JP4506103B2 - セラミックグリーンシートの製造方法及び製造装置 - Google Patents

セラミックグリーンシートの製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックグリーンシートの製造方法及び製造装置に関し、より詳細には、搬送されているキャリアフィルム上に、塗工ヘッドを用いてセラミックグリーンシートを所定の厚みに形成するセラミックグリーンシートの製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、積層セラミック電子部品などのセラミック電子部品の製造に際しては、まずセラミックグリーンシートが用意される。近年、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品では、小型化及び大容量化などを果たすために、より薄いセラミックグリーンシートが求められている。また、積層セラミック電子部品の多用化に伴って、セラミックグリーンシートの膜厚の種類も増加している。
【0003】
そこで、膜厚が薄かったり、様々な厚みのセラミックグリーンシートを高精度に製造することが求められている。
下記の特許文献1には、均一な厚みのセラミックグリーンシートを製造する方法の一例が開示されている。図4は、特許文献1に記載のセラミックグリーンシートの製造装置を示す概略構成図である。セラミックグリーンシート製造装置101では、セラミックスラリー102がスラリーコーター103に供給される。なお、セラミックスラリー102をスラリーコーター103に供給する流路には、ポンプ104、流量制御手段105及び流量計106が接続されている。
【0004】
また、スラリーコーター103には、キャリアフィルム107がロール108から供給され、セラミックスラリー102が、スラリーコーター103において、キャリアフィルム107上に塗工される。塗工によりキャリアフィルム107上にセラミックグリーンシートが形成される。該セラミックグリーンシートがキャリアフィルム107と共にロール109に巻き取られる。なお、セラミックグリーンシートの厚みは膜厚計110により測定される。
【0005】
そして、セラミックグリーンシート製造装置101では、制御手段111により、流量計106で測定されたスラリー102の流量データと、膜厚計110で測定されたセラミックグリーンシートの現厚みに関するデータとに基づいて、適正流量データが演算され、演算された流量に基づいて、流量制御手段105により流量が設定される。このようにして、所望の厚みのセラミックグリーンシートが確実に得られるとされている。
【0006】
他方、下記の特許文献2には、図5に示すセラミックグリーンシート製造装置が開示されている。セラミックグリーンシート製造装置201では、セラミックスラリー202が、供給ボックス203に注入される。供給ボックス203から、含水性シート204上にセラミックスラリー202が供給されて、セラミックグリーンシート205が形成される。ここでは、供給ボックス203に供給されるスラリー202の濃度と、得られたセラミックグリーンシート205の単位面積あたりの脱水量と、脱水後のセラミックグリーンシートの含水率とが計測され、計測された各値に基づいて、得られたセラミックグリーンシートの坪量が求められる。次に、坪量が所望の範囲外であるセラミックグリーンシートが除かれて、所望の坪量範囲のセラミックグリーンシートを得ることができるとされている。セラミックスラリー中の固形分の濃度が変動した場合には、セラミックグリーンシートの厚みが均一であっても、坪量は均一にならないため、プレス等の後加工を経た後に、比重の均一な材料を得ることができないことに鑑み、セラミックグリーンシートの坪量によりセラミックグリーンシートの良・不良が選別されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−77627号公報
【特許文献2】
特開2002−225015号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法では、セラミックスラリー102の流量と、得られたセラミックグリーンシートの膜厚との関係に基づき、セラミックグリーンシートが所望の膜厚となるようにセラミックスラリー102の流量が制御されている。すなわち、得られたセラミックグリーンシートの膜厚に基づいてフィードバック制御が行われている。従って、制御が果たされるまでのセラミックグリーンシートが不良品とならざるを得なかった。よって、セラミックグリーンシートに無駄が生じるという問題があった。
【0009】
近年、生産性を高めるために、セラミックグリーンシートの成形の高速化が進んでいる。このように状況の下では、特許文献1に記載の方法では、制御が果たされるまでの、不良品となり得るセラミックグリーンシートの量が多くならざるを得なかった。
【0010】
他方、特許文献2に記載の方法は、厚みではなくセラミックグリーンシートの坪量を測定することにより、後加工工程において均一な材料を得ることを可能とするセラミックグリーンシートの製造方法が開示されている。ここでは、セラミックスラリーの濃度を用いてセラミックグリーンシートの坪量は求められているが、特許文献2に記載の方法では、得られたセラミックグリーンシートの坪量を演算し、該坪量が所望の範囲外である場合に除去し、良品のセラミックグリーンシートを得るものに過ぎなかった。
【0011】
従って、セラミックスラリーの濃度以外の性状が変化した場合、あるいはセラミックスラリーのロットが変動した場合、均一なセラミックグリーンシートを得ることが困難であった。
【0012】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、セラミックスラリーのロットが変動したり、セラミックスラリーの性状が変化したりした場合であっても、所望とする膜厚のセラミックグリーンシートを安定に得ることができ、さらにセラミックグリーンシートの無駄が生じ難く、セラミックグリーンシートの生産性を高めることを可能とするセラミックグリーンシートの製造方法及び製造装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法は、搬送されているキャリアフィルム上にセラミックスラリーを塗布し、セラミックグリーンシートを形成するセラミックグリーンシートの製造方法であって、セラミックスラリーをセラミックスラリー搬送装置により塗工ヘッドに搬送する工程と、セラミックスラリーの粘度及び比重、セラミックスラリー塗工条件、並びに得られるセラミックグリーンシートの膜厚の予め求められた関係式に基づき、用意されたセラミックスラリーの粘度及び比重に応じてセラミックグリーンシートが所望とする膜厚となるように前記セラミックスラリー塗工条件を設定する工程と、設定されたセラミックスラリー塗工条件に従ってセラミックスラリーを塗工ヘッドによりキャリアフィルム上に塗工する工程と、前記塗工ヘッドに現に搬送されているセラミックスラリーの比重及び粘度を測定する工程と、前記測定工程により得られたセラミックスラリーの比重及び粘度の測定値と、前記関係式とに基づき、セラミックグリーンシートが所望とする膜厚となるように前記セラミックスラリー塗工条件を補正する工程とを備え、前記セラミックスラリー搬送装置としてモーターにより回転駆動される部分を有する回転式計量ポンプが用いられ、前記セラミックスラリー搬送装置による搬送速度として、前記モーターの回転速度が用いられ、前記塗工ヘッドがオフロールダイコーターであり、前記塗工条件が、前記セラミックスラリー搬送装置によるセラミックスラリーの搬送速度としての前記モーターの回転速度及び塗工ヘッドに接触しているキャリアフィルムのテンションの大きさであり、前記関係式が下記の式(1)のポンプ回転速度計算式及び下記の式(2)のテンション計算式であることを特徴とする。
Z=(AX+B)Y …式(1)
式(1)において、Xはスラリーの比重、Yは目的とするセラミックグリーンシートの厚み、Zはポンプの回転速度、A,Bはセラミックスラリー定数である。なお、セラミックスラリーの定数A,Bは、使用するセラミックスラリーごとに実験的に求められる。
また、テンション計算式は、
T=(αY+βY+γ)N …式(2)
である。
式(2)において、Yは目的とするセラミックグリーンシートの厚み、Tはテンション、Nはセラミックスラリーの粘度であり、α,β及びγはセラミックスラリーの定数である。定数α,β及びγは、セラミックスラリーごとに実験的に求められる。
【0015】
本発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法のさらに別の特定の局面では、キャリアフィルム上に形成されたセラミックグリーンシートの膜厚を測定する工程と、該膜厚の測定値に基づき、前記セラミックスラリー塗工条件が補正される工程とがさらに備えられる。
【0019】
本発明に係るセラミックグリーンシートの製造装置は、搬送されているキャリアフィルム上に塗工ヘッドを用いてセラミックスラリーを塗工し、セラミックグリーンシートを形成するためのセラミックグリーンシートの製造装置であって、長尺状のキャリアフィルムを搬送するキャリアフィルム搬送装置と、搬送されているキャリアフィルムにセラミックスラリーを塗工するための塗工ヘッドと、前記塗工ヘッドにセラミックスラリーを供給するセラミックスラリー供給流路と、前記セラミックスラリー供給流路に接続されており、かつモーターにより回転駆動される部分を有する回転式計量ポンプからなり、セラミックスラリーを搬送するためのセラミックスラリー搬送装置と、セラミックスラリーの比重及び粘度と、セラミックスラリーの前記塗工ヘッドにおける塗工条件と、前記セラミックスラリーから得られたセラミックグリーンシートの膜厚との関係式が予め記憶されており、使用されるセラミックスラリーの比重及び粘度と、目的とするセラミックグリーンシートの膜厚とに基づいて前記関係式から前記塗工ヘッドにおける塗工条件を求め、該塗工条件に応じてセラミックスラリーを塗工するように制御する制御装置とを備え、前記セラミックスラリー流路に設けられた比重計と、前記セラミックスラリー流路に設けられており、セラミックスラリーの粘度を検出する粘度計とをさらに備え、前記制御装置は、セラミックスラリー流路において現に搬送されているセラミックスラリーの比重及び粘度と前記関係式とに基づいて前記塗工条件が補正されるように構成されており、前記塗工ヘッドがオフロールダイコーターであり、前記セラミックスラリー搬送装置がモーターの回転により駆動されるポンプであり、前記塗工条件が、塗工部分におけるキャリアフィルムのテンションの大きさと、前記セラミックスラリー搬送速度としての前記モーターの回転速度であり、前記関係式が下記の式(1)のポンプ回転速度計算式及び下記の式(2)のテンション計算式であることを特徴とする。
Z=(AX+B)Y …式(1)
式(1)において、Xはスラリーの比重、Yは目的とするセラミックグリーンシートの厚み、Zはポンプの回転速度、A,Bはセラミックスラリー定数である。なお、セラミックスラリーの定数A,Bは、使用するセラミックスラリーごとに実験的に求められる。
また、テンション計算式は、
T=(αY+βY+γ)N …式(2)
である。
式(2)において、Yは目的とするセラミックグリーンシートの厚み、Tはテンション、Nはセラミックスラリーの粘度であり、α,β及びγはセラミックスラリーの定数である。定数α,β及びγは、セラミックスラリーごとに実験的に求められる。
【0021】
本発明に係るセラミックグリーンシートの製造装置のさらに他の特定の局面では、得られたセラミックグリーンシートの膜厚を測定する膜厚測定装置がさらに備えられる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るセラミックグリーンシートの製造装置の概略構成図である。
セラミックグリーンシート製造装置1は、セラミックスラリーが収納されているスラリータンク2を有する。スラリータンク2から、セラミックスラリー3がセラミックスラリー流路4を用いて塗工ヘッド5に供給される。このセラミックスラリー流路4において、セラミックスラリー3を搬送するために、セラミックスラリー搬送手段としてモーターを用いたポンプPが流路4に接続されている。
【0026】
また、ポンプPの下流側には、比重計6及び粘度計7がそれぞれ流路4に接続されている。比重計6及び粘度計7は、流路4を流れているセラミックスラリー3、すなわち塗工ヘッド5に供給される直前のセラミックスラリーの比重及び粘度を測定するために設けられている。
【0027】
ポンプP、比重計6及び粘度計7は、制御装置8に接続されている。制御装置8からの信号により、ポンプPのモーターの回転速度、すなわちセラミックスラリー3の搬送速度が設定される。また、制御装置8には、比重計6及び粘度計7で測定されたセラミックスラリー3の比重及び粘度が与えられるように構成されている。
【0028】
他方、制御装置8には、入力装置9が接続されている。入力装置9は、スラリータンク2に収納されたセラミックスラリー3の既知の粘度及び比重を入力するために設けられている。入力された粘度及び比重が、制御装置8に与えられる。
【0029】
他方、セラミックグリーンシート製造装置1は、キャリアフィルム10が巻回された繰出しロール11を有する。キャリアフィルム10は、繰出しロール11から供給され、ロール12〜15を介して巻取りリール17まで搬送される。ロール13,14間において、キャリアフィルム10は塗工ヘッド5に接触され、該塗工ヘッド5から供給されるセラミックスラリーがキャリアフィルム10に塗工される。このようにして、キャリアフィルム10にセラミックスラリーが塗工され、キャリアフィルム上にセラミックグリーンシートが形成される。
【0030】
得られたセラミックグリーンシートは、ロール14,15を経て、前述した巻取りロール17に巻き取られる。また、このようにして得られたセラミックグリーンシートの膜厚を測定するための膜厚計18が、ロール15と巻取りロール17との間に配置されている。膜厚計18は、セラミックグリーンシートの膜厚を測定し得る適宜の装置、例えばレーザー光などを用いた非接触式の光学的測定装置などにより構成され得る。
【0031】
なお、キャリアフィルム10の搬送装置としては、例えば巻取りロール17に接続されたモーターMが用いられている。
図2は、上記塗工ヘッド5が設けられている部分の詳細を示す略図正面断面図である。本実施形態では、塗工ヘッド5は、オフロールダイコーターにより構成されている。塗工ヘッド5の先端には、ギャップ5aが形成されており、ギャップ5aの両側において、傾斜面5b,5cが設けられている。すなわち、ギャップ5aから外側に延び、かつ外側に向かうに連れて塗工ヘッド5の後方に至る傾斜面5b,5cが設けられている。キャリアフィルム10は、傾斜面5b,5cにある大きさのテンションを持って接触されている。このテンションの大きさは、様々な方法で調整することができる。例えば、▲1▼前述したロール13,14の位置を移動する方法、▲2▼塗工ヘッド5の位置を移動する方法、▲3▼塗工ヘッド5の前後にそれぞれモーターに連結された搬送ロールを配置し、前後の搬送ロールの回転速度を異ならせる方法、及び/または▲4▼図1に破線で示すように、テンション調整ロール12aとガイドロール12bとを追加し、テンション調整ロール12aの位置を調整する方法などを挙げることができる。これらのテンション調整方法は、2種以上を併用してもよい。
【0032】
図1の一点鎖線Aは、塗工ヘッド5、ロール13,14を含む塗工部を示す。
この塗工部Aが、制御装置8に接続されている。具体的には、上記ロール13,14及び/または塗工ヘッド5の位置を移動させる移動装置(図示せず)に、制御装置8が接続されており、制御装置8からの信号により、ロール13,14及び/または塗工ヘッド5の位置が移動され、キャリアフィルムの塗工部分におけるテンションの大きさが変更され得るように構成されている。なお、ロール13,14の位置及び塗工ヘッド5の位置を移動させる移動手段については、シリンダー等の任意の駆動装置を用いて構成することができる。
【0033】
また、上記膜厚計18及び巻取りロール17が制御装置8に接続されている。制御装置8に、膜厚計18で測定されたセラミックグリーンシートの膜厚が与えられる。また、巻取りロール17の回転速度、すなわちセラミックグリーンシートの搬送速度が制御装置8に与えられるように構成されている。
【0034】
本実施形態のセラミックグリーンシート1を用いたセラミックグリーンシートの製造方法を説明する。
まず、入力装置9から、スラリータンク2に供給されたセラミックスラリーの既知の比重及び粘度が入力され、制御装置8に与えられる。
【0035】
制御装置8には、予め、セラミックスラリーの粘度及び比重と、セラミックスラリー塗工条件と、得られるセラミックグリーンシートの厚みとの関係式が記憶されている。
【0036】
制御装置8は、上記関係式と、入力装置9から与えられたセラミックスラリーの比重及び粘度と、所望とするセラミックグリーンシートの厚みとに基づいて、セラミックスラリー塗工条件を演算する。このようにして求められたセラミックスラリー塗工条件に基づいて、制御装置8は、ポンプPの回転速度、セラミックスラリー塗工部における塗工ヘッド5及び/またはロール13,14の位置を設定する。このようにして、セラミックスラリー塗工条件が設定され、該セラミックスラリー塗工条件に従って、セラミックスラリー3が塗工ヘッド5に供給されかつセラミックスラリーのキャリアフィルム10への塗工が行われる。従って、本実施形態によれば、セラミックグリーンシートの製造直後から、セラミックグリーンシートを所望の厚みに成形することができる。
【0037】
なお、上記関係式は特に限定されるものではないが、一例を挙げると、以下の式(1)のポンプ回転速度計算式及び式(2)のテンション計算式を挙げることができる。
【0038】
Z=(AX+B)Y …式(1)
式(1)において、Xはスラリーの比重、Yは目的とするセラミックグリーンシートの厚み、Zはポンプの回転速度、A,Bはセラミックスラリー定数である。なお、セラミックスラリーの定数A,Bは、使用するセラミックスラリーごとに実験的に求められる。
【0039】
また、テンション計算式は、
T=(αY2+βY+γ)N …式(2)
である。
【0040】
式(2)において、Yは目的とするセラミックグリーンシートの厚み、Tはテンション、Nはセラミックスラリーの粘度であり、α,β及びγはセラミックスラリーの定数である。定数α,β及びγは、セラミックスラリーごとに実験的に求められる。
【0041】
上記式(1)及び(2)に基づいて、所望とするセラミックグリーンシートの厚み、及びセラミックスラリーの比重及び粘度に基づき、ポンプの回転速度Zと、テンションの大きさTが求められる。このようにして求められたポンプ回転速度Z及びテンションの大きさTに基づき、ポンプP及び塗工部Aが制御装置8により制御される。
【0042】
また、本実施形態では、塗工ヘッド5に供給される直前の現に搬送されている状態のセラミックスラリーの比重及び粘度が比重計6及び粘度計7で測定され、制御装置8に与えられる。制御装置8は、このようにして与えられた比重及び粘度の測定値と、所望とする膜厚とを用い、上述した式(1)及び(2)に基づいて、ポンプPの回転速度Z及びテンションの大きさTを制御する。すなわち、塗工ヘッド5に現に供給される直前のセラミックスラリーの比重及び粘度に基づいて、塗工条件が補正される。従って、セラミックスラリーの性状が経時により変化した場合であっても、高精度にセラミックグリーンシートの膜厚を所望とする値とすることができる。
【0043】
さらに、本発明では、得られたセラミックグリーンシートの膜厚が膜厚計18により測定され、制御装置8に与えられる。制御装置8は、得られたセラミックグリーンシートの膜厚の値が、所望とする膜厚の範囲がずれている場合には、該膜厚差を解消するように、塗工条件を補正するように制御する。従って、フィードバック制御によっても、得られるセラミックグリーンシートの膜厚が均一に保たれ得る。
【0044】
よって、本実施形態によれば、スラリータンク2に用意されるセラミックスラリーの比重及び粘度に基づいて、セラミックグリーンシート作製直後から所望とする膜厚のセラミックグリーンシートを得ることができるだけでなく、比重計6及び粘度計7から与えられるセラミックスラリーの比重及び粘度の測定値に基づいて塗工条件が補正され、さらに得られたセラミックグリーンシートの膜厚値に基づいて塗工条件が補正されるため、セラミックグリーンシートを製造直後から製造終了時まで高精度に均一な厚みに形成することが可能となる。
【0046】
また、上記実施形態では、膜厚計18を用い、上記フィードバック制御による補正が行われていたが、膜厚計18を必ずしも用いずともよい。すなわち、上述したセラミックスラリーの比重及び粘度に基づいてセラミックスラリー塗工条件を設定し、かつ現に供給されているセラミックスラリーの比重及び念とに基づいて補正を行ってもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態において、膜厚計18を用いた補正、並びに比重計6及び粘度計7から得られた測定値に基づく補正の双方を行わずともよい。すなわち、スラリータンク2に用意されるセラミックスラリー3の比重及び粘度と、所望とする膜厚の値と、上記関係式とに基づいて、セラミックグリーンシートの成形を行ってもよい。
【0048】
もっとも、好ましくは、上記実施形態のように、入力装置9から入力されたセラミックスラリーの比重及び粘度に基づく塗工条件の設定と、上述した粘度計7及び比重計6による測定値による制御と、膜厚計18による膜厚測定値とに基づく制御とを全て組み合わせることが望ましく、それによって均一な膜厚のセラミックグリーンシートをより確実かつ安定に得ることができる。
【0051】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るセラミックグリーンシートの製造方法によれば、セラミックスラリーの粘度及び比重と、セラミックスラリー塗工条件と、目的とするセラミックグリーンシートの膜厚とについて予め求められた関係式と、用意されるセラミックスラリーの粘度及び比重と、セラミックグリーンシートの所望とする膜厚とに基づいて、セラミックスラリー塗工条件が設定され、該設定されたセラミックスラリー塗工条件に従ってセラミックスラリーが塗工ヘッドによりキャリアフィルム上に塗工される。従って、セラミックグリーンシートの製造直後から、所望とする膜厚のセラミックグリーンシートを安定に形成することができる。よって、セラミックグリーンシートの無駄をなくすることができ、セラミックグリーンシートの生産性を高めることができるる。また、セラミックグリーンシート成形の高速化を図った場合でも、不良品となるセラミックグリーンシートを著しく少なくすることが可能となる。
【0052】
本発明に係る製造方法及び製造装置において、塗工ヘッドに現に搬送されているセラミックスラリーの比重及び粘度が測定され、比重及び粘度の該測定値と、上述した関係式とに基づいて、セラミックグリーンシートが所望とする膜厚となるようにセラミックスラリー塗工条件が補正される場合には、セラミックグリーンシートの膜厚の精度をより一層高めることができる。
【0053】
キャリアフィルム上に形成されたセラミックグリーンシートの膜厚を測定し、膜厚の測定値に基づいて塗工条件が補正される場合には、フィードバック制御をも利用することにより、より一層高精度に所望とする膜厚のセラミックグリーンシートを得ることができる。
【0054】
塗工ヘッドとしてオフロールダイコーターを用いた場合には、セラミックスラリー搬送装置によるセラミックスラリーの搬送速度及び塗工ヘッドに接触しているキャリアフィルムのテンションの大きさを適宜塗工条件とすることにより、本発明に従って製造直後から所望とする膜厚のセラミックグリーンシートを得ることができる。
【0056】
セラミックスラリー搬送装置として、モーターにより回転駆動される部分を有する回転式計量ポンプが用いられる場合には、セラミックスラリーの搬送速度としてモーターの回転速度を用いればよい。
【0057】
本発明に係るセラミックグリーンシートの製造装置では、セラミックスラリーの比重及び粘度と、セラミックスラリーの塗工ヘッドにおける塗工条件と、目的とするセラミックグリーンシートの膜厚との関係式が制御装置において予め記憶されており、使用されるセラミックスラリーの比重及び粘度と、目的とするセラミックグリーンシートの膜厚とを入力するだけで、製造直後から、上記関係式から求められた塗工条件に従ってキャリアフィルムへのセラミックスラリーの塗工が行われる。従って、製造直後から目的とするセラミックグリーンシートを形成することができ、セラミックグリーンシートの不良部分を著しく少なくすることができる。
【0058】
本発明に係る製造装置において、セラミックスラリー流路に比重計と粘度計とが設けられている場合には、比重計及び粘度計において測定された、塗工ヘッドに供給される直前のセラミックスラリーの比重及び粘度に基づいてかつ上記関係式に基づいて塗工条件が補正されるため、より一層目的とする膜厚のセラミックグリーンシートを高精度に得ることができる。
【0059】
得られたセラミックグリーンシートの膜厚を測定する膜厚測定装置を備える場合には、膜厚測定装置で得られたセラミックグリーンシートの膜厚に基づいて、フィードバック制御により塗工条件を補正することができるため、より一層所望とする膜厚のセラミックグリーンシートを高精度に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るセラミックグリーンシート製造装置を説明するための概略構成図。
【図2】 図1に示した実施形態で用いられる塗工ヘッドを説明するための略図的部分切欠正面断面図。
【図3】 従来のセラミックグリーンシートの製造方法の一例を示す概略構成図。
【図4】 従来のセラミックグリーンシートの製造方法の他の例を示す概略構成図。
【符号の説明】
1…セラミックグリーンシートの製造装置
2…スラリータンク
3…セラミックスラリー
4…スラリー流路
5a…ギャップ
5b,5c…傾斜面
6…比重計
7…粘度計
8…制御装置
9…入力装置
10…キャリアフィルム
11…繰出しロール
12〜15…ガイドロール
12a…テンション調整ロール
12b…ガイドロール
17…巻取りリール
18…膜厚計
25…塗工ヘッド
25a…ギャップ
25b…接触面
26…ロール
P…ポンプ

Claims (4)

  1. 搬送されているキャリアフィルム上にセラミックスラリーを塗布し、セラミックグリーンシートを形成するセラミックグリーンシートの製造方法であって、
    セラミックスラリーをセラミックスラリー搬送装置により塗工ヘッドに搬送する工程と、
    セラミックスラリーの粘度及び比重、セラミックスラリー塗工条件、並びに得られるセラミックグリーンシートの膜厚の予め求められた関係式に基づき、用意されたセラミックスラリーの粘度及び比重に応じてセラミックグリーンシートが所望とする膜厚となるように前記セラミックスラリー塗工条件を設定する工程と、
    設定されたセラミックスラリー塗工条件に従ってセラミックスラリーを塗工ヘッドによりキャリアフィルム上に塗工する工程と、
    前記塗工ヘッドに現に搬送されているセラミックスラリーの比重及び粘度を測定する工程と、
    前記測定工程により得られたセラミックスラリーの比重及び粘度の測定値と、前記関係式とに基づき、セラミックグリーンシートが所望とする膜厚となるように前記セラミックスラリー塗工条件を補正する工程とを備え、
    前記セラミックスラリー搬送装置としてモーターにより回転駆動される部分を有する回転式計量ポンプが用いられ、前記セラミックスラリー搬送装置による搬送速度として、前記モーターの回転速度が用いられ、前記塗工ヘッドがオフロールダイコーターであり、前記塗工条件が、前記セラミックスラリー搬送装置によるセラミックスラリーの搬送速度としての前記モーターの回転速度及び塗工ヘッドに接触しているキャリアフィルムのテンションの大きさであり、前記関係式が下記の式(1)のポンプ回転速度計算式及び下記の式(2)のテンション計算式である、セラミックグリーンシートの製造方法。
    Z=(AX+B)Y …式(1)
    式(1)において、Xはスラリーの比重、Yは目的とするセラミックグリーンシートの厚み、Zはポンプの回転速度、A,Bはセラミックスラリー定数である。なお、セラミックスラリーの定数A,Bは、使用するセラミックスラリーごとに実験的に求められる。
    また、テンション計算式は、
    T=(αY+βY+γ)N …式(2)
    である。
    式(2)において、Yは目的とするセラミックグリーンシートの厚み、Tはテンション、Nはセラミックスラリーの粘度であり、α,β及びγはセラミックスラリーの定数である。定数α,β及びγは、セラミックスラリーごとに実験的に求められる。
  2. キャリアフィルム上に形成されたセラミックグリーンシートの膜厚を測定する工程と、該膜厚の測定値に基づき、前記セラミックスラリー塗工条件が補正される工程とをさらに備える、請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
  3. 搬送されているキャリアフィルム上に塗工ヘッドを用いてセラミックスラリーを塗工し、セラミックグリーンシートを形成するためのセラミックグリーンシートの製造装置であって、
    長尺状のキャリアフィルムを搬送するキャリアフィルム搬送装置と、
    搬送されているキャリアフィルムにセラミックスラリーを塗工するための塗工ヘッドと、
    前記塗工ヘッドにセラミックスラリーを供給するセラミックスラリー供給流路と、
    前記セラミックスラリー供給流路に接続されており、かつモーターにより回転駆動される部分を有する回転式計量ポンプからなり、セラミックスラリーを搬送するためのセラミックスラリー搬送装置と、
    セラミックスラリーの比重及び粘度と、セラミックスラリーの前記塗工ヘッドにおける塗工条件と、前記セラミックスラリーから得られたセラミックグリーンシートの膜厚との関係式が予め記憶されており、使用されるセラミックスラリーの比重及び粘度と、目的とするセラミックグリーンシートの膜厚とに基づいて前記関係式から前記塗工ヘッドにおける塗工条件を求め、該塗工条件に応じてセラミックスラリーを塗工するように制御する制御装置とを備え、
    前記セラミックスラリー流路に設けられた比重計と、前記セラミックスラリー流路に設けられており、セラミックスラリーの粘度を検出する粘度計とをさらに備え、
    前記制御装置は、セラミックスラリー流路において現に搬送されているセラミックスラリーの比重及び粘度と前記関係式とに基づいて前記塗工条件が補正されるように構成されており、
    前記塗工ヘッドがオフロールダイコーターであり、前記セラミックスラリー搬送装置がモーターの回転により駆動されるポンプであり、
    前記塗工条件が、塗工部分におけるキャリアフィルムのテンションの大きさと、前記セラミックスラリー搬送速度としての前記モーターの回転速度であり、前記関係式が下記の式(1)のポンプ回転速度計算式及び下記の式(2)のテンション計算式である、セラミックグリーンシートの製造装置。
    Z=(AX+B)Y …式(1)
    式(1)において、Xはスラリーの比重、Yは目的とするセラミックグリーンシートの厚み、Zはポンプの回転速度、A,Bはセラミックスラリー定数である。なお、セラミックスラリーの定数A,Bは、使用するセラミックスラリーごとに実験的に求められる。
    また、テンション計算式は、
    T=(αY+βY+γ)N …式(2)
    である。
    式(2)において、Yは目的とするセラミックグリーンシートの厚み、Tはテンション、Nはセラミックスラリーの粘度であり、α,β及びγはセラミックスラリーの定数である。定数α,β及びγは、セラミックスラリーごとに実験的に求められる。
  4. 得られたセラミックグリーンシートの膜厚を測定する膜厚測定装置をさらに備える、請求項に記載のセラミックグリーンシートの製造装置。
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