラメータX3、X4が抽出されるため、新たに設計パラメータX1−X4間の相互影響度が導出される。この他、設計パラメータX2の場合、製品機能Y1が抽出され、製品機能Y1から設計パラメータX1とX3が抽出される。設計パラメータX3の場合、まず製品機能Y1とY2とY3が抽出され、それぞれ設計パラメータX1、X2、X4、X5、X6、X8が抽出される。全てに設計パラメータに関して同様の処理を行うことにより、設計パラメータ間の相互影響度を全て表現した設計パラメータ構造化モデルは、図28に示す設計パラメータ構造化モデルとなる。
図29は、図25のステップ504における設計パラメータ構造化モデルの構造化処理によるインターフェイスパラメータおよび設計パラメータグループの作成方法を示すフローチャートである。
まず、ステップ601において、開発対象とする製品の設計パラメータ構造化モデルより、他の設計パラメータとの相互影響度がない設計パラメータを抽出し、それぞれ独立の設計パラメータグループとする。例えば、図28に示す設計パラメータX1〜X10における設計パラメータ構造化モデルでは、いずれの設計パラメータも他の設計パラメータとの相互影響度を有するため、独立な設計パラメータは抽出されない。
ステップ602では、前記ステップ601にて全ての設計パラメータの抽出ができたかどうかの判定を行う。全ての設計パラメータが抽出できた場合、処理を終了する。まだ、設計パラメータが残っている場合ステップ603を実施する。
ステップ603では、前記ステップ601にて抽出されず残った設計パラメータの中から最小の次数(他の設計パラメータとの相互影響度の個数)となる設計パラメータを抽出する。この際、同一の最小次数となる設計パラメータが複数存在する場合、該当設計パラメータと関連する設計パラメータの個数が少ない順に抽出する。そして、抽出された設計パラメータと相互影響度を有する設計パラメータの中から最小次数となる設計パラメータを選択し、それらの設計パラメータを合成することにより設計パラメータグループを作成する。同一設計パラメータグループ内の設計パラメータの個数が所定のしきい数以上となった場合、以降合成処理の対象外とする。また、合成による作成された設計パラメータグループは一つの設計パラメータとして取り扱う。
ステップ604では、前記ステップ603における合成処理後の残りの設計パラメータのうち、合成可能な設計パラメータが存在するかどうかを判定する。まだ、合成可能な設計パラメータが存在する場合、前記ステップ603を再度、実施する。一方、合成可能な設計パラメータが存在しない場合、どの設計パラメータグループにも属していない残りの設計パラメータを一つの設計パラメータグループをして、ステップ605を実施する。
ステップ605では、前記ステップ604までに作成された設計パラメータグループに関して、それぞれの設計パラメータグループ間に相互影響度がなく独立であるかどうかの判定を行う。全ての設計パラメータグループが独立である場合、処理を終了する。一方、設計パラメータグループ間に相互影響度が存在する場合、設計パラメータグループ間の相互影響度がなくなるまで、ステップ606を繰り返し実施する。
ステップ606では、相互影響度が存在する設計パラメータグループ内において最大次数となる設計パラメータを対象の設計グループのインターフェイスパラメータに設定する。以降、対象の設計パラメータグループはインターフェイスパラメータに設定された設計パラメータに関連する相互影響度を除外して処理を行う。
図30は、図28に示す設計パラメータX1〜X10の設計パラメータ構造化モデルにおける設計パラメータグループの作成方法の一例を示すものである。この例では同一の設計パラメータグループ内の設計パラメータの個数のしきい数は5個としている。この例では、計7回の設計パラメータの合成処理が行われる。同図(a)は設計パラメータX1〜X10間の相互影響度および、各設計パラメータ毎の次数(他の設計パラメータとの相互影響度の個数)の初期値の状態を示すものである。
まず、1回目の合成では、最小次数の設計パラメータとしてX2が抽出される。そして、設計パラメータX2と関連する設計パラメータX1、X3に関して次数の比較を行い、次数が小さいX1が選択される。これにより、設計パラメータX1とX2が合成される(同図(b))。設計パラメータX1とX2を合成する際、各設計パラメータX1、X2の他の設計パラメータに対する相互影響度の情報も合成される。2回目の合成では、同一の次数の設計パラメータX1−X2とX4を比べ、X4の方が設計パラメータの個数が少ないため、最小次数の設計パラメータとしてX4が選択される。X4に関連する設計パラメータX1−X2とX3のうち、最小次数となるX1−X2が選択され、X4にX1とX2が合成される(同図(c))。3回目の合成では、最小次数の設計パラメータX1−X2−X4に対して、設計パラメータX3が合成される(同図(d))。4回目の合成では最小次数となる設計パラメータX7に対して、設計パラメータX6が合成される(同図(e))。5回目の合成では最小次数となる設計パラメータX6−X7に対して、設計パラメータX5が合成される(同図(f))。6回目の合成では最小次数となる設計パラメータX9に対して、設計パラメータX10が合成される(同図(g))。7回目の合成では最小次数となる設計パラメータX9−X10に対して、設計パラメータX8が合成される(同図(h))。これ以降は、合成処理を行うことにより同一の設計パラメータグループ内の設計パラメータのしきい数(5個)を超えることになるため、合成処理が終了となる。最終的に設計パラメータグループは3種類作成され、それぞれ、設計パラメータグループ1={X1、X2、X3、X4}、設計パラメータグループ2={X5、X6、X7}、設計パラメータグループ3={X8、X9、X10}となる。
図31は、図28に示す設計パラメータX1〜X10の設計パラメータ構造化モデルにおけるインターフェイスパラメータの設定方法の一例を示すものである。同図は、図29のステップ603、604に従い、3つの設計パラメータグループが作成されている。そして、設計パラメータグループ1={X1、X2、X3、X4}、設計パラメータグループ2={X5、X6、X7}、設計パラメータグループ3={X8、X9、X10}から構成される。初期状態では、設計パラメータグループ間に相互影響度が存在するため、互いに独立ではない。
そこで、まず、最大次数をもつ設計パラメータX3をインターフェイスパラメータに設定し、設計パラメータX3に関連する他の設計パラメータとの相互影響度を無効とする。これにより、設計パラメータグループ1が他の設計パラメータグループに対して独立となる。次に、設計パラメータグループ2、3の中から最大次数となる設計パラメータX5をインターフェイスパラメータに設定し、設計パラメータX5に関連する他の設計パラメータとの相互影響度を無効とする。これではまだ、設計パラメータグループ2、3間の相互影響度が解消されないため、次に次数が大きい設計パラメータX8をインターフェイスパラメータに設定し、設計パラメータX8に関連する他の設計パラメータとの相互影響度を無効とする。これにより、設計パラメータグループ2、3は互いに独立となる。最終的に3つの設計パラメータグループの中から、設計パラメータX3、X5、X8をインターフェイスパラメータとすることにより、それぞれの設計パラメータグループは互いに独立となる。この結果、設計パラメータグループ1={X1、X2、X4}、設計パラメータグループ2={X6、X7}、設計パラメータグループ3={X9、X10}となる。
図32は、図25のステップ505、506における実験の作成方法および、実験結果の解析方法を示すフローチャートである。
まず、ステップ701において、実験対象とする設計パラメータおよび設計パラメータ毎の実験水準が設定される。図31に示す構造化処理後の設計パラメータ構造化モデルの例では、インターフェイスパラメータの実験として、設計パラメータX3、X5、X8が設定される。設計パラメータグループ毎の実験では、それぞれ設計パラメータグループ毎に設計パラメータグループ1={X1、X2、X4}、設計パラメータグループ2={X6、X7}、設計パラメータグループ3={X9、X10}の設計パラメータが設定される。
次に、ステップ702では、実験対象となる設計パラメータの数やその水準数、また設計パラメータ間の交互作用の数からを満足する実験計画表を選択し、各設計パラメータを実験計画表の各列に対象となる設計パラメータを割り付ける。実験計画表は各列にパラメータの水準レベルの組み合わせを表示した表で、例えば、タグチメソッドで使用される直行表や、応答局面法で用いられる複合計画表などがある。設計パラメータの数やその水準や、交互作用の数に応じて適正規模の計画表を選択する。設計パラメータの数やその水準数、また設計パラメータ間の交互作用の数に応じた実験計画表の種類に関しては、前記非特許文献1を参照にされたい。タグチメソッドで用いられる直行表では、交互作用を持つ設計パラメータを割り付ける列が予め決まっているため、その指示に従って割り付ける。例えば、図31に示す設計パラメータ構造化モデルの設計パラメータグループ1は、設計パラメータX1、X2、X4が実験対象となる。各設計パラメータの水準数=2、それぞれのパラメータ間に交互作用を考慮した場合、例えば図33に示すL8の直交表に設計パラメータを割り付ける。この直交表では、列1にA、列2にB、列4にCというパラメータを割り付けた場合、列3にAとBの交互作用が、列5にAとCの交互作用が、列6にBとCの交互作用がそれぞれ直交に出現するため、この実験結果の解析により、A、B、Cおよび、A×B、A×C、B×Cの交互作用の影響を同時に評価することができる。同図では、交互作用の関係に基づいて設計パラメータX1を列1に、設計パラメータX2を列2に、設計パラメータX4を列4に割り付けている。
ステップ703では、前記ステップ702で作成した実験計画に基づいて実験を実施する。
次に、ステップ704において、前記ステップ703にて実施した実験結果の分散分析を行い、製品機能毎に統計的に有意となる設計パラメータを抽出する。図34は図33に示す実験計画の内、製品機能1の分散分析による有意なパラメータの抽出例を示すものである。同図のp値は、分析対象とするパラメータの水準の効果がない場合、対象パラメータの水準の変化による分散(水準の変化によるばらつきを自由度(水準数―1)で割った値)を誤差による分散(誤差ばらつきの変動を自由度(直交表で割りつかなかった列の数)で割った値)で割った値(F値)がF分布に従うという仮説において、この仮説が発生する確率を統計的検定により求めた値である。つまり、p値が大きいほど、対象パラメータの水準の効果が小さく、p値が小さいほど対象パラメータの水準の効果が大きい。ここで、p値のしきい値を0.05以下とすると、この例では設計パラメータX1、X2、X4だけでなく、X1とX2の交互作用も有意なパラメータとなる。詳細の分散分析の計算方法に関しては、前記特許文献5を参考にされたい。
ステップ705では、前記ステップ704の分散分析により抽出した製品機能毎の統計的に有意となる設計パラメータを用いた数値計算による製品機能−設計パラメータ間の品質影響度係数の計算を行う。この際、製品機能の平均値およびばらつきのそれぞれに関して、品質影響度係数を算出する。ここで、製品機能を表すベクトルをY、設計パラメータを表すベクトルをXとする。そして、製品機能ベクトルYと設計パラメータベクトルXの関係を(6)、(7)式で定義する。それぞれ(6)式は製品機能の平均値、(7)式は製品機能のばらつきを表す式である。
Y_ave=A_ave・X+B_ave ・・・(6)
Y_var=A_var・X+B_var ・・・(7)
ここで、Aは設計パラメータベクトルに対応した列数、製品機能数に対応した行数からなる品質影響度行列である。また、Bは製品機能ベクトルに対応したオフセット補正ベクトルとなる。なお、設計パラメータベクトルXには、各設計パラメータ項目だけでなく、複数の設計パラメータ項目間の交互作用成分や2次成分が加わる。そのため、設計パラメータベクトルにおける項目数は、対象とする設計パラメータ数以上となる。また、製品機能ベクトルには各製品機能の平均値、またはばらつきが含まれる。そして、例えば実験結果の最小二乗法計算により、各実験の設計パラメータベクトルXにおける製品機能ベクトルYの測定値と(6)および(7)式にて計算される製品機能ベクトルの推定値の誤差が最小となるように品質影響度行列Aおよびオフセット補正ベクトルBの各要素の係数が決定される。
図35は、図31に示す設計パラメータ構造化モデルにおける設計パラメータと製品機能の1次成分と交互作用に関する品質影響度の関係を示すものである。設計パラメータの項目には、設計パラメータ間の交互作用の項も加えている。製品機能の行と、設計パラメータの項目の列に「○」がある場合、品質影響度を有する可能性があるため、実験にてその有無を確認しなければならない。本発明は図25のステップ505およびステップ506の2つのステップにおける実験にて、同図の関係の有無を効率的に調べている。
図36は、図31に示す設計パラメータ構造化モデルから作成した実験計画にて算出可能な設計パラメータ−製品機能間の品質影響度モデルの状態を示すものである。設計パラメータの項目には、設計パラメータ間の交互作用の項も加えている。表内のAはインターフェイス間の実験から算出可能な設計パラメータと製品機能の係数を示すものである。Bは設計パラメータグループ1の実験から算出可能な設計パラメータと製品機能の係数を、Cは設計パラメータグループ2の実験から算出可能な設計パラメータと製品機能の係数を、Dは設計パラメータグループ3の実験から算出可能な設計パラメータと製品機能の係数を示すものである。Eは図31に示す設計パラメータ構造化モデルから作成した実験計画では算出できない設計パラメータと製品機能の係数を示すものである。インターフェイスパラメータが属する設計パラメータグループ内の各設計パラメータとインターフェイスパラメータの交互作用の影響が算出できていない。
図37は、図25のステップ507における製造ばらつきを考慮した設計パラメータの適正化処理の計算方法を示すフローチャートである。
まず、ステップ801において、図25のステップ506にて算出した設計パラメータグループ毎の製品機能−設計パラメータ間の品質影響度係数を用いて、設計パラメータから製品機能の平均値およびばらつきを推定する推定式をそれぞれ(8)式、(9)式にて作成する。なお、この際、図25のステップ506にて有意と判定されたパラメータに関する品質影響度係数のみを使用する。
F=(A_ave・X)+B_ave ・・・(8)
G2=(A_ave・σ)2+A_var・X+B_var ・・・(9)
ここで、Fは設計パラメータベクトルXを入力変数、製品機能の平均値を出力変数とする関数、Gは設計パラメータベクトルXを入力変数、製品機能のばらつきを出力変数とする関数、σは設計パラメータベクトルXの各項目の標準偏差から構成されるベクトルである。
ステップ802では、製品機能の推定値が目標から外れる領域を指標とする目的関数を作成する。例えば、目的関数は、前記ステップ801で作成した製品機能の平均値およびばらつきの推定式を用いて、上限、下限の目標値を持つ場合は(10)式、上限のみの目標値を持つ場合は(11)式、下限のみの目標値を持つ場合は(12)式とする。これは工程能力指数Cpkと等価な式である。また、複数の製品機能が存在する場合は、製品機能毎の工程能力指数を重み付けした総和を目的関数とする。
H=min{(USL−F)/3G,(F−LSL)/3G}・・・(10)
H=(USL−F)/3G ・・・(11)
H=(F−LSL)/3G ・・・(12)
ここで、USLは対象とする製品機能の上限目標値、LSLは対象とする製品機能の下限目標値である。
ステップ803では、各設計パラメータ項目の変更可能範囲(水準の範囲)および、製品機能の平均値およびばらつきの推定式を適正化計算の制約条件として設定する。
ステップ804では、前記ステップ802にて作成した目的関数および、前記ステップ803にて作成した制約条件式を用いた数値計算処理を行い、制約条件を満たしかつ目的関数の値を最小とする設計パラメータの近似解を計算する。例えば、数値計算の手法として、線形計画法や二次計画法やNewton−Raphson法などがある。いずれも入力変数および出力変数間の関数および、出力変数の目的関数および、入力変数と出力変数の制約条件を設定し、所定の計算アルゴリズムを実行することにより、目的関数を最小(または最大)かつ制約条件を満たす入力変数の値が計算される。
図38は、製品機能の推定値の分布状態の例を示す図である。同図(a)は製品機能1の分布の推定結果を示している。製品機能1の平均値はほぼ目標狙い値と一致している。また、ばらつきも目標上限、下限の範囲内に収まっている。一方、同図(b)に示す製品機能2は、平均値が目標狙い値からずれており、またばらつき自体も大きいため、目標上限を超える領域が存在する。図37に示す製造ばらつきを考慮した設計パラメータの適正化処理では、製品機能1の分布に影響をあたえず、製品機能2の目標から外れる領域を最小とするように、関連する設計パラメータの適正化を行う。
図39は、図37に示す製造ばらつきを考慮した設計パラメータの適正化計算を行った際の設計パラメータ仕様の計算結果の表示例を示す。この例では図26に示す設計パラメータX1〜X10の10項目を対象としている。各設計パラメータ項目の初期値、適正値、製造ばらつき実績、設計パラメータグループ、インターフェイス設定の有無が表示される。例えば、設計パラメータX1は初期値が「150」であるのに対して、適正値は「130」となっている。また、設計パラメータX3はインターフェイスパラメータに設定されているため、初期値と設定値が同一の値となっている。
図40は、図37に示す製造ばらつきを考慮した設計パラメータの適正化計算を行った際の製品機能の推定値の計算結果の表示例を示す。この例では図26に示す製品機能Y1〜Y5の5項目を対象としている。各製品機能の推定値(平均、ばらつき)や目標値(狙い、上限、下限)や判定結果が表示される。製品機能によっては狙いとなる目標値を持たず、上限または下限のみの目標となるものもある。例えば、製品機能Y3は目標が900以上、1100以下であるのに対し、推定平均値が1050、推定ばらつき(3σ)が80であるため、平均+3σの値は1130となり、目標を満足しない。
図41は、図25のステップ509におけるインターフェイスパラメータの調整方法を示すフローチャートである。
ステップ901において、図25のステップ508にて目標を満足しないと判定された製品機能に関して、調整対象の製品機能に関連するインターフェイスパラメータを抽出する。例えば、図26に示す設計パラメータ−製品機能間の品質影響度モデルにおいて、製品機能Y3のみ目標を満足しないものとする。この場合、製品機能Y3に関するインターフェイスパラメータとして、図31に示す設計パラメータ構造化モデルより設計パラメータX3、X5、X8が抽出される。
次に、ステップ902では、前記ステップ901にて抽出したインターフェイスとなる設計パラメータに関して、図25のステップ505および506にて作成した製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルにおいて未算出となっている係数を抽出する。先の例では、図36が製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルの算出状態を示すものである。図42は、抽出されたインターフェイスとなる設計パラメータX3、X5、X8に関して、図36から製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルにおいて未算出となっている係数を抽出した結果を示すものである。なお、「○」印は係数が算出されている組合せ、「×」印が係数が未算出な組合せである。設計パラメータ間の交互作用の項も対象としている。例えば、設計パラメータX3は、X3を変更することにより製品機能Y3だけでなく、製品機能Y1、Y2の値が変化する。また、X3はX1、X2、X4、X6と組合せて変化させることで交互作用の影響により、製品機能Y1、Y2、Y3に影響を与える可能性がある。例えば、設計パラメータX1とX3を組合せて変化させることにより、製品機能Y1とY2が変化する可能性がある。
次に、ステップ903では、前記ステップ902にて作成したインターフェイスパラメータ毎の未算出の製品機能−設計パラメータ間の品質影響度モデルの係数の情報により、調整対象の製品機能以外の製品機能に関する未算出の係数の数が最小となるインターフェイスパラメータを抽出する。先の例では、図42より、設計パラメータX3、X5、X8の調整対象の製品機能Y3以外の製品機能に関する未算出な係数の数はそれぞれ「4」「4」「2」となる。この場合、最小の未算出係数の数を持つ設計パラメータX8が選択される。
ステップ904では、前記ステップ903にて選択したインターフェイスパラメータにて調整対象となる製品機能が目標を満たす可能性があるかどうかを判定する。先の例では、選択された設計パラメータX8と製品機能Y3の間の品質影響度係数および、設計パラメータX8の変更可能な水準データから、X8を水準範囲内で変更した際、設計パラメータX8と製品機能Y3の間の品質影響度係数を用いて製品機能Y3が目標を満たす範囲まで変更可能かどうかを判定する。選択したインターフェイスパラメータで調整対象の製品機能が目標を満足しないと判定された場合、前記ステップ903にて選択したインターフェイスパラメータを無効とし、無効以外のインターフェイスパラメータに関して、再度ステップ903を行う。選択したインターフェイスパラメータで調整対象の製品機能が目標を満足すると判定された場合、ステップ905を行う。
ステップ905において、前記ステップ903で選択したインターフェイスパラメータを解除し、新たに互いに独立となる設計パラメータグループを作成する。先の例を用いて、設計パラメータX8のインターフェイス条件を解除した結果を図43に示す。この場合、設計パラメータX8のインターフェフェイス条件を解除することにより、設計パラメータグループ2と設計パラメータグループ3の間に相互影響度が発生する。そのため、設計パラメータグループ2と設計パラメータグループ3を合成して、新たに設計パラメータX5をインターフェイスパラメータとする設計パラメータグループ4を作成する。
ステップ906では、前記ステップ905で新たに作成した設計パラメータグループの中でインターフェイス設定を解除した設計パラメータおよび、その設計パラメータとの相互影響度を持つ設計パラメータに関して、図30に示す実験の作成方法を用いて、実験計画表への割付を行い、追加の実験計画を作成する。先の例では、インターフェイス設定を解除した設計パラメータX8と、X8が属する設計パラメータグループ4の設計パラメータX6、X7、X8、X9、X10のうち、X8との相互影響度を持つ設計パラメータX6、X9、X10が評価対象となる。
以上説明したように、本実施の形態の製品設計パラメータ決定支援システム、およびこのシステムにおける設計パラメータの決定方法によれば、製品機能および設計パラメータ間の品質影響度および、設計パラメータ間の相互影響度の構造化によりインターフェイスパラメータおよび互いに独立な設計パラメータグループを作成し、その設計パラメータグループに基づいた実験計画の作成機能を有することにより、要求される製品機能を短期間で効率的に満たし、かつ最初から設計パラメータ間の相互影響度に注意した繰り返しの少ない実験を実施することできる。
また、製品機能と設計パラメータ間の品質影響度の関係から製造ばらつきを考慮した製品機能の推定機能を有することにより、量産段階で発生する製造ばらつきの影響を考慮した設計パラメータの決定が可能となり、量産段階での製品不具合が発生せず、製品開発期間を短縮することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
1,1a…データ入力部、11,11a…製品機能入力部、12,12a…設計パラメータ入力部、13,13a…品質影響度モデル編集部、2,2a…結果表示部、21,21a…実験計画表示部、22,22a…設計パラメータ仕様表示部、23,23a…製品機能推定値表示部、3,3a…データ演算部、4,4a…品質影響度構造化処理部、41,41a…品質影響度モデル作成部、42,42a…設計パラメータ構造化処理部、5…実験計画作成部、5a…実験計画作成・解析部、6,6a…設計パラメータ適正化処理部、61…品質影響度モデル更新処理部、62…設計パラメータ適正化計算部、7,7a…データ格納部、71,71a…製造ばらつき履歴情報、72,72a…実験結果履歴情報、73,73a…製品不良履歴情報、74,74a…品質影響度モデル情報、8…インターフェイスパラメータ調整処理部。