JP4522212B2 - 抄紙搬送フェルトおよび該抄紙搬送フェルトを備えた抄紙機のプレス装置 - Google Patents
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Description
(1)抄紙機のプレスパートに設けられたプレス装置に配置され、当該プレス装置におけるプレスと共に一つのプレス機構を形成し、湿紙を挟持しながら前記プレスにより加圧され、それにより前記湿紙から搾り出された水分を吸収する一対の抄紙搬送フェルトのうち少なくとも一方の抄紙搬送フェルトであって、
基層と、
前記基層の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基層のプレス側の表面に形成された第2バット層と、
細繊維に分割された複数の分割繊維および前記細繊維の間に含浸された高分子弾性材を含み且つ、前記細繊維および前記高分子弾性材が前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
前記第1バット層と前記湿紙接触繊維層との間に配置された親水性不織布層と、
を備え、
前記湿紙接触繊維層の前記湿紙と直接接触する表面では前記高分子弾性材によって前記細繊維が部分的に被覆されており、
前記分割繊維各々の分割前の繊度が、1.9デシテックスであること。
(2)上記(1)の構成の抄紙搬送フェルトの前記湿紙接触繊維層が、1重量%〜10重量%の前記高分子弾性材を含むこと。
(3)上記(1)または(2)の構成の抄紙搬送フェルトの前記湿紙接触繊維層を形成する繊維が、前記分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなること。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかの構成の抄紙搬送フェルトを備えた抄紙機のプレス装置であること。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載した構成の抄紙搬送フェルトを有する前記プレス機構を複数備えた抄紙機のプレス装置であって、当該複数のプレス機構が、それらの前記抄紙搬送フェルトにより搬送される湿紙の搬送方向に沿って直列に並設されていること。
(6)上記(4)または(5)の構成の抄紙機のプレス装置がクローズドドロータイプのプレス装置であること。
(7)上記(4)〜(6)のいずれかの構成の抄紙機のプレス装置がシュープレス型抄紙機のプレス装置であり、当該プレス装置の前記プレスが、前記抄紙搬送フェルトを加圧するロールおよびシューを有するシュープレスであること。
(8)上記(4)〜(6)のいずれかの構成の抄紙機のプレス装置がロールプレス型抄紙機のプレス装置であり、当該プレス装置の前記プレスが、前記抄紙搬送フェルトを加圧する一対のロールを有するロールプレスであること。
また、分割繊維の分割により形成された細繊維は、高分子弾性材によってある程度結合されるとともに部分的に被覆されているので所謂脱毛現象が生じ難く、抄紙搬送フェルトからの脱落が防止される。これにより、本発明に係る抄紙搬送フェルトを用いた抄紙機により製造された紙はその表面が極めて滑らかなものとなり、その上、抄紙搬送フェルトの寿命(即ち、抄紙搬送フェルトの使用可能期間)が長いため、抄紙搬送フェルトを新品に交換するメンテナンスの頻度を少なくすることができる。
また、第1バット層と湿紙接触繊維層との間に親水性不織布層が配置されているので、湿紙接触繊維層の表面側から含浸された高分子弾性材は、親水性不織布層で阻止されて親水性不織布層よりも深い層(即ち、第1バット層、基層、第2バット層)まで含浸されることはなく、湿紙接触繊維層にのみ(例えば、表面から0.5mm程度)高分子弾性材が配置される。
従って、抄紙搬送フェルトは、透水性と適度な圧縮、回復機能(クッション性)を有するので、搾水性を効果的に発揮することができる。また、高分子弾性材を含む湿紙接触繊維層に一時的に付着した汚れ(具体的には湿紙に含まれる添加剤や糊等の成分)は、抄紙搬送フェルトの適度な圧縮、回復機能(クッション性)のため、湿紙接触繊維層の表面から剥がれ易く、湿紙に移行する。即ち、抄紙搬送フェルトは、高い自浄機能を有する。これにより、抄紙搬送フェルトに汚れが残存し難く、また、湿紙に移行する汚れは、元々湿紙に成分として含まれるものであるので、湿紙の品質に何ら影響を与えることもない。また、一旦湿紙から抄紙搬送フェルトに吸い取られた水分の湿紙への再移行(即ち、所謂再湿現象)が親水性不織布層により阻止される。
尚、本発明に係る抄紙搬送フェルトの湿紙接触繊維層は、複数の分割繊維を細繊維に分割した後、それら細繊維の間に高分子弾性材を含浸させたものであり、分割繊維の分割は、抄紙搬送フェルト製造工程の一つであるニードリング工程で為されることが好ましい。ニードリング工程における前段階でカーディングにより分割繊維を細繊維に分割すると繊維塊(即ち、繊維の塊)ができ易く、当該繊維塊は、ニードリングでフェルトに植設されてしまい、抄紙搬送フェルトの表面に比較的大きな凹凸を形成するので、湿紙の表面平滑度が低下する。分割繊維の分割は、例えば、ニードリング工程において細い番手の針を用いたニードリングにて行なってもよく、或いは、ニードリング工程後において起毛機のブラシ(通称薊)で植設された分割繊維を摩擦したり、或いは、ニードリング工程後に抄紙搬送フェルトを精練(湯洗)する等して行なってもよい。即ち、分割繊維の分割は、ニードリング工程における前段階であるカーディングよりも後で、且つ高分子弾性材を含浸する前であれば、どの工程でもよい。そして、分割繊維の細繊維への分割後に当該細繊維の間に高分子弾性材が含浸される。
高分子弾性材の含浸は、複数の分割繊維を細繊維に分割した後、常温で水系ウレタン樹脂、水系アクリル樹脂、水系エポキシ樹脂、水系合成ゴム(即ち、水系エマルジョン樹脂)、等の合成樹脂を、ロールで塗布、或いはスプレーで吹き付けて細繊維の間に含浸させ、更に、加熱して硬化させて行なわれる。
また、分割繊維各々の分割前の繊度が1.9デシテックスであるので、分割繊維の分割により形成された細繊維の繊度は1.9デシテックスよりも小さくなる。
このように、分割することにより湿紙の繊維の繊度に限り無く近い繊度の細繊維となる分割繊維を含む湿紙接触繊維層を形成すれば、表面平滑性に非常に優れた高品質の紙を製造することができる。また、このような細繊維の間に高分子弾性材を含浸させることにより、湿紙接触繊維層の表面を更に平滑、且つ紙離れ性のよい表面とすることができる。例え、所謂脱毛現象により、湿紙接触繊維層から抜け落ちたり切れ落ちた細繊維(即ち、分割繊維の分割により形成された細繊維)が湿紙の表面に多少付着しても当該細繊維は極めて細いので湿紙の品質を低下させることはない。
尚、非分割繊維については、例えば1.9デシテックス(即ち、分割繊維の分割前の繊度と同じ値)〜6デシテックスの繊度を有するものが望ましい。
上記(2)の構成の抄紙搬送フェルトによれば、湿紙接触繊維層が、1重量%〜10重量%の高分子弾性材を含むので、繊維間の全ての気孔が高分子弾性材によって充填されることはなく、適度の気孔が保持されている。換言すれば、湿紙接触繊維層が、ポーラスな組織となっており、湿紙接触繊維層と湿紙の間に形成される水膜を分散させ、且つ適度のクッション性も有する。これにより、抄紙搬送フェルトからの紙離れ性がよく、更にプレス機構においてプレスの加圧により伸縮して湿紙から搾り出された水分を吸収し、且つ平滑な表面を有する抄紙搬送フェルトとすることができる。また、高分子弾性材の含浸割合を変更することにより、各プレス機構に最適な特性(紙離れ性、表面平滑性、搾水性、等)を抄紙搬送フェルトに持たせることができる。尚、含浸される高分子弾性材の比率を1重量%以上としたのは、高分子弾性材の比率が1重量%より少ないと高分子弾性材の効果が殆ど期待できないからであり、また、高分子弾性材の比率を10重量%以下としたのは、高分子弾性材の比率が10重量%より多いと抄紙搬送フェルトのクッション性と透水性が失われて湿紙の搾水性が低下するからである。
上記(3)の構成の抄紙搬送フェルトによれば、湿紙接触繊維層を形成する繊維が、分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなるので、湿紙接触繊維層が分割繊維からなるものであってもよいし、或いは分割繊維と非分割繊維との混紡比率を適宜変更することによって、抄紙搬送フェルトの特性を変えてもよい。ここで、混紡繊維の重量比率は、「分割繊維の重量/(分割繊維の重量+非分割繊維の重量)×100」で定義される。尚、非分割繊維とは、カーディングする際やニードリングする際においても、またニードリング工程よりも後の抄紙搬送フェルト製造工程においても、分割されない通常の短繊維である。
抄紙搬送フェルトに求められる特性である表面平滑性と搾水性とは逆相関の関係にあり、湿紙表面の平滑化性能を向上させるために抄紙搬送フェルトの密度を高めると搾水性が悪くなる傾向がある。一方、搬送される湿紙の搬送方向上流から下流に向かって配置された複数のプレス機構には、それぞれ微妙に異なる機能が要求され、上流側に配置されたプレス機構の抄紙搬送フェルトには搾水性が重視され、そして下流側に配置されたプレス機構の抄紙搬送フェルトには湿紙表面の平滑化性能が求められる。従って、非分割繊維と分割繊維との混紡比率を適宜変更することにより、それぞれのプレス機構に最適な特性(表面平滑性、搾水性、等)を抄紙搬送フェルトに持たせることが可能となる。
上記(4)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、上記(1)〜(3)のいずれかの抄紙搬送フェルトを備えるので上述したように優れた作用および効果を奏する。
上記(5)の構成の抄紙機のプレス装置のように、上記(1)〜(3)のいずれかの構成の抄紙搬送フェルトを有するプレス機構を複数備えた抄紙機のプレス装置であって、当該複数のプレス機構が、それらの抄紙搬送フェルトにより搬送される湿紙の搬送方向に沿って直列に並設されていれば、特に湿紙から効率良く搾水し、且つ紙離れよく次の抄紙搬送フェルトに渡す上で好適である。即ち、上記(5)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、水分を多く含む湿紙から多量の水を効果的に搾り出すことができ、また確実に次の抄紙搬送フェルトに湿紙を渡すことができ、高速での抄紙操業が可能となる。
特に、複数のプレス機構のうち湿紙の搬送方向の下流側に配置されたプレス機構に、比較的多量(1重量%〜10重量%の範囲内で)の高分子弾性材を含む湿紙接触繊維層を備えた抄紙搬送フェルトを配置すれば、高分子弾性材の含浸量の少ない抄紙搬送フェルトと比べて透水性についてはやや低下する場合も考えられるが、湿紙表面の平滑化機能だけでなく高い紙離れ性を有するので、高速で搬送される湿紙を確実に次工程に渡すことができ、高速での抄紙が可能となる。
上記(6)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、クローズドドロータイプのプレス装置とすることにより、湿紙が一対の抄紙搬送フェルトにより挟持された状態で搬送される。これにより、強度が弱く且つ切れ易い湿紙に力を掛けることなく、極めて高速で湿紙を搬送することができる。従って、効率の良い抄紙が可能となる。
上記(7)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、シュープレス型抄紙機のプレス装置とすることにより、加圧部(即ち、ロールとシューとにより形成されるニップ)のプレスゾーンが広く、それにより加圧時間を長くできるので、より搾水性に優れ、しかも所謂再湿現象を阻止できるので、ロールとシューとの間の加圧部の中央から出口にかけての部分における搾水性能が高い。
上記(8)の構成の抄紙機のプレス装置によれば、ロールプレス型抄紙機のプレス装置としても、上述したような本発明による優れた作用および効果の恩恵を受けることができる。
抄紙搬送フェルト100の好適な変形例として、1.9デシテックスの分割繊維15Aを30重量%含み且つ残部(即ち、70重量%)が3.3デシテックスの非分割繊維である混紡繊維を有する湿紙接触繊維層を備えたものを挙げる。この場合、湿紙接触繊維層を形成する繊維の平均太さは約2.9デシテックスとなる。尚、基層11、バット層13、親水性不織布層23、および高分子弾性材25は上述と同様なものである。湿紙接触繊維層が、細繊維に分割されない非分割繊維を含むことにより、湿紙接触繊維層の表面が密になり過ぎることがなく適度の透水性および凹凸面が確保されるので、湿紙Wから効果的に搾水すると共に良好な紙離れ性を確保できる。
基層11と、
基層11の湿紙W側の表面に形成された第1バット層13Aと、
基層11のロール(57;61)側またはシュー(55;59)側の表面に形成された第2バット層13Bと、
細繊維に分割された複数の分割繊維15Aおよび前記細繊維の間に含浸された高分子弾性材25を含み且つ、細繊維および高分子弾性材25が湿紙Wと直接接触するように第1バット層13Aの湿紙W側の表面に形成された湿紙接触繊維層15と、
第1バット層13Aと湿紙接触繊維層15との間に配置された親水性不織布層23と、
を備え、
湿紙接触繊維層15の湿紙Wと直接接触する表面では高分子弾性材25によって前記細繊維が部分的に被覆されている。
尚、分割繊維15Aと非分割繊維との混紡繊維を有する湿紙接触繊維層15とする場合は、高分子弾性材25が、細繊維(分割繊維15Aが分割したもの)の間、当該細繊維と非分割繊維との間、および非分割繊維の間に含浸される。また、そのような湿紙接触繊維層15の湿紙Wと直接接触する表面では高分子弾性材25によって細繊維および非分割繊維が部分的に被覆され、当該湿紙接触繊維層15の表面には、それら微小の細繊維および非分割繊維の突出による多少の凹凸があるので、湿紙接触繊維層と湿紙Wとの間の水膜が破られ易く或いは形成し難く、従って、抄紙搬送フェルト100からの紙離れ性がよく、湿紙Wを次工程のドライヤーカンバスに容易に渡すことができる。
300 シュープレス型抄紙機のプレス装置
11 基層
13 バット層
13A 第1バット層
13B 第2バット層
15 湿紙接触繊維層
15A 分割繊維
23 親水性不織布層
25 高分子弾性材
51 湿紙の搬送方向上流側に配置されたプレス機構
53 湿紙の搬送方向下流側に配置されたプレス機構
55 シュー
57 ロール
59 シュー
61 ロール
A 湿紙の搬送方向
W 湿紙
Claims (8)
- 抄紙機のプレスパートに設けられたプレス装置に配置され、当該プレス装置におけるプレスと共に一つのプレス機構を形成し、湿紙を挟持しながら前記プレスにより加圧され、それにより前記湿紙から搾り出された水分を吸収する一対の抄紙搬送フェルトのうち少なくとも一方の抄紙搬送フェルトであって、
基層と、
前記基層の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基層のプレス側の表面に形成された第2バット層と、
細繊維に分割された複数の分割繊維および前記細繊維の間に含浸された高分子弾性材を含み且つ、前記細繊維および前記高分子弾性材が前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
前記第1バット層と前記湿紙接触繊維層との間に配置された親水性不織布層と、を備え、
前記湿紙接触繊維層の前記湿紙と直接接触する表面では前記高分子弾性材によって前記細繊維が部分的に被覆されており、
前記分割繊維各々の分割前の繊度が1.9デシテックスであることを特徴とする抄紙搬送フェルト。 - 前記湿紙接触繊維層が、1重量%〜10重量%の前記高分子弾性材を含むことを特徴とする請求項1に記載した抄紙搬送フェルト。
- 前記湿紙接触繊維層を形成する繊維が、前記分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した抄紙搬送フェルト。
- 請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載した抄紙搬送フェルトを備えた抄紙機のプレス装置。
- 請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載した抄紙搬送フェルトを有する前記プレス機構を複数備えた抄紙機のプレス装置であって、当該複数のプレス機構が、それらの前記抄紙搬送フェルトにより搬送される湿紙の搬送方向に沿って直列に並設されていることを特徴とする抄紙機のプレス装置。
- クローズドドロータイプのプレス装置であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載した抄紙機のプレス装置。
- 請求項4〜請求項6のいずれか一つに記載した抄紙機のプレス装置がシュープレス型抄紙機のプレス装置であり、当該プレス装置の前記プレスが、前記抄紙搬送フェルトを加圧するロールおよびシューを有するシュープレスであることを特徴とする抄紙機のプレス装置。
- 請求項4〜請求項6のいずれか一つに記載した抄紙機のプレス装置がロールプレス型抄紙機のプレス装置であり、当該プレス装置の前記プレスが、前記抄紙搬送フェルトを加圧する一対のロールを有するロールプレスであることを特徴とする抄紙機のプレス装置。
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