JP4509244B2 - 半導体素子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、溶融再結晶化を用いて絶縁物上に形成される半導体素子の製造方法に関するものであり、特に、太陽電池などの半導体素子に用いる薄膜多結晶シリコンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3は、従来の半導体素子の製造方法を工程順に示す概略図である。
図3(a)〜(f)は、例えば学会誌Technical Digest of 7th International Photovoltaic Science and Engineering Conferenceの241〜242ページに記載の、従来の半導体素子の製造方法の一例を工程順に示す模式断面図である。
図3において、1は基板、2は基板1を被覆する第1絶縁膜、3は第1半導体層、4は第1半導体層3を被覆する第2絶縁膜、5および6は、例えばシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜から構成される第2絶縁膜、7はヒータ、8は加熱光、9は溶融帯、10は粒径拡大された第1半導体層、10aは第1半導体層10のうち、後にエッチングされる部分、12は第2半導体層である。
【0003】
まず、図3(a)に示すように、単結晶シリコンウェハからなる基板1の上に、シリコン酸化膜からなる厚さ1μmの第1絶縁膜2を熱酸化法により形成する。続いて、多結晶シリコン層、微結晶シリコン層、アモルファスシリコン層のいずれかのいわゆる非単結晶のシリコン薄膜からなる厚さ3μmの第1半導体層3を減圧CVD法により形成する。さらにその上から、厚さ1μmのシリコン酸化膜5と、厚さ30nmのシリコン窒化膜6とを減圧CVD法により形成する。なお、シリコン酸化膜5およびシリコン窒化膜6からなる積層体を第2絶縁膜4として示す。
【0004】
図3(b)、(c)に示すように、上述のような構造の試料を、試料の鉛直上方に配設されたヒータ7により加熱して、第1半導体層3の帯域溶融再結晶化を行う。ヒータ7としては、円筒状(図には長手方向に対する円形断面を示す)の集光型ランプヒータを用いる。ヒータ7の加熱光8により、第1半導体層3の一部が溶融し、ヒータ7の長手方向に対応した溶融帯9が発生する。ここで、ヒータ7を図中の左右の方向に移動させると、これに伴い溶融帯9も移動し、ヒータ7があたらなくなった溶融部分では、再結晶化が起こる。このような再結晶化により非単結晶シリコン層における粒径が拡大され、導電率などの電気的特性が改善される。なお、適当な種結晶を用いて膜内におけるシーディング(Seeding)を行えば、非単結晶シリコン層全体を単結晶化することも可能である。
【0005】
次に、図3(d)〜(f)に示すように、フッ酸水溶液で第2絶縁膜4を除去して粒径拡大された第1半導体層10を露出させた後、エピタキシャル成長を行う前に、水素雰囲気中で約1150℃に加熱してから塩化水素ガスを用いて、第1半導体層10の表面部分10aをエッチングする。
積層欠陥の発生源は、亜粒界付近に偏在する異物類(他元素の珪化物など)であり、これらを除去するために、十分な深さのエッチングを行う。このようなエッチング工程では、表面から500nm、もしくは膜厚の半分以上を除去する。その後、CVD法を用いたエピタキシャル成長により、残存する第1半導体層10の上に第2半導体層12を形成する。
【0006】
次に、従来の半導体素子の製造方法において、粒径拡大された第1半導体層10のうち、その表面部分10をエッチングする意味について説明する。
【0007】
粒径拡大された第1半導体層10(以下、粒径拡大された第1半導体層10を単に第1半導体層10と称す)は、巨視的には単結晶化も可能だが、微視的には様々な欠陥類を含んでいる。
図4は、図3(d)に示す第1半導体層10の上面を概念的に示す図である。図4に示すように、上述のエッチングを行う前の第1半導体層10においては、粒界13、亜粒界14、異物15が第1半導体層10における主な欠陥である。これらの欠陥のうち、粒界13や亜粒界14は、第1半導体層10を膜厚方向に貫通している本質的な欠陥であるが、異物15は第1半導体層10の表面付近、特に亜粒界14周辺の表面付近に偏在している。
従って、第1半導体層10を形成するためのエピタキシャル成長において、このような表面付近に偏在する異物15を除去することができれば、第2半導体層12の結晶状態を改善することができる。
【0008】
図5および図6は、従来の半導体基板の製造方法による結晶状態の違いを示す図である。
図5は、第1半導体層10の表面部分10aを除去せずに、表面部分10aの上に形成した第2半導体層12の表面を示しており、図6は、第1半導体層10の表面部分10aを除去してから第1半導体層10の上に形成した第2半導体層12の表面を示している。
第1半導体層10を形成するためのエピタキシャル成長の際に、異物15を源として積層欠陥17が形成される為、図5および図6に示す第2半導体層2の膜質の差は、積層欠陥17の数の差として表れる。
因みに、第1半導体層10の表面部分10aをエッチングしても、粒界13は、ほぼそのままの形態を保つが、亜粒界14は転位16として分散していく。これは、亜粒界14が線状に配列した転位16の集まりであることに由来している。
【0009】
以上で説明した従来の半導体基板の製造方法における第1半導体層10の表面部分10aのエッチングは、異物15を除去する為になされるものである。従来技術の場合、表面から500nm、もしくは、第1半導体層10の膜厚の半分以上をエッチングする。このように、表面部分10aをエッチングすれば、第1半導体層10の表面は異物の少ない面となるため、第1半導体差王10の上に形成される第2半導体層12は、図6に示すようになり、積層欠陥17の少ない良好な膜質を有するものとなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、溶融再結晶化技術が高度化し、第2半導体層の膜質をさらに良好にすべく、より熱平衡に近い状態で第1半導体層の再結晶化が行われると、高品質の結晶が得られる反面、形成される異物の偏在化、大型化が顕著になり、従来の半導体層中の欠陥の発生を抑制する方法では、積層欠陥密度が低減しなかったり、むしろ増加する場合が生じていた。
このため、作製される半導体層の拡散長等の物性値に大きなばらつきが生じ、このような半導体層を用いて作製される半導体素子の特性のばらつきの原因になっていた。この結果、従来の方法では高い良品率が得られなかった。
【0011】
また、上述のような異物の混入による影響を抑制する為には、異物の形成を抑制する、または、異物となる原子を分子組成に含む材料等の使用を禁止する等の措置をとることが効果的である。
【0012】
図7は、第1半導体層の表面における異物を例示的に示す電子顕微鏡写真である。
観察したサンプルは、溶融再結晶化の後、第2絶縁膜4を除去し、更にHClガスを用いたエッチング処理により、第1半導体層10の表面部分10aを厚さ1.5μmだけ除去した状態、即ち、図3(e)に相当する状態のものである。
図7では、4つの異物を確認することができ、このような異物は、最大のもので、大きさ1μm程度、厚さ100nm程度である。また、この異物の組成をXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線励起光電子分光法)を用いて調べた結果、炭素(C)を1%程度含み、その他はほぼ全てシリコンから成っていることが判明した。
【0013】
従来から、亜粒界近辺の表面部分には不純物が多く、このために異物が形成され、積層欠陥の原因となっていることが指摘されており、特にシリコン系の膜を形成する場合には、炭素の混入による欠陥の生成が懸念されていた。
従って、従来の半導体素子の製造方法における課題は、炭素原子を含有することに基づく積層欠陥の発生であると考えられる。
【0014】
この発明は、上述のような課題を解決する為になされたものであり、エピタキシャル成長の際において、亜粒界からの積層欠陥の発生を、安定性良く抑制することのできる半導体素子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明の半導体素子の製造方法は、基板上に、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜を順次形成する工程と、第2絶縁膜に被覆された第1半導体層を溶融再結晶化する工程と、第2絶縁膜を除去することにより、溶融再結晶化により粒径拡大された第1半導体層を露出させる工程と、露出した第1半導体層の上に、第2半導体層をエピタキシャル成長する工程とを備えてなり、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜の作製においては、分子組成に炭素を含まない材料を用いることを特徴とする。
【0016】
また、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜の作製に際しては、分子組成に炭素を含まない材料からなる周辺部材を用いることを特徴とする。
【0017】
また、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜の炭素の含有率は、1ppm未満であることを特徴とする。
【0018】
また、第1半導体層を溶融再結晶化する工程は、第1半導体層の一部を表面から加熱することにより、第1半導体層の一部を帯状に溶融し、溶融帯を移動させながら第1半導体層全体における粒径拡大を行う工程であって、溶融帯の幅を1〜3mmの範囲で制御すると共に、溶融帯の移動速度が毎秒0.2ミリメートル以下になるように制御し、かつ、溶融体幅および移動速度の誤差が共に20%以内になるように制御することを特徴とする。
【0019】
また、この発明の他の形態の半導体素子の製造方法は、基板上に、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜を順次形成する工程と、第2絶縁膜に被覆された第1半導体層を溶融再結晶化する工程と、第2絶縁膜を除去することにより、溶融再結晶化により粒径拡大された第1半導体層を露出させる工程と、露出した第1半導体層を、加熱した水素雰囲気中に暴露する工程と、加熱した水素雰囲気中に暴露した後に、露出した第1半導体層の上に第2半導体層をエピタキシャル成長する工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
また、第1半導体層を、加熱した水素雰囲気中に30分以上暴露することを特徴とする。
【0021】
また、第1半導体層を、加熱した水素雰囲気中に60分以上暴露する工程を含むことを特徴とする。
【0022】
また、第1半導体層を水素雰囲気中に暴露する工程は、第1半導体層を1150℃以上に加熱して行うことを特徴とする。
【0023】
さらに、基板上に、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜を順次形成する工程において形成される第1半導体層は、多結晶シリコン層、微結晶シリコン層またはアモルファスシリコン層のいずれかであることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
従来の半導体結晶の分析結果に基づけば、積層欠陥の発生源である異物の形成を抑制するには、構造中への炭素(C)の混入を防ぐことが効果的である。
以下、この発明の実施の形態1に係る半導体素子の製造方法の具体的方法について説明する。
【0025】
図1(a)〜(d)および(f)は、この発明の実施の形態1に係る半導体素子の製造方法を、その工程順に説明する断面模式図である。図1は、図3に示す従来技術との対比を容易にすべく、基本的に図3に準じた表し方になっている。また、図3および図1において、同一番号で示す構成要素は、同一または相当する構成要素であり、その説明を省略する。
【0026】
まず、図1(a)に示すように、基板1の上に、第1絶縁膜2、第1半導体層3、第2絶縁膜4を順次形成する。
ここで、その密度と前記の異物の形状等から逆算すると、形成する各層中の炭素濃度が1ppm程度でも異物は発生し、この結果積層欠陥が発生しうると試算される。従って、層中の炭素濃度は1ppm未満に抑制されることが望ましい。なお、この値は、半導体素子を作製する上では、層内における異物の密度が105個/cm2未満であることが望ましいことから導き出される値である。
【0027】
成膜される薄膜の組成に大きな影響を与えるのは、第1に成膜材料であり、第2にチューブ、サセプタ、治具等の周辺部材である。従って、材料および周辺部材として炭素(C)を含有しないものを用いれば、構造中への炭素の混入を防ぎ、異物の発生を抑制することができる。
【0028】
具体的には、第1絶縁膜2としては、例えばウェット熱酸化法で形成されるシリコン酸化膜を用いる。また、第1半導体層3としては、例えばシラン(SiH4)ガスを材料とする減圧CVD法で形成される多結晶、微結晶、アモルファスの何れかの結晶形態を有するいわゆる非単結晶のシリコンを用いる。また、第2絶縁膜4としては、例えばシラン(SiH4)ガスと酸素(O2)ガスを材料とする常圧CVD法により形成されるシリコン酸化膜5と、例えばシラン(SiH4)ガスとアンモニア(NH3)ガスを材料とする減圧CVD法により形成されるシリコン窒化膜6との積層構造体を用いる。さらに、これらの膜の形成に際しては、チューブ、サセプタ、治具等の周辺部材には、炭素を含有しない材料として、例えば石英製の部材を用いることが望ましい。
【0029】
また、この発明の実施の形態1では、従来技術で用いていたような炭素を含有する材料や周辺部材は避けることが重要である。半導体プロセスで一般に使用されている材料の中で、不適切な例としては、シリコン酸化膜の成膜材料に用いられるテトラエトキシシラン(TEOS)や、プロセスチューブや治具の材料に用いられる炭化珪素(SiC)等が挙げられる。
【0030】
また、各膜の厚さは、第1絶縁膜2は1μm前後、第1半導体層3は5μm以下、第2絶縁膜4はシリコン酸化膜5が1μm前後、シリコン窒化膜6が30nm前後であることが望ましい。
但し、これらの値は、後述する溶融再結晶化を良好に処理するための値であり、この発明に関する本質な部分とは、直接は関係しない。従って、各膜の厚さが、上述の値とは異なる構造であっても、特に差し支えはない。
【0031】
図1(a)に示すような断面構造の半導体素子を用いて、第1半導体層3の溶融再結晶化を行う。その手法は、特に限定するものではないが、熱平衡に近い状態でゆっくりと再結晶化を行うと、良質の結晶が得られる反面、異物の発生も起こりやすくなるので、この発明の効果を説明するためにはより効果的な手法である。
【0032】
一例を挙げて具体的に説明する。
例えば、図1(b)に示すように、試料全体を1250℃に加熱し、試料の鉛直上方に配設された集光型ランプヒータであるヒータ7を用い、加熱光8を照射して試料をさらに加熱し、第1半導体層3の一部を溶融させる。
第1半導体層3を構成する非単結晶のシリコンの融点は、約1400℃であるため、ヒータ7により試料全体を1400℃付近まで加熱すれば、試料に溶融帯9が発生する。ここで、ヒータ7を図中の左右の方向に移動させると、溶融帯9も移動し、ヒータ7があたらなくなった溶融部分では、再結晶化が起きて非単結晶シリコン層内における粒径が拡大される。
【0033】
溶融再結晶化に際しては、溶融帯9の幅Wを1〜3mmの範囲内に設定すると共に、その誤差を前後20%以内に制御し、かつ、溶融帯9の移動速度を0.2mm/sec.以下に設定すると共に、その誤差を前後20%以内に制御すると、図1(c)に示すように、結晶粒が大きく、かつ、面方位の良く揃った良質な第1半導体層10を作製することができる。
【0034】
なお、この発明の実施の形態1では、従来技術とは異なり、第1絶縁膜2、半導体層3、第2絶縁膜4の作製において、周辺部材に炭素を含有する部材を用いていないので、層内への炭素の混入は抑制され、異物が形成されることはない。
【0035】
溶融再結晶化を行った後は、第2絶縁膜4は不要になるなので、後述するエピタキシャル成長を行う前に除去する。その際のエッチング方法は特に限定するものではないが、例えば、濃度50%のフッ酸水溶液に6分間ないし8分間浸しておけば、第2絶縁層4を容易に除去することができる。その後は、半導体素子を水洗して乾燥させる。
図1(d)に示すように、上述のように異物の形成を抑制しているので、粒径拡大された第1半導体層10の表面を清浄に露出させることができる。また、このようにして、表面に異物のない第1半導体層10を作製することができるので、従来のように表面部分をエッチングすることは不要である。
【0036】
次に、図1(f)に示すように、第1半導体層10の上にエピタキシャル成長を行うことにより第2半導体層12を形成する。エピタキシャル成長を行う際の条件は特に限定するものではないが、例えば水素雰囲気中でジクロロシラン(SiH2Cl2)ガスを分解し、いわゆる熱CVD法によりエピタキシャル成長を行えば、大面積に渡り均一な膜厚の第2半導体層12を、生産性良く作製することができる。上述のような製造方法で第1半導体層10における異物の形成を抑制したので、従来のように第1半導体層の表面部分のエッチングを行わずに第2半導体層12をエピタキシャル成長しても、積層欠陥17の発生が抑制された、図6に示すような良質の結晶状態を有する第2半導体層12を作製することができる。
【0037】
なお、第1絶縁膜2、第1半導体層3、第2絶縁膜4の形成に用いる材料および周辺部材は、炭素を含有しないものであれば、上述の説明で例示した以外のものでも、同様の効果を得ることができる。また、形成方法も、例えばプラズマCVDやスパッタリング等を含め、上述の説明で例示した以外の手法を用いても差し支えない。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態1に係る半導体素子の製造方法は、異物の混入自体を抑制して積層欠陥の発生を防ぐことを主眼としており、そのために、炭素を含有しない材料を用いるなどの工夫をしていた。これに対し、この発明の実施の形態2に係る半導体素子の製造方法は、炭素を含有する材料や周辺部材などを用いて第1半導体層を形成し、エピタキシャル成長を行う前に異物を除去するものであるが、従来技術のように第1半導体層をエッチングすることなく、積層欠陥の発生を抑制することができる。以下、その方法について説明する。
【0039】
シリコンと炭素は、共に周期律表の四族に属するため、シリコン−炭素間の結合は化学的安定性が非常に高い。従って、一般的には、異物の粒径が大型化した場合には、エッチング等では異物を除去することができず、エッチング後の第1半導体層の表面にも異物は存在する。
しかしながら、高温下で、特に水素に暴露するような環境では、異物の活動が活発化する。従って、この発明の実施の形態2に係る半導体素子の製造方法では、このような特徴を活用して異物の除去を行う。
【0040】
図2(a)〜(f)は、この発明の実施の形態2に係る半導体素子の製造方法を、工程順に説明する断面模式図である。図2は、基本的に図3に準じて記載してあり、図3に示す構成要素と同一あるいは相当する構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
また、図2において、19は第2のヒータ、20は水素ガスである。
【0041】
まず、図2(a)に示すように、基板1の上に、第1絶縁膜2、第1半導体層3、第2絶縁膜4を順次形成する。
第1絶縁膜2、半導体層3、第2絶縁膜4としては、実施の形態1で例示した膜と同一組成の膜を用いても差し支えないが、ここでは、実施の形態2に係る発明の効果を判りやすくするために、シリコン酸化膜5としては、例えば、炭素を含有するテトラエトキシシラン(TEOS)を用いた減圧CVD法によって形成されるシリコン酸化膜を用い、その厚さを1μmに設定する。
【0042】
次に、図2(b)、(c)に示すように、実施の形態1と同様の方法で、半導体層3の溶融再結晶化を行う。なお、上述のように、この発明の実施の形態2では、製造工程において、炭素を含む部材を用いないというような制限を課していないため、当然のように、従来技術の場合と同様に、第1半導体層内に異物が形成される場合がある。
【0043】
そして、図2(d)に示すように、溶融再結晶化後には、第2絶縁膜4は不要になるので、後述するエピタキシャル成長を行う前に除去する。その除去方法は特に限定するものではないが、例えば、濃度50%のフッ酸水溶液に6分間ないし8分間浸しておけば、第2絶縁膜4を容易に除去することができる。その後、試料を水洗し乾燥させる。炭素化合物などの異物は、シリコン化合物中では化学的な安定性が非常に高い為、フッ酸を用いたエッチング処理によって第1半導体層10の表面付近における異物が除去されることはなく、このようなエッチング処理において、第1半導体層10はエッチングされず、また、第1半導体層10内に異物は第1半導体層内に残存する。
【0044】
この次に、水素雰囲気中で試料を加熱し、第1半導体層10内に存在する異物を除去するための処理を行う。
具体的に一例を挙げて説明する。
図2(e)に示すように、例えば、炭化珪素(SiC)で被覆されたカーボン製のサセプタからなる第2のヒータ19の上に試料を設置し、例えば電磁誘導加熱によってこの第2のヒータ19を1150℃に加熱する。第2のヒータ19からの熱伝導により、試料も加熱される。このように試料を加熱した状態で水素ガス20に暴露し、適切な時間この状態を保持すると、第1半導体層10内の異物15は消滅または層中に埋没し、第1半導体層10の表面には、異物15の存在しない清浄な表面を得ることができる。なお、暴露する時間は、30分以上で顕著な効果があり、60分以上でその効果がほぼ飽和することが確認されている。
【0045】
高温下で水素ガスに曝されると、炭素およびシリコンは、その活動が特に表面(第1半導体層10の表面)近傍で活発化する。これにより、異物15に含まれている炭素は、水素と結合して炭化水素ガスに変化し、第1半導体層10から離脱する。このとき、シリコンは、表面マイグレーションにより第1半導体層10と同化され、これらの反応や活動が継続した結果、第1半導体層10の表面は清浄な表面となる。
【0046】
このようにして得られた第1半導体層の清浄な表面上に、エピタキシャル成長により第2半導体層12を形成する。その手法は特に限定するものではないが、例えば水素雰囲気中でジクロロシラン(SiH2Cl2)ガスを分解し、いわゆる熱CVD法によりエピタキシャル成長を行えば、大面積に渡り均一な膜厚の結晶を、生産性良く作製することができる。
更に、上述の異物の除去処理に続いて連続的に第2半導体層12を形成することができるので、清浄な表面を保ったまま第2半導体層12を成長させることができ、品質の高い第2半導体層が得られると共に、工程の簡略化を図ることができる。また、このようにして形成される第2半導体層12は、積層欠陥17の発生が抑制された、図6のような結晶状態となる。
【0047】
なお、第1絶縁膜2、第1半導体層3、第2絶縁膜4の形成に用いる材料および周辺部材は、上述の説明で例示した以外のものでも、同様の効果を得ることができる。また、形成方法も、例えばプラズマCVDやスパッタリング等を含め、上述の説明で例示した以外の手法を用いても同様日本発明を実施することができる。
【0048】
【発明の効果】
この発明の半導体素子の製造方法は、基板上に、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜を順次形成する工程と、第2絶縁膜に被覆された第1半導体層を溶融再結晶化する工程と、第2絶縁膜を除去することにより、溶融再結晶化により粒径拡大された第1半導体層を露出させる工程と、露出した第1半導体層の上に、第2半導体層をエピタキシャル成長する工程とを備えてなり、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜の作製においては、分子組成に炭素を含まない材料を用いることを特徴とするので、溶融再結晶化の際の異物形成を大きく抑制することができる。従って、エピタキシャル成長の際、亜粒界からの積層欠陥の発生を安定性良く抑制することができる。また、従来の半導体素子の製造方法に比べて、特に製造工程を増やす必要もなく、むしろ、従来行っていたエッチング工程が不要になり、工程数を減少させることができる。
【0049】
また、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜の作製に際しては、分子組成に炭素を含まない材料からなる周辺部材を用いることを特徴とするので、溶融再結晶化の際の異物形成を更に大きく抑制することができる。従って、亜粒界からの積層欠陥の発生を、一層安定性良く抑制することができる。
【0050】
また、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜の炭素の含有率は、1ppm未満であることを特徴とするので、溶融再結晶化の際の異物形成を更に大きく抑制することができる。従って、亜粒界からの積層欠陥の発生を、より一層安定性良く抑制することができる。
【0051】
また、第1半導体層を溶融再結晶化する工程は、第1半導体層の一部を表面から加熱することにより、第1半導体層の一部を帯状に溶融し、溶融帯を移動させながら第1半導体層全体における粒径拡大を行う工程であって、溶融帯の幅を1〜3mmの範囲で制御すると共に、溶融帯の移動速度が毎秒0.2ミリメートル以下になるように制御し、かつ、溶融体幅および移動速度の誤差が共に20%以内になるように制御することを特徴とするので、溶融再結晶化に際して、第1半導体層ないにおける異物形成を多分に抑制することができる。従って、亜粒界からの積層欠陥の発生が抑制され、かつ結晶粒や面方位の揃った、より高品質の半導体結晶を安定性良く得ることができる。
【0052】
また、この発明の他の形態の半導体素子の製造方法は、基板上に、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜を順次形成する工程と、第2絶縁膜に被覆された第1半導体層を溶融再結晶化する工程と、第2絶縁膜を除去することにより、溶融再結晶化により粒径拡大された第1半導体層を露出させる工程と、露出した第1半導体層を、加熱した水素雰囲気中に暴露する工程と、加熱した水素雰囲気中に暴露した後に、露出した第1半導体層の上に第2半導体層をエピタキシャル成長する工程とを備えることを特徴とするので、この処理によって異物が第1半導体層ないから消滅する。または第1半導体層ないに埋没する。従って、エピタキシャル成長の際、亜粒界からの積層欠陥の発生を、安定性良く抑制することが、第1絶縁膜、第1半導体層、第2絶縁膜の形成方法に対して、特に制約を加えることなく達成できる。
【0053】
また、第1半導体層を、加熱した水素雰囲気中に30分以上暴露することを特徴とするので、この処理によって異物が高い確率で消滅または埋没する。従って、エピタキシャル成長の際、亜粒界からの積層欠陥の発生を、より安定性良く抑制できる。
【0054】
また、第1半導体層を、加熱した水素雰囲気中に60分以上暴露する工程を含むことを特徴とするので、この処理によって異物がより高い確率で消滅または埋没する。従って、亜粒界からの積層欠陥の発生を、一層安定性良く抑制することができる。
【0055】
また、第1半導体層を水素雰囲気中に暴露する工程は、第1半導体層を1150℃以上に加熱して行うことを特徴とするので、この工程の中で異物が更に高い確率で消滅または埋没する。従って、亜粒界からの積層欠陥の発生を、より一層安定性良く抑制することができる。
【0056】
さらに、基板上に、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜を順次形成する工程において形成される第1半導体層は、多結晶シリコン層、微結晶シリコン層またはアモルファスシリコン層のいずれかであることを特徴とするので、積層欠陥の発生が抑制された、高品質の薄膜結晶シリコンを安定性良く製造することができる。従って、太陽電池等の半導体装置の特性や生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る半導体素子の製造方法を、その工程順に説明する断面模式図である。
【図2】 この発明の実施の形態2に係る半導体素子の製造方法を、工程順に説明する断面模式図である。
【図3】 従来の半導体素子の製造方法を工程順に示す概略図である。
【図4】 図3(d)に示す第1半導体層10の上面を概念的に示す図である。
【図5】 従来の半導体基板の製造方法による結晶状態の違いを示す図である。
【図6】 従来の半導体基板の製造方法による結晶状態の違いを示す図である。
【図7】 第1半導体層の表面における異物を例示的に示す電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 基板、2 第1絶縁膜、3 第1半導体層、4 第2絶縁膜、9 溶融帯、12 第2半導体層。

Claims (9)

  1. 基板上に、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜を順次形成する工程と、
    前記第2絶縁膜に被覆された前記第1半導体層を溶融再結晶化する工程と、
    前記第2絶縁膜を除去することにより、前記溶融再結晶化により粒径拡大された前記第1半導体層を露出させる工程と、
    露出した前記第1半導体層の上に、第2半導体層をエピタキシャル成長する工程と
    を備えてなり、
    前記第1絶縁膜、前記第1半導体層および前記第2絶縁膜の作製においては、分子組成に炭素を含まない材料を用いることを特徴とする半導体素子の製造方法。
  2. 前記第1絶縁膜、前記第1半導体層および前記第2絶縁膜の作製に際しては、分子組成に炭素を含まない材料からなる周辺部材を用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
  3. 前記第1絶縁膜、前記第1半導体層および前記第2絶縁膜の炭素の含有率は、1ppm未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体素子の製造方法。
  4. 前記第1半導体層を溶融再結晶化する工程は、前記第1半導体層の一部を表面から加熱することにより、前記第1半導体層の一部を帯状に溶融し、該溶融帯を移動させながら前記第1半導体層全体における粒径拡大を行う工程であって、該溶融帯の幅を1〜3mmの範囲で制御すると共に、前記溶融帯の移動速度が毎秒0.2ミリメートル以下になるように制御し、かつ、前記溶融体幅および前記移動速度の誤差が共に20%以内になるように制御することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
  5. 基板上に、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜を順次形成する工程と、
    前記第2絶縁膜に被覆された前記第1半導体層を溶融再結晶化する工程と、
    前記第2絶縁膜を除去することにより、前記溶融再結晶化により粒径拡大された前記第1半導体層を露出させる工程と、
    露出した前記第1半導体層を、加熱した水素雰囲気中に暴露する工程と、
    加熱した水素雰囲気中に暴露した後に、露出した前記第1半導体層の上に第2半導体層をエピタキシャル成長する工程と
    を備えることを特徴とする半導体素子の製造方法。
  6. 前記第1半導体層を、加熱した水素雰囲気中に30分以上暴露することを特徴とする請求項5に記載の半導体素子の製造方法。
  7. 前記第1半導体層を、加熱した水素雰囲気中に60分以上暴露する工程を含むことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の半導体素子の製造方法。
  8. 前記第1半導体層を前記水素雰囲気中に暴露する工程は、前記第1半導体層を1150℃以上に加熱して行うことを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
  9. 前記基板上に、第1絶縁膜、第1半導体層および第2絶縁膜を順次形成する工程において形成される前記第1半導体層は、多結晶シリコン層、微結晶シリコン層またはアモルファスシリコン層のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項5に記載の半導体素子の製造方法。
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