JP4505677B2 - 送信ダイバーシチ装置および送信電力調整方法 - Google Patents

送信ダイバーシチ装置および送信電力調整方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動通信において移動局の受信品質を改善するダイバーシチ装置において、送信側に複数のアンテナを有し、それらから出力される電力を制御することで移動局の受信品質を改善する送信ダイバーシチ装置および送信電力調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話等の移動通信の電波伝搬環境はマルチパス環境となるため、移動局の走行に伴い受信電力は大きく変動する。受信電力変動による通信品質の低下を克服し、移動局の通信品質を改善する方法の一つに受信ダイバーシチがある。受信ダイバーシチは、複数のアンテナで受信した信号を合成することで通信品質の改善を図る方法である。合成の方法により、選択合成、最大比合成等がある。しかしながら、複数のアンテナや受信機を必要とすることから移動局の装置構成の負荷は大きい。これらについては、例えば、奥村善久、進士昌明監修、「移動通信の基礎」、第7章、電子情報通信学会(1986)に詳しく説明されている。
【0003】
一方、移動局のダイバーシチ受信の負荷を軽減する方法として基地局アンテナ切替送信ダイバーシチと呼ばれている方法がある。係る方法は、図5に示すように基地局5−1に複数のアンテナ5−2a、5―2bを設置し、移動局5−6の受信電力の高いアンテナをアンテナ切り替え制御装置5−3でスイッチ5−4を切り替え、そのアンテナから送信機5−5の信号を移動局5−6のアンテナ5−7に送信する方法である。
【0004】
また、送信ダイバーシチの効率を一層高める方法としてIMT2000方式で標準化されているW−CDMA方式の送信ダイバーシチがある。係る方式の基地局の構成を図6に示す。図6は、基地局アンテナ6−4aと6−4bの2本とし、共通制御信号を例に説明する。各アンテナ6−4aと6−4bから送信される信号はSTTDエンコーダ6−3で信号6−11aと信号6−11bに信号変換されていて、送信機6−2から出力される。ここで、信号6−11bは、信号6−11aの共役複素数で表す信号である。係る変換は、Space Time Transmit Diversity(STTD)と呼ばれるコードの変換方法であり、この変換により各アンテナから同時に信号を送信しても移動局でダイバーシチ効果が得られる。この方法は例えば、電子情報通信学会技報SSE99−44,RCS99−68(1997−07)及び電子情報通信学会技報CS2000−7、RCS2000−18(2000−05)に詳しく説明されている。
【0005】
図7は、前記STTD法における基地局アンテナから送信された電波を移動局で受信した場合の受信電力に平均的な差が生じている場合の、移動局の受信電力特性の一例である。基地局アンテナの送信電力を各々P1とP2とし、縦軸に受信電力の累積確率、横軸に通信チャネル受信電力としてP1をとる。図7から明らかなように、例えばP1=PWの点で、基地局アンテナの送信電力P1とP2が等しい時の受信電力の累積確率K2と、基地局アンテナの送信電力P1とP2に差がある時の受信電力の累積確率K1を比べる。基地局アンテナの送信電力の差が大きくなる程、累積確率は大きくなり、移動局の受信電力の改善効果は小さくなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記の基地局アンテナ切替送信ダイバーシチでは、移動局の受信電力の高いアンテナを基地局で推定するか、その情報を移動局から得る必要がある。
【0007】
また、基地局アンテナの送信電力が異なっている場合には、各アンテナから送信された信号の移動局における受信電力に平均的な差が生じる。
【0008】
更にまた、STTDによる方法では、移動局が平均的に受信電力差がある信号を受信した場合には、基地局の各アンテナの送信電力が等しい場合に比べて送信ダイバーシチによる受信特性の改善効果は小さくなる。前記したように図7より、基地局アンテナの送信電力差が大きくなる程、移動局の受信電力の改善効果が小さくなり問題であった。
【0009】
前記何れの従来例においても、基地局アンテナに送信電力の差がある場合には送信電力を調整する手段を具備した例はあるが、その何れも各アンテナ相互間の調整はせずに基地局の送信電力を調整する方式であった。係る方式の為に、基地局アンテナの送信電力差を減少することが難しく、移動局の受信電力の改善効果は少なかった。
【0010】
本発明は、前記問題点を解決し、送信ダイバーシチに用いる基地局アンテナの送信電力が大きく異なる場合においても、各基地局アンテナの送信電力が等しい場合と同等の受信電力の改善効果が得られる送信ダイバーシチ装置および送信電力調整方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために請求項1記載の送信ダイバーシチ装置は、複数のアンテナを有し、該複数のアンテナから同一の信号の位相を換えて同時に送信する基地局と、該基地局から送信される信号を受信する1つ以上のアンテナを有する受信側である移動局との間で送信電力を調整する送信ダイバーシチ方式の基地局において、
前記基地局は、移動局におけるアンテナ毎の受信電力の平均値が異なっている場合に前記基地局における複数のアンテナの何れかのアンテナから送信される送信電力を前記移動局の平均受信電力が等しくなるように調整する平均受信電力制御装置と、送信ダイバーシチを行う前記基地局の複数のアンテナにより前記移動局からの受信電力を受信して、前記移動局で生じた前記各アンテナの受信電力の差を求める手段と、前記各アンテナの受信電力の差又は比を複数の移動局について統計処理する統計処理手段と、前記統計処理手段によって得られた結果により前記基地局における複数のアンテナの何れかのアンテナから送信される送信電力を前記移動局の平均受信電力が等しくなるように、前記平均受信電力制御装置により設定された制御量を前記基地局のアンテナに与える電力調整手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の統計処理手段は、前記各アンテナの受信電力の比又は差を複数の移動局について保存する手段を具備することを特徴とする
【0016】
請求項記載の送信ダイバーシチ装置では、基地局の複数のアンテナは、少なくとも一つが垂直偏波を送信できるアンテナであり、少なくとも一つが水平偏波を送信できるアンテナである偏波ダイバーシチアンテナを用いることを特徴とする。
【0018】
請求項記載の送信ダイバーシチ送信電力調整方法は、複数のアンテナを有し、該複数のアンテナから同一の信号の位相を換えて同時に送信する基地局と、該基地局から送信される信号を受信する1つ以上のアンテナを有する受信側である移動局との間で送信電力を調整する方法であって、前記基地局は、前記移動局におけるアンテナ毎の受信電力の平均値が異なっている場合に前記基地局における複数のアンテナの何れかのアンテナから送信される送信電力を、前記移動局の平均受信電力が等しくなるように調整するため
送信ダイバーシチを行う前記基地局の複数のアンテナにより前記移動局からの受信電力を受信し、前記移動局で生じた前記各アンテナの受信電力の差を受信電力測定部で測定し、次に、統計処理部において、前記各アンテナの受信電力の差又は比を複数の移動局について統計処理し、前記統計処理によって得られた結果により、前記統計的な受信電力の平均値に基づいて、平均受信電力制御装置が前記移動局への制御量を設定し、前記基地局のアンテナから送信される送信電力を、前記移動局の平均受信電力が等しくなるように、前記制御量を電力調整部を介して調整する、各ステップを有することを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、送信ダイバーシチ装置において、何れも基地局における複数のアンテナの何れかのアンテナから送信される送信電力を前記移動局の受信電力の平均値が等しくなるかお互いに近づくように調整する手段を基地局に具備する。第一の実施例(図1参照)と、第二の実施例(図2参照)は、基地局からのパイロット信号を受信して移動局の平均受信電力の違いを検出し、第三の実施例(図3参照)と、第四の実施例(図4参照)は、移動局からの個別の通信に用いる信号を受信して移動局の平均受信電力の違いを検出する所に違いがある。
【0020】
図1は、本発明に関係する基地局アンテナ切替送信ダイバーシチにおける一実施例である。基地局1−1のアンテナを1−7a、1−7bの2本としている。基地局1−1は、個別通信の送信に用いる送信機1−2と、移動局1−11において基地局アンテナの識別を行うための信号(以下、パイロット信号と呼び、ここではパイロット信号P1とパイロット信号P2と区別して用いることにする)の送信に用いるパイロット信号1送信機1−9a、パイロット信号2送信機1−9bとを具備している。
【0021】
又、基地局1−1の各アンテナ1−7a、1−7bから出力する基地局1−1の送信電力(位相と振幅)を調整する電力調整部1―5a、1−5bと、前記電力調整部1―5a、1−5bの各制御端子C0に接続し、前記個別の通信の送信電力を調整するための制御量を設定する平均受信電力制御装置1―6と、前記基地局1−1のアンテナ1−7a、1−7bを切り替えるスイッチ1−3と、スイッチ1−3を制御するアンテナ切り替え制御装置1−4とが具備されている。アンテナ1−7aはスイッチ1−3の一方の出力端子S1側に、アンテナ1−7bはスイッチの他方の出力端子S2側に電力調整部1―5a、1−5bを介して各々、接続されている。スイッチ1−3の入力端子S0は、送信機1−2の出力端子に接続されている。
【0022】
移動局1−11は、1つ以上のアンテナ1−10(図1では1本のみ図示してある)と、基地局1−1のアンテナ1−7a、1−7bから送出されるパイロット信号P1、P2を受信し、アンテナ1−10を介して接続されているパイロット信号1受信機1−12a、1―12bと、該パイロット信号1受信機1−12a、パイロット信号2受信機1―12bに接続され、前記各パイロット信号受信機の出力の差を検出する差分検出器1−14を具備している。 又、アンテナ1−10には、受信機1−13も接続されていて送信機1−13により個別の通信の受信に用いる。なお、個別の通信は周知の方法で行い、個別の通信に用いる移動局1−11の送信機、基地局1−1の受信機については図示していない。
【0023】
係る構成における動作を説明する。基地局1−1は、基地局1−1と移動局1−11との個別の通信に用いる信号C1を送信機1−2によりスイッチ1−3を介してアンテナ1−7a、1−7bを用いて送信する。アンテナ1−7a、1−7bから送信される電力は、電力調整部1―5a、1−5bにより後述する方法で調整して、アンテナ1−7a、1−7bを切替えて送信する。
【0024】
前記した基地局のスイッチ1−3で選択されたアンテナにより送信した個別の通信(個別チャネル)に用いる信号C1は、移動局1−11のアンテナ1−10で受信し、受信機1−13で通信を行う。
【0025】
前記電力調整部1−5a、1−5bへの制御量の設定は以下のようにして行う。基地局1−1は、パイロット信号1送信機1−9a、パイロット信号2送信機1−9bからアンテナ1−7a、1−7bを介してパイロット信号P1、P2とを移動局1−11に送信する。
【0026】
基地局1−1のパイロット信号1送信機1−9a、パイロット信号2送信機1−9bからアンテナ1−7a、1−7bを介して送信されたパイロット信号P1、P2とは、移動局1−11のアンテナ1−10で受信される。パイロット信号P1、P2は、各々パイロット信号1受信機1−12a、パイロット信号2受信機1−12bから差分検出器1−14に伝わり、差分検出器1−14は、パイロット信号P1、P2の出力の差を検出する。係る信号の差は、パイロット信号受信機1−12a、1―12bにメータなどを設けてメータの値を測定するようにしても良い。
【0027】
前記のようにして得たパイロット信号P1、P2の出力の差を基地局1−1の平均受信電力制御装置1−6の図示していない設定機構により電力調整部1−5a、1−5bに設定する制御量を設定する。
【0028】
即ち、平均受信電力制御装置1−6は、前記制御量に基づいて送信電力を調整する電力調整部1−5a、1−5bの制御量を設定する機能を有する。即ち、パイロット信号P1、P2の出力の差と、どちらのパイロット信号の強度が大であるかを図示していない設定機構により平均受信電力制御装置1−6に入力する。平均受信電力制御装置1−6は、前記移動局1−11の受信電力が低い側のアンテナに対して送信出力を増加するように電力調整部1−5a、1−5bの制御量を設定する。電力調整部1−5a、1−5bは、前記のようにして設定された制御量によって周知の方法で位相と振幅を増幅又は減少し、移動局1−11の受信電力の平均値が等しくなるか、近づくように基地局1−1から送信される電力を制御する。
【0029】
なお、平均受信電力制御装置1−6の前記設定機構は、パイロット信号P1、P2の出力の差と、どちらのパイロット信号の強度が大であるかを設定する以外に、パイロット信号P1、P2の出力を直接入力し、係る入力値により前記移動局1−11の受信電力が低い側のアンテナに対して送信出力を増加するように電力調整部1−5a、1−5bの制御量を設定するようにしても良い。
【0030】
又、図1においては、電力調整部1−5a、1−5bはスイッチ1−3の出力端子S1、S2に各々設けてあるが、何れか一方にしても良い。係る場合において、平均受信電力の小さい側のアンテナに前記電力調整部が設けられていない場合には、受信電力の大きい側のアンテナに設けられている前記電力調整部からの出力を減少し、送受信機1−2の送信出力を増加するようにする。係る増加量の調整は、移動局1−11の受信機1−13の受信レベルを図示していない測定機などで測定し、送信機1−2の送信出力を増加するようにしても良い。
【0031】
なお、従来の基地局アンテナ切替送信ダイバーシチにおける基地局1−1のアンテナ1−7a、1−7bの切替は、移動局の受信感度が高いアンテナを選択して信号を送信していた。本発明ではアンテナ毎の受信電力の平均値が異なっている場合には、前記基地局における複数のアンテナの何れかのアンテナから送信される送信電力を前記移動局の平均受信電力が等しくなるように調整する。従って、前記のようにして調整した前記基地局1−1のアンテナ1−7a、1−7bアンテナから送信され、移動局1−11で受信する受信電力の平均値は等しいので何れのアンテナを用いても良い。従って本発明ではアンテナの切り替えは交互に行い、その速度は最大ドプラー周波数より十分早い、例えば10倍以上のものとする。ここで、最大ドプラー周波数とは、移動体の最高速度をV、キャリア周波数の波長をLとすると、V/L(Hz)であらわされるものである。
【0032】
前記した図1の発明における送信電力調整方法について以下に説明する。前記移動局1−11において、送信電力を調整するための制御量となる基地局1−1から送信されたパイロット信号の平均受信電力の差を差分検出器1−14で測定する。
【0033】
前記差分検出器1−14の出力から、アンテナ毎の受信電力の平均値が異なっている場合には、基地局1−1にある平均受信電力制御装置1−6に移動局1−11の平均受信電力が等しくなるように前記差分検出器1−14の出力を制御量として設定することにより送信電力を調整する。
【0034】
図2は、本発明に関係した前記STTD法における実施例である。基地局2−1のアンテナを2−7a、2−7bの2本としている。基地局2−1は、前記図6で述べた、個別の通信(個別チャネル)に用いる信号C1をSTTDエンコードする機能を有するSTTDエンコーダ2−3と、該エンコーダの出力をキャリア信号で変調する個別の通信に用いる送信機2−2と、移動局2−11において基地局アンテナの識別を行うための信号(以下、パイロット信号と呼び、ここではパイロット信号P1とパイロット信号P2と区別して用いることにする)の送信に用いるパイロット信号1送信機2−9a、パイロット信号2送信機2−9bとを具備している。
【0035】
又、基地局2−1の各アンテナ2−7a、2−7bに接続され、各アンテナから出力する送信電力(位相と振幅)を調整する電力調整部2−5a、2−5bと、前記電力調整部2−5a、2−5bの各制御端子C0に接続し前記送信電力を調整する制御量を設定するための平均受信電力制御装置2−6も具備している。エンコーダ2−3の出力端子は、信号2−4aと信号2−4bに信号変換されていて各々送信機2−2の入力端子に接続されている。ここで、信号2−4bは、前記と同様信号2−4aの共役複素数で表す信号である。送信機2−2の一方の出力端子E1は電力調整部2−5aの入力端子に、他方の出力端子E2は電力調整部2−5bの入力端子に各々、接続されている。
【0036】
移動局2−11は、1つ以上のアンテナ2−10(図2では1本のみ図示してある)と、基地局2−1のアンテナ2−7a、2−7bから送出されるパイロット信号P1、P2を受信し、アンテナ2−10を介して接続されているパイロット信号1受信機2−12a、2―12bと、該パイロット信号1受信機2−12a、パイロット信号2受信機2−12bに接続され、前記各パイロット信号受信機の出力の差を検出する差分検出器2−14を具備している。
【0037】
又、アンテナ2−10には、受信機2−13が接続されている。受信機2−13の出力端子E4は、STTDデコーダ2−15の入力端子E6に接続されていて、STTDデコーダ2−15は、基地局から送られSTTDエンコードされている個別の通信に用いる信号C1をエンコードして後述する時系列信号S1、S2(2−16)として出力端子E5から出力する。なお、個別の通信は周知の方法で行い、個別の通信に用いる移動局2−11の送信機、基地局2−1の受信機については図示していない。
【0038】
係る構成における動作を説明する。図2において、基地局2−1の個別の通信に用いる信号C1は、ディジタル信号化され、例えばS1、S2の時系列信号でSTTDエンコーダ2−3に加えられる。STTDエンコーダ2−3に加えられた信号は、信号2−4aと信号2−4bとにエンコードされる。STTDエンコーダ2−3の出力端子から送信機2−2に加えられた信号は送信機2−2によってエンコーダの出力をキャリア信号で変調して送信機2−2から信号2−8a、信号2−8bとして電力調整部2―5a、2−5bに出力される。信号2−8aはアンテナ2−7aに、信号2−8bはアンテナ2−7bから各々移動局2−2に送られる。ここで信号2−8bは、信号2−9aの共役複素数で表す信号である。
【0039】
基地局2−1は、基地局2−1と移動局2−11との個別の通信に用いる信号C1を前記のようにSTTDエンコーダから送信機2−2を用い電力調整部2―5a、2−5bを介してアンテナ2−7a、2−7bを用いて移動局2−11に送信する。アンテナ2−7a、2−7bから送信される電力は、電力調整部2―5a、2−5bにより後述する方法でアンテナ2−7aと2−7bの送信電力が等しくなるか近づくように調整して送信する。
【0040】
前記のアンテナ2−7a、2−7bから送信された信号は、移動局2−11のアンテナ2−10を介して受信機2−13で受信されSTTDデコーダ2−15に加えられる。そしてS1、S2の時系列信号でSTTDエンコードされた信号2−4は、STTDデコーダ2−15でデコードされ、もとの信号S1、S2(2−16)に復調される。
【0041】
前記した電力調整部2−5a、2−5bの設定は以下のようにして行う。基地局2−1は、パイロット信号1送信機2−9a、パイロット信号2送信機2−9bからアンテナ2−7a、2−7bを介してパイロット信号P1、P2とを移動局2−11に送信する。
【0042】
基地局2−1のパイロット信号1送信機2−9a、パイロット信号2送信機2−9bからアンテナ2−7a、2−7bを介して送信されたパイロット信号P1、P2とを移動局2−11のアンテナ2−10で受信する。パイロット信号P1、P2は、おのおのパイロット信号1受信機2−12a、パイロット信号2受信機2−12bから差分検出器2−14に伝わり、差分検出器2−14は、パイロット信号P1、P2の出力の差を検出する。係る信号の差は、パイロット信号受信機2−12a、2―12bにメータなどを設けてメータの値を測定するようにしても良い。
【0043】
平均受信電力制御装置2−6は、前記制御量に基づいて電力調整部2−5a、2−5bに送信電力を調整する調整量を設定する機能を有する。前記のようにして得たパイロット信号P1、P2の出力の差を基地局2−1の平均受信電力制御装置2−6の図示していない設定機構で電力調整部2−5a、2−5bの制御量を設定する。
【0044】
即ち、パイロット信号P1、P2の出力の差と、どちらのパイロット信号の強度が大であるかを図示していない設定機構により平均受信電力制御装置2−6に入力する。平均受信電力制御装置2−6は、前記移動局2−11の受信電力が低い側のアンテナに対して送信出力を増加するように電力調整部2−5a、2−5bに制御量を設定する。
【0045】
電力調整部2−5a、2−5bは、前記のようにして平均受信電力制御装置2−6により設定された制御量により周知の方法で基地局2−1から出力される信号の位相と振幅を増幅又は減少する。なお、平均受信電力制御装置2−6の前記設定機構は、パイロット信号P1、P2の出力の差と、どちらのパイロット信号の強度が大であるかを設定する以外に、パイロット信号P1、P2の出力を直接入力し、係る入力値により前記移動局2−11の受信電力が低い側のアンテナに対して送信出力を増加するように電力調整部調整部2−5a、2−5bに制御量を設定するようにしても良い。
【0046】
なお、図2において電力調整部2−5a、2−5bは、送信機2−2の出力端E1、E2に各々設けてあるが、何れか一方にしても良い。係る場合において、平均受信電力の小さい側のアンテナに前記電力調整部が設けられていない場合には、受信電力の大きい側のアンテナに設けられている前記電力調整部からの出力を減少し、送信機2−2の送信出力を増加するようにする。係る増加量の調整は、移動局2−11の送受信機2−13の受信レベルを図示していない測定機などで測定し、送信機2−2の送信出力を増加するようにしても良い。
【0047】
前記した図2の発明における送信電力調整方法は図1の実施例について述べたと同様であるので説明を省略する。
【0048】
図3は、本発明の三番目の実施例である。複数の移動局に対して送信ダイバーシチ通信を行う場合において、基地局2−1の複数のアンテナ2−7a、2−7bの利得が異なる時に、前記基地局2−1の各アンテナからの受信電力を複数の移動局について統計処理する。そして係る統計処理の結果に基づいて基地局の送信電力を調整して移動局の受信電力を調整するものである。係る方式は、送信周波数と受信周波数が異なっていても平均受信電力比はおおよそ等しいことを利用して移動局からの個別の通信に用いる信号を受信して統計処理を行い、ダイバーシチの改善を計るものである。
【0049】
図3は、IMT2000方式で標準化されているW−CDMA方式の送信ダイバーシチに適用したものである。図3においては、図2との差異は下記に述べる基地局2−1の受信電力測定部3−1、統計処理部3−2、受信機3−3のみである。また移動局2−11の差分検出器2−14は必要が無い。以下、受信電力測定部3−1、統計処理部3−2、受信機3−3以外の説明は省略し、図2と同一部分については同一の符号を付す。
【0050】
図3において、アンテナ2−7aには電力調整部2−5aの出力端子、パイロット信号1送信機2−9aの出力端子、受信機3−3の一方の入力端子に各々接続されている。また、アンテナ2−7bには電力調整部2−5bの出力端子、パイロット信号2送信機2−9bの出力端子、受信機3−3の他方の入力端子に各々接続されている。
【0051】
受信機3−3の出力は受信電力測定部3−1に接続され、その出力は統計処理部3−2に接続されている。統計処理部3−2の出力は、前記した平均受信電力制御装置2−6に接続されている。ここで平均受信電力制御装置2−6は、送信電力を調整する制御量を電力調整部2−5a、2−5bに設定する機能を有する。なお、個別の通信は周知の方法で行い、個別の通信に用いる移動局1−11の送信機、基地局1−1の受信機については図示していない。
【0052】
係る構成における動作を説明する。図3において、基地局2−1の個別の通信に用いる信号C1は、ディジタル信号化され、例えばS1、S2の時系列信号でSTTDエンコーダ2−3に加えられる。STTDエンコーダ2−3に加えられた信号は、信号2−4aと信号2−4bとにエンコードされる。
【0053】
STTDエンコーダ2−3の出力端子から送信機2−2に加えられた信号は送信機2−2によってエンコーダの出力をキャリア信号で変調して送信機2−2から信号2−8a、信号2−8bとして電力調整部2―5a、2−5bに出力される。信号2−8aはアンテナ2−7aに、信号2−8bはアンテナ2−7bから各々移動局2−2に送られる。ここで信号2−8bは、信号2−9aの共役複素数で表す信号である。
【0054】
基地局2−1は、基地局2−1と移動局2−11との個別の通信に用いる信号C1を前記のようにSTTDエンコーダから送信機2−2を用い電力調整部2―5a、2−5bを介してアンテナ2−7a、2−7bを用いて移動局2−11に送信する。アンテナ2−7a、2−7bから送信される電力は、電力調整部2―5a、2−5bにより後述する方法でアンテナ2−7aと2−7bの送信電力が等しくなるか近づくように調整して送信する。
【0055】
前記のアンテナ2−7a、2−7bから送信された信号は、移動局2−11のアンテナ2−10を介して受信機2−13で受信され、STTDデコーダ2−15に加えられる。そして基地局2−1においてS1、S2の時系列信号にSTTDエンコードされた信号2−4は、STTDデコーダ2−15でデコードされ、もとの信号S1、S2(2−16)に復調される。
【0056】
移動局2−11は、基地局2−1と移動局2−11との個別の通信に用いる信号C1を図示していない送信機からアンテナ2−10を介して基地局2−1に送信する。基地局2−1の受信機3−3は、前記移動局2−11からの個別の通信に用いる信号C1をアンテナ2−7a、2−7bで受信する。受信機3−3は、移動局2−11から送信された信号C1を受信電力測定部3−1に伝える。
【0057】
受信電力測定部3−1は、任意の移動局から受信した信号から各アンテナ毎に受信電力の平均値を抽出して図示していない保存手段に格納する。ここで前記受信電力測定部3−1における受信電力の平均値の格納手段は後述する統計処理部3−2に設けても良い。
【0058】
任意の移動局からの信号をアンテナ2−7aで受信した受信電力の平均値をrbl、アンテナ2−7bで受信した受信電力の平均値をrb2とおき、その比をrb=rb1/rb2とおく。例えば、後述する図4のように、基地局アンテナに偏波ダイバーシチアンテナを用いた場合には、rbの値は移動局の周辺の環境(都市構造や地形)によって異なるため、基地局毎に異なる値を示す。
【0059】
受信電力測定部3−1で抽出、格納された基地局毎に複数の移動局から送信された信号の受信電力の平均値rbl、rb2は、統計処理部3−2に伝えられる。統計処理部3−2は、周知の方法例えば、基地局毎に受信電力の平均値の比rbの累積分布を求める方法や、複数の平均電力比rbを平均化して受信電力の平均値を求める方法で信号の平均受信電力を統計処理する。
【0060】
前記のようにして算出した統計的な受信電力の平均値は、基地局2−1の平均受信電力制御装置2−6を介して電力調整部2−5a、2−5bの制御量に変換される。
【0061】
平均受信電力制御装置2−6は、前記統計的な受信電力の平均値に基づいて前記移動局2−11の受信電力が低い側のアンテナに対して送信出力を増加するように(移動局2−11の受信電力の平均値が等しくなるか、近づくように)電力調整部2−5a、2−5bに制御量を設定する。
【0062】
電力調整部2−5a、2−5bは、前記のようにして平均受信電力制御装置2−6により設定された制御量により周知の方法で基地局2−1から出力される信号の位相と振幅を増幅又は減少する。
【0063】
なお、図3においては、電力調整部2−5a、2−5bは送信機2−2の出力端E1、E2に各々設けてあるが、何れか一方にしても良い。係る場合において、平均受信電力の小さい側のアンテナに前記電力調整部が設けられていない場合には、受信電力の大きい側のアンテナに設けられている前記電力調整部からの出力を減少し、送信機2−2の送信出力を増加するようにする。係る増加量の調整は、基地局2−1の受信機3−3の受信レベルで送信機2−2の送信出力を制御するようにしても良い。
【0064】
図4は、本発明の四番目の実施例である。基地局アンテナに垂直偏波と水平偏波を同時に送信できる偏波ダイバーシチアンテナを用いている。図4において、図3との差異はアンテナの部分のみであるので、以下においてアンテナ以外の説明は省略する。偏波ダイバーシチアンテナをダイバーシチに用いた場合の効果については、例えば進士昌明編著、「無線通信の電波伝搬」、12章、電子情報通信学会(1992)に詳しく下記のように記述されている。
【0065】
即ち、移動局が垂直偏波アンテナで受信する場合において、基地局が垂直偏波ダイバーシチアンテナで送信した場合と、基地局が偏波アンテナで送信した場合の信号の平均受信電力差を比較すると、基地局が垂直偏波ダイバーシチアンテナで送信した場合が優れ、市街地では5〜7dB、郊外地や開放地では10dB以上にも及ぶ。
【0066】
図4において、偏波ダイバーシチアンテナは、垂直偏波アンテナ4―7aと水平偏波アンテナ4−7bからなり、垂直偏波アンテナ4―7aには電力調整部2−5aの出力端子、パイロット信号1送信機2−9aの出力端子、受信機3−3の一方の入力端子に各々接続されている。また、水平偏波アンテナ4−7bには電力調整部2−5bの出力端子、パイロット信号2送信機2−9bの出力端子、受信機3−3の他方の入力端子に各々接続されている。
【0067】
基地局2−1は、前記偏波ダイバーシチアンテナ4−9の垂直偏波アンテナ4―9aと水平偏波アンテナ4−9bから個別チャネルの信号を移動局2−2に送出する。
【0068】
なお、前記した垂直偏波アンテナ4―9aと水平偏波アンテナ4−9bは、水平偏波アンテナ4−7bに電力調整部2−5aの出力端子、パイロット信号1送信機2−9aの出力端子、受信機3−3の一方の入力端子を各々接続しまた、垂直偏波アンテナ4―7aに電力調整部2−5bの出力端子、パイロット信号2送信機2−9bの出力端子、受信機3−3の他方の入力端子を各々接続するようにしても良い。
【0069】
【発明の効果】
請求項1記載の送信ダイバーシチ装置によれば、アンテナ毎の受信電力の平均値が異なっている場合でも各基地局アンテナの送信電力が等しい場合と同等になるように調整することができ、基地局側で、移動局で生じた各アンテナの受信電力の差を求め、この受信電力の差または比を複数の移動局について統計処理し、その結果から、移動局の平均受信電力が等しくなるように、設定された制御量を基地局のアンテナに与えるので、移動局の周囲環境の影響を受けることなく、送信ダイバーシチの改善効果が得られる
【0070】
また、請求項2に記載の統計処理手段は、各アンテナの受信電力の比又は差を複数の移動局について保存する手段を具備するので、統計処理を容易にすることができる。さらに請求項3の構成によれば、偏波ダイバーシチアンテナを用いることにより、垂直偏波アンテナと水平偏波アンテナで送信した場合に比べて受信電力を改善できる。
【0076】
請求項4記載の構成によれば、W−CDMA方式の送信ダイバーシチに用いる移動局アンテナの受信電力の平均値が異なる場合においても、各基地局アンテナの送信電力が等しい場合と同等になるように調整することができ、移動局の周囲環境の影響を受けることなく、送信ダイバーシチの改善効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基地局アンテナ切替送信ダイバーシチにおける本発明の実施例である。
【図2】本発明のSTTD法における実施例である。
【図3】受信電力の差を複数の移動局について統計処理する本発明の実施例である。
【図4】偏波ダイバーシチアンテナを用いた本発明の実施例である。
【図5】従来の基地局アンテナ切替送信ダイバーシチの構成図である。
【図6】従来のW−CDMA方式の送信ダイバーシチの構成図である。
【図7】基地局アンテナの送信電力に平均的な差が生じている場合の、移動局の受信電力特性の一例である。
【符号の説明】
1―1 基地局
1−2 送信機
1−5a,1−5b ウェイト調整部
1−6 ウェイト制御装置
1−11 移動局
1―14 ウェイト計算部
3−1 受信電力測定部
3−2 統計処理部

Claims (4)

  1. 複数のアンテナを有し、該複数のアンテナから同一の信号の位相を換えて同時に送信する基地局と、該基地局から送信される信号を受信する1つ以上のアンテナを有する受信側である移動局との間で送信電力を調整する送信ダイバーシチ方式の基地局において、
    前記基地局は、移動局におけるアンテナ毎の受信電力の平均値が異なっている場合に前記基地局における複数のアンテナの何れかのアンテナから送信される送信電力を前記移動局の平均受信電力が等しくなるように調整する平均受信電力制御装置と、
    送信ダイバーシチを行う前記基地局の複数のアンテナにより前記移動局からの受信電力を受信して、前記移動局で生じた前記各アンテナの受信電力の差を求める手段と、
    前記各アンテナの受信電力の差又は比を複数の移動局について統計処理する統計処理手段と、
    前記統計処理手段によって得られた結果により前記基地局における複数のアンテナの何れかのアンテナから送信される送信電力を前記移動局の平均受信電力が等しくなるように、前記平均受信電力制御装置により設定された制御量を前記基地局のアンテナに与える電力調整手段と、を有することを特徴とする送信ダイバーシチ装置
  2. 前記統計処理手段は、前記各アンテナの受信電力の比又は差を複数の移動局について保存する手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の送信ダイバーシチ装置
  3. 前記基地局の複数のアンテナは、少なくとも一つが垂直偏波を送信できるアンテナであり、少なくとも一つが水平偏波を送信できるアンテナである偏波ダイバーシチアンテナを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の送信ダイバーシチ装置
  4. 複数のアンテナを有し、該複数のアンテナから同一の信号の位相を換えて同時に送信する基地局と、該基地局から送信される信号を受信する1つ以上のアンテナを有する受信側である移動局との間で送信電力を調整する方法であって、
    前記基地局は、前記移動局におけるアンテナ毎の受信電力の平均値が異なっている場合に前記基地局における複数のアンテナの何れかのアンテナから送信される送信電力を、前記移動局の平均受信電力が等しくなるように調整するため
    送信ダイバーシチを行う前記基地局の複数のアンテナにより前記移動局からの受信電力を受信し、前記移動局で生じた前記各アンテナの受信電力の差を受信電力測定部で測定し、
    次に、統計処理部において、前記各アンテナの受信電力の差又は比を複数の移動局について統計処理し、
    前記統計処理によって得られた結果により、前記統計的な受信電力の平均値に基づいて、平均受信電力制御装置が前記移動局への制御量を設定し、前記基地局のアンテナから送信される送信電力を、前記移動局の平均受信電力が等しくなるように、前記制御量を電力調整部を介して調整する、各ステップを有することを特徴とする送信ダイバーシチ方式の送信電力調整方法
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