JP4509447B2 - 高純度グアノシン5′−ジリン酸フコースおよびその製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、高純度のグアノシン5′−ジリン酸フコース(Guanosine 5′-Diphospho-β-L-Fucose:GDP−Fuc)およびその製造法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
近年、糖鎖についての研究が急速に進み、その生理活性や機能が明らかになるにつれて、生理活性を有する糖鎖(オリゴ糖)の医薬品または機能性素材としての用途開発が注目を集めている。しかし、現在、試薬として市販されているオリゴ糖はごく限られた種類のものしかなく、しかも極めて高価である。また、そのようなオリゴ糖は試薬レベルでしか製造できず、大量に供給されうるものではない。
【0003】
従来、オリゴ鎖の製造は、天然物からの抽出法、化学合成法、あるいは酵素合成法、さらにはそれらの併用により行われていたが、医薬用、もしくは機能性素材用として大量に製造するためには酵素合成法が最も適していると考えられている。すなわち、(1)酵素合成法が、化学合成法にみられる保護、脱保護といった煩雑な手順を必要とせず、速やかに目的とするオリゴ糖を合成できる点、(2)酵素の基質特異性により、きわめて構造特異性の高いオリゴ糖を合成できる点などが他の方法より有利と考えられるためである。さらに、近年の遺伝子工学の発達により種々の合成酵素が安価に生産できるようになりつつあることが、酵素合成法の優位性をさらに押し上げている。
【0004】
酵素合成法によりオリゴ糖を合成する方法としては、オリゴ糖の加水分解酵素の逆反応を利用する方法、および糖転移酵素とその基質である糖ヌクレオチドを利用する方法の2通りの方法が考えられている。前者の方法は基質として単価の安い単糖を用いることができるという利点はあるものの、反応自体は分解反応の逆反応を利用するものであり、合成効率や複雑な構造を持つオリゴ糖合成への応用といった点では、実用化は極めて困難である。
【0005】
一方、後者は特異的な糖転移酵素を用いる合成法であり、複雑な構造を持つオリゴ糖製造への応用や合成収率といった点で前者の方法よりも有利であると考えられており、また、近年の遺伝子工学など、バイオテクノロジーの進展により各種糖転移酵素の量産化も該技術の実現化への後押しとなっている。
【0006】
しかしながら、糖転移酵素を用いる酵素合成法において、糖供与体である糖ヌクレオチドは一部のものを除き依然として高価で、量的にも試薬レベルのわずかな供給量でしか提供しえないのが現状である。フコース残基の供与体であり、生理活性を有する多くのオリゴ糖合成に利用可能なGDP−Fucについても、グアノシン5′−モノリン酸(GMP)とマンノースを基質とし、微生物または酵素の作用を用いてGDP−Fucを合成する方法(WO98/12343)が報告されているものの、該方法ではGDP−Fucの生成量及び反応収率が低く、工業的レベルでの大量合成は事実上困難であった。
【0007】
また、一般に試薬として市販されているGDP−Fucにおいては、グアニン、グアノシン、GMP、グアノシン5′−ジリン酸(GDP)、グアノシン5′−トリリン酸(GTP)、グアノシン5′−ジリン酸マンノース(GDP−Man)等の類縁化合物が多く含まれており、しかも、高純度のGDP−Fucを単離精製するための有効な方法は今だ知られていないのが現状である。この点を更に具体的に説明するならば、GDP−Fucを酵素あるいは微生物を用いて合成した場合、反応液中には目的とするGDP−Fuc以外に上記類縁化合物が存在し、従来から単離精製の常套手段として用いられているイオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィー法によっても、特にGDP−FucとGDPおよびGMPとの分離が困難であった。このため、高速液体クロマトグラフィー法による分析純度(HPLC純度)90%程度の決して高純度とは言えないGDP−Fucが量的に限られた試薬レベルでしか入手できないのが現状である。GDP−Fucは、生理活性を有する多くのオリゴ糖合成に利用可能であることから、高純度のGDP−Fucへの希求が継続しているのが現状である。
【0008】
【発明の開示】
本発明者らは上記現状を打開するため鋭意検討した結果、酵素あるいは微生物を用いて合成したGDP−Fucの含有溶液を、非極性で多孔質の吸着樹脂を用いた精製処理に付すことで、今までに報告されたことがないようなHPLC純度95%以上の高純度のGDP−Fucが取得可能となることを見いだした。
【0009】
また、本発明者らは、GDP−Fucの大量製造法を検討する過程において、酵素及び微生物を用いてGMP及びマンノースからGDP−Manを合成する反応は比較的スムーズに進行するのに対し、GDP−ManをGDP−Fucに変換する反応がスムーズに進行しないことがGDP−Fucの合成収率低下に大きく影響していることを確認した。この原因として、同定するまでには至らなかったものの、GDP−Man合成液中に含まれる阻害物質(この阻害物質はGDP−Manの合成時に生成すると考えられる)がGDP−ManからGDP−Fucへの変換反応に影響を及ぼしていることを突き止めた。したがって、この阻害物質を除去するため、精製した高純度のGDP−Manを使用することでGDP−ManからGDP−Fucへの変換効率が飛躍的に向上し、GDP−Fucを収率よく製造できることを確認し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示す純度を有する高純度のGDP−Fucに関するものである。
〈純度〉
(1)GDP−Fuc :95%以上
(2)GDP : 3%以下
【0011】
また、本発明は、GMPおよびマンノースを基質とし、微生物および/または酵素を用いて合成したGDP−Fucの含有溶液を、非極性で多孔質の吸着樹脂を用いた精製処理に付し、GDP−Fucを単離精製する工程を含むことを特徴とする、高純度のGDP−Fucの製造法に関するものである。
【0012】
さらに、本発明は、GMPおよびマンノースを基質とし、微生物および/または酵素を用いてGDP−Manを合成し、次いで、得られたGDP−Manを微生物および/または酵素を用いてGDP−Fucに変換してGDP−Fucを製造する方法において、GDP−ManからGDP−Fucへの変換反応の際、一旦反応液から単離精製した高純度のGDP−Manを使用することを特徴とするGDP−Fucの製造法、特に大量製造法(大量合成法)に関するものである。
【0013】
【発明を実施するための最良の形態】
(1)高純度GDP−Fuc
上述したように、本発明の高純度GDP−Fucは少なくとも以下に示す純度を有するものである。
〈純度〉
(1)GDP−Fuc :95%以上
(2)GDP : 3%以下
【0014】
また、GDP以外にも、グアニン、グアノシン、GMP、GTPおよびGDP−Manなどの類縁化合物を2%以下の割合で含むことがある。
【0015】
このようなGDP−Fucの中でもさらに純度の高いものが好ましく、例えば以下に示す純度を有する高純度のGDP−Fucを、好適なものとして例示することができる。
〈純度〉
(1)GDP−Fuc :97%以上
(2)GDP : 2%以下
(3)GMP : 1%以下
【0016】
このような高純度のGDP−Fucは、安定性に優れていることから、この糖ヌクレオチドを用いて実際にオリゴ糖を合成する際、糖転移酵素(グルコシルトランスフェラーゼ)による転移反応を阻害しない点で、従来の純度の低いGDP−Fucよりも有用である。
【0017】
本発明のGDP−Fucは遊離の酸の形態であっても、塩、水和物または含水塩の形態であってもよく、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が例示される。また、水和物としては、GDP−Fuc1分子に対し1〜3個の水分子が結合または付着したものが例示される。さらに含水塩としては、たとえばGDP−Fucのアルカリ金属塩1分子に対し1〜3個の水分子が結合または付着したものをあげることができる。このような塩類を具体的に例示すれば、GDP−Fuc・2Na塩またはその水和物が例示される。
【0018】
(2)高純度GDP−Fucの調製法
上記したような高純度のGDP−Fucは、GMPおよびマンノースを基質とし、微生物および/または酵素を用いて合成したGDP−Fucの含有液を、非極性で多孔質の吸着樹脂を用いた精製処理に付すことにより取得可能となる。
【0019】
使用する非極性で多孔質の吸着樹脂としては、たとえば、スチレン系の重合体またはその誘導体を母体とするものであればいずれも使用可能である。具体的には、ダイヤイオンHPシリーズ(例えば、HP10、HP20、HP21、HP30、HP40、HP50)(三菱化学製)、ダイヤイオンSP800シリーズ(例えば、SP800、SP825、SP850、SP875)(三菱化学製)、ダイヤイオンSP200シリーズ(例えば、SP205、SP206、SP207、SP207SS)(三菱化学製)、アンバーライトXADシリーズ(例えば、XAD4、XAD7HP、XAD16、XAD1600)(ローム アンド ハース社製)等が挙げられ、特にSP207、SP207SS(三菱化学製)を好ましい樹脂として例示することができる。
【0020】
上記非極性で多孔質の吸着樹脂を用いたGDP−Fucの単離精製処理は、GDP−Fuc含有溶液と非極性で多孔質の吸着樹脂とを接触させ、次いで該樹脂から吸着したGDP−Fucを溶出することで実施することができる。
【0021】
非極性で多孔質の吸着樹脂とGDP−Fuc含有溶液との接触方式は、バッチ式とカラム式があるが、カラム式の方が操作上簡便で好ましい。また、カラム式を採用する場合には、カラムへの通液速度あるいは溶出速度は特に制限されないが、空間速度(Space Velocity:SV)=0.1〜10程度が適当である。
【0022】
非極性で多孔質の吸着樹脂とGDP−Fuc含有溶液の接触条件は特別に制限されるものではないが、GDP−Fucの樹脂への吸着性を高めるため、GDP−Fuc含有液に食塩等の塩類を予め添加しておくのが好ましい。塩類の添加濃度としては、食塩の場合には5M以下、好ましくは2〜4Mの範囲から適宜選定すればよい。また、GDP−Fucの安定性および分離性などの点から、温度としては0〜50℃、好ましくは10〜40℃、pHとしては4〜10、好ましくは5〜9の範囲から適宜選定すればよい。
【0023】
GDP−Fucの溶出は、塩濃度を徐々に下げることによりグアニン、グアノシン、GMP、GDP、GTP、GDP−Manなどの類縁化合物を溶出し、次に水を用いてGDP−Fucを溶出させればよい。
【0024】
このような非極性で多孔質の吸着樹脂を用いた精製処理を単独で行っても、好ましくは複数回の実施により本発明の高純度のGDP−Fucを取得することは可能であるものの、さらに好ましくは活性炭および/またはイオン交換樹脂を用いた他の精製処理を併用することで、より簡便に、しかもより高純度のGDP−Fucを調製することが可能である。
【0025】
使用する活性炭としては、破砕状或いは粒状に成形されたクロマト用活性炭を使用すればよい。また、イオン交換樹脂としては、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂等を使用することができる。
【0026】
上記の各精製処理は、非極性で多孔質の吸着樹脂を用いた精製処理の前後に行えばよく、バッチ式、カラム式などいずれの方式であってもよい。カラム式で行う場合、イオン交換カラムクロマトグラフィーの溶出剤としては水あるいはこれに食塩などを添加してイオン強度を高めたもの、活性炭カラムクロマトグラフィーの溶出剤としては水または水酸化ナトリウムなどのアルカリの水溶液をそれぞれ使用することができる。各溶出剤の濃度は、0.001〜10Mの範囲内から好適なものを、小規模試験により適宜決定すればよい。
【0027】
以上のような精製処理を施し、取得したGDP−Fuc画分を公知の方法で脱塩、濃縮後、凍結乾燥することでHPLC純度95%以上、好ましくは97%の高純度のGDP−Fucを取得することができる。
【0028】
(3)GDP−Fucの大量合成法
本発明のGDP−Fucの大量合成法は、GMPおよびマンノースを基質とし、微生物および/または酵素を用いてGDP−Manを合成し、次いで、得られたGDP−Manを微生物および/または酵素を用いてGDP−Fucに変換してGDP−Fucを製造する方法において、GDP−ManからGDP−Fucへの変換反応の際、一旦反応液から単離精製した高純度のGDP−Manを使用することを特徴とするGDP−Fucの製造法に関するものである。
【0029】
使用する微生物および/または酵素としては、従来のGDP−Fucの製造法において使用している微生物および/または酵素であればいずれも用いることができる。特に、GMPからGTPへの変換能を有する酵母菌体とともに、下記に示した(a)〜(e)のいずれか1つ以上の酵素を、例えば組換えDNA手法などで高生産される形質転換体(菌体)のままで、または当該形質転換体より得られる酵素調製物の形態で併用するのが最も好ましい。
【0030】
【化1】
Figure 0004509447
(a)ヘキソキナーゼ
(b)ホスホマンノムターゼ(manB)
(c)GDP−Manピロホスホリラーゼ(manC)
(d)GDP−Man−4,6−デヒドラターゼ(gmd)
(e)GDP−4−ケト−6−デオキシManエピメラーゼ/レダクターゼ
(fcl)
【0031】
GDP−Fuc合成に使用する酵母としては、GMPからGTPへの変換活性の強い酵母であればよく、具体的には、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、カンディダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属などの属に属する酵母等を挙げることができる。このような酵母は、生酵母、乾燥酵母いずれの形態であっても使用できるが、反応効率の点からは乾燥酵母を用いるのが好ましい。また、上記酵母は、通常ヘキソキナーゼ活性を併せ持っており、GTP合成の他にマンノースからマンノース−6−リン酸への変換も酵母により行わせることができる。
【0032】
また、上記(b)〜(e)の酵素に対応する遺伝子は公知であり(J. Bacteriol., 178, 4885 (1996))、遺伝子のクローニング、クローン化したDNA断片を用いた発現ベクターの調製、発現ベクターを用いた目的とする酵素活性を有する酵素タンパク質の調製などは、分子生物学の分野に属する技術者にとっては周知の技術であり、具体的には、例えば「Molecular Cloning」(Maniatisら編、Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor、New York(1982))に記載の方法に従って行うことができる。
【0033】
たとえば、報告されている塩基配列をもとにプローブを合成し、微生物の染色体DNAより目的とする酵素活性を有する酵素タンパク質をコードする遺伝子を含有するDNA断片をクローニングすればよい。クローン化に用いる宿主は特に限定されないが、操作性及び簡便性から大腸菌を宿主とするのが適当である。
【0034】
クローン化した遺伝子の高発現系を構築するためには、たとえばマキザムーギルバートの方法(Methods in Enzymology,65,499(1980))もしくはダイデオキシチェインターミネーター法(Methods in Enzymology,101,20(1983))などを応用してクローン化したDNA断片の塩基配列を解析して該遺伝子のコーディング領域を特定し、宿主微生物に応じて該遺伝子が微生物菌体中で自発現可能となるように発現制御シグナル(転写開始及び翻訳開始シグナル)をその上流に連結した組換え発現ベクターを作製する。
【0035】
目的とする酵素活性を有するタンパク質を大腸菌内で大量発現させるために使用する発現制御シグナルとしては、人為的制御が可能で、目的とする酵素活性を有するタンパク質の発現量を飛躍的に上昇させるような強力な転写開始並びに翻訳開始シグナルを用いることが好ましい。このような転写開始シグナルとしては、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,80,21(1983)、Gene,20,231(1982))、trcプロモーター(J.Biol.Chem.,260,3539(1985))などを例示することができる。
【0036】
ベクターとしては、種々のプラスミドべクター、ファージベクターなどが使用可能であるが、大腸菌菌体内で複製可能であり、適当な薬剤耐性マーカーと特定の制限酵素切断部位を有し、菌体内のコピー数の高いプラスミドベクターを使用するのが好ましい。具体的には、pBR322(Gene,2,95(1975))、pUC18,pUC19(Gene、33,103(1985))などを例示することができる。
【0037】
作製した組換えべクターを用いて大腸菌を形質転換する。宿主となる大腸菌としては、例えば組換えDNA実験に使用されるK12株、C600菌、JM105菌、JM109菌(Gene, 33, 103-119(1985))などが使用可能である。
【0038】
大腸菌を形質転換する方法はすでに多くの方法が報告されており、低温下、塩化カルシウム処理して菌体内にプラスミドを導入する方法(J.Mol.Biol.,53,159(1970))などにより大腸菌を形質転換することができる。
【0039】
得られた形質転換体は、当該微生物が増殖可能な培地中で増殖させ、さらにクローン化した目的とする酵素活性を有するタンパク質の発現を誘導して菌体内に当該酵素タンパク質が大量に蓄積するまで培養を行う。形質転換体の培養は、炭素源、窒素源などの当該微生物の増殖に必要な栄養源を含有する培地を用いて常法に従って行えばよい。例えば、培地としてブイヨン培地、LB培地(1%トリプトン、0.5%イーストエキストラクト、1%食塩)または2×YT培地(1.6%トリプトン、1%イーストエキストラクト、0.5%食塩)などの大腸菌の培養に常用されている培地を用い、20〜40℃の培養温度で必要により通気攪拌しながら培養することができる。また、ベクターとしてプラスミドを用いた場合には、培養中におけるプラスミドの脱落を防ぐために適当な抗生物質(プラスミドの薬剤耐性マーカーに応じ、アンピシリン、カナマイシンなど)の薬剤を適当量培養液に加えて培養する。
【0040】
培養中に目的とする酵素活性を有する酵素タンパク質の発現を誘導する必要がある場合には、用いたプロモーターで常用されている方法で該遺伝手の発現を誘導する。例えば、lacプロモーターやtacプロモーターなどを使用した場合には、培養中期に発現誘導剤であるイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(以下、IPTGと略称する)を適当量添加する。また、使用するプロモーターが構成的に転写活性を有する場合には、特に発現誘導剤を添加する必要はない。
【0041】
反応液に添加する形質転換体としては、上記の方法で得られる培養液から遠心分離、膜分離などの固液分離手段で回収した微生物の菌体を利用すればよい。また、酵素調製物としては、該形質転換体の処理物、該処理物から得られる酵素タンパク質を利用することもできる。
【0042】
形質転換体の処理物としては、上記回収した微生物菌体を、機械的破壊(ワーリングブレンダー、フレンチプレス、ホモジナイザー、乳鉢などによる)、凍結融解、自己消化、乾燥(凍結乾燥、風乾などによる)、酵素処理(リゾチームなどによる)、超音波処理、化学処理(酸、アルカリ処理などによる)などの一般的な処理法に従って処理して得られる菌体処理物または菌体の細胞壁もしくは細胞膜の変性物を例示することができる。
【0043】
酵素タンパク質としては、上記菌体処理物から当該酵素活性を有する画分を通常の酵素の精製手段(塩析処理、等電点沈澱処理、有機溶媒沈澱処理、透析処理、各種クロマトグラフィー処理など)を施して得られる粗酵素または精製酵素を例示することができる。
【0044】
前記した酵母菌体と上記した形質転換体(あるいは該形質転換体から調製される酵素タンパク質)とを用い、GMPとマンノースからGDP−Manを調製し、次いで、得られたGDP−Manを微生物または酵素によりGDP−Fucに変換することによりGDP−Fucを調製する。
【0045】
酵母菌体の使用濃度としては、乾燥重量として1〜5%(w/v)の範囲から適宜設定することができる。
【0046】
形質転換体あるいは該形質転換体から調製される酵素タンパク質は、それぞれの酵素が0.0001ユニット/ml以上、好ましくは0.001〜1.0ユニット/ml程度になるように、反応液中に適宜添加すればよい。
【0047】
基質として使用するGMPおよびマンノースは市販されており、この市販品を使用することができる。使用濃度としては、たとえばそれぞれ1〜200mM、好ましくは10〜100mMの範囲から適宜設定することができる。
【0048】
上記基質、酵母および形質転換体(あるいは酵素タンパク質)以外に、無機リン酸、必要に応じてマグネシウムとエネルギー供与体を反応系に添加することが好ましい。
【0049】
無機リン酸としては、リン酸カリウムなどをそのまま使用することもできるが、好ましくはリン酸緩衝液の形態で使用するのが好ましい。使用濃度は、たとえば10〜500mM、好ましくは50〜300mMの範囲から適宜設定することができる。また、無機リン酸をリン酸緩衝液の形で使用する場合、緩衝液のpHは6.0〜8.0の範囲から適宜設定すればよい。
【0050】
マグネシウムとしては、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機酸のマグネシウム塩、クエン酸マグネシウム等の有機酸のマグネシウム塩を挙げることができ、その使用濃度は、5〜50mMの範囲から適宜設定することができる。
【0051】
エネルギー供与体としては、グルコースなどの糖類、酢酸、クエン酸などの有機酸を使用することができ、その使用濃度は、1〜500mMの範囲から適宜設定することができる。
【0052】
GDP−Manの合成反応は、上記酵母菌体、前記(b)および(c)の酵素活性を有する形質転換体(あるいは当該形質転換体から調製した酵素タンパク質)、GMPおよびマンノースを用い、必要により通気または撹拌しながら、水性媒体中、10〜50℃、好ましくは20〜40℃で1〜50時間程度反応させることにより、実施することができる。
【0053】
得られたGDP−Manは、精製処理に付して高純度(95%以上)のGDP−ManにしてからGDP−Fucへの変換反応に供する。
【0054】
GDP−Manの精製は、従来から単離精製の常套手段としてよく知られているイオン交換樹脂カラムクロマトグラフィー法を採用すればよい。用いるイオン交換樹脂としては、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂等を使用することができる。
【0055】
また、必要ならば以上の処理法に加えて活性炭カラムクロマトグラフィー等の処理を併用して行ってもかまわない。
【0056】
次に、GDP−ManからGDP−Fucへの変換反応は、上記の高純度GDP−Manと前記(d)及び(e)の酵素活性を有する形質転換体を用い、必要により通気または撹拌しながら、水性媒体中、10〜50℃、好ましくは20〜40℃で1〜50時間程度反応させることにより実施することができる。なお、その他の条件は、GDP−Man合成の場合と同じ条件を採用することができる。
【0057】
このようにして得られるGDP−Fucは、前述したように、非極性多孔質樹脂を用いた精製処理に付すことにより、従来のものに比べて一段と高純度のGDP−Fucとすることができる。
【0058】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明がこれに限定されるものではないことは明らかである。なお、実施例におけるDNAの調製、制限酵素による切断、T4DNAリガーゼによるDNA連結、並びに大腸菌の形質転換法は全て「Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition」(Sambrookら編、Cold spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York (1989))に従って行った。また、制限酵素、AmpliTaqDNAポリメラーゼ、T4DNAリガーゼは宝酒造(株)より入手した。
【0059】
(1)大腸菌manB、manC両遺伝子発現プラスミドpTrc−manCBの造成
大腸菌K12株JM109菌(宝酒造(株)より入手)の染色体DNAを斉藤と三浦の方法(Biochim. Biophys. Acta., 72, 619 (1963))で調製した。このDNAをテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマーDNAを常法に従って合成し、PCR法により大腸菌manB、manC両遺伝子を含むDNA断片を増幅した。
プライマー(A):5′-ATGCCGAATTCCCGTCGAAACTGA-3′
プライマー(B):5′-TTAAGCTTGCAAACATGATGGTGATATC-3′
【0060】
PCR法によるmanB、manC両遺伝子を含むDNA断片の増幅は、反応液(100μl中50mM 塩化カリウム、10mM トリス塩酸(pH8.3)、1.5mM 塩化マグネシウム、0.001%ゼラチン、0.2mM dNTP、0.1μg テンペレートDNA、プライマーDNA(A)(B)各々 0.2μM、AmpliTaq DNAポリメラーゼ 2.5ユニット)に対して、Perkin-Elmer Cetus Instrument 社製 DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(60℃、2分)、ポリメライゼーション(72℃、4分)のステップを25回繰り返すことにより行った。
【0061】
上記の遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加し、DNAを沈殿させた。沈殿回収したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、3.3kb相当のDNA断片を単離精製した。該DNAを制限酵素EcoRI及びHindIIIで切断し、同じく制限酵素EcoRI及びHindIIIで消化したプラスミドpBR322と、T4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpBR−manCBを単離した。該プラスミドDNAを制限酵素EcoRI及びHindIIIで消化し、得られた消化混合物を前述の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、3.3kb相当のDNA断片を単離精製した。該DNA断片を、制限酵素EcoRI及びHindIIIで消化したプラスミドpTrc99A(Pharmacia Biotech.社より入手)と、T4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−manCBを単離した。
【0062】
pTrc−manCBは、pTrc99Aのtrcプロモーター下流のEcoRI及びHindIII切断部位に、大腸菌manB、manC両遺伝子のプロモーター及び構造遺伝子を含有するEcoRI−HindIIIDNA断片が挿入されたものである。
【0063】
(2)manB、manC両遺伝子を過剰発現する組換え大腸菌体破砕液の調製
上記(1)で得られたプラスミドpTrc−manCBを用いて大腸菌(E.coli)K−12株 ME8417[(FERM BP−6847:平成11年8月18日 通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に寄託)]を形質転換し、50mg/lのアンピシリンを含有する2xYT培地15リットル(L)に植菌し、25℃で通気撹拌培養した。4×10個/mlに達した時点で、培養液に最終濃度1mMになるようにIPTGを添加し、さらに25℃で6時間、18℃で18時間、順次通気及び撹拌を施しながら培養を行った。培養終了後、遠心分離(9000×g、10分)により菌体を回収し、1.5Lの緩衝液(50mM リン酸緩衝液(pH8.0)、0.5mM EDTA、1mM 2−メルカプトエタノール含有)に懸濁した。懸濁液を超音波処理して菌体を破砕し、さらに遠心分離(20000×g、10分)により上清画分を得た。
【0064】
上記のmanB、manC両遺伝子を過剰発現する組換え大腸菌体破砕液を酵素標品とし、当該酵素標品における酵素活性(GDP−Man合成活性)を対照区(pTrc99Aを保持する大腸菌K−12株 ME8417の菌体破砕液)の場合と共に下記表1に示す。なお、当該酵素標品の酵素活性の単位(ユニット)は、以下の方法で測定、算出したものである。
【0065】
(酵素活性の測定と単位の算出法)
100mM リン酸緩衝液(pH7.0)、20mM 塩化マグネシウム、5mM GTP、5mM マンノース−6−リン酸、25μM グルコース−1,6−ビスリン酸を用い、37℃でインキュベーションすることにより反応を行い、1分間煮沸することにより酵素を失活させる。HPLCにより反応液中のGDP−Manを定量し、37℃で1分間に1μmoleのGDP−Manを生成する活性を1単位(ユニット)とする。
【0066】
【表1】
Figure 0004509447
【0066】
(3)大腸菌gmd、fcl両遺伝子発現プラスミドpTrc−gfの造成
大腸菌K12株JM109菌(宝酒造(株)より入手)の染色体DNAを斉藤と三浦の方法(Biochim. Biophys. Acta., 72, 619 (1963))で調製した。このDNAをテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマーDNAを常法に従って合成し、PCR法により大腸菌gmd、fcl両遺伝子を含むDNA断片を増幅した。
プライマー(C):5′-GTTGCCCCAAGCTTCACAATCG-3′
プライマー(D):5′-AGAGACAAGCTTAGTGGAGCGC-3′
【0067】
PCR法によるgmd、fcl両遺伝子を含むDNA断片の増幅は、反応液(100μl中50mM 塩化カリウム、10mM トリス塩酸(pH 8.3)、1.5mM 塩化マグネシウム、0.001% ゼラチン、0.2mM dNTP、0.1μg テンペレートDNA、プライマーDNA(A)(B)各々0.2μM、AmpliTaq DNAポリメラーゼ 2.5ユニット)に対して、Perkin-Elmer Cetus Instrument社製DNA Thermal Cyclerを用いて、熱変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、2分)、ポリメライゼーション(72℃、4分)のステップを25回繰り返すことにより行った。
【0068】
上記の遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍容のエタノールを添加し、DNAを沈殿させた。沈殿回収したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、2.3kb相当のDNA断片を単離精製した。該DNAを制限酵素HindIIIで切断し、同じく制限酵素HindIIIで消化したプラスミドpBR322と、T4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpBR−gf−Rを単離した。該プラスミドDNAを制限酵素HindIIIで消化し、得られた消化混合物を前述の方法に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、2.3kb相当のDNA断片を単離精製した。該DNA断片を、制限酵素HindIIIで消化したプラスミドpTrc99A(Pharmacia Biotech.社より入手)と、T4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−gfを単離した。
【0069】
pTrc−gfは、pTrc99Aのtrcプロモーター下流のHindIII切断部位に、大腸菌gmd、fcl両遺伝子のプロモーター及び構造遺伝子を含有するHindIII−HindIIIDNA断片が挿入されたものである。
【0070】
(4)gmd,fcl両遺伝子を過剰発現する組換え大腸菌湿菌体の調製
上記(3)で得られたプラスミドpTrc−gfを保持する大腸菌K−12株ME8417を、50mg/lのアンピシリンを含有する2×YT培地15Lに植菌し、23℃で通気撹拌培養した。4×10個/mlに達した時点で、培養液に最終濃度1mMになるようにIPTGを添加し、さらに23℃で8時間、20℃で18時間、順次通気及び撹拌を施しながら培養を行った。培養終了後、遠心分離(9000×g、10分)により菌体を回収した。
【0071】
上記のgmd,fcl両遺伝子を過剰発現する組換え大腸菌湿菌体を酵素標品とし、当該酵素標品における酵素活性(GDP−Fuc合成活性)を対照区(pTrc99Aを保持する大腸菌K−12株 ME8417)の場合と共に下記表2に示す。なお、当該酵素標品の酵素活性の単位(ユニット)は、以下の方法で測定、算出したものである。
【0072】
(酵素活性の測定と単位の算出法)
100mM リン酸緩衝液(pH8.0)、10mM 塩化マグネシウム、30mM GDP−Man、2% グルコース、1% キシレン、0.4% ナイミーンS−215(日本油脂株式会社製)を用い、通気及び撹拌しながら、37℃でインキュベーションすることにより反応を行い、1分間煮沸することにより酵素を失活させる。HPLCにより反応液中のGDP−Fucを定量し、37℃で1分間に1μmoleのGDP−Fucを生成する活性を1単位(ユニット)とする。
【0073】
【表2】
Figure 0004509447
【0066】
(5)GDP−Fucの合成(GDP−Manを精製しない方法)
上記(2)で調製した組換え大腸菌体破砕液を使用しなくとも酵母によりGMPとマンノースからGDP−Manが合成されるのを確認後、上記(4)で調製した組換え大腸菌の湿菌体3%(0.066units/ml相当)、乾燥パン酵母(オリエンタル酵母工業社製)3%、100mM リン酸緩衝液(pH8.0)、20mM 塩化マグネシウム、20mM GMP、200mM マンノース、1% キシレン、0.4% ナイミーンS−215の組成からなる反応液1mlを試験管に入れ、該反応液をマグネティック・スターラーにて撹拌し、23℃で反応を行った。
【0074】
経時的に反応液の分析を行った結果を図1に示す。図1から明らかなように、基質であるGMP及びマンノースから反応中間体であるGDP−Manへの変換は顕著に観察されたものの、GDP−Fucの合成はほとんど見られなかった。
【0075】
(6)GDP−Fucの合成(GDP−Manを精製し、高純度GDP−Man
を使用する方法)
(i)GDP−Manの合成:
上記(2)で調製した組換え大腸菌体破砕液(終濃度0.215units/ml)、乾燥パン酵母(オリエンタル酵母工業)3%、100mM リン酸緩衝液(pH8.0)、20mM 塩化マグネシウム、50mM GMP、200mM マンノースの組成からなる反応液15Lを30L容ジャー・ファーメンターに入れ、通気及び撹拌を施しながら23℃で14時間反応を行った。なお、反応開始8時間後に、さらに200mM マンノースをフィーディングした。
【0076】
経時的に反応液の分析を行った結果を図2に示す。該反応により、反応液中に22.3g/LのGDP−Manが生成し、対GMPモル収率は68.6%であった。
【0077】
(ii)GDP−Manの精製:
上記GDP−Man合成反応液15Lを遠心分離(8000×g、10分)によって上清を得た。該上清画分を活性炭カラムクロマトグラフィー、イオン交換樹脂クロマトグラフィーに順次付し、得られたGDP−Man画分を濃縮後、2倍容量のエタノールを添加してGDP−Manを沈殿させ、遠心分離によって沈殿画分を得た。該沈殿画分を70%エタノールで洗浄後、真空乾燥に供することによって、GDP−Man(2Na塩)202gを得た。得られたGDP−Manを高速液体クロマトグラフィー法で分析した結果、純度は99.5%であった。
【0078】
(iii)GDP−ManからGDP−Fucへの変換:
上記(4)で調製した組換え大腸菌の湿菌体1%(0.022units/ml相当)、上記(ii)で調製した高純度なGDP−Man 30mM、100mM リン酸緩衝液(pH8.0)、10mM 塩化マグネシウム、2% グルコース、1% キシレン、0.4% ナイミーンS−215の組成からなる反応液600mlを1L容ビーカーに入れ、通気及び撹拌を施しながら37℃で24時間反応を行った。
【0079】
経時的に反応液の分析を行った結果を図3に示す。該反応により、反応液中に16.7g/LのGDP−Fucが生成し、対GDP−Manモル収率は83.3%であった。
【0080】
(iv)GDP−Fucの精製:
上記GDP−Fuc含有溶液2Lを遠心分離(8000×g、10分)によって上清を得た。該上清画分を活性炭カラムクロマトグラフィー、イオン交換樹脂クロマトグラフィーに順次付し、HPLC純度約91%のGDP−Fuc画分を得た。なお、当該GDP−Fuc画分は、不純物として約8%のGDP、及び約1%のGMPを含有していた。
【0081】
当該GDP−Fuc画分を食塩濃度が4Mになるように調整し、1LのSP207SS(三菱化学)を充填したカラムにSV=0.4でフィードし、吸着させた。3M NaClでGMP、GDP等の類縁化合物を溶出し、次いで水を用いてGDP−Fucを溶出した。得られたGDP−Fuc画分を高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)で分析した結果、GDP−Fucの純度は99.9%であり、その回収率は91.9%であった。
【0082】
こうして得られたGDP−Fuc画分を脱塩、濃縮、濾過(孔径0.45μmフィルタ)した後、凍結乾燥することによって、GDP−Fuc(2Na塩)16gを得た。
【0083】
こうして最終的に得られたGDP−Fucの純度をHPLCで分析した結果を表3に示す。
【0084】
【表3】
Figure 0004509447
【0066】
(v)安定性試験:
(iv)で最終的に得られたGDP−Fuc(本発明品)と、非極性で多孔質の吸着樹脂を用いての精製処理前のGDP−Fuc(対照品)をそれぞれ4℃、23℃の各温度で保存した際の1週間後および8週間後の純度を高速液体クロマトグラフィー法で分析した結果を表4に示す。なお、高速液体クロマトグラフィー法は以下の条件で行った。
カラム:YMC ODS−AQ AQ−312
抽出液:0.5M KHPO
検出法:262nmによる検出
また、表中の( )は−20℃にて保管されたそれぞれのGDP−Fucの純度を100としたときの割合を示す。
【0086】
【表4】
Figure 0004509447
【0066】
表4より、本発明品のGDP−Fucは、対照品と比較して4℃、23℃ともに8週間経過しても安定であることが確認された。
【0087】
【産業上の利用可能性】
上述したように、本発明の純度95%以上の高純度のGDP−Fucは、従来の低純度のものと比較して安定性に優れていることから、この糖ヌクレオチドを用いて実際にオリゴ糖を合成する際、糖転移酵素(グリコシルトランスフェラーゼ)による転移反応を阻害しない点で、従来の純度の低いGDP−Fucよりも有用である。
【0088】
また、本発明の方法は、特に、GDP−Manを合成後GDP−Fucに変換してGDP−Fucを製造する方法において、合成したGDP−Manを一旦反応液から単離精製した高純度のGDP−Manを使用する方法と、変換して得られたGDP−Fucを、非極性で多孔質の吸着樹脂を用いた精製処理に付してGDP−Fucを単離精製する方法とを組合せることにより、純度95%以上の高純度のGDP−Fucを高収率で取得できる点で極めて実用性の高い方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、GDP−Manを精製しない方法でGDP−Fuc合成反応を行った時に、経時的に当該反応液の分析を行った結果を示したものである。図中、□はGDP−Manの濃度を、◇はGDP−Fucの濃度をそれぞれ示す。
【図2】 図2は、本発明のGDP−Fuc合成法における、GMP及びマンノースからのGDP−Manの合成反応を行った時に、経時的に反応液の分析を行った結果を示したものである。図中、□はGMPの濃度を、◇はGDP−Manの濃度をそれぞれ示している。
【図3】 図3は、本発明のGDP−Fuc合成法における、精製したGDP−ManからのGDP−Fucの変換反応を行った時に、経時的に当該反応液の分析を行った結果を示したものである。図中、□はGDP−Fucの濃度を、◇は類縁化合物(GDP及びGDP−Man)の濃度をそれぞれ示している。
【配列表】
Figure 0004509447
Figure 0004509447

Claims (4)

  1. グアノシン5′−モノリン酸(GMP)およびマンノースを基質とし、微生物および/または酵素を用いてグアノシン5′−ジリン酸マンノース(GDP−Man)を合成し、次いで、得られたGDP−Manを微生物および/または酵素を用いてグアノシン5′−ジリン酸フコース(GDP−Fuc)に変換して得られたGDP−Fucの含有液に、食塩を濃度が2〜4Mとなるように添加し、食塩添加後の該含有液を、スチレン系の重合体を母体とする非極性で多孔質の吸着樹脂を用いた精製処理に付し、GDP−Fuc含有溶液からGDP‐Fucを単離精製する工程を含むことを特徴とする、下記に示す純度を有するGDP−Fucの製造法:
    <純度>
    (1)GDP−Fuc:95%以上
    (2)グアノシン5′−ジリン酸(GDP):3%以下。
  2. GMPおよびマンノースを基質とし、微生物および/または酵素を用いてGDP−Manを合成し、次いで、得られたGDP−Manを微生物および/または酵素を用いてGDP−Fucに変換してGDP−Fucの含有液を得る工程において、GDP−ManからGDP−Fucへの変換反応の際、一旦反応液から単離精製したGDP−Manを使用することを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
  3. 得られるGDP−Fucが、下記に示す純度を有する、請求項1または2に記載の製造法:
    <純度>
    (1)GDP−Fuc:97%以上
    (2)GDP:2%以下
    (3)GMP:1%以下。
  4. 非極性で多孔質の吸着樹脂を用いた精製処理の他に活性炭および/またはイオン交換樹脂を用いた精製処理を併用する、請求項1〜のいずれか一項に記載の製造法。
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