JP4507984B2 - 冷却構造 - Google Patents

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本発明は電子部品の冷却構造に関し、より詳細には半導体等の電子部品上に設置したヒートシンクに振動源を配置し、振動源の振動によりヒートシンクに付着する埃を防止することにより冷却効率を低下させることのない冷却構造に関する。
近年のコンピュータは、高速で多量のデータ処理が行われ、処理性能の向上は著しいものがある。これにともなってCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等は回路負荷が重くなり相対的に発熱量も増大してきている。これらの電子部品の冷却にはヒートシンクが多く用いられ、発生した熱をヒートシンクを介して空気または液体に効率よく熱伝達させることにより放熱し、冷却している。PCやワークステーション等ではコストおよび設置面積の関係から空冷によるヒートシンクが用いられることが一般的である。
ヒートシンクの性能を示すものとして熱抵抗値と圧力損失とがある。熱抵抗値は熱の伝わりにくさを表し、圧力損失はヒートシンクを通り抜ける流体の抵抗を表し、共にこの値が低い程ヒートシンクとしての性能が高いことになる。空冷のヒートシンクは、放熱フィンを有し空気との接触面積を多くすることで熱抵抗値を下げることが行われている。また、ヒートシンクに冷却ファンを組み合わせて強制的に空気の流れを良くして圧力損失を下げることも行われている。しかし、ヒートシンクを取り付けた当初は設計通りの冷却性能を有していても、時間を経て放熱フィンに埃が堆積すると熱抵抗が大きくなり冷却性能は低下して来る。
冷却ファンから発生する音を無くすために、ケーシング内にスピーカを配置し、5Hz〜12Hzの周波数でスピーカを振動させ、この振動で空気を対流し冷却を行う提案がされている。また、圧電素子に振動板を連結し、同様に空気振動を発生させて冷却を行うことも記載されている(例えば、特許文献1)。
特許第3359480号公報
上記に述べたように、時間の経過とともに埃が放熱フィンに堆積すると熱抵抗が増大し冷却効率が低下するという問題がある。冷却ファンを併用することで強制的に空気の流れが作られ埃の堆積も少なくなることが考えられるが、総ての放熱フィンに冷却ファンの空気を当てることは現実には困難であり埃の堆積を防止できるものではない。
特許文献1に提案された方法は、冷却ファンのノイズの防止を目的としており積極的に埃の堆積を防止するものではない。このため、10Hz前後の周波数の振動で埃の堆積を防止することは困難と考えられる。
本発明は、空気または冷却構造を振動させて放熱フィンに堆積しようとする埃を舞い上げ、冷却ファンにより排除する冷却構造を提供するものである。
本発明の冷却構造は、以下のように構成される。
(1)第1の発明
第1の発明は、ヒートシンク上にスピーカを配置して可聴周波数を超える周波数で駆動し、冷却ファンにより埃を排除する冷却構造である。
基本とする冷却構造は、回路基板にはLSI等の発熱する部品が搭載され、その上面に弾性に富んだ熱伝導性を有する熱伝導シートを配置し、さらにその上にヒートシンクを配置する構造である。
上記の冷却構造を構成するヒートシンク上にスピーカを配置し、このスピーカを可聴周波数を超える周波数(15KHz以上)で駆動することによって得られる振動でヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、この冷却構造の近傍に配置した冷却ファンにより舞い上げた埃を吹き払う冷却構造である。
熱伝導シートは、弾力性に富むためスピーカのフレームからヒートシンクに伝わる直接振動を吸収し、振動による電子部品の障害を起こすことはない。
第1の発明によれば、ヒートシンクの放熱フィンに付着しようとする埃をスピーカの振動によって除去でき、冷却効率を低下させることがない。
(2)第2の発明
第2の発明は、スピーカを駆動する周波数をスイープして冷却構造の共振を得る発明である。
基本の冷却構造とヒートシンク上のスピーカの配置、冷却構造の近傍に冷却ファンを配置する構造は第1の発明と同一である。スピーカを駆動する周波数は可聴周波数を超える周波数であって、その周波数内で所定の範囲の周波数をスイープするものである。
第2の発明によれば、周波数のスイープにより冷却構造の一部が高調波を含んだ周波数により共振が発生して振動が大きくなり、埃を舞い上げる効果を大きくすることができる。
(3)第3の発明
第3の発明は、ヒートシンク上に配置した振動源が偏芯モーターであることを特徴とする冷却構造である。
基本の冷却構造と、この冷却構造の近傍に冷却ファンを配置する構造は第1の発明と同一である。ヒートシンク上には偏芯モーターを配置し、この偏芯モーターを駆動することによって得られる振動をヒートシンクに伝えることによりヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、この埃を冷却ファンにより吹き払う冷却構造である。第1の発明と同様、偏芯モーターの振動は弾力性に富む熱伝導シートにより吸収されて電子部品が振動による障害を起こすことはない。
第3の発明によれば、ヒートシンクに付着しようとする埃を偏芯モーターの振動によって除去でき、冷却効率を低下させることがない。
(4)第4の発明
第4の発明は、ヒートシンク上に配置した振動源が電歪素子であることを特徴とする冷却構造である。
基本の冷却構造と、この冷却構造の近傍に冷却ファンを配置する構造は第1の発明と同一である。ヒートシンク上には例えば圧電セラミックを用いた電歪素子を配置し、この電歪素子を駆動することによって得られる振動によりヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、この埃を冷却ファンにより吹き払う冷却構造である。第1の発明と同様、電歪素子の振動は弾力性に富む熱伝導シートにより吸収されて電子部品が振動よる障害を起こすことはない。
第4の発明によれば、ヒートシンクの放熱フィンに付着しようとする埃を電歪素子の振動によって吹き払うことができ、冷却効率を低下させることがない。
(5)第5の発明
第5の発明は、ヒートシンク上に配置した振動源が磁歪素子であることを特徴とする冷却構造である。
基本の冷却構造と、この冷却構造の近傍に冷却ファンを配置する構造は第1の発明と同一である。ヒートシンク上には強磁性体金属とコイルから成る磁歪素子を配置し、この磁歪素子を駆動することによって得られる振動によりヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、冷却ファンにより舞い上げた埃を吹き払う冷却構造である。第1の発明と同様、磁歪素子の振動は弾力性に富む熱伝導シートにより吸収されて電子部品に殆ど伝わることがない。
第5の発明によれば、ヒートシンクの放熱フィンに付着しようとする埃を磁歪素子の振動によって吹き払うことができ、冷却効率を低下させることがない。
第1の発明により、ヒートシンク上に配置したスピーカにより空気振動とスピーカのフレームからの直接振動によりヒートシンクの放熱フィンに付着する埃を冷却ファンにより吹き払うことができ、当初の冷却効率を保つことができる。
第2の発明により、周波数をスイープさせることによりヒートシンクに共振を起こさせ、振動を大きくできるので付着する埃を除去する効果を大きくすることができる。
第3の発明により、振動源を偏芯モーターとしたため簡単な駆動回路で振動を発生でき、効率のよい埃の除去ができる。
第4の発明により、振動源を電歪素子としたためコンパクトでありながら効率のよい埃の除去ができる。
第5の発明により、振動源を磁歪素子としたためコンパクトでありながら効率のよい埃の除去ができる。
本発明の実施例を図1から図4を用いて説明する。
図1と図2により第1の発明および第2の発明の実施例を説明する。図1は冷却構造を説明する図で、図1の上の図は冷却構造を上部から見た図を示し、下の図は側面から見た図を示している。回路基板100には発熱する部品であるLSI200が搭載され、そのLSI200の上面に熱伝導シート300を配置し、更にその上にヒートシンク400を配置している。熱伝導シート300は、弾力に富み熱伝導性の高い例えばシリコンゴムから成り、両面に接着層を有するものである。ヒートシンク400は、空気との接触面積を大きくして放熱効果を高めるための放熱フィン410を有し、材質は例えばアルミニュムである。
上記のヒートシンク400上に冷却ファン500およびスピーカ600を配置している。冷却ファン500により作られた風は、下の図に示されるように放熱フィン410の間を通過する構造としている。スピーカ600はヒートシンク400にスピーカ600のフレームで固定されており、後述する駆動回路によって可聴周波数以上(15KHz以
上)の周波数で駆動している。スピーカ600からの振動は、スピーカ600の振動板か
ら空気振動が、そしてスピーカ600のフレームからは直接振動がヒートシンク400に伝わる。この振動によりヒートシンク400の放熱フィン410に付着しようとする埃は
舞い上がり、舞い上がった埃は冷却ファン500によって吹き払われて堆積が防止され
る。
ヒートシンク400に伝わる振動は熱伝導シート300により吸収され、LSI200には殆ど伝わらない(スピーカ600の振動板で作られる空気振動は伝わるが、大きな振動でなく例えばLSI200の接続箇所等に損傷を与えるものではない)。
スピーカ600を駆動する電気信号を断続したり、10Hz以下と15KHz以上の2種類以上の周波数の電気信号を合成した周波数で駆動するようにしてもよい。
図2は、第2の発明のスピーカ600の駆動回路の例を示す図である。発振回路610は、例えば水晶発振回路で正弦波形の電気信号を得る。発振した正弦波信号はアナデジ変換回路620に入力されてデジタル信号に変換される。続いて変換されたデジタル信号は分周回路630で周波数を分周し、デジアナ変換回路640でアナログ信号に変換して増幅回路650で増幅し、スピーカ600を駆動する。制御回路660は、分周回路630および増幅回路650に制御信号を送り、所定の周波数範囲(例えば、15KHz〜25KHz)でスイープするアナログ信号を得てスピーカ600を駆動する。
次に図3により、第3の発明の実施例を説明する。図1と異なる箇所は、図1のスピーカ600に替えて偏芯モーター700をヒートシンク400に設置しており他は同一である。偏芯モーター700は図示しない電源の供給により回転して振動を発生する。この振動はヒートシンク400に伝わり、放熱フィン410に付着しようとする埃が舞い上がって冷却ファン500によって吹き払われ、埃の堆積が防止される。第1の発明と同様に、ヒートシンク400に伝えられた振動は熱伝導シート300により吸収され、振動によるLSI200の障害が発生することはない。
続いて図4により、第4の発明の実施例を説明する。図3の振動源を偏芯モーター700に替えて電歪素子800を用いることで他の構造および作用は図3と同一である。
また、図4の電歪素子800を磁歪素子に代えることで第5の発明となる。
以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
回路基板上に搭載された発熱する部品の上面に弾性に富み熱伝導性を有する熱伝導シートを介して配置されたヒートシンクで構成する冷却構造であって、
前記ヒートシンク上にスピーカを配置し、可聴周波数を超える周波数で駆動した該スピーカからの振動により該ヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、近傍に配置した冷却ファンにより該埃を吹き払う
ことを特徴とする冷却構造。
(付記2)
前記スピーカは、可聴周波数を超える所定の周波数範囲でスイープして駆動する
ことを特徴とする付記1記載の冷却構造。
(付記3)
回路基板上に搭載された発熱する部品の上面に弾性に富み熱伝導性を有する熱伝導シートを介して配置されたヒートシンクで構成する冷却構造であって、
前記ヒートシンク上に偏芯モーターを配置し、該偏芯モーターの駆動による振動により該ヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、近傍に配置した冷却ファンにより該埃を吹き払う
ことを特徴とする冷却構造。
(付記4)
回路基板上に搭載された発熱する部品の上面に弾性に富み熱伝導性を有する熱伝導シートを介して配置されたヒートシンクで構成する冷却構造であって、
前記ヒートシンク上に電歪素子を配置し、該電歪素子の駆動による振動により該ヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、近傍に配置した冷却ファンにより該埃を吹き払う
ことを特徴とする冷却構造。
(付記5)
回路基板上に搭載された発熱する部品の上面に弾性に富み熱伝導性を有する熱伝導シートを介して配置されたヒートシンクで構成する冷却構造であって、
前記ヒートシンク上に磁歪素子を配置し、該磁歪素子の駆動による振動により該ヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、近傍に配置した冷却ファンにより該埃を吹き払う
ことを特徴とする冷却構造。
(付記6)
前記スピーカは、所定の可聴周波数を超える周波数範囲で断続して駆動する
ことを特徴とする付記1記載の冷却構造。
(付記7)
前記スピーカは、10Hz以下と15KHz以上の2種類以上の周波数で駆動する
ことを特徴とする付記1記載の冷却構造。
第1および第2の発明の冷却構造例である。 第2の発明のスピーカ駆動回路例である。 第3の発明の冷却構造例である。 第4の発明の冷却構造例である。
符号の説明
100 回路基板
200 LSI
300 熱伝導シート
400 ヒートシンク
410 放熱フィン
500 冷却ファン
600 スピーカ
610 発振回路
620 アナデジ変換回路
630 分周回路
640 デジアナ変換回路
650 増幅回路
660 制御回路
700 偏芯モーター
800 電歪素子

Claims (5)

  1. 回路基板上に搭載された発熱する部品の上面に弾性に富み熱伝導性を有する熱伝導シートを介して配置されたヒートシンクで構成する冷却構造であって、
    前記ヒートシンク上にスピーカを配置し、可聴周波数を超える周波数で駆動した該スピーカからの振動により該ヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、近傍に配置した冷却ファンにより該埃を吹き払う
    ことを特徴とする冷却構造。
  2. 前記スピーカは、可聴周波数を超える所定の周波数範囲でスイープして駆動する
    ことを特徴とする請求項1記載の冷却構造。
  3. 回路基板上に搭載された発熱する部品の上面に弾性に富み熱伝導性を有する熱伝導シートを介して配置されたヒートシンクで構成する冷却構造であって、
    前記ヒートシンク上に偏芯モーターを配置し、該偏芯モーターの駆動による振動により該ヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、近傍に配置した冷却ファンにより該埃を吹き払う
    ことを特徴とする冷却構造。
  4. 回路基板上に搭載された発熱する部品の上面に弾性に富み熱伝導性を有する熱伝導シートを介して配置されたヒートシンクで構成する冷却構造であって、
    前記ヒートシンク上に電歪素子を配置し、該電歪素子の駆動による振動により該ヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、近傍に配置した冷却ファンにより該埃を吹き払う
    ことを特徴とする冷却構造。
  5. 回路基板上に搭載された発熱する部品の上面に弾性に富み熱伝導性を有する熱伝導シートを介して配置されたヒートシンクで構成する冷却構造であって、
    前記ヒートシンク上に磁歪素子を配置し、該磁歪素子の駆動による振動により該ヒートシンクに付着する埃を舞い上げ、近傍に配置した冷却ファンにより該埃を吹き払う
    ことを特徴とする冷却構造。
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