JP4519204B2 - 精子形成阻害活性を有するヘキサヒドロインデノピリジン化合物 - Google Patents
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Description
発明の分野
本発明は、精子形成を阻害し、不妊を引き起こすヘキサヒドロインデノピリジン化合物に関する。これらの化合物はヒト男性の避妊薬として、さらには家畜、野生動物または野生化動物の繁殖制御に有用である。
背景の考察
長年、安全で有効な経口男性避妊薬が探し求められている。しかしながら、性欲に作用せずに安全に精子形成を阻害し、それにより男性用避妊薬として作用する薬剤の開発は難しい課題であることがわかってきた。
理想的な男性用避妊薬とは、性欲もしくは付帯する生殖器官およびそれらの機能に作用せずに精子の生産を有効に阻止する、またはそれらの受精能力を阻害するものである。加えて、その有効用量と有毒用量の境界は広くなければならず、かつ、その方法は可逆的でなければならない。現在、このような理想的な男性用避妊薬は得られていない。
抗癌剤やアルキル化剤などの一般的な細胞毒性物質のいくつかは精子形成に作用するが、避妊薬としてはもちろん許容されない。チオ糖類などの細胞のエネルギープロセスを阻害する化合物はまた精子形成も阻害するが、これには十分な選択性がない。テストステロンおよびその類似体などのアンドロゲンは、十分に高い用量で与えられた場合には、おそらく視床下部−下垂体軸を含むメカニズムを介して精子形成を阻害する。これらのステロイド化合物は臨床研究では首尾よく使用された。しかしながら、これらステロイドの同化特性は、望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。
ゴナドトロピン放出ホルモン(GNRH)類似体は、精子形成を効果的に阻害する化合物として積極的に研究されてきた。しかしながら、GNRH類似体は内在するテストステロン生産を阻害し、従って相補するアンドロゲンを投与しない限り、性欲を減退させる。
男性用避妊薬を得る試みの1つは、雄性の生殖過程に関する特性決定および生化学の活用に基づくものである。精巣は3つの機能的区画からなっている。1つめは精子の生産にあずかり、発達中の胚細胞を含む精細管からなっている。2番めは精細管内にも存在するセルトリ細胞であり、これは精子形成過程の組織的かつ機能的協調に寄与し、おそらくパラクリンおよびオートクリン機能を持っている。セルトリ細胞と発達中の胚細胞との間の複雑な組織的関係により、また隣接するセルトリ細胞間に強い結びつきが存在することで血液精巣関門が形成され、精細管は、血液−骨化学物質または栄養素の直接的接近から隔離された領域に分断される。間質組織において精細管を取り巻いているのは、いくつかの内分泌およびパラクリン機能を有するライジヒ細胞であり、テストステロンの生産が最もよく記載されている。
胚細胞は分裂し、段階を踏んで分化し、成熟するにつれ基底膜から精細管の管腔へと移動する。精原細胞は基底区画内にあり、選択的に補充された精原細胞が有糸分裂して、精原細胞として存続する細胞か、第一精母細胞へと分化する細胞のいずれかになる。この第一精母細胞はセルトリ細胞間の接合点を通じて移動し、有糸分裂して第二精母細胞となる。第二精母細胞は分裂して精子細胞となる。次いでこの精子細胞が成熟精子へと分化する。精子細胞の分化を精子形成という。
セルトリ細胞の機能の概要は以下の通りである:
(a)精巣上皮の支援および精巣上皮への栄養供給、(b)後期精細胞の精細管管腔への放出、(c)形態学的および生理学的血液精巣関門の形成、(d)退化した胚細胞の食作用、および(e)精巣上皮の周期の調節。
ライジヒ細胞もまた精子形成を助ける。下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)は、ライジヒ細胞によりテストステロンの産生を刺激する。テストステロンおよびその代謝物のジヒドロテストステロンは、正常な精子形成の支援に必要なものである。テストステロン受容体は種々の胚細胞種に存在する。テストステロンは血液精巣関門を介して送達され、おそらくセルトリ細胞へと輸送されると考えられ、そこでエストラジオール、ジヒドロテストステロンへと代謝されるか、またはそのまま変化せずに留まる。
胚細胞種のすべてではなくともいくつかは、ライジヒ細胞および/またはセルトリ細胞と相互作用する。これらの相互作用は、セルトリ、ライジヒおよび胚細胞により産生される化学伝達物質の形態におけるものである。例えば、パキテン期の精母細胞は、次ぎにライジヒ細胞による精子形成を刺激するセルトリ細胞タンパク質性因子の分泌を調整する。精母細胞が結合するとセルトリ細胞だけが生じ、これはFSHに曝されることにより能力を持つ、または機能を持つようになる。ラットのセルトリ細胞は、周期的な様式で数種のタンパク質を分泌し、特定の段階の精巣上皮で、すなわちそれが特定の胚細胞群と会合している場合に最大の産生がなされる。クラステリンは、精巣上皮が、FSH刺激とは無関係である段階VIIまたはVIIIの形態である場合にセルトリ細胞によって最大に産生され、このことは胚細胞によりセルトリの二次機能が局部的に調節されることを示唆している。
Sandoz社により開発されたヘキサヒドロインデノピリジン化合物No.20-438(図1の化合物1)は、動物への経口投与に対して精子形成を可逆的に阻害することが示されている。文献:Arch.Toxicol.Suppl.,1984,7:171-173;Arch.Toxicol.Suppl.,1978,1:323-326;およびMutation Research,1979,66:113-127を参照。
ラセミ混合物としての種々のインデノピリジン化合物の合成は公知であり、例えば、米国特許第2,470,108号;同第2,470,109号;同第2,546,652号;同第3,627,773号;同第3,678,057号;同第3,462,443号;同第3,408,353号;同第3,497,517号;同第3,574,686号;同第3,678,058号および同第3,991,066号に記載されている。これらのインデノピリジン化合物は、抗炎症および鎮痛特性を示すセロトニンアンタゴニスト、血球芽細胞凝集阻害剤、鎮静剤および神経弛緩性化合物、ならびに潰瘍防止、降圧および食欲減退性化合物としての用途をはじめとする種々の用途を有する。
米国特許第5,319,084号では、5位が、パラ位の置換を有するフェニル環で置換されている、精子形成阻害活性を有するヘキサヒドロインデノピリジン化合物が開示されている。
本分野においてはさらに研究されているにもかかわらず、副作用の制限された経口可逆的男性用避妊薬の必要性がなお存在している。継続する問題は、既知の化合物を、副作用を引き起こす可能性のある投与レベルで投与しなければならないことである。本分野のさらなる問題としては、精巣上または精巣内に特異的結合部位を有する好適な画像形成剤がないことである。精巣機能に関する研究において、また精巣の機能不全に関する診断における画像形成剤として使用され得る化合物の必要性もなお存在している。
発明の要旨
従って本発明の1つの目的は、性欲に作用せず、高い効力と活性を有し、しかも副作用または毒性が最少の経口男性用避妊薬を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、精子形成を阻害する経口男性用避妊薬、およびこの薬剤を用いて精子形成を阻害する方法を提供することにある。
これら、またその他の本発明の目的は、本発明のヘキサヒドロインデノピリジン化合物の発見、およびこれらの化合物が高い効力を有し、精子形成を阻害するという発見により達成された。
本発明の化合物が、前記の問題を解決する。本発明の化合物は、公知の化合物1よりも比較的低用量で高い効力を示し、これによりこの化合物を用いた場合に認められる鎮静作用などの副作用の発生が軽減される。さらに、本発明の化合物は精巣内の高分子部位と相互作用する。本発明の化合物は、放射性標識などの標識を含み、精巣の機能に関する研究および精巣の機能不全に関する診断に有用な画像形成剤を提供することにより、十分な画像形成剤がないという問題を解決するものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、3種類のヘキサヒドロインデノピリジン化合物の構造を示し、これら化合物の番号体系を示している。
図2は、本発明の化合物の前駆体の製造方法を示す。
図3は、本発明の化合物の前駆体化合物の鏡像異性体選択的合成を示す。
図4は、図2および3に示されているように製造した前駆体化合物をヨウ素化する合成スキーム、およびそのヨウ素化合物の、本発明の範囲内のさらなる化合物への変換を示す。
好ましい具体例の詳細な説明
以下に示す構造(I)
{式中、4a、5および9b位の水素原子は、示される相対的立体化学(4aと5位はトランスであり、4aと9bは互いにシスである)を有し、ここでR1は直鎖または分枝C1-6アルキル、好ましくはC1-3アルキルであり;R2は水素、直鎖または分枝C1-6アルキル、好ましくはC1-3アルキルであり;R3は直鎖または分枝C1-6アルキル、カルボキシル(COOH)、もしくは哺乳類の生理条件下でカルボキシル基へ変換可能な基であり;かつ、R4はハロゲンである}を有するヘキサヒドロインデノピリジン化合物は精子形成阻害作用を有し、かつ、最良の既知化合物の経口精子形成阻害活性の約40倍という高い活性を有することが開示された。
本発明の化合物は、構造(I)に示される相対的立体化学を有するものである。本発明には個々の鏡像形態(実質的に光学的に純粋)の双方、ならびにこれら形態の混合物、例えばラセミ混合物のいずれもが含まれる。
前記で示した構造(I)を有する化合物の医薬上許容される塩もまた、本発明の範囲に含まれる。医薬上許容される塩としては、限定されるものではないが、塩酸塩、ヨウ化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素塩、および硝酸塩などの無機酸との塩、または酢酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、メタンスルホナート、p-トルエンスルホナート、パルモアート(palmoate)、サリチル酸塩、およびステアリン酸塩などの有機酸との塩が挙げられる。
置換基R1は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシルおよびイソヘキシルなどの直鎖アルキル(n-アルキル)またはイソアルキル基である。より好ましくは、R1はエチルである。
置換基R2はまた、好ましくは前記のR1に関して記載したような直鎖またはイソアルキル基である。
置換基R3は、好ましくは、ヒドロキシメチル(CH2OH)、ホルミル(CHO)、カルボキシル(COOH)、カルボン酸エステル(COOR、ここでRはC1-10アルキル、C6-10アリール、C7-10アラルキルである)、およびヒドロキシメチルエステル(CH2OC(O)-R、ここでRは前記に同じ)である。
置換基R4は、I、Br、ClおよびF等のハロゲンである。これらの化合物の強い活性は驚くべきものである。ハロゲンは放射性同位元素、例えば123I、125I、または131Iであってもよい。前記化合物の通常の(非放射性)同位元素を、例えば11C、チタニウム(3H)または18Fなどの他の放射性同位元素、または臭素や塩素の放射性同位元素と置き換えてもよい。
化合物1はラセミ混合物である。化合物1の構造は図1の化合物1に示されている。ヘキサヒドロインデノピリジンは3つの非対称中心を有し、これは公知の命名法を用いて定義できる。また、この相対的立体化学は、3環系の4a、5および9b位で炭素系と結合した水素原子のシス−トランスの関係により定義することもでき、これが立体化学的割り当てとなる。この命名法に従えば、化合物1の立体化学および名称は、(4aRS,5SR,9bRS)-2-エチル-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-7-メチル-5-(4-メチルフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンとなる。
化合物1は、前記の構造(I)の置換基R3に対応する5-フェニル基に疎水性メチル置換基を有する。化合物1の精子形成阻害活性はもっぱら(+)異性体にあり、これはマウスにおいて効果的な精子形成阻害剤である。化合物1のR3であるメチル基を若干疎水性の低い水素原子で、あるいはより極性の高いメトキシ基で置換すると活性がなくなる。
極めて極性の高いカルボキシル基、または哺乳類の生理条件下でカルボキシル基へと代謝可能な基は、本発明の化合物の5-フェニル環のパラ位に存在すると考えられ、これにより精子形成阻害が保持される。例えば、このパラ位がヒドロキシメチル(CH2OH)、ホルミル(CHO)、カルボキシル(COOH)、およびメトキシカルボニル(C(O)OCH3)基で置換された化合物は、強い精子形成阻害活性を保持する。これらの化合物は5-フェニル環のパラ位に極性置換基が存在するにもかかわらず、経口精子形成阻害活性を示す。
「哺乳類の生理条件下で代謝される」とは、構造(I)を有する化合物を、精子形成阻害処理が望まれる生きた哺乳類に投与する場合にカルボキシル基へと変換する官能基R3を意味する。投与は経口投与であっても、腹膜内投与であっても、または静脈投与であってもよい。基R3のカルボキシル基への変換は、血液または尿において構造(I)を有する化合物の代謝物をモニターすることにより容易に測定される。代謝物はマススペクトルメトリー(MS)、ガスクロマトグラフィー(GC)などの通常の分析法を用いてモニターしてもよい。
哺乳類に投与した際に、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、いっそう好ましくは90%、95%または100%の官能基R3がカルボキシル基へと代謝されることが好ましい。変換のパーセンテージは、血液または尿サンプルを定量的に分析して、前記の慣例分析法の1つを用いて、R3がカルボキシル基へと変換した化合物に対する、官能基R3を含有する非保護化合物の相対量を求めることにより決定できる。
化合物1の精子形成阻害活性は、ラットに対しては30mg/kgの単回の経口投与の後に観察され、24時間内に精巣の重量が劇的に減少する。精細管においては退化が認められる。精子細胞は比重が重くなり、多核会合が起こっている場合もある。セルトリ細胞は細胞学的に正常であるようである。組織学的変化はまずこれら精子細胞で見られるので、化合物1は精子細胞またはそれら精子細胞と会合したセルトリ細胞を標的とすると思われる。
化合物1はマウスでは、30mg/kgの経口用量で嗜眠や鎮静をいくらか引き起こし、同容量を皮下投与した場合は顕著な嗜眠を引き起こす。嗜眠や鎮静は避妊薬においては明らかに望ましくない副作用である。化合物1では嗜眠や鎮静が認められたのに対し、本発明の化合物では最少の嗜眠しかもたらさなかった。
本発明の化合物は、化合物1で認められた鎮静活性から不妊活性を分離することを可能にする。従って本発明の化合物は、望ましくない副作用である鎮静および嗜眠が著しく軽減される効果的な避妊薬である。
本発明の化合物はマウスにおいて、下記のCookら(1995)に記載された手法により、単回の経口投与3日後に、それらの精子形成に関する効果に関して試験された。この試験において活性のある化合物もまた、不妊化合物であることが示された。
雄マウスに胃管用量の対照ビヒクル、陽性対照(化合物1)、また本発明の化合物を1日投与することにより、抗精子形成活性に関して化合物をスクリーニングした。投与後72時間で、動物を殺し、精巣を摘出し、脂肪を切り取って秤量した。精巣の1つは組織学的に調べ、精巣の精子形成能力の半定量的評価である精子形成指数(文献:J.M.Whitsett,P.F.Noden,J.Cherry and A.D.Lawton,J.Reprod.Fertil.,72,277(1984))を用いて精子形成能を評価した。この指数は、精細管中の精子形成細胞の組織学的外観に基づくものである。1から6のスケールが用いられ、5から6が正常な状態である。第2の評価は、精巣の重量に基づいた。
表1および2は、インデノピリジンを含まず投与ビヒクルのみを含有する対照に比べての精巣重量(TW)と精子形成指数(SI)の違いに関する直接関係のある生物学的結果を示している。
8-ヨード-7-メチル-4’-カルボキシまたは4’-カルボメトキシ置換基パターンとのラセミ体2μmol/kg(1mg/kg)の経口用量は、精子形成指数を57-67%低下させ、これに対応する8-ヨード置換基を持たない類似体79μmol/kg(30mg/kg)用量と少なくとも同等の効果があった。8-ブロモまたは8-クロロ類似体の場合では、試験した最少用量(6または2μmol/kg;3または1mg/kg)もまた、非ハロゲン化類似体79μmol/kg(30mg/kg)用量と少なくとも同等の効果があった(表1参照)。8-ヨード-7-メチル-4’-カルボメトキシ類似体の活性型(L型)鏡像異性体と8-H-7-メチル-4’-カルボメトキシ類似体の活性型鏡像異性体の比較(表2)からは、前者の化合物の0.6および2μmol/kg(0.3および1mg/kg)は、後者の化合物の25および75μmol/kg(10および30mg/kg)と同等またはそれよりも高い作用を有することが示された。このように、8位のハロゲン化により、モル効力においておよそ40倍の上昇が達成された。
本発明の化合物に前駆体は、米国特許第3,678,057号に開示された方法の改良法を用いる米国特許第5,319,084号に開示された方法により製造できる。これらの特許はそれらのすべてを本明細書に参照して組み入れられる。R3置換基は適当なグリニャール試薬またはフェニルリチウム試薬を用いることにより分子中へ導入する。この方法により製造した鏡像異性体混合物は、塩形成、それに次ぐ選択的結晶化またはクロマトグラフィーにより分割して純粋な鏡像体とする。文献:C.E.Cookら、J.Med.Chem.,38:753(1995)に記載されているように、例えば、化合物1の分割は、S(+)およびR(-)-2,2’-(1,1’-ビナフチル)リン酸との塩形成により達成でき、化合物3の分割は、R-およびS-マンデル酸との塩形成により達成できる。光学純度はCHIRACEL-ODカラムでの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確立される。
本発明の化合物は、カルボン酸2またはそのエステルの1つ(例えば3)で始めて製造してもよい。2および3のような化合物は、米国特許第5,319,084号に記載されたようにして製造する。別法として、それらを図2で示される方法によって製造してもよく、ここではN置換-3-アリールヘキサヒドロピリジン-4-カルボン酸エステル(4)を加水分解してカルボン酸5とし、次いでこれを塩化チオニルで処理して酸塩化物6を得る。この化合物をAlCl3で処理すると、化合物は環化されて三環式ケトン7となる。ケトン7のp-ハロゲン置換フェニルマグネシウムハライドまたはp-ハロゲン置換フェニルリチウム(4-ブロモフェニルリチウム)との反応により第三級アルコール8が生成し、これをトリアルキルシラン、例えばトリエチルシランなどのトリC1-6アルキルシランやBF3で処理すると還元されて化合物9となり、次いでこれをn-ブタノールなどのアルコール溶媒中、好ましくは激しく沸騰させながら強塩基(例えばKOH)とともに還流させると、所望の立体化学を有するブロモフェニル化合物10が得られる。例えばC1-6アルキルLi化合物を用いるブロモフェニル基のリチオフェニル基への変換、および公知の試薬を用いるカルボキシル化(CO2)によってカルボン酸2が得られ、当技術分野で十分に公知の常法、例えばC1-6アルカノールとの反応によりエステル化してエステル3を得てもよい。
前記の合成を改変して、活性型鏡像異性体である化合物2および3の鏡像体選択的合成を行い、次いでこれを用いて図3に示したように本発明の活性型鏡像異性体を合成してもよい。このように、N置換1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-4-カルボン酸(例えば12)をその酸塩化物へと変換し、この化合物を用いて1R(+)-(2,10)-カンファースルタムまたは1S(-)-(2,10)-カンファースルタムをアシル化する。得られたエノイルスルタム(13)をアリールマグネシウムハライドで処理すると、高いジアステレオ面選択性を有する1,4-付加を受けて、鏡像異性体として極めて過剰に3位でアリール基が導入される。結晶化により純粋な鏡像異性体14が得られる。このアミド官能基は加水分解し、次いでキラルアジュバントを回収できる。次いでこのカルボン酸を前記のように三環式ケトン7へ変換する。この化合物を、ブロモフェニルリチウムおよび図2に示した一連の工程を用いた処理により、鏡像体として実質的に純粋な2および3へと変換することができる。別法として、キラルケトン7を、米国特許第5,319,084号でラセミ体の合成に関して記載された方法により、鏡像体として濃縮された2および3へと変換してもよい。濃縮の程度は、中間体5に類似する鏡像的テトラヒドロインデノピリジンの還元における触媒および温度に依存する。米国特許第5,319,084の図3を参照。かくして、PdCl2/NaBH4/3気圧H2では23℃にて73%の鏡像過剰(enantiomeric excess(ee))であり、55℃で完全にラセミ化し;一方、Pt/C/H2における60℃でのeeは、23℃でのそれに匹するものであった(それぞれ67%および70%)。
酸化条件下でヨウ素と、またはヨウ素の酸化形態との反応により、カルボン酸2またはメチルエステル3のようなそのエステルのいずれかをヨウ素化して8-ヨード類似体17または18を得てもよい(図4)。例えば、酸化水銀の存在下での3とヨウ素約1モルとの反応により、8-ヨード化合物18が高収率で得られる。そのエステルと酸は当技術分野で十分に公知の標準的な化学技術により相互変換可能である。ラセミ体または鏡像異性体のいずれを用いてもよい。また、125I、123Iまたは131Iなどのヨウ素の放射性同位元素を用いて、放射標識した17または18の類似体を得てもよい。このような化合物は、これら化合物の局在化および作用部位を決定するのに有用であり、雄性の生殖不全の診断用の画像形成剤として用いてよい。
ヨード化合物、特に8-ヨード酸17は、この酸の金属塩、例えばナトリウム塩の形成、次いで8-金属中間体の形成により、ブロモおよびクロロ化合物へと変換してもよく、ここでは金属はリチウムなどの金属またはt-BuLiなどの公知の試薬で置換した金属である。8-金属中間体と、ヘキサクロロエタンまたは1,2-ジブロモエチレンなどのハロゲン源との反応により、図4で示された化合物19または20などの対応する8-置換類似体が得られる。対応するフッ素化合物は、8-金属中間体をクロロトリメチルシランと反応させて対応する8-トリメチルシリル化合物を形成させ、次いでこの化合物をBF3-ET2Oの存在下で四酢酸鉛と反応させることにより製造できる。文献:De Mioら、1993、Tetrahedron,49:8129-8138を参照。
例えば求電子ハロゲン原子をその放射性同位体として含有する試薬で8-金属中間体を処理することにより、種々の被験化合物の放射性類似体を得てもよいし、または前記したように、化合物17または18の合成において、ヨウ素の放射性同位体で置換することによりこれら化合物の放射性類似体を製造することができる。本発明のトリチウム標識化合物は、例えば8-ヨード化合物を、パラジウムまたは白金のような貴金属の触媒下、トリチウムガスで還元することによって得てもよい。炭素14類似体は、図2に示したように、例えば、化合物2の合成における工程「g」で14C標識二酸化炭素を用いることにより製造してよい。また、放射化学的合成の技術分野で一般に用いられる化合物の同位元素標識のための他の方法を適用してもよい。
本発明の化合物は、ヒトを含む哺乳類における受精能の調節のための、男性用避妊薬として有用である。家族計画におけるそれらの使用の可能性に加えて、本発明の化合物はまた、致死の測定が実際的ではないか、または望ましくない場合、家畜、野生動物もしくは野生化動物の繁殖力を制御するために有用である。例えば、米国のある地域においてシカの個体数の制御が問題となっている。シカのような季節的に繁殖する動物に、適当な時期におけるこれらの化合物を含有する誘引食餌により本発明の化合物を経口投与することは、繁殖能力を実質的に減退させるであろう。その他の標的動物としては、マウス、ラット、プレーリードッグなどの齧歯類類ならびに、野生のヤギ、ブタ、ウマなどが挙げられる。捕獲された動物園の動物へ本発明の化合物を投与すれば、個体数過剰になる種の繁殖制御の手段となる。
本明細書において使用される「受精能力を制御する」とは、処置される哺乳類の繁殖能力もしくは受精能力を減退させることを意味する。不妊の長さは用量に相関し、従って、本質的に本発明の化合物を使用して不妊を遂行するために十分な用量を用いて不妊期間を延長させ得ると考えられ;従って、本発明の化合物は雄の不妊法として、外科的な精管切除の代替法となり得る。このような不妊法を遂行する場合には、本発明の化合物を、哺乳類の精子形成能(精子形成指数)を不妊レベルまで減退させるに十分な用量を、単回または複数回(2回以上)で投与する。すなわち、精子数を繁殖に十分でないレベルまで減少させるに十分な量および投与期間で、本発明の化合物を投与する。
前記の使用のための本発明の化合物の用量は、用いられる特定の化合物、投与様式および所望の不妊期間によってもちろん違う。しかしながら、動物においては経口用量として約0.02ないし約10mg/kg、好ましくは約0.1ないし3mg/kg/体重/日で満足な結果が得られる。より大きな動物では、約10ないし100mgの1日用量を単回経口単位用量として投与してもよいし、または本発明の化合物の約0.1ないし10mgを含有する分割投与単位として投与してもよい。1種類の活性型鏡像異性体を投与する場合には、一般により少ない用量を投与し、次いでラセミ化合物を投与する。所望により、または必要に応じて、本発明の化合物は、固体もしくは液体担体、または希釈剤とともに投与してよいし、または徐放形態で投与してもよい。このような医薬形態の製剤は当該技術分野において十分公知であり、固体、液体および徐放製剤を製造する従来法のいずれを本発明の化合物とともに用いてもよい。また、本発明の化合物は、当該技術分野において十分公知の、従来の移植片またはスキンパッチにより投与してもよい。
本発明の化合物は、可逆的な精子形成阻害または非外科的不妊のいずれかにより、ヒト男性における避妊に用いられてよい。後者の利用においては、適当な高用量の投与により、外科手術をせずに、かつ、精管切除により起こり得る副作用もなく精管切除の効果が実現する。
本発明の化合物はまた、家畜、野生動物、野生化動物または動物園動物の繁殖制御においても有用である。例えば、動物園動物における繁殖の制御に本化合物を用いてよい。例えばシカのような、人間の居住地に近い野生および野生化動物の個体群、または、自然生態学に強く影響する動物の個体群、例えば野生の小型馬および野生ブタは、射殺もしくは毒殺のような致死法を用いることなく、選択的な餌を与えることにより制御され得る。この過程において、動物の行動は、受精能以外には影響を受けない。
R4が放射性標識である場合、本発明の化合物は、精巣機能の研究および精巣機能不全の診断のために有用である。前記の用量で本化合物を投与すれば、精巣組織に結合する。
本化合物の高度な化学、立体および鏡像選択性は、例えば性欲に対する、それらの一般の作用の欠如とともに、それらが精巣中の特定の高分子と相互作用することを示す。精巣または精巣画分を本化合物の放射性誘導体で処理し、次いで放射化学の技術分野において十分公知の技術を用いて放射活性を検出することにより、精子形成阻害作用に関与する精巣の部位および高分子の位置決定、ならびに同定が可能となる。これを使用して、その崩壊が不妊作用を導き得る精巣の重要な構成要素を検出および同定することができよう。その他の化合物(本化合物の類似体または組み合わせライブラリーからの類似体など)の、放射標識化合物の結合を阻害する能力の比較により、より選択的かつ効力のある精子形成阻害化合物さえ得ることができる。さらに、少用量(受精能力に対して臨床作用を有するには少ない量)の放射性標識化合物を動物またはヒト被験体へ投与し、次いで精巣または精巣の特定領域の放射活性の量を測定することにより、既存の不妊に関する問題が、この高分子の欠失に関連するものかどうかを示すことができる。この放射活性は、生物学的組織の画像技術の分野において十分公知である、PETおよびSPECTなどの技術により、生きた動物またはヒトにおいて測定可能である。
本化合物はまた、分析学的な目的のための内部標準としても有用である。このように、例えば、化合物20などの既知量を、化合物17を投与した動物またはヒトに由来する血液、血漿または組織サンプル中に加えればよい。次いで血液、血漿または組織サンプルを有機溶媒で抽出し、その抽出物をメチルエステルなどの誘導体への変換を行うか、または行わずに分析高性能液体クロマトグラフィーもしくはガスクロマトグラフィーに付す。17および20に関するクロマトグラフィーのピーク面積の測定ならびに、同条件下で処理した既知量の17と20の面積比の比較により、血液、血漿または組織サンプル中の17の濃度を求めることができる。17と20の間の構造はよく似ているので、抽出に対する2つの化合物の物理化学的特性は同様であり、このために、一方が他方に対してほぼ理想的な標準となる。
本発明のその他の特性は、以下の具体例の説明の中で明らかとなろう。なお、これらは本発明の例示のためのものであって、その限定を意図するものではない。
実施例
実施例1:(4aRS,5SR,9bRS)2−エチル−7−メチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(p−カルボキシフェニル−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩の合成
メタノール(500mL)中のヨードエタン(540g,3.41mol)を、エチル=イソニコチナート(500g,3.31mol)に添加した。該混合物を穏やかに一昼夜還流した。水素化ホウ素ナトリウム(140g)を少量ずつ上記溶液に冷却(氷浴)下、添加した。NaBH4の添加終了後、該混合物を室温で一昼夜撹拌した。メタノールのほとんどが蒸発し、水およびエーテルを該溶液に添加して、エーテル層を分離した。乾燥(Na2SO4)エーテル層を蒸発させると、オイルが得られた。該赤色オイルを蒸留すると、黄色のオイルが470g、78%:0.5mmで160℃の沸点で得られた。
乾燥エーテル(200mL)中の上記化合物(146g,0.8mol)を、エーテル中の1Mのp−トリルマグネシウム ブロミド(600mL,−10℃で1.6mol)を滴下した。3時間撹拌後、反応混合物を10%の塩化アンモニウム水溶液(200mL)に注いだ。水層をエーテルで抽出する。乾燥(Na2SO4)エーテル層を蒸発させると、黄色がかった茶色のオイルが得られた。該オイルを18%塩酸水(500mL)に溶解させ、エーテルで抽出した。HCl水溶液を2時間、還流した。溶媒を蒸発させると、相当するアミノ酸(181g,収率80%)が得られ、これ(32g)を、ポリリン酸(500g)と混合し、140℃で3時間、激しく撹拌した。反応混合物を冷却し、50%KOH水溶液を注意深く添加した。塩基性化した溶液をエーテルで抽出した。乾燥(Na2SO4)エーテル層を蒸発させると、オイルとしての、2−エチル−7−メチル−2,3,4,4aα,5,9bα−ヘキサヒドロ−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン−5−オン(22.6g,87%)が得られた。分析用サンプルを、CHCl3中のMeOH勾配(0−5%)を用いて、SiO2の小カラムに通して得た。
C15H19NOとして計算値:m/z 229.1467。実測値:m/z 229.1466。
−78℃の、テトラヒドロフラン(THF)(15mL)中のパラ−ブロモ安息香酸(1.6g,8.0mmol)の機械撹拌溶液に、n−ブチルリチウム(16.2mmol,ヘキサン中2.5M溶液を6mL)を、45分間かけて滴下した。該混合物をさらに1.5時間撹拌後、三環ケトン(1.1g,5.1mmol)を、THF(5mL)の溶液として、30分間かけて滴下し、−78℃で2.5時間、撹拌を続けた。該混合物を氷冷却した1MのHCl(75mL)に注ぎ、エーテル(2X30mL)で抽出した。酸性水層を室温で15時間撹拌し、減圧下、濃縮すると、固体が得られた。該固体をシリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーで、CHCl3中の10−20%MeOHの勾配溶出で精製したところ、2−エチル−7−メチル−2,3,4,9b−テトラヒドロ−5−(p−カルボキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩が黄色固体として(1.1g,58%)得られた。
C22H23NO2としての分子量計算値:m/z 333.1729。実測値:m/z 333.1725。
エタノール/水(1:1混合物、40mL)中の上記化合物(379mg,1.03mmol)の溶液に、NaCl(81mg)、PdCl2(98mg)、NaBH4(100mg)、および濃縮HCl(10滴)を添加した。50℃で15時間、水素雰囲気(45psi)下、パール(Parr)装置を用いて振り動かした後、セライトを通してろ過し、減圧下に濃縮した。得られた固体を無水エタノール中に懸濁させ、セライトでろ過し、ろ液を減圧下に濃縮すると、(4aRS,5RS,9bRS)2−エチル−7−メチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(p−カルボキシフェニル−1H−インデノ[1,2-c]ピリジン塩酸塩が得られた。
C22H25NO2として計算値:m/z 335.18853。実測値:m/z 335.1887。
n−ブタノール(60mL)中の水酸化カリウム(15g)溶液に、上記化合物(2.99g,8.0mmol)を一部添加した。20時間還流後、暗茶色混合物を0℃に冷却し、pH〜1まで、18%HClを用いて酸性化した。溶媒を真空下、除去すると、黄色の固体が得られた。該固体をCHCl3中に取り込み、セライトでろ過し、ろ液を真空下濃縮すると、粗(4aRS,5SR,9bRS)2−エチル−7−メチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(p−カルボキシフェニル)−1H−インデノ[2,2−c]ピリジン塩酸塩が、オフホワイト色の固体として得られた。該固体を10%MeOH−CHCl3を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製すると、1.23g(41%)の表題化合物が白色固体として得られた。融点=280℃(分解)。
C22H25NO2としての分子量計算値:m/z 335.18853。実測値:m/z 335.18830。
C22H26ClNO2・1/2H2Oとしての元素分析計算値:C,69.37;H,7.14;N,3.68。実測値:C,69.72;H,7.15;N,3.55。
実施例2:(4aRS,5SR,9bRS)2−エチル−7−メチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(p−カルボメトキシフェニル)−1H−インデノール[1,2−c]ピリジン塩酸塩の合成
−10℃の、メタノール(50mL)中の実施例1のカルボン酸(3.6g,9.69mmol)の溶液に、塩化チオニル(1.1mL,14.5mmol)を10分間かけて添加した。得られた溶液を5℃で68時間冷蔵庫に保管すると、その間に、細かい白色針状結晶が表われ始めた。3つの収量が得られ、これらを合わせて、表題化合物が2.65gの収量で得られた。
融点=204℃(昇華)。
C23H28ClNO2・1/4H2Oとしての元素分析計算値:C,70.75;H,7.36;N,3.59。実測値:C,70.67;H,7.36;N,3.59。
実施例3:(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−8−ヨード−7−メチル−5−(4−カルボメトキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩(18)およびその(l)−エナンチオマー((l)−18)の合成。
氷酢酸(2mL)中の(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(4−カルボメトキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン(341mg,0.88mmol)の撹拌溶液に、62%HClO4(1mL)を添加し、次いでHgO(205mg,0.95mmol)を添加した。該混合物を、均一溶液とするために、音波処理した。氷酢酸(17mL)中のヨウ素(235mg,0.925mmol)溶液を15分間かけて滴下し、得られた混合物を室温で一昼夜撹拌した。オレンジ−赤色混合物を水(100mL)に注ぎ、5℃に冷却して、30%NaOHでpH12まで塩基性化し、エーテル(3X75mL)で抽出した。透明で、無色のエーテル抽出物を合わせて、水(20mL)および食塩水(30mL)で順次、洗浄し、乾燥(MgSO4)して、ろ過し、真空下で濃縮すると、粗のフリーベース18(448mg)が得られた。これを、3%塩酸メタノール溶液を用いてHCl塩に変換し、酢酸エチル−メタノールから再結晶させた。収率=400mg(89%)。融点=>190℃(分解)。
C23H26NO2I(フリーベースに相当)としての計算値:m/z 475.1008。実測値:m/z 475.1004。
C23H27ClINO2・1/2H2Oとしての元素分析計算値:C,53.04;H,5.42;N,2.69。実測値:C,52.70;H,5.60;N,2.57。活性エナンチオマー、(l)−18を、(l)−3から類似の方法で合成した。
[α]D=−5.6(c=1.18,CHCl3)。
実施例4:(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−8−ヨード−7−メチル−5−(4−カルボキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩(17)の合成。
2mLの酢酸中の(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(4−カルボキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩(250mg,0.673mmol)に、6mLの酢酸および過塩素酸の1:1混合物を添加した。HgO(1.35mmol)を添加し、反応混合物を室温で、HgOが溶解するまで撹拌した。4mLの酢酸および6mLのジクロロメタン中のI2(427mg,1.68mmol)の溶液を、上記反応混合物に、滴下ロウトを用いて滴下した。該反応混合物を室温で一昼夜撹拌し、次いで、セライトでろ過した。赤色固体を水およびジクロロメタンで洗浄した。合わせた2相のろ液を分離ロウトで分離した。有機相を飽和重亜硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム(無水)で乾燥し、ろ過して、濃縮すると、234mgの黄茶色固体が得られ、常法にしたがって塩酸塩に変換した。
C22H24NO2I(フリーベースに相当)としての計算値:m/z 461.0852。実測値:m/z 461.0857。
実施例5:(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−8−ブロモ−7−メチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(4−カルボキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩(19)の合成。
(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−8−ヨード−7−メチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(4−カルボキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩(200mg,0.402mmol)を、20mLのTHFおよび0.4mLのヘキサメチルホスホラミドに溶解した。該溶液に、50mgの水素化ナトリウム(鉱油中60%)を添加した。該混合物を1時間還流し、次いで−78℃に冷却した。tert−ブチルリチウム溶液(0.73mL,ペンタン中1.1M,0.804mmol)をゆっくり添加した。添加終了後、該混合物を−78℃で20分間撹拌した。1,2−ジブロモエチレン(1mL)を添加した。該混合物を−78℃でさらに30分間撹拌し、室温に昇温した。5%塩酸を溶液が酸性になるまで、該溶液に添加した。該混合物をジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン溶液を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。粗生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ;ジクロロメタンおよびメタノール,10:1)で精製すると、表題化合物が得られた:30mg、17%収率。融点:169.6−170.3℃。
C22H25O2BrClN・1.8H2Oとしての元素分析計算値:C,54.68;H,5.22;N,2.90。実測値:C,54.77;H,5.52;N,2.57。C22H24NO2BrとしてのHRMS計算値(フリーベースに相当):m/z 413.0990。実測値:m/z 413.0994。
実施例6:(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−8−クロロ−7−メチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(4−カルボキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩(20)の合成。
(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−8−ヨード−7−メチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(4−カルボキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩(250mg,0.5mmol)を、25mLのTHFおよび0.5mLのHMPA中に溶解した。該溶液に、60mgの水素化ナトリウム(鉱油中60%)を添加した。該混合物を1時間、還流し、次いで、−78℃に冷却した。tert−ブチルリチウム溶液(0.91mL,ペンタン中1.1M,1.04mmol)をゆっくり添加した。添加終了後、該混合物を−78℃で20分間撹拌した。2mLのTHF中のヘキサクロロエタン(2.46g,10.4mmol)の溶液を添加した。該混合物を−78℃でさらに30分間撹拌し、次いで、室温まで昇温した。5%塩酸を溶液が酸性になるまで、添加した。該混合物をジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン溶液を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。粗生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンおよびメタノール,10:1)で精製すると、表題化合物が60mg、30%の収率で得られた。
C22H25O2Cl2Nとしての元素分析計算値:C,65.50;H,6.20;N,3.45。実測値:C,65.65;H,6.73;N,3.59。
C22H24NO2ClとしてのHRMS計算値(フリーベースに相当):m/z 369.1495。実測値:m/z 369.1494。
実施例7:(4aRS,9bRS)−2−エチル−1,2,3,4,4a,9b−ヘキサヒドロ−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン−5−オン(7)の合成。
165gのメチル=1−エチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジンカルボキシラートからの粗メチル=1−エチル−3−(4−メチルフェニル)−4−ピリジンカルボキシラート(類似エチルエステル用の米国特許第5,319,084号に記載されたように調製)を、1Lの18%塩酸水に溶解し、エーテル(300mL)で抽出して、該合成の副生成物として残存するビトリルを除去した。該水溶液を次いで48時間還流し、次いでアセトニトリル(共沸)を添加して減圧下濃縮すると、粗1−エチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジンカルボン酸塩酸塩(283g)が得られ、これを、真空下、100℃で完全に乾燥した。該材料は非常に吸湿性であるため、窒素雰囲気下に保存した。塩化チオニル(150mL)をニートの7(45g,159mmol)に、5℃で注意深く添加した。添加後、氷浴を除去した;得られた均一な溶液を室温で4時間撹拌した。過剰のSOCl2を真空下で除去すると、暗くて粘性があり、ペースト状の物質が得られた。該材料に、1,2−ジクロロエタン(250mL)を添加し、残存SOCl2を除去するために、30mLの溶媒を真空下で除去した。該濃密な混合物に、AlCl3(53g,397mmol)を45分間かけて少しずつ添加した。該温度は約25℃の水浴によってコントロールした。添加後、暗赤茶色の溶液を1時間、35−40℃で撹拌し、約400gの粉砕した氷と50mLの濃塩酸を含有するビーカーに注いだ。水層を、氷水浴で冷却しながら、30%NaOH(約350mL)で約12のpHまで塩基性にした。得られた混合物を氷水浴で冷却しながら、抽出した。得られた混合物は、エーテル(3X400mL)で抽出し、合わせたエーテル層を水および食塩水で続けて洗浄し、乾燥(MgSO4)し、ろ過して、減圧下、濃縮すると、オレンジ−赤色のオイルが得られた。該オイルを、クーゲロール装置を用いて(0.5mmHgで125−135℃)蒸留すると、21.6g(59%)のケトン7が明るい黄色の固体として得られ、NMR特性は、良い一致を示した。
実施例8:(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−7−メチル−5−(4−カルボメトキシフェニル)−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロインデノ[1,2−c]ピリジンおよび(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−7−メチル−5−(4−カルボキシフェニル)−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロインデノ[1,2−c]ピリジンのエナンチオマーの合成。
エナンチオマーは、溶媒中、ナトリウムDラインにおける光学回転に基づいて、(d)または(l)として記載される。同じ回転のサインを有する化合物は必ずしも同じ絶対立体配置を有するとは限らない。
1−エチル−4−カルボキシ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン塩酸塩。メチル=1−エチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジンカルボキシラート(11)を250mLの1.5MのHCl中で4時間還流した。該混合物を、窒素気流下に熱を加えることによって、乾燥するまで濃縮すると、非常に結晶化した固体が得られた。該固体をメタノールから再結晶すると、19.6gの12の塩酸塩が得られた;融点=265℃(分解)。C8H14ClNO2としての元素分析計算値:C,50.14;H,7.36;N,7.31。実測値:C,50.23;H,7.36;N,7.28。
1S(−)−(2,10)カンファースルタム(camphorsultam)から誘導された(l)−エノイルスルタム(Enoyl Sultam)((l)−13)。12の塩酸塩(1.3g,6.79mmol)に、塩化チオニル(15mL)を添加し、得られた混合物を加熱して2時間還流した。過剰のSOCl2を真空下で除去し、残さを、10mLの乾燥トルエンで磨砕し、真空下で濃縮した。磨砕工程を2回繰り返すと、黄色の粉末状固体が得られた。別の容器に、n−ブチルリチウム(15mmol,ヘキサン中2.5M溶液を6.OmL)を、5℃で、THF(30mL)中の1S−(−)−2,10−カンファースルタム(3.16g,14.7mmol)に滴下した。添加後、透明で無色の溶液を室温まで昇温し、さらに45分間撹拌した。スルタムアニオンの溶液を次いでカニューレで、5℃の、塩化アミノ酸塩酸塩(amino acid chloride hydrochloride)を含有するフラスコに移した。添加後、オレンジ色の混合物を室温にし、18時間撹拌した。該反応は、飽和塩化アンモニウム(約1mL)を添加することによって止め、真空下で濃縮すると、茶色でタール質の残さが得られた。該残さをエーテルと水で分割し、エーテル層を水で洗浄した。エーテル層を次いで希塩酸(約5%)で洗浄し、分離した。フリーのスルタム(エーテル層)が、無水エタノールから再結晶することによって、得られた(1.2g)。生成物[(l)−13]は、濃水酸化アンモニウムで酸性水層を、pH12まで塩基性にして、エーテルで抽出し、エーテル層を濃縮した残さをn−ヘキサンから再結晶することによって得た。1.9gの(l)−13が、白色で濃厚な針状結晶として得られた。
融点=120℃。[α]D 21=−74.8°(c=1.0,CHCl3)。1H NMRは、対掌体(以下参照)と一致した。C18H28N2O3Sとしての元素分析計算値:C,61.33;H,8.01;N,7.95。実測値:C,61.35;H,8.06;N,7.89。
13の(d)−エノイルスルタムエナンチオマーは、1R(+)−(2,10)−カンファースルタムから誘導された。これは、アミノ酸12の塩酸塩(6.5g,34.1mmol)および1R−(+)−2,10−カンファースルタム(15.4g,71.4mmol)から、対掌体(上記参照)用の方法と同様にして、86%の収率で調製された。
融点=118.5−119.6℃(ヘキサンから再結晶、濃厚でわら色の葉片)。[α]D 21=+74.1°(c=1.0,CHCl3)。
C18H28N2O3Sとしての元素分析計算値:C,61.33;H,8.01;N,7.95。実測値:C,61.48;H,8.02;N,7.98。該物質の結晶形態は、ヘキサンから如何に早く沈殿させるか、および精製工程中の濃度に依存して種々に変化した。
1,4−付加物(l)−14は、(l)−13から誘導された。−78℃の、エノイルスルタム(l)−13(5.6g,16.0mmol)のトルエン(200mL)溶液に、臭化p−トリルマグネシウム(33.6mmol,エーテル中の1.0M溶液を33.6mL)を10分間かけて添加した。−78℃でさらに30分間撹拌後、反応混合物をフリーザー(−10℃)に一昼夜、放置し、次いで、2時間、+5℃にした。該混合物を、飽和塩化ナトリウム(200mL)に添加することによって、反応を止めた。エーテル(400mL)で水層を抽出後、エーテル層を3%HCl(3X200mL)で抽出した。酸性層を合わせて、濃水酸化アンモニウムで塩基性(pH=12)にし、エーテル(3X200mL)で抽出し、エーテル層を食塩水で洗浄して、乾燥(MgSO4)、ろ過し、減圧下に濃縮すると、オレンジ色の固体(7.12g)が得られた。該固体をエーテル−ヘキサン(約1:2混合物(順次)を約40mL)から再結晶した。収率=3.64g。第2再結晶分はさらに1.24gであった。全収率=4.68g(66%)。融点=150.5−151.7℃(エーテル−ヘキサン;濃厚で粘稠性のある、わら色プリズム);
C25H36N2O3Sとしての元素分析計算値:C,67.53;H,8.16;N,6.30。実測値:C,67.58;H,8.15;N,6.30。
対掌体的に純粋なケトン(d)−7は、(l)−14から誘導された。1,4−付加物(l)−14(6.86g,15.45mmol)のTHF(40mL)溶液に、新たに調製したLiOH・H2O(6.43g,153mmol)の水(40mL)溶液を添加した。得られた不均一な混合物を26時間穏やかな還流下、激しく撹拌した。該混合物を約+5℃に冷却し、濃塩酸でpH=0まで酸性化して、暖かい水浴(温度=50℃)につけながら、揮発性成分のほとんどを、混合物の表面に窒素ガスの強流を穏やかに流して除去した。残存する固体を真空下、完全に乾燥した。得られた粗材料を、塩化チオニル、次いで1,2−ジクロロエタン中のAlCl3を用いて、ラセミ体(上記参照)と類似の方法で、ケトン(d)−7に環化した。一昼夜放置すると固体化するオイルとして、フリーベースケトン(d)−7が1.12g得られた。該材料の一部を、物理特性データを得るために、次の工程から回収後に精製した。
[α]D 20=+95.9°(フリーベース,c=1.2,CHCl3);[α]D 19=+71.9°(塩酸塩,c=1.1,CHCl3)。
対掌体的に純粋なオレフィン(d)−15は、ケトン(d)−7から誘導された。該材料は、ケトン(d)−7(1.12g,4.89mmol)から、ラセミ体の方法(米国特許第5,319,084号参照)と同様にして、得られた。収率は、850mg(47%)であった。[α]D 19=+21.2°(c=1.24,CHCl3)。
(l)−2−エチル−7−メチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(4−ブロモフェニル)−5−ヒドロキシ−1H−インデノ[1,2−c]ピリジンの合成。−78℃で160mLのTHF中の4−ブロモヨードベンゼン(13.8g,48.9mmol)の激しく撹拌された溶液にn−ブチルリチウム溶液(19.6mL,ペンタン中2.5M,49mmol)をゆっくり添加した。添加後、該溶液を−78℃で10分間撹拌すると、黄色くなって、曇った。(d)−2−エチル−7−メチル−1,2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロインデノ[1,2−c]ピリジン−5−オン(8g,34.9mM)の40mLのTHF中の溶液を添加した。該混合物を次いで、−78℃で2時間、撹拌した。冷却浴を除去し、該混合物を水で反応終了させた。有機相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を合わせて、食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を濃縮すると、粗生成物が得られ、これをジクロロメタンから再結晶すると、表題化合物が得られた(10.8g,80%)。
C22H24OBrNとしての元素分析計算値:C,65.28;H,6.26;N,3.62。実測値:C,65.11;H,6.21;N,3.64。
(4aSR,5RS,9bSR)−2−エチル−7−メチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(4−ブロモフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン(l)の(l)−エナンチオマーの合成。(l)−10−2−エチル−7−メチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(4−ブロモフェニル)−5−ヒドロキシ−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン(4,5g,13mmol)および100mLのトリエチルシランの300mL無水ジクロロメタン中の溶液を−78℃に冷却した。トリフルオロボランガスを該溶液に10分間バブリングした。無色の溶液がオレンジ色になった。該混合物を室温に昇温し、10gの炭酸カリウムを添加し、次いで水を添加した。有機相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を合わせて、食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を濃縮すると、粗生成物が得られた。
該粗生成物を40mLのn−ブタノールに溶解し、水酸化カリウム(9g)を添加した。該混合物を撹拌しながら還流させるために加熱した。20時間還流後、該混合物を室温まで冷却し、氷に注いだ。該混合物をジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン溶液を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を濃縮し、粗生成物をジエチルエーテルおよび18%塩酸溶液に分離させた。層を分離し、水溶液を再度、ジエチルエーテルで洗浄した。水溶液を0℃に冷却し、pH>14まで、50%水酸化ナトリウム溶液で塩基性化した。該混合物をジクロロメタンで3回抽出し、有機溶液を食塩水で洗浄してMgSO4で乾燥した。溶媒を濃縮すると、粗生成物が得られ、これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ジクロロメタンおよびメタノール,100:3)で精製すると、表題化合物(l)−10が、3.2g、67%の収率(2工程で)で得られた。塩酸塩は常法にしたがって形成した。融点=240℃(分解)。
C21H24BrN・HClとしての元素分析計算値:C,62.00;H,6.19;N,3.44。実測値:C,61.96;H,6.23;N,3.35。
(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(4−カルボキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩[(l)−2]の合成。5mLのTHF中の100mg(0.27mmol)の(l)−10化合物の溶液を、−78℃に冷却した。該溶液に0.54mLのn−ブチルリチウム溶液(2.5Mペンタン中、1.35mmol)を添加した。該溶液を−78℃で30分間撹拌した。二酸化炭素ガスを該溶液に10分間、針を用いてバブリングした。該溶液を−78℃でさらに10分間撹拌し、室温まで昇温した。THFを蒸発させ、残さを18%塩酸で酸性化した。混合物をジクロロメタンで抽出し、ジクロロメタン溶液を食塩水で洗浄して、MgSO4で乾燥した。乾燥剤をろ過して、該溶液を濃縮すると、粗生成物が得られた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,ジクロロメタンおよびメタノール,10:1から1:1)にかけると、72mg(71%収率)(−)−2が得られた。[α]D=−15.5°(c=1.24,メタノール)。
(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(4−カルボメトキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩[(d)−3]の合成。1mLのメタノール中の(l)−2(20mg)の溶液を−10℃(氷−アセトン)に冷却した。過剰の塩化チオニルを添加し、添加後、該混合物を室温まで昇温し、一昼夜撹拌した。過剰の塩化チオニルと溶媒を、窒素を吹き付けて除去し、残さを真空下で乾燥した。粗生成物をHPLC(”Sumichiral”QA−4900,4mmX25cm;溶媒:53.8%1,2−ジクロロエタン,44%ヘキサン,2.2%エタノール,および0.1%TFA;流速:0.8mL/分;λ=254nm)で分析した。これは、(d)−3の>97%eeを示した。
(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(4−カルボキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩の(d)−エナンチオマー[(d)−2]、および、(4aRS,5SR,9bRS)−2−エチル−2,3,4,4a,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(4−カルボメトキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジン塩酸塩の(l)−エナンチオマー[(l)−3]の合成。これら2つの化合物を、上記したエノイルスルタム(d)−13から出発し、これらのエナンチオマー合成に使用した次なる工程を行って合成可能である。これらの特性は、既に示した。文献:Cook et al.,J.Med.Chem.,38:753−763(1995)参照。
明らかに、本発明の多くの変更および変換が、上記技術の権利範囲内で可能である。したがって、添付したクレームの範囲内で、本発明がここに特別に記載したもの以外でも実施可能である。
Claims (20)
- R3が、COOR(ここで、Rは、C1-3アルキルである)である、請求項1に記載の化合物。
- Rが、メチルである、請求項2に記載の化合物。
- R3が、ヒドロキシメチルである、請求項1に記載の化合物。
- R3が、ホルミルである、請求項1に記載の化合物。
- R3が、カルボキシルである、請求項1に記載の化合物。
- R1が、C1-3アルキルである、請求項1に記載の化合物。
- R2が、C1-3アルキルである、請求項1に記載の化合物。
- R2が、水素である、請求項1に記載の化合物。
- 前記化合物が単一のエナンチオマーであり、抗精子形成活性を有する、請求項1に記載の化合物。
- 前記化合物が2つのエナンチオマーの混合物である、請求項1に記載の化合物。
- R4が、Cl、Br、またはIである、請求項1に記載の化合物。
- R1がエチルであり、R2が水素原子であり、R3がCOOHまたはCOOCH3であり、R4がCl、Br、またはIである、請求項12に記載の化合物。
- 請求項1に記載の化合物を抗精子形成的に有効量と、キャリアまたは希釈剤を含有する、薬剤組成物。
- 請求項13に記載の化合物を抗精子形成的に有効量と、キャリアまたは希釈剤を含有する、薬剤組成物。
- 哺乳類における精子形成抑制するための組成物の調製における、請求項1に記載の化合物の使用。
- 哺乳類における精子形成抑制するための組成物の調製における、請求項13に記載の化合物の使用。
- 精巣の機能不全の診断するための組成物の調製における、請求項1に記載の化合物の使用であって、請求項1の化合物が、化合物の1以上の原子が放射性原子に置換され、放射活性の量または分布を定める、使用。
- 前記放射性原子が、123I、125I、131I、18F、11C、14C、または3Hである、請求項18に記載の使用。
- 哺乳類不妊用組成物の調製における、請求項1に記載の化合物の使用。
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