JP4524937B2 - 超音波探傷方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば厚板や角ビレット等の被検査材の内部に存在する欠陥を、超音波探傷によって検出する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一つの振動子で超音波の送受信を行う垂直探触子を用いた超音波探傷は、送信波が直接振動子に入って送信パルスの幅が広くなる場合があるため、一般に、被検査材の探傷面近傍付近の欠陥検出精度は低くなる。そこで、送受信の振動子を別体に構成した二振動子型探触子が利用されている。また、送信振動子と受信振動子を一つの探触子に組み込んだ分割型探触子も、二振動子型探触子の一形態と見ることができる。
【0003】
しかし、二振動子型振動子を用いた超音波探傷では、ビーム路程が比較的長い探傷を行うと、探傷面から遠距離の位置において欠陥検出精度が低下し、不感帯を生じる場合がある。そこで、従来から、上記のような不感帯をどのようにして解消するかが、二振動子型探触子を用いた超音波探傷における技術的課題の一つとなっている。その従来の一例として、特開平4−212055号公報に記載の「複合超音波探触子」や、特開平5−209868号公報に記載の「複合超音波探触子」が挙げられる。
【0004】
ところで、一般に、パルス反射を用いた超音波探傷では、探触子の直径をD、超音波の波長をλとするとき、D2 /4λの計算式で求められる近距離音場限界距離(以下、X0 という。)付近で有効ビーム幅が最も収束することが知られている。
【0005】
例えば振動子の径が比較的大きい二振動子型探触子を用いて探傷した場合、探傷面近傍付近では探触子のサイズに比較的近い有効ビーム幅が得られるが、この有効ビーム幅は、X0 付近で最も収束し、X0 以降の遠距離では拡散するという特徴が認められる。しかし、このX0 の位置は、上記のように、探触子のサイズ等に依存するものであるため、振動子の径が比較的小さい二振動子型探触子を用いた場合には、探傷面近傍付近に有効ビーム幅が最も収束するX0 が現れることとなる。
【0006】
一方、垂直探触子では、一般に、探傷面近傍付近の有効ビーム幅は二振動子型探触子の場合と比較すると小さく、X0 付近で最も収束して、X0 以降の遠距離では拡散するが、その拡散の仕方は二振動子型探触子の場合と比較すると緩やかであるという特徴が認められる。
【0007】
このように、パルス反射を用いた超音波探傷において、探触子から印加される超音波ビームの特性は、探触子のサイズや形状に依存するものである。そこで、従来から、探触子の走査方向と直交する方向の有効ビーム幅をより大きく確保して効率的に探傷を行うために、探触子の走査方向と直交する方向に複数の垂直探触子を併設し、各探触子から印加される超音波ビームの探傷範囲を隣接させて探傷を行う超音波探傷方法が利用されている。その従来の一例として、特開平2−210257号公報に記載の「角鋼片の表層欠陥探傷方法」が挙げられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した従来の超音波探傷方法の内、特開平4−212055号公報に記載の「複合超音波探触子」と特開平5−209868号公報に記載の「複合超音波探触子」は、焦点距離の異なる二つの分割型探触子を用いることによって、ビーム路程が比較的長い探傷における欠陥検出精度を向上しようとするものであるが、探触子の走査方向と直交する方向の有効ビーム幅をより大きく確保する点については考慮されていないという問題があった。
【0009】
そこで、特開平2−210257号公報に記載の「角鋼片の表層欠陥探傷方法」のように、探触子の走査方向と直交する方向に複数の垂直探触子群を配置した超音波探傷方法が提案されているが、この従来の探傷方法では、当該公報の図1に示されているように、被検査材の探傷面近傍付近において不感帯が存在するため、これをなくすためには、反対側の面にも同様の垂直探触子群を設けて探傷する必要があった。しかし、これでは、探触子が多数必要になり、設備費が増大するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、探触子の走査方向と直交する方向に複数の探触子を併設して探傷を行う超音波探傷方法において、使用する探触子の数を極力減らすことが可能で、しかも探傷範囲間に不感帯を生じることのない超音波探傷方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明の超音波探傷方法は、複数の探触子からそれぞれ印加される超音波ビームの探傷範囲が前記探触子の走査方向と直交する方向に隣接するように複数の探触子を併設して探傷を行う超音波探傷方法において、超音波ビームの収束位置が近距離と遠距離に異なる探触子を用い、これら探触子から印加される超音波ビームの探傷範囲を隣接させるようにしているのである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の超音波探傷方法は、超音波ビームの収束位置が探傷面から近距離の位置に現れる探触子と、遠距離の位置に現れる探触子とを組み合わせ、これらの探触子から印加される超音波ビームの探傷範囲を隣接させるものである。
【0013】
このようにしたので、本発明の超音波探傷方法では、収束位置が等しい超音波ビームの探傷範囲同士が隣接することはなくなり、組み合わされた超音波ビームの探傷範囲の形状は平行に近づくこととなる。したがって、極力少ない探触子によって探傷範囲間に不感帯を生じないように探傷することができるのである。
【0014】
本発明の超音波探傷方法において、探傷範囲を隣接させる探触子の組み合わせは特に限定をするものではないが、超音波ビームの収束位置に差異を設けるためには、例えば探触子の径が比較的大きい二振動子型探触子と垂直探触子を組み合わせたり、探触子の径が異なる2種類の二振動子型探触子を組み合わせる方法等が採用できる。
【0015】
また、長方形状の二振動子型探触子を幅方向と長さ方向に向きを変えて併設し、これらの探触子から印加される超音波ビームの探傷範囲を隣接させるように構成すれば、探触子を複数種類準備する必要はなくなり、本発明の超音波探傷方法を容易に実現することができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の超音波探傷方法の一実施例を、図1〜図2を用いて説明する。図1は本発明の超音波探傷方法に用いる例えば3種類の探触子の超音波ビームの特性を説明する図、図2は本発明の超音波探傷方法を実施したときの超音波ビームの探傷範囲を説明する図である。
【0017】
図1において、Aは公称寸法が30mmの円形状の分割型探触子であり、A1は、この分割型探触子Aを探触子の走査方向から見た状態とその探傷範囲を表している。また、A2は、分割型探触子Aを探触子の走査方向と直交する方向から見た状態とその探傷範囲を表している。
【0018】
この分割型探触子Aは、探触子の走査方向から見た状態において送信振動子と受信振動子が左右に並ぶ向き(以下、X方向という。)に探触子を設置したときは、X0 がビーム路程40mm付近に現れる探触子である。したがって、図1に示すように、分割型探触子Aの有効ビーム幅は、探傷面近傍のビーム路程10mm付近では20mmであるが、X0 付近で最も収束して12mmとなり、X0 以降の遠距離では拡散するという特徴が認められる。
【0019】
一方、Bは公称寸法が5×25mmの長方形状である分割型探触子であり、B1は、この分割型探触子Bを探触子の走査方向から見た状態とその探傷範囲を表している。また、B2は、分割型探触子Bを探触子の走査方向と直交する方向から見た状態とその探傷範囲を表している。
【0020】
この分割型探触子Bは、探触子の走査方向から見た状態において短い方の辺が手前に見える向き(以下、5mm方向という。)に探触子を設置したときは、X0 がビーム路程10mm付近に現れる探触子である。したがって、図1に示すように、分割型探触子Bの有効ビーム幅は、探傷面近傍のビーム路程10mm付近で最も収束して13mmとなり、ビーム路程40mm付近では22mm、ビーム路程60mm付近では30mmに拡散するという特徴が認められる。
【0021】
さらに、Cは公称寸法が20mmの円形状の垂直探触子を任意の向きに設置した状態を表したものである。この垂直探触子Cは、X0 がビーム路程40mm付近に現れる探触子である。したがって、図1に示すように、垂直探触子Cの有効ビーム幅は、探傷面近傍付近では16mmであるが、X0 付近で最も収束して8mmとなり、X0 以降の遠距離では緩やかに拡散するという特徴が認められる。
【0022】
次に、図2を用いて、本発明の超音波探傷方法について説明する。
図2において、1は比較例1を表したものであり、3つの分割型探触子Aを探触子の走査方向と直交する方向に併設し、ビーム路程40mm付近で不感帯が生じないように各探傷範囲を隣接させた探傷方法を示している。この比較例1では、図2に示すように、ビーム路程40mmにおける有効ビーム幅は12mm+12mm+12mmと、分割型探触子Aをただ単に3倍しただけの36mmとなっている。
【0023】
また、2は比較例2を表したものであり、3つの分割型探触子Bを併設して、ビーム路程10mm付近で不感帯が生じないように各探傷範囲を隣接させた探傷方法を示している。この比較例2でも、ビーム路程10mmにおける有効ビーム幅は13mm+13mm+13mmと、分割型探触子Bをただ単に3倍しただけの39mmとなっている。
【0024】
これに対して、3は本発明の超音波探傷法の実施例1を表したものであり、収束位置が異なる分割型探触子A、B、Aを併設し、ビーム路程40mm付近で不感帯が生じないように各探傷範囲を隣接させた探傷方法を示している。したがって、実施例1の場合には、ビーム路程40mm付近の有効ビーム幅は12mm+22mm+12mmと、同じ収束位置の探触子を3個併設したものとは異なって46mmとなっており、例えば比較例1と比較すると、ビーム路程40mm付近の有効ビーム幅が10mm広く確保できるという作用が得られる。
【0025】
以下の表1は、上記と同様に、分割型探触子A、Bと垂直探触子Cを用いて実施した比較例1〜4と実施例1〜5の結果についてまとめたものである。なお、表1中、「A(X) 」は「分割型探触子AをX方向に設置した探傷」を、「B(5) 」は「分割型探触子Bを5mm方向に設置した探傷」を、「B(25)」は「分割型探触子Bを5mm方向と直交する向きに設置した探傷」を意味する。
【0026】
【表1】
【0027】
したがって、探触子を3つ併設する探傷方法について見ると、例えば実施例1と比較例1、実施例2と比較例2の比較により、本発明の探傷方法を用いた方がより大きな有効ビーム幅が得られることが確認できる。また、探触子を2つ併設する探傷方法についても、例えば実施例3〜5と比較例4をそれぞれ比較して見ると、本発明の探傷方法を用いた方がより大きな有効ビーム幅が得られることが確認できる。
【0028】
また、実施例5は、長方形状の分割型探触子Bを幅方向と長さ方向に向きを変えて併設し、これらの探触子から印加される超音波ビームの探傷範囲を隣接させた超音波探傷方法であるが、この方法によれば、探触子を複数種類準備しなくても、例えば実施例3と同等の有効ビーム幅が得られることが確認できる。
【0029】
なお、上記実施例では、分割型探触子を用いた垂直法の探傷に利用する場合の例を開示したが、本発明の超音波探傷方法は、例えば水浸法や斜角法の探傷にも適用できるものである。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の超音波探傷方法によれば、超音波ビームの収束位置が近距離と遠距離に異なる探触子から印加される超音波ビームの探傷範囲を隣接させるようにしたので、組み合わされた超音波ビームの形状は平行に近づくこととなる。したがって、極力少ない探触子によって探傷範囲間に不感帯を生じないように探傷することが可能となるので、多数の探触子を用いる必要はなくなり、設備費を低減することができる。また、長方形状の分割型探触子を幅方向と長さ方向に向きを変えて併設する探傷方法を用いれば、探触子を複数種類準備する必要はなくなり、本発明の探傷方法を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超音波探傷方法に用いる例えば3種類の探触子の超音波ビームの特性を説明する図である。
【図2】本発明の超音波探傷方法を実施したときの超音波ビームの探傷範囲を説明する図である。
【符号の説明】
A、B 分割型探触子
C 垂直探触子
Claims (2)
- 複数の探触子からそれぞれ印加される超音波ビームの探傷範囲が前記探触子の走査方向と直交する方向に隣接するように複数の探触子を併設して探傷を行う超音波探傷方法において、超音波ビームの収束位置が近距離と遠距離に異なる探触子を用い、これら探触子から印加される超音波ビームの探傷範囲を隣接させることを特徴とする超音波探傷方法。
- 長方形状の二振動子型探触子を幅方向と長さ方向に向きを変えて併設し、これらの探触子から印加される超音波ビームの探傷範囲を隣接させることを特徴とする請求項1記載の超音波探傷方法。
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