JP4521066B2 - コンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法 - Google Patents

コンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法 Download PDF

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Description

本発明は、鉄筋コンクリート構造物のコンクリート中に埋設されている鋼材の腐食発生時期を予測するコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法に関するものである。
特許文献1には、コンクリート中の鋼材の腐食状況を予測する方法として、その鋼材の近傍に該鋼材と同種材質の細線を埋設し、その細線が腐食によって切断される時期を測定し、該鋼材の腐食状況を予測する方法が提案されている。
また、特許文献2には、鉄筋コンクリート構造物における鉄筋の腐食量を定量的に評価する方法が開示されている。
この方法は、該文献に記載された(1)式の未知定数Aとt0 を腐食速度から求め、(1)式に基づき腐食量を定量的に評価するものである。腐食速度は、交流インピーダンス〔具体的には段落〔0034〕に示されている式(B=k/Rct)〕から求める。
また、この特許文献2には、段落〔0022〕から段落〔0030〕において、コンクリートのかぶり深さおよび中性化深さを用いて腐食開始時期t0 を推定する方法を説明している。即ち、〔0022〕においてコンクリートの中性化深さはフェノールフタレイン・アルコール溶液噴霧により測定されることを紹介し、〔0024〕において中性化速度係数Kを該文献の式(11)で定め、〔0025〕において供用時間tでの中性化深さCd(t)を式(12)で推定することを述べている。さらに〔0027〕において「腐食が開始するのは、鉄筋のかぶりに相当する深さまでコンクリートが中性化したときである」と述べ、〔0029〕において表面からの距離がlで、供用時間tにおける塩化物イオン量G(l,t)が誤差関数erfを用いて式(14)で表されることを示し、〔0030〕においてその式(14)に基づいて計算した塩化物イオン濃度が所定の限界濃度に達するときを腐食開始時期t0 であると推定することの可能性を示唆している。
しかし、該特許文献2には、上記式(14)に現れる比例定数λ、表面塩化物イオン量Gs、塩化物イオンの拡散係数Hg等を具体的にどのようにして測定により決定するのかについては言及されていない。
一方、近年、コンクリート構造物に埋設された鋼材の劣化(腐食)の程度をモニターする腐食センサーが開発され、実用に供されている。
この種のセンサーは、所定位置に配置した検知部(鋼材)の腐食過程において生じるマクロ電池電流(この明細書では、「腐食電流」と呼ぶ。)を計測し、その時点における鋼材の腐食の有無を検知する。この種のマクロ電池は、コンクリート中に腐食性が異なる二種類の金属を埋設すると、腐食速度の差により形成される。
上記腐食センサーの代表例として、アノード・ラダー・システム、およびエクスパンション・リング・システムを簡単に説明する。
図1は、アノード・ラダー・システムの概念的斜視図である。
このアノード・ラダー・システムは、図に示したように、6本の鋼材から成るアノード電極A1・・・A6が平行に配設されたハシゴ状部材Aを、コンクリート表面に対して傾斜して設置し、チタン材から成るカソード電極Kを、そのハシゴ状部材Aの近傍にアノード電極と垂直にかつコンクリート表面に略平行になるように設置し、その上にコンクリートを打設して使用される。
上記6本のアノード電極A1・・・A6は、部材Aを傾斜させて設置することによりコンクリート表面から所定の位置に深さ方向に異なる深さで配置されることとなり、コンクリート表面から異なる深さでのコンクリート中の各アノード電極A1・・・A6に流れる腐食電流を計測することができる。
上記のアノード・ラダー・システムは、コンクリート構造物の施工時に埋設して使用するものであるが、既設コンクリート構造物用の腐食センサーとして、エクスパンション・リング・システムがある。
図2は、エクスパンション・リング・システムの概念図である。
このエクスパンション・リング・システムは、円柱状部材Bの表面に6個のやはり鋼材から成るリング状アノード電極A1・・・A6が等間隔に配置され、この円柱状部材Bをコンクリートに穿設された円柱状の穴に挿入して固定し、他方、楔状のチタン材から成るカソード電極Kを、上記円柱状部材Bの近傍に、上記円柱状部材Bと平行、すなわちコンクリート表面に対して垂直に穿設された穴に挿入して固定する。
この場合も、上記6個のリング状アノード電極A1・・・A6は、コンクリート表面から深さ方向に異なる深さで配置されることとなり、コンクリート表面から異なる深さでのコンクリート中の各アノード電極A1・・・A6に流れる腐食電流を計測することができる。なお、このエクスパンション・リング・システムは、既設のコンクリート構造物に埋設後、可及的にすみやかに各リング状アノード電極A1・・・A6が、既設のコンクリート構造物の環境に応じた腐食状況となり、その状態における腐食電流を計測するものである。
特開平11−153568号公報 特開2002−98660号公報
近年、高度成長期に大量に建設されたコンクリート構造物の維持管理が重要な課題となっている。このコンクリート構造物の維持管理には、該構造物中に埋設されている鋼材の腐食進行状況を正確に把握することが重要である。
ここで、上記特許文献1に開示されたコンクリート中の鋼材の腐食状況を予測する方法では、埋設した細線の切断の有無を定期的に調査する必要があり、その作業が煩雑であると共に、埋設した細線の切断によって、該コンクリート中の鋼材が腐食する環境下にあることは把握できるが、どの程度腐食が進行しているか、また、今後どのように鋼材の腐食が進行していくかを把握できるものではなかった。
そこで、本発明は、例え一時点での調査でも、そのコンクリート構造物中に埋設された鋼材の腐食状況を判断できると共に、該鋼材の将来的な腐食発生時期を予測することのできる方法を提案することを課題とする。
上記した課題は、請求項1に記載したコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法によって解決された。
具体的には、鉄筋コンクリート構造物のコンクリート中に種々の深さで設置される複数のアノード電極とその近傍に配置されるカソード電極から成る腐食センサーにより測定された腐食電流に基づき、コンクリート中に埋設されている鋼材の腐食発生時期を予測するコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法であって、上記腐食電流の限界値Ccを設定する限界値設定過程と、ある時点において上記腐食センサーにより腐食電流をコンクリート表面からの深さの関数として測定する腐食電流測定過程と、上記測定された腐食電流をFickの第2法則に基づいて計算してコンクリートの深さ位置との関係において腐食電流が上記限界値Ccに達する時期を求め、鋼材の腐食発生時期を予測する予測過程とを含むコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法により解決された。
ここで、上記予測過程が、上記測定された腐食電流を深さの関数として表現する回帰式を求める回帰分析過程と、腐食電流にかかわる拡散係数β2を決定する拡散係数決定過程と、Fickの第2法則に基づいてコンクリートの深さ位置との関係において腐食電流が上記限界値Ccに達する時期を計算する腐食発生時期決定過程とを含むものとすること(請求項2)、また、上記回帰分析過程が、上記回帰式に基づきコンクリート表面でのその測定時点における腐食電流COを求める過程と、上記回帰式に基づき上記限界値Ccを与えるその測定時点における深さXcを計算する過程とを含むものとすること(請求項3)、さらに、上記拡散係数決定過程が、上記Ccの値と上記COの値から式〔Y*=(1−Cc/C0)/2〕に基づきY*の値を求める過程と、式〔X*=erf-1(Y*)〕に基づきX*の値を求める過程と、式〔ξ1=X*/(2)( 1/2 ) 〕に基づきξ1の値を求める過程と、コンクリート打設からの経過時間t1と上記深さXcと上記ξ1の値から式〔β2=Xc 2/(4t1ξ1 2)〕に基づき拡散係数β2の値を求める過程とを含むものとすること(請求項4)、さらには、上記腐食発生時期決定過程が、上記ξ1の値と上記β2の値とを用いて、コンクリート打設から時間tだけ経過した時における上記限界値Ccの電流が流れる深さXを式〔X=2・ξ1・β・SQR(t)〕に基づき計算する過程を含むものとすること(請求項5)は、いずれも好ましい実施の形態である。
なお、本発明において言う上記鋼材の腐食発生時期とは、鋼材の腐食発生開始時期のみならず、明らかに腐食が進行し、補修を必要とする腐食に達した時期をも含む、広い概念である。
上記した本発明に係るコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法によると、例え一時点でのアノード・ラダー・システム、或いはエクスパンション・リング・システム等の腐食センサーによる腐食電流の測定値からでも、その測定時点における、コンクリート構造物中における異なる深さで埋設されている各鉄筋等の鋼材の腐食状況を判断できると共に、その各鋼材の将来的な腐食発生時期をも予測することができ、補修時期および補修方法についての将来設計が可能となり、コンクリート構造物の補修等を適切に行うことができる効果がある。
鋼材の腐食要因は塩素イオンばかりでなく、コンクリートの細孔組織、コンクリートの中性化などの諸要因が複雑に交絡したものである。
本件発明者らは、種々の環境下にある鉄筋コンクリート構造物のコンクリート中に埋設されている鉄筋の腐食進行状況と、上記したアノード・ラダー・システム、或いはエクスパンション・リング・システムと言った腐食センサーによって計測される腐食電流との関係を長年にわたり調査してきた。
その結果、上記腐食電流とそれらの諸要因に強い相関があることを見出し、そして、上記腐食電流として測定される電流量をこれらの諸要因を総括的に把握した総括腐食因子として捕らえ、この総括腐食因子量がある値に達すると、その位置に存在する鉄筋の腐食が開始し、その後電流の増加とともに進行し、終局的には補修を必要とする状態(限界)に達すると説明できることを見出した。
なお、この明細書では、上記総括腐食因子を因子Aと呼ぶ。因子Aは腐食電流として測定される電流量であるので、その大きさはマイクロ・アンペアで示される。
この知見に基づき、本発明に係る方法では、コンクリート中の種々の深さで因子Aの大きさ、言い換えるとアノード・ラダー・システム、或いはエクスパンション・リング・システム等の腐食センサーによりコンクリート中の種々の深さの腐食電流を測定し、コンクリート中の鉄筋の腐食発生時期を予測する。
そのため、予備段階で、各基準書、示方書、仕様書などに示される「鋼材腐食のグレード」などと「因子Aの大きさ」との関係を明らかにしておき、予測対象の鉄筋コンクリート構造物に対し、因子Aの限界値Ccを先ず適切に設定する。
なお、因子Aの限界値Ccとは、本発明において鋼材の腐食発生時期と判断する電流量を言う。
例えば、次のような、腐食グレードと因子Aの対応表を作成しておくことは好ましい。
Figure 0004521066
そして、例えば、予測対象の鉄筋コンクリート構造物が上記鋼材腐食のグレード2に対応する、即ち、公共性が高く、早期の鋼材腐食段階で補修を必要とする構造物である場合には、上記限界値CcはC1〜C2の間の数値(例えば15マイクロ・アンペア)と定める。
もちろん、この限界値Ccの値は、予測対象の鉄筋コンクリート構造物等に応じて、種々の値を選択することが可能である。
続いて、本発明のコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法においては、コンクリート構造物の種々の深さ(例えば、等間隔で6つの深さ)における腐食電流を測定する。 この腐食電流は、例えば図1のアノード・ラダー・システム、或いは図2のエクスパンション・リング・システムを用いて測定することができる。その際、各アノード電極(A1・・・A6)と埋込み深さ(X1・・・X6)との関係において、各アノード電極(A1・・・A6)とカソード電極Kの間に流れる腐食電流(C1・・・C6)を測定する。その結果、6個のデータ対(X1,C1)・・・(X6, C6)が得られる。
ここで、図1のアノード・ラダー・システム、或いは図2のエクスパンション・リング・システムでは、コンクリート表面における腐食電流C0を測定することが事実上できない。それは、コンクリート構造物の表面にアノード電極を設置するとセンサーの劣化によりコンクリート構造体が損傷するばかりでなく、表面近傍にアノード電極を設けたとしてもノイズの影響が大きく、不正データとなることが多いためである。
そこで、これらのデータを回帰分析し、このデータを回帰式で表わす。
下記の式(1)は、回帰式の一例である。

C=C0・exp(A・X) ・・・(1)

ここで、C0とAは回帰分析により決定される回帰係数であり、C0はコンクリート表面における腐食電流に相当し、コンクリート構造物の表面における因子Aの大きさに対応する仮想値である。また、Cは深さXの位置の因子A(腐食電流)の大きさである。
なお、回帰式は上記の式(1)に限られず、Xのべき乗式、あるいは多項式を採用することも可能である。
因子Aは、前述したように、コンクリート中に浸透する塩素イオン、コンクリートの細孔組織の変化、コンクリートの中性化の進行などの諸要因を総括的に捕らえたものであり、因子Aがコンクリート構造体の表面から徐々にコンクリート中に進行し、コンクリート構造体中の鉄筋の位置における因子Aの値が所定の限界値CCに達すると、鉄筋腐食は発生すると予測する。
回帰分析によりC0とAの値が定められた上記回帰式(1)のCにCCを代入し、得られる方程式を深さXについて解く。
その解をXCとすると、次の関係式(2)が得られる。

C=(ln(CC)- ln(C0))/A・・・(2)
上式においてXCは、当該測定時点において、因子Aの大きさが鋼材腐食の限界値CCにある深さを表す。すなわち、予測対象構造物において、鉄筋のかぶりX(コンクリート表面からの深さ)が、X>XCであれば、この測定時点(t=t1)においては該鉄筋の腐食は発生していないが、XC>Xであれば、この測定時点で該鉄筋は既に腐食が発生していると判断できる。
上記回帰式(1)を用いるだけでは、単に測定時点における鋼材腐食状況を捉えることができるだけである。
本発明においては、さらに拡散理論(Fickの第2法則)に基づき、一回の上記因子Aの測定により、将来における鋼材腐食の進行状況をも予測する。これについて、以下に説明する。
本件発明者らは、鋼材腐食の予測に際し、因子Aも、塩素イオン等の拡散浸透と同様に、コンクリート構造体の表面から内部に向かってFickの第2法則に従って拡散してゆくものと予測した。
なお、この予測は、コンクリート構造物におけるコンクリートの状況及び周囲の環境等に大きな状況変化が起こらない場合、概ね正しい予測である。
ここで、Fickの第2法則とは、「組成の変化速度は濃度の距離による2階微分(ラプラシアン)に比例する」という法則である。
コンクリート表面に垂直な方向をx軸とし、コンクリート表面に平行な面内にy軸とz軸を取る。y軸とz軸に関しては一様、すなわちyとzについての微分がゼロであるとき、上記ラプラシアンはxについての2階微分である。このとき、x軸上の点xにおける濃度をCx、拡散係数をDとすると、上記Fickの第2法則は次のように定式化できる。

dCx/dt=(d/dx)〔D・(dCx/dx)〕 ・・・(3)

ここで、tは時間を表す変数である。なお、因子Aの拡散係数Dは、腐食電流にかかわる拡散係数と言い換えることもできる。
拡散係数Dが濃度CXに依存せず一定である場合(この仮定は、実際上は常時満足される)、上記式(3)は下記の式(3a)の拡散方程式となる。

dCx/dt=D・(d2x/dx2) ・・・(3a)
偏微分方程式である上記式(3a)の拡散方程式の境界条件および初期条件は、次の通りである。
先ず、コンクリート構造体の表面部分にある鋼材は暴露と同時に腐食し、以後進行しないので、コンクリート構造体の表面部分では時間が経過しても因子Aの濃度CXは一定である。すなわち(x=0,0<t<∞)で因子Aの濃度CX=C0(一定)である。
次に、コンクリート打設直後においては、表面を除いて腐食が始まっていないので、コンクリートは一様であると考えられる。すなわち(0<x,t=0)で因子Aの濃度CXは0である。
このような境界条件および初期条件における拡散方程式は、例えば、初期条件(t=0)で一様な温度Tiであった半無限の1次元物体の一端(x=0)の温度を、ある時刻(0<t)から一定温度T0に保つ時の、その半無限1次元物体の中の温度分布TX(0<x、0<t)を計算する問題と同等であり、既に解が知られている。
偏微分方程式(3a)のこの境界条件および初期条件を満たす解c(x,t)の一つは、式(4)で与えられる。
なお、この明細書では拡散係数Dを、β2で表す。
Figure 0004521066
ここで、ξ=x/(2βt1/2) ・・・(4a)
なお、拡散係数β2は、xとtとξとが分れば、式(4a)から式(5)のように求めることができる。
β2=x2/(4tξ2) ・・・(5)
ある時点t1において因子Aの濃度CXが所定の限界値CCとなるとすると、次の関係が成り立つ。
Figure 0004521066
ここで、ξ1=Xc/(2βt1 1/2) ・・・(6a)
ここで、次の変数変換を行う。

μ=21/2・λ ・・・(7)
式(4)の積分部分は次のように変形される。
Figure 0004521066
従って次の関係が成り立つ
Figure 0004521066
ここで次の変数Yを導入する。
Figure 0004521066
式(10)の逆関数をこの明細書では、erf-1(Y)と表す。これは、誤差関数として知られている関数である。

X=21/2・ξ=erf-1(Y) ・・・(11)
また次の関係がある。
Figure 0004521066
上記式(9),(10),(12)を組みあわせると次の関係がなりたつ。

C=C0(1−2Y) ・・・(13)
限界値CCが与えられているとき、これに対応するYの値,Y*を次の式で定義する。

*=(1−CC/C0)/2 ・・・(14)
上式は、表面における因子Aの濃度C0と、濃度の限界値CCが定まるとYの値,Y*が定まることを意味する。式(11)の関数を用いて、このYの値,Y*を与えるXの値,X*を求めることができる。この値に対応するξの値をξ1とすると、次の関係がなりたつ。
*=erf-1(Y*) ・・・(15)

1/2・ξ1=X* ・・・(16)
式(5)において説明したように、因子Aの拡散係数β2は、β2=X2/(4tξ2) であり、この時点t1おけるXCの値が上記回帰式を用いて計算されているので、次のように求めることができる。

β2=XC 2/(4t1ξ1 2 ) ・・・(17)
拡散係数β2が分った後、この式をXCについて解いた解をXとすると、次の式が得られる。

X=2・ξ1・β・SQR(t) ・・・(18)

ここで
SQR(t)=t1/2 ・・・(19)
また、
X : 因子Aの限界値CCとなる表面からの深さ(cm)
ξ1: 誤差関数における積分の下限値
β : 因子Aの拡散係数(cm2/年)の平方根
t : 経過時間(年)
である。
上記式(18)は、コンクリート打設後に時間がtだけ経過した時点において、因子A(腐食電流)が所定の限界値CCになっている深さXを計算できることを意味し、逆に、コンクリートの鉄筋のかぶり(表面からの深さ)まで因子A(腐食電流)が上記限界値CCに達する時点を予測できることを意味する。すなわち、この式より、鋼材の腐食発生時期を予測することができる。
具体例
構築後10年経過した(材齢10年の)種々の環境下にあるコンクリート構造物について、腐食センサー(エクスパンション・リング・システム)を用いて因子A(腐食電流)の計測を行ったと仮定した場合に得られる測定結果のモデル例を表2に示す。
Figure 0004521066
なお、表2中、具体例1は劣悪環境ではない場所に構築されたコンクリート構造物(コンクリートの水セメント比:50%)、具体例2はやや劣悪環境に構築されたコンクリート構造物(コンクリートの水セメント比:60%)、具体例3は劣悪環境に構築されたコンクリート構造物(コンクリートの水セメント比:70%以上)、具体例4は極めて劣悪環境に構築されたコンクリート構造物(コンクリートの水セメント比:70%以上)を各々対象としている。
一例として、具体例2の腐食電流の測定結果を用いて、以下、本発明に係る予測方法を具体的に記載する。
先ず、前掲の式(1)を用いてC及びXに測定結果を代入して回帰すれば、下記の式が得られ、回帰定数C0,Aが決定できる。

C=50.15・exp(−0.12・X)

0=50.15(μA)、A=−0.12(1/cm)
続いて、因子A(腐食電流)の限界値Ccを15.0μAと定め、この値、及び上記C0、Aの値を前掲の式(2)に代入して、限界値Ccが得られる距離XCを算出する。

C=(ln(15.0)- ln(50.15))/(−0.12)

C=9.71(cm)

ここで、具体例2の構造物における鉄筋のかぶりが15cmである場合には、X>XCであるため、測定時点においては、鉄筋の腐食は未だ発生していないと判断できる。
続いて、前掲の式(14)よりY*を求め、さらに式(15)によりX*を求める。

*=(1−CC/C0)/2
=(1−15.0/50.15)/2
=0.35

*=erf-1(Y*
=erf-1(0.35)
=1.04
続いて、前掲の式(16)を用いてξ1を、また、前掲の式(17)を用いてβ2を算出する。

ξ1=X*/21/2
=1.04/21/2
=0.73


β2=XC 2/(4t1ξ1 2 )
=9.712/(4×10×0.732
=4.37(cm2/年)
続いて、前掲の式(18)に、上記ξ1、β2の値を代入し、下式を得る。

X=2・ξ1・β・SQR(t)
=2×0.73×4.371/2×SQR(t)
=3.07×SQR(t)

ここで、SQR(t)=t1/2であるため、上式は、

X=3.07×t1/2
となる。
上記式に算定の対象とする経過時間tを代入して、因子A(腐食電流)が限界値CC(15.0μA)に達する表面からの距離Xを算出する。その算出結果を、表3に示す。
Figure 0004521066
上記具体例2の場合と同様に、具体例1,具体例3,具体例4についても、経過時間tと、因子A(腐食電流)が限界値CC(15.0μA)に達する表面からの距離Xを算出し、上記具体例2と共に算出値を併記すると、表4のようになる。
Figure 0004521066
上記表4の値を、縦軸に深さXを、横軸に材齢tをとり、グラフに表すと、図3のようになる。
このように本発明の方法を用いると、ある一時点でアノード・ラダー・システム、或いはエクスパンション・リング・システム等の腐食センサーにより腐食電流を測定することによって、時間tの関数として、腐食電流が限界値CC(例えば、15.0μA)になる深さXをグラフに描くことができる。
そして、例えばこのグラフに基づき、鉄筋のかぶりを15cmとすると、具体例2のコンクリート構造物においては、概ね材齢30年において鉄筋は腐食発生の時期に達すると予測でき、極めて劣悪環境に構築された具体例4のコンクリート構造物においては、材齢7年の時点で既に鉄筋は腐食発生の時期に達していた判断することができる。
なお、本発明においては、ある一時点における腐食電流を測定することによって、鋼材の腐食予測を行うことを主たる特徴とするものであるが、さらに、所定時間経過後の測定結果を得れば、予測の確度が高まるばかりか、コンクリート構造物の置かれる環境の変化が、鋼材腐食に及ぼす影響も反映できることは言うまでもない。
アノード・ラダー・システムの概念的斜視図である。 エクスパンション・リング・システムの概念的斜視図である。 本発明に係るコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法により、種々の環境下にあるコンクリート構造物について、材齢tと腐食電流が限界値CC(15.0μA)になる深さXの関係を示したグラフである。

Claims (5)

  1. 鉄筋コンクリート構造物のコンクリート中に種々の深さで設置される複数のアノード電極とその近傍に配置されるカソード電極から成る腐食センサーにより測定された腐食電流に基づき、コンクリート中に埋設されている鋼材の腐食発生時期を予測するコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法であって、上記腐食電流の限界値Ccを設定する限界値設定過程と、ある時点において上記腐食センサーにより上記腐食電流をコンクリート表面からの深さの関数として測定する腐食電流測定過程と、上記測定された腐食電流をFickの第2法則に基づいて計算してコンクリートの深さ位置との関係において腐食電流が上記限界値Ccに達する時期を求め、鋼材の腐食発生時期を予測する予測過程とを含むことを特徴とする、コンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法。
  2. 上記予測過程が、上記測定された腐食電流を深さの関数として表現する回帰式を求める回帰分析過程と、腐食電流にかかわる拡散係数β2を決定する拡散係数決定過程と、Fickの第2法則に基づいてコンクリートの深さ位置との関係において腐食電流が上記限界値Ccに達する時期を計算する腐食発生時期決定過程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法。
  3. 上記回帰分析過程が、上記回帰式に基づきコンクリート表面でのその測定時点における腐食電流COを求める過程と、上記回帰式に基づき上記限界値Ccを与えるその測定時点における深さXcを計算する過程とを含むことを特徴とする、請求項2に記載のコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法。
  4. 上記拡散係数決定過程が、上記Ccの値と上記COの値から式〔Y*=(1−Cc/C0)/2〕に基づきY*の値を求める過程と、式〔X*=erf-1(Y*)〕に基づきX*の値を求める過程と、式〔ξ1=X*/(2)( 1/2 ) 〕に基づきξ1の値を求める過程と、コンクリート打設からの経過時間t1と上記深さXcと上記ξ1の値から式〔β2=Xc 2/(4t1ξ1 2)〕に基づき拡散係数β2の値を求める過程とを含むことを特徴とする、請求項3に記載のコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法。
  5. 上記腐食発生時期決定過程が、上記ξ1の値と上記β2の値を用いて、コンクリート打設から時間tだけ経過した時における上記限界値Ccの電流が流れる深さXを式〔X=2・ξ1・β・SQR(t)〕に基づき計算する過程を含むことを特徴とする、請求項4に記載のコンクリート中の鋼材の腐食発生時期予測方法。
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