JP4510998B2 - 油圧装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業機械や車両など、各種の産業分野で広く利用可能な油圧装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、油圧装置として、例えば斜板式油圧ポンプや斜板式油圧モータのようにシリンダブロック等の部品を覆うケースを有する油圧装置がある。このような油圧装置のケースは、一端が開口する有底状のケース本体と、その開口部を塞ぐ蓋部材とを備えている。そして、蓋部材及びケース本体の底部には軸が挿通され、同軸の両端が軸受けを介してそれぞれ蓋部材及びケース本体底部に支持されている。ケース内において、前記軸にはシリンダブロックなどの部品が取り付けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のような軸を軸受けで支持する油圧装置であって、特に第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けと、第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けとにより軸を支持した油圧装置において、第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けを第1スラスト・ラジアル兼用の軸受け側へ向け押しつけることで、第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けと第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けの組付けを容易に行える油圧装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、軸と平行に配置されたプランジャを収納し回転自在に支承されたシリンダブロックと前記プランジャに当接する回転斜板面をもつ筒状のヨークとを有する油圧装置において、前記軸の一方側には第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けを設けるとともに、他方側には第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けを設け、前記第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けと第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けとの間において前記軸にはシリンダブロック係止部を設け、該シリンダブロック係止部よりも一方側において前記軸には前記第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けの他方側側面に当接する当接部位を設け、該当接部位よりも一方側において前記ヨークには前記第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けの一方側側面を係止する係止部位を設け、前記第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けをシリンダブロック側に押つけることで、シリンダブロックを前記シリンダブロック係止部へ押当て固定するとともに、前記軸の当接部位を前記第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けの他方側側面へ押当てて前記第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けの一方側側面を前記ヨークの係止部位に押当て固定することを要旨とする。
【0005】
従って、請求項1に記載の発明においては、組付時において、第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けをシリンダブロック側に押しつけると、シリンダブロックは軸に設けられたシリンダブロック係止部を押圧する。すると、軸に設けられた第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けに当接する部位は、第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けの他方側の側面を押圧する。すると、第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けの一方側側面は、ヨークに設けられた第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けを係止する部位にて係止される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の油圧装置において、前記シリンダブロック及び前記ヨークを覆う筒状のケースと該ケースの他方側から挿入されるホルダとを備え、前記軸には前記第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けの内輪を設けるとともに、前記ホルダの内周面には前記第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けの外輪を設け、前記第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けの内輪の外周面及び外輪の内周面を、前記軸の一方側に向うほど拡径し、前記ホルダを前記ケースに挿入することによって前記第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けが前記シリンダブロック側に押つけられることを要旨とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を油圧式の無段変速装置に具体化した実施の形態を図1〜図7を参照して詳細に説明する。
【0007】
図1〜図4に示すように、油圧式無段変速装置Tのケース11は一側方が開口する略筒状の本体ケース12と、その本体ケース12の開口部に固定された蓋部13とから構成されている。前記蓋部13に設けられた貫通孔13aには、ホルダ14が挿入固定され、図3に示すように、同ホルダ14のフランジ部14aと蓋部13の入力側との間にシムSが介在されている。そして、ホルダ14はフランジ部14aを介してボルトBが蓋部13に螺入されることにより、蓋部13に対して締結固定されている。
【0008】
油圧式無段変速装置Tの入力軸15の入力側は、ホルダ14に対して円錐コロ軸受16を介して回転自在に支持され、出力側は本体ケース12内の出力側に設けられた筒状のヨーク38内周面に対して円錐コロ軸受41を介して回転自在に支持されており、PTO軸とされている。本実施形態では、前記入力軸15が軸に相当し、前記円錐コロ軸受16が第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けに相当する。前記ヨーク38は本体ケース12の出力側に対してラジアルベアリング17を介して回転自在に支持されている。
【0009】
前記ホルダ14には前記入力軸15が貫通する貫通孔14bが形成されている。同貫通孔14bにおける入力側は拡径されて、シール部材収納孔18が形成され、同シール部材収納孔18にはシール部材19が配置されている。また、前記貫通孔14bにおける出力側も拡径され、軸受収納孔20が形成されている。前記円錐コロ軸受16の内輪16aは入力軸15に外嵌固定され、その外輪16bは軸受収納孔20の拡径した段部底面及び周面に当接固定されている。
【0010】
前記内輪16aの出力側近傍における入力軸15にはスリーブ21が外嵌固定され、同スリーブ21の入力側側面は前記内輪16aに当接されている。また、スリーブ21の出力側側面は後記するシリンダブロック25の入力側側面に当接されている。前記軸受収納孔20の開口部には、軸受収納孔20よりも拡径された軸受取付段部22(図3参照)が形成され、同軸受取付段部22にはラジアルベアリング23が取付けされている。
【0011】
前記ラジアルベアリング23は外輪23aと内輪23bとを備えており、同外輪23aは軸受取付段部22の拡径した段部底面及び周面に当接固定されている。図2に示すように、前記ラジアルベアリング23はその軸心が後記するシリンダブロック25の軸線Oに対して一定角度傾斜した状態に配置されており、その内輪23bは後記する第1切替弁56を所定タイミングで軸線O方向に摺動させるためのカムとされている。前記内輪23bの出力側側面はカム面58となっている。
【0012】
油圧ポンプPは、入力軸15と、同入力軸15に対して一体に設けられたシリンダブロック25と、シリンダブロック25に摺動自在に配置された複数のプランジャ26と、及び前記プランジャ26に対して当接する斜板面27を含むクレイドル28とを備えている。
【0013】
前記クレイドル28は、ホルダ14の出力側端部近傍の外周に配置され、蓋部13に取り付けられている。クレイドル28はシリンダブロック25の軸線Oと直交するトラニオン軸線TR1(図3参照)を中心とした傾動が可能とされている。前記シリンダブロック25の入力側において、同シリンダブロック25は入力軸15に対してスプライン結合されている。シリンダブロック25の出力側側面は、入力軸15の外周に設けられたシリンダブロック係止部としての係止フランジ15aに当接されている。シリンダブロック25には、その回転中心の周りに複数のシリンダ孔29が環状に配列され、軸線Oと平行に延設されている。同シリンダ孔29は、入力側に開口が形成されている。各シリンダ孔29には前記プランジャ26が摺動自在に配置されている。
【0014】
プランジャ26の先端には、鋼球26aが転動自在に嵌合されており、プランジャ26は鋼球26a及び鋼球26aを取着したシュー30を介して斜板面27に当接されている。傾斜状態の斜板面27はシリンダブロック25の回転に伴ってプランジャ26を往復動させ、吸入、吐出行程の作用を付与する。
【0015】
油圧モータMは、前記シリンダブロック25に摺動自在に配置された複数のプランジャ36、及び前記プランジャ36に対して当接する回転斜板面37をもつ略ラッパ状のヨーク38とを備えている。
【0016】
図4に示すように、前記ヨーク38の内周には、出力側から入力側にかけて順番に径が大きくなる3つの拡径部38a,38b,38cが設けられている。前記拡径部38aにはシール部材40が配置され、拡径部38bには円錐コロ軸受41が配置されている。前記円錐コロ軸受41の内輪41aは入力軸15に外嵌固定され、その入力側側面は入力軸15の外周が縮径した段部15bに当接されている。また、円錐コロ軸受41の外輪41bは拡径部38bの拡径した段部底面及び周面に当接固定されている。
【0017】
本実施形態では、前記円錐コロ軸受41が第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けに相当し、ヨーク38における前記拡径部38bを形成した部位が、第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けを反当接部位側にて係止する部位に相当する。加えて、前記入力軸15の段部15bは第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けに当接する部位に相当する。
【0018】
又、本実施形態では、入力軸15、シリンダブロック25、プランジャ26,36、円錐コロ軸受16,41、及びヨーク38等にて油圧装置が構成されている。
【0019】
拡径部38cにはラジアルベアリング42が配置されている。前記ラジアルベアリング42は外輪42aと内輪42bとを備えており、同外輪42aは拡径部38cの拡径した段部底面及び周面に当接固定されている。図2に示すように、前記ラジアルベアリング42はその軸心がシリンダブロック25の軸線Oに対して一定角度傾斜した状態に配置されており、その内輪42bは後記する第2切替弁66を所定タイミングで軸線O方向に摺動させるためのカムとされている。前記内輪42bの入力側側面はカム面68となっている。
【0020】
前記本体ケース12の出力側側部には貫通孔12aが形成され、同貫通孔12aの出力側端部は内周が縮径された縮径部12bが設けられている。前記縮径部12bにはシール部材43が配置され、貫通孔12aには出力側から入力側にかけて順番に前記ラジアルベアリング17、スリーブ44、円錐コロ軸受45が配置されている。ラジアルベアリング17の内輪17aはヨーク38に外嵌固定され、その外輪17bは縮径部12b側部及び貫通孔12aの周面に当接固定されている。
【0021】
前記スリーブ44は前記ラジアルベアリング17の外輪17b及び貫通孔12aの周面に当接固定されている。円錐コロ軸受45の内輪45aはヨーク38に外嵌固定され、その入力側側面はヨーク38の外周に設けられた段部38dの側面に当接されている。円錐コロ軸受45の外輪45bはスリーブ44及び貫通孔12a周面に当接固定されている。
【0022】
前記ヨーク38の出力側端部は本体ケース12の出力側側部から若干突出しており、出力軸47が形成されている。回転斜板面37はヨーク38によりシリンダブロック25の軸線Oと直交する仮想のトラニオン軸線TR2(図4参照)を中心として軸線Oに対して一定角度傾斜した状態に保持されている。
【0023】
前記シリンダブロック25には、その回転中心の回りにシリンダ孔29と同数のシリンダ孔39が環状に配列され、軸線Oと平行に延設されている。同シリンダ孔39は前記シリンダ孔29の同一円周上に配置されている。又、各シリンダ孔39は互いに隣接するシリンダ孔29間に位置するように、シリンダブロック25の周方向において、シリンダ孔29とは互いに1/2ピッチずつずらして配置されている(図5及び図6参照)。
【0024】
さらに、シリンダ孔39はシリンダ孔29とは図2に示すようにその長さ方向(シリンダブロック25の軸線O方向)において、互いにオーバラップするように配置され、前記ヨーク38側に開口が形成されている。各シリンダ孔39には、プランジャ36が摺動自在に配置され、その先端には、鋼球36aが転動自在に嵌合されている。プランジャ36は鋼球36a及び鋼球36aを取着したシュー48を介して回転斜板面37に当接されている。前記回転斜板面37とシリンダブロック25との相対回転に伴ってプランジャ36が往復動して受入・排出行程を繰り返す。
【0025】
前記油圧ポンプPと油圧モータMとの間に形成されている油圧回路について説明する。
シリンダブロック25の軸方向両端の内周面には、ともに環状の第1油室51及び第2油室52が形成されている。シリンダブロック25には前記第1油室51及び第2油室52を共に連通する第1弁孔53が、シリンダ孔29と同数個、シリンダブロック25の軸方向に沿って延設されている。又、シリンダブロック25には前記第1油室51及び第2油室52を共に連通する第2弁孔54が、シリンダ孔39と同数個、シリンダブロック25の軸方向に沿って延設されている。
【0026】
各第1弁孔53及び各第2弁孔54は、前記シリンダ孔29及びシリンダ孔39のピッチ円と同心であり、かつ、そのピッチ円よりも小径のピッチ円上に配置されている。各第1弁孔53と各第2弁孔54とは、図5及び図6に示すように互い隣接するように配置されている。
【0027】
図1,7に示すように、各第1弁孔53には、第1油室51と第2油室52との間において、対応するシリンダ孔29に連通する油路55のポンプポートUが形成されている。
【0028】
各第1弁孔53には、スプール型の第1切替弁56が摺動自在に配置されている。第1切替弁56の基端面と第1弁孔53の底面との間にはコイルスプリング57が配置されている。以下、第1弁孔53におけるコイルスプリング57が配置されている空間を圧力付与室53aとしている。前記コイルスプリング57の付勢力と後述する圧力付与室53a内にチャージされた作動油の圧力との協働により、第1切替弁56の先端部は前記内輪23bのカム面58に対して常時当接されている。
【0029】
図7には、ラジアルベアリング23の内輪23bのカムプロフィールを示している。同図に示すように前記内輪23bのカム面58は、第1切替弁56をポート閉鎖位置n0を中心としてポンプポートUと第1油室51とを連通させる第1開口位置n1と、ポンプポートUと第2油室52とを連通させる第2開口位置n2間をサインカーブを描くように往復動させる領域H及び領域Iを備える。
【0030】
図7に示すように複数個のプランジャ26のうち、何れかは、カムプロフィールの領域Hに、何れかは領域Iに位置する。そして、ラジアルベアリング23の内輪23bのカム作用により、油圧ポンプPには吸入行程と、吐出行程とが付与される。
【0031】
本実施形態では、図1,3で図示の如く、クレイドル28が軸線Oに対して反時計回り方向へ傾動している場合に、領域Hにおいては、シリンダブロック25の回転に伴って、第1切替弁56が第1開口位置n1に移動されて、ポンプポートUを第1油室51に連通させるとともに、第2油室52とは不通状態にする。そして、領域Hでは、吸入作動を行うプランジャ26により、第1油室51、ポンプポートU、油路55を介してシリンダ孔29に作動油が吸入される。
【0032】
又、領域Iにおいては、シリンダブロック25の回転に伴って、第1切替弁56が第2開口位置n2に移動されて、ポンプポートUを第2油室52に連通させるとともに、第1油室51とは不通状態にする。そして、領域Iでは、吐出作動を行うプランジャ26により、シリンダ孔29から、油路55、ポンプポートUを介して第2油室52に作動油が吐出される。
【0033】
そして、クレイドル28が軸線Oに対して時計回り方向へ傾動すると、領域Hにおいて、シリンダ孔29から、油路55、ポンプポートUを介して第1油室51に作動油が吐出される。この時、領域Iにおいては、第2油室52、ポンプポートU、油路55を介してシリンダ孔29に作動油が吸入される。
【0034】
図1,7に示すように、各第2弁孔54には、第1油室51と第2油室52との間において、対応するシリンダ孔39に連通する油路65のモータポートWが形成されている。
【0035】
各第2弁孔54には、スプール型の第2切替弁66が前記プランジャ36に対して平行となるように摺動自在に配置されている。第2切替弁66の基端面と第2弁孔54の底面との間にはコイルスプリング67が配置されている。以下、第2弁孔54におけるコイルスプリング67が配置されている空間を圧力付与室54aとしている。前記コイルスプリング67の付勢力と後述する圧力付与室54a内にチャージされた作動油の圧力との協働により、第2切替弁66の先端部は前記内輪42bのカム面68に対して常時当接されている。
【0036】
図7には、ラジアルベアリング42の内輪42bのカムプロフィールを示している。同図に示すように前記内輪42bのカム面68は、第2切替弁66をポート閉鎖位置m0を中心としてモータポートWと第2油室52とを連通させる第1開口位置m1と、モータポートWと第1油室51とを連通させる第2開口位置m2間をサインカーブを描くように往復動させる領域J及び領域Kを備える。
【0037】
図7に示すように複数個のプランジャ36のうち、何れかは、カムプロフィールの領域Jに、何れかは領域Kに位置する。なお、図7において、カム面58とカム面68との相対位置は、前記ラジアルベアリング42がヨーク38とともに回転するため変化するが(図3参照)、説明の便宜上、1つにまとめて図示している。
【0038】
そして、シリンダブロック25の相対回転に伴って、この内輪42bのカム作用により、油圧モータMには受入行程、排出行程が付与される。
本実施形態では、ポンプ側の領域Hが吸入行程で領域Iが吐出行程の時、領域Jは、シリンダブロック25の相対回転に伴って、第2切替弁66が第1開口位置m1に移動されて、モータポートWと第2油室52とを連通させるとともに、第1油室51とは不通状態にする。そして、領域Jでは、膨張作動を行うプランジャ36により、第2油室52、モータポートW、油路65を介してシリンダ孔39に作動油が吸入される。
【0039】
又、領域Kにおいては、シリンダブロック25の相対回転に伴って、第2切替弁66が第2開口位置m2に移動されて、モータポートWを第1油室51に連通させるとともに、第2油室52とは不通状態にする。そして、領域Kでは、収縮作動を行うプランジャ36により、シリンダ孔39から、油路65、モータポートWを介して第1油室51に作動油が排出される。
【0040】
そして、ポンプ側の領域Hが吐出行程、領域Jが吸入行程の時、領域Jにおいて、シリンダ孔39から油路65、モータポートWを介して、第2油室52に作動油が排出される。この時、領域Kにおいては、第1油室51、モータポートW、油路65を介してシリンダ孔39に作動油が吸入される。
【0041】
シリンダ孔29、シリンダ孔39、第1油室51、第2油室52、第1弁孔53、第2弁孔54、油路55、油路65、ポンプポートU及びモータポートWとにより、油圧回路、すなわち油圧閉回路が構成されている。
【0042】
前記油圧回路に作動油をチャージするために、入力軸15内には軸線Oに沿って軸孔70が穿設されている。軸孔70は、ホルダ14において、半径方向に導入油路71を有しており、同導入油路71はホルダ14の内周面に形成された周溝72及びホルダ14に半径方向に穿設された油路73に連通されている。蓋部13には油路73に連通する油路74が設けられ、油路74内には図示しないチャージポンプからの作動油が満たされている。
【0043】
入力軸15において、第1油室51及び第2油室52と相対する部分には、軸孔70に連通可能な弁座を開閉する一対のチャージ弁75(逆止弁)が配置されている。同チャージ弁75は油圧回路が作動油で満たされるまで開口して、軸孔70内の作動油を油圧回路に供給する。又、同チャージ弁75は作動油が軸孔70へ逆流するのを防止する。
【0044】
また、入力軸15において、コイルスプリング57,67とそれぞれ相対する部分には、半径方向に油路77が形成されている。シリンダブロック25の内周面には、圧力付与室53a,54aにそれぞれ連通する周溝78が形成されており、同周溝78は前記油路77に連通されている。前記圧力付与室53a,54aには、前記軸孔70、油路77、周溝78を介して図示しないチャージポンプからの作動油が満たされている。
【0045】
次に、本実施形態のように構成された油圧式無段変速装置Tの組み付け方法の一例を説明する。
まず、本体ケース12の入力側が上方、出力側が下方になるように本体ケース12を置く。次に、シール部材43、ラジアルベアリング17、スリーブ44、及び円錐コロ軸受45を本体ケース12の縮径部12b及び貫通孔12aに配置させる。そして、シール部材40、円錐コロ軸受41、及びラジアルベアリング42を取り付けたヨーク38を前記円錐コロ軸受45、スリーブ44、ラジアルベアリング17、及びシール部材43内に挿入する。さらに、前記ラジアルベアリング42、円錐コロ軸受41、及びシール部材40内にその出力側が挿通するように、入力軸15を本体ケース12内に挿入する。
【0046】
なお、この時点で、入力軸15の段部15bと円錐コロ軸受41、円錐コロ軸受41の出力側側面とヨーク38、ヨーク38の段部38dと円錐コロ軸受45、円錐コロ軸受45とスリーブ44、スリーブ44とラジアルベアリング17、ラジアルベアリング17と縮径部12bの入力側側面とがそれぞれ当接すると、入力軸15は出力側への移動が規制される。従って、この後の油圧式無段変速装置Tを構成する部品の取り付け作業を行う際でも、本体ケース12内に配置した入力軸15をジグなどで軸線O方向へ動かないように押さえる必要がない。
【0047】
次に、先端にシュー30を有するプランジャ26と、先端にシュー48を有するプランジャ36と、コイルスプリング57,67と、切替弁56,66とをシリンダブロック25に取り付け、そのシリンダブロック25を前記入力軸15に挿通する。そして、シリンダブロック25と入力軸15とをスプライン結合し、スリーブ21を入力軸15に挿通し、クレイドル28を蓋部13に取り付け、蓋部13を図示しないボルトにて本体ケース12に締結固定する。
【0048】
さらに、ホルダ14に円錐コロ軸受16、ラジアルベアリング23、シムS、及びシール部材19を取り付け、そのホルダ14をボルトBを介して蓋部13に締結固定する。
【0049】
上記のように、ホルダ14をボルトBを介して蓋部13に締結させると、ホルダ14の軸受収納孔20の段部底面が、円錐コロ軸受16の外輪16bを押圧する。すると、円錐コロ軸受16の内輪16aはスリーブ21を介してシリンダブロック25の入力側側面を押圧し、シリンダブロック25の出力側側面は入力軸15の係止フランジ15aを押圧する。そして、入力軸15の段部15bは円錐コロ軸受41の内輪41aを押圧し、円錐コロ軸受41の外輪41bはヨーク38の拡径部38b段部底面を押圧する。
【0050】
すると、ヨーク38の段部38dの側面は円錐コロ軸受45の内輪45a、外輪45b、スリーブ44、及びラジアルベアリング17の外輪17bを押圧する。そして、前記外輪17bは縮径部12bの入力側側面に当接係止される。
【0051】
すなわち、ホルダ14を蓋部13に対して締結することで、ケース11内の油圧式無段変速装置Tを構成するそれぞれの部品が同時に組み付けられる。その結果、円錐コロ軸受16と、円錐コロ軸受41の軸線O方向における位置決めが容易に行える。
【0052】
従って、本実施形態の油圧式無段変速装置Tによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の油圧式無段変速装置Tの油圧装置では、スリーブ21及びシリンダブロック25を介した円錐コロ軸受16と、円錐コロ軸受41とにより入力軸15を圧迫状態でケース11内に取り付けるように構成している。従って、円錐コロ軸受16を円錐コロ軸受41側へ向け押しつけることで、円錐コロ軸受16と円錐コロ軸受41とにより入力軸15を挟み付けた圧迫状態で取り付けできる。
【0053】
(2)本実施形態の油圧式無段変速装置Tでは、本体ケース12の一側方から油圧式無段変速装置Tを構成する構成部品を順次取り付けられるように構成している。また、本体ケース12内に取り付けた入力軸15に対して、油圧式無段変速装置Tを構成する他の構成部品を取り付ける際に、入力軸15の出力側端部をジグなどで軸線O方向に固定する必要がない。従って、本体ケース12の一側方から油圧式無段変速装置Tを構成する構成部品を順次取り付けられるため、油圧式無段変速装置Tの組み付け作業が容易にできる。
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態は以下のような他の実施形態に変更して具体化してもよい。
【0054】
・本実施形態の油圧装置では、入力側及び出力側の両方にプランジャ26,36を有したシリンダブロック25に対して、円錐コロ軸受16と円錐コロ軸受41とにより入力軸15を圧迫取り付けする構造を採用していた。しかし、これに限らず、シリンダブロック25の入力側又は出力側のうち一方にプランジャを有した油圧装置、すなわち、油圧ポンプPのみに構成したり、油圧モータMのみに構成したりして、円錐コロ軸受16と円錐コロ軸受41とにより入力軸15を圧迫取り付けする構造を採用してもよい。
【0055】
・本実施形態では、第1スラスト・ラジアル兼用の軸受け、及び第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けとして円錐コロ軸受16,41を採用していたが、これに限らず、第1スラスト・ラジアル兼用の軸受け、及び第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けとしてアンギュラ玉軸受を採用してもよい。
【0056】
・本実施形態では、入力軸15を入力軸として機能させ、ヨーク38を出力軸として機能させていたが、これに限らず入力軸15を出力軸として機能させ、ヨーク38を入力軸として機能させてもよい。
【0057】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けを第1スラスト・ラジアル兼用の軸受け側へ向け押しつけることで、第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けと第1スラスト・ラジアル兼用の組付けが容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態における油圧式無段変速装置の断面図。
【図2】 図1におけるA−A線矢視断面図。
【図3】 本実施形態における油圧式無段変速装置の油圧ポンプ側の要部断面図。
【図4】 本実施形態における油圧式無段変速装置の油圧モータ側の要部断面図。
【図5】 図1におけるB−B線矢視断面図。
【図6】 図1におけるC−C線矢視断面図。
【図7】 内輪23b,42bのカム作用を示す説明図。
【符号の説明】
15…軸としての入力軸、
15a…シリンダブロック係止部としての係止フランジ、
15b…第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けに当接する部位としての段部、
16…第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けとしての円錐コロ軸受、
25…シリンダブロック、26,36…プランジャ、
41…第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けとしての円錐コロ軸受。
Claims (2)
- 軸と平行に配置されたプランジャを収納し回転自在に支承されたシリンダブロックと前記プランジャに当接する回転斜板面をもつ筒状のヨークとを有する油圧装置において、
前記軸の一方側には第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けを設けるとともに、他方側には第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けを設け、前記第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けと第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けとの間において前記軸にはシリンダブロック係止部を設け、該シリンダブロック係止部よりも一方側において前記軸には前記第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けの他方側側面に当接する当接部位を設け、該当接部位よりも一方側において前記ヨークには前記第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けの一方側側面を係止する係止部位を設け、
前記第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けをシリンダブロック側に押つけることで、シリンダブロックを前記シリンダブロック係止部へ押当て固定するとともに、前記軸の当接部位を前記第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けの他方側側面へ押当てて前記第1スラスト・ラジアル兼用の軸受けの一方側側面を前記ヨークの係止部位に押当て固定することを特徴とする油圧装置。 - 前記シリンダブロック及び前記ヨークを覆う筒状のケースと該ケースの他方側から挿入されるホルダとを備え、
前記軸には前記第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けの内輪を設けるとともに、前記ホルダの内周面には前記第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けの外輪を設け、前記第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けの内輪の外周面及び外輪の内周面を、前記軸の一方側に向うほど拡径し、
前記ホルダを前記ケースに挿入することによって前記第2スラスト・ラジアル兼用の軸受けが前記シリンダブロック側に押つけられることを特徴とする請求項1に記載の油圧装置。
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