JP4507511B2 - 電気光学装置、電気光学装置の制御装置、電気光学装置の制御方法、および電子機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気光学装置における画素の駆動を制御する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
EL(Electro Luminescent)素子などの電気光学素子を用いた電気光学装置は、例えば電子機器の表示装置として用いられる。この電気光学装置においては、電気光学素子を有する複数の画素の各々が電流の供給または電圧の印加によって駆動されるのが一般的である。この駆動に用いられる電圧または電流の大きさは、画素ごとに用意されたデータ(以下「画素データ」という)によって指定されるのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2003−76331号公報(段落0013および第1図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この種の電気光学装置においては、画像の表示によって消費される電力が画素データの内容(すなわち表示すべき画像の内容)に応じて変動するという問題があった。例えば、画素の輝度が当該画素に供給された電流値に比例するEL表示装置においては、表示面の全域にわたって高い輝度にて表示を行なうときの消費電力が、低い輝度にて表示を行なうときの消費電力よりも大きくなる。そして、このような消費電力の変動により、突発的な電源の不足など種々の不具合が引き起こされる場合がある。具体的には、電気光学装置を用いた表示装置とそれ以外の装置(例えば通信端末における通信回路など)とによって電源が共用される構成のシステムにおいて、表示装置以外の装置によって電力が消費されているときに表示装置による消費電力が増大すると、突発的に電源が不足してシステムダウンなどの重大な不具合が引き起こされるといった具合である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、画素データの内容に応じた消費電力の変動を抑えることができる電気光学装置、電気光学装置の制御装置、電気光学装置の制御方法および電子機器を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置は、データ信号の信号レベルに応じた輝度に駆動される電気光学素子を含む画素と、前記画素に対してデータ信号を出力する駆動回路と、画素の輝度を指定するための画素データに応じた第1次のデータ信号の信号レベルをフレームごとに見積もる特定回路と、通常表示モードが選択された場合には、前記第1次のデータ信号が前記画素に供給されるように前記駆動回路を制御する一方、輝度制御モードが選択された場合には、前記特定回路で見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が低いほど、前記画素の輝度を大きく引き上げ、当該見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が高いほど、前記画素の輝度を大きく引き下げた第2次のデータ信号が前記画素に供給されるように、前記駆動回路を制御する制御回路路とを具備する。
この構成においては、第1次のデータ信号の信号レベルが見積もられるとともに、この見積もられた信号レベルに基づいて第2次のデータ信号の信号レベルが特定され、第1次のデータ信号および第2次のデータ信号のいずれかが画素に供給されるように駆動回路が制御される。したがって、例えば、第1次のデータ信号について見積もられた信号レベルが大きいほど第2次のデータ信号の信号レベルが小さくなるように第2次のデータ信号の信号レベルが特定される構成とし、この構成のもとで各画素に第2次のデータ信号を供給すれば、第1次のデータ信号が各画素に供給された場合と比較して、各画素における消費電力の変動が抑えられる。例えば、第1次のデータ信号について見積もられた信号レベルが大きい場合には消費電力が画素全体として抑えられる一方、見積もられた信号レベルが小さい場合には消費電力が画素全体として引き上げられる。したがって、画素の駆動内容(電気光学装置が表示装置として用いられる場合には表示内容)に応じた消費電力の変動が抑えられる。
【0007】
この構成において、前記制御回路は、前記輝度制御モードが選択された場合には、一のフレームと他のフレームの前記画素で消費される電力の差が前記通常表示モードのときよりも小さくなるように、一のフレームについて前記画素の輝度を引き上げ、他のフレームについて前記画素の輝度を引き下げた第2次のデータ信号が前記画素に供給されるように、前記駆動回路を制御してもよい。
また、前記特定回路は、前記画素データに対して所定の処理を行なうことによって前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定する信号レベル算定回路を具備し、前記信号レベル算定回路は、複数の前記画素の各々について前記画素データが示す数値を合計し、この合計値に基づいて前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定する構成としてもよい。また、前記特定回路は、前記画素データに対して所定の処理を行なうことによって前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定する信号レベル算定回路を具備し、前記信号レベル算定回路は、複数の前記画素の各々について前記画素データが示す数値の平均値を算定し、この平均値に基づいて前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定してもよい。これらの構成によれば、画素データに対して演算処理を行なう簡易な構成によって確実に第1次のデータ信号の信号レベルが算定される。
なお、信号レベル算定回路は、1画面分の画素の画素データに基づいて前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定するようにしてもよいし、1画面分の画素のうち一部の画素の画素データに基づいて前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定するようにしてもよい。1画面分の画素データを対象とした場合には、画素データの内容に応じた消費電力の変動が確実に抑えられる。一方、一部の画素の画素データを対象とした場合には、画素データから第2次のデータ信号の信号レベルを特定する処理が簡素化される。
【0008】
本発明の好ましい態様において、特定回路は、信号レベル算定回路によって算定された前記第1次のデータ信号の信号レベルを表す信号レベルデータを保持する保持回路を備える。この保持回路には、信号レベル算定回路が過去に算定した信号レベルを表す少なくともひとつの信号レベルデータが保持される。この構成によれば、第1次のデータ信号の信号レベルを表す信号レベルデータが保持回路に保持されるから、過去において算定された第1次のデータ信号の信号レベルを第2次のデータ信号の信号レベルの算定に反映させることができる。
ところで、本発明に係る電気光学装置において、制御回路による駆動回路の制御のタイミングによっては、各画素に供給される各画素に供給されるデータ信号の信号レベルが短い時間間隔で頻繁に変更されることも考えられる。この場合には、例えば一連の画像からなる動画が表示されているときに各画素の明るさが変化し、表示画像のチラツキなどの違和感を観察者に覚えさせるおそれがある。このため、本発明における制御回路は、例えば表示画像の内容が顕著に変化したタイミングに合わせて駆動回路の制御を行なうことが望ましい。例えば、画素データの内容に基づいて第1次のデータ信号の信号レベルが特定される構成のもとでは、この信号レベルの経時的な変化量が大きい場合に表示画像の内容が顕著に変化したと捉えることができる。そこで、本発明においては、信号レベル算定回路によって新たに算定された第1次のデータ信号の信号レベルと、保持回路に保持された過去の信号レベルデータが示す信号レベルとを比較するとともに当該比較結果を表す比較結果データを出力する比較回路を設け、制御回路が、比較回路から出力された比較結果データが特定の条件を満たす場合に限り、新たに算定された第1次のデータ信号の信号レベルに基づいて第2次のデータ信号の信号レベルを特定する構成としてもよい。この構成によれば、比較回路による比較結果が所定の条件を満たす場合に限って駆動回路の制御が実行される。したがって、例えば本発明に係る電気光学装置を表示装置として用いた場合には、表示画像のチラツキなどが抑えられる。もっとも、表示画像のチラツキが問題とならない場合には、保持回路や比較回路を設けない構成としてもよい。
【0009】
本発明の望ましい態様において、特定回路は、前記信号レベル算定回路による信号レベルの算定動作の実行タイミングを制御する算定命令回路を備える。例えば、算定命令回路は、1画面分の画素データの転送に同期して前記算定動作が実行されるように前記信号レベル算定回路を制御する。また、算定命令回路は、特定の時間間隔で算定動作が実行されるように前記信号レベル算定回路を制御する。
【0010】
また、本発明に係る電気光学装置の一態様において、制御回路は、前記第2次のデータ信号が前記画素に供給されるべき場合に、前記画素データに基づいて特定の処理を実行することによって前記第2次のデータ信号に対応する画素データを生成し、この画素データを前記駆動回路に出力する。この構成によれば、第2次のデータ信号に対応する画素データが駆動回路に出力されるから、駆動回路については何らの変更も要しない。
具体的には、特定の処理は、前記第1次のデータ信号に対応する画素データと前記第2次のデータ信号に対応する画素データとが予め対応付けられた変換テーブルに基づいて、前記第2次のデータ信号に対応する画素データを生成する処理である。この構成によれば、第2次のデータ信号に対応する画素データを生成するために特別な演算処理が必要とならないという利点がある。この態様においては、変換テーブルが、前記第1次のデータ信号の信号レベルごとに設けられ、特定の処理は、前記信号レベル算定回路によって算定された信号レベルに応じた変換テーブルに基づいて、前記第2次のデータ信号に対応する画素データを生成する処理であることが望ましい。
また、特定の処理は、前記信号レベル算定回路により算定された信号レベルに応じた演算を前記第1次のデータ信号に対応する画素データに施すことによって前記第2次のデータ信号に対応する画素データを生成する処理であってもよい。例えば、画素データが第1次のデータ信号の信号レベルを複数のビットによって指定するデータであれば、このビット列を適宜にシフトしたもの(例えば複数のビットのうち下位に属する所定数のビットを切り捨てたもの)を第2次のデータ信号に対応する新たな画素データとして用いる構成としてもよい。
【0011】
一方、本発明に係る電気光学装置の他の態様において、制御回路は、前記駆動回路によって生成されるデータ信号の信号レベルを指定する駆動条件データを生成して前記駆動回路に出力し、駆動回路は、前記画素データに応じたデータ信号を前記駆動条件データに基づいて生成して前記画素に出力する。例えば、駆動条件データとして、駆動回路によって生成されるデータ信号の信号レベルの基準値(例えばデータ信号の電流値または電圧値の基準となる値)を指定するデータとすれば、駆動回路が画素データに応じたデータ信号を生成するときの基準値が駆動条件データの内容に応じて適宜に変更される。この態様によれば、画素データについては何らの処理も施すことなく駆動回路に出力することができる。
【0012】
本発明に係る電気光学装置の一例は、電気光学素子としてEL素子を用いたEL装置である。さらに、消費電力の低減を図る観点から、EL素子は有機EL素子であることが望ましい。もっとも、EL装置以外の装置であっても、電流の供給や電圧の印加といった電気的な作用を輝度(透過率を含む)などの光学的な作用に変換する電気光学素子を備えた装置であれば本発明が適用される。
【0013】
本発明に係る電子機器は、上述した各態様の電気光学装置を備えることを特徴とする。この電子機器によれば、画素データの内容に応じた消費電力の変動が抑えられるから、突発的な電源の不足に起因したシステムダウンなどが有効に回避される。
【0014】
また、本発明は、電気光学装置を制御する装置としても特定され得る。すなわち、本発明に係る電気光学装置の制御装置は、データ信号の信号レベルに応じた輝度に駆動される電気光学素子を含む画素と、前記画素に対してデータ信号を出力する駆動回路とを備える電気光学装置を制御する装置であって、画素の輝度を指定するための画素データに応じた第1次のデータ信号の信号レベルをフレームごとに見積もる特定回路と、通常表示モードが選択された場合には、前記第1次のデータ信号が前記画素に供給されるように前記駆動回路を制御する一方、輝度制御モードが選択された場合には、前記特定回路で見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が低いほど、前記画素の輝度を大きく引き上げ、当該見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が高いほど、前記画素の輝度を大きく引き下げた第2次のデータ信号が前記画素に供給されるように、前記駆動回路を制御する制御回路とを具備する。この構成によっても、本発明に係る電気光学装置と同様の効果が得られる。
【0015】
さらに、本発明は、電気光学装置を制御する方法としても特定され得る。すなわち、この方法は、データ信号の信号レベルに応じた輝度に駆動される電気光学素子を含む画素と、前記画素に対してデータ信号を出力する駆動回路とを備える電気光学装置を制御する方法であって、画素の輝度を指定するための画素データに応じた第1次のデータ信号の信号レベルをフレームごとに見積もり、通常表示モードが選択された場合には、前記第1次のデータ信号が前記画素に供給されるように前記駆動回路を制御する一方、輝度制御モードが選択された場合には、見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が低いほど、前記画素の輝度を大きく引き上げ、当該見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が高いほど、前記画素の輝度を大きく引き下げた第2次のデータ信号が前記画素に供給されるように、前記駆動回路を制御する。この方法によっても、本発明に係る電気光学装置と同様の効果が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
<A:第1実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
まず、有機EL素子を用いて各種の画像を表示する電気光学装置に本発明を適用した形態を説明する。図1は、この電気光学装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、電気光学装置100は、複数の画素を有する電気光学パネル10と、これらの画素を駆動する駆動回路20と、駆動回路20を制御する制御装置40と、各部に電源を供給する電源回路30とを有する。
【0017】
電気光学パネル10は、m本の走査線11とn本のデータ線12とを有する。
各走査線11と各データ線12とは互いに直交し、各々の交差部分には画素として機能する画素回路16が設けられている。
【0018】
駆動回路20は、各走査線11を駆動する走査線駆動回路21と、各データ線12を駆動するデータ線駆動回路22とを有する。走査線駆動回路21、データ線駆動回路22、制御装置40および電源回路30は、各々が独立した部品として構成されていてもよいし、その一部または全部が一体の部品として構成されていてもよい。あるいは、これらの構成要素の一部または全部をプログラマブルICチップにより構成し、各構成要素の機能がプログラムの実行によって実現される構成としてもよい。
【0019】
走査線駆動回路21は、制御装置40による制御のもとに、走査線11を1本ずつ順番に選択するための走査信号Y1、Y2、…、Ymを生成する回路である。具体的には、図2に示すように、走査線駆動回路21は、1垂直走査期間(1F)の開始時点から、1水平走査期間(1H)に相当する幅のパルスを第1行目の走査線11に走査信号Y1として供給し、以降、このパルスを順次にシフトして、第2行目、第3行目、…、第m行目の走査線11の各々に走査信号Y2、Y3、…、Ymとして供給する。第i(iは1≦i≦mを満たす整数)行目の走査線11に供給される走査信号YiがHレベルになると、その走査線11が選択されることとなる。
【0020】
また、図2に示すように、走査線駆動回路21は、走査信号Y1、Y2、…、Ymの論理レベルを反転した信号を、それぞれ発光制御信号Vg1、Vg2、…、Vgmとして生成して電気光学パネル10に供給する。ただし、図1においては図面が煩雑になるのを防ぐために、発光制御信号Vgiを伝送する信号線の図示が省略されている。
【0021】
一方、図1に示すデータ線駆動回路22は、複数の画素回路16の各々にデータ線12を介してデータ信号を供給するための回路である。図3に示すように、各データ線駆動回路22はデータ線12ごとに電流生成回路221を備えている。各電流生成回路221には制御装置40から画素データ(Dpix)が供給される。この画素データは、各画素による表示内容を示すデジタルデータである。より具体的には、画素データは、各画素の有機EL素子168の輝度(すなわち階調)を数値として指定する。ここで、第j(jは1≦j≦nを満たす整数)列目のデータ線12に対応する電流生成回路221には、選択された走査線11と第j列目のデータ線12との交差に位置する画素の画素データが供給される。電流生成回路221は供給された画素データの値に応じた電流Ioutを生成するとともに、この電流Ioutを対応するデータ線12にデータ信号として流すための手段である。例えば、第3列目のデータ線12に対応する電流生成回路221は、選択された走査線11と第3列目のデータ線12との交差に位置する画素の画素データを制御装置40から取得し、この画素データに応じた電流Ioutを第3列目のデータ線12に流す。
【0022】
次に、図4を参照して画素回路16の構成を説明する。なお、図4においては、任意の1本のデータ線12と第i行目の走査線11との交差部分に位置するひとつの画素回路16が示されているが、その他の画素回路16も同様の構成である。この図に示すように、画素回路16は、4個の薄膜トランジスタ(以下「TFT(Thin Film Transistor)」という)161、162、163および164と、容量素子166と、電気光学素子として機能する有機EL素子168とを有する。
【0023】
pチャネル型のTFT161のソースは、高位側の電源電圧が印加された電源線14に接続されている。一方、TFT161のドレインは、nチャネル型TFT162のドレイン、nチャネル型TFT163のドレイン、およびnチャネル型TFT164のソースにそれぞれ接続されている。一方、TFT162のゲートは走査線11に接続され、そのソースはデータ線12に接続されている。また、TFT164のゲートは走査線11に接続されている。容量素子166は、一端が電源線14に接続される一方、他端がTFT161のゲートとTFT164のドレインとに接続されている。
【0024】
一方、TFT163は、そのゲートが発光制御線13に接続され、ソースが有機EL素子168の陽極に接続されている。発光制御線13には、走査線駆動回路21から発光制御信号Vgiが供給される。また、有機EL素子168は、陽極と陰極との間に有機EL層が挟持されており、順方向に流れる電流に応じた輝度で発光する。一方、有機EL素子168の陰極はすべての画素回路16にわたって共通の電極であり、低位側の電源電圧に接地されている。
【0025】
この構成のもと、走査信号YiがHレベルに遷移して第i行目の走査線11が選択されると、nチャネル型TFT164がソースおよびドレインの間において導通(オン)状態となるので、TFT161はゲートとドレインとが互いに接続されたダイオードとして機能する。このとき、発光制御信号VgiがLレベルであるためTFT163は非導通(オフ)状態となる。一方、走査信号YiがHレベルに遷移するとnチャネル型TFT162は導通状態となる。この結果、電流生成回路221によって生成された電流Ioutが、電源線14→TFT161→TFT162→データ線12という経路で流れ、TFT161のゲートの電位に応じた電荷が容量素子166に蓄積される。
【0026】
次に、走査信号YiがLレベルに遷移して第i行目の走査線11の選択が解除されると、TFT162およびTFT164はともに非導通(オフ)状態となる。このとき、容量素子166における電荷の蓄積状態は理想的には変化しないので、TFT161のゲートは電流Ioutが流れたときの電圧に保持される。
【0027】
さらに、走査信号YiがLレベルに遷移すると発光制御信号VgiがHレベルとなるので、TFT163が導通状態となる。したがって、TFT161のソースおよびドレインの間には、そのゲート電圧に応じた電流が流れる。より詳細には、この電流は、電源線14→TFT161→TFT163→有機EL素子168という経路で流れる。これにより有機EL素子168は、データ信号Djの電流値に応じた輝度で発光する。
【0028】
なお、ここではひとつの画素回路16のみに着目して動作を説明したが、第i行目の走査線11は行方向に列をなすn個の画素回路16に共用されているから、走査信号YiがHレベルになると、これらのn個の画素回路16においても同様の動作が実行される。さらに、走査信号Y1、Y2、…、Ymは、図2に示した通り順番にHレベルとなる。したがって、各走査線11に対応する画素回路16について1垂直走査期間において順次に同様の動作が実行される。
【0029】
次に、図1に示した制御装置40は、駆動回路20(走査線駆動回路21およびデータ線駆動回路22)の動作を制御する装置である。この制御装置40は、図5に示すように、コントローラ41と、メモリ42と、動作モード設定回路43と、特定回路45と、制御回路46とを有する。このうちコントローラ41は、制御装置40の全体を制御するための回路である。具体的には、コントローラ41は、クロック信号など電気光学パネル10の駆動動作を規定する各種の信号を駆動回路20に出力する。また、コントローラ41は、上位装置から供給される各画素の画素データ(Dpix)をメモリ42に記憶させる。このメモリ42は、1画面分の画素(すなわちm×n個の画素)の画素データを記憶する手段であり、例えばRAM(Random Access Memory)である。
【0030】
ここで、本実施形態に係る電気光学装置100においては、駆動回路20に対する制御の内容が異なる2つの動作モードが用意されている。このうち一方の動作モード(以下「通常表示モード」という)は、画素データが表す数値に予め対応付けられた電流値のデータ信号(以下「第1次のデータ信号」という)を複数の画素回路16の各々に供給するモードである。他方の動作モード(以下「輝度制御モード」という)は、画素データの内容に応じた消費電力の変動を抑えつつ複数の画素回路16の各々を駆動するモードである。具体的には、輝度制御モードにおいては、画素データに応じて複数の画素回路16に供給されるべき第1次のデータ信号の信号レベル(以下「予定信号レベル」という)が見積もられるとともに、予定信号レベルに応じた信号レベルのデータ信号(以下「第2次のデータ信号」という)が複数の画素回路16の各々に供給される。利用者は、入力装置(図示略)を適宜に操作することにより、通常表示モードと輝度制御モードのいずれかを任意に選択できるようになっている。コントローラ41は、入力装置が操作されて動作モードの変更が指示されると、その旨を動作モード設定回路43に通知する。この動作モード設定回路43は、コントローラ41からの通知に応じて現在の動作モードを特定し、特定した動作モードを示す設定データを制御回路46に出力する。
【0031】
特定回路45は、予定信号レベルを見積もるための回路であり、図5に示すように、算定命令回路451と信号レベル算定回路453とメモリ455と比較回路457とを有する。このうち信号レベル算定回路453は、メモリ42に記憶された画素データに基づいて予定信号レベルを算定する回路である。本実施形態における信号レベル算定回路453は、メモリ42に格納された画素データに基づいて予定信号レベルを特定し、この予定信号レベルを表すデータ(以下「信号レベルデータ」という)を出力するようになっている。ここで、画素データは、各画素の有機EL素子168の輝度(すなわち階調)を数値にて指定するデータである。例えば、ひとつの画素の画素データに着目すると、その画素データの数値が大きいほど当該画素の輝度として高い数値が指定されるといった具合である。そして、上述したように各画素の輝度は有機EL素子168に供給されるデータ信号の電流値に比例するから、画素データの数値は画素に供給されるべきデータ信号の信号レベルに対応する数値であると言うこともできる。そこで、本実施形態における信号レベル算定回路453は、画素データの数値を1画面分のすべての画素について合計し、この合計値を予定信号レベルとして特定するようになっている。信号レベル算定回路453から出力された信号レベルデータは、メモリ455、比較回路457および制御回路46に供給される。
【0032】
信号レベル算定回路453が予定信号レベルを算定するタイミングは、算定命令回路451によって制御される。この算定命令回路451は、コントローラ41による制御のもと、信号レベル算定回路453に予定信号レベルを算定させるための指令(以下「算定指令」という)を出力する。ここで、コントローラ41は、動作モードが通常表示モードから輝度制御モードに変更されると、算定命令回路451に対してフィードバック実行指令を出力する。一方、動作モードが輝度制御モードから通常表示モードに変更されると、コントローラ41は、算定命令回路451に対してフィードバック停止命令を出力する。算定命令回路451は、コントローラ41からフィードバック実行指令が与えられると、信号レベル算定回路453に対する算定指令の出力を開始し、この動作をフィードバック停止指令が与えられるまで繰り返す。本実施形態における算定命令回路451は、輝度制御モードが選択されているとき、メモリ42に対して新たな画素データが書き込まれるたびに(すなわちフレームごとに)、算定指令の出力を実行する。したがって、信号レベル算定回路453は、フレームごとに予定信号レベルの算定を行なう。
【0033】
メモリ455は、信号レベル算定回路453から供給された信号レベルデータを記憶する。すなわち、メモリ455は、信号レベル算定回路453が過去に算定した信号レベルを表す信号レベルデータを保持する回路である。一方、比較回路457は、信号レベル算定回路453によって異なる時点において算定された信号レベル同士を比較するための回路である。より具体的には、比較回路457は、信号レベル算定回路453から新たに信号レベルデータが供給されると、この信号レベルデータが示す予定信号レベルと、その直前にメモリ455に記憶された信号レベルデータが示す予定信号レベルとを比較し、この比較結果を表すデータ(以下「比較結果データ」という)を制御回路46に出力する。本実施形態における比較回路457は、信号レベル算定回路453から新たに供給された信号レベルデータとメモリ455に記憶された直前の信号レベルデータとの差を算定し、この差を比較結果データとして制御回路46に出力する。
【0034】
一方、制御回路46は、動作モード設定回路43から供給された設定データが示す動作モードに応じて駆動回路20を制御する手段である。詳述すると、制御回路46は、通常表示モードが選択されている場合には第1次のデータ信号が各画素回路16に供給されるように駆動回路20を制御する一方、輝度制御モードが選択されている場合には第2次のデータ信号が各画素回路16に供給されるように駆動回路20を制御する。以下、この制御の内容について詳述する。
【0035】
まず、通常表示モードが選択されている場合、制御回路46は、メモリ42から画素データを読み出し、この画素データをデータ線駆動回路22に出力する。この場合、画像の表示に際して有機EL素子168に供給される第1次のデータ信号は、予定信号レベルに拘わらず画素データに対応する電流値となる。例えばいま、時間の経過とともに予定信号レベルが図6(a)のように変化した場合を想定する。通常表示モードにおいては、予定信号レベルが同図(a)のように変化したとしても、有機EL素子168に供給される電流の最大値、すなわち画素データの数値が最大値であるときに有機EL素子168に供給される第1次のデータ信号の電流値(以下「電流最大値」という)は、図6(b)に示すように予定信号レベルに拘わらず一定である。なお、ここでは特に電流最大値に着目したが、画素データがその他の数値を表す場合にも、その画素データに応じて画素回路16に供給される第1次のデータ信号の電流値は予定信号レベルに拘わらず一定となる。したがって、図6(c)に示すように、1画面分の有機EL素子168の駆動に要する電力は図6(a)に示した予定信号レベルに対応する数値となる。
【0036】
これに対し、輝度制御モードが選択されている場合、制御回路46は、予定信号レベルが大きいほど、各画素データに応じて有機EL素子168に供給される電流が小さくなるように駆動回路20を制御する。例えばいま、予定信号レベルが図6(a)のように変化した場合を想定し、画素データの数値が最大となるときに有機EL素子168に供給される電流値たる電流最大値に着目する。輝度制御モードが選択されている場合、図6(d)に示すように、予定信号レベルが大きいほど電流最大値を小さくすべく(換言すれば、予定信号レベルが小さいほど電流最大値を大きくすべく)、制御回路46は、第2次のデータ信号が各有機EL素子168に供給されるように駆動回路20を制御する。なお、ここでは特に電流最大値に着目したが、画素データがその他の数値を表す場合にも、その画素データに応じて画素回路16に供給される電流値は予定信号レベルが大きいほど小さい値となる。すなわち、特定の画像を表示する第1のフレームと、このフレームよりも予定信号レベルが小さい第2のフレームとを想定すると、ある有機EL素子168に対して双方のフレームにおいて同一の画素データが与えられたとしても、第1のフレームにおいてその有機EL素子168に供給される電流値は、第2のフレームにおいてその画素回路16に供給される電流値よりも小さくなるのである。
【0037】
このように、輝度制御モードにおいては、第1次のデータ信号に代えて第2次のデータ信号が各画素回路16に供給されるため、予定信号レベルが大きい場合には各画素ごとの電流値が低減される一方、予定信号レベルが小さい場合には各画素ごとの電流値が引き上げられることとなる。したがって、図6(e)に示すように、1画面分の画素の駆動に要する電力は、予定信号レベルに拘わらず略一定となる。
【0038】
以上の制御を実現するために、本実施形態における制御回路46は、メモリ42に格納された画素データを変換して新たな画素データを生成する。すなわち、図5に示すように、制御回路46は変換テーブルが格納された記憶装置461を備えており、この変換テーブルに基づいて画素データの変換を行なう。記憶装置461は、例えばROM(Read Only Memory)である。
【0039】
図7は、変換テーブルの内容を示す図である。同図に示すように、変換テーブルは信号レベル算定回路453によって特定され得る予定信号レベルごとに用意されている。各変換テーブルにおいては、変換前の画素データの内容とこれを変換した後の画素データの内容とが対応付けられている。制御回路46は、メモリ42から読み出した画素データを変換テーブルにおける変換前の画素データの中から検索し、検索した画素データに対応付けられた変換後の画素データを読み出して出力する。
【0040】
ただし、本実施形態における制御回路46は、比較回路457から供給される比較結果データの数値が予め定められたしきい値よりも大きい場合に限って、信号レベル算定回路453から新たに供給された信号レベルデータを画素データの変換のために適用する。すなわち、信号レベル算定回路453から新たな信号レベルデータが供給されると、制御回路46はまず、その直後に比較回路457から供給される比較結果データの数値を予め定められたしきい値と比較する。そして、比較結果データの数値がしきい値よりも大きい場合に限って(すなわち予定信号レベルの変化量がしきい値を越える場合に限って)、図示しないレジスタに格納される信号レベルデータを新たな信号レベルデータに更新する。制御回路46は、このレジスタに格納された信号レベルデータに基づいて画素データの変換を行なうのである。したがって、比較結果データの数値がしきい値よりも小さい間(すなわち予定信号レベルの変化量が小さい間)は、過去に信号レベル算定回路453から供給された信号レベルデータが継続して使用され、信号レベル算定回路453から新たに供給される信号レベルデータは画素データの変換に反映されない。
【0041】
次に、本実施形態に係る制御装置40の動作を説明する。
まず、コントローラ41は、上位装置から受信した1画面分の画素データをメモリ42に書き込む。一方、制御回路46は、動作モード設定回路43から供給される設定データに基づいて動作モードを特定する。特定した動作モードが通常表示モードである場合、制御回路46は、画素データをメモリ42から読み出し、そのままデータ線駆動回路22に出力する。したがって、各画素回路16にはデータ線駆動回路22から第1次のデータ信号が供給され、図6(a)、(b)および(c)に示したように、電気光学パネル10において1画面分の表示に消費される電力は予定信号レベルに応じた電力となる。なお、通常表示モードが選択されている場合、算定命令回路451にはフィードバック実行指令が与えられていないから、算定命令回路451による算定指令の出力は行なわれない。したがって、信号レベル算定回路453は予定信号レベルの算定を行なわない。
【0042】
一方、動作モードが輝度制御モードに切り換えられると、コントローラ41はフィードバック実行指令を算定命令回路451に出力する。この指令を受けると、算定命令回路451は、コントローラ41によって1画面分の画素データがメモリ42に書き込まれるたびに、信号レベル算定回路453に対して算定指令を出力する。信号レベル算定回路453は、この算定指令を契機として、メモリ42に書き込まれた1画面分の画素データを読み出す。そして、信号レベル算定回路453は、読み出した画素データに基づいて予定信号レベルを算定し、この予定信号レベルを表す信号レベルデータを出力する。
【0043】
メモリ455は、信号レベル算定回路453から新たな信号レベルデータが供給されると、その直前に記憶した信号レベルデータ(すなわち直前のフレームに関する信号レベルデータ)を比較回路457に出力するとともに、当該新たな信号レベルデータを記憶する。また、比較回路457は、メモリ455から供給された直前の信号レベルデータと、信号レベル算定回路453から供給された新たな信号レベルデータとの差を演算し、この演算結果を表す比較結果データを制御回路46に出力する。
【0044】
一方、信号レベル算定回路453から新たな信号レベルデータが供給されるたびに、制御回路46は、レジスタに記憶された信号レベルデータに対応する変換テーブルを特定する。このレジスタに格納された信号レベルデータは、比較結果データの示す数値がしきい値よりも大きい場合に限って、信号レベル算定回路453から新たに供給された信号レベルデータに更新される。
【0045】
続いて、制御回路46は、メモリ42から画素データを読み出し、先に特定した変換テーブルにおいて当該画素データに対応付けられている変換後の画素データを特定する。そして、制御回路46は、この変換後の画素データをデータ線駆動回路22の電流生成回路221に供給する。これにより、データ線駆動回路22の各電流生成回路221は、予定信号レベルに応じた電流値の第2次のデータ信号を生成することとなる。具体的には、各電流生成回路221が生成する第2次のデータ信号は、メモリ42に格納された画素データの内容が変わらなければ、予定信号レベルが大きいほど小さくなる。この結果、図6(e)に示したように、各フレームの表示に要する電力は、予定信号レベルに拘わらず(すなわち画素データの内容に拘わらず)、ほぼ一定となる。
【0046】
このように本実施形態においては、輝度制御モードが選択されている場合に、予定信号レベルが大きいほど各画素データに応じて画素回路16に供給される電流値が小さくなるように第2次のデータ信号の信号レベルが選定される。したがって、予定信号レベルが大きい場合には複数の画素を駆動するための消費電力が全体として抑えられる一方、予定信号レベルが小さい場合には複数の画素を駆動するための消費電力が引き上げられる。これにより、画素データの内容に応じた消費電力の変動が抑えられる。
【0047】
また、本実施形態においては、変換テーブルに基づいて画素データが変換されるようになっている。したがって、画素データに応じて画素を駆動する一般的な駆動回路20をそのまま用いることができる。さらに、本実施形態においては、画素データの数値の合計値に応じて予定信号レベルが特定されるようになっている。したがって、信号レベル算定回路453を簡易な構成の演算回路によって実現することができる。
【0048】
加えて、本実施形態においては、予定信号レベルがしきい値を越えて変化した場合に限って、その変化後の予定信号レベルが駆動制御に反映されるようになっている。ここで、例えばフレームごとにそのフレームの予定信号レベルを駆動制御に反映させるとすれば、各画素回路16に供給されるデータ信号の電流値が短い時間間隔で頻繁に変化するから、各画素の明るさが頻繁に変化して表示画像のチラツキなどを生じさせ、表示品位の低下を招くおそれがある。これに対し、本実施形態においては、予定信号レベルがしきい値を越えて変化したタイミング、すなわち画像の内容が顕著に変わったタイミングに合わせて予定信号レベルに応じた電流制御が実行されるから、このような表示画像のチラツキを目立たなくすることができる。
【0049】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る電気光学装置100の構成を説明する。
上記第1実施形態においては、予定信号レベルに応じた電流制御を実現するために画素データを変換する構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、画素データ自体は変化させず、データ線駆動回路22がデータ信号を生成するときの基準値を予定信号レベルに応じて変化させる構成となっている。なお、本実施形態に係る電気光学装置100のうち第1実施形態に係る構成要素と同様の作用を営むものについては共通の符号を付してその説明を適宜に省略する。
【0050】
図8は、本実施形態に係る制御装置40の構成を示すブロック図である。同図に示すように、この制御装置40のコントローラ41は、メモリ42に書き込まれた画素データを、制御回路46’を経由させることなくデータ線駆動回路22に出力する。一方、制御回路46’は、データ線駆動回路22が生成するデータ信号の信号レベルを指定するデータ(以下「駆動条件データ」という)を信号レベルデータに基づいて生成し、この駆動条件データをデータ線駆動回路22に出力する。
【0051】
次に、図9は、本実施形態に係るデータ線駆動回路22の構成を示すブロック図である。この図に示すデータ線駆動回路22のうち図3に示した構成要素と同様の作用を営むものについては共通の符号が付されている。同図に示すように、データ線駆動回路22は基準値生成回路223を有する。この基準値生成回路223は、制御回路46’から供給される駆動条件データに基づいて基準値を生成し、生成した基準値を各電流生成回路221に指示する回路である。この基準値は、各電流生成回路がデータ信号を生成するときにその信号レベル(すなわち電流値)の基準となる電流値である。したがって、データ線駆動回路22から出力されるデータ信号は、駆動条件データに応じた電流値となる。例えば、第1のフレームと第2のフレームとにおいて基準値生成回路223に供給される駆動条件データが異なれば、仮に双方のフレームで同一の画素データが画素回路16に与えられたとしても、各フレームにおいて当該画素回路16に供給されるデータ信号の電流値は異なる。
【0052】
通常表示モードが選択されている場合、制御回路46’は、各画素回路16に対して第1次のデータ信号が供給されるようにデータ線駆動回路22を制御する。すなわち、通常表示モードにおいては、図6(b)に示したように、予定信号レベルに拘わらずデータ信号が画素データに対応した電流値となるように駆動条件データが生成されてデータ線駆動回路22に供給される。これに対し、輝度制御モードが選択されている場合、制御回路46’は、各画素回路16に対して第2次のデータ信号が供給されるようにデータ線駆動回路22を制御する。すなわち、輝度制御モードにおいては、図6(d)に示したように、予定信号レベルが大きいほどデータ信号の電流最大値が小さくなるように(換言すれば、予定信号レベルが小さいほど電流最大値が大きくなるように)駆動条件データが生成されてデータ線駆動回路22に供給される。
【0053】
次に、本実施形態の動作を説明する。ただし、上記第1実施形態と共通する動作については説明を適宜に省略する。
【0054】
まず、通常表示モードが選択されている場合、制御回路46’は、第1次のデータ信号の出力を指示する駆動条件データを生成してデータ線駆動回路22に出力する。この結果、各画素回路16にはデータ線駆動回路22から第1次のデータ信号が供給され、図6(c)に示したように、電気光学パネル10において1画面分の表示に消費される電力は予定信号レベルに応じた電力となる。
【0055】
動作モードが輝度制御モードに切り換えられると、上記第1実施形態と同様に、信号レベル算定回路453による信号レベルデータの出力が開始される。制御回路46’は、比較回路457から供給される比較結果データの示す数値がしきい値よりも大きい場合に限って、信号レベル算定回路453から供給される新たな信号レベルデータによってレジスタを更新する。さらに、この更新を行なうたびに、制御回路46’は、更新後の信号レベルデータに応じた駆動条件データを生成してデータ線駆動回路22に出力する。一方、データ線駆動回路22の基準値生成回路223は、電流生成回路221に指示する基準値を制御回路46’から供給された駆動条件データに応じた数値に変更する。この結果、各画素回路16にはデータ線駆動回路22から第2次のデータ信号が供給され、図6(e)に示したように、各フレームの表示に要する電力は、予定信号レベルに拘わらず(すなわち画素データの内容に拘わらず)ほぼ一定となる。
【0056】
このように、本実施形態においては、輝度制御モードが選択されている場合に、予定信号レベルが大きいほど各画素データに応じて画素回路16に供給される電流値が小さくなるように第2次のデータ信号の信号レベルが選定される。したがって、上記第1実施形態と同様に、画素データの内容に応じた消費電力の変動が抑えられる。
【0057】
さらに、本実施形態においては、電流生成回路221によるデータ信号生成の基準値が駆動条件データによって指定されるから、画素データについては何ら処理を施す必要はない。したがって、上記第1実施形態に係る構成と比較して、画素データの変換のための構成(例えば変換テーブルを記憶する記憶装置461)を不要とすることができる。
【0058】
<C:変形例>
以上に説明した各形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で種々の変形を加えることができる。具体的な変形の例としては以下のようなものが考えられる。
【0059】
<C−1:変形例1>
上記各実施形態においては、画素データを変換テーブルにより変換する構成と駆動条件データによりデータ信号の基準値を調整する構成とを例示したが、予定信号レベルに応じた電流制御を実現するための構成はこれに限られない。例えば、上記第1実施形態において、メモリ42に格納された画素データのビット列を、予定信号レベルに応じて適宜にシフトして駆動回路20に出力する構成としてもよい。すなわち、メモリ42に格納された画素データが示す所期の電流値よりも小さい電流値を指定するために、その画素データのうち下位の数ビットを切り捨て、これにより得られた画素データを駆動回路20に出力する構成としてもよい。この構成によれば変換テーブルを不要とすることができる。
【0060】
このように、本発明においては、画素データに応じた第1次のデータ信号、および第1次のデータ信号について見積もられた信号レベル(予定信号レベル)に応じた第2次のデータ信号のいずれかが各画素に供給されるように駆動回路が制御される構成であれば足り、この制御を実現するための具体的な構成の如何は不問である。
【0061】
<C−2:変形例2>
上記各実施形態および変形例においては、フレームごとに予定信号レベルの算定が実行される構成を例示したが、これ以外のタイミングで予定信号レベルの算定を行なう構成としてもよい。例えば、算定命令回路451が特定の時間間隔で算定指令を出力する構成とすれば、その時間間隔ごとに予定信号レベルの算定が実行されることとなる。
【0062】
また、画像の内容が顕著に変わったタイミングに合わせて予定信号レベルに応じた制御が実行されることが望ましいという観点からすると、以下の構成を採用してもよい。すなわち、電気光学装置100による表示画像が一連の画像からなる動画である場合、制御回路46(または46’)は、その画像のシーンが変化するタイミングに合わせて、レジスタに格納された信号レベルデータ(すなわち電流値の制御に適用されるべき信号レベルデータ)を更新するようにしてもよい。この場合、動画を構成する複数の画像(静止画)のうちシーンの先頭に相当する画像の画素データに何らかのデータを含ませておき、信号レベル算定回路453が、このデータを検知した場合に限って信号レベルデータを出力する構成とすればよい。
【0063】
さらに、予定信号レベルの算定タイミング(すなわち算定命令回路451による算定命令の出力タイミング)を利用者が適宜に変更できる構成としてもよい。この場合、利用者によって入力装置に与えられた操作をコントローラ41が検知し、この操作に応じたタイミングを算定命令回路451に指示する構成とすればよい。
【0064】
<C−3:変形例3>
上記各実施形態においては、電気光学パネル10に含まれるすべての画素の画素データに基づいて予定信号レベルを特定する構成を例示したが、電気光学パネル10の一部の画素の画素データに基づいて予定信号レベルを特定する構成としてもよい。また、上記各実施形態においては、各画素の画素データの合計値に基づいて予定信号レベルを特定する構成を例示したが、画素データから予定信号レベルを特定するための構成はこれに限られない。例えば、電気光学パネル10に含まれる一部または全部の画素の画素データの平均値を算出し、この平均値を予定信号レベルとして特定してもよい。
【0065】
もっとも、信号レベル算定回路453による予定信号レベルの特定に際して画素データが用いられる必要は必ずしもない。例えば、予定信号レベルを表すデータが画素データとともに上位装置から制御装置40に供給される構成とし、信号レベル算定回路453がこのデータに基づいて予定信号レベルを特定する構成としてもよい。
【0066】
<C−4:変形例4>
本発明は、各画素を複数の色(例えば赤色、緑色および青色)のいずれかに対応させてカラー表示を行なう電気光学装置にも適用することができる。ただし、この種の電気光学装置に本発明を適用する場合には、メモリ42に記憶された画素データのカラーバランス(すなわち各色の輝度の比率)が維持される構成を採用することが望ましい。例えば、上記第1実施形態に示したように変換テーブルによって画素データを変化する構成においては、赤色、緑色および青色にそれぞれ対応する画素データとの組合せに対し、その組合せによるカラーバランスが維持されるように変換後の画素データの組合せが選定されることが望ましい。すなわち、通常表示モードにおいて各画素データに応じて画素に供給されるデータ信号の信号レベルと、輝度制御モードにおいて各画素データに応じて画素に供給されるデータ信号の信号レベルとの差が各色の画素について等しくなるように駆動回路20を制御することが望ましい。
【0067】
<C−5:変形例5>
有機EL素子を電気光学素子として用いた装置以外の電気光学装置にも本発明を適用することができる。すなわち、電気光学素子を備えた装置であれば本発明は適用され得る。この種の電気光学装置としては、蛍光体を電気光学素子として用いたフィールドエミッションディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)を電気光学素子として用いたLEDディスプレイ、ヘリウムやネオンなどの高圧ガスを電気光学素子として用いたプラズマディスプレイパネル(PDP)などがある。
【0068】
このように、本発明に係る電気光学装置は、複数の画素をデータ信号の供給によって駆動する装置であればよく、電気光学素子を電圧の印加により駆動するか電流の供給により駆動するかは不問である。ここで、電気光学素子に電圧を印加して駆動する電圧駆動型の電気光学装置(例えば電気光学素子として液晶を用いた装置)においては、電荷が一定の期間にわたって保持される。これに対し、電気光学素子に電流を流して駆動する電流駆動型の電気光学装置(例えば電気光学素子としてEL素子を用いた装置)においては、このような電荷の保持がなされない。このため、一般的には、電流駆動型の電気光学装置の方が、電圧駆動型の電気光学装置と比較して消費電力が大きく、画素データに応じた消費電力の変動はより深刻である。したがって、本発明は、電流駆動型の電気光学装置に対して特に好適であると言える。
【0069】
<D:電子機器>
次に、本発明に係る電気光学装置を用いた電子機器の例を説明する。
図10は、この電気光学装置を採用したパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。この図において、パーソナルコンピュータ60は、キーボード61を備えた本体部62と、本発明に係る電気光学装置100を採用した表示部63とを備えている。
【0070】
なお、本発明に係る電気光学装置が採用され得る電子機器としては、図10に示したパーソナルコンピュータのほかにも、携帯電話機や、液晶テレビ、ビューファインダ型・モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ディジタルスチルカメラ、プロジェクタなど各種の機器が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示す図である。
【図2】 走査線駆動回路の動作を説明するための図である。
【図3】 データ線駆動回路の構成を示す図である。
【図4】 画素回路の構成を示す図である。
【図5】 制御装置の構成を示す図である。
【図6】 電気光学装置の動作を説明するための図である。
【図7】 変換テーブルの内容を示す図である。
【図8】 本発明の第2実施形態に係る制御装置の構成を示す図である。
【図9】 データ線駆動回路の構成を示す図である。
【図10】 本発明に係る電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
100……電気光学装置、10……電気光学パネル、11……走査線、12……データ線、13……発光制御線、14……電源線、16……画素回路(画素)、161,162,163,164……TFT、166……容量素子、168……有機EL素子(電気光学素子)、20……駆動回路、21……走査線駆動回路、22……データ線駆動回路、221……電流生成回路、30……電源回路、40……制御装置、41……コントローラ、42……メモリ、43……動作モード設定回路、45……特定回路、451……算定命令回路、453……信号レベル算定回路、455……メモリ(保持回路)、457……比較回路、46,46’……制御回路、461……記憶装置、60……パーソナルコンピュータ(電子機器)。
Claims (25)
- データ信号の信号レベルに応じた輝度に駆動される電気光学素子を含む画素と、
前記画素に対してデータ信号を出力する駆動回路と、
画素の輝度を指定するための画素データに応じた第1次のデータ信号の信号レベルをフレームごとに見積もる特定回路と、
通常表示モードが選択された場合には、前記第1次のデータ信号が前記画素に供給されるように前記駆動回路を制御する一方、輝度制御モードが選択された場合には、前記特定回路で見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が低いほど、前記画素の輝度を大きく引き上げ、当該見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が高いほど、前記画素の輝度を大きく引き下げた第2次のデータ信号が前記画素に供給されるように、前記駆動回路を制御する制御回路と
を具備する電気光学装置。 - 前記制御回路は、前記輝度制御モードが選択された場合には、一のフレームと他のフレームの前記画素で消費される電力の差が前記通常表示モードのときよりも小さくなるように、一のフレームについて前記画素の輝度を引き上げ、他のフレームについて前記画素の輝度を引き下げた第2次のデータ信号が前記画素に供給されるように、前記駆動回路を制御する
請求項1に記載の電気光学装置。 - 前記特定回路は、前記画素データに対して所定の処理を行なうことによって前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定する信号レベル算定回路を具備し、
前記信号レベル算定回路は、複数の前記画素の各々について前記画素データが示す数値を合計し、この合計値に基づいて前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定する
請求項1または2に記載の電気光学装置。 - 前記特定回路は、前記画素データに対して所定の処理を行なうことによって前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定する信号レベル算定回路を具備し、
前記信号レベル算定回路は、複数の前記画素の各々について前記画素データが示す数値の平均値を算定し、この平均値に基づいて前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定する
請求項1または2に記載の電気光学装置。 - 前記信号レベル算定回路は、1画面分の画素の画素データに基づいて前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定する
請求項3または4に記載の電気光学装置。 - 前記信号レベル算定回路は、1画面分の画素のうち一部の画素の画素データに基づいて前記第1次のデータ信号の信号レベルを算定する
請求項3または4に記載の電気光学装置。 - 前記特定回路は、前記信号レベル算定回路によって算定された前記第1次のデータ信号の信号レベルを表す信号レベルデータを保持する保持回路を備える
請求項3から6のいずれかに記載の電気光学装置。 - 前記保持回路は、前記信号レベル算定回路が過去に算定した信号レベルを表す少なくともひとつの信号レベルデータを保持する
請求項7に記載の電気光学装置。 - 前記特定回路は、前記信号レベル算定回路によって新たに算定された前記第1次のデータ信号の信号レベルと、前記保持回路に保持された信号レベルデータが示す信号レベルとを比較し、この比較結果を表す比較結果データを出力する比較回路を備え、
前記制御回路は、前記比較回路から出力された比較結果データが特定の条件を満たす場合に限り、前記新たに算定された第1次のデータ信号の信号レベルに基づいて第2次のデータ信号の信号レベルを特定する
請求項7または8に記載の電気光学装置。 - 前記特定回路は、前記信号レベル算定回路による信号レベルの算定動作の実行タイミングを制御する算定命令回路を備える
請求項3から9のいずれかに記載の電気光学装置。 - 前記算定命令回路は、1画面分の画素データの転送に同期して前記算定動作が実行されるように前記信号レベル算定回路を制御する
請求項10に記載の電気光学装置。 - 前記算定命令回路は、特定の時間間隔で前記算定動作が実行されるように前記信号レベル算定回路を制御する
請求項10に記載の電気光学装置。 - 前記制御回路は、前記第2次のデータ信号が前記画素に供給されるべき場合に、前記画素データに基づいて特定の処理を実行することによって前記第2次のデータ信号に対応する画素データを生成し、この画素データを前記駆動回路に出力する
請求項3から12のいずれかに記載の電気光学装置。 - 前記特定の処理は、前記第1次のデータ信号に対応する画素データと前記第2次のデータ信号に対応する画素データとが予め対応付けられた変換テーブルに基づいて、前記第2次のデータ信号に対応する画素データを生成する処理である
請求項13に記載の電気光学装置。 - 前記変換テーブルは、前記第1次のデータ信号の信号レベルごとに設けられ、
前記特定の処理は、前記信号レベル算定回路によって算定された信号レベルに応じた変換テーブルに基づいて、前記第2次のデータ信号に対応する画素データを生成する処理である
請求項14に記載の電気光学装置。 - 前記特定の処理は、前記信号レベル算定回路により算定された信号レベルに応じた演算を前記第1次のデータ信号に対応する画素データに施すことによって前記第2次のデータ信号に対応する画素データを生成する処理である
請求項13に記載の電気光学装置。 - 前記制御回路は、前記駆動回路によって生成されるデータ信号の信号レベルを指定する駆動条件データを生成して前記駆動回路に出力し、
前記駆動回路は、前記画素データに応じたデータ信号を前記駆動条件データに基づいて生成して前記画素に出力する
請求項13に記載の電気光学装置。 - 前記駆動条件データは、前記駆動回路によって生成されるデータ信号の信号レベルの基準値を指定するデータである
請求項17に記載の電気光学装置。 - 前記基準値は、前記データ信号の電流値の基準となる値である
請求項18に記載の電気光学装置。 - 前記基準値は、前記データ信号の電圧値の基準となる値である
請求項18に記載の電気光学装置。 - 前記電気光学素子はEL素子である
請求項1から20のいずれかに記載の電気光学装置。 - 前記EL素子は有機EL素子である
請求項21に記載の電気光学装置。 - 請求項1から22のいずれかに記載の電気光学装置を備える電子機器。
- データ信号の信号レベルに応じた輝度に駆動される電気光学素子を含む画素と、前記画素に対してデータ信号を出力する駆動回路とを備える電気光学装置を制御する装置であって、
画素の輝度を指定するための画素データに応じた第1次のデータ信号の信号レベルをフレームごとに見積もる特定回路と、
通常表示モードが選択された場合には、前記第1次のデータ信号が前記画素に供給されるように前記駆動回路を制御する一方、輝度制御モードが選択された場合には、前記特定回路で見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が低いほど、前記画素の輝度を大きく引き上げ、当該見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が高いほど、前記画素の輝度を大きく引き下げた第2次のデータ信号が前記画素に供給されるように、前記駆動回路を制御する制御回路と
を具備する電気光学装置の制御装置。 - データ信号の信号レベルに応じた輝度に駆動される電気光学素子を含む画素と、前記画素に対してデータ信号を出力する駆動回路とを備える電気光学装置を制御する方法であって、
画素の輝度を指定するための画素データに応じた第1次のデータ信号の信号レベルをフレームごとに見積もり、
通常表示モードが選択された場合には、前記第1次のデータ信号が前記画素に供給されるように前記駆動回路を制御する一方、輝度制御モードが選択された場合には、見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が低いほど、前記画素の輝度を大きく引き上げ、当該見積もられた前記第1次のデータ信号の信号レベルが表す輝度が高いほど、前記画素の輝度を大きく引き下げた第2次のデータ信号が前記画素に供給されるように、前記駆動回路を制御する
を具備する電気光学装置の制御方法。
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