JP4527889B2 - 汚泥及び有機性廃水の処理方法並びに有機性廃水の処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水処理場、屎尿処理場などの下水処理プロセス、または食品工場、化学工場などから排出される有機性廃水を処理する方法において、低コスト、高収率でリン成分を分離、回収できる汚泥の処理方法及び当該処理方法を採用した有機性廃水の処理方法と有機性廃水処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
如上の有機性廃水を処理するための方法として、標準活性汚泥法が用いられてきたが、リンを多く含有する有機性廃水では、リン成分があまり除去されず、処理水中にリン成分(すなわち、正リン酸(オルトリン酸)、ポリリン酸、リン酸塩、リン酸エステル、リンタンパク質、グリセロリン酸、リン脂質等)が多量に残存することがある。かかるリン成分を多量に含む処理水を湖沼などに排出すると水の富栄養化に伴う植物プランクトンの著しい増殖を招くために好ましくない。
【0003】
従って、廃水中に含まれるリンの除去プロセスとしては、▲1▼凝集剤添加法、▲2▼晶析脱リン法、▲3▼嫌気−好気活性汚泥法などが行なわれている(下水道施設計画・設計指針と解説(後編)1994年版、(社)日本下水道協会発行、第131〜136頁参照)。
【0004】
▲1▼の凝集剤添加法は、アルミニウムイオン、鉄イオンなどの三価金属陽イオンが正リン酸イオンと反応して難水溶性のリン酸塩を生成することを利用し、硫酸アルミニウム等の凝集剤を廃水に混和して、難溶性のリン酸塩から形成されるフロック(生物由来のフロックも含む)が沈殿分離されるものである。この方法では5〜20%程度の余剰汚泥の増加が認められており、リン成分を多量に含む余剰汚泥の大量廃棄は、環境保全が叫ばれている昨今、好ましいとはいい難い。
【0005】
▲2▼の晶析による方法とは、正リン酸イオンとカルシウムイオンとの反応による難溶性のヒドロキシアパタイトの生成に基づくものであり、余剰汚泥の増加を伴わない点では好ましいのであるが、アパタイト晶析のために必要な条件を厳密にコントロールする必要があるので(例えば、前処理による炭酸イオン等晶析妨害物質の除去、pH調整、温度調整等)、適用が限定され、またコスト増大を招く原因を含んでいるので、やはり廃水処理における手段として好ましい方法とはいえない。
【0006】
▲3▼の嫌気−好気活性汚泥法は、嫌気状態でエネルギー獲得のためにポリリン酸を正リン酸として放出した微生物が、好気状態で正リン酸を過剰摂取・代謝後ポリリン酸として蓄積することを利用した方法であり、廃水を嫌気槽、好気槽及び沈殿池における反復処理に付して、余剰汚泥にリン成分を内包させ、処理水中のリン成分を除去するものである。また、比較的大規模な処理設備では、ランニングコストの面で他の方法に比べて、この嫌気−好気活性汚泥法が有利なことが知られている。この方法で、処理水から有効にリン成分を除去できるが、余剰汚泥はリン成分に富み、さらにその他種々の有機成分や重金属成分などが含まれているので、その廃棄に問題を生じる。そして、リン成分は例えば肥料やリン化合物製造等への有効利用の可能性が考えれられるにも関わらず、かような雑多な成分と混合した汚泥状態にあっては無駄に破棄するほかない。
【0007】
そこで、生物学的処理により発生した汚泥からリンを回収し、有効利用する目的で、汚泥を嫌気的に処理することにより汚泥中のリン成分を溶出させ、その溶出したリン成分を凝集剤を添加して回収する方法(特開平9−267099号公報参照)が開発されており、さらに最近になって、オゾン処理法(特開平9−94596号公報参照)、アルカリ添加法(特開平8−39096号公報参照)、機械的粉砕による方法(特開平11−57791号公報参照)などにより汚泥中のリンを回収する方法が提案されている。
【0008】
しかしながら、オゾン処理法では薬品や廃棄物に起因した問題は少ないが、設備費及びランニングコストが非常に高いので、経済的な面から実用に供しうるとはいえない。そしてアルカリ添加法によればアルカリ廃液が発生し、これの処理のためにさらなる経費を必要とすることになる。また、汚泥を嫌気的処理工程に曝すことにより微生物体内からリン成分を放出させる工程を含む方法によれば、比較的低コストでリンを回収、再利用することが可能になったものの、長期の処理時間を要するうえ、リンの回収率が50%程度と低く、またリン酸として回収されるために凝集剤の添加量が多くなるものであった。そして機械的粉砕による方法にあっては金属羽根を高速回転したり、あるいはビーズを高速回転させるなど、特殊な装置が必要であってそのメインテナンスにもかなりのコストや時間を要することになる。
【0009】
ところで、近年、湖沼、閉鎖性海域などのCODの環境基準の達成率は、それぞれ40%、65%と低くなっており、この原因はアオコやプランクトンなどの内部発生物質にあると考えられている。このため、富栄養化の原因となるチッ素、リンの総量排出規制について環境庁は平成11年2月に中央環境審議会へ諮問し、平成12年2月には中央環境審議会によりこれらの規制に係る答申が行なわれており、有機性廃水に含まれるリン成分を効率よく再利用可能に回収し、環境に対しても悪影響を及ぼすことなく低コストにて実施し得る処理方法が希求され続けているところである。
【0010】
さらにリン成分の需要に着目してみると、現在我が国では年間90万トン以上(100億円以上に相当)のリン鉱石が諸外国より輸入されている。しかしながら、その原産地では永年の消費によって高品位のリン鉱石の採取が徐々に困難になってきており、今後安定的に日本に供給されうるか否かは明らかでない。また、アジア、欧米諸国等から年間約3000トン(4億円以上に相当)のポリリン酸塩が日本に輸入されている現状にあり、この輸入量は年々増大傾向にある。これは、ポリリン酸が、防錆剤の生産や、発ガン性を有するアスベストの代替物として期待されている鉱物繊維の製造の原料となりうる他、トリポリリン酸は合成洗剤、洗浄剤、金属イオン封鎖剤、食品添加剤の原料として、また、製紙、染色、写真技術などに用いる試薬原料などにおいて利用されるためであると考えられる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、このような国内での高い需要に応えるべく、リン鉱石の主要成分であるリン酸塩(リン酸カルシウム)を極めて高純度に含有する状態や、ポリリン酸塩として高純度な状態で、有機性廃水由来のリン成分を回収すれば、廃棄することによって環境汚染の原因となっていた如上のリン成分が極めて有効に活用できることとなり、種々の産業界に対して多大な貢献がもたらされるはずである。
【0012】
そこで本発明者らは、種々の有機性廃水の処理において、汚泥を所定条件下に加熱することにより汚泥から水相へリン成分をポリリン酸として放出させることで、簡便且つ効率的に、ポリリン酸を分離回収する方法を提案した(特開2000−301187号公報)。しかしながら、かかる方法によっても、ポリリン酸やリン酸が細胞から放出される際に、汚泥に含まれる固形物の表層に存在する金属イオンとこれらリン成分が結合してしまい、上清への抽出効率が劣るという問題があった。特にポリリン酸は、キレート剤の一種でもあり、金属イオンと錯体を形成して固形物に留まりやすい。
【0013】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、汚泥から効率よくリン成分を分離回収でき、固体として沈澱させる際の薬剤必要量を低減することができるという効果が達成され、リン成分の再利用に利する処理方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本願第一発明は、汚泥を処理する方法において、(1)被処理汚泥中の固形物の表層に付着する金属イオンを解離させ、且つ当該金属イオンの固形物への再付着を防止するためにキレート剤の添加によって行なわれる金属除去工程、(2)被処理汚泥中のリン成分を液相に放出させる、リン放出工程、(3)リン放出処理後の処理液を固液分離する、固液分離工程、及び(4)放出されたリン成分を含む液相に凝集剤を添加することによってリン成分を沈殿させる、リン凝集工程を含む汚泥の処理方法である。この方法によれば、汚泥中の固形物(主に微生物細胞)の表層に付着(または吸着もしくは結合)している金属イオンを解離させ、そしてかかる金属イオンが固形物に再付着するのを防止することにより固形物表層から金属を除去し、次のリン放出工程においてリン成分を放出されやすくすることができる。次いで、被処理汚泥に含まれるリン成分を液相に放出させた後、固液分離を行なってリン成分を含有する処理水を得、この処理水からリンを凝集させて回収するのである。このように本願第一発明は、汚泥中のリン成分を回収する効率を高める効果が奏されるものである。従って、リン成分の有効利用をもたらすのみならず、従来余剰汚泥として破棄しても処理水として排出しても、土壌や海洋、河川、湖沼等の富栄養化をもたらすこととなっていたリン成分による環境汚染を、より確実に防止できることにもなる。
【0015】
上記本願第一発明において、金属除去工程は、キレート剤の添加によって行なわれる。金属イオンとの親和性、結合性が強いので、固形物からの金属イオンの解離と再付着防止を確実に行なうことができ、リン成分の回収効率や、工程の簡素化の点で好ましい。また、前記リン放出工程を、汚泥を60〜90℃で10〜120分間加熱処理することによって行なう(本願第二発明)と、簡便にリン成分を主としてポリリン酸として液相に放出させることが可能となり、リン成分の凝集等による回収が容易で、試薬の必要量も低減される。
【0016】
さらに、本願第三発明は、有機性廃水を処理する方法において、(1)有機性廃水が好気的処理に付される曝気処理工程、(2)曝気処理後の廃水が一次処理水と一次汚泥とに分離される固液分離工程、(3)分離された一次汚泥中の固形物の表層に付着する金属イオンを解離させ、且つ当該金属イオンの固形物再付着を防止するためにキレート剤の添加によって行なわれる金属除去工程、(4)金属除去後の汚泥よりリン成分を液相に放出させるリン放出工程、及び(5)放出されたリン成分を含有する二次処理水と、リン成分が除去された二次汚泥とに分離する固液分離工程を含む有機性廃水の処理方法である。この方法において、曝気処理工程(1)にて廃水中の微生物内にリン成分が蓄積され、この処理水は次の固液分離工程(2)によって一次処理水と、リン成分が濃縮された一次汚泥とに分離される。次いで金属除去工程(3)において、この一次汚泥中の固形物表層に存在する金属イオンを解離させると共に再付着を防止することにより、上記のとおり、リン放出工程(4)におけるリン成分の放出効率が高められる。リン放出工程(4)を経た処理液は次に、固液分離(5)することでリン成分を多含する処理水(二次処理水)とリン成分が除去された二次汚泥とに分離される。
【0017】
そして本願第四発明は、前記固液分離工程(5)の後、生じた二次処理水に凝集剤を添加することによってリン成分を沈殿させる、リン凝集工程(6)をさらに含む。この方法によってリン成分を沈殿させることによって、非常に濃縮された固形成分としてリン成分が得られるので、肥料やリン化合物製造のために利用しやすく、運搬取扱上も有利である。
【0018】
上記本願第三または第四発明において、金属除去工程は、キレート剤の添加によって行なわれる。固形物からの金属イオンの解離と再付着防止を確実に行なうことができ、リン成分の回収効率や、工程の簡素化の点で好ましい。また、前記リン放出工程を、汚泥を60〜90℃で10〜120分間加熱処理することによって行なう(本願第五発明)と、リン成分を主にポリリン酸として液相に放出させることが可能となりリン回収のための凝集剤等の使用量低減、回収工程の簡素化を図ることができる。この場合、リン放出工程(4)に投入される汚泥と、リン放出工程(4)後の処理液との熱交換が行なわれることが好ましい(本願第六発明)。このように熱交換を実施すれば、熱の有効利用ができて経済性に優れるのみならず、リン放出後に得られた処理液が冷却された後に固液分離工程(5)に付されることになるため、この際の固液分離手段の選択肢が広がるという利点も生じる。
【0019】
さらに、本願第七発明の処理方法は、前記曝気処理工程(1)の前に、嫌気的処理工程(7)をさらに含む。この嫌気処理によって、微生物へのリン成分の過剰摂取に先駆けて嫌気的汚泥分解と液相へのリン成分の放出が行われるので、曝気処理におけるリン成分の過剰摂取がさらに効率よく行われることになる。
【0020】
本願第八発明は、如上の有機性廃水の処理方法を実施するための有機性廃水の処理装置であって、曝気処理手段、固液分離手段、金属除去手段、リン放出手段及び固液分離手段と、各手段を連結して液体及び/または汚泥を輸送するための経路を含む処理装置を提供する。この処理装置を用いると、リン成分を実質的に含有しない処理水及び比較的減容化された活性汚泥にまで、有機性廃水を低コストで変換すると共に、リン成分も効率的に回収できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の汚泥の処理方法では、先ず前記の通り、汚泥中の固形物(主に微生物細胞)の表層に付着している金属イオンを解離させると共にその再付着を防止することにより、当該固形物表層から金属イオンを除去する。すると、次工程でのリン成分の遊離・放出を促進することができる。
【0022】
ここで「解離」及び「再付着の防止」は、金属イオンとの相互作用性または親和性を有するため金属イオンと優先的に結合する結果、リン成分等から金属イオンを離脱させてしまうことができる、キレート剤などの解離剤を添加し、撹拌、混合することによって成し遂げればよい。なお、固形物に付着していない、可溶化状態にある金属イオンについても、これを解離剤に結合させて捕捉しておくと、次の工程で放出されるリン成分が金属イオンと会合して沈殿を形成することが防止でき、よってリン成分の回収率を高める効果が得られるものと推測される。
【0023】
本発明に係るキレート剤とは、金属イオンに対し多座配位子として配位結合する化合物または金属イオンに対し多座配位子として配位結合するイオンを含む塩であれば特に限定されないが、例えば、以下の化合物すなわち、ポリアミノカルボン酸類例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTAまたはEGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,3−プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA−OH);オキシカルボン酸類、例えば、クエン酸、グリコール酸、グリセリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸、サリチル酸;ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジカルボキシメチルグルタミン酸四酢酸塩(GLDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物、ならびにこれらの化合物とアルカリ金属の水酸化物とから生成する、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水塩などの塩;エチレンジアミンまたはトリエタノールアミン、及びエチレンジアミンまたはトリエタノールアミンと酸(例えば、硫酸、塩酸、酢酸等)とから生成する塩;尿素、2,3−ジメルカプトプロパノール、ユニチオール、アミノエチルメルカプタン、チオ尿素、チオカルバジド、オルトフェナントロリンまたはアセチルアセトンのうちの少なくとも1種の化合物を採用することができる。このうち、クエン酸、EDTAが、入手が容易であること、安全性や環境に及ぼしうる影響に鑑みて好適に使用される。
【0024】
本発明に係るキレート剤の添加濃度は、特に限定されないが、例えばEDTAを用いる場合、被処理汚泥中に含有される金属イオンの総モル濃度に対し、キレート剤の総モル濃度が0.5〜50倍、好ましくは0.8〜20倍、より好ましくは、1〜10倍にするとよい。0.5倍未満の場合は金属イオンをリン成分より解離させる効果が小さくなり、また50倍を超える場合はキレート剤添加コストが上昇するうえ、処理後の汚泥や処理水に含まれる有機化合物量が高くなってしまうことになる。
【0025】
キレート剤は、室温下に被処理汚泥に添加、混合するという簡単な処理を行なうだけで、ごく短時間に、金属イオンを解離させて捕捉することができ、従って、リン成分の回収率を高めることができるのである。
【0026】
次に、金属イオンから解離したリン成分を液相へ放出するために、被処理汚泥を、例えば、嫌気的処理(特開平9−267099号公報参照)、オゾン処理法特開平9−94596号公報参照)、アルカリ添加(特開平8−39096号公報参照)、機械的粉砕(特開平11−57791号公報参照)、好気的処理(特開2000−592号公報参照)、加熱処理(特開2000−301187号公報参照)、その他、超音波、高電圧パルス等の物理的手段を用いてもよいが、特に、60〜90℃で10〜120分間、好ましくは70〜80℃で15〜120分間、さらに好ましくは70〜80℃で20〜60分間加熱処理を行なうとよい。このような条件で加熱すると、後述の実施例1に明らかなように、リン成分を主にポリリン酸として放出させることが可能となる。すると、オルトリン酸やその他のリン酸誘導体等としてリン成分が放出された場合に比較して、液相から沈澱としてリン成分を回収するために必要な金属塩などの凝集剤の必要量が格段に低減する。これは、リンの原子数に対する、凝集剤が結合可能なフリーのリン酸残基数が、ポリリン酸では低値であることによるものである。また、ポリリン酸の金属塩の方が、リン酸の金属塩よりも大きな顆粒状の沈澱塊を形成するので、その後の回収処理において、例えば沈澱分離や遠心分離での所要時間を短縮し、容量を減容化し、遠心分離の回転数を抑えることなどが可能となるので好都合である。上記処理温度が60℃より低いとポリリン酸としてのリン成分の放出が困難であり、90℃を越えるとポリリン酸の放出後速やかにリン酸へと分解されてしまうので回収のための凝集剤必要量が高まる上、加熱のコストも高騰するので好ましくない。
【0027】
次に、沈殿、遠心、濾過(膜分離を含む)等の通常の手段で固液分離を行なって、ポリリン酸を含む処理水を得る。ここでは、繁用されている沈澱槽、遠心分離器、膜分離器、脱水機、浮上分離装置を広く利用できる。なお、リン放出工程にて加熱処理が実施され、且つ固液分離手段に膜分離の採用が企図される場合などには、高温による膜のシュリンクを回避し、膜の寿命を延長させるべく、加熱後の処理液の液温を水冷、通風による空冷等によって、あるいは、好ましくは被処理汚泥とリン放出後の処理液との熱交換によって70℃以下、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下に調整するとよい。また、このように液温を調整すると、前工程にて放出させたポリリン酸が、さらに引き続いて高温下に曝される結果リン酸等にまで分解されてしまうことを防止できるという利点もある。
【0028】
次いで、放出されたリン成分を含む液相に凝集剤を添加し、リン凝集を行なう。添加は、20〜70℃、好ましくは20〜50℃、さらに好ましくは30〜40℃、最も好ましくは30℃にて行なうと、凝集後に特段に遠心分離等の操作を行なわなくとも、自然沈降によって分離が容易な顆粒形状として、液相からポリリン酸を効率よく回収することができる。従って、回収作業の簡素化も実現できる。この凝集工程の際の温度が上記範囲を下回ると、凝集塊が形成されないため、遠心分離等によってリン成分を回収する必要が生じることがあり、またたとえそのような手段を講じても回収率が劣る場合もある。また。上記範囲を上回る温度で凝集工程を行なうには別途加熱を行なう必要が生じることになり実用的でない。
【0029】
凝集剤としては、例えばポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等を用いることができ、このなかでも塩化カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウム等のカルシウム塩が、最終生成物の使用性、価格、環境に対する影響に鑑みて好ましい。
【0030】
こうしてリン放出後の処理液からリン成分を凝集させ沈殿として回収するが、リン放出工程の方法、条件によっては、凝集剤必要量を従来法の半分以下程度にまで抑えることができるので、コストの低減だけでなく、処理システムより生じる金属含有化合物の産生量を抑制でき、環境保全の観点からも好ましいと云える。沈殿後、得られた固形成分を定法によって回収し、必要に応じて精製処理を施し、肥料やリン化合物製造のための原料に供することができる。
【0031】
以下に、本発明の有機性廃水の処理方法における実施の形態を、図1及び図2のフローに基づき説明する。
【0032】
すなわち、図1に示す方法では、リンを含有する有機性廃水である原廃水Aを先ず嫌気処理槽7に付し、嫌気的条件下にて微生物体内に有機物を摂取せしめると共に、微生物体内にポリリン酸の顆粒として貯留されているリン成分を放出させる。この際リン成分は概ね、加水分解されて正リン酸として液相へと放出されることになる。この際の処理温度は特に限定されないが、好ましくは常温下に行なえばよい。ここで、嫌気処理槽7に攪拌手段を備えて、微生物と被処理水中の有機物を効率的に接触させてリン放出を促進させるようにすることが好ましい。
【0033】
次いで、この処理液をエアポンプなどの曝気手段12を備えた曝気処理槽1に付し、ここで好ましくは常温下に好気的な微生物による有機物の分解及び微生物によるリン成分の摂取(体内貯留)を行なう。嫌気処理で放出されたリン成分及び有機性廃水中のリン成分が、この工程において微生物体内に摂取され、ポリリン酸として濃縮されるのである。
【0034】
曝気処理槽1及び嫌気処理槽7のそれぞれの構造ならびに以下の種々の反応槽等を結ぶ経路は特に限定されるものではなく、本質的に、従来より利用されているものを用いることができる。本発明の装置のため、曝気処理槽1にはエアポンプ、ブロアなどの曝気手段12から送られる空気を曝気処理槽1内に行き渡らせることができる散気手段13を、そして嫌気処理槽7においては好ましくは攪拌手段などを具備するものであればよい。またこれらの工程における各々の条件等も、従来知られている処理方法に従って行なうとよい(特開平9−10791号明細書等を参照されたい)。
【0035】
次に曝気処理後の処理液を、第一の固液分離手段2に付し、リン成分が濃縮された一次汚泥xと、一次処理水aとに分ける。この固液分離手段2としては、従来より知られている、沈殿、膜分離を含む濾過等の手段が選択される。これらのうち、設備及び維持費が安価ですみ、且つ操作にも殆ど手間を必要としないことから沈殿が好ましい。
【0036】
一次汚泥xの一部は、適宜嫌気処理槽7に返送して、以後の工程に付される汚泥量を調節すると共に嫌気及び好気処理での有機物の分解及び微生物によるリン成分の摂取を十分に行なうようにするとよい。
【0037】
次に、一次汚泥xを、金属除去手段3において、上記汚泥処理法にて詳説したと同様の金属除去処理、すなわち、クエン酸、EDTAなどのキレート剤を含む解離剤の添加、撹拌、混合による処理に付し、微生物細胞などの固形物表層に付着、吸着または結合している金属イオンを、その表層から除去する。キレート剤の添加濃度は前記と同様であり、これを室温下に、被処理汚泥に添加、混合するだけでポリリン酸の回収率を高めることができる。
【0038】
なお、金属除去手段3を格段に設けることなく、固液分離手段2の種類に応じて、例えば沈澱槽では固液分離手段2において、あるいは、固液分離手段2からリン放出手段4までの経路内で、金属除去処理を行なうことも可能である。
【0039】
その後、金属除去処理後の汚泥は、汚泥に含まれる微生物からリン成分を液相に放出させるために、次なるリン放出手段4に導入される。ここで汚泥を、固液分離手段、例えば、遠心分離器、膜分離器、浮上分離器等を用いてさらに濃縮してからリン放出手段4に導入してもよく、この場合、リン放出手段4の規模を縮小することができるので、例えば加熱によりリン放出を行う場合等での維持コスト低減が可能となる。ここで、上記と同様のリン放出工程が実施されるが、好ましくは、ヒーター、スチーム発生装置などの加熱手段10を用いて、60〜90℃で10〜120分間、好ましくは70〜80℃で15〜120分間、さらに好ましくは70〜80℃で20〜60分間の加熱処理を行うとよい。このようにして、ポリリン酸としてリン成分が放出されると、液相から沈澱としてリン成分を回収するためのリン凝集槽6での処理のために必要な金属塩などの凝集剤Bの使用量が、上述したように嫌気処理、オゾン処理、アルカリ処理などにてリン酸として放出された場合に比較して格段に低減する。ポリリン酸の金属塩は大きな顆粒状の沈澱塊を形成するので、その後の回収処理が容易になるので好都合である。
【0040】
リン放出後の処理液は、次いで第二の固液分離手段5によって比較的小容量のリン成分高含有処理水(二次処理水)bと二次汚泥zとに分離される。分離には、繁用されている沈澱槽のほか、遠心分離器、膜分離器、浮上分離器、ベルトプレス、フィルタープレス等の脱水機等を広く利用できる。
【0041】
こうして得られる二次汚泥zはリン成分をほとんど含まず、埋立処分や建設資材等への有効利用も容易にできるので好ましい。
【0042】
なお、固液分離手段5から得られた二次処理水bを、熱交換器11において金属除去処理後の汚泥と熱交換して汚泥を予備加熱することにより、熱を有効利用してランニングコストを削減することができる。また、図2に示すように、リン放出手段4における処理の終了後直ちにその処理液を、熱交換器11にて金属除去処理後の汚泥と熱交換することによって、リン放出手段4で放出させたポリリン酸の分解を防止することもできる。この際処理液の温度は、前記と同様70℃以下、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下に調整するとよい。また、熱交換を実施すると、加熱後の処理液が冷却されてから次の固液分離手段5に供されることになるため、固液分離手段5の耐熱性があまり要求されないことになる。なお、このように熱交換を行なわずに、水冷、通風による空冷等により、処理液の温度調整を場合に応じて実施してもよい。
【0043】
次いで二次処理水bは、リン凝集工程に付される。すなわち、二次処理水bをリン凝集槽6に導入し、20〜70℃、好ましくは20〜50℃、さらに好ましくは30〜40℃、最も好ましくは30℃にて凝集剤Bを攪拌下に添加することによってリン成分を凝集させ、液相から沈殿させる。
【0044】
凝集剤Bとしては、汚泥の処理方法において記載したと同様の、好ましくはカルシウム塩が用いられる。二次処理水bに含まれるリン成分は主としてポリリン酸として得られているので、少量の凝集剤Bを用いても回収の容易な顆粒状の固形成分に凝集させることが可能となる。上記温度条件でリン凝集工程を実施すれば、ポリリン酸を効率よく、また凝集後に特段に遠心分離等の操作を行なわなくとも、自然沈降によって分離が容易な顆粒形状として回収することができる。
【0045】
凝集剤Bの添加量は、二次処理水bに含まれる全リン成分及びポリリン酸の量から遊離リン酸残基数を割り出して、これに足るモル数の量だけ用いることが最も好ましい。なお、リン凝集槽6での凝集反応に際して固形成分としてのリン成分を回収するために、二次処理水bのpHは、リン酸を回収する場合と異なり、5〜10、好ましくは6〜9とするとよい。かような温和な条件下で回収することが可能となるので、塩基性物質をあえて添加する必要もなく、リン酸として回収する場合よりもコストを低く抑えることができ、また二次的な塩基性廃水の発生も阻止することができる。
【0046】
次いで第三の固液分離手段8によって、リン成分を実質的に含まない三次処理水cと固形リン成分yを得る。固液分離手段8としては、例えば、沈殿、濾過(膜分離を含む)または遠心等の手段を選択することができるが、これらのうち、特別に高価な装置や手間を必要としないことから、沈殿または濾過が好ましい。リン成分は通常、自然沈降による回収が容易な形態で得られるので、沈殿槽における沈殿分離を好適に採用することが可能である。
【0047】
さらに、固形リン成分yは、汚泥から分離されており、原廃水に含まれていたその他の成分もほとんど含んでおらず、そして減容化されているので、肥料や、リン化合物製造のための原料として利用しやすいものとなっている。しかしながら、さらなるリン回収手段9により、実質的に乾燥固体としてリン成分pを回収して、流通、運搬が最も容易な形態とすることが好ましい。このリン回収手段9には、例えば、凍結乾燥、脱水・乾燥などの方法が挙げられる。図2に示すように、リン回収手段9を省略することもできる。
【0048】
以上の工程によって最終的に回収されるリン成分pは、汚泥から分離濃縮されているだけでなくかなり純化されているので、肥料や、合成洗剤、洗浄剤、金属イオン封鎖剤、食品添加剤の原料として、また、製紙、染色、写真技術などに用いる試薬原料、リン化合物、薬剤製造のための原料などに利用しやすい。
【0049】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はもとより、これら実施例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0050】
[実施例1]
実験室内回分式嫌気好気活性汚泥プロセスにて、1L容量の三角フラスコ中に、下水処理場由来の活性汚泥500mlを入れ、次いで以下の表1に示す組成を有する、リン成分を含有した有機性廃水500mlを投入した。
【0051】
【表1】
【0052】
この原廃水1Lに対して、嫌気処理を20℃、pH7にて滞留時間2時間にわたって行ない、続いて20℃、曝気量2vvm(エアレーションポンプを使用)、pH7にて滞留時間5時間にわたり好気処理を実施した。この処理の間、液体をスターラーで攪拌し続け、液量は1Lに維持するようにした。
【0053】
好気処理終了後に、汚泥を1mlずつエッペンドルフチューブ25本に分取し、それぞれ5本ずつを50℃、60℃、70℃、80℃及び90℃に設定した恒温槽に静置した。20分毎に1チューブずつサンプリングし、各試料を8,000×gにて5分間遠心分離してから、上清に含まれる全リン量、ポリリン酸量及びリン酸量を以下の方法に従って定量した。
全リン量:過硫酸アンモニウム存在下に熱水分解(121℃、30分間)した後、下記方法によりリン酸として定量
ポリリン酸量:1N塩酸の存在下に加熱分解(100℃、7分間)した後、下記方法によりリン酸として定量
リン酸量:JIS K 0102によるモリブデン青(アスコルビン酸還元)吸光光度法に基づくリン酸イオン量測定
次いで、これらの上清中のリン成分が凝集沈殿によって分離できるか否かを調べるため、塩化カルシウム(CaCl2)を最終濃度が50mMとなるように添加し、8,000×gにて5分間遠心分離することによって得られる沈殿物の全リン量を上記全リン定量法により測定した。
【0054】
こうして得られた結果を図3に示す。図3において、(a)は50℃、(b)は60℃、(c)は70℃、(d)は80℃、(e)は90℃での加熱処理による各定量値の経時変化を示し、(f)には、上記加熱処理前の活性汚泥中のリン組成(▲1▼:リン酸、▲2▼:ポリリン酸及び▲3▼:その他のリン酸化合物量)を示す。
【0055】
図3より、活性汚泥試料の加熱処理を50℃で行なった場合、汚泥から放出されるリン成分の量はすべて少なく、しかもポリリン酸よりもリン酸として放出される量が多いことが判る(図3(a))。この温度では、汚泥中のポリリン酸顆粒は殆ど遊離して来ないようであった。処理温度70℃では(図3(c))、加熱開始後1時間で活性汚泥中に存在していたポリリン酸量(図3(f)、▲2▼)の約90%が遊離、放出されていた。そしてこの時点では、ポリリン酸の約20%に該当する量が、リン酸にまで分解されている。加熱開始2時間後に塩化カルシウムを添加して遠心分離を行なうと、遊離していた全リン量のほとんどが、沈殿物として回収できた。処理温度を90℃とすると(図3(e))、ポリリン酸の放出は急速に進行し、この条件下では約10分で終了してしまう。この時点でリン酸に分解していた量は約10%であった。ポリリン酸の放出が終了すると、このポリリン酸は急速にリン酸へと分解され、加熱開始2時間後には遊離したポリリン酸の約60%がリン酸になっていた。この時点で塩化カルシウムによる凝集沈殿を行なっても、回収できるリン成分の量は放出された量の約20%程度に過ぎなかった。従って、本発明の方法を90℃の温度で実施する場合には、放出されたポリリン酸を速やかに凝集沈殿に付すのが好ましいことが示される。
【0056】
[実施例2]
1L容量の三角フラスコ中に、下水処理場由来の活性汚泥500mlを入れ、次いで上記表1に示す組成の有機性廃水に鉄成分としてFeCl3を、Feが10mg/Lの濃度となるように添加した廃水500mlを投入した。
【0057】
この原廃水1Lに対して、実施例1と同様の嫌気処理、次いで好気処理に付した。
【0058】
好気処理後に、汚泥を1mlずつエッペンドルフチューブにとり、15,000rpmにて5分間、遠心分離した。沈殿物を回収し、5mM EDTAを1ml添加し、ボルテックスミキサーで混合した。
【0059】
次いで、リン成分放出のために混液を90℃にて1時間加熱した後、15,000rpmにて5分間、遠心分離した。
【0060】
得られた上清及び沈殿物のリン成分すなわち、全リン量、ポリリン酸量及びリン酸量を、実施例1に記載の方法に従って定量した。その結果を、本発明の方法による処理前の汚泥の各リン成分のリンとしての含量と共に以下の表2に示し、上清への回収の様子を図4のグラフに示す。
【0061】
【表2】
【0062】
[比較例1]
EDTAを用いた処理を実施しなかったことを除いては、実施例2におけると同様の処理を行ない、上清及び沈殿物の各リン成分の回収量を測定した。
【0063】
[比較例2]
実施例2と同様の処理法において、汚泥を直ちに熱処理によるリン放出工程に付し、その後EDTAを用いた処理を実施して、得られる上清及び沈殿物の各リン成分の回収量を測定した。その結果を、処理前の汚泥の各リン成分の含量と共に以下の表3に示し、上清への回収の様子を図5のグラフに示す。
【0064】
【表3】
【0065】
以上の結果から、リン放出工程の前にEDTA添加の処理を実施することによって、上清へのリン成分放出量が向上し従って、リン成分の回収率が格段に高くなることが明らかになった。
【0066】
[実施例3]
図2に示すのと同様の装置を用いて実下水の処理実験を行った。すなわち、8.7m3容量の嫌気処理槽7、21.3m3容量の曝気処理槽1において、BOD:70〜100mg/L、リン成分含量:4〜5mg/Lの実下水を、100m3/日にて好気的固形物滞留時間(A−SRT)4.5日での嫌気/曝気処理に付し、その後第1の固液分離手段2として9m3容量の沈澱池を用いて固液分離した。嫌気処理槽7及び曝気処理槽1内の懸濁固形物濃度はそれぞれ約2000mg/Lであり、また分離後の一次汚泥xはおよそ6000mg/lの懸濁固形物濃度を有していた。この一次汚泥xの一部は、嫌気処理槽7および曝気処理槽1の懸濁固形物濃度を保持するために、嫌気処理槽7に返送した。
【0067】
次に、1m3容量のリン放出槽4で、70℃にて滞留時間1時間の熱処理に付してリン成分を主にポリリン酸として放出させた。次にリン放出後の処理液を、1m3の冷却槽(図示せず)において50℃未満となるまで滞留時間1時間で冷却し、次いで、第二固液分離手段5として1.2m3の浮上濃縮槽を用いて固液分離を実施した。ここで生じた二次汚泥zは余剰汚泥として回収し、二次処理水bは3.6m3容量のリン凝集槽6に投入した。リン凝集槽6において、特段にpHを調整することなく凝集剤として塩化カルシウムを、リン凝集槽6へ流入する二次処理水b中のリン成分と等モルとなるように添加してリン成分を凝集させ、次に固液分離槽8で沈殿物として主にポリリン酸を含む固形リン成分pを回収した。固液分離槽8から生じる三次処理水cも嫌気処理槽7に返送して、循環系にて100日間処理を継続した。
【0068】
最終的に沈殿池2から生じる一次処理水aのBODは10mg/L以下であり、またリン成分含量は0.4mg/L以下であった。従って、本発明にかかる装置を用いて処理することによって、実下水からリン成分を沈殿物として回収して、排出基準に適合する処理水と余剰汚泥に変換できることが示された。
【0069】
[実施例4]
キレート剤添加にともなうリン放出の効果を確認すべく、実施例3に記載の一次汚泥x 50mlに1Mクエン酸ナトリウムを0.25ml添加した後、70℃にて1時間の熱処理に付してリン成分を主にポリリン酸として放出させた。次に処理液を15,000rpmで5分間遠心分離した。
【0070】
こうして得られた上清及び沈殿物のリン成分すなわち、全リン量、ポリリン酸量及びリン酸量を、実施例1に記載の方法に従って定量した。その結果を、本発明の方法による処理前の汚泥の各リン成分のリンとしての含量と共に以下の表4に示し、上清への回収の様子を図6のグラフに示す。
【0071】
[比較例3]
実施例3と同様の処理法において、汚泥にクエン酸ナトリウムを添加することなく、熱処理によるリン放出工程に付し、以下同様にして得られる上清及び沈殿物の各リン成分の回収量を測定した。その結果を表4及び図6のグラフに示す。
【0072】
【表4】
【0073】
以上の結果から、リン放出工程の前にクエン酸ナトリウム添加の処理を実施することによって、実下水由来の汚泥処理においても上清へのリン成分放出量が向上し、リン成分の回収率が格段に高められることが明らかになった。
【0074】
【発明の効果】
本発明によって、有機性廃水中の微生物細胞などの固形物表層に付着、吸着または結合している金属イオンを、その表層から除去し、捕捉することにより、リン成分を、短時間に優れた効率で分離回収でき、従ってリンの再利用を容易にすることができるという効果が奏される。この際、リン成分をポリリン酸として濃縮すると、必要とされる凝集剤の量を、従来知られている方法よりも極めて低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機性廃水の処理方法の一実施態様の概略構成図である。
【図2】本発明の有機性廃水の処理方法のさらなる一実施態様の概略構成図である。
【図3】活性汚泥を50〜90℃の範囲の温度で処理した場合の、種々のリン成分の放出量の経時的変化を示すグラフである。
【図4】金属イオン含有汚泥について、本発明の方法で処理した場合の上清へのリン成分の回収を示すグラフである。
【図5】金属イオン含有汚泥について、本発明の方法に対する比較例の方法で処理した場合の上清へのリン成分の回収を示すグラフである。
【図6】実下水由来汚泥について、本発明の方法で処理した場合の上清へのリン成分の回収を示すグラフである。
【符号の説明】
1…曝気処理槽
2,5,8…固液分離手段
3…金属除去手段
4…リン放出手段
6…リン凝集槽
7…嫌気処理槽
9…リン回収手段
10…加熱手段
11…熱交換器
12…曝気手段
13…散気手段
A…原廃水
B…凝集剤
a…一次処理水
b…二次処理水
c…三次処理水
x…一次汚泥
y…固形リン成分
z…二次汚泥
p…リン成分
Claims (8)
- 汚泥を処理する方法において、以下の工程すなわち、(1)被処理汚泥中の固形物の表層に付着する金属イオンを解離させ、且つ該金属イオンの固形物への再付着を防止するためにキレート剤の添加によって行なわれる金属除去工程、(2)被処理汚泥中のリン成分を液相に放出させる、リン放出工程、(3)リン放出処理後の処理液を固液分離する、固液分離工程、及び(4)放出されたリン成分を含む液相に凝集剤を添加することによってリン成分を沈殿させる、リン凝集工程、を含む汚泥の処理方法。
- 前記リン放出工程が、汚泥を60〜90℃で10〜120分間加熱処理することによって行われる請求項1に記載の汚泥の処理方法。
- 有機性廃水を処理する方法において、以下の工程すなわち、(1)有機性廃水が好気的処理に付される曝気処理工程、(2)曝気処理後の廃水が一次処理水と一次汚泥とに分離される固液分離工程、(3)分離された一次汚泥中の固形物の表層に付着する金属イオンを解離させ、且つ該金属イオンの固形物への再付着を防止するためにキレート剤の添加によって行なわれる金属除去工程、(4)金属除去後の汚泥よりリン成分を液相に放出させるリン放出工程、及び(5)放出されたリン成分を含有する二次処理水と、リン成分が除去された二次汚泥とに分離する固液分離工程、を含む有機性廃水の処理方法。
- 前記固液分離工程(5)の後、生じた二次処理水に凝集剤を添加することによってリン成分を沈殿させる、リン凝集工程(6)をさらに含む請求項3に記載の有機性廃水の処理方法。
- 前記リン放出工程が、汚泥を60〜90℃で10〜120分間加熱処理することによって行われる請求項3または4に記載の有機性廃水の処理方法。
- リン放出工程(4)に投入される汚泥と、リン放出工程(4)後の処理液との熱交換が行なわれる請求項5記載の有機性廃水の処理方法。
- 前記曝気処理工程(1)の前に、嫌気処理工程(7)をさらに含む請求項3乃至6のいずれかに記載の有機性廃水の処理方法。
- 請求項3乃至7のいずれか1項に記載の処理方法を実施するための有機性廃水の処理装置であって、曝気処理手段、固液分離手段、金属除去手段、リン放出手段及び固液分離手段と、各手段を連結して液体及び/または汚泥を輸送するための経路を含む処理装置。
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