JP4508497B2 - 静電塗装装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高電圧発生回路を内蔵した静電塗装ガンを使用する静電塗装装置のスパーク防止回路に係り、特に負荷電流帰還ケーブルが断線した場合におけるスパークを未然に防止する安全回路を内蔵する静電塗装装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電塗装に使用される電圧は60〜80kVの直流高電圧であることから、高電圧充電部の配線を短くするために昇圧トランスと高電圧整流回路からなる高電圧発生回路は、静電塗装ガン内に収納する構成が主流になっている。図3はこのような従来の静電塗装装置の一例を示す構成図である。低電圧高周波電源装置100で発生した高周波電圧は塗装ガン101内の昇圧トランス102にて昇圧された後、多段整流回路103にて整流されて出力端子104、105間に直流高電圧を発生させる。この直流高電圧のマイナス側出力は電流制限抵抗R1を介して静電塗装ガン先端に取り付けたノズル106に導かれ放電を起こさせる。一方、プラス側出力は負荷電流帰還ケーブル107によって、低電圧高周波電源装置100内の負荷電流検出回路108に導かれ、負荷電流検出抵抗(図示しない)を介して接地されている。そして静電塗装ガン101が被塗物に異常接近して負荷電流検出抵抗に所定値以上の電流が流れた場合には、安全回路109が働いて高周波出力を停止させ、静電塗装ガン101と被塗物(図示しない)との間のスパークの発生を未然に防止して安全を図っている。
【0003】
しかしこのような従来のスパーク防止のための安全回路109は、静電塗装ガン101が被塗物に異常接近した場合における静電塗装ガン101と被塗物との間のスパークを防止するのが目的であって、負荷電流帰還ケーブル107が断線した場合におけるスパーク防止を目的としたものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かかる目的の違いから、従来の静電塗装装置において負荷電流帰還ケーブル107が断線した場合には、静電塗装ガン101と被塗物との間の放電は直ちに停止するが、低電圧高周波電源100から高電圧発生回路への電力供給は継続したままであるため、電力供給が停止するまでの間、高電圧が発生し続ける。このような状態が継続すると、高電圧発生回路部分と低電圧回路部分との間で充電エネルギーがスパークの形で放電する恐れがあるため、かかる場合にも放電が確実に防止される静電塗装装置が要望されていた。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、負荷電流帰還ケーブルが断線した場合に、高電圧発生回路部分と低電圧回路部分との間で発生する恐れのあるスパークを確実に防止する安全回路を備えた静電塗装装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の静電塗装装置は、次のような構成にしたものである。昇圧トランスと高電圧整流回路とを内蔵した静電塗装ガンと、少なくとも高周波発振回路と負荷電流検出回路とを含む低電圧高周波電源装置との間を、電力供給ケーブルと負荷電流帰還ケーブルとで接続した静電塗装装置において、(1)昇圧トランスの一次側コイルの片側端子に接続した電力供給ケーブルを、低電圧高周波電源装置側にて接地するとともに、(2)前記昇圧トランスの前記片側端子と、前記昇圧トランスの二次側コイル端子であって、負荷電流帰還ケーブルが接続された端子との間に定電圧放電素子を接続した構成とした。ここで定電圧放電素子とは、素子の両端に加わる電圧が所定値以下の場合には高抵抗で電流を殆ど流さず、所定値以上の電圧が加わった場合には抵抗値が減少して電流を流す素子であって、避雷器、避雷管、バリスタ、定電圧素子等のことを指す。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について図1及び図2により説明する。図1に本発明の一実施の形態を示す。1は低電圧高周波電源装置であって、商用交流電源3からの交流電力は整流回路4で整流され、高周波発振回路5に直流電力として供給される。高周波発振回路5はトランジスタ等のスイッチング動作によって発振を起こし、直流電力を高周波電力に変換して出力トランス8の一次側に供給し、二次側に低電圧の高周波を発生させる。発生した低電圧高周波電力は、電力供給ケーブル9によって静電塗装ガン2内の昇圧トランス11の一次側コイルに供給され、二次側コイルに高周波の高電圧を発生させる。この高電圧高周波電力はコッククロフト・ウォルトン型多段整流方式を採用した高電圧整流回路12により整流され、出力端子14、15間に60〜80kVの直流高電圧となって現れる。
【0008】
この直流高電圧のマイナス側出力は、出力端子15より負荷電流制限抵抗R1を介して静電塗装ガン2の先端に取り付けたノズル12に供給され、被塗物との間で静電気による放電を生じさせる。一方、プラス側出力は出力端子14に接続された負荷電流帰還ケーブル10によって低電圧高周波電源装置1内の負荷電流検出回路7に接続されている。負荷電流検出回路7は放電による負荷電流を監視する回路で、静電塗装ガン2が被塗物に異常接近して負荷電流が一定値以上になった場合には、安全回路6が働いて高周波発振を停止させ、低電圧高周波電力の供給を停止して高電圧の発生を停止させる。
【0009】
本発明の静電塗装装置では、上記構成に加えて図1に示すごとく、昇圧トランス11の一次側コイル端子に接続された一対の電力供給ケーブル9のうちの1本の線を低電圧高周波電源装置1側で接地すると共に、このコイル端子17と、昇圧トランス11の二次側コイル端子であって負荷電流帰還ケーブル10が接続された端子14との間に定電圧放電素子13を接続した構成とした。
【0010】
以下、上記接地線と定電圧放電素子13を設けたことにより、負荷電流帰還ケーブル10が断線した場合に、高電圧発生回路部分と低電圧回路部分との間でのスパークの発生が防止される理由を説明する。図2は定電圧放電素子13が接続されていない装置において、負荷電流帰還ケーブル10が静電塗装ガン2と低電圧高周波電源装置1間のA点で断線した場合を表した図である。
【0011】
負荷電流帰還ケーブル10が断線すると、放電電流である負荷電流の帰還ルートがなくなるため静電塗装ガン2と被塗物間の放電は直ちに停止する。しかし低電圧高周波電源装置1は電力供給を続けるため、静電塗装ガン2の高電圧発生回路の出力には高電圧が発生し続ける。この場合において静電塗装ガン2と接地された被塗物との間には浮遊容量C1が存在し、また昇圧トランス11の二次側回路と一次側回路の間にも浮遊容量C2が存在する。
【0012】
いま高電圧発生回路の出力端子14、15間の直流電圧をEとして、昇圧トランス11の一次側端子17が電力供給ケーブル9を介して低電圧高周波電源装置1側で接地されていると、浮遊容量C2にはEをC1とC2で分圧した次のような電圧Vがかかることになる。
V=E・C1/(C1+C2)
ここでEは60〜80kVの直流高電圧であるため、C1、C2の値いかんによってはC2に数千ボルトの高電圧が加わることになり、昇圧トランス11の二次側回路と一次側回路間でスパークによる放電が発生する恐れがある。
【0013】
このような場合に、図1のように昇圧トランス11の二次側コイル端子14と一次側コイル端子17との間に定電圧放電素子13が接続してあると、この定電圧放電素子13は浮遊容量C2に並列に接続されていることになるため、浮遊容量C2に加わる電圧Vが定電圧放電素子13の放電開始電圧以上に上昇しようとした場合には、定電圧放電素子13に電流が流れ始め、浮遊容量C2に加わる電圧が定電圧放電素子13の放電開始電圧以上に上昇することが防がれる。従って、スパークによる放電開始電圧よりも低い放電開始電圧値を持つ定電圧放電素子13を使用することにより、昇圧トランス11を挟んだ高電圧回路と低電圧回路との間のスパークによる放電が防止されることになる。
【0014】
なお上記は電力供給ケーブル9の一端が接地されている場合を論じたが、これは昇圧トランス11の一次側の電力供給ケーブル9の1線は、本発明のような定電圧放電素子を接続しない場合においても、通常、安全のために接地されるか、あるいは接地電位に近い電位に保たれているのが普通だからである。また図1の低電圧高周波電源装置1は、高周波出力を出力トランス8で絶縁して電力供給ケーブル9に供給しているが、出力トランス8を用いずに高周波発振回路5の出力を直接、昇圧トランス11の一次側コイルに供給する回路方式であってもよい。
なお、図1、2においては同一の構成要素には同一符号を付してある。
【0015】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の静電塗装装置は、負荷電流帰還ケーブルが断線した場合に、昇圧トランスの二次側回路と一次側回路の間にかかる電圧を定電圧放電素子の放電開始電圧以下に保つことができるため、二次側回路と一次側回路との間でのスパークの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る静電塗装装置の構成図
【図2】負荷電流帰還ケーブルに断線が発生した場合の図
【図3】従来の静電塗装装置の構成図
【符号の説明】
1は低電圧高周波電源装置、2は静電塗装ガン、3は商用交流電源、8は出力トランス、9は電力供給ケーブル、10は負荷電流帰還ケーブル、11は昇圧トランス、12は多段高圧整流回路、13は定電圧放電素子を示す。

Claims (1)

  1. 昇圧トランスと高電圧整流回路とを内蔵した静電塗装ガンと、少なくとも高周波発振回路と負荷電流検出回路とを含む低電圧高周波電源装置との間を、電力供給ケーブルと負荷電流帰還ケーブルとで接続した静電塗装装置において、
    (1)昇圧トランスの一次側コイルの片側端子に接続した電力供給ケーブルを、低電圧高周波電源装置側にて接地するとともに、
    (2)前記昇圧トランスの前記片側端子と、前記昇圧トランスの二次側コイル端子であって、負荷電流帰還ケーブルが接続された端子との間に定電圧放電素子を接続したことを特徴とする静電塗装装置。
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