JP4504782B2 - エコー消去方法、この方法を実施する装置、プログラムおよびその記録媒体 - Google Patents
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Description
しかし、スピーカから再生されてマイクロホンに収音されるまでに2LDサンプル以上遅延するエコー成分は、非エコー成分として扱われることが問題となる。つまり、フレーム長2LDを、適応フィルタのタップ長Lよりも大幅に短く設定した場合には、非エコー成分とみなされるエコー成分が増大する。その結果、エコー成分比率が小さめに設定されたり、エコー成分の推定値が揺らいだりするために、エコー成分比率の推定性能が劣化し、エコー消去性能が劣化してしまう。
この発明では更に、多チャネル再生信号の現時点のフレームと過去のフレームとを、現時点のフレームの第1チャネル再生信号からなる主成分および主成分との相関が除去されたその他のフレームからなる副成分に分け、主成分のエコーが残差信号に占める割合を求め、副成分のエコーが主成分との相関を除去した残差信号に占める割合を求め、これら2つの割合から収音信号に占める多チャネル再生信号のエコー成分比率を推定する方法を提案する。
[第1実施形態]
この発明を図1のようなM(≧2)チャネル再生系とN(≧1)チャネル収音系からなる場合について説明する。上記従来法と同様に、図2のようなM入力1出力のエコーキャンセル部をN個並列に並べることで、Nチャネルの収音系に対応する。この発明では、図3に内部構成を示している図1のMチャネルエコーキャンセル部6を、図6に内部構造が示されているMチャネルエコーキャンセル部7に置き換える。図7には図6中のエコー成分比率推定部73の構成を示す。
ステップF1
現時点のフレームから求めた多チャネル再生信号の短時間スペクトルX1(j,f),…,XM(j,f)を図7に示す相関除去部731内の現時点の蓄積部731a1に保存する。
相関除去部731b1では、例えば次式の方法で多チャネル再生信号の短時間スペクトルX2(j,f),…,XM(j,f)からX1(j,f)との相関成分を除去して、スペクトルX2(1)(j,f),…,XM(1)(j,f)を得、多チャネル再生信号スペクトルの副成分の一部とする。
相関除去部731b2において、過去の蓄積部731a2に蓄積された1フレーム前の多チャネル再生信号のスペクトルX1(j−1,f),…,XM(j−1,f)から、X1(j,f)との相関を次のように除去したスペクトルX1(1)(j−1,f),…,XM(1)(j−1,f)を求め、多チャネル再生信号スペクトルの副成分の一部とする。
コヒーレンス算出部7331では、多チャネル再生信号スペクトルの主成分である現時点のフレームの第1チャネル再生信号の短時間スペクトルX1(j,f)と現時点の残差信号のスペクトルE(j,f)から、次のコヒーレンスを求める。
副成分エコー比率算出部7332では、まず相関除去された残差信号スペクトルE(1)(j,f)に含まれるエコー成分E^(1)(j,f)を求める。エコー成分E^(1)(j,f)は、多チャネル再生信号短時間スペクトルの副成分X2(1)(j,f),…,XM(1)(j,f),X1(1)(j−1,f),…,XM(1)(j−1,f)の線形和
|E(1)(j,f)−E^(1)(j,f)|2
が最小となるスペクトルである。この誤差を最小にするスペクトルは、
ただし、m=1,…,M、d=1,…,D、f=1,…,2LD、μは0〜1の値をとるステップサイズ、δは正則化定数である。また、p(j,f)は次式により計算される。
現時点のフレームの処理が終了すると、最後に現時点の蓄積部731a1に蓄積された再生信号情報は過去の蓄積部731a2に転送され、蓄積される。
なお、蓄積部731a内で現時点の蓄積部731a1と過去の蓄積部731a2とを特に区別し、上記のように一連の処理の最後に現時点の蓄積部731a1に蓄積された再生信号情報を過去の蓄積部731a2に転送するのではなく、1つの蓄積部731aに蓄積された情報の中で最新情報を現時点の情報として処理する方法もある。また、図9に示すように処理に利用する現時点の再生信号のスペクトルを、蓄積部から取り出すのではなく、入力された再生信号のスペクトルを直接利用する方法もある。
この発明は、第1実施形態に対してエコー経路推定速度の向上を図ったものであり、図10に全体構成を、図11にMチャネルエコーキャンセル部の構成を示す。
図10の相関変動処理部9m(m=1,…,M)では、例えば次式のようにチャネル毎に受話信号um(k)を乱数で振幅変調して元の信号に付加して相互相関が絶えず変動している再生信号xm(k)を生成し、各スピーカから再生する。
図11のMチャネルエコーキャンセル部8では、付加信号成分が受話信号成分よりも強調されたチャネル間相関の小さい信号のベクトルを信号変換部85により生成し、チャネル間相関の大きい再生信号ベクトルの代わりに使用して適応フィルタを更新する。この更新には、例えば特許文献2で提案されている適応アルゴリズムを使用し、そのステップサイズを残差信号に含まれる残留エコー成分の比率S(j,f)で制御する。チャネル間相関の小さい修正ベクトルを使用することで、適応フィルタによるエコー経路の収束速度が向上する。
Claims (14)
- 複数チャネル(Mチャネル)の再生信号から適応フィルタを用いてエコー信号を予測し、少なくとも1チャネルの収音信号の各収音信号から予測したエコー信号を差し引くことでエコー成分を消去する方法において、
現時点のフレームの第1チャネル再生信号の短時間スペクトルを主成分とし、
現時点のフレームの第2から第Mチャネルまでの再生信号、及び、少なくとも1フレーム過去の第1から第Mチャネルまでの再生信号について、各々の短時間スペクトルから主成分とした短時間スペクトルとの相関を除去して、副成分を構成する複数の短時間スペクトルを求め、
主成分のエコーが残差信号の短時間スペクトルに占める割合を求め、
副成分のエコーが主成分との相関を除去した残差信号の短時間スペクトルに占める割合を求め、
上記2つの割合から残差信号の短時間スペクトルに占めるエコー成分比率を周波数ごとに推定し、
周波数ごとに推定された上記エコー成分比率が大きいほど、適応フィルタ係数を修正する量が大きくなるように、対応する周波数の適応フィルタ係数の値を更新する、
ことを特徴とするエコー消去方法。 - 請求項1〜3の何れかに記載の方法において、
適応フィルタのタップ長よりも短いフレーム長ごとに残差信号の短時間スペクトルに含まれるエコー成分の比率を推定すること、
を特徴とするエコー消去方法。 - 請求項1〜4の何れかに記載の方法において、
適応フィルタ係数をフレームごとに修正すること、
を特徴とするエコー消去方法。 - 請求項1〜5の何れかに記載の方法において、
再生信号として、受話信号に相関変動処理した受話信号を付加した信号を用い、
適応フィルタ更新に付加信号成分が受話信号成分よりも強調された信号を使用すること、
を特徴とするエコー消去方法。 - 複数チャネルの再生信号および少なくとも1チャネルの収音信号を受信する手段と、
エコー信号を予測する適応フィルタと、
予測したエコー信号を各収音部からの信号から差し引く手段と、
現時点のフレームの第1チャネル再生信号の短時間スペクトル(主成分)のエコーが、残差信号の短時間スペクトルに占める割合を求める手段と、
現時点のフレームの第2から第Mチャネルまでの再生信号、及び、少なくとも1フレーム過去の第1から第Mチャネルまでの再生信号について、各々の短時間スペクトルから主成分とした短時間スペクトルとの相関を除去して、副成分を構成する複数の短時間スペクトルを求める手段と、
副成分のエコーが主成分との相関を除去した残差信号の短時間スペクトルに占める割合を求める手段と、
上記2つの割合から残差信号の短時間スペクトルに占めるエコー成分比率を周波数ごとに推定する手段と、
周波数ごとに推定された上記エコー成分比率が大きいほど、適応フィルタ係数を修正する量が大きくなるように、対応する周波数の適応フィルタ係数の値を更新する手段と、
を備えるエコー消去装置。 - 請求項7〜9の何れかに記載の装置において、
適応フィルタのタップ長よりも短いフレーム長ごとに残差信号の短時間スペクトルに含まれるエコー成分の比率を推定する手段、
を備えるエコー消去装置。 - 請求項7〜10の何れかに記載の装置において、
適応フィルタ係数をフレームごとに修正する手段、
を備えるエコー消去装置。 - 請求項7〜11の何れかに記載の装置において、
受話信号の相関を変動処理する相関変動処理部と、
付加信号成分が受話信号成分よりも強調された信号を生成する信号変換部と、
を備えるエコー消去装置。 - 請求項1〜6の何れかに記載のエコー消去方法をコンピュータにより実行するエコー消去プログラム。
- 請求項13に記載のエコー消去プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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