JP4521231B2 - 光触媒陶土 - Google Patents

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本発明は、光触媒効果を発揮する光触媒陶磁物原料及び光触媒陶磁物、かかる光触媒陶磁物を作成するための光触媒陶磁物作成キット、及びかかる光触媒陶磁物の製造方法に関する。光触媒陶磁物原料は、光触媒効果を発揮する陶磁物作成用の原料として適用することができ、光触媒陶磁物は、インテリア製品等として適用することができる。特に、光触媒陶磁物作成キットは、環境問題を学校教育や一般家庭等で認識させ、啓蒙することが可能な環境教育用教材として好適に使用することができる。
近年、大気、水、土壌等の地球環境が人間社会から排出される化学物質で汚染され、人体に悪影響を及ぼすところまできている状況下、地球環境問題が注目され、大きく採り上げられている。
企業はこうした状況を無視することはできず、従来の大量生産、大量消費からの脱却を迫られている。そして、積極的に環境問題に取り組み、循環型社会への構造変革を担うことが、企業の生き残りの道となりつつある。また、最近は日本国内の研究機関、大学等でも環境問題の解決策を模索する様々な研究が行われるようになってきた。そうした時代背景のなか、光触媒は日本のオリジナルな環境浄化技術として誕生した。
光触媒反応とは、主に紫外線が光触媒(二酸化チタン(TiO2)、以下、「酸化チタン」という)へ照射されると、水酸ラジカル(OH・)や酸素ラジカル(O2・)等のラジカル種が発生し、それらの強力な還元、酸化力で汚れや臭いのもとになる有機物を分解するメカニズムである。
日本では、各企業等がいち早く光触媒効果に着目し、製品化が活発に行われてきた。具体的には、光触媒反応を応用して殺菌や消臭を行う空気清浄機や、汚れの付着しにくいトンネル内照明用のクリーン技術等の他、防汚タイルや塗料、シート材に光触媒を適用した事例があり、光触媒の応用事例はバラエティーに富んでいる。そのほかにも、酸化チタンと活性炭とをシート状に加工して複合光触媒を活用した汚染土壌の無害化技術等も可能になっている。
しかしながら、学校教育や一般家庭では、環境教育用のテキストや、テレビ、印刷物といった教育用の媒体等からの一方的な環境問題の抽象的な説明しかなされておらず、特に、児童や生徒等に対しては、環境問題に具体的興味を示させるような取り組みがなされておらず、環境問題についての意識が充分に浸透しているとはいえない。
ここで、本願の発明者は、学校教育や一般家庭において、粘土細工が度々行われることに着目し、更に、児童や生徒等に対して陶芸教室等の陶芸の体験学習が行われることが近年増えてきたことにも着目し、これらの粘土細工や陶芸を通じて、生徒等に簡単に光触媒効果を体験させることができるのではないかと考えた。即ち、陶芸材料(陶磁物原料)となる粘土や陶土に酸化チタンを混合して陶磁器や陶磁製品等の陶磁物を作成することにより、その陶磁物が光触媒効果を発揮すれば、かかる陶磁物原料や陶磁物は、学校教育や一般家庭向けに環境問題を啓蒙する教材として、児童や生徒等に直接環境問題を体験させることができると考えられる。特に、粘土細工は、従来の学校教育にも使用されており、安全・簡単・低コストで製作可能な教材であり、その中に光触媒を混練して光触媒効果を付与できれば、創造性の高い教育効果を期待することができる。しかし、一般に学校教育で使用されている紙粘土、油粘土等の粘土は、焼成を行うことなく、成形したそのままの状態で使用されるため、簡単に形状が崩れたりして、持続的に光触媒効果を発揮する点で課題が残る。
一方、粘土は、陶磁物原料として使用されるため、その中に光触媒を混練して焼成することにより陶磁物を作成することができれば、光触媒効果を有する陶磁物(光触媒陶磁物)を製作することができ、かかる創作活動を通じても、創造性の高い教育効果を期待することができる。また、製作過程の中で光触媒の効果・利用方法等についてもふれることにより、製作者に環境問題への興味を持たせることが可能になる。
ここで、陶磁物は、一般に、1100〜1200℃の温度で焼成される。一方、酸化チタンの結晶構造としては、高温で安定なルチル型、低温で安定なアナターゼ型、ブルッカイト型の3つの構造があり、光触媒活性や入手容易性等の点でアナターゼ型酸化チタンが最も多用されている。しかし、アナターゼ型酸化チタンは、約600〜700℃以上の温度まで昇温加熱すると、その結晶構造が非可逆的にルチル型に転移し、光触媒活性が大きく低下することが知られている。よって、単に、従来の粘土や陶土等の陶磁物材料にアナターゼ型酸化チタンを混合して焼成すると、焼成後の陶磁物に充分な光触媒効果を発揮させることができないと考えられる。また、通常の陶磁物の焼成には専用の焼成窯が必要となり、その設備が高コストとなり、かつ、陶磁物原料の成形から焼成に至る各種条件も非常に複雑となるため、児童や生徒等、専門家以外の者にとって現実的でない。
そこで、本願の発明者は、学校や一般家庭等でも簡単に用意でき、安全、かつ、汎用的に使用できる家庭用オーブン等の焼成装置を使用して焼成可能な陶磁物原料について模索し、一般に「オーブン粘土」や「樹脂粘土」或いは「ポリマー粘土」と呼ばれる低温焼成可能な粘土を発見した。なお、本出願書類中、「低温焼成」とは、家庭用オーブン等による約200℃未満の温度での焼成が可能な粘土または陶磁物原料のことをいう。かかる低温焼成粘土に関する技術として、例えば、特許文献1、特許文献2または特許文献3に記載の技術がある。
特公昭40−20181 特開平8−337463 特開2002−34343
特許文献1に開示された技術は、粘土類等及びポリエチレン樹脂粉末を、該樹脂の含有分が10〜60重量%であるように混和して混和物を得、この混和物を水の存在下において練り合わせて成形原料混合物を作成し、これから所要の成形物を成形して、これを130〜250℃に加熱し融結固化せしめることにより、成形物を製造するものである。この技術によれば、焼成温度が低いため、型崩れや色むらのない成形製品が得られるとされている。しかし、特許文献1は、光触媒を用いて脱臭・抗菌等の光触媒効果を付加した成形物については何ら言及されていない。また、特許文献3に開示された技術は、陶磁物を焼成に比べてはるかに低温で固化でき、かつ、割れにくく、かつ、骨材として無機物を再利用のため大量に混入できる不焼成複合成形体及びその製造法を提供しようとする。このせい携帯は、無機骨材粒子、粘土質材料の粒子、熱溶融性樹脂からなり、該熱溶融性樹脂が、無機骨材粒子及び該粘土の粒子同士を結合してなる。また、前記粘土質材料の粒子が10乃至50wt%、前記熱溶融性樹脂が5乃至30wt%含有されている。そして、無機骨材粒子、粘土質材料、熱溶融性樹脂の粒子を含水混合し、所定の形に成形して成形体となし、該成形体を乾燥し、次いで該熱溶融性樹脂の融点以上で且つ該熱溶融性樹脂の熱分解温度以下の温度で加熱し、該熱溶融性樹脂を溶融させて溶融した該熱溶融性樹脂を該無機骨材粉末及び該粘土質材料の粒子の間隙に浸入させ、次いで常温まで冷却し該成形体を固化させることにより、複合成形体を製造する。しかし、特許文献3は、特許文献1と同様、光触媒を用いて脱臭・抗菌等の光触媒効果を付加した成形物については何ら言及されていない。
また、特許文献2には、粘土、熱可塑性樹脂粉末、澱粉及び水を混練させて窯業原料混合物を得た後、成型し、乾燥させ、焼成する崩壊性窯業成型物の製造方法が開示されている。この製造方法で製造された崩壊性窯業成型物は、澱粉を含有するため、自然界に廃棄しても澱粉が微生物によって分解され、窯業製品を構成する粘土、熱可塑性樹脂粉末は、固形の状態から砂状に崩壊する。また、特許文献2は、上記組成の原料において、澱粉に加えて更に微粒子の酸化チタンを0.5〜5重量部加えて混練することを開示している。しかし、この場合の酸化チタンは、成形品の崩壊速度を増加するためのものであり、酸化チタンにより光触媒反応を利用して、セルフクリーニング(防汚、防曇等)、空気浄化、水質浄化、抗菌・防カビ等を行うためのものではない。また、この程度の配合割合(0.5〜5重量部)では、原料を混練して成形したときに、その成形品の表面から露出する酸化チタンの微粒子の数(量)が皆無或いは希少となる。即ち、この程度の配合量では、成形品の表面から酸化チタンの微粒子を、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び露出表面積で略均一に点在して露出させることはできない。よって、酸化チタンが外部からの光(主に紫外線)により光活性乃至光触媒性能を付与されることに鑑みると、特許文献に記載の技術は、成形品表面において十分な光触媒反応を生じることにより、成形品自体を光触媒製品として活用することを意図したものでは全くなく、かかる示唆を含むものでもない。
そこで、本発明は、安全・簡単・低コストで製作可能な光触媒陶磁物原料及び光触媒陶磁物、かかる光触媒陶磁物を作成するための光触媒陶磁物作成キット、及びかかる光触媒陶磁物の製造方法の提供を課題とする。
その結果、環境問題の重要性を学校教育や一般家庭等で認識させ、啓蒙することが可能であり、環境教育教材用窯業成形部材(光触媒陶土)に好適に使用することができる。
請求項1に係る光触媒陶磁物原料は、アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、前記陶磁物原料の主材は、石灰からなることを特徴とする光触媒陶磁物原料。
請求項2に係る光触媒陶磁物原料は、アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、前記陶磁物原料の主材は、廃棄石灰からなる。
請求項3に係る光触媒陶磁物原料は、アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、
前記陶磁物原料の主材は、粘土質及び石灰質を含有する廃棄石灰からなる。
請求項4に係る光触媒陶磁物原料は、アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、前記陶磁物原料の主材は、粘土質を約20重量%、石灰質を約80%含有する廃棄石灰からなる。
請求項5に係る光触媒陶磁物原料は、アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、前記陶磁物原料の主材は、約300〜400℃の範囲の温度で焼成可能な廃棄石灰からなる。
請求項6に係る光触媒陶磁物原料は、アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、前記陶磁物原料の主材は、粘土質を約20重量%、石灰質を約80%含有すると共に、約300〜400℃の範囲の温度で焼成可能な廃棄石灰からなる。
請求項7に係る光触媒陶磁物は、請求項1乃至6の構成の光触媒陶磁物用原料を、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成してなる。
本発明に係る光触媒陶磁物作成キットは、アナターゼ型酸化チタンと、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料と、前記アナターゼ型酸化チタンと前記陶磁物原料とを別体として収容する容器とを備える。
本発明に係る光触媒陶磁物原料は、粘土及び/または陶土と、熱可塑性合成樹脂粉末とを混合してなる低温焼成陶土と、前記低温焼成陶土に対して、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度で表面に露出するよう、所定割合で混合されたアナターゼ型酸化チタン粉末とを含有する。
本発明に係る光触媒陶磁物原料は、粘土及び/または陶土からなる主材及び熱可塑性合成樹脂粉末からなる有機結合剤を混合してなる低温焼成陶土に対して、重量比で約5〜25%の割合となるようアナターゼ型酸化チタン粉末を略均一に混合して混練し、前記アナターゼ型酸化チタン粉末が、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面から露出するようにした。
本発明に係る光触媒陶磁物は、上記の構成の光触媒陶磁物原料を、焼成温度約160〜200℃の範囲で約30〜90分間焼成してなる。
本発明に係る光触媒陶磁物原料は、粘土及び/または陶土からなる主材及び熱可塑性合成樹脂粉末からなる有機結合剤を混合してなる低温焼成陶土に対して、重量比で約10〜15%の割合となるようアナターゼ型酸化チタン粉末を略均一に混合して混練し、前記アナターゼ型酸化チタン粉末が、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面から露出するようにすると共に、焼成温度約160〜190℃の範囲で約30〜90分間焼成したときの粒子間結合力を所定値以上に維持し、所定の耐崩壊強度を維持するようにした。
本発明に係る光触媒陶磁物は、上記の構成の光触媒陶磁物原料を、焼成温度約160〜190℃の範囲で約30〜90分間焼成してなる。
本発明に係る光触媒陶磁物原料は、粘土及び/または陶土からなる主材及び熱可塑性合成樹脂粉末からなる有機結合剤を混合してなる低温焼成陶土に対して、重量比で約15〜25%の割合となるようアナターゼ型酸化チタン粉末を略均一に混合して混練し、前記アナターゼ型酸化チタンが、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面から露出するようにすると共に、焼成温度約200℃で約30分間焼成したときの粒子間結合力を所定値以上に維持し、所定の耐崩壊強度を維持するようにした。
本発明に係る光触媒陶磁物は、上記の構成の光触媒陶磁物原料を、焼成温度約200℃で約30分間焼成してなる。
本発明に係る光触媒陶磁物原料は、上記の構成において、直径が約1.5cm以内の球形となるよう成形した。
本発明に係る光触媒陶磁物は、上記の構成において、直径が約1.5cm以内の球形となるよう成形及び焼成した。
本発明に係る光触媒陶磁物は、上記の構成の光触媒陶磁物の外表面に、アナターゼ型酸化チタン粉末を所定の配合割合で混合したアクリル樹脂からなるコーティング剤を塗布し、約110℃の温度で約30分間加熱することによりコーティング層を硬化形成した。
本発明に係る光触媒陶磁物作成キットは、収容容器と、一定重量の塊状となるよう、粘土及び/または陶土と熱可塑性合成樹脂粉末とを混合してなり、前記収容容器の第1の空間領域に収容された低温焼成陶土と、前記低温焼成陶土の重量に対して、重量比で約5〜25%の範囲の一定重量の集合体状となるよう、前記容器の第1の空間領域と異なる第2の空間領域に略密閉状態で収容したアナターゼ型酸化チタン粉末とを備える。
本発明に係る光触媒陶磁物作成キットは、開閉自在な蓋を有すると共に、少なくとも第1の収容領域と、前記第1の収容領域に隣接する第2の収容領域とを内部に設けた収容容器と、一定重量の塊状となるよう略気密状態で包装された低温焼成陶土と、前記低温焼成陶土の重量に対して、重量比で約5〜25%の範囲の一定重量の集合体状となるよう開封自在な小容器に密閉して収容されたアナターゼ型酸化チタン粉末と、前記低温焼成陶土の全量と前記アナターゼ型酸化チタン粉末の全量とを混合して混練し、約160〜200℃の範囲内の所定焼成温度で、約30〜90分間の範囲内の所定時間焼成するように指示した指示書とを備え、前記収容容器の前記第1の収容領域に前記包装された低温焼成陶土を収容すると共に、前記収容容器の第2の収容領域に前記アナターゼ型酸化チタン粉末を収容した小容器を収容し、かつ、前記指示書を内部に収容した。
本発明に係る光触媒陶磁物作成キットは、開閉自在な蓋を有すると共に、少なくとも第1の収容領域と、前記第1の収容領域に隣接する第2の収容領域とを内部に設けた収容容器と、一定重量の略直方体状の塊状となるよう略気密状態で包装されると共に、外表面の長さ方向に一定間隔で目盛を付設し、各目盛に重量または体積を段階的に表す表示を付してなる低温焼成陶土と、前記低温焼成陶土の重量に対して、重量比で約5〜25%の範囲の一定重量の集合体状となるよう開封自在な瓶状容器に密閉して収容されると共に、前記低温焼成陶土の目盛及び表示と関連付けて、前記瓶状容器の高さ方向に一定間隔で目盛を付設し、各目盛に重量または体積を段階的に表す表示を付してなる容器入りアナターゼ型酸化チタン粉末と、前記低温焼成陶土と前記アナターゼ型酸化チタン粉末とが所定の配合割合となるような前記低温焼成陶土の目盛及び/または表示と前記瓶状容器の目盛及び/または表示とを指示すると共に、前記低温焼成陶土と前記アナターゼ型酸化チタン粉末とを前記配合割合で混合して混練し、約160〜200℃の範囲内の所定焼成温度で、約30〜90分間の範囲内の所定時間焼成するように指示した指示書とを備え、前記収容容器の前記第1の収容領域に前記包装された低温焼成陶土を収容すると共に、前記収容容器の第2の収容領域に前記容器入りアナターゼ型酸化チタン粉末を収容し、かつ、前記指示書を内部に収容した。
本発明に係る光触媒陶磁物の製造方法は、粘土及び/または陶土からなる主材及び熱可塑性合成樹脂粉末からなる有機結合剤を混合してなる低温焼成陶土に対して、重量比で約5〜25%の割合となるようアナターゼ型酸化チタン粉末を略均一に混合して混練物とし、前記アナターゼ型酸化チタン粉末が、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で前記混練物の表面から露出するようにする混練工程と、前記混練物を所定形状に成形して成形体を形成する成形工程と、前記成形体を乾燥して乾燥成形体を形成する乾燥工程と、前記乾燥成形体を焼成温度約160〜200℃の範囲で約30〜90分間焼成する焼成工程とを備える。
本発明に係る光触媒陶磁物原料は、ポリ塩化ビニル粉末と可塑剤とを混合してなる低温焼成陶土と、前記低温焼成陶土に対して、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面に露出するよう、所定割合で混合されたアナターゼ型酸化チタン粉末とを含有する。
本発明に係る光触媒陶磁物の製造方法は、ポリ塩化ビニル粉末と可塑剤とを混合してなる低温焼成陶土に対して、重量比で約5〜25%の割合となるようアナターゼ型酸化チタン粉末を略均一に混合して混練物とし、前記アナターゼ型酸化チタン粉末が、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で前記混練物の表面から露出するようにする混練工程と、前記混練物を所定形状に成形して成形体を形成する成形工程と、前記乾燥成形体を焼成温度約120〜130℃の範囲で約20〜30分間焼成する焼成工程とを備える。
本発明によれば、安全・簡単・低コストで製作可能な光触媒陶磁物原料及び光触媒陶磁物、かかる光触媒陶磁物を作成するための光触媒陶磁物作成キット、及びかかる光触媒陶磁物の製造方法を提供することができる。その結果、本発明は、環境問題の重要性を学校教育や一般家庭等で認識させ、啓蒙することが可能であり、環境教育教材用窯業成形部材に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)を説明する。なお、各実施の形態を通じ、同一の部材、要素または部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
実施の形態1
実施の形態1に係る光触媒陶磁物原料は、アナターゼ型酸化チタン(粉末または溶液)を陶磁物原料に混合してなる。また、前記陶磁物原料は、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する。また、実施の形態1に係る光触媒陶磁物は、光触媒陶磁物用原料を、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成してなる。ここで、陶磁物原料としては、酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する限りにおいて、任意のものを使用することができる。例えば、かかる陶磁物原料としては、低温焼成陶土、廃棄石灰等がある。低温焼成陶土については後述する。また、廃棄石灰とは、粘土質を約20重量%、石灰質を約80%含有し、約300〜400℃の範囲の所定の温度で焼成可能な無機質材料である。かかる廃棄石灰は、石灰業者から大量に廃棄され、現在は使用用途のないものである。よって、かかる廃棄石灰を陶磁物原料として使用することにより、資源を有効利用し、廃棄物処理の問題解決の一案を提供することができる。一方、廃棄石灰は、約400℃以上の温度で水中崩壊する。また、廃棄石灰は、約500℃で石灰質が粉体化し、反応熱を発生するため、廃棄石灰を主材とする陶磁物原料を含有する光触媒陶磁物材料を使用して実施の形態1の光触媒陶磁物を焼成製造する場合、その焼成温度は、約300〜400℃の範囲の所定の温度とすることが好ましい。
実施の形態1に係る光触媒陶磁物原料は、具体的には、前記陶磁物原料として低温焼成陶土を使用している。なお、低温焼成陶土とは、家庭用オーブン等による約200℃未満の温度(例えば、100℃〜200℃の範囲の任意の温度)での焼成が可能な粘土状材料または陶磁物原料のことをいう。低温焼成陶土としては、上記特許文献1乃至3に開示されているものを使用することができる。また、低温焼成陶土としては、瀬戸製土株式会社製の商品名「オーブン陶土」を使用することもできる。これらの低温焼成陶土は、いずれも、主材としての所定含水率の粘土及び/または陶土と、有機結合剤としての熱可塑性合成樹脂粉末とを加水して若しくはそのままで混合または混練してなる。低温焼成陶土は、例えば、長石40%、蛙目粘土40%、ポリエチレン樹脂粉末20%の組成とすることができる。或いは、低温焼成陶土は、例えば、陶石40%、粘土40%、ポリエチレン樹脂粉末20%の組成とすることができる。なお、低温焼成陶土は、必要に応じて、その他の成分として、でんぷん質、防腐剤、添加剤、着色剤等を添加することもできる。
前記光触媒としての酸化チタンとしては、通常の酸化チタンの他、光触媒アパタイト(二酸化チタンとアパタイトとのハイブリッド触媒)等の付加機能を有するものを使用することもできる。光触媒アパタイトは、合成樹脂に混合しても光触媒効果によるプラスチックの劣化が進まないため、光触媒陶器物の内部崩壊または表面部崩壊を防止する点でより好ましい。また、前記粘土(主材)としては、必要とする光触媒活性等の物性等に応じて、加水により十分な可塑性を得ることのできる粘土を使用することが好ましく、特に、水は蛙目粘土、水は木節粘土等を使用することができる。更に、熱可塑性樹脂粉末としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の各種熱可塑性樹脂粉末を使用することができる。これら粉末の概念には粒状物も含まれる。好ましくは、加熱に対する安定牲が高いポリプロピレン樹脂を使用する。また、添加材としては、カオリン、石粉、炭酸石灰、木粉等を使用することができる。
実施の形態1に係る光触媒陶磁物原料は、低温焼成陶土として、上記のもの以外のものを使用することもできる。例えば、実施の形態1に係る光触媒陶磁物原料は、低温焼成陶土として、いわゆる樹脂粘土を使用することもできる。この樹脂粘土は、主に樹脂組成物からなるものであり、ポリマー粘土またはオーブン粘土とも呼ばれる。具体的には、樹脂粘土は、ポリ塩化ビニル粉末と可塑剤とを混合してなるものである。また、樹脂粘土は、顔料等の着色剤、充填剤を配合することもできる。かかる樹脂粘土としては、ステッドラー日本株式会社製の商品名「フィモソフト」等を好適に使用することができる。
一方、実施の形態1に係る光触媒陶磁物原料は、低温焼成陶土に対して、全体として実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面に略均一に点在して露出するよう、所定割合(重量比)でアナターゼ型酸化チタン粉末を混合した点に特徴がある。また、実施の形態1に係る光触媒陶磁物は、かかる組成及び配合比となるよう調製した光触媒陶磁物原料を、所望の形状に成形した後、自然乾燥等による所定時間の乾燥後、所定の焼成温度範囲で所定時間焼成することにより作成される。なお、実施の形態1に係る光触媒陶磁物原料は、低温焼成陶土に対して、全体として実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面に略均一に点在して露出するよう、所定割合(重量比)でアナターゼ型酸化チタン粉末を混合する限りにおいて、低温焼成陶土とアナターゼ型酸化チタンとの配合比(割合)を任意のものとすることができる。また、実施の形態1に係る光触媒陶磁物は、十分な硬化を行い、必要な素材結合強度を達成できる限りにおいて、任意の焼成温度範囲及び焼成時間で焼成することができる。
低温焼成陶土とアナターゼ型酸化チタンとの配合比は、以下のとおりとすることができる。例えば、低温焼成陶土に対して、重量比で約5〜25%の割合となるようアナターゼ型酸化チタン粉末を略均一に混合して混練し、前記アナターゼ型酸化チタン粉末が、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面から露出するようにする。この場合、実施の形態1に係る光触媒陶磁物は、上記組成及び配合比の光触媒陶磁物原料を、所定時間の自然乾燥等による乾燥後、焼成温度約160〜200℃の範囲で約30〜90分間焼成することにより製作することが好ましい。ここで、低温焼成陶土に対するアナターゼ型酸化チタン粉末の配合比が、重量比で約5%未満となると、混合乃至混練後に、アナターゼ型酸化チタン粉末が、全体として実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面に略均一に点在して露出しない可能性がある。一方、低温焼成陶土に対するアナターゼ型酸化チタン粉末の配合比が、重量比で約25%を超えると、光触媒陶磁物原料を上記温度範囲で焼成して光触媒陶器物を作成したときに、その光触媒陶器物の素材結合強度が充分でなく、例えば、水中に浸漬したりして内部に水分を多量に吸収すると、光触媒陶器物が崩壊する可能性がある。また、焼成温度が約160℃未満では、光触媒陶磁物原料の焼成及び硬化が不十分となる可能性がある。一方、焼成温度が約200℃を超えると、光触媒陶磁物原料の表面に焦げが生じ、見栄え等を損なう可能性がある。更に、かかる焼成温度範囲の場合、焼成時間を約90分を超える時間とすると、光触媒陶磁物原料の表面に焦げが生じ、見栄え等を損なう可能性がある一方、約30分を下回る時間とすると、光触媒陶磁物の焼成及び硬化が十分でなく、強度が低下する可能性がある。
好ましくは、低温焼成陶土に対して、重量比で約10〜15%の割合となるようアナターゼ型酸化チタン粉末を略均一に混合して混練し、前記アナターゼ型酸化チタン粉末が、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面から露出するようにすると共に、焼成温度約160〜190℃の範囲で約30〜90分間焼成したときの粒子間結合力を所定値以上に維持し、所定の耐崩壊強度を維持するようにする。この場合、実施の形態1に係る光触媒陶磁物は、上記組成及び配合比の光触媒陶磁物原料を、所定時間の自然乾燥等による乾燥後、焼成温度約160〜190℃の範囲で約30〜90分間焼成することにより製作することが好ましい。ここで、低温焼成陶土に対するアナターゼ型酸化チタン粉末の配合比の下限値を、重量比で約10%とすると、混合乃至混練後に、アナターゼ型酸化チタン粉末が、全体として充分な光触媒反応を生じる程度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面に略均一に点在して露出する。一方、低温焼成陶土に対するアナターゼ型酸化チタン粉末の配合比が、重量比で約15%を超えると、光触媒陶磁物原料を上記温度範囲で焼成して光触媒陶器物を作成したときに、その光触媒陶器物の素材結合強度が充分でなく、例えば、水中に浸漬したりして内部に水分を多量に吸収すると、光触媒陶器物が崩壊する可能性がある。また、焼成温度が約160℃未満では、光触媒陶磁物原料の焼成及び硬化が不十分となる可能性がある。一方、上記組成及び配合比では、焼成温度の上限値を約190℃とすれば十分であり、これ以上の焼成温度とすると光触媒陶磁物原料の表面に焦げが生じ、見栄え等を損なう可能性がある。更に、かかる焼成温度範囲の場合、焼成時間を約90分を超える時間とすると、光触媒陶磁物原料の表面に焦げが生じ、見栄え等を損なう可能性がある一方、約30分を下回る時間とすると、光触媒陶磁物の焼成及び硬化が十分でなく、強度が低下する可能性がある。
更に好ましくは、低温焼成陶土に対して、重量比で約15〜25%の割合となるようアナターゼ型酸化チタン粉末を略均一に混合して混練し、前記アナターゼ型酸化チタンが、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面から露出するようにすると共に、焼成温度約200℃で約30分間焼成したときの粒子間結合力を所定値以上に維持し、所定の耐崩壊強度を維持するようにする。この場合、実施の形態1に係る光触媒陶磁物は、上記組成及び配合比の光触媒陶磁物原料を、焼成温度約200℃で約30分間焼成することにより製作することが好ましい。ここで、上記焼成温度範囲において、低温焼成陶土に対するアナターゼ型酸化チタン粉末の配合比の下限値を、重量比で約15%とすると、混合乃至混練後に、アナターゼ型酸化チタン粉末が、全体として極めて充分な光触媒反応を生じる程度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面に略均一に点在して露出する。一方、低温焼成陶土に対するアナターゼ型酸化チタン粉末の配合比が、重量比で約25%を超えると、光触媒陶磁物原料を上記温度範囲で焼成して光触媒陶器物を作成したときに、その光触媒陶器物の素材結合強度が充分でなく、例えば、水中に浸漬したりして内部に水分を多量に吸収すると、光触媒陶器物が崩壊する可能性がある。上記組成及び配合比では、焼成温度を約200℃とすることで、光触媒陶器物の素材結合強度を一層向上することができる一方、これ以上の焼成温度とすると光触媒陶磁物原料の表面に焦げが生じ、見栄え等を損なう可能性がある。また、かかる焼成温度の場合、焼成時間を約30分を大きく超える時間とすると、光触媒陶磁物原料の表面に焦げが生じ、見栄え等を損なう可能性がある一方、約30分を大きく下回る時間とすると、光触媒陶磁物の焼成及び硬化が十分でなく、強度が低下する可能性がある。
図1は本発明の実施の形態1に係る光触媒陶磁物の一例を示す斜視図である。
実施の形態1に係る光触媒陶磁物原料は、図1に示すように、製作者である児童や生徒等が、任意の所望形状に成形して焼成することにより、所望形状の光触媒陶磁物を作成することができる。図1は、光触媒陶磁物原料を鮫等の魚状に成形し、鮫等の魚状の形状に作成した光触媒陶磁物1を示す。一方、光触媒陶磁物原料は、これ以外の任意の形状に自由に成形して小生することができ、例えば、球形状乃至ボール状に成形し、焼成後の光触媒陶磁物を同様の球形状乃至ボール状とすることもできる。この場合、光触媒陶磁物原料は、直径が約1.5cm以内の球形となるよう成形することが好ましい。この場合、焼成後の光触媒陶磁物の直径も、約1.5cm以内(通常は焼成時の収縮により元の光触媒陶磁物より若干小さい直径)となる。こうすると、上記焼成条件で光触媒陶磁物原料を焼成して光触媒陶磁物を形成したときに、光触媒陶磁物の強度を更に向上することができ、例えば、水中に浸漬したときの崩壊強度を更に向上することができる。或いは、最終的に、光触媒陶器物の直径が焼く1.5cm以内の球形となるよう成形すれば、上記効果を達成することができる。よって、この場合、光触媒陶磁物原料の直径は、約1.5cmより若干大きい直径とすることができる。
実施の形態1に係る光触媒陶磁物は、更に、外表面に、アナターゼ型酸化チタン粉末を所定の配合割合で混合したアクリル樹脂からなるコーティング剤を、スプレーや刷毛塗り等により所定膜厚(例えば、約3μmの膜厚)で塗布し、所定温度(例えば、約110℃)の温度で所定時間(例えば、約30分間)加熱することにより、コーティング層を硬化形成することもできる。この場合、光触媒陶磁物に耐水性を付与することができ、例えば、水中に浸漬したときの崩壊を効果的に防止することができる。また、かかるコーティング付き光触媒陶磁物は、最も強く外光を吸収する部分である表面層としてのコーティング層にアナターゼ型酸化チタン粉末が所定密度で点在するため、一層効果的に光触媒反応を生じることができる。なお、コーティング剤へのアナターゼ型酸化チタン粉末の配合割合は、その混合性や点在密度との関係で、例えば、重量比で約5〜25%の範囲とすることができる。しかし、コーティング剤へのアナターゼ型酸化チタン粉末の配合割合、加熱温度、加熱時間等の諸条件は、コーティング層の硬化及び光触媒陶磁物表面への密着性を確保できる限りにおいて、任意のものとすることができる。
製造方法
実施の形態1に係る光触媒陶磁物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、混練工程で、粘土及び/または陶土からなる主材及び熱可塑性合成樹脂粉末からなる有機結合剤を混合してなる低温焼成陶土に対して、重量比で約5〜25%の割合となるようアナターゼ型酸化チタン粉末を略均一に混合して混練物とし、前記アナターゼ型酸化チタン粉末が、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で前記混練物の表面から露出するようにする。このとき、低温焼成陶土の表面に、指等で数箇所に凹部を形成し、アナターゼ型酸化チタン粉末を各凹部に順点すると共に加水して水溶させ、水溶したアナターゼ型酸化チタン粉末が低温焼成陶土の全体に均一に混合されるまで、手等で押しながら混練することが好ましい。この混練物は略球状としてもよい。次に、成形工程で、前記混練物を所定形状(例えば球状)に成形して成形体を形成する。次に、乾燥工程で、前記成形体を所定時間(大きさにより異なるが数日〜1週間程度)乾燥して乾燥成形体を形成する。このとき、陰干しし、全体として白っぽくなり、表面が粉っぽくなるまで十分乾燥させる。そして、焼成工程で、前記乾燥成形体を焼成温度約160〜200℃の範囲で約30〜60分間または約30〜90分間焼成する。
一方、前記樹脂粘土からなる低温焼成陶土を使用する場合も上記と同様とすることができる。まず、混練工程で、ポリ塩化ビニル粉末と可塑剤とを混合してなる樹脂粘土からなる低温焼成陶土に対して、重量比で約5〜25%の割合となるようアナターゼ型酸化チタン粉末を略均一に混合して混練物とし、前記アナターゼ型酸化チタン粉末が、実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で前記混練物の表面から露出するようにする。次に、成形工程で、前記混練物を所定形状に成形して成形体を形成する。そして、上記のような乾燥工程を経ることなく、焼成工程で、前記乾燥成形体を焼成温度約120〜130℃の範囲で約20〜30分間焼成する。
実施の形態2
実施の形態2に係る光触媒陶磁物作成キットは、アナターゼ型酸化チタンと、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料とを構成要素として備える。かかるアナターゼ型チタン及び陶磁物原料としては、実施の形態1と同様のものを使用することができる。また、光触媒陶磁物作成キットは、前記アナターゼ型酸化チタンと前記陶磁物原料とを別体として収容するプラスチック製等の収容容器を備える。詳細には、陶磁物原料は、実施の形態1で述べたような低温焼成陶土とすることができる。また、この低温焼成陶土は、一定重量の塊状となるよう、前記粘土及び/または陶土と前記熱可塑性合成樹脂粉末とを混合してなるものであり、前記塊状のまま包装して或いは樹脂フィルム製等の個別容器に収容して、前記収容容器の第1の空間領域に収容される。一方、アナターゼ型酸化チタン粉末は、前記低温焼成陶土の重量に対して、重量比で約5〜25%の範囲の一定重量の集合体状となるよう、前記収容容器の第1の空間領域と異なる第2の空間領域に略密閉状態で収容される。
このように、前記低温焼成陶土を一定重量(例えば400g)の塊状として収容容器に収容すると共に、前記アナターゼ型酸化チタン粉末を前記低温焼成陶土の一定重量に対して所定重量比の5〜25%となるような一定重量(例えば、20〜100g)で瓶状容器等に密閉自在に収容して収容容器に収容することで、前記アナターゼ型酸化チタン粉末を前記低温焼成陶土に対して混合したときに前記アナターゼ型酸化チタン粉末が実質的に光触媒反応を生じる最低限度以上の点在密度及び合計露出表面積で表面から露出すると共に、焼成時の崩壊強度を充分に維持するようにすることができる。なお、収容容器は、かかる塊状の低温焼成陶土及び集合体状のアナターゼ型酸化チタン粉末を別個の空間領域に収容できる限りにおいて、任意の構成とすることができる。例えば、収容容器は、開閉自在な蓋を有する矩形箱状のものとし、その内部の空間を、仕切板等により、前記第1の空間領域及び第2の空間領域に区画することもできる。
前記収容容器は、上記のように、例えば、開閉自在な蓋を有すると共に、少なくとも第1の収容領域(第1の空間領域)と、前記第1の収容領域に隣接する第2の収容領域(第2の空間領域)とを仕切板等により略区画状態で内部に設けたものとすることが好ましい。また、低温焼成陶土は、上記のような一定重量の塊状となるよう樹脂製包装フィルムや樹脂製包装袋等により略気密状態で包装することが好ましい。更に、アナターゼ型酸化チタン粉末は、前記低温焼成陶土の重量に対して、重量比で約5〜25%の範囲の一定重量の集合体状となるよう開封自在な小容器に密閉して収容することが好ましい。更にまた、実施の形態2に係る光触媒陶磁物作成キットは、前記収容容器の内部に所定の指示書(説明書乃至マニュアル)を収容することが好ましい。この指示書は、前記低温焼成陶土の全量と前記アナターゼ型酸化チタン粉末の全量とを混合して混練し、所定時間の自然乾燥を経て、約160〜200℃の範囲内の所定焼成温度で、約30〜90分間の範囲内の所定時間焼成するように指示したものとすることができる。即ち、実施の形態2に係る光触媒陶磁物作成キットは、収容容器の第1の収容領域に包装された低温焼成陶土を収容すると共に、収容容器の第2の収容領域にアナターゼ型酸化チタン粉末を収容した小容器を収容し、かつ、指示書を内部に収容するよう構成することができる。こうすると、児童や生徒等の使用者乃至製作者は、収容容器内の低温焼成陶土の全量にアナターゼ型酸化チタン粉末の全量を混合するだけで、上記好適範囲の配合比を有する光触媒陶磁物原料を調製することができる。この際、指示書により使用者乃至製作者の注意を促し、使用者乃至製作者が、収容容器内の低温焼成陶土の一部の量にアナターゼ型酸化チタン粉末の全量を混合するといった、誤った調製を行うことを効果的に防止することができる。
図2は本発明の実施の形態2に係る光触媒陶磁物作成キットの構成要素の一例を示し、(a)は包装済低温焼成陶土を示す斜視図、(b)は容器入りアナターゼ型酸化チタン粉末を示す正面図である。
図2(a)に示すように、実施の形態2に係る光触媒陶磁物作成キットの低温焼成陶土10は、樹脂製の包装フィルム11により、一定重量の略直方体状の塊状となるよう略気密状態で包装されている。低温焼成陶土10は、図2の例では、400gの重量で略直方体状の塊状となるよう包装フィルム11により略気密状態で包装されている。また、低温焼成陶土10は、包装フィルム11または自身の外表面の長さ方向に一定間隔で目盛S1,S2,S3を付設し、各目盛S1,S2,S3に対応して、低温焼成陶土10の重量を段階的に表す表示「100g」、「200g」、「300g」を付している。なお、重量の代わりに、低温焼成陶土10の体積を段階的に表す表示を、前記目盛S1,S2,S3に対応して、低温焼成陶土10または包装フィルム11の外表面の長さ方向に一定間隔で付してもよい。一方、図2(b)に示すように、アナターゼ型酸化チタン粉末20は、低温焼成陶土10の重量に対して、重量比で約5〜25%の範囲の一定重量の集合体状となるよう、開封自在な瓶状容器25,26,27に密閉して収容されている。瓶状容器は、略円筒状の容器本体25と、容器本体25の上端に一体形成された開口部26と、開口部26に密閉状に着脱自在に取付けられるキャップ27とからなる。また、瓶状容器の容器本体25には、低温焼成陶土10の目盛S1,S2,S3及び表示「100g」、「200g」、「300g」と関連付けて、瓶状容器の容器本体25の外表面の高さ方向に一定間隔で目盛S10,S11,S12,S13が付設されている。更に、瓶状容器の容器本体25の外表面には、各目盛S10,S11,S12,S13に対応して、アナターゼ型酸化チタン粉末20の重量を段階的に表す表示「100g」、「75g」、「50g」、「25g」が付されている。なお、重量の代わりに、アナターゼ型酸化チタン粉末20の体積を段階的に表す表示を、前記目盛S10,S11,S12,S13に対応して、瓶状容器の容器本体25の高さ方向に一定間隔で付してもよい。
前記低温焼成陶土10の目盛S1,S2,S3及び表示とアナターゼ型酸化チタン粉末20の瓶状容器の容器本体25の目盛S10,S11,S12,S13及び表示との関連付けは、例えば、低温焼成陶土10とアナターゼ型酸化チタン粉末20との配合割合が、実施の形態1で述べたような配合割合となるような関連付けとする。即ち、容器本体25の最上位の目盛S10は、アナターゼ型酸化チタン粉末20の全量である100gを示す一方、低温焼成陶土10の外表面に目盛及び表示はないが、低音焼成陶土10の全量である400gに関連付けられている。これにより、低温焼成陶土10の全量である400gと、容器本体25の最上位の目盛S10に対応するアナターゼ型酸化チタン粉末20の全量である100gとを単純に混合することにより、低温焼成陶土10に対するアナターゼ型酸化チタン20の配合割合を、重量比で25%とすることができる。同様に、容器本体25の次の目盛S11は、アナターゼ型酸化チタン粉末20の全量の4分の3の量である75gを示す一方、低温焼成陶土10の全量の4分の3である300gを示す目盛S1に関連付けられている。これにより、アナターゼ型酸化チタン粉末20を容器本体25から目盛S11まで取り出すと、25gのアナターゼ型酸化チタン粉末20を取り出すことができる一方、低温焼成陶土10を目盛S1の位置で幅方向に切断すると、100gの量の低温焼成陶土10を得ることができる。そして、かかるアナターゼ型酸化チタン粉末20の25gと、低温焼成陶土10の100gとを単純に混合することにより、低温焼成陶土10に対するアナターゼ型酸化チタン20の配合割合を、やはり、重量比で25%とすることができる。低温焼成陶土10の目盛S2,S3と容器本体24の目盛S12,S13との関連付けも同様の意味である。
或いは、アナターゼ型酸化チタン粉末20を容器本体25から目盛S11まで取り出すと、25gのアナターゼ型酸化チタン粉末20を取り出すことができる一方、低温焼成陶土10を目盛S2の位置で幅方向に切断すると、200gの量の低温焼成陶土10を得ることができる。そして、かかるアナターゼ型酸化チタン粉末20の25gと、低温焼成陶土10の200gとを単純に混合することにより、低温焼成陶土10に対するアナターゼ型酸化チタン20の配合割合を、重量比で12.5%とすることができる。また、容器本体25中の残りのアナターゼ型酸化チタン粉末20を、容器本体25から目盛S13まで取り出すと、50gのアナターゼ型酸化チタン粉末20を取り出すことができる。そして、この50gのアナターゼ型酸化チタン粉末20を、残り200gの量の低温焼成陶土10に対して混合すると、低温焼成陶土10に対するアナターゼ型酸化チタン20の配合割合を、重量比で25%とすることができる。このようにして、2種類の配合割合の光触媒陶磁物原料を簡単に調製することができ、光触媒効果等の比較試験を簡単に行うことができる。
この場合、前記指示書は、低温焼成陶土10とアナターゼ型酸化チタン粉末20とが所定の配合割合となるよう、低温焼成陶土10の目盛S1,S2,S3及び/または表示と瓶状容器の容器本体25の目盛S10,S11,S12,S13及び/または表示とを指示すると共に、低温焼成陶土10とアナターゼ型酸化チタン粉末20とを前記配合割合で混合して混練し、所定時間の自然乾燥等の乾燥工程を経て、約160〜200℃の範囲内の所定焼成温度で、約30〜90分間の範囲内の所定時間焼成するように指示するものとする。そして、収容容器の第1の収容領域に包装フィルム11により包装された低温焼成陶土10を収容すると共に、収容容器の第2の収容領域に瓶状容器25,26,27に収容したアナターゼ型酸化チタン粉末20を収容し、かつ、収容容器に設けた指示書用の収容空間等に指示書を収容する。なお、これ以外に、光触媒陶磁物原料を所望形状に成形するための道具(へら、ナイフ、のし棒等)用の別個の収容空間を収容容器に設けてこれらを収容してもよい。
効果
上記各実施の形態によれば、家庭用オーブングリルなどを使用して、光触媒陶磁物原料を簡単に焼成して陶芸作品としての光触媒陶磁物を製作することができる。また、この光触媒陶磁物は、通常の粘土の未からなる陶芸作品乃至陶磁物と異なり、酸化チタンによる光触媒機能を発揮するため、児童や生徒等の環境教育用として好適に使用することができる。また、上記のように、酸化チタンの結晶構造は、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型の3構造があり、光触媒としての能力(光触媒活性)はアナターゼ型の方がルチル型よりも高いことがわかっている。しかし、一般の陶土にアナターゼ型酸化チタンを混合すると、通常の焼成窯を使って焼成することになり、窯の一般温度が1100〜1200℃となることから、かかる高温の焼成温度によりアナターゼ型酸化チタン結晶構造が変化してしまう。即ち、アナターゼ型酸化チタンは、徐々に600〜700℃程度まで昇温加熱する条件下ではルチル型に結晶構造を変えるため、このような手段乃至方法で光触媒陶磁物を焼成しても、使用した活性度の高い酸化チタン粉末の光触媒機能を十分に生かすことができない。一方、上記実施の形態によれば、オーブングリル等で焼成できる低温焼成陶土を使用するため、焼成温度を200℃前後とすることができ、アナターゼ型酸化チタンの結晶構造は変化せず、光活性を高いまま維持した光触媒陶磁物を作成することができる。
また、通常の陶芸を行う場合、窯をはじめとした器材が必要となってくるが、上記実施の形態によれば、オーブングリルで焼成できるため、一般に利用することが困難な窯を使用する必要がなく、誰もが簡単に素焼きに似た仕上がりを有する光触媒陶磁物乃至光触媒製品を作成することが可能であり、陶芸を楽しむことができる。また、児童や生徒等の製作者が、個々に光触媒陶磁物としての製品価値を体感し、更には自由な発想で所望形状の光触媒陶磁物を自作することができ、個人の創作性を高めることができる。
本願発明者は、上記実施の形態の光触媒陶磁物における低温焼成陶土とアナターゼ型酸化チタンとの配合割合を種々採用し、光触媒陶磁物の必要強度等の所望物性を得るために必要な諸条件について確認した。まず、同一組成の低温焼成陶土に、同一のアナターゼ型酸化チタンを混合して練り込み、光触媒陶磁物原料を調製した。このとき、アナターゼ型酸化チタンの配合割合のみ異ならせ、光触媒陶磁物原料を複数種類調製した。次に、各光触媒陶磁物原料を球状に成形し、自然乾燥した後、160〜190℃の焼成温度条件により焼成して球状の光触媒陶磁物を得た。そして、各光触媒陶磁物を水中に浸漬し、表面の崩壊程度を目視により経時的に確認した。この結果、水質浄化等の目的で、光触媒陶磁物を水中で使用する場合、低温焼成陶土の全体重量(質量)に対して15%を上限としてアナターゼ型酸化チタンを混合することが好ましいと判明した。この値を超えてアナターゼ型酸化チタンを混入すると、光触媒陶磁物が水中で水分を吸収する際、その多孔質粒子内部で空気が放出され、光触媒陶磁物に開孔が生じて表面剥離がおきることが判明した。なお、水は精製水を使用した。また、アナターゼ型酸化チタンを重量比で15%を超えて混合した光触媒陶磁物では、自然乾燥後乃至焼成後に、その表面(セラミック表面)が粉っぽいと感じられ、これ以上アナターゼ型酸化チタンを混入すると、使用者の手に付着する等の不具合が発生する可能性がある。
本願発明者は、実施例1のようにして作成した球状の光触媒陶磁物の直径を種々異ならしめ、各直径の光触媒陶磁物を水質浄化等の目的で水中に浸漬して、その崩壊程度(特に表面剥離の程度)を目視により観察した。この結果、光触媒陶磁物は、直径を直径1.5cm以内の球体として成形することで、表面剥離を効果的に防止できることが判明した。
本願発明者は、実施例1のようにして、アナターゼ型酸化チタンが25%の配合割合となるよう光触媒陶磁物原料を調製し、その光触媒陶磁物原料を種々異なる温度で焼成して、各種光触媒陶磁物を得た。この結果、光触媒陶磁物を約200℃で約30分焼成すると、光触媒陶磁物が水中で自ら崩壊していく現象は生じないことが判明した。これは、可能な限り(光触媒陶磁物表面にこげを生じない限り)、焼成温度を高温にすることで、光触媒陶磁物の強度乃至素材間結合力が高まり、水中でも崩壊しないようになるものと考えられる。この光触媒陶磁物に、鋭利な刃物等を差し込んでも、その光触媒陶磁物が破壊されることはなかった。なお、かかる適温(約200℃)以上の焼成温度では、光触媒陶磁物表面のこげ、臭い、部分的な色焼け等を招くため、約200℃が焼成温度の適温範囲となる。つまり、光触媒陶磁物を水中で使用したい場合、焼成温度を管理することにより、光触媒陶磁物自らの崩壊に対応可能であり、光触媒陶磁物が水中で固形状態を長期間維持する。この実験に使用したアナターゼ型酸化チタン粉末は、粒子径約440nmの粉体である。なお、これより小さい粒子径、例えば、粒子径10nm以下の超微粒子状アナターゼ型酸化チタンを使用することにより、光触媒陶磁物全体に対する含有割合が高くなり、光触媒活性度はより高いものになると推定される。
また、アナターゼ型酸化チタンの配合割合が25%を超えると、焼成した後でも光触媒陶磁物の表面が粉っぽくなり、使用者等の手に粉体が付着しやすくなり、また、水中では軟化してしまうことを確認した。なお、酸化チタン粉末の粒子径の大小がこの結果を左右すると考えられる。更に、低温焼成陶土にアナターゼ型酸化チタンを混合する際、その含有割合が水中での光触媒陶磁物自らの崩壊を起こさせる限度を確認したが、これは組成状態により異なるものと判断できる。即ち、アナターゼ型酸化チタン粉末の粒子径によりその値が大きく変化すると考えられる。なお、使用したアナターゼ型酸化チタン粉末の最小粒子径は7nmである。かかるアナターゼ型酸化チタン粉末として、石原産業株式会社製の品番ST−01を使用した。このST−01は、結晶子径(一次粒子径)7nmと最も小さく、比表面積が大きい(300m2/g)ことから、光触媒活性の最も高いものである。結晶サイズが小さくとも高倍率TEMで観察すると結晶格子が整然と配置しており結晶性の高いことがわかる。通常はこの結晶子からなる粒径20nm程の2次凝集体で安定している。このように、粒子のサイズ(粒子径)が光触媒陶磁物の物性乃至組成状態を変える要因であることは理解できる。即ち、混入するアナターゼ型酸化チタン粉末の粒子径により、水中で崩壊する限度割合が異なることが確認された。
次に、アナターゼ型酸化チタン粉末の粒子径の違いによるメチレンブルー水溶液の脱色実験を行った。その結果、超微粒子状(粒子径7nm)のアナターゼ型酸化チタン粉末による場合の脱色及び分解は、粒子形440nmのアナターゼ型酸化チタン粉末の場合より早期に行われた。このことは、光触媒効果を期待する際、アナターゼ型酸化チタン粉末の粒子径が効果の大小に影響することを意味する。また、超微粒子状アナターゼ型酸化チタン粉末により球形状のセラミック体を成形して光触媒陶磁物を作成した場合、その酸化チタン含有率を高くでき、表面に吸着している酸化チタンの量(合計露出表面積)が増えるため、より高い光触媒効果を期待できることになる。このように、光触媒の特性を評価する上で、アナターゼ型酸化チタン粉末の粒子径は重要であるといえる。なお、アナターゼ型酸化チタン粉末が超微粒子であることでその比表面積が多くなるが、互いの粒子が凝集結合した場合は大きな粒子径となる。
図3は本発明の実施例4に係る光触媒陶磁物の効果試験結果を示す観察写真である。
図3は、上記実施例のようにして作成した実施例4に係る略球状の光触媒陶磁物を、所定濃度のメチレンブルー水溶液に浸漬したものと、同一濃度のメチレンブルー水溶液単体のものとを比較した際の観察写真である。図4に示すように、この試験により、太陽光の下で、光触媒陶磁物が脱色効果をどの程度有するかどうか確認した。実験を開始した1日目は、光触媒陶磁物表面には色素が付着しているが、時間の経過と共にメチレンブルー水溶液の透明度が進むのが確認できた。10日後には、写真に示すとおり、メチレンブルー水溶液は透明度を増している。なお、試験条件として、屋外で太陽光の下、観察を実施した。また、実験中、天候は良好で、ガラス容器内の水分が蒸発するため、共に、同量の水を加えて観察を継続した。
図4は本発明の実施例5に係る光触媒陶磁物の効果試験結果を示す観察写真である。
上記実施例のようにして作成した実施例5に係る略球状の光触媒陶磁物を、生花の花瓶内に投入して、経過を確認した。図4は、実施例5に係る略球状の光触媒陶磁物を、生花の花瓶に投入したものと投入しないものとを比較した際の観察写真である。図5に示すように、実験時期は6月であり、湿度も高く生花が腐りやすい時期である。光触媒陶磁物の投入から3日後、水の色が共に濁りだしていることを確認した。このとき、臭いは感じられなかった。また、生花の葉のしおれている量は、光触媒陶磁物の入ってない方が多いように見受けられた。更に、8日後、生花の葉のしおれ方の違いが大ききなることが判断できた。このとき、生花を取り除いて花瓶内の水を見ると、光触媒陶磁物の投入のされていないものは黄色く濁っている一方、光触媒陶磁物の投入されているのは水が透明化していた。この時点では共に悪臭は感じられなかった。このように、光触媒陶磁物により花瓶内の水の汚れやバクテリア等が除去され、植物の葉張りにも元気さが感じられた。
図5は本発明の実施例6に係る光触媒陶磁物の効果試験結果を示す観察写真である。
上記実施例のようにして作成した実施例6に係る略球状の光触媒陶磁物にカビを発生させた食パンを載置し、経過を確認した。図5は、実施例6に係る略球状の光触媒陶磁物に食パンを載置したものとそうでないものとを比較した際のカビの防止実験(抑制実験)結果を示す観察写真である。図6に示すように、密閉ガラス容器内で食パン片のカビ(コウジカビ)に対し、光触媒陶磁物の有無の違いによる効果を観察し実験を実施した。実験では、低温焼成陶土に対し重量比で10%のアナターゼ型酸化チタン粉末を含有したものを使用した。また、実験は、室内の窓際で太陽光が差し込むところで観察を開始した。夜半にブラックライト等の照射措置はおこなってはいない。この結果、光触媒陶磁物に食パンを載置した場合、そうでないものと比較して、カビの増殖が大幅に抑制されていることが確認できた。
図6は本発明の実施例7に係る光触媒陶磁物の表面状態を示す観察写真である。図7は本発明の実施例7に係る光触媒陶磁物の表面を順に拡大して示す観察写真である。図8は本発明の実施例7に係る光触媒陶磁物の表面におけるアナターゼ型酸化チタン粉末の露出状態を拡大して示す観察写真である。
上記のように製作した光触媒陶磁物について、その表面状態をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察した。なお、光触媒陶磁物のアナターゼ型酸化チタン粉末は、粒子径は440nmのものを使用した。また、光触媒陶磁物の表面におけるアナターゼ型酸化チタン粉末の露出状態をEDX(エネルギー分散型X線分析)により確認した。なお、試料としての光触媒陶磁物が非導電性であるため、SEM観察の際に表面にPt/Ptを蒸着して観察した。図6及び図7に示すように、SEM観察では、光触媒陶磁物の外観は薄い茶褐色を呈し、表面はポーラス状で微細な粒子状物質も観察される。また、SEM観察では、倍率500倍で、光触媒陶磁物の表面が粗く凹凸が激しいが、5000倍に倍率を上げると、表面に微細な粒子が多数観察される。更に、20000倍に倍率を上げると、微細な粒子は、光触媒陶磁物中に一部埋もれているように観察される。このとき、粒子部は、EDX観察により、他の部位よりチタンの検出強度が高い。よって、観察される粒子は、酸化チタン粒子であることが確認できた。
本発明は、光触媒環境教育教材として利用することができる。また、陶土を利用して児童等を対象として物をつくりあげ、土に触れる機会も与えることができる。即ち、児童等が自作で陶土形状を自由に成形し、陶土を焼成して陶芸作品を完成させることができる。このような環境教材は、保養施設でのカリキュラムの中で取り上げ、陶芸物をつくる等してお年寄り等に作品を仕上げてもらうこともでき、思考力維持等の効果を期待することもできる。また、作品展示も含めた地域コミュニティとしての期待もある。更に、陶土により簡易にできる箸おき等、障害者等の製作する品物として市場に出すことにも有効に利用できる。特に、光触媒陶磁物は、その光触媒機能により、自宅に持ち帰り抗菌・悪臭対策等に利用できる。また、子供の作品であると共に出来上がり時に光触媒製品となるため、末長く利用及び保存することもできると考えられる。更に、作業工程の中で、光触媒効果や利用についてふれることで、現在の環境問題もとりあげて次世代を担う子供たちに環境教育を実施することもできる。そして、一方的な環境説明では子供たちは興味を示さないため、体験する過程の中で行い、同じ作業をしながら雑談するといった方法等により、効果的に環境教育を行うことができる。
図1は本発明の実施の形態1に係る光触媒陶磁物の一例を示す斜視図である。 図2は本発明の実施の形態2に係る光触媒陶磁物作成キットの構成要素の一例を示し、(a)は包装済低温焼成陶土を示す斜視図、(b)は容器入りアナターゼ型酸化チタン粉末を示す正面図である。 図3は本発明の実施例4に係る光触媒陶磁物の効果試験結果を示す観察写真である。 図4は本発明の実施例5に係る光触媒陶磁物の効果試験結果を示す観察写真である。 図5は本発明の実施例6に係る光触媒陶磁物の効果試験結果を示す観察写真である。 図6は本発明の実施例7に係る光触媒陶磁物の表面状態を示す観察写真である。 図7は本発明の実施例7に係る光触媒陶磁物の表面を順に拡大して示す観察写真である。 図8は本発明の実施例7に係る光触媒陶磁物の表面におけるアナターゼ型酸化チタン粉末の露出状態を拡大して示す観察写真である。
1 光触媒陶磁物、10:低温焼成陶土、11:包装フィルム(包装)
20:アナターゼ型酸化チタン粉末、25:容器本体(容器)
S1,S2,S3,S10,S11,S12,S13:目盛

Claims (7)

  1. アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、
    前記陶磁物原料の主材は、石灰からなることを特徴とする光触媒陶磁物原料。
  2. アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、
    前記陶磁物原料の主材は、廃棄石灰からなることを特徴とする光触媒陶磁物原料。
  3. アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、
    前記陶磁物原料の主材は、粘土質及び石灰質を含有する廃棄石灰からなることを特徴とする光触媒陶磁物原料。
  4. アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、
    前記陶磁物原料の主材は、粘土質を約20重量%、石灰質を約80%含有する廃棄石灰からなることを特徴とする光触媒陶磁物原料。
  5. アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、
    前記陶磁物原料の主材は、約300〜400℃の範囲の温度で焼成可能な廃棄石灰からなることを特徴とする光触媒陶磁物原料。
  6. アナターゼ型酸化チタンを、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成可能な材質の粘土及び/または陶土を主材として含有する陶磁物原料に混合してなり、
    前記陶磁物原料の主材は、粘土質を約20重量%、石灰質を約80%含有すると共に、約300〜400℃の範囲の温度で焼成可能な廃棄石灰からなることを特徴とする光触媒陶磁物原料。
  7. 請求項1乃至6記載の光触媒陶磁物用原料を、前記アナターゼ型酸化チタンの結晶型がアナターゼ型からルチル型に構造変化する温度未満の温度で焼成してなることを特徴とする光触媒陶磁物。
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