JP4247158B2 - 多チャネル音響エコー消去方法、多チャネル音響エコー消去装置、多チャネル音響エコー消去プログラム、記録媒体 - Google Patents
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Description
多チャネル通信会議系では受話信号のチャネル間相互相関が非常に高くなるのが通常であり、エコーがほぼ消去されている状態であっても、多チャネル適応フィルタにより推定されたエコー伝達特性と真のエコー伝達特性が一致するとは限らない。これに関しては非特許文献1を参照。そのため従来法のようにスピーカ再生信号と音響エコー消去部の出力信号から、音響結合量を経由して、適応フィルタのエコー経路推定状況を知ることができない。
図1にその一例を示す。この例ではM(≧2)チャネルの再生系とN(N≧1)チャネルの収音系とで構成されている通信会議システムを例示して説明する。
Mチャネルの受話信号は、それぞれの相関変動処理部31〜3Mを経て、各スピーカで11〜1Mで音響信号として再生され、音響エコー経路h1〜hMを経て各マイクロホン21〜2Nに回り込む。各マイクロホン21〜2Nに接続されたMチャネルエコー消去部41〜4Nには、受話側の全Mチャネルの受話端子51〜5Mが接続されている。
通信会議では、1人の話者音声が複数のマイクロホンで収音されて多チャネルで送出され、受話信号のチャネル間相互相関が非常に高い時間が半数を占める。このため受話信号に相関変動処理を適用することで、推定されたエコー経路伝達特性が真値に収束することを保障している。また受話信号に加える相関変動が大きいほど、エコー経路の推定速度は向上する。
仮に相関変動処理を適用しない場合には、エコーが消去されていても、推定されたエコー伝達特性と真のエコー伝達特性が一致するとは限らない。このとき対地で話者が交代すると、その瞬間に受話信号のチャネル相互相関が変化し、突然音響エコーが消去されなくなってしまう。(前出の非特許文献1参照)。
このトレードオフへの対応方法として、図3のようにエコー消去量を測定するエコー消去量計算部101〜10Nと利得計算部11とを設け、エコー消去量に応じて相関変動処理部31〜3Mの利得を制御し、相関変動の大きさを制御する方法が提案されている。(特許文献2参照)。
このようにエコー消去量にもとづいてチャネル相関変動の大きさを制御する従来方法では、エコー消去量は必ずしもエコー経路の推定誤差と連動せず、エコー経路の推定が不充分な状態で相関変動量を小さくする可能性が残ってしまう問題がある。
Mチャネル適応フィルタ(M>1)のエコー経路推定の状態を推測するために、図4のように擬似エコー経路を構成する適応フィルタのLPタップ(LP≧1)を非因果成分に割当てる。そして時刻k−L+1から時刻kまでのMチャネル入力信号xm(k−L+1),…,xm(k)(m=1,…,M)から時刻k−LPのエコー信号y^(k−LP)を予測する。
したがって擬似エコー経路の非因果成分の大きさに基づいて、多チャネル受話信号に加えるチャネル間相関変動の大きさを制御すると、適応フィルタによる推定がスタートしてエコー経路がほとんど推定されていない状態ではチャネル間相関変動を大きく設定し、エコー経路の推定が進んで非因果成分の大きさが減少するにしたがって、チャネル間相関変動を小さく設定することが可能となる。
この発明の請求項3では請求項1又は2記載の多チャネル音響エコー消去方法の何れかにおいて、M×N本の経路からなる非因果成分を持たない第2の擬似エコー経路にスピーカ再生信号を入力して第2のNチャネル擬似エコーを生成する処理と、収音信号と第2のNチャネル擬似エコーから、Nチャネル誤差信号を求めて伝送経路に送信する処理と、第2の擬似エコー経路に、第1の擬似エコー経路の因果成分のみを転送する処理とを付加することを特徴とする多チャネル音響エコー消去方法を提案する。
Mチャネル受話信号u1(k),…,uM(k)は、相関変動処理部31〜3MによりMチャネル信号x1(k),…,xM(k)に変換されてスピーカ11〜1Mから再生される。そのエコーy(k)は、マイクロホン2に収音されて、遅延器55によりLpサンプル(Lp≧1)遅延される。この遅延により非因果成分が生成される。
Mチャネル受話信号は同時にエコー消去部5の擬似エコー経路51に入力されて、擬似エコーが生成される。
ここでαはエコー経路の非因果成分の大きさを因果成分の大きさに換算するための定数であり、例えばα=(L−Lp)/Lpをもちいる。δは0割を防止するための正則化定数である。
相関変動処理部31〜3Mでは、相関を変動させるための付加信号をum ADD(k)として、特許文献2と同様に、
xm(k)= um(k)+A(k)um ADD(k)
のように付加信号の大きさをゲインA(k)で制御して相関変動処理を行う。この付加信号ゲインA(k)は、一致性推定部54で求められた一致性の指標Q(k)から、例えば
A(k+1)=cA(k)+(1−c)Q(k)
のように相関変動制御部6において求められる。ここで、cは0<c<1の値をとる平滑化用の特定数であり、A(k)の初期値はA(0)=1とする。
なおMチャネル再生器(スピーカ11〜1M)とNチャネル収音器(マイクロホン21〜2N)からなるマルチチャネル拡声通話系の場合には、図6のようにMチャネルエコー消去部51〜5NがN個並列に並ぶ構成になり、各Mチャネルエコー消去部51〜5Nでそれぞれ付加信号ゲインA1(k),…,AN(k)が求められる。受話側で一括して適用される付加信号ゲインは、相関変動制御部6において、付加信号ゲインA1(k),…,AN(k)から、例えば
A(k)=MAX[A1(k)…AN(k)]
により求められる。
zm(k)= βum(k)+A(k)um ADD(k)
(m=1…M,0<β<1)
により減衰した受話信号と付加信号とから生成する。
この修正ベクトル生成用の信号と遅延器75によりLpサンプル遅延した収音信号との誤差信号
e(k−Lp)=y(k−Lp)−y^(k−Lp)
をもちいて、適応フィルタは例えば
また適応フィルタの更新には、上記のような時間領域の適応アルゴリズム以外に、周波数領域の適応アルゴリズム等をもちいることもできる(特開2002−223182号公報参照)。
このように非因果成分を持たない第2の擬似エコー経路56を併設することにより、非因果成分を求めるために第1の擬似エコー経路51およびエコー経路推定部53に挿入された遅延の影響を受けなくなり、送話信号を遅延なく対地に送出することが可能となる。なお、ここでは実施例1をベースに説明を行なったが、この方法は実施例2の図7にも適用可能である。
本発明による多チャネル音響エコー消去プログラムは例えばCD−ROMのようなコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録され、これらの記録媒体からコンピュータにインストールされるか又は通信回線を通じてインストールされる。
2、21〜2N マイクロホン 55、75 遅延器
31〜3M 相関変動処理部 57 第2の減算器
4、41〜4N Mチャネルエコー消去部
51〜5M Mチャネルエコー消去部
5、7 エコー消去部
6 相関変動制御部
41、71 擬似エコー経路
43、53、73 エコー経路推定部
51 第1の擬似エコー経路
56 第2の擬似エコー経路
54、74 一致性推定部
Claims (8)
- M(M≧2)チャネルの受話信号にチャネル間相関を変動させるための付加信号を付加してスピーカ再生信号とする処理と、
上記スピーカ再生信号を上記MチャネルのスピーカからN(N≧1)チャネルの収音器に回る込むM×N本のエコー経路に対応した擬似エコー経路に入力してNチャネル擬似エコーを生成する処理と、
上記Nチャネルの収音器より得られる収音信号とNチャネル擬似エコーから、Nチャネル誤差信号を求めてエコー消去信号として出力する処理と、
Nチャネル誤差信号及びMチャネル再生信号から修正ベクトルを求める処理と、
この修正ベクトルを用いて上記擬似エコー経路を逐次修正する処理と、
を含む多チャネル音響エコー消去方法において、
上記擬似エコー経路が非因果成分と因果成分とを含み、遅延された収音信号と擬似エコーとの誤差信号を上記擬似エコー経路の修正に用い、上記Nチャネルの収音器の各々に対応するM本の上記擬似エコー経路について、上記因果成分の大きさに対する上記非因果成分の相対的な大きさから上記エコー経路と上記擬似エコー経路との一致性を求める処理と、
上記Nチャネルの収音器の各々に対応するM本の上記擬似エコー経路について、上記一致性から上記受話信号のチャネル相関を変動させるための付加信号の大きさを一括して制御する最大のゲインを求める処理と、
を行うことを特徴とする多チャネル音響エコー消去方法。 - 請求項1記載の多チャネル音響エコー消去方法において、上記修正ベクトルを求める処理を上記Nチャネル誤差信号と付加信号が強調されたMチャネル修正ベクトル生成用信号とを用いて求める処理に置換することを特徴とする音響エコー消去方法。
- 請求項1又は2記載の多チャネル音響エコー消去方法の何れかにおいて、M×N本の経路からなる非因果成分を持たない第2の擬似エコー経路にスピーカ再生信号を入力して第2のNチャネル擬似エコーを生成する処理と、
収音信号と第2のNチャネル擬似エコーから、Nチャネル誤差信号を求めて伝送経路に送信する処理と、
上記第2の擬似エコー経路に、第1の擬似エコー経路の因果成分のみを転送する処理と、
を付加することを特徴とする多チャネル音響エコー消去方法。 - M(M≧2)チャネルの受話信号のそれぞれにチャネル間相関を変動させるための付加信号を付加してスピーカ再生信号とする相関変動処理部と、
上記Mチャネルのスピーカ再生信号を上記MチャネルのスピーカからN(N≧1)チャネルの収音器に回る込むM×N本のエコー経路に対応した擬似エコー経路に入力してNチャネル擬似エコーを生成する擬似エコー経路と、
上記Nチャネルの収音器より得られる収音信号とNチャネル擬似エコーから、Nチャネル誤差信号を求めてエコー消去信号として出力する減算器と、
Nチャネル誤差信号及びMチャネル再生信号から修正ベクトルを求め、この修正ベクトルを用いて上記擬似エコー経路を逐次修正するエコー経路推定部と、
によって構成される多チャネル音響エコー消去装置において、
上記擬似エコー経路が非因果成分と因果成分とを含み、遅延された収音信号と擬似エコーとの誤差信号を上記擬似エコー経路の修正に用い、上記Nチャネルの収音器の各々に対応するM本の上記擬似エコー経路について、上記因果成分の大きさに対する上記非因果成分の相対的な大きさから上記エコー経路と上記擬似エコー経路との一致性を求める一致性推定部と、
上記Nチャネルの収音器の各々に対応するM本の上記擬似エコー経路について、この一致性推定部で求めた一致性から上記受話信号のチャネル相関を変動させるための付加信号の大きさを一括して制御する最大のゲインを求める相関変動制御部と
を設けたことを特徴とする多チャネル音響エコー消去装置。 - 請求項4記載の多チャネル音響エコー消去装置において、上記エコー経路推定部で求める修正ベクトルを上記Nチャネル誤差信号と、付加信号が強調されたMチャネル修正ベクトル生成用信号とを用いて求めることを特徴とする多チャネル音響エコー消去装置。
- 請求項4又は5記載の多チャネル音響エコー消去装置の何れかにおいて、
M×N本の経路からなる非因果成分を持たない擬似エコー経路にスピーカ再生信号を入力してNチャネルの擬似エコーを生成する第2の擬似エコー経路と、
収音信号と第2のNチャネル擬似エコーから、Nチャネル誤差信号を求めて伝送路に送信する第2の加算器と、
上記第2の擬似エコー経路に、第1の擬似エコー経路の因果成分のみを転送する転送手段と、
を付加することを特徴とする多チャネル音響エコー消去装置。 - コンピュータが解読可能なプログラム言語によって記述され、コンピュータを請求項4乃至6の何れかに記載の多チャネル音響エコー消去装置として機能させる多チャネル音響エコー消去プログラム。
- コンピュータが読み取り可能な記録媒体で構成され、この記録媒体に請求項7記載の多チャネル音響エコー消去プログラムを記録した記録媒体。
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