JP4510771B2 - 軽量非粘着性ガイドローラ - Google Patents

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Description

本発明は、新聞輪転機、オフセット輪転機等の印刷機に使用されるガイドローラに関する。
新聞輪転機、オフセット輪転機等の印刷機においては、近年、印刷速度の高速化、ローラ群の軽量化および設備コスト低減のために、炭素繊維強化樹脂製のガイドローラが多く使用されている。
新聞輪転機において印刷される紙の紙幅には、新聞の見開きの幅寸法のもの(以下「D巻き」と称する。)、新聞の見開きにさらに見開きの半分を付け足した幅寸法のもの(以下「C巻き」と称する。)、新聞の見開きの2倍の幅寸法のもの(以下「A巻き」と称する。)、新聞の見開きの半分の幅寸法のもの(以下「ペラ」と称する。)の4種類(図4)があり、ガイドローラは、これらの紙面にシワが出ないように、また紙面に読者に不快感をもたらす汚れを付着させないように、紙を搬送するものである。
このように、ガイドローラには、良好な紙搬送性と非汚染性が要求され、従来、以下のようなものが提案されている。
[従来例1]
炭素繊維強化樹脂製のローラ基材の表面(ローラ基材の円周面のことを意味する。以下同じ。)に、フッ素樹脂および金属酸化物微粒子を分散した導電性ゴム層を設けたもの(例えば特許文献1参照)
[従来例2]
炭素繊維強化樹脂製のローラ基材の表面に樹脂および細骨材の混合物層を形成することによりその表面を微小凹凸面とし、その上にセラミックスを溶射し、さらにその上に非粘着性のシリコーン樹脂をコーティングしたもの(例えば特許文献2参照)
[従来例3]
炭素繊維強化樹脂製のローラ基材の表面を金属製円筒で被覆し、金属製円筒の外周面に大径周面部と小径周面部を混在させて形成し、その上にクロムメッキ層を形成したもの(例えば特許文献3参照)
[従来例4]
ローラ基材として、その周面に複数の大径周面部と複数の小径周面部とが互いに隣接配置された状態で存在する炭素繊維強化樹脂製のローラ基材を用い、ローラ基材の表面に樹脂および細骨材の混合物層を形成することによりその表面を微小凹凸面とし、その上にセラミックスを溶射し、さらにその上に非粘着性のシリコーン樹脂をコーティングしたもの(例えば特許文献4参照)
特開平11−82476号公報 特開平9−175703号公報 特開平6−106702号公報 特開平11−165930号公報
上記従来例のうち、従来例1および従来例3においては、ローラ表面がゴム層あるいはクロムメッキ層であるため、ローラ表面の非粘着性が低くインクで汚染されやすいため、1日〜2日間程度の新聞印刷後にその表面を洗い油(白灯油)等で洗浄する必要がある。新聞輪転機では1台あたり100本〜300本ものガイドローラが使用されていることから、作業者の洗浄作業負荷も大きいものがある。
一方、従来例2では、ローラ表面にシリコーン樹脂がコーティングされているので、従来例1、3のローラと比べ非粘着性に優れている。しかし、従来例2では、ローラ全体が同一径であり全体で紙面と接触するため、ローラ表面にインクや紙粉が付着しやすい。そして、少し汚れた時点で表面の摩擦力が少し大きくなり、ローラに付着したインクや紙粉が紙面に逆転写する量よりもローラに付着するインクや紙粉の量が増加し、大きな摩擦力となって、ついにはローラ表面に大量に付着したインクや紙粉が紙面を部分的に汚す問題が発生し、さらに大きな摩擦力が部分的に起こるために紙面にシワを発生させるようになる問題がある。このため、洗浄サイクルとして、通常、1週間毎に洗い油(白灯油)等でローラ表面を洗浄している。
これらのローラを改善して洗浄サイクルを低減させようとしたものが従来例4のローラであり、大径周面部とそれ以外の部分の小径周面部との径差によりスリップ性(滑り性)を改善して摩擦力を低減させるとともに、大径周面部、小径周面部ともにシリコーン樹脂等の非粘着性の材料を表面にコーティングし、ローラの早期汚れ防止を図っている。ところが、大径周面部は新聞紙面の見開きの両端部と中央部の印刷されていない部分のほかに、その近傍の印刷部分にも配置されている。これは、新聞紙面の横ぶれを考慮し、A巻きとD巻き搬送時に大径周面部がA巻きあるいはD巻きの両端部に確実に接触するようにするためである。しかし、印刷された部分と接触する大径周面部では、インクや紙粉の付着による汚れが新聞の印刷部数の増加とともに徐々に増加する。これは大径周面部と新聞紙面とのスリップ性が徐々に低下するためである。すなわち、従来例4のローラでは、ローラが清浄な状態にある場合には、大径周面部の新聞紙面とのスリップ性によるインクや紙粉の汚れ防止作用に加え、大径周面部と小径周面部の径差による新聞紙面とのスリップ性によるインクや紙粉の汚れ防止作用が働き、また、ローラの小径周面部ではシリコーン樹脂等の非粘着性材料によるインクや紙粉の汚れ防止作用が働くが、新聞の印刷部数の増加に伴い大径周面部においてインクおよび紙粉の付着による汚れが増大し、新聞紙面と大径周面部のスリップ性が徐々に低下するので、小径周面部における新聞紙面とのスリップ性も徐々に低下する。これは、新聞紙面とのスリップ性は大径周面部と小径周面部の径差による新聞紙面とのスリップ性に加え、大径周面部と新聞紙面のスリップ性によって小径周面部との新聞紙面のスリップ性を強化するという両方の機能によってガイドローラの汚れ防止が図られるため、新聞紙面と大径周面部のスリップ性が徐々に低下すると、小径周面部における新聞紙面とのスリップ性も徐々に低下するためである。このため、インクおよび紙粉の付着による汚れが新聞印刷部数の増加にともない徐々に増大し、比較的短期間でローラ表面が汚れるという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、ローラ表面と新聞紙面との高いスリップ性および非粘着性を長期間維持でき、ローラ汚れを長期間防止できるようにすることにある。
本発明の軽量非粘着性ガイドローラは、炭素繊維強化樹脂製のローラ基材の円周面の少なくとも両端部および中央部にフッ素樹脂製チューブを圧着してなるフッ素樹脂製チューブ部とこのフッ素樹脂製チューブ部以外のローラ基材の円周面に樹脂および細骨材の混合物層を形成することによりその表面を微小凹凸面とし、さらに微小凹凸面上にシリコーン樹脂をコーティングしてなるシリコーン樹脂部の両方を備え、フッ素樹脂製チューブ部の外径が全て同一であり、シリコーン樹脂部の外径はフッ素樹脂製チューブ部の外径より小さいことを特徴とするものである。
ここで、フッ素樹脂は、もともとスリップ性(滑り性)および非粘着性に優れるが、本発明では、新聞紙面との滑り摩擦係数が0.300以下(新東科学株式会社「HEIDEN トライボギア ミューズ TYPE:951」で測定した静摩擦係数)のものを使用することが好ましい。
本発明において、フッ素樹脂製チューブは、ローラ基材の円周面の少なくとも両端部および中央部を研磨して形成された溝に圧着することができる。
また、本発明において、シリコーン樹脂部は、その長手方向の中間部に向けて徐々に縮径するテーパー形状に形成することができる
の構成では、フッ素樹脂製チューブ部とシリコーン樹脂部の長手方向の中間部との間の段差は0.1mm〜0.5mmの範囲となるようにすることが好ましい。
また、本発明においては、シリコーン樹脂部の外径は全て同一とし、さらに、フッ素樹脂製チューブ部とシリコーン樹脂部との間の段差を0.1mm〜0.5mmの範囲とすることができる。
また、本発明において、樹脂および細骨材の混合物層を構成する樹脂は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびアルキルシリケート樹脂のうちの一種または二種以上からなり、細骨材は、硬質プラスチック粉末、金属酸化物粉末および炭化物のうちの一種または二種以上からなるものとすることができる。そして、細骨材の粒度は10μm〜44μmの範囲、樹脂および細骨材の混合物層の厚みは50μm〜150μmの範囲とし、且つその表面粗さ(Rz)が20〜80μmの範囲となるようにすることが好ましい。
さらに、本発明においてシリコーン樹脂部の表面粗さ(Rz)10〜20μmの範囲となるようにすることが好ましい。
さらに、本発明において、フッ素樹脂製チューブの圧着幅は40mm〜80mmの範囲とすることが好ましい。
上記のような構成とした本発明の軽量非粘着性ガイドローラは、新聞輪転機、オフセット輪転機等の印刷機に好適に使用される。
本発明について、より詳しく説明すると、ローラ基材へのフッ素樹脂製チューブの圧着位置は、前記したA巻き、C巻き、D巻き、ペラといった各種紙幅寸法のいずれも確実に搬送し、かつインク・紙粉の汚れを増大させないような位置として、少なくとも両端部と中央部とすればよい。また、図4に示すように、両端部と中央部に加えて、端部と中央部との中間部にフッ素樹脂製チューブ2を圧着すれば、ペラであっても確実に搬送可能である。このように、フッ素樹脂製チューブの圧着位置は、新聞紙面の両端部あるいは中央部の印刷されない部分およびその周辺が通過する位置とすることが好ましい。
フッ素樹脂製チューブ表面(フッ素樹脂製チューブを圧着した後のフッ素樹脂製チューブ部)とそれ以外のシリコーン樹脂コーティング層表面(シリコーン樹脂をコーティングした後のシリコーン樹脂部)との段差は、新聞紙面が通過するときフッ素樹脂製チューブ表面の方が優先的に新聞紙面と接触し、ガイドローラ全体と新聞紙面との摩擦力を低減(滑り性をよく)させるために、フッ素樹脂製チューブ表面の方が、シリコーン樹脂コーティング層表面よりも若干突出するようにするすなわち、シリコーン樹脂部の外径は、フッ素樹脂製チューブ部の外径より小さくするそして、図3に示すテーパー形状ローラについては、最大径部の両端および中央部のフッ素樹脂製チューブ部と最小径部のシリコーン樹脂コーティング層表面の段差は片肉厚みで0.1mm〜0.5mmの範囲とすることが好ましい。より好ましくは0.1mm〜0.3mmの範囲とする。図1に示す段付ストレートローラについては大径部のフッ素樹脂製チューブと小径部のシリコーン樹脂部の段差は片肉厚みで0.1mm〜0.5mmとすることが好ましい。より好ましくは0.1mm〜0.3mmの範囲とする。
フッ素樹脂製チューブ表面の突出量が0.5mmを超えると、段付ストレートローラ(図1)については、フッ素樹脂製チューブのエッジ部とシリコーン樹脂コーティング層の境界部にインクや紙粉の堆積による汚れの発生が懸念され、これが新聞紙面を汚すおそれがある。また、隣接するフッ素樹脂製チューブ同士の間に大きな空間が形成され、印刷物によっては水付け量が多い場合に新聞紙の伸びが発生するため、ガイドローラ上で新聞紙がバタツキ、新聞紙面とシリコーン樹脂コーティング層間のスリップ効果がうまく発揮できずに、ガイドローラに汚れが発生したり、紙シワが発生したりする。一方、テーパー形状ローラ(図3)については新聞紙の伸びによっては、最大径部から最小径部に至って、新聞紙のたるみが発生し、後工程のガイドローラが例えばストレート形状の場合、新聞紙を両サイドに広げられず紙シワ発生が懸念されるため好ましくない。
逆に、フッ素樹脂製チューブの突出量が0.1mm未満であると、段付ストレートローラおよびテーパー形状ローラのいずれも大径部と小径部の径差によるスリップ効果が十分発揮できず、ガイドローラの汚れ防止効果は大径部のフッ素樹脂製チューブ部と新聞紙面とのスリップ性のみに依存することになり、長期的に汚れ防止効果を維持するためには、大径部と小径部の径差によるスリップ性および大径部のフッ素樹脂製チューブ部と新聞紙面とのスリップ性を組み合わせた方が効果がより高くなるため、大径部と小径部の段差は0.1mm以上が好ましい。
また、一般的にガイドローラの装着から取り外しまで5年以上の期間が考えられ、その間、小径部のシリコーン樹脂コーティング層を洗い油(白灯油)等の油系溶剤で洗浄すると、付着した溶剤の拭き取りが不十分な場合には前記溶剤の一部がシリコーン樹脂内部に含浸し、そのときにガイドローラの汚れ原因である紙粉・インキが膨潤したシリコーン樹脂コーティング層表面近傍の内部に入る。そうすると、シリコーン樹脂コーティング層の表面には洗浄後も汚れを構成する成分が残存し、非粘着性が少し低下するので、前述した、大径部と小径部の径差によるスリップ性およびフッ素樹脂製チューブと新聞紙面とのスリップ性の複合効果を利用するのが、効果を長期間持続させるためには好ましい。
また、フッ素樹脂製チューブの圧着幅を40mm〜80mmにした理由は、以下の通りである。まず、圧着幅を80mm超とした場合、印刷する絵柄の面積割合によって新聞紙面への水付け量が異なるため新聞紙の伸びも一定ではなく、もっぱら大径部のみで新聞紙面を受ける場合もあり、小径部は新聞紙面と接触する頻度が少ないために薄く付着したインキが新聞紙面に転写されず、時間の経過とともに小径部表面に付着したインクが硬化し、インク・紙粉が固着した状態になる。一旦このような状態になると、印刷した絵柄の面積割合が増加し水付け量が多くなって新聞紙が伸び、新聞紙面と小径部が接触した状態になって、小径部と新聞紙面のスリップ力が回復したとしても、固着したインク・紙粉をスリップ力で小径部表面から剥ぎ取るのが困難となり、小径部表面にインク・紙粉がさらに堆積して、ガイドローラの汚れが早期に発生する。一方、40mm未満にした場合、新聞紙面を受ける小径部は新聞印刷部数の増加とともにその表面に薄い汚れが発生することによって、小径部の摩擦係数が当初0.3〜0.4(新東科学株式会社「HEIDEN トライボギア ミューズ TYPE:951」で測定した静摩擦係数)程度であったものが、汚れる一例として0.6(新東科学株式会社「HEIDEN トライボギア ミューズ TYPE:951」で測定した静摩擦係数)以上に大きくなるため、大径部と小径部の径差による新聞紙面とのスリップ性が低下していく。そして、小径部と大径部の新聞紙面との接触割合で小径部の割合が増加するほど、新聞紙面とのスリップ性の低下が著しくなり、小径部に付着したインク・紙粉の汚れ除去が不十分となり、汚れが堆積していくようになる。ここで、大径部のフッ素樹脂製チューブの新聞紙面とのスリップ性は新聞印刷中には常時機能しているが、大径部と小径部の新聞紙面との接触割合で小径部の割合が増加し大径部の割合が低下した場合、大径部と新聞紙面とのスリップ性も低下する。したがって、上述した大径部が40mm未満の場合、大径部と小径部の径差による新聞紙面とのスリップ性の低下、およびガイドローラ全体に占める大径部の巾が小さくなり小径部の巾が大きくなることによる新聞紙面とのスリップ性の低下という両方の問題が発生するために早期にガイドローラの汚れが発生するので好ましくない。
非粘着性樹脂コーティング層を構成する樹脂としては、インクや紙粉に対して高い非粘着性を有するシリコーン樹脂を用い。なかでも、表面の滑り性が比較的高い縮合反応タイプのシリコーン樹脂が好ましい。ただし、縮合反応タイプのシリコーン樹脂中、シリコーンゴムは滑り性が劣るため、付着したインクや紙粉を新聞紙面に直ぐに逆転写させる能力に劣り、また紙シワが発生するおそれがあるので好ましくない。
また、上述のシリコーン樹脂部の表面粗さ(Rz)が20μm超では、ガイドローラ表面の凸部が新聞紙面と点接触しスリップすることによって、新聞紙面の字や絵柄を構成する未乾燥インクを凸部が掻き取り、早期にガイドローラ表面が汚れるので好ましくない。一方、表面粗さ(Rz)が10μm未満の場合は、ガイドローラ面全体が新聞紙面に接触するため、未乾燥インクが一部ガイドローラ表面に付着すると新聞紙面とのスリップ効果が低下して、徐々に未乾燥インクが面全体に薄く付着成長するため、前述の表面粗さ(Rz)20μm超の場合よりはガイドローラの汚れ速度は小さいものの、ガイドローラ汚れ防止期間が短くなるので好ましくない。また、シリコーン樹脂をコーティングする量が多くなり、そしてコーティング後の径も大きくなって、フッ素樹脂製チューブシリコーン樹脂部の径の差が変動し、フッ素樹脂製チューブとの径差が小さくなる場合もあるので好ましくない。
このシリコーン樹脂部を構成する縮合反応タイプのシリコーン樹脂炭素繊維強化樹脂製のローラ基材とは密着力が弱いため、本発明では、ローラ基材表面に樹脂および細骨材の混合物層を下地層としてコーティングし、その表面に微小凹凸面を形成させる。
この微小凹凸面を形成するための混合物層の膜厚は50μm〜150μmの範囲であることが好ましい。150μmを超えると上層のシリコーン樹脂層の厚みも加わることからフッ素樹脂製チューブ部の径を必要以上に大きくする必要がある。50μm未満では、細骨材の粒度が最大44μmあり、この細骨材を覆っている樹脂層を考慮すると、計算上は可能であるが、実際施工上は困難なため好ましくない。
また、微小凹凸面の表面粗さ(Rz)は、20μm〜80μmの範囲とすることが好ましい。微小凹凸面の表面粗さ(Rz)が80μm超であると、シリコーン樹脂コーティング層の厚みを必要以上に大きくする必要がある。また、シリコーン樹脂コーティング層の厚みが大きくなることによって、フッ素樹脂製チューブが圧着された部分の径よりも大きくなる可能性があるため好ましくない。一方、表面粗さ(Rz)が20μm未満であると、細骨材の粒度が最大44μmあり、この細骨材を覆っている樹脂層を考慮すると、計算上は可能であるが、実際施工上は困難なため好ましくない。
そして、微小凹凸面の表面粗さ(Rz)の範囲20μm〜80μmを満足させるために、細骨材の大きさは大部分が粒度10μm〜44μmの範囲とすることが好ましい。粒度が44μmを超えると、ガイドローラの径のバラツキが大きくなる可能性があるので好ましくない。一方、粒度が10μm未満であると、樹脂内部に分散し樹脂の硬度を強化するのに有効となるが粗面を形成する細骨材として機能しないので好ましくない。粗面を形成するためおよび樹脂形成後の径のバラツキを小さくするために、好ましい膜厚の範囲は、50μm〜100μmである。
ガイドローラの形状については、フッ素樹脂製チューブ以外の部分はストレート形状が基本であるが、例えば新聞紙面に水を付着させ、インクを印刷させた直後に配置されるローラなどは、紙面構成により新聞紙の伸びが異なり、新聞紙のバタツキによって、紙シワの発生が予想されるため、逆クラウン形状として中央部を端部よりも径差で0.4mm程度小さくすることで、新聞紙面を搬送中に中央部から外側に伸ばす加工を可能とすることが好ましい。なお、ガイドローラを軸線方向に2つの領域に区分して、それぞれの領域を逆クラウン形状とすることもできる。この場合、各領域において、ローラの端部と中央部との間の中間部を端部および中央部よりも径差で0.4mm程度小さくする。このような逆クラウン形状は、紙幅寸法による区分のA巻き、C巻き、D巻きには有効である。
本発明によれば、ガイドローラへのインクや紙粉の付着が軽減され、作業者の洗浄清掃負担を軽減できるとともに、ガイドローラにインクや紙粉が付着してもそのスリップ性により、直ぐに新聞紙面へ逆転写される。すなわち、ガイドローラ表面の非粘着性のためガイドローラ表面に付着したインクや紙粉はガイドローラと新聞紙面がスリップした際にガイドローラから引き剥がされた状態になってシリコーン樹脂層表面より新聞紙面の方へ付着しやすくなる。したがって、本発明のガイドローラは、ガイドローラに付着しそのまま堆積した堆積物がまとめて新聞紙面に黒シミとして逆転写されて新聞紙面の文字が読めなくなったり、絵柄部に逆転写されて絵柄部が見づらくなるなど、黒シミに起因する新聞紙面へのインクの逆転写による汚れおよび紙シワの発生を軽減することができる。
以下、実施例により本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る段付ストレートガイドローラの断面構造を模式的に示す。図2は、図1に示す断面構造を拡大して模式的に示す。
まず、直径100mmの炭素繊維強化樹脂製のローラ基材1表面の両端部および中央部を研磨した。研磨巾および深さは、両端部で巾75mm、深さ0.3mm、中央部で巾50mm、深さ0.3mmとした。次にこの研磨した部分に0.6mm厚みのフッ素樹脂製チューブ2(例えば、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、PTFE(四フッ化エチレン)やFEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等)を装着し、70〜100℃の温度で加熱し収縮させて圧着した。さらに、フッ素樹脂製チューブ2が圧着された部分以外のローラ基材1表面に、エポキシ樹脂3aおよびアルミナ粉末3b(粒度:10μm〜44μm)の混合物層3を形成することによりその表面に微小凹凸面3cを形成した。具体的には、エポキシ樹脂33質量%、希釈用シンナー17質量%に対してアルミナ粉末50質量%を混合攪拌し、ローラ基材1表面にエアースプレーにて膜厚100μmとなるようにコーティングを行った後、80℃で30分加熱硬化させて混合物層3の表面に微小凹凸面3cを形成した。そのときの微小凹凸面3cの表面粗さ(Rz)は21μmであった。そして、この微小凹凸面3c上に縮合反応型のシリコーン樹脂を表面粗さ(Rz)が10μm〜15μmになるようスプレーコーティングした後、80℃〜130℃で30分加熱硬化させてシリコーン樹脂層4を形成した。シリコーン樹脂層4の厚みは20μmとした。このようにして製作した段付ストレートガイドローラを実施例1として新聞輪転機に取付け、汚れ防止効果を調査した。
図3は、本発明の実施例2に係る2分割逆クラウンガイドローラの断面構造を模式的に示す。
まず、直径100mmの炭素繊維強化樹脂製のローラ基材1表面の両端部および中央部を研磨し、研磨巾および深さは、両端部で巾75mm、深さ0.4mm、中央部で巾50mm、深さ0.4mmとした。次にこの研磨した部分に0.6mm厚みのフッ素樹脂製チューブ2(実施例1と同等品)を装着し、70〜100℃の温度で加熱し収縮させて圧着した。さらに、フッ素樹脂製チューブ2が圧着された以外の部分については、図3に示すように、ロール基材1の中央部と端部との間の中間部から、中央部あるいは端部のフッ素樹脂製チューブ2のエッジ部分にかけて逆クラウン形状に研磨加工し、中央部と端部との間の中間部の径と両端部および中央部のフッ素樹脂製チューブ部の径の差が0.8mmとなるようにした。
そして、実施例1と同様に、フッ素樹脂製チューブ2が圧着された部分以外のローラ基材1表面に、エポキシ樹脂およびアルミナ粉末(粒度:10μm〜44μm)の混合物層3を形成することによりその表面に微小凹凸面3cを形成した。具体的には、エポキシ樹脂33質量%、希釈用シンナー17質量%に対してアルミナ粉末50質量%を混合攪拌し、ローラ基材1表面にエアースプレーにて膜厚115μmとなるようにコーティングを行った後、80℃で30分加熱硬化させて混合物層3の表面に微小凹凸面3cを形成した。そのときの微小凹凸面3cの表面粗さ(Rz)は32μmであった。そして、この微小凹凸面3c上に縮合反応型のシリコーン樹脂を表面粗さ(Rz)が10μm〜15μmになるようスプレーコーティングした後、80℃〜130℃で30分加熱硬化させてシリコーン樹脂層4を形成した。シリコーン樹脂層4の厚みは35μmとした。
このようにして製作した2分割逆クラウンガイドローラは、図3に示すように、フッ素樹脂製チューブ2が圧着されていないシリコーン樹脂部がその長手方向の中間部に向けて徐々に縮径するテーパー形状となる。そして、フッ素樹脂製チューブ部とシリコーン樹脂部の長手方向の中間部との間の段差は0.25mmとなる。この2分割逆クラウンガイドローラを実施例2として新聞輪転機に取付け、汚れ防止効果を調査した。
また、本発明のガイドローラの効果を調べるために従来技術によるガイドローラを製作し、比較例とした。
[比較例1]
図5は、比較例1のストレートガイドローラの断面構造を模式的に示す。
先に説明した従来例2に従い、炭素繊維強化樹脂製のローラ基材1の表面に樹脂および細骨材の混合物層3を形成することによりその表面を微小凹凸面3cとし、その上にセラミックスを溶射して溶射層5を形成し、さらにその上に非粘着性のシリコーン樹脂をコーティングしてシリコーン樹脂層4を形成した。このストレートガイドローラを比較例1として新聞輪転機に取付け、汚れ防止効果を調査した。
[比較例2]
比較例2の2分割逆クラウンガイドローラは、実施例2のテーパー形状のローラに近似し、両端および中央部にフッ素樹脂製チューブが圧着されていないもので、先に説明した実施例2のまず、直径100mmの炭素繊維強化樹脂製のローラ基材1表面の両端部および中央部のうち、両端部で巾75mm、中央部で巾50mmを残し、図3に近似した外観形状をなし、ロール基材の中央部と端部から等距離にある中間部から、中央部あるいは端部のエッジ部分にかけて逆クラウン形状に研磨加工し、中央部と端部との間の中間部の径と両端部および中央部との径の差が0.8mmとなるようにした。
そして、実施例1のフッ素樹脂製チューブを装着していない部分の処理と同様に、表面に、エポキシ樹脂およびアルミナ粉末(粒度:10μm〜44μm)の混合物層を形成することによりその表面に微小凹凸面を形成した。具体的には、エポキシ樹脂33質量%、希釈用シンナー17質量%に対してアルミナ粉末50質量%を混合攪拌し、ローラ基材表面にエアースプレーにて膜厚150μmとなるようにコーティングを行った後、80℃で30分加熱硬化させて混合物層の表面に微小凹凸面を形成した。そのときの微小凹凸面の表面粗さ(Rz)は36μmであった。そして、この微小凹凸面に縮合反応型のシリコーン樹脂を表面粗さ(Rz)が10μm〜15μmになるようスプレーコーティングした後、80℃〜130℃で30分加熱硬化させてシリコーン樹脂層を形成した。このようして製作した2分割逆クラウンガイドローラを比較例2として新聞輪転機に取付け、汚れ防止効果を調査した。
[比較例3]
図6は、比較例3のストレートガイドローラの断面構造を模式的に示す。
先に説明した従来例1に従い、炭素繊維強化樹脂製のローラ基材1の表面に、フッ素樹脂および金属酸化物微粒子を分散した導電性ゴム層6を形成した。このストレートガイドローラを比較例3として新聞輪転機に取付け、汚れ防止効果を調査した。
表1は、上記各実施例および比較例におけるローラ表面の汚れ状況測定結果を示す。表1においてローラ形状の欄の「段付ストレート」とは図1に示す形状を意味し、「2分割逆クラウン」とは図3に示す形状を意味する。また、「ストレート」とは単純な円柱形状を意味する。
表1に示す実施例1、実施例2−(1)と比較例1、比較例2との比較において、100万部印刷後のローラ表面の汚れ状況は、実施例1のローラでは、フッ素樹脂製チューブ部には汚れは見られず、シリコーン樹脂部の表面には点状のインクおよび紙粉が付着した汚れが一部に見られたものの全体的には汚れは非常に少なかった。また、実施例2−(1)のローラでは、フッ素樹脂製チューブ部は全体的にほとんど汚れておらず、シリコーン樹脂部の表面においてスリップマークがすじ状に薄く見られたのみであった。これに対して比較例1では、ローラ全体がインク・紙粉で汚れて洗い油(白灯油)による洗浄が必要な状態であり、比較例2のローラでは、ローラ全体に薄くインク・紙粉が付着した汚れが見られた。
一方、表1に示す実施例2−(2)と比較例3との比較において、30万部印刷後のローラ表面の汚れ状況は、実施例2−(2)のローラでは、フッ素樹脂製チューブ部は全体的にほとんど汚れておらず、シリコーン樹脂部の表面にはスリップマークがすじ状に薄く見られたのみでインクおよび紙粉の付着汚れはほとんど見られなかった。これに対して比較例3のローラでは、表面のインクおよび紙粉の付着汚れがひどくすぐにでも洗浄が必要な状態であった。実施例2−(2)のローラを引き続き約1ヶ月間、印刷部数560万部まで未洗浄で使用した場合でもシリコーン樹脂部の汚れは少なく、洗浄が不要な状態であった。
以上のように、本発明のガイドローラの優れた汚れ防止効果が証明された。
Figure 0004510771
本発明の実施例1に係るガイドローラの断面構造を模式的に示す。 図1に示す断面構造を拡大して模式的に示す。 本発明の実施例2に係るガイドローラの断面構造を模式的に示す。 本発明のガイドローラによる新聞用紙の搬送状況を模式的に示す。 比較例1のガイドローラの断面構造を模式的に示す。 比較例2のガイドローラの断面構造を模式的に示す。
符号の説明
1 炭素繊維強化樹脂製のローラ基材
2 フッ素樹脂製チューブ
3 樹脂および細骨材の混合物層
3a エポキシ樹脂(樹脂)
3b アルミナ粉末(細骨材)
3c 微小凹凸面
シリコーン樹脂層
5 溶射層
6 導電性ゴム層

Claims (9)

  1. 炭素繊維強化樹脂製のローラ基材の円周面の少なくとも両端部および中央部にフッ素樹脂製チューブを圧着してなるフッ素樹脂製チューブ部とこのフッ素樹脂製チューブ部以外のローラ基材の円周面に樹脂および細骨材の混合物層を形成することによりその表面を微小凹凸面とし、さらに微小凹凸面上にシリコーン樹脂をコーティングしてなるシリコーン樹脂部の両方を備え、フッ素樹脂製チューブ部の外径が全て同一であり、シリコーン樹脂部の外径はフッ素樹脂製チューブ部の外径より小さい軽量非粘着性ガイドローラ。
  2. フッ素樹脂製チューブは、ローラ基材の円周面の少なくとも両端部および中央部を研磨して形成された溝に圧着されている請求項1に記載の軽量非粘着性ガイドローラ。
  3. シリコーン樹脂部は、その長手方向の中間部に向けて徐々に縮径するテーパー形状に形成されている請求項1または2に記載の軽量非粘着性ガイドローラ。
  4. フッ素樹脂製チューブ部とシリコーン樹脂部の長手方向の中間部との間の段差が0.1mm〜0.5mmの範囲である請求項3に記載の軽量非粘着性ガイドローラ。
  5. シリコーン樹脂部の外径は全て同一であり、フッ素樹脂製チューブ部とシリコーン樹脂部との間の段差が0.1mm〜0.5mmの範囲である請求項1または2に記載の軽量非粘着性ガイドローラ。
  6. 樹脂および細骨材の混合物層を構成する樹脂が、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびアルキルシリケート樹脂のうちの一種または二種以上からなり、細骨材が、硬質プラスチック粉末、金属酸化物粉末および炭化物のうちの一種または二種以上からなり、かつ細骨材の粒度が10〜44μmの範囲にあり、樹脂および細骨材の混合物層の厚みが50μm〜150μmであって、且つその表面粗さ(Rz)が20〜80μmの範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の軽量非粘着性ガイドローラ。
  7. シリコーン樹脂部の表面粗さ(Rz)が10〜20μmの範囲である請求項1〜6のいずれかに記載の軽量非粘着ガイドローラ。
  8. 前記フッ素樹脂製チューブの圧着幅が40mm〜80mmの範囲にある請求項1〜7のいずれかに記載の軽量非粘着ガイドローラ。
  9. 新聞輪転機、オフセット輪転機等の印刷機に使用される請求項1〜8のいずれかに記載の軽量非粘着ガイドローラ。
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