JP4526202B2 - サンプリング回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サンプリング回路に関心し、特に線形性歪みを有する増幅器と共振器とを備えた複数の発振回路セルを、それぞれの前記共振器を構成するリアクタンスの一部を介して相互に接続してなる発振回路を用い、その発振回路から出力された位相の異なる複数のクロックの中から、サイクルごとに一つのクロックを選択してサンプリングに用いるサンプリング回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話、携帯情報機器や情報端末、それらの基地局、地域無線通信システム、または光通信システムなど、マイクロ波からミリ波帯の周波数帯域を用いる通信装置、あるいは複数の離間した帯域または広い連続した帯域を用いる携帯電話や携帯情報機器や情報端末などの通信装置において使用されるサンプリング回路では、位相の異なる複数のクロックが必要とされる。位相の異なる複数のクロックを生成する技術として、従来、複数のVCOを用意し、それらを切り替えて使う技術や、TCXOとプリスケーラとPLLとからなるアナログシンセサイザーを用いる技術や、リングオシレータと加算器とレジスタとマルチプレクサとDFFとからなる発振回路を用いる技術(JSSC June’2000 pp835−846)がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、位相の異なる複数のクロックを生成するにあたり、上述した複数のVCOを切り替えて使う技術では、使用する帯域幅が広くなるにつれて多数のVCOが必要となり、それらの間の調整が困難となるという不都合がある。また、上述したアナログシンセサイザーを用いる技術では、外部TCXOが必要であるということと、プリスケーラの分周比が大きくなるほど位相雑音が大きくなるということと、周波数の引き込みに時間がかかるという問題点がある。また、上述したリングオシレータを用いる技術では、リングオシレータと加算器等の論理回路からの位相雑音が小さくならないという問題点がある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、一定の位相差を有し、かつ周波数の安定した位相雑音の少ない多相クロックを得ることが可能な発振回路を用いたサンプリング回路を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明にかかるサンプリング回路は、発振周波数foのN相のクロックを出力する発振手段(多相VCO)と、その発振手段(多相VCO)の出力を各クロックサイクルごとにM相シフトして取り出すことによりf=fo(N+M)/Nのクロックを得るバレルシフタと、そのクロックを用いて入力信号を標本化するサンプリング手段(サンプラ)とを有する。進角値保持レジスタに保持された進角値Mと、レジスタに一時保持された加算器の出力値とを加算器で加算し、その値をデコーダでデコードしてバレルシフタのシフト量を決定する。バレルシフタは、加算器、レジスタおよびデコーダに、サンプリング・クロックとは異なる位相のクロックを選択して供給する。
【0006】
この発明によれば、発振手段(多相VCO)は発振周波数foのN相のクロックを出力し、その出力を選択手段(バレルシフタ)が各サイクルごとにM相シフトして取り出すことによりf=fo(N+M)/Nのクロックを得、サンプリング手段(サンプラ)はそのクロックを用いて入力信号を標本化する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明にかかるサンプリング回路の構成の一例を示す概略図である。このサンプリング回路は、発振手段である多相VCO2010、選択手段であるバレルシフタ2020、選択回路2030、サンプリング手段であるサンプラ2040、および制御回路2050を備えている。
【0008】
このサンプリング回路では、多相VCO2010は発振周波数foのN相のクロックを出力し、その出力をバレルシフタ2020が各サイクルごとにM相シフトして取り出すことによりf=fo(N+M)/Nのクロックを得、そのクロックを用いてサンプラ2040において入力信号の標本化をおこなう。
【0009】
図2は、多相VCO2010を構成する発振回路の実施例1を示す概略図である。この発振回路は、n個、特に限定しないが、図示例では8個(n=8)の発振回路セル(図2において点線で囲むセル)101,102,103,104,105,106,107,108を有する。各発振回路セル101,102,103,104,105,106,107,108は同一構成の発振回路であり、特に限定しないが、たとえばコルピッツ発振回路で構成される。なお、図2では、1個の発振回路セル101について具体的な回路図を示し、残りの7個の発振回路セルについては図示省略している(他の図においても同じ)。
【0010】
発振回路セル101は、インダクタ1、分割容量としてのキャパシタ2、結合容量としてのキャパシタ3、抵抗4、MOSトランジスタ5および電流源6により構成されている。インダクタ1、キャパシタ2およびキャパシタ3は共振器を構成している。抵抗4、MOSトランジスタ5および電流源6は帰還増幅器を構成している。
【0011】
インダクタ1の一端にはバイアス電圧Vb1が印加される。インダクタ1の他端はMOSトランジスタ5のゲートに接続されている。MOSトランジスタ5のソースおよびドレインは、それぞれ電流源6および抵抗4の一端に接続されている。抵抗4の他端には電源電圧が印加される。キャパシタ2は、MOSトランジスタ5のソースとゲートとの間に接続されている。
【0012】
キャパシタ3は、MOSトランジスタ5のソースと、隣り合う別の発振回路セル(図2では、発振回路セル108)内の図示省略したMOSトランジスタのソースとの間に接続される。MOSトランジスタ5のドレイン出力がクロック信号φ1として外部へ出力される。なお、図2では、発振回路セル101と発振回路セル108は隣り合うように示されてはいないが、実際の回路では、隣り合う構成となる。
【0013】
その他の発振回路セル102,103,104,105,106,107,108の構成は上述した発振回路セル101と同じであるので、説明を省略する。また、発振回路セル102と発振回路セル101、発振回路セル103と発振回路セル102、発振回路セル104と発振回路セル103、発振回路セル105と発振回路セル104、発振回路セル106と発振回路セル105、発振回路セル107と発振回路セル106、および発振回路セル108と発振回路セル107は、それぞれ上述した発振回路セル101と発振回路セル108との接続関係と同様、各発振回路セルのキャパシタ3を介して相互に接続される。
【0014】
ここで、結合容量であるキャパシタ3は共振容量として機能している。すべてのキャパシタ3の容量が同じである場合、その容量をCri、キャパシタ2の容量をCfi、インダクタ1のインダクタンスをLiとすると、各発振回路セル101,102,103,104,105,106,107,108は、つぎの式で表される周波数ωoscで発振する。なお、iは添え字であり、発振回路セル101、発振回路セル102、・・・にはそれぞれi=1、i=2、・・・が対応する。
【0015】
ωosc=1/√(Li(Cfi・Cri)/(Cfi+Cri))
【0016】
また、キャパシタ3は、隣り合う発振回路セル間の発振クロックの位相差を2π/n、ここではn=8であるから2π/8、すなわち45°とする機能を有する。これは、各発振回路セル101,102,103,104,105,106,107,108における振幅制御機構により、ある隣り合う発振回路セル間の発振位相差が2π/n、すなわちここでは45°よりも少し大きい場合には、他の隣り合う発振回路セル間の位相差が小さくなり、そこで減衰する。その結果、各発振回路セル101,102,103,104,105,106,107,108で等位相差の発振が安定化するからである。
【0017】
したがって、各発振回路セル101,102,103,104,105,106,107,108からは、たとえば45°ずつ位相がずれた8個のクロックφ1,φ2,φ3,φ4,φ5,φ6,φ7およびφ8が出力されることになる。図3〜図5に、図2に示す発振回路の発振信号のシミュレーション結果を示す。図4は、図3に示す波形の一部であり、発振開始初期の波形を拡大したものである。また、図5は、図3に示す波形のうち、発振が安定した状態での波形を拡大して示したものである。図4からわかるように発振開始初期においては8個のクロックは略同相で発振しているが、発振状態が安定すると、図5に示すように8個のクロックが等位相差(45°の位相差)で発振していることがわかる。
【0018】
図6は、多相VCO2010を構成する発振回路の実施例2を示す概略図である。この発振回路は、n個、特に限定しないが、図示例では8個(n=8)の発振回路セル(図6において点線で囲むセル)201,202,203,204,205,206,207,208を有し、隣り合う発振回路セル間をダイオード7で相互に接続したものである。ここでは、ダイオード7のpn接合による接合容量を結合容量として利用している。
【0019】
なお、各発振回路セル201,202,203,204,205,206,207,208は同一構成の発振回路であり、図2に示す多相VCO2010の実施例1と略同様の構成であるが、その実施例1のキャパシタ3がないことと、キャパシタ2がMOSトランジスタ5のソースとドレインとの間に接続されている点が異なる。その他の構成や機能については実施例1の発振回路と同じである。
【0020】
各発振回路セル201,202,203,204,205,206,207,208からは、たとえば45°ずつ位相がずれた8個のクロックφ1,φ2,φ3,φ4,φ5,φ6,φ7およびφ8が出力される。実施例1の発振回路では発振安定時に発振回路セル101から発振回路セル108へ向かう向きで位相が遅くなるのか、その逆向きで位相が遅くなるのかは発振開始時の種々の状態によってその都度決まるが、この実施例2ではダイオード7の向きによって位相が遅くなる向きが決まる。図6に示す例では、発振回路セル201から発振回路セル208へ向かう向きで位相が遅くなる。
【0021】
図7は、多相VCO2010を構成する発振回路の実施例3を示す概略図である。この発振回路は、n個、特に限定しないが、図示例では8個(n=8)の発振回路セル(図7において点線で囲むセル)301,302,303,304,305,306,307,308を有し、隣り合う発振回路セル間をキャパシタ3とキャパシタ8で相互に接続したものである。キャパシタ3は、隣り合う発振回路セルのMOSトランジスタ5のソース間に接続されている。
【0022】
キャパシタ8は、隣り合う発振回路セルにおいて、前段の発振回路セルのMOSトランジスタ5のゲートと後段の発振回路セルのMOSトランジスタ5のソースとの間に接続されている。図7で説明すれば、キャパシタ8は、発振回路セル308のMOSトランジスタ5(図示省略)のゲートと発振回路セル301のMOSトランジスタ5のソースとの間に接続されている。同様に、キャパシタ8は、発振回路セル301のMOSトランジスタ5のゲートと発振回路セル302のMOSトランジスタ5(図示省略)のソースとの間に接続されている。他の、隣り合う発振回路セル間においても同様である。
【0023】
各発振回路セル301,302,303,304,305,306,307,308は同一構成の発振回路であり、図2に示す多相VCO2010の実施例1と略同様の構成であるが、その実施例1のキャパシタ2がない点が異なる。その他の構成や機能については実施例1と同じである。
【0024】
各発振回路セル301,302,303,304,305,306,307,308からは、たとえば45°ずつ位相がずれた8個のクロックφ1,φ2,φ3,φ4,φ5,φ6,φ7およびφ8が出力される。この実施例3では、位相が遅くなる向きが常に一定であり、図7に示す例では、発振回路セル301から発振回路セル308へ向かう向きで位相が遅くなる。
【0025】
図8は、多相VCO2010を構成する発振回路の実施例4を示す概略図である。この発振回路は、n個、特に限定しないが、図示例では8個(n=8)の発振回路セル(図8において点線で囲むセル)401,402,403,404,405,406,407,408を有し、各発振回路セルの増幅器をバイポーラトランジスタ9で構成するとともに、隣り合う発振回路セル間をキャパシタ3とキャパシタ8で相互に接続したものである。キャパシタ3は、隣り合う発振回路セルのバイポーラトランジスタ9のエミッタ間に接続されている。
【0026】
キャパシタ8は、隣り合う発振回路セルにおいて、前段の発振回路セルのバイポーラトランジスタ9のエミッタと後段の発振回路セルのバイポーラトランジスタ9のベースとの間に接続されている。図8において説明すれば、キャパシタ8は、発振回路セル408のバイポーラトランジスタ9(図示省略)のエミッタと発振回路セル401のバイポーラトランジスタ9のベースとの間に接続されている。同様に、キャパシタ8は、発振回路セル401のバイポーラトランジスタ9のエミッタと発振回路セル402のバイポーラトランジスタ9(図示省略)のベースとの間に接続されている。他の、隣り合う発振回路セル間においても同様である。
【0027】
各発振回路セル401,402,403,404,405,406,407,408は同一構成の発振回路であり、図2に示す多相VCO2010の実施例1と略同様の構成であるが、MOSトランジスタ5に代えてバイポーラトランジスタ9を用いていることと、その実施例1のキャパシタ2がない点が異なる。その他の構成や機能については実施例1と同じである。
【0028】
各発振回路セル401,402,403,404,405,406,407,408からは、たとえば45°ずつ位相がずれた8個のクロックφ1,φ2,φ3,φ4,φ5,φ6,φ7およびφ8が出力される。この実施例4では、位相が遅くなる向きが常に一定であり、図8に示す例では、発振回路セル401から発振回路セル408へ向かう向きで位相が遅くなる。
【0029】
図9〜図11に、図8に示す発振回路の発振信号のシミュレーション結果を示す。図10は、図9に示す波形の一部であり、発振開始初期の波形を拡大したものである。また、図11は、図9に示す波形のうち、発振が安定した状態での波形を拡大して示したものである。図10からわかるように発振開始初期においては8個のクロックは略同相で発振しているが、発振状態が安定すると、図11に示すように8個のクロックが等位相差で発振していることがわかる。
【0030】
図12は、多相VCO2010を構成する発振回路の実施例5を示す概略図である。この発振回路は、n個、特に限定しないが、図示例では8個(n=8)の発振回路セル(図12において点線で囲むセル)501,502,503,504,505,506,507,508を有し、隣り合う発振回路セル間をキャパシタ3とキャパシタ10で相互に接続したものである。
【0031】
また、各発振回路セル501,502,503,504,505,506,507,508において、MOSトランジスタ5のソースと電流源6との間にMOSトランジスタ11が、スタックされた増幅器として接続されている。各MOSトランジスタ11のゲートには、バイアス電圧Vb2が印加される。
【0032】
キャパシタ3は、隣り合う発振回路セルのスタックされたMOSトランジスタ11のソース間に接続されている。キャパシタ10は、隣り合う発振回路セルにおいて、前段の発振回路セルのMOSトランジスタ5のソースと後段の発振回路セルのスタックされたMOSトランジスタ11のソースとの間に接続されている。
【0033】
図12において説明すれば、キャパシタ10は、発振回路セル508のMOSトランジスタ5(図示省略)のソースと発振回路セル501のスタックされたMOSトランジスタ11のソースとの間に接続されている。同様に、キャパシタ10は、発振回路セル501のMOSトランジスタ5のソースと発振回路セル502のスタックされたMOSトランジスタ11(図示省略)のソースとの間に接続されている。他の、隣り合う発振回路セル間においても同様である。
【0034】
各発振回路セル501,502,503,504,505,506,507,508は同一構成の発振回路であり、図2に示す多相VCO2010の実施例1と略同様の構成であるが、MOSトランジスタ11がMOSトランジスタ5にスタックされて設けられている点が異なる。その他の構成や機能については実施例1と同じである。
【0035】
各発振回路セル501,502,503,504,505,506,507,508からは、たとえば45°ずつ位相がずれた8個のクロックφ1,φ2,φ3,φ4,φ5,φ6,φ7およびφ8が出力される。この実施例5では、位相が遅くなる向きが常に一定であり、図12に示す例では、発振回路セル501から発振回路セル508へ向かう向きで位相が遅くなる。また、この実施例5によれば、スタックされた増幅器が設けられているため、利得を上げることができる。
【0036】
図13は、多相VCO2010を構成する発振回路の実施例6を示す概略図である。この発振回路は、8個の発振回路セル601,602,605,606,608,・・・を有し、隣り合う発振回路セルにおいて、それぞれのMOSトランジスタ5のゲート間をインダクタ12で接続したものである。また、この発振回路では、π/2ずつ位相がずれる発振回路セルどうしの、スタックされたMOSトランジスタ11のソース間がキャパシタ13により相互に接続されている。なお、各発振回路セル601,602,605,606,608,・・・は同一構成の発振回路であり、基本的に図2に示す多相VCO2010の実施例1と略同様の構成である。スタックされたMOSトランジスタ11は省略可能である。
【0037】
各発振回路セル601,602,605,606,608,・・・からは、たとえば45°ずつ位相がずれた8個のクロックφ1,φ2,φ5,φ6,φ8,・・・が出力される。この実施例6では、位相が遅くなる向きが常に一定であり、図13に示す例では、発振回路セル601から発振回路セル608へ向かう向きで位相が遅くなる。また、この実施例6によれば、スタックされた増幅器が設けられているため、利得を上げることができる。
【0038】
図14は、多相VCO2010を構成する発振回路の実施例7を示す概略図である。この発振回路は、8個の発振回路セル701,702,・・・,708を有し、実施例6と同様に、隣り合う発振回路セルにおいて、それぞれのMOSトランジスタ5のゲート間をインダクタ12で接続したものである。また、この発振回路では、発振回路セル701,702,・・・,708において位相が遅くなる向きを決めるため、隣り合う発振回路セルにおいて前段の発振回路セルのMOSトランジスタ5のゲートと、後段の発振回路セルのMOSトランジスタ5のソースとの間にキャパシタ14が接続されている。なお、各発振回路セル701,702,・・・,708は同一構成の発振回路であり、基本的に図2に示す多相VCO2010の実施例1と略同様の構成である。
【0039】
各発振回路セル701,702,・・・,708からは、たとえば45°ずつ位相がずれた8個のクロックφ1,φ2,・・・,φ8が出力される。この実施例7では、位相が遅くなる向きが常に一定であり、図14に示す例では、発振回路セル701から発振回路セル708へ向かう向きで位相が遅くなる。
【0040】
図15は、多相VCO2010を構成する発振回路の実施例8を示す概略図である。この発振回路は、8個の発振回路セル801,802,・・・を有し、隣り合う発振回路セルにおいて、各発振回路セル801,802,・・・の増幅器を構成するバイポーラトランジスタ9のエミッタどうしをキャパシタ3で接続したものである。
【0041】
また、この発振回路では、発振回路セル801,802,・・・において位相が遅くなる向きを決めるため、各発振回路セル801,802,・・・の電流源6(たとえばバイポーラトランジスタ)のバイアス電圧Vb31,Vb32,・・・をオン/オフするタイミングを図16に示すようにずらす構成となっている。なお、各発振回路セル801,802,・・・は同一構成の発振回路であり、基本的に図2に示す多相VCO2010の実施例1と略同様の構成である。
【0042】
各発振回路セル801,802,・・・からは、たとえば45°ずつ位相がずれた8個のクロックφ1,φ2,・・・が出力される。この実施例8では、位相が遅くなる向きが常に一定であり、図15に示す例では、発振回路セル801から発振回路セル802へ向かう向きで位相が遅くなる。また、この実施例8によれば、発振開始時に共振器に残るエネルギーを有効に放出した後、所望の向きに位相が遅れるように発振を再開させることができる。なお、各発振回路セルに独立してオン/オフ可能な電源スイッチ等を設けた構成としてもよい。
【0043】
図17〜図19に、図15に示す発振回路の発振信号のシミュレーション結果を示す。図18は、図17に示す波形の一部であり、発振開始初期の波形を拡大したものである。また、図19は、図17に示す波形のうち、発振が安定した状態での波形を拡大して示したものである。図18からわかるように発振開始初期においては8個のクロックは略同相で発振しているが、発振状態が安定すると、図19に示すように8個のクロックが等位相差で発振していることがわかる。
【0044】
図20は、多相VCO2010を構成する発振回路の実施例9を示す概略図である。この発振回路は、動作が相補的になる0段目の発振回路セルと4段目の発振回路セルからなる発振回路セル対(以下、0−4発振回路セル対とする)901、1段目の発振回路セルと5段目の発振回路セルからなる発振回路セル対(以下、1−5発振回路セル対とする)902、2段目の発振回路セルと6段目の発振回路セルからなる発振回路セル対(以下、2−6発振回路セル対とする)903、3段目の発振回路セルと7段目の発振回路セルからなる発振回路セル対(以下、3−7発振回路セル対とする)904を備えている。
【0045】
各発振回路セル対901,902,903,904は、同一構成のものであり、O+、O−、r1、r2、d1、d2、b2およびb2’の8個の端子を備えている。なお、各発振回路セル対901,902,903,904に実際に端子があるわけではないが、後述する発振回路セル対の説明の都合上、端子と表現する。また、図20においてO+またはO−の端子に付されている0〜7の数字は、それぞれ0段目〜7段目の各発振回路セルに対応する。また、図20においては、b2端子はb24、b25、b26およびb27の各端子に相当し、b2’端子はb20、b21、b22およびb23の各端子に相当する。
【0046】
0−4発振回路セル対901のO−端子は、0段目の発振回路セルのクロックを出力する。0−4発振回路セル対901のO+端子は、4段目の発振回路セルのクロックを出力する。この4段目の発振回路セルのクロックは、0段目のクロックから位相が180°遅れる。1−5発振回路セル対902のO−端子は、1段目の発振回路セルのクロックを出力し、このクロックは0段目のクロックから45°遅れた位相となる。1−5発振回路セル対902のO+端子は、5段目の発振回路セルのクロックを出力し、このクロックは0段目のクロックから225°遅れた位相となる。
【0047】
2−6発振回路セル対903のO−端子は、2段目の発振回路セルのクロックを出力し、このクロックは0段目のクロックから90°遅れた位相となる。2−6発振回路セル対903のO+端子は、6段目の発振回路セルのクロックを出力し、このクロックは0段目のクロックから270°遅れた位相となる。3−7発振回路セル対904のO−端子は、3段目の発振回路セルのクロックを出力し、このクロックは0段目のクロックから135°遅れた位相となる。3−7発振回路セル対904のO+端子は、7段目の発振回路セルのクロックを出力し、このクロックは0段目のクロックから315°遅れた位相となる。
【0048】
b20端子、b21端子、b22端子、b23端子、b24端子、b25端子、b26端子およびb27端子は、それぞれ0段目、1段目、2段目、3段目、4段目、5段目、6段目、7段目の各発振回路セルの電流源にバイアス電圧Vb2を供給するための端子である。
【0049】
0−4発振回路セル対901のd1端子と1−5発振回路セル対902のd1端子との間、1−5発振回路セル対902のd1端子と2−6発振回路セル対903のd1端子との間、2−6発振回路セル対903のd1端子と3−7発振回路セル対904のd2端子との間、および3−7発振回路セル対904のd1端子と0−4発振回路セル対901のd1端子との間には、それぞれ容量C3のキャパシタ61,62,63,64が接続されている。
【0050】
0−4発振回路セル対901のd2端子と1−5発振回路セル対902のd2端子との間、1−5発振回路セル対902のd2端子と2−6発振回路セル対903のd2端子との間、2−6発振回路セル対903のd2端子と3−7発振回路セル対904のd1端子との間、および3−7発振回路セル対904のd2端子と0−4発振回路セル対901のd2端子との間には、それぞれ容量C2のキャパシタ65,66,67,68が接続されている。
【0051】
0−4発振回路セル対901のr1端子と1−5発振回路セル対902のd1端子との間、1−5発振回路セル対902のr1端子と2−6発振回路セル対903のd1端子との間、2−6発振回路セル対903のr1端子と3−7発振回路セル対904のd2端子との間、および3−7発振回路セル対904のr1端子と0−4発振回路セル対901のd1端子との間には、それぞれ容量CSのキャパシタ69,70,71,72が接続されている。
【0052】
0−4発振回路セル対901のr2端子と1−5発振回路セル対902のd2端子との間、1−5発振回路セル対902のr2端子と2−6発振回路セル対903のd2端子との間、2−6発振回路セル対903のr2端子と3−7発振回路セル対904のd1端子との間、および3−7発振回路セル対904のr2端子と0−4発振回路セル対901のd2端子との間には、それぞれ容量CSのキャパシタ73,74,75,76が接続されている。
【0053】
ここで、図20に示すように、2−6発振回路セル対903のd1端子がキャパシタ63を介して3−7発振回路セル対904のd2端子に接続され、かつ2−6発振回路セル対903のd2端子がキャパシタ67を介して3−7発振回路セル対904のd1端子に接続されているように、2−6発振回路セル対903と3−7発振回路セル対904との間において、結線状態が交差している。しかし、実際の配線間の交差の数は段間の結合部8箇所について同じであり、寄生インピーダンスはすべての箇所について一様となる。
【0054】
図21は、図20に示す発振回路における発振回路セル対の構成を示す概略図である。この発振回路セル対は、6個のキャパシタ21,22,23,24、25,26、4個のインダクタ27,28,29,30、5個の抵抗31,32,33,34,41、2個のバラクタ・ダイオード35,36、4個のトランジスタ37,38,39,40を備えている。
【0055】
第1のトランジスタ37のベースは第1のインダクタ27の一端に接続されている。第1のインダクタ27の他端は、第1の抵抗31の一端に接続されている。第1の抵抗31の他端にはバイアス電圧Vb1が印加される。第1のインダクタ27と第1の抵抗31との接続ノードと、アノードが第5の抵抗41を介して接地された第1のバラクタ・ダイオード35と第2の抵抗32との接続ノードとの間には、第1のキャパシタ21が接続される。第2の抵抗32には制御電圧Vcontが印加される。
【0056】
第1のトランジスタ37のエミッタは第2のトランジスタ38のコレクタに接続されている。第2のトランジスタ38のベースはb2’端子に接続されている。第2のトランジスタ38のエミッタは接地される。また、第1のトランジスタ37のエミッタとベースとの間には第2のキャパシタ22が接続されている。第1のトランジスタ37のコレクタは第3のキャパシタ23の一方の電極に接続されている。第3のキャパシタ23の他方の電極はO−端子に接続されている。また、第1のトランジスタ37のコレクタは、第2のインダクタ28の一端に接続されている。第2のインダクタ28の他端には電源電圧が印加される。第1のトランジスタ37のベースおよびエミッタはそれぞれr2端子およびd2端子にそれぞれ接続されている。
【0057】
同様に、第3のトランジスタ39のベースは第3のインダクタ29の一端に接続されている。第3のインダクタ29の他端は、第3の抵抗33の一端に接続されている。第3の抵抗33の他端にはバイアス電圧Vb1が印加される。第3のインダクタ29と第3の抵抗33との接続ノードと、アノードが第5の抵抗41を介して接地された第2のバラクタ・ダイオード36と第4の抵抗34との接続ノードとの間には、第4のキャパシタ24が接続される。第4の抵抗34には制御電圧Vcontが印加される。
【0058】
第3のトランジスタ39のエミッタは第4のトランジスタ40のコレクタに接続されている。第4のトランジスタ40のベースはb2端子に接続されている。第4のトランジスタ40のエミッタは接地される。また、第3のトランジスタ39のエミッタとベースとの間には第5のキャパシタ25が接続されている。第3のトランジスタ39のコレクタは第6のキャパシタ26の一方の電極に接続されている。第6のキャパシタ26の他方の電極はO+端子に接続されている。また、第3のトランジスタ39のコレクタは、第4のインダクタ30の一端に接続されている。第4のインダクタ30の他端には電源電圧が印加される。第3のトランジスタ39のベースおよびエミッタはそれぞれr1端子およびd1端子にそれぞれ接続されている。
【0059】
このように構成された発振回路セル対では、制御電圧Vcontを制御して2個のバラクタ・ダイオード35,36に加わる電圧を変えることにより発振周波数を制御することになる。
【0060】
図22は、第2のインダクタ28および第4のインダクタ30を対称化インダクタで構成した場合のコイルの一例を示す平面図である。このコイル51は、たとえば第1の導電層と、第1の導電層上に層間絶縁膜を介して積層された第2の導電層を用いて形成される。すなわち、コイル51は、その両端52,53と、コイル51の中点となるセンタ・タップ54(図22中、一点鎖線で示す)との間に対称性の良いインダクタが形成されるように、コイル51が第1の導電層において略3周する間に、適宜第2の導電層およびコンタクト部を経由してコイル51の線路部どうしが短絡せずに交差するように構成されている。
【0061】
図21に示す回路では、センタ・タップ54に電源電位が印加される。なお、図22では、第1の導電層に形成された線路部およびコンタクト部は破線で示されており、第2の導電層に形成された線路部は実線で示されている。
【0062】
第1のインダクタ27および第3のインダクタ29を図22に示すような対称化インダクタで構成することもできる。ただし、この場合には、図22に示すコイル51をセンタ・タップ54にて切断した構成とする必要がある。このような対称化インダクタを用いる理由は、集積回路上で差動信号を扱う場合に小面積で相互インダクタンスを利用した大きなインダクタンスと高いQが得られるからである。なお、第2のインダクタ28および第4のインダクタ30は負荷であるため、一般的なインダクタを用いても発振器として同等の性能が得られる。
【0063】
このように構成された各発振回路セル対において、第5の抵抗41は、非平衡の共振エネルギーを消費することにより、上述した構成の対称化インダクタとともに平衡動作を安定化させている。この第5の抵抗41は、インダクタ等のばらつきにより生ずる位相誤差を緩和する機能を有する。
【0064】
実施例9の発振回路のように、容量C2で環状に接続されたn相の多相発振器の発振(角)周波数ω0は次式により表される。ただし、Cr=8C2/nであり、第2のキャパシタ22および第5のキャパシタ25の容量をC1、第1のキャパシタ21および第4のキャパシタ24の容量をCc、2個のバラクタ・ダイオード35,36の容量をCv、第1のインダクタ27および第3のインダクタ29のインダクタンスをLとする。
【0065】
ω0=√((CrC1Cc+C1CcCv+CcCvCr+CvCrC1)/(LCrC1CcCv))
【0066】
実施例9の発振回路では、容量CSのキャパシタ73,74,75,76を設けたことにより、段間の発振位相差の向きが決まる。また、発振開始時に位相が遅くなる向きを決めるために、各発振回路セルの電流源を時間差を設けて投入する構成としてもよい。たとえば図23に示す構成では、発振開始信号が低レベルに遷移するとインバータIn1,In2の遅延によりトランジスタTrがオンしてb20端子、b21端子、b22端子、b23端子、b24端子、b25端子、b26端子およびb27端子に順にバイアス電圧Vb2が印加され、それによって0段目から7段目まで順に発振回路セルが動作を始める。この遅延には高い精度は必要なく、発振の周期をTとすると、おおよそT/n程度である。
【0067】
また、図23に示す構成において、発振開始信号を高レベルとすることによって、各発振回路セルは共振回路に蓄えられたエネルギーを放出して次の発振開始に備えることができる。この回路はBiCMOSテクノロジを用い、MOSトランジスタTrをスイッチとしてバイアス電圧Vb2を断続するため、共振回路へのノイズの侵入が少ないという利点を有する。
【0068】
ここで、図24に、発振開始時のVb21〜Vb28と各発振回路セル対内のゲイントランジスタのベース間の差動電圧の波形を示し、時間が経過して動作が安定した状態の差動電圧の波形を図25に示す。
【0069】
図26は、多相VCO2010を構成する発振回路の実施例10を示す概略図である。この発振回路は、たとえば8個の発振回路セル1001〜1008について共振器内インダクタをリング状に結合したものであり、図13に示す発振回路の実施例6において、π/2ずつ位相がずれる発振回路セルどうしの、スタックされたMOSトランジスタ11のソース間を相互に接続するキャパシタ13の容量を2個のキャパシタ15,16に分割し、その中点を抵抗17でシャン卜することにより平衡動作を安定化させたものである。この抵抗17は、インダクタ等のばらつきによる位相誤差、すなわち隣接する発振回路セル間の位相差の2π/8からのずれを緩和する機能を有する。
【0070】
実施例10の発振回路の発振周波数ω0は、相数をnとすると次式で表される。ただし、ゲートにインダクタ12が接続されたトランジスタ5のソース−ゲート間に接続されたキャパシタ2の容量をC1、トランジスタ11のソース−ドレイン間に接続されたキャパシタ18の容量をC2、キャパシタ15,16の容量をC3とし、インダクタ12のインダクタンスをLとする。
【0071】
ω0=√((C2C3+C1C3+C1C2)/((nL/8)C1C2C3))
【0072】
図27は、多相VCO2010を構成する発振回路の実施例11を示す概略図である。この発振回路は、n個、特に限定しないが、図示例では8個(n=8)の発振回路セル(図27において点線で囲むセル)1101,1102,1103,1104,1105,1106,1107,1108を有し、隣り合う発振回路セル間をキャパシタ3で相互に接続したものである。各発振回路セル1101〜1108においては共振器にl/2λのスタブ19と1/4λのスタブ20が用いられている。各発振回路セル1101〜1108の電流源6には、発振開始時にバイアス電圧Vb0〜Vb7が順に供給される。また、各発振回路セル1101〜1108のバラクタ・ダイオード77に供給される制御電圧Vc0〜Vc7は、個々に制御される。それによって、各発振回路セルのばらつきによって隣接発振回路セル間の出力の位相差2π/nからのずれが補正されるようになっている。
【0073】
上述した実施例1〜実施例11の発振回路のいずれによっても、広い周波数レンジを持ちながら、特に重要な位相ではタイミング・ジッタが少なく、また位相ノイズの劣化が少ないVCOが得られる。それによって、VCOの製造ばらつきや動作条件による周波数変動を吸収することが容易となり、それを用いるシステムとの集積が容易となる。さらには、広い周波数帯域を使った周波数ホッピングが可能となる。
【0074】
図28は、n相、特に限定しないが、図示例では8相(n=8)の入力クロックをシフトして出力するバレルシフタ2020の構成を示す概略図である。バレルシフタ2020は、多相VCO2010からクロックを受け取る複数の入力端子2021a,2021b,2021c,・・・と、受け取ったクロックをシフトする複数のシフト部2022a,2022b,2022c,・・・と、シフトしたクロックを出力する複数の出力端子2023a,・・・,2023hを備えている。入力端子2021a,・・・、シフト部2022a,・・・および出力端子2023a,・・・の数は多相VCO2010から受け取るクロックの相数に対応している。
【0075】
図29は、バレルシフタ2020のシフト部の構成を拡大して示す図である。各シフト部2022a,・・・は同一構成のものであり、シフト部2022a(2022b,・・・)は、n個、すなわちここでは8個のMOSトランジスタ2024a,・・・,2024hにより構成されている。そして、制御回路2050(図1参照)の後述するデコーダ2054から供給されたn個、すなわちここでは8個のデコード信号(選択信号)s0,s1,・・・,s7に基づいて、8個のMOSトランジスタ2024a,・・・のうちのいずれか一つのみがオン状態となる。それによって、出力端子2023a,・・・,2023hのうち、オン状態となったMOSトランジスタに対応する端子に、入力端子2021a(2021b,・・・)から入力されたクロックが出力される。
【0076】
図28に示すように、各シフト部2022a,・・・と各出力端子2023a,・・・との間の結線構造はシフト部ごとに異なるため、8個のシフト部2022a,・・・から出力された互いに位相の異なる8相のクロックは別々の出力端子2023a,・・・に出力される。選択信号s1,s2,・・・,s7が変わることによって、各シフト部2022a,・・・から出力されたクロックの出力先がシフトすることになる。
【0077】
具体的に説明すると、たとえば図28に示す例では、選択信号s0のみが高レベルで、他の選択信号が低レベルの場合には、各シフト部2022a,・・・において図29の左上のMOSトランジスタ2024aのみがオン状態となる。したがって、図28において「0」に対応する入力端子2021aから入力されたクロックは、「φ0」に対応する出力端子2023aに出力される。また、図28において「1」に対応する入力端子2021bから入力されたクロックは、「φ1」に対応する出力端子2023bに出力され、「7」に対応する入力端子2021cから入力されたクロックは、「φ7」に対応する出力端子2023hに出力される。
【0078】
それに対して、選択信号s1のみが高レベルで、他の選択信号が低レベルの場合には、各シフト部2022a,・・・において図29の左上から二番目のMOSトランジスタ2024bのみがオン状態となるので、図28において「0」に対応する入力端子2021aから入力されたクロックは、「φ1」に対応する出力端子2023bに出力される。また、図28において「1」に対応する入力端子2021bから入力されたクロックは、「φ2」に対応する出力端子2023cに出力され、「7」に対応する入力端子2021cから入力されたクロックは、「φ0」に対応する出力端子2023aに出力される。
【0079】
本実施の形態では、バレルシフタ2020は、アナログスイッチで構成された選択回路であり、各スイッチはMOSトランジスタにより構成されているとしたが、各スイッチをその他の素子を用いて構成することもできる。
【0080】
制御回路2050(図1参照)は進角値保持レジスタ(Mレジスタ)2051、加算器2052、レジスタ2053およびデコーダ2054を有する。進角値保持レジスタ2051は進角値Mを保持する。進角値保持レジスタ2051に保持された進角値Mは加算器2052に供給される。加算器2052の出力はレジスタ2053に一時保持されて加算器2052に戻される。また、加算器2052の出力はレジスタ2053を介してデコーダ2054に供給され、そこでデコードされて選択信号としてバレルシフタ2020に供給される。それによって、バレルシフタ2020のシフト量が決定される。
【0081】
選択回路2030は、加算器2052、レジスタ2053およびデコーダ2054に、サンプリング・クロックとは異なる位相のクロックを選択して供給する。また、進角値保持レジスタ2051に保持された進角値Mを動作中に書き換える場合には、書き込み要求を同期化するために進角値保持レジスタ2051に選択回路2030の出力が供給される。
【0082】
図1に示す例では、選択回路2030の中心タップはn/2となっているが、出力サンプリング・クロック波形、制御回路2050の遅延、バレルシフタ2020の遅延および配線の伝搬遅延に応じて、中心タップをn/2からずらす場合もある。ここで、図1に示すバレルシフタ2020の出力クロックのうちφn/2−mやφn/2+mのmはM/2の程度である。Mを大きくして多出力間の論理をとることによってより短いサンプリング・パルスを得ることができる。また、Mをn/2以下とすることもてきる。
【0083】
ここで、選択回路2030、加算器2052、レジスタ2053およびデコーダ2054を複数組設けた構成、またはそれらとともにバレルシフタ2020も複数設けた構成としてもよく、そのような場合には多相VCO2010を共有した構成で複数のサンプリング・クロックが得られる。したがって、通信分野で有用な直交サンプリング・クロックを得ることがてきる。また、制御回路2050をパイプライン構成としてもよい。その場合には、加算器2052、レジスタ2053およびデコーダ2054を複数組設ける必要はなく、デコーダ2054の前後でオフセットを加算するだけで高速で複数相のサンプリング・クロックを得ることができる。
【0084】
サンプラ2040は、信号の標本化をおこなう回路であって、AD変換器、サンプルドアナログ(スイッチドキャパシタ回路、スイッチドカレント回路等)、トラック・アンド・ホールド回路、ラッチドコンパレータや識別器などで構成される。
【0085】
上述した実施の形態によれば、発振周波数foのN相のクロックを出力する多相VCO2010と、その多相VCO2010の出力を各サイクルごとにM相シフトして取り出すことによりf=fo(N+M)/Nのクロックを得るバレルシフタ2020と、そのクロックを用いて入力信号を標本化するサンプラ2040とを具備し、多相VCO2010は発振周波数foのN相のクロックを出力し、その出力をバレルシフタ2020が各サイクルごとにM相シフトして取り出すことによりf=fo(N+M)/Nのクロックを得、そのクロックを用いてサンプラ2040が入力信号を標本化するため、一定の位相差を有し、かつ周波数の安定した位相雑音の少ない多相クロックを得ることが可能な発振回路から出力されたサンプリング・クロックを用いて入力信号のサンプリングをおこなうことができる。
【0086】
以上において本発明は、多相VCO2010が8相のクロックを発生する場合に限らず、多相VCOが2〜7相または9相以上のクロックを出力する構成にも適用可能である。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、発振手段が発振周波数foのN相のクロックを出力し、その出力を選択手段が各サイクルごとにM相シフトして取り出すことによりf=fo(N+M)/Nのクロックを得、そのクロックを用いてサンプリング手段が入力信号を標本化するため、一定の位相差を有し、かつ周波数の安定した位相雑音の少ない多相クロックを得ることが可能な発振手段から出力されたサンプリング・クロックを用いて入力信号のサンプリングをおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるサンプリング回路の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明にかかるサンプリング回路を構成する多相VCOの実施例1を示す概略図である。
【図3】図2に示す多相VCOの発振信号のシミュレーション結果を示す波形図である。
【図4】図3に示す波形の一部(発振開始初期)を拡大して示す波形図である。
【図5】図3に示す波形の一部(安定期)を拡大して示す波形図である。
【図6】本発明にかかるサンプリング回路を構成する多相VCOの実施例2を示す概略図である。
【図7】本発明にかかるサンプリング回路を構成する多相VCOの実施例3を示す概略図である。
【図8】本発明にかかるサンプリング回路を構成する多相VCOの実施例4を示す概略図である。
【図9】図8に示す発振回路の発振信号のシミュレーション結果を示す波形図である。
【図10】図9に示す波形の一部(発振開始初期)を拡大して示す波形図である。
【図11】図9に示す波形の一部(安定期)を拡大して示す波形図である。
【図12】本発明にかかるサンプリング回路を構成する多相VCOの実施例5を示す概略図である。
【図13】本発明にかかるサンプリング回路を構成する多相VCOの実施例6を示す概略図である。
【図14】本発明にかかるサンプリング回路を構成する多相VCOの実施例7を示す概略図である。
【図15】本発明にかかるサンプリング回路を構成する多相VCOの実施例8を示す概略図である。
【図16】図15に示す発振回路に供給するバイアス電圧の波形を示す波形図である。
【図17】図15に示す発振回路の発振信号のシミュレーション結果を示す波形図である。
【図18】図17に示す波形の一部(発振開始初期)を拡大して示す波形図である。
【図19】図17に示す波形の一部(安定期)を拡大して示す波形図である。
【図20】本発明にかかるサンプリング回路を構成する多相VCOの実施例9を示す概略図である。
【図21】図20に示す発振回路における発振回路セル対の構成を示す概略図である。
【図22】図21に示す発振回路セル対に用いられる対称化インダクタの一例を示す平面図である。
【図23】図20に示す発振回路において段間の発振位相差の向きを決めるためのスタータ回路の構成を示す概略図である。
【図24】図20に示す発振回路の発振開始時のVb21〜Vb28と各発振回路セル対内のゲイントランジスタのベース間の差動電圧の波形を示す波形図である。
【図25】図20に示す発振回路の動作安定状態におけるVb21〜Vb28と各発振回路セル対内のゲイントランジスタのベース間の差動電圧の波形を示す波形図である。
【図26】本発明にかかるサンプリング回路を構成する多相VCOの実施例10を示す概略図である。
【図27】本発明にかかるサンプリング回路を構成する多相VCOの実施例11を示す概略図である。
【図28】本発明にかかるサンプリング回路を構成するバレルシフタの構成を示す概略図である。
【図29】図28に示すバレルシフタの要部を拡大して示す概略図である。
【符号の説明】
2010 多相VCO(発振手段)
2020 バレルシフタ(選択手段)
2021a,2021b,2021c 入力端子
2022a,2022b,2022c シフト部
2023a〜2023h 出力端子
2040 サンプラ(サンプリング手段)
2050 制御回路
Claims (5)
- 線形性歪みを有する増幅器と共振器とを備えた複数の発振回路セルが、それぞれの前記共振器を構成するリアクタンスの一部を介して相互に接続されてなり、前記各発振回路セルのそれぞれから、他の発振回路セルから出力されるクロックと位相の異なるクロックを出力する発振手段と、
前記各発振回路セルから出力された互いに位相の異なる複数のクロックの中からクロックサイクルごとに一つのクロックをサンプリング・クロックとして選択するバレルシフタと、
前記バレルシフタのシフト量を制御する制御回路と、
前記バレルシフタにより選択されたサンプリング・クロックを用いて入力信号の標本化をおこなうサンプリング手段と、
を有し、
前記バレルシフタは、前記発振手段から受け取った互いに位相の異なる複数のクロックを一つずつ受け取る複数の入力端子、シフトされた前記互いに位相の異なる複数のクロックを一つずつ出力する出力端子、および前記入力端子を介して、前記発振手段から受け取った互いに位相の異なる複数のクロックをシフトして、前記出力端子に対する出力先を変更する複数のシフト部を有し、
前記制御回路は、前記バレルシフタから出力される互いに位相の異なる複数のクロックのうち、前記サンプリング・クロックとは異なる位相のクロックに基づいて動作することを特徴とするサンプリング回路。 - 前記制御回路は、
進角値を保持する進角値保持レジスタと、前記進角値が入力される加算器と、
前記加算器の出力を保持するレジスタと、前記レジスタの出力が入力され、デコードされた選択信号を前記バレルシフタに供給するデコーダとを有することを特徴とする請求項1に記載のサンプリング回路。 - 前記加算器、前記レジスタおよび前記デコーダに前記サンプリング・クロックとは異なる位相のクロックを選択して供給する選択回路をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のサンプリング回路。
- 前記発振回路セル間の相互接続箇所に増幅器を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のサンプリング回路。
- 前記増幅器は帰還増幅器であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のサンプリング回路。
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