JP4508280B6 - 位相差素子および表示装置 - Google Patents

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本発明は、光学異方性を有する位相差素子およびそれを備えた表示装置に係わり、特に偏光眼鏡を用いた立体映像の観察に際して好適に用いられる位相差素子およびそれを備えた表示装置に関する。
従来から、偏光眼鏡を用いるタイプの立体映像表示装置として、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるものがある。このような表示装置では、視聴者が偏光眼鏡をかけた上で、左目用画素からの射出光を左目のみに入射させ、右目用画素からの射出光を右目のみに入射させることにより、立体映像の観察を可能とするものである。
例えば、特許文献1では、左目用画素と右目用画素とで異なる偏光状態の光を射出させるために位相差素子が用いられている。この位相差素子では、一の方向に遅相軸または進相軸を有する片状位相差部材が左目用画素に対応して設けられ、上記片状位相差部材とは異なる方向に遅相軸または進相軸を有する片状位相差部材が右目用画素に対応して設けられている。
特許第3360787号公報
上記の表示装置では、左目用画素から射出された左目用の映像光が左目のみに入射され、右目用画素から射出された右目用の映像光が右目のみに入射されることが望ましい。しかし、左目用の映像光が若干右目に入射されてしまったり、右目用の映像光が若干左目に入射されてしまったりといったゴーストと呼ばれる問題がある。
特に、特許文献1に記載の表示装置において、基材がプラスチックフィルムにより構成されている場合には、基材にわずかに存在する光学異方性に起因して、左目または右目だけにゴーストが強く見えてしまう虞がある。また、左目と右目で映像の色が異なってしまうという問題も生じることがある。そのようなアンバランスが生じた場合には、立体映像の観察がしづらくなったり、視聴者が違和感を覚えることになったりしてしまう。
また、アンバランスの問題は、立体映像表示装置に限って生じるものではなく、入射光を二種類以上の偏光状態の光に分離する位相差素子や、そのような位相差素子を用いるデバイスにおいて共通に生じるものである。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、アンバランスの生じにくい位相差素子およびそれを備えた表示装置を提供することにある。
本発明の位相差素子は、光学異方性を有する基材フィルムと、基材フィルム上に形成され、光学異方性を有する位相差層とを備えたものである。位相差層は遅相軸の向きが互いに異なる二種類の位相差領域を有しており、二種類の位相差領域は、基材フィルムの面内方向に、隣接して規則的に配置されている。各位相差領域は互いに隣接する位相差領域の境界線と直交以外の角度で交差する方向に遅相軸を有している。二種類の位相差領域のうち一方の種類の位相差領域の遅相軸第1遅相軸と、二種類の位相差領域のうち他方の種類の位相差領域の遅相軸第2遅相軸とした場合に、当該第1遅相軸および当該第2遅相軸の二等分線と基材フィルムの遅相軸とが互いに平行となっている。基材フィルムは境界線と平行な方向または直交する方向に遅相軸を有している。
本発明の表示装置は、画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、表示パネルを照明するバックライトユニットと、表示パネルとの関係でバックライトユニットとは反対側に設けられた位相差素子とを備えたものである。この表示装置に内蔵された位相差素子は、上記した位相差素子と同一の構成要素によって構成されている。
本発明の位相差素子および表示装置では、遅相軸の向きが互いに異なる二種類の位相差領域が基材フィルムの面内方向に、隣接して規則的に配置されている。これにより、例えば、位相差領域側から入射した光は偏光状態の互いに異なる二種類の光に分離されたのち、基材フィルムを透過する。ここで、各位相差領域は境界線と直交以外の角度で交差する方向に遅相軸を有しており、基材フィルムは境界線と平行な方向または直交する方向に遅相軸を有している。そのため、基材フィルムの光学異方性に起因する影響が基材フィルムを透過するそれぞれの光に及び、基材フィルムを透過する二種類の光のうち一の種類の光にだけ極端に大きく及ぶことがない。
参考例に係る位相差素子は、光学異方性を有する基材フィルムと、基材フィルム上に形成され、光学異方性を有する位相差層とを備えたものである。位相差層は遅相軸の向きが互いに異なる二種類以上の位相差領域を有しており、二種類以上の位相差領域は、基材フィルムの面内方向に、隣接して規則的に配置されている。基材フィルムの遅相軸および各種類の位相差領域の遅相軸が互いに交差している。
参考例に係る表示装置は、画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、表示パネルを照明するバックライトユニットと、表示パネルとの関係でバックライトユニットとは反対側に設けられた位相差素子とを備えたものである。この表示装置に内蔵された位相差素子は、上記した第二の位相差素子と同一の構成要素によって構成されている。
参考例に係る位相差素子および表示装置では、遅相軸の向きが互いに異なる二種類以上の位相差領域が基材フィルムの面内方向に、隣接して規則的に配置されている。これにより、例えば、位相差領域側から入射した光は偏光状態の互いに異なる二種類以上の光に分離されたのち、基材フィルムを透過する。ここで、基材フィルムの遅相軸および各種類の位相差領域の遅相軸が互いに交差している。そのため、基材フィルムの光学異方性に起因する影響が基材フィルムを透過するそれぞれの光に及び、基材フィルムを透過する二種類以上の光のうち一の種類の光にだけ極端に大きく及ぶことがない。
本発明の位相差素子および表示装置によれば、基材フィルムの光学異方性に起因する影響が基材フィルムを透過するそれぞれの光に及び、基材フィルムを透過する二種類の光のうち一の種類の光にだけ極端に大きく及ばないようにした。また、参考例に係る位相差素子および表示装置によれば、基材フィルムの光学異方性に起因する影響が基材フィルムを透過するそれぞれの光に及び、基材フィルムを透過する二種類以上の光のうち一の種類の光にだけ極端に大きく及ばないようにした。これにより、例えば、左目または右目だけにゴーストが強く見えたり、左目と右目で映像の色が異なってしまったりするなどのアンバランスを低減することができる。従って、アンバランスの生じにくい位相差素子および表示装置を実現することができる。
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(表示装置、位相差素子)
2.変形例(表示装置、位相差素子)
3.実施例(表示装置)
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示装置の断面構成を表すものである。なお、本発明の一実施の形態に係る位相差素子については、本実施の形態の表示装置に内蔵されている場合を例示して説明するものとする。
[表示装置1の構成]
本実施の形態の表示装置1は、後述する偏光眼鏡2を眼球の前に装着した観察者(図示せず)に対して立体映像を表示する偏光眼鏡方式の表示装置である。この表示装置1は、バックライトユニット10、液晶表示パネル20(表示パネル)および位相差素子30をこの順に積層して構成されたものである。この表示装置1において、位相差素子30の表面が映像表示面となっており、観察者側に向けられている。なお、本実施の形態では、映像表示面が垂直面(鉛直面)と平行となるように表示装置1が配置されているものとする。また、映像表示面は長方形状となっており、映像表示面の長手方向が水平方向(図中のy軸方向)と平行となっているものとする。また、観察者は偏光眼鏡2を眼球の前に装着した上で、映像表示面を観察するものとする。
[バックライトユニット10]
バックライトユニット10は、例えば、反射板、光源および光学シート(いずれも図示せず)を有している。反射板は、光源からの射出光を光学シート側に戻すものであり、反射、散乱、拡散などの機能を有している。この反射板は、例えば、発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)などによって構成されている。これにより、光源からの射出光を効率的に利用することができる。光源は、液晶表示パネル20を背後から照明するものであり、例えば、複数の線状光源が等間隔で並列配置されたり、複数の点状光源が2次元配列されたりしたものである。なお、線状光源としては、例えば、熱陰極管(HCFL;Hot Cathode Fluorescent Lamp)、冷陰極管(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)などが挙げられる。また、点状光源としては、例えば、発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)などが挙げられる。光学シートは、光源からの光の面内輝度分布を均一化したり、光源からの光の発散角や偏光状態を所望の範囲内に調整したりするものであり、例えば、拡散板、拡散シート、プリズムシート、反射型偏光素子、位相差板などを含んで構成されている。
[液晶表示パネル20]
液晶表示パネル20は、複数の画素が行方向および列方向に2次元配列された透過型の表示パネルであり、映像信号に応じて各画素を駆動することによって画像を表示するものである。この液晶表示パネル20は、例えば、図1に示したように、バックライトユニット10側から順に、偏光板21A、透明基板22、画素電極23、配向膜24、液晶層25、配向膜26、共通電極27、カラーフィルタ28、透明基板29および偏光板21Bを有している。
ここで、偏光板21Aは、液晶表示パネル20の光入射側に配置された偏光板であり、偏光板21Bは液晶表示パネル20の光射出側に配置された偏光板である。偏光板21A,21Bは、光学シャッタの一種であり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。偏光板21A,21Bはそれぞれ、例えば、偏光軸が互いに所定の角度だけ(例えば90度)異なるように配置されており、これによりバックライトユニット10からの射出光が液晶層を介して透過し、あるいは遮断されるようになっている。
偏光板21Aの透過軸(図示せず)の向きは、バックライトユニット10から射出された光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、バックライトユニット10から射出される光の偏光軸が垂直方向となっている場合には、透過軸AX4も垂直方向を向いており、バックライトユニット10から射出される光の偏光軸が水平方向となっている場合には、透過軸AX4も水平方向を向いている。なお、バックライトユニット10から射出される光は直線偏光光である場合に限られるものではなく、円偏光や、楕円偏光、無偏光であってもよい。
偏光子21Bの偏光軸AX4の向きは、液晶表示パネル20を透過した光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、偏光子21Aの偏光軸(図示せず)の向きが水平方向となっている場合には、偏光軸AX4はそれと直交する方向(垂直方向)を向いており、偏光子21Aの偏光軸の向きが垂直方向となっている場合には、偏光軸AX4はそれと直交する方向(水平方向)を向いている。
透明基板22,29は、一般に、可視光に対して透明な基板である。なお、バックライトユニット10側の透明基板には、例えば、透明画素電極に電気的に接続された駆動素子としてのTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)および配線などを含むアクティブ型の駆動回路が形成されている。画素電極23は、例えば酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)からなり、画素ごとの電極として機能する。配向膜24は、例えばポリイミドなどの高分子材料からなり、液晶に対して配向処理を行う。液晶層25は、例えばVA(Virtical Alignment)モードの液晶からなる。この液晶層25は、図示しない駆動回路からの印加電圧により、バックライトユニット10からの射出光を画素ごとに透過または遮断する機能を有している。共通電極27は、例えばITOからなり、共通の対向電極として機能する。カラーフィルタ28は、バックライトユニット10からの射出光を、例えば、赤(R)、緑(G)および青(B)の三原色にそれぞれ色分離するためのフィルタ部28Aを配列して形成されている。このカラーフィルタ29では、フィルタ部28Aは画素間の境界に対応する部分に、遮光機能を有するブラックマトリクス部28Bが設けられている。
[位相差素子30]
次に、位相差素子30について説明する。図3(A)は、本実施の形態の位相差素子30の構成の一例を斜視的に表したものである。図3(B)は、図3(A)の位相差素子30の遅相軸について表したものである。同様に、図4(A)は、本実施の形態の位相差素子30の構成の他の例を斜視的に表したものである。図4(B)は、図4(A)の位相差素子30の遅相軸について表したものである。なお、図3(A),(B)に示した位相差素子30と、図4(A),(B)に示した位相差素子30は、基材フィルム31(後述)の遅相軸AX3の向きの点で相違している。
位相差素子30は、液晶表示パネル20の偏光子21Bを透過した光の偏光状態を変化させるものである。この位相差素子30は、例えば、図1に示したように、基材フィルム31と、位相差層32とを有している。
基材フィルム31は、光学異方性を有する薄い樹脂フィルムによって構成されている。樹脂フィルムとしては、光学異方性の小さい、つまり複屈折の小さいものが好ましい。そのような特性を持つ樹脂フィルムであって、かつ商用としてよく使われているものとしては、例えば、TAC(トリアセチルセルロース)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などが挙げられる。ここで、COPとしては、例えば、ゼオノア(日本ゼオン株式会社の商標)やアートン(JSR株式(株)商標)などがある。基材フィルム31のリタデーションは、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。
基材フィルム31の遅相軸AX3は、例えば、図3〜図4に示したように、水平方向または垂直方向を向いている。より詳細には、遅相軸AX3は、後述の位相差層32についての説明からわかるように、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bの長手方向または短手方向と同一の方向を向いており、境界線L1の向きと同一の方向または直交する方向を向いている。また、遅相軸AX3は、遅相軸AX1,AX2と交差する方向を向いており、遅相軸AX1と遅相軸AX2との二等分線と平行な方向を向いていることが好ましい。
位相差層32は、光学異方性を有する薄い層である。この位相差層32は、基材フィルム31の表面に設けられたものであり、液晶表示パネル20の光射出側の表面(偏光板21B)に貼り付けられている。この位相差層32は、遅相軸の向きが互いに異なる二種類の位相差領域(右目用領域32A,左目用領域32B)を有している。なお、本実施の形態の右目用領域32Aが本発明の「一方の種類の位相差領域」の一具体例に相当し、本実施の形態の左目用領域32Bが本発明の「他方の種類の位相差領域」の一具体例に相当する。
右目用領域32Aおよび左目用領域32Bは、例えば、図1、図3(A)、図4(A)に示したように、共通する一の方向(水平方向)に延在する帯状の形状となっている。これら右目用領域32Aおよび左目用領域32Bは、基材フィルム31の面内方向に、隣接して規則的に配置されており、具体的には、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bの短手方向(垂直方向)に交互に配置されている。従って、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bが互いに隣接する(接する)境界線L1は、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bの長手方向(水平方向)と同一の方向を向いている。
右目用領域32Aは、図3〜図4に示したように、隣接する左目用領域32Bとの境界線L1と直交以外の角度θ1(0°<θ1<90°)で交差する方向に遅相軸AX1を有している。一方、左目用領域32Bは、図2〜図4に示したように、隣接する右目用領域32Aとの境界線L1と直交以外の角度θ2(0°<θ2<90°)で交差する方向であって、かつ遅相軸AX1の向きとは異なる方向に遅相軸AX2を有している。
ここで、「遅相軸AX1の向きとは異なる方向」とは、単に、遅相軸AX1の向きとは異なるということを意味しているだけでなく、境界線L1に関して、遅相軸AX1とは反対方向に回転しているということを意味している。つまり、遅相軸AX1,AX2は、境界線L1を挟んで互いに異なる方向に回転している。遅相軸AX1の角度θ1と、遅相軸AX2の角度θ2とは、絶対値としては(回転方向を考慮しない場合には)、互いに等しいことが好ましい。ただし、これらが、製造誤差などによって若干、互いに異なっていてもよく、場合によっては製造誤差よりも大きな角度で互いに異なっていてもよい。なお、上記した製造誤差としては、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bを製造する技術によっても異なるが、例えば最大で5°程度である。
今後、特に断りの無い限り、偏光眼鏡2が円偏光タイプであり、表示装置1としては円偏光眼鏡用の表示装置である場合について言及する。この場合、角度θ1,θ2は、例えば、角度θ1が+45°となり、角度θ2が−45°となることが好ましい。
また、遅相軸AX1,AX2は、図2〜図4に示したように、水平方向および垂直方向のいずれの方向とも交差する方向を向いており、基材フィルム31の遅相軸AX3とも交差する方向を向いている。また、遅相軸AX1,AX2は、遅相軸AX1と遅相軸AX2との二等分線が境界線L1と平行な方向を向くような方向に向いていることが好ましい。
また、遅相軸AX1,AX2は、図2(A),(B)に示したように、液晶表示パネル20の偏光21Bの偏光軸AX4とも交差する方向を向いている。さらに、遅相軸AX1は、後述する偏光眼鏡2の右目用位相差フィルム21Bの遅相軸AX5の向きと同一の

方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、左目用位相差フィルム22Bの遅相軸AX6の向きと異なる方向を向いている。一方、遅相軸AX2は、遅相軸AX6の向きと同一の方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、遅相軸AX5の向きと異なる方向を向いている。
[偏光眼鏡2]
次に、偏光眼鏡2について説明する。図5は、偏光眼鏡2の構成の一例を、表示装置1と共に斜視的に表したものである。偏光眼鏡2は、観察者(図示せず)の眼球の前に装着されるものであり、映像表示面に映し出される映像を観察する際に観察者によって用いられるものである。この偏光眼鏡2は、例えば、図5に示したように、右目用眼鏡41および左目用眼鏡42を有している。
右目用眼鏡41および左目用眼鏡42は、表示装置1の映像表示面と対向するように配置されている。なお、これら右目用眼鏡41および左目用眼鏡42は、図5に示したように、できるだけ一の水平面内に配置されることが好ましいが、多少傾いた平坦面内に配置されていてもよい。
右目用眼鏡41は、例えば、偏光板41Aおよび右目用位相差フィルム41Bを有している。一方、左目用眼鏡42は、例えば、偏光板42Aおよび左目用位相差フィルム42Bを有している。右目用位相差フィルム41Bは、偏光板41Aの表面であって、かつ光入射側に設けられたものである。左目用位相差フィルム42Bは、偏光板42Aの表面であって、かつ光入射側に設けられたものである。
偏光板41A,42Aは、偏光眼鏡2の光射出側に配置されており、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。偏光板41A,42Aの偏光軸AX7,AX8はそれぞれ、偏光板21Bの偏光軸AX4と直交する方向を向いている。偏光軸AX7,AX8はそれぞれ、例えば、図2(A),(B)に示したように、偏光軸AX4が垂直方向を向いている場合には水平方向を向いており、偏光軸AX4が水平方向を向いている場合には垂直方向を向いている。
右目用位相差フィルム41Bおよび左目用位相差フィルム42Bは、光学異方性を有する薄い層である。右目用位相差フィルム41Bの遅相軸AX5および左目用位相差フィルム42Bの遅相軸AX6は、図2に示したように、水平方向および垂直方向のいずれの方向とも交差する方向を向いており、偏光板41A,42Aの偏光軸AX7,AX8とも交差する方向を向いている。また、遅相軸AX5,AX6は、遅相軸AX5,AX6との二等分線が境界線L1と直交する方向を向くような方向に向いていることが好ましい。また、遅相軸AX5は、遅相軸AX1の向きと同一の方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、遅相軸AX2の向きと異なる方向を向いている。一方、遅相軸AX6は、遅相軸AX2と同一の方向か、またはその方向と対応する方向を向いており、遅相軸AX1の向きと異なる方向を向いている。
[リタデーション]
ところで、偏光眼鏡2を用いて観察した場合に、例えば、図6(A),(B)、図7(A),(B)に示したように、右目には右目用画素の画像が認識でき、左目には右目用画素の画像が認識できないようにすることが必要である。また、同時に、例えば、図8(A),(B)、図9(A),(B)に示したように、左目には左目用画素の画像が認識でき、右目には左目用画素の画像が認識できないようにすることが必要である。そのためには、以下に示したように、右目用領域32Aおよび右目用位相差フィルム41Bのリタデーションならびに左目用領域32Bおよび左目用位相差フィルム42Bのリタデーションを設定することが好ましい。
具体的には、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bのリタデーションのうち一方が+λ/4となっており、他方が−λ/4となっていることが好ましい。ここで、リタデーションの符号が逆になっているのは、それぞれの遅相軸の向きが90°異なることを示している。このとき、右目用位相差フィルム41Bのリタデーションは右目用領域32Aのリタデーションと同一となっていることが好ましく、左目用位相差フィルム42Bのリタデーションは左目用領域32Bのリタデーションと同一となっていることが好ましい。
[基本動作]
次に、本実施の形態の表示装置1において画像を表示する際の基本動作の一例について、図5〜図9を参照しつつ説明する。
まず、バックライトユニット10から照射された光が液晶表示パネル20に入射している状態で、映像信号として右目用画像および左目用画像を含む視差信号が液晶表示パネル20に入力される。すると、奇数行の画素から右目用画像光L2が出力され(図6(A),(B)または図7(A),(B))、偶数行の画素から左目用画像光L3が出力される(図8(A),(B)または図9(A),(B))。なお、実際には、右目用画像光L2および左目用画像光L3は、混在した状態で出力されるが、図6〜図9では、説明の便宜上、右目用画像光L2と左目用画像光L3を別個に分けて記述した。
その後、右目用画像光L2および左目用画像光L3は、位相差素子30の右目用領域32Aおよび左目用領域32Bによって楕円偏光に変換され、位相差素子30の基材フィルム31を透過したのち、表示装置1の画像表示面から外部に出力される。このとき、右目用領域32Aを通過した光と、左目用領域32Bを通過した光は共に、基材フィルム31に存在するわずかな光学異方性の影響を受ける。
その後、表示装置1の外部に出力された光は、偏光眼鏡2に入射し、右目用位相差フィルム41Bおよび左目用位相差フィルム42Bによって楕円偏光から直線偏光に戻されたのち、偏光眼鏡2の偏光板41A,42Aに入射する。
このとき、偏光板41A,42Aへの入射光のうち右目用画像光L2に対応する光の偏光軸は、偏光板41Aの偏光軸AX7と平行となっており、偏光板42Aの偏光軸AX8と直交している。従って、偏光板41A,42Aへの入射光のうち右目用画像光L2に対応する光は、偏光板41Aだけを透過して、観察者の右目に到達する(図6(A),(B)または図7(A),(B))。
一方、偏光板41A,42Aへの入射光のうち左目用画像光L3に対応する光の偏光軸は、偏光板41Aの偏光軸AX7と直交しており、偏光板42Aの偏光軸AX8と平行となっている。従って、偏光板41A,42Aへの入射光のうち左目用画像光L3に対応する光は、偏光板42Aだけを透過して、観察者の左目に到達する(図8(A),(B)または図9(A),(B))。
このようにして、右目用画像光L2に対応する光が観察者の右目に到達し、左目用画像光L3に対応する光が観察者の左目に到達した結果、観察者は表示装置1の映像表示面に立体画像が表示されているかのように認識することができる。
[効果]
ところで、本実施の形態では、位相差素子30の基材フィルム31は、光学異方性を有する薄い樹脂フィルムによって構成されている。そのため、上述したように、右目用領域32Aを通過した光と、左目用領域32Bを通過した光は共に、基材フィルム31に存在するわずかな光学異方性の影響を受ける。そのため、観察者の目に到達した右目用の画像光および左目用の画像光にゴーストが含まれている可能性がある。また、観察者の目に到達した右目用の画像光および左目用の画像光が当初の色とは異なる色あいになっている可能性もある。
しかし、本実施の形態では、基材フィルム31の遅相軸AX3が水平方向または垂直方向を向いており、遅相軸AX1,AX2と交差する方向を向いている。そのため、基材フィルム31の光学異方性に起因する影響が基材フィルム31を透過するそれぞれの光に及び、基材フィルム31を透過する右目用に対応する光および左目用に対応する光のうちいずれか一方の光にだけ極端に大きく及ぶことがない。その結果、例えば、左目または右目だけにゴーストが強く見えたり、左目と右目で映像の色が異なってしまったりするなどのアンバランスを低減することができる。従って、アンバランスの生じにくい位相差素子30および表示装置1を実現することができる。
特に、本実施の形態において、基材フィルム31の遅相軸AX3が遅相軸AX1と遅相軸AX2との二等分線と平行な方向を向いている場合には、基材フィルム31の光学異方性に起因する影響が基材フィルム31を透過するそれぞれの光に均等に及ぶ。その結果、例えば、左目または右目だけにゴーストが強く見えたり、左目と右目で映像の色が異なってしまったりするなどのアンバランスをなくすることができる。従って、この場合には、アンバランスの生じない位相差素子30および表示装置1を実現することができる。
また、本実施の形態では、位相差素子30の位相差層32を支持する基材として、薄い基材フィルム(樹脂フィルム)が用いられているので、位相差層32の支持基材としてガラス板を用いた場合よりも位相差素子30を安価に製造することができる。また、位相差層32の支持基材として基材フィルム(樹脂フィルム)を使用することにより、表示装置1を薄型化することもできる。
[変形例]
上記実施の形態では、位相差素子30には、遅相軸の向きが互いに異なる二種類の位相差領域(右目用領域32A,左目用領域32B)が設けられていたが、遅相軸の向きが互いに異なる三種類以上の位相差領域が設けられていてもよい。例えば、図10に示したように、位相差素子30に、右目用領域32A,左目用領域32Bのほかに、これら右目用領域32Aおよび左目用領域32Bの遅相軸AX1,AX2の向きとは異なる向きの遅相軸を有する第3の領域32Cを新たに設けることも可能である。
また、上記実施の形態では、位相差素子30の位相差領域(右目用領域32A,左目用領域32B)が水平方向に延在している場合が例示されていたが、それ以外の方向に延在していてもかまわない。例えば、図11に示したように、位相差素子30の位相差領域(右目用領域32A,左目用領域32B)が垂直方向に延在していていてもよい。
また、上記実施の形態および変形例では、位相差素子30の位相差領域(右目用領域32A,左目用領域32B)が位相差素子30の水平方向もしくは垂直方向全体に渡って延在している場合が例示されていたが、例えば、図12に示したように、水平方向および垂直方向の双方に2次元配置されていてもよい。
また、上記実施の形態および各変形例では、位相差素子30を表示装置1に適用した場合が例示されていたが、他のデバイスに適用することももちろん可能である。
また、上記実施の形態および各変形例では、液晶表示パネル20から出力される光の発散角を制御するものを特に設けていなかったが、例えば、図13に示したように、液晶表示パネル20と位相差素子30との間に、ブラックストライプ層40を設けてもよい。このブラックストライプ層40は、液晶表示パネル20内の画素電極23との対向領域内に設けられた透過部40Aと、この透過部40Aの周囲に設けられた遮光部40Bとを有している。これにより、観察者が斜め上側や斜め下側から画像表示面を観察した場合に、左目用画素を通過した光が右目用領域32Aに入ったり、右目用画素を通過した光が左目用領域32Bに入ったりするクロストークと呼ばれる問題点を解消することができる。
なお、ブラックストライプ層40を常に、液晶表示パネル20と位相差素子30との間に設ける必要はなく、例えば、図14に示したように、液晶表示パネル20内の偏光板21Bと透明基板29の間に設けることも可能である。
以上では、偏光眼鏡2が円偏光タイプであり、表示装置1としては円偏光眼鏡用の表示装置である場合について説明をしたが、偏光眼鏡2が直線偏光タイプであり、表示装置1として直線偏光眼鏡用の表示装置である場合についても適用できる。
[実施例]
以下、本実施の形態の表示装置1の実施例1,2について、比較例1,2と対比して説明する。
基材フィルム31の遅相軸AX3を境界線L1に対し垂直方向に向けたものを実施例1とし、基材フィルム31の遅相軸AX3を境界線L1に対し水平方向に向けたものを実施例2とした。つまり、実施例1,2では、遅相軸AX3を遅相軸AX1,AX2と交差させ、しかも遅相軸AX1,AX2の二等分線の方向とおおよそ同一の方向を向かせた。一方、基材フィルム31の遅相軸AX3を左側用領域32Bの遅相軸AX2と同一方向にしたものを比較例1とし、基材フィルム31の遅相軸AX3を右側用領域32Aの遅相軸AX1と同一方向にしたものを比較例2とした。
まず、上記実施例1,2および比較例1,2について消光比を計測し、評価した。消光比は、以下の算出式(1),(2)によって求められるものであり、どの程度ゴーストが生じてしまうかという程度を定量的に求めることができる。
Figure 0004508280
Figure 0004508280
表示装置1の光射出側の偏光板21Bの透過軸AX4と、右目用眼鏡41および左目用眼鏡42の透過軸AX7,AX8は、クロスニコルの配置になっていることが好ましいので、出射側の偏光板21Bの透過軸AX4を垂直方向とし、透過軸AX7,AX8を水平方向とした。また、位相差層32の右目用領域32Aおよび左目用領域32Bのリタデー

ションを、ほぼλ/4とした。左目用領域32Bの遅相軸AX2と左目用眼鏡42の遅相軸AX6を同じ向きとし、右目用領域32Aの遅相軸AX1と右目用眼鏡41の遅相軸AX5とを同じ向きとした。このような配置において、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bの消光比の計算を、拡張ジョーンズ行列法を用いて行った。
なお、偏光眼鏡2の位相差フィルム21A,22Bならびに右目用領域32Aおよび左目用領域32Bのリタデーションは、全ての波長でλ/4であることが好ましいが、現在商用として用いられる材料では、リタデーションの波長分散が生じてしまう。ここでは、偏光眼鏡2の位相差フィルム21A,22Bとしてポリカーボネートを想定し、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bの材料として液晶ポリマーを想定した。
偏光眼鏡2の位相差フィルム41B42Bは、右目用も左目用もリタデーションが等しいものとし、図15に示すリタデーション値とした。また、右目用領域32Aおよび左目用領域32Bについてもリタデーションが等しいものとし、図16に示すリタデーション値とした。位相差素子30の基材フィルム31としては、リタデーションが0となる等方性であることが好ましいが、実際の商用のフィルムである以上は、若干のリタデーションを有する。ここでは、基材フィルム31として100μm厚みのゼオノア(日本ゼオン株式会社の商標)フィルムを想定し、図17に示すリタデーション値とした。つまり、基材フィルム31のリタデーションは可視領域において、約6nmとした。
消光比の計算結果を図18に示した。比較例1では、左目用領域32Bの消光比が低くなってしまった。これは、左目用画素の映像が左目だけでなく、右目にも入っており、右目の映像にゴーストが生じていることを意味する。比較例2では、右目用領域32Aの消光比が低くなってしまった。これは、右目用画素の映像が右目だけでなく、左目にも入っており、左目にゴーストが生じていることを意味する。従って、比較例1および比較例2の場合には、片方の目のみ強いゴーストが生じてしまい、立体映像の観察がしづらくなってしまう。一方、実施例1および実施例2では、両方の目とも同じ消光比であり、片方の目のみ強いゴーストが生じることがない。従って、立体映像の観察がしやすく、好適である。
続いて、上記実施例1,2および比較例1,2について色度を計測し、評価した。偏光眼鏡2を用いない場合の波長分布を図19に示した。この場合の色度は、CIE(国際照明委員会)のL*u*v*表色系において、u‘=0.1947、v’=0.39060となる。これに対し、実施例1,2および比較例1,2の色度を図20に示した。この図から、比較例1および比較例2では、左目と右目で色の見え方が異なってしまうのに対し、実施例1および実施例2では、左目も右目も色度が等しく、色の差がないことが分かった。
本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成の一例を表す断面図である。 図1の表示装置内の透過軸および遅相軸について説明するための概念図である。 図1の位相差素子の構成および遅相軸の一例を表す構成図である。 図1の位相差素子の構成および遅相軸の他の例を表す構成図である。 図1の表示装置と偏光眼鏡との関係について表すシステム図である。 図1の表示装置の映像を右目で観察する際の透過軸および遅相軸の一例について説明するための概念図である。 図1の表示装置の映像を右目で観察する際の透過軸および遅相軸の他の例について説明するための概念図である。 図1の表示装置の映像を左目で観察する際の透過軸および遅相軸の一例について説明するための概念図である。 図1の表示装置の映像を左目で観察する際の透過軸および遅相軸の他の例について説明するための概念図である。 図1の位相差素子の他の例について表す構成図である。 図1の位相差素子のその他の例について表す構成図である。 図1の位相差素子の更にその他の例について表す構成図である。 図1の表示装置の他の例について表す構成図である。 図1の表示装置のその他の例について表す構成図である。 偏光眼鏡の位相差フィルムのリタデーションを表す特性図である。 右目用領域および左目用領域のリタデーションを表す特性図である。 基材フィルムのリタデーションを表す特性図である。 実施例および比較例の消光比を表す特性図である。 偏光眼鏡を用いない場合の波長分布を表す分布図である。 実施例および比較例の色度を表す特性図である。
符号の説明
1…表示装置、2…偏光眼鏡、10…バックライトユニット、20…液晶表示パネル、21A,21B…偏光板、22,29…透明基板、23…画素電極、24,26…配向膜、25…液晶層、27…共通電極、28…カラーフィルタ、28A…フィルタ部、28B…ブラックマトリクス部、30…位相差素子、31…基材フィルム、32…位相差層、32A…右目用領域、32B…左目用領域、40…ブラックストライプ層、40A…透過部、40B…遮光部。

Claims (7)

  1. 光学異方性を有する基材フィルムと、
    前記基材フィルム上に形成され、光学異方性を有する位相差層と
    を備え、
    前記位相差層は遅相軸の向きが互いに異なる二種類の位相差領域を有し、
    前記二種類の位相差領域は、前記基材フィルムの面内方向に、隣接して規則的に配置され、
    前記各位相差領域は互いに隣接する位相差領域の境界線と直交以外の角度で交差する方向に遅相軸を有し、
    前記二種類の位相差領域のうち一方の種類の位相差領域の遅相軸第1遅相軸と、前記二種類の位相差領域のうち他方の種類の位相差領域の遅相軸第2遅相軸とした場合に、当該第1遅相軸および当該第2遅相軸の二等分線と前記基材フィルムの遅相軸とが互いに平行となっており、
    前記基材フィルムは前記境界線と平行な方向または直交する方向に遅相軸を有する
    位相差素子。
  2. 前記基材フィルムは樹脂フィルムからなる請求項1に記載の位相差素子。
  3. 前記二種類の位相差領域はそれぞれ、λ/4のリタデーションを有し、
    前記二種類の位相差領域の遅相軸の向きが90°異なっている請求項1または請求項2に記載の位相差素子。
  4. 画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
    前記表示パネルを照明するバックライトユニットと、
    前記表示パネルとの関係で前記バックライトユニットとは反対側に設けられた位相差素子と
    を備え、
    前記位相差素子は、
    光学異方性を有する基材フィルムと、
    前記基材フィルム上に形成され、光学異方性を有する位相差層と
    を有し、
    前記位相差層は遅相軸の向きが互いに異なる二種類の位相差領域を有し、
    前記二種類の位相差領域は、前記基材フィルムの面内方向に、隣接して規則的に配置され、
    前記各位相差領域は互いに隣接する位相差領域の境界線と直交以外の角度で交差する方向に遅相軸を有し、
    前記二種類の位相差領域のうち一方の種類の位相差領域の遅相軸第1遅相軸と、前記二種類の位相差領域のうち他方の種類の位相差領域の遅相軸第2遅相軸とした場合に、当該第1遅相軸および当該第2遅相軸の二等分線と前記基材フィルムの遅相軸とが互いに平行となっており、
    前記基材フィルムは前記境界線と平行な方向または直交する方向に遅相軸を有する
    表示装置。
  5. 前記表示パネルは、前記位相差素子側の面に第1偏光板を有し、前記位相差素子とは反対側の面に第2偏光板を有し、
    前記基材フィルムの遅相軸は、前記第1偏光板の透過軸と平行もしくは垂直な方向を向いている
    請求項に記載の表示装置。
  6. 前記基材フィルムは樹脂フィルムからなる請求項4または請求項5に記載の表示装置。
  7. 前記二種類の位相差領域はそれぞれ、λ/4のリタデーションを有し、
    前記二種類の位相差領域の遅相軸の向きが90°異なっている請求項4または請求項5に記載の表示装置。
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