JP4500379B2 - 酢酸ビニルの改良製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は酢酸ビニルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酢酸ビニルは、パラジウム含有触媒の存在下におけるエチレンのアセトキシル化により製造することができる。酢酸ビニルの他に、二酸化炭素も副生生成物として生成される。
【0003】
工業操作においては、酢酸ビニル生成物と未反応エチレンとを反応容器から流出するガスより回収する。未反応エチレンを新鮮エチレンと一緒に反応容器に循環させる。循環エチレンは或る程度の二酸化炭素と他の副生生成物とを含有すると共に、或る程度のたとえば窒素およびアルゴンのような不活性ガスをも含有する。これら諸成分の存在は反応容器への供給物におけるエチレンの濃度を制限する。
【0004】
酢酸ビニルに対するこの方法の選択率に影響を及ぼす因子は完全には理解されていない。当業者による一般的な見解は、反応混合物におけるエチレンの濃度が閾値を超えると酢酸ビニルの生成速度がエチレンの濃度とは無関係になるということである。この見解の背後にある合理性は、たとえエチレンが速度決定過程に関与するとしてもエチレンに関する酢酸ビニルの生成速度がエチレンの化学量論量より高い量を越えるとゼロになる傾向を有することである。換言すれば、過剰量のエチレンが反応体混合物に存在する限り、この過剰量の程度は生成される酢酸ビニルの量に負担をかけてはならない。
【0005】
この一般的見解または技術的偏見は、ダビッドソン等[フロント・ケミカル・リアクション・エンジニアリング(1984)、第(1)巻、第300〜313頁]における実験データにより支持される。このデータは、大気圧にて行われるアセトキシル化反応において生成される酢酸ビニルの量がエチレン濃度を31.6モル%〜47.4モル%に増大させた際に実質的に一定に留まることを示している。
【0006】
さらに技術的偏見は、大気圧以上で行われるアセトキシル化反応にも拡大される。アベル等[ケミカル・エンジニアリング・テクノロジー、第17巻(1994)、第112〜118頁]においてはエチレンと酢酸と酸素とを一緒に8bargの全圧力にて反応させる。この刊行物は酢酸ビニルの生成速度が反応混合物におけるエチレンの濃度には無関係であり、ただし反応器から流出するエチレンの濃度は30モル%より高いことを示している。エチレン濃度がこの数値を越えるよう確保するため、57モル%のエチレン供給濃度が用いられる。
【0007】
R.S.シェティーおよびS.B.チャンドラリアはメタルス・アンド・ミネラルス・レビュー(1970年12月)、第35〜40頁]において、工業プロセスでは約65%より高いエチレン濃度を選択して爆発限界外に保ちうることを提案している。しかしながら69.3:30.7のエチレンと酸素とのモル比を有するガス混合物を用いた実験において、触媒活性は時間と共に急速に変化した。さらに、酢酸の濃度および/従ってエチレン濃度は明らかでない。エチレンが回収されて循環されたかどうかも明らかでない。
【0008】
ナカムラ等はジャーナル・キャタリシス、第17巻(1970)、第366〜374頁において、80:10:10のエチレン:酸素:酢酸の供給ガスにつきパラジウム触媒の触媒活性に対する酢酸カリウムの作用を記載している(図4)。しかしながらエチレンが循環されたかどうか明らかでなく、また記載された高いエチレン濃度の有利な作用も明らかでない。
【0009】
サマノス等はジャーナル・キャタリシス、第23巻(1971)、第19〜30頁において酢酸ビニルを生成する反応速度につき記載しており、この速度はエチレン分圧と共に直線的に変化する一方、二酸化炭素が生成する速度は一定に留まる。しかしながら、エチレンがこの実験で回収および循環されたことは明らかでない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、酢酸ビニルへの選択率を大気圧よりも高くして達成することにある。
【0011】
今回、大気圧以上で酢酸ビニルを製造する際、反応体混合物におけるエチレンの濃度が60モル%を越えて増加すれば酢酸ビニルへの選択率も増大することを突き止めた。この知見は当業界における技術的偏見とは異なる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
従って本発明は酢酸ビニルの製造方法を提供し、この方法は
(a)エチレンと酢酸と酸素含有ガスとを反応器中へ導入し;
(b)前記エチレンと酢酸と酸素含有ガスとを大気圧以上にて前記反応器内で触媒物質の存在下に反応させて酢酸ビニルを生成させ;
(c)前記反応器から未反応エチレンと酢酸ビニルと二酸化炭素副生物とたとえば窒素および/またはアルゴンのような不活性ガスとからなるガスを抜き取り;
(d)前記反応器から抜き取られたガスより未反応エチレンを必要に応じ少量の二酸化炭素および不活性ガスと一緒に回収し;
(e)工程(d)からの回収エチレンおよび追加エチレンを工程(a)における前記反応器に導入し、ここで反応器への組合せ供給物におけるエチレンの量を少なくとも60モル%とする
工程からなることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
好ましくは、さらにこの方法は生成酢酸ビニルを回収する工程をも含む。
【0014】
本発明は、大気圧(0Paゲージ(0barg))より高い圧力にて酢酸ビニルを製造するための新規かつコスト上効果的なルートを提供する。この反応は5x104Paゲージ(0.5barg)〜2x106Paゲージ(20barg)、好ましくは6x105Paゲージ(6barg)〜1.4x106Paゲージ(14barg)、特に好ましくは7x105Paゲージ(7barg)〜1.2x106Paゲージ(12barg)の圧力にて行うことができる。これら圧力条件は、エチレンと触媒の表面との間の相互作用に影響を与えて、供給物におけるエチレンの量が60モル%を越えて増大した際に酢酸ビニルの生成に対する選択率の増大が観察されると思われる。この作用は驚異的である。エチレンに関する酢酸ビニルの生成速度は、少なくとも57モル%の初期エチレン濃度をアベル等[ケミカル・エンジニアリング・テクノロジー、第17巻(1994)、第112−118頁]に教示されたように用いればゼロ程度になると予想される。
【0015】
特定の理論に拘束されるものでないが、選択率の増加は2つの因子の組合せにより説明することができる。生成される酢酸ビニルの量の増加に加え、供給物におけるエチレンの量の増加が副生成物として生成される二酸化炭素の量を減少させることも判明した。次いで、これは回収された未反応エチレンから分離せねばならない二酸化炭素の量および/または回収エチレンと共に反応器へ循環される二酸化炭素の量を減少させることができる。
【0016】
本発明の触媒は固体床もしくは流動床触媒とすることができる。好ましくは、流動床反応器内に流動床触媒を用いる。
【0017】
触媒は好適には第VIII族金属と促進剤とを含む。好ましくは、触媒は補助促進剤をも含む。これら化合物は好適には支持体上に収容される。
【0018】
第VIII族金属に関し好適金属はパラジウムである。金属は触媒の全重量に対し0.2重量%より大、好ましくは0.5重量%より大、特に約1重量%の濃度にて存在させることができる。金属濃度は10重量%程度に高くすることもできる。適するパラジウムの供給源は塩化パラジウム(II)、テトラクロルパラジウム酸(II)ナトリウムもしくはカリウム(Na2PdCl4もしくはK2PdCl4)、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム(II)、H2PdCl4または硫酸パラジウム(II)を包含する。
【0019】
第VIII族金属の他に触媒は促進剤を含む。適する促進剤は金、銅および/またはニッケルを包含する。好適促進剤は金である。適する金の供給源は塩化金、テトラクロル金酸(HAuCl4)、NaAuCl4、KAuCl4、酢酸ジメチル金、アセト金酸バリウムもしくは酢酸金を包含する。好適な金化合物はHAuCl4である。促進剤金属は仕上触媒に0.1〜10重量%の量にて存在させることができる。
【0020】
触媒組成物は補助促進剤物質を含むことができる。適する補助促進剤は第I族、第II族、ランタニド族もしくは遷移金属、たとえばカドミウム、バリウム、カリウム、ナトリウム、鉄、マンガン、ニッケル、アンチモンおよび/またはランタンを包含し、これらは仕上触媒に塩(たとえば酢酸塩)として存在させる。好適塩は酢酸カリウムもしくはナトリウムである。補助促進剤は、触媒組成物中に15%までの濃度にて存在させることができる。触媒が固定床触媒である場合、補助促進剤濃度は好適には3〜11重量%である。触媒が流動床触媒であると共に酢酸を液状で反応器中へ導入する場合、補助促進剤は6重量%まで、好ましくは3.5〜5.5重量%、特に5重量%の濃度にて存在させることができる。触媒が流動床触媒であると共に酢酸を蒸気として反応器中へ導入する場合、補助促進剤は全触媒の11重量%までの濃度にて存在させることができる。
【0021】
触媒の活性は時間と共に減少しうる。特に、補助促進剤の揮発性に基づき触媒物質における補助促進剤のレベルは経時的に減少し、従って触媒活性の損失をもたらす。触媒における補助促進剤の一定濃度を維持するには、新鮮補助促進剤を反応に際し触媒に添加することができる。これは好適には、補助促進剤物質を液体酢酸供給物に或いは液体循環酢酸に添加して行うことができる。代案として、追加補助促進剤を溶液として(たとえば水中もしくは酸中)たとえばノズルのような適する注入手段を介する噴霧によって直接導入することもできる。
【0022】
触媒物質は支持触媒である。適する触媒支持体は多孔質シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、チタニア、ジルコニアもしくは炭素を包含する。好ましくは支持体はシリカである。好適には、支持体は支持体1g当たり0.2〜3.5mlの気孔容積と支持体1g当たり5〜800m2の表面積と0.3〜1.5g.mlの見かけ嵩密度とを有することができる。典型的には支持体は、触媒粒子の少なくとも60%が2x10−4m(200μm)未満の粒子直径を有するような粒子寸法分布を有することができる。好ましくは触媒粒子の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは90%は1.05x10−4m(105μm)未満の粒子直径を有する。好ましくは触媒粒子の40%以下は4x10−5m(40μm)未満の直径を有する。
【0023】
触媒は任意適する方法により作成することができる。好適には触媒作成法の第1段階は、所要の第VIII族金属と促進剤金属とを可溶性塩の形態で含有する溶液により支持材料を含浸させることを含む。この種の塩の例は可溶性ハロゲン誘導体である。含浸溶液は好ましくは水溶液であり、使用する溶液の容積は支持体の気孔容積の50〜100%、好ましくは気孔容積の50〜99%に相応するようにする。
【0024】
含浸された支持体を、金属還元に先立ち周囲圧力もしくは減圧下で周囲温度〜150℃、好ましくは60〜130℃で乾燥させる。この種の物質を金属状態まで変換させるには、含浸支持体をたとえばエチレン、ヒドラジン、ホルムアルデヒドもしくは水素のような還元剤で処理する。水素を用いる場合は、一般に触媒を100〜850℃まで加熱して完全還元を行う必要がある。
【0025】
上記工程を行った後、還元された触媒を水洗し、次いで乾燥させる。次いで乾燥キャリアに所要量の保持促進剤を含浸させた後、乾燥させる。代案として、濡れた還元洗浄物質に補助促進剤を含浸させ、次いで乾燥させる。
【0026】
触媒の作成方法は、酢酸ビニルの収率および選択率を最大化させることに基づき触媒性能を最適化するよう変化させることができる。
【0027】
本発明の方法は、エチレンと液体酢酸と酸素含有ガスとを触媒物質の存在下に反応させることからなっている。エチレンは実質的に純粋な形態で使用することができ、或いは窒素、メタン、エタン、二酸化炭素および水蒸気としての水の1種もしくはそれ以上のまたは水素、C3/C4アルケンもしくはアルカンの1種もしくはそれ以上と混合することもできる。
【0028】
反応器への組合せ供給物におけるエチレンの量は少なくとも60モル%である。組合せ供給物におけるエチレン濃度の上限値は、(a)供給物中に酸素および酢酸反応体を有する必要性、並びに(b)二酸化炭素および他の副生物、さらにたとえば窒素および/またはアルゴンのような不活性ガスを除去するための反応器からのガスパージにおけるエチレンの損失などを含め多くの因子により決定される。好適には、組合せ供給物におけるエチレンの量は85モル%までである。好ましくは、組合せ供給物におけるエチレンの量は少なくとも60〜80モル%の範囲である。
【0029】
より高いエチレン濃度での操作は、二酸化炭素および不活性物質を除去すべく反応システムから排気されるガスにおけるエチレンの損失増加をもたらしうる。しかしながらシステムにおける不活性物質の量を減少させれば、排気せねばならないパージガスの量を減少させることができ、従ってエチレンの損失も減少させることができる。たとえば窒素および/またはアルゴンのような不活性ガスを除去するため反応器からパージガスを排気する必要性は次の方法の1つもしくはそれ以上で削減することができる:
【0030】
エチレン供給ガスにおける、たとえば窒素、メタンおよびエタンのような不活性物質の減少/最小化。
【0031】
酸素供給ガスにおける、たとえば窒素およびアルゴンのような不活性物質の減少/最小化。
【0032】
酢酸供給物における、たとえば溶解窒素のような不活性物質の減少/最小化。
【0033】
たとえばエチレンもしくは二酸化炭素パージを用いることによる、各装置への不活性ガスパージの減少/排除。
【0034】
パージガスとしての二酸化炭素の使用。
【0035】
触媒移行操作からの不活性物質の減少/最小化、またはエチレンもしくは二酸化炭素の使用。
【0036】
スパージャーパージシステムを介する酸素への窒素の漏れの減少/排除。
【0037】
生成物回収の減圧システムへの空気漏れの減少/排除。
【0038】
二酸化炭素除去システム(ベンフィールド)に先立つオフガス予備スクラバーで使用される水における不活性物質の減少/最小化。
【0039】
不活性ガスの使用を減少/最小化させる酸素注入システムの設計。
【0040】
酸素含有ガスは好適には空気または空気より分子状酸素の豊富もしくは貧弱なガスとすることができる。好適にはガスはたとえば窒素、アルゴンもしくは二酸化炭素のような適する希釈剤で希釈された酸素とすることができる。好ましくはガスは酸素である。反応器への組合せ供給物における酸素の量は、たとえば変換率および反応器から流出するガスの可燃性限界などの因子により決定される。好ましくは、反応器への組合せ供給物における酸素の量は4〜15モル%、好ましくは4〜12モル%の範囲である。
【0041】
酢酸は液状で反応器中へ導入することができる。必要に応じ、或る程度の酢酸を蒸気として導入することもできる。酢酸は高度精製する必要がなく、すなわち粗製酢酸とすることができる。好適には液体酢酸を任意適する注入手段により、たとえばガスを用いて液体の噴霧を促進するノズルにより流動床反応器に導入することができ、或いは液体オンリースプレー型ノズルも使用することができる。さらに循環酢酸を反応器中へ導入することもできる。必要に応じ少量の水を含有する循環酢酸を粗製酢酸と予備混合することができ、或いは別途の注入手段により反応器中へ導入することもできる。好適には反応器への組合せ供給物における酢酸の量は10〜20モル%の範囲であり、水の量は反応器中へ流入する酢酸および水の合計に対し6重量%未満、好ましくは4重量%未満、より好ましくは3重量%未満である。
【0042】
この方法は反応器内で行われ、好適には100〜400℃、好ましくは140〜210℃の温度にて操作することができる。
【0043】
この方法は固定床もしくは流動床反応器で行うことができる。
【0044】
未反応エチレンは反応器から抜き取られたガスにより、(i)凝縮性生成物を凝縮によりガスから分離すると共に(ii)工程(i)からのガスをエチレンを回収すべくたとえば膜分離もしくは化学処理により処理する各工程によって回収することができる。凝縮性生成物は抜き取られたガスから、たとえば熱交換器を用いる凝縮により或いは液体酢酸の流れに対し向流によりガスを急冷し、および/または酢酸ビニルを吸収する凝縮性生成物を急冷して分離することができる。
【0045】
化学処理は(a′)工程(i)からのガスをスクラバー内で酢酸と接触させて残留酢酸ビニル生成物を除去し;(b′)工程(a′)の生成物をスクラバー内で水により処理して酢酸を除去し;(c′)二酸化炭素を工程(b′)の生成物におけるエチレンから炭酸カリウムとの接触により除去するという諸工程で構成することができる。ベンフィールド系を用いることができる。
【0046】
【実施例】
以下、実験および添付図面を参照して本発明の前記および他の特徴につきさらに説明する:
【0047】
実験1
(a)流動床触媒支持体の作成
ナルコ・シリカゾル1060(ナルコ・ケミカル・カンパニーから入手)とデグッサ・エアロシル(商標)シリカ(デグッサ・ケミカル・カンパニーから入手)との混合物を噴霧乾燥することにより微小球シリカ支持体を作成した。乾燥支持体において、シリカの80%はゾルから生ずると共にシリカの20%はエアロシル(商標)から生じた。噴霧乾燥された微小球を空気中で640℃にて4時間にわたり焼成した。
【0048】
支持体の粒子寸法分布は次の通りである:
粒子寸法(μm) %
>3x10−4m(>300) 2
4.4x10−5m〜3x10−4m(44〜300) 68
<4.4x10−5m(<44) 30
【0049】
上記粒子寸法分布は限定を意図するものでなく、反応器寸法および操作条件に応じこの分布における変化も考えられると理解すべきである。
【0050】
(b)触媒の作成
上記シリカ支持体(1.0kg)に、蒸留水におけるNa2PdCl4H2O(21.4gのPdを含有)およびHAuCl4H2O(7.23gのAuを含有)の溶液を初期湿潤化により含浸させた。得られた混合物を充分混合し、1時間にわたり静置させ、次いで1晩乾燥させた。
【0051】
次いで含浸物質をゆっくり蒸留水におけるN2H4の2%溶液に添加し、混合物を時々撹拌しながら静置させた。その後、混合物を濾過すると共に4x8.3Lの蒸留水で洗浄した。次いで固体を1晩乾燥させた。
【0052】
この物質にKOAc(76.7g)の水溶液を初期湿潤化により含浸させた。得られた混合物を充分混合し、1時間にわたり静置させ、次いで1晩乾燥させた。
【0053】
(c)酢酸ビニルの作成
0.0381m(1.5″)直径の流動床反応器を用いて酢酸ビニルを作成した。反応器の略図を図1に示す。
【0054】
反応器10は、出口14と第1および第2入口16、18とを有するチューブ状ハウジング12を規定する。反応器10はさらにハウジング12内に位置せしめた焼結グリッド板20をも備える。
【0055】
操作に際し、反応器10には300gの流動床触媒を充填して流動床を形成させる。エチレンと窒素と酸素と気化した酢酸と必要に応じ気化した水とを含む供給ガスを、第1入口16を介し反応器10中へ導入する。酸素および/または窒素を第2入口18を介し反応器10中へ導入する。
【0056】
入口16、18を流過するガスの流れをマスフロー制御器(図示せず)により制御する。酢酸を273g/hrの速度にて反応器10に供給する。酸素を第1および/または第2入口16、18を介し、反応器10中への酸素の全速度が83.3g/hrとなるよう導入する。エチレンの流れを表1に示したように変化させる。一定容積のガス処理量を、窒素の流れを調整して相応に維持する。
【0057】
反応器10の圧力を8bargに制御すると共に、反応器温度を152℃に維持する(流動床内の6カ所にて測定)。反応器10に到る経路および反応器10からの経路の全て(図示せず)を加熱すると共に160℃に維持して、反応器供給物および/または生成物が内部で凝縮しないよう防止する。
【0058】
ガス流出物をクロムパック・モデルCP9000ガスクロマトグラフを用いてオンラインで分析し、この装置にはフレーム・イオン化検出器(FID)および熱伝動率検出器(TCD)の両者を装着する。エチレンと二酸化炭素とをポラプロットUカラムで分離すると共にTCDにより定量する。酸素と窒素とを分子篩カラムで分離すると共にTCDにより定量する。酢酸ビニルと酢酸と他の副生物とをDB1701毛細管カラムで分離すると共にFIDにより定量する。
【0059】
結果および検討
実験1の結果を下表1に示す。
【0060】
【表1】
*比較例
(1)1時間当たり触媒1kgにつき生成された酢酸ビニルのg数。
(2)VA選択率=VA/(VA+1/2CO2)。
【0061】
図2は、供給組成物におけるエチレンの濃度が増加する際に酢酸ビニルの生成速度がどのように変化するかを示す。グラフは、エチレン濃度が20モル%から60モル%まで増加する際に酢酸ビニルの生成速度も増加することを示す。
【0062】
図3は、供給組成物におけるエチレンの濃度が増加する際に一酸化炭素の生成速度がどのように変化するかを示す。グラフは、エチレン濃度が20モル%から60モル%まで増加する際に二酸化炭素の速度が減少することを示す。
【0063】
図4は、エチレンの濃度が増加する際にこの方法の選択率がどのように酢酸ビニルの生成につき益々選択性が大となるかを示す。
【0064】
実験2
(a)流動床触媒支持体の作成
この実験においては、実験1により作成した流動床触媒支持体を用いる。
【0065】
(b)触媒の作成
流動床触媒支持体(54.4kg)に、蒸留水におけるNa2PdCl4H2O(1000gのPdを含有)およびHAuCl4H2O(400gのAuを含有)の溶液を初期湿潤化により含浸させる。得られた混合物を充分混合し、1時間にわたり静置させ、次いで1晩乾燥させた。
【0066】
含浸物質の1部(18kg)をゆっくり蒸留水におけるN2H4の5%溶液に添加する。この混合物を時々撹拌しながら静置させた。その後、混合物を濾過すると共に4x200Lの蒸留水で洗浄した。次いで固体を1晩乾燥させた。
【0067】
この物質にKOAc(1.3kg)の水溶液を初期湿潤化により含浸させた。得られた混合物を充分混合し、1時間にわたり静置させ、次いで1晩乾燥させた。
【0068】
(c)酢酸ビニルの作成
上記実験1の0.0381m(1.5″)直径の流動床反応器を用いて酢酸ビニルを作成する。酢酸を反応器10中へ227g/hrの速度で導入すると共に、酸素を83.3g/hrの速度で導入する。
【0069】
結果および検討
実験2の結果を下表2に示す。
【0070】
【表2】
*比較例
(1)1時間当たり触媒1kgにつき生成された酢酸ビニルのg数。
(2)VA選択率=VA/(VA+1/2CO2)。
【0071】
表2の結果を年代順で示す。実験9、13および17の結果を比較すれば判るように、触媒活性の顕著な低下がこの実験の経過にわたり観察される。この触媒失活は、各例の酢酸ビニルおよび二酸化炭素の生成速度を直接には比較しえないことを意味する。
【0072】
図5は、エチレンの濃度が60モル%を越えて増加する際、この方法の選択率がどのように酢酸ビニルの生成につき益々選択性となるかを示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適具体例で使用する流動床反応器の略図である。
【図2】実験1につき酢酸ビニル生成速度とエチレン濃度との関係を示すプロット図である。
【図3】実験1につき二酸化炭素生成速度とエチレン濃度との関係を示すプロット図である。
【図4】実験1につき酢酸ビニル生成の選択率とエチレン濃度との関係を示すプロット図である。
【図5】実験2につき酢酸ビニル生成の選択率とエチレン濃度との関係を示すプロット図である。
【符号の説明】
10 反応器
12 ハウジング
14 出口
16 第1入口
18 第2入口
20 焼結グリッド板
Claims (14)
- (a)エチレンと酢酸と酸素含有ガスとを反応器中へ導入し;
(b)前記エチレンと酢酸と酸素含有ガスとを、大気圧以上にて前記反応器内で触媒物質の存在下に反応させて酢酸ビニルを生成させ;
(c)前記反応器から未反応エチレンと酢酸ビニルと二酸化炭素副生物と不活性ガスとからなるガスを抜き取り;
(d)前記反応器から抜き取られたガスより未反応エチレンを必要に応じ少量の二酸化炭素および不活性ガスと一緒に回収し;
(e)工程(d)からの回収エチレンおよび追加エチレンを工程(a)における前記反応器に導入し、ここで反応器への組合せ供給物におけるエチレンの量を72〜85モル%とする工程
を含むことを特徴とする酢酸ビニルの製造方法。 - 工程(c)において、不活性ガスが窒素および/またはアルゴンである請求項1記載の方法。
- エチレンを前記反応器から抜き取られた前記ガスより、(i)ガスから凝縮性生成物を分離すると共に(ii)工程(i)からのガスをエチレンを膜分離もしくは化学処理により回収すべく処理する工程により回収する請求項1または2に記載の方法。
- 凝縮性生成物を、熱交換器の使用または酢酸ビニル生成物を吸収する液体酢酸および/または凝縮性生成物の流れに対向して流動するガスの冷却により分離する請求項3に記載の方法。
- 化学処理が、(a′)工程(i)からのガスをスクラバーにて酢酸と接触させることにより残留酢酸ビニル生成物を除去し;(b′)工程(a′)の生成物をスクラバー内で水により処理して酢酸を除去し;(c′)工程(b′)からの生成物におけるエチレンから二酸化炭素を炭酸カリウムとの接触により除去する工程からなる請求項3または4に記載の方法。
- 反応器への組合せ供給物におけるエチレンの量が72〜80モル%の範囲である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 反応器への組合せ供給物における酸素の量が4〜15モル%の範囲である請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 反応器への組合せ供給物における酢酸の量が10〜20モル%の範囲である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- エチレンと酢酸と酸素含有ガスとを前記反応器内で5x104Paゲージ(0.5barg)〜2x106Paゲージ(20barg)の圧力にて反応させる請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- エチレンと酢酸と酸素含有ガスとを前記反応器内で6x10 5 Paゲージ(6barg)〜1.4x10 6 Paゲージ(14barg)の圧力にて反応させる請求項9に記載の方法。
- エチレンと酢酸と酸素含有ガスとを前記反応器内で7x10 5 Paゲージ(7barg)〜1.2x10 6 Paゲージ(12barg)の圧力にて反応させる請求項10に記載の方法。
- 前記触媒物質が第VIII族金属と、金、銅、ニッケルおよびその混合物よりなる群から選択される促進剤と、必要に応じ第I族、第II族、ランタニド族および遷移金属よりなる群から選択される補助促進剤とからなる請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
- 第VIII族金属がパラジウムである請求項12に記載の方法。
- 反応器が流動床反応器からなり、触媒が流動床触媒からなる請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
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