JP4499545B2 - 着色モルタル及び着色コンクリート - Google Patents

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Description

本発明は、建築物の外壁、内壁、柱、梁、天井、軽量コンクリートブロック、歩道用コンクリート平板、鉄筋コンクリートU形(U字溝)、コンクリート境界ブロック、鉄筋コンクリート管、遠心力鉄筋コンクリート管(ヒューム管)、コンクリート積みブロック、インターロッキングブロック、擬木、建築仕上材、耐火被覆材等に使用される、着色されたモルタル及びコンクリートに関するものである。
従来の着色モルタル及び着色コンクリートとしては、混練前のモルタル又はコンクリート中に着色顔料を混合するものがある。例えば、顔料に対して、酸素ガス、無機ガス又は水蒸気のプラズマを照射する低温プラズマ処理を施し、次いで、この処理後の顔料を装置から取り出して水硬性のセメント硬化体原料に混合し、さらにこの混合後のセメント硬化体原料に水を加えてそれを硬化させたものが挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。
また、顔料を合成樹脂エマルジョン中に分散混合して着色エマルジョンとしておき、これを粉末モルタル100重量部に対して1〜20重量部の範囲で添加して着色モルタルを得る方法もある(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、少なくとも着色剤が樹脂中に分散されている樹脂粒子からなるセメント着色用樹脂粒子をセメント中に混合する方法もある(例えば、特許文献3参照。)。
このほか、モルタル若しくはコンクリートを硬化させた後に、表面に塗料を塗装することによって着色する方法もある。例えば、合成樹脂に酸化カルシウムを混ぜ合わせ、この中に水分中に分散させた顔料若しくは染料を添加して着色材料とし、これを型枠に吹付け又は塗布し、この型枠にセメント系硬化材を打設して硬化させ、セメント系硬化材表面に着色層を形成してなるセメント系硬化物の着色・装飾工法が挙げられる(例えば、特許文献4参照。)。
ところが、混練前のモルタル又はコンクリート中に直接、着色顔料を混合した場合や、顔料を合成樹脂エマルジョン中に分散混合して着色エマルジョンとしておき、これを粉末モルタル100重量部に対して1〜20重量部の範囲で添加した場合には、水硬性結合材としてのセメント等の白華によってモルタル又はコンクリートの表面に不均一な白っぽい部分が生じてしまい、均一な着色を行うことが困難であった。
特開平9−301759号公報(第2〜3頁) 特開平10−310462号公報(第2〜3頁) 特開2004−91248号公報(第2〜3頁) 特開平10−146810号公報(第2〜3頁)
解決しようとする問題点は、水硬性結合材と骨材とを含有する着色モルタル又は着色コンクリートにおいて、該着色モルタル又は着色コンクリートの発色が均一でない点である。
請求項1に記載の発明は、水硬性結合材と骨材とを含有するモルタル又はコンクリートにおいて、前記骨材にその外表面を着色塗料によって被覆されている着色骨材を使用するものであって、前記骨材の一部又は全部が水酸化アルミニウムであり、該水酸化アルミニウムの一部又は全部が着色骨材であることを最も主要な特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記水硬性結合材100重量部に対する混練水量が200〜1000重量部であることを最も主要な特徴とする。
請求項1及び2に記載の発明によれば、着色モルタル又は着色コンクリートの発色の均一性に優れ、更に耐火性能に優れるという利点がある。
以下、本発明を具体化した実施形態を説明する。
本発明においてコンクリートとは、水硬性結合材と細骨材と粗骨材とを含有するものをいう。
本発明においてモルタルとは、水硬性結合材と細骨材とを含有するものをいう。
本発明において着色骨材とは、その外表面を着色塗料によって被覆されている骨材をいう。
本発明の着色モルタル又は着色コンクリートは水硬性結合材と骨材とを含有し、前記骨材はその外表面を着色塗料によって被覆されている着色骨材であることが必要である。その組成は例えば以下のようなものである。
着色モルタルの組成例:水硬性結合材としての普通ポルトランドセメント100重量部、着色骨材としての着色5号珪砂200重量部、着色骨材としての着色水酸化アルミニウム50重量部、骨材としての水酸化アルミニウム50重量部、骨材としてのバーミキュライト15重量部、繊維2重量部、増粘剤1重量部、再乳化型粉末樹脂5重量部。
前記水硬性結合材とは水又は溶液と混合したときに反応して硬化する無機質材料をいう。例えば、JIS R 5210に規定されているポルトランドセメント、JIS R 5211に規定されている高炉セメント、JIS R 5212に規定されているシリカセメント、JIS R 5213に規定されているフライアッシュセメント、JIS R 5214に規定されているエコセメント、白色ポルトランドセメント等のセメント、ドロマイトプラスター等のプラスター、石膏、生石灰等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2以上を混合して用いても良い。
前記水硬性結合材はセメントを用いることが好ましく、ポルトランドセメントを用いることがより好ましい。水硬性結合材がセメントであることにより、着色モルタル又は着色コンクリートの圧縮強度に優れるとともに、早期強度が大きく、発熱量が大きいため、厳寒期でも使用することができる。また、水硬性結合材がポルトランドセメントであることにより、短期強度の発現性に優れるとともに長期強度に優れる。
前記ポルトランドセメントとしては例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等が挙げられる。
前記着色モルタル100重量部中に占める水硬性結合材の含有量は好ましくは3〜20重量部、より好ましくは5〜15重量部、最も好ましくは8〜10重量部である。この範囲にあるとき、水と混練して硬化した後の着色モルタルの緻密性が疎となるため、水に溶けた水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等の可溶性成分がコンクリート表面に染み出しやすくなる。このため、該可溶性成分が空気中の二酸化炭素と十分に反応することができ、反応の結果として生じた水に難溶な炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等をモルタル又はコンクリート表面に均一に沈着させることができる。また、着色モルタルの緻密性が疎であることにより、可溶性成分の大部分がモルタル又はコンクリート表面に溶出するため、それ以上の溶出を抑制することができ、着色モルタルの発色の均一性に優れる。
前記着色モルタル100重量部中に占める水硬性結合材の含有量が3重量部未満の場合には、得られる着色モルタルの圧縮強度が低すぎて実用的でない。逆に20重量部を超える場合には、モルタル中の可溶性成分の含有量が多いため、該可溶性成分の一部がモルタル表面へ溶出するのみで、溶出量が均一でない。このため、着色モルタルの白華及び発色の均一性が十分でない。
前記白華とは、硬化後のモルタル又はコンクリート表面に白色の粉が浮き出ることをいい、モルタル又はコンクリート中に含まれる水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等の可溶性成分が水に溶け、コンクリート表面に染み出たところで、空気中の二酸化炭素と反応して、水に難溶な炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等が生じ、モルタル又はコンクリート表面に沈着したものである。
前記骨材とはモルタル、コンクリートの骨格となる材料をいい、増量材、充填材としての役割を果たすものである。骨材としては例えば、川砂、川砂利、海砂利、海砂、山砂利、山砂、砕石、砕砂等の石砂骨材、パーライト、バーミキュライト、珪藻土、ガラス粉発泡体等の軽量骨材、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の吸熱骨材、ガラスビーズ、プラスチックビーズ等のビーズ骨材、寒水砂、寒水石、黒曜石、真珠岩、珪石、大理石等の天然石、陶磁器粉砕物等が挙げられる。
前記骨材として吸熱骨材を用いた場合には、着色モルタル又は着色コンクリートが火災時の燃焼熱にさらされた場合でも、吸熱骨材が燃焼熱を吸収することによって、着色モルタル又は着色コンクリートの温度上昇を抑制することができる。従って、着色モルタル又は着色コンクリートが施工された基材の温度上昇を抑制することができる。
前記吸熱骨材は水酸化アルミニウムを用いることが好ましい。吸熱骨材として着色骨材を用いることにより、火災時の燃焼熱の吸収性に優れるため、着色モルタル又は着色コンクリートの温度上昇を抑制する効果に優れる。
前記骨材は粒径によって細骨材と粗骨材とに区別される。細骨材とは粒径が5mm以下の粒群をいい、前記粗骨材とは粒径が5mm以上の粒群をいう。
前記着色モルタル又は着色コンクリートは着色骨材を含有していることが必要である。着色モルタル又は着色コンクリートが着色骨材を含有していることにより、濃い発色を得るために粒子径が小さな着色顔料を多量に使用する必要がないため、モルタル又はコンクリート中の骨材比率を最適に調整することができ、圧縮強度に優れる。また、下地の吸水性が異なる場合でも発色を均一にすることができる。
前記着色モルタル又は着色コンクリートは着色顔料を直接、混合していないことが好ましい。着色モルタル又は着色コンクリートに着色顔料を直接、混合しないことにより、一旦施工した着色モルタル又は着色コンクリートに欠損部が生じていた場合において、該欠損部を補修する際に、後から塗り継いだ着色モルタル又は着色コンクリートの発色性の違いを抑制することができる。着色モルタル又は着色コンクリートに着色顔料を直接混合した場合には、下地による水の吸い込み量が異なるため、補修を行った部分と行っていない部分とで、着色モルタル又は着色コンクリートの発色が異なる。
前記着色骨材は細骨材のみであることが好ましい。着色骨材が細骨材であることにより、施工時のコテ押さえ等によって、硬化前のモルタル又はコンクリート表面に圧力がかかった場合において、モルタル又はコンクリート表面に露出する表面積が大きいため、着色骨材の相対的な使用量を抑制することができる。従って、着色塗料の使用量を抑制することができる。逆に粗骨材も着色骨材とした場合には、コテ押さえ等により、粗骨材の表面積の大部分はモルタル又はコンクリート中に埋もれてしまうため、発色にほとんど影響を及ぼさず、着色塗料の使用量が増大する。
前記着色骨材の粒子径は好ましくは40〜4000μm、より好ましくは50〜1500μm、最も好ましくは70〜1000μmである。この範囲にあるとき、着色モルタル又は着色コンクリートの発色性に優れる。着色骨材の粒子径が40μm未満の場合には、骨材の単位重量あたりの表面積が大きくなることで塗料の使用量が多くなり、着色骨材の製造時における乾燥が遅くなるおそれがある。逆に4000μmを超える場合には、骨材1粒当たりの表面積が大きくなるために、着色塗料による骨材表面の被覆を均一にすることが困難になり、まだらになるおそれがある。
前記骨材の外表面が着色塗料によって被覆されていることにより、モルタル又はコンクリートの表面に着色された部分を点在させることができるため発色の鮮明度に優れるとともに、着色塗料は骨材の表面に薄く被覆されるので、着色顔料の使用量を抑制することができる。
逆に、モルタル又はコンクリート中に直接、着色顔料を混合した場合には、モルタル又はコンクリート中に均一に分散されてしまうため、発色の鮮明度が十分でない。また、発色を濃くしようとする場合には、多量の着色顔料を使用する必要があり、この場合にはモルタル又はコンクリートが最密充填構造から外れてしまう要因となるため、圧縮強度が十分でない。また、下地の吸水性に差がある場合には、吸水が大きい部分と吸水が小さい部分とで発色が異なる場合があるため、均一な発色を得ることが困難である。
前記着色塗料は骨材を着色し、該骨材の外表面を被覆するために用いられる。塗料の組成としては例えば以下のようなものである。
塗料の組成例:合成樹脂としてのアクリル樹脂エマルジョン100重量部、着色顔料としてのオキサイドイエロー1重量部、増粘剤1重量部。
前記合成樹脂は着色顔料を骨材の表面に固着させるために用いられる。合成樹脂としては例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても、2以上を混合又は共重合させて用いても良い。又、前記合成樹脂の使用形態はエマルジョン又はサスペンション等の水に分散した形態で用いても良く、有機溶媒中に溶解させて用いても良い。
前記着色塗料は撥水性を有することが好ましい。着色塗料が撥水性であることにより、着色骨材の外表面が水硬性結合材としてのセメントスラリーによって被覆されることを抑制することができるため、より発色を鮮明にすることができる。
前記水硬性結合材としての普通ポルトランドセメントを100重量部とした場合の着色骨材の混合割合は好ましくは100〜3000重量部、より好ましくは200〜2000重量部、最も好ましくは300〜1000重量部である。この範囲にあるとき、水硬性結合材の白華による白ボケを最小限に抑制することができるため着色モルタル又は着色コンクリートの発色性に優れるとともに、水硬性結合材と骨材着色との充填状態が最密充填に近づくためモルタル又は着色コンクリートの圧縮強度に優れる。
前記水硬性結合材としての普通ポルトランドセメントを100重量部とした場合の着色骨材の混合割合が100重量部未満の場合には、水硬性結合材としての普通ポルトランドセメントの白華により、着色モルタル又は着色コンクリートの発色が白くぼけてしまう。逆に着色骨材の混合割合が3000重量部を超える場合には、水硬性結合材と着色骨材との充填状態が最密充填から大きく離れるため、着色モルタル又は着色コンクリートの圧縮強度が十分でない。
前記白華とは、硬化後のモルタル又はコンクリートの表面に白い粉状物が浮き出てくる現象をいう。この現象は、水硬性結合材中に含有されているナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ(土類)金属イオンと大気中の二酸化炭素とが酸塩基反応を生ずることにより炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の炭酸塩の結晶が生成され、硬化後の水硬性結合材の表面に析出することにより生ずる。
前記繊維は着色モルタル又は着色コンクリートのひび割れを抑制するために使用、通常のモルタル又はコンクリートに使用するものを任意に設定することができる。例えばアクリル繊維、ビニロン樹脂繊維等の合成樹脂繊維、パルプ、綿、絹、羊毛等の天然繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機繊維等が挙げられる。
前記再乳化型粉末樹脂は合成樹脂エマルジョンを乾燥等により粉末化したものであり、水と混合して元のエマルジョンになるものであれば任意に設定することができる。例えば、アクリル酸エステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、バーサチック酸エステル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。再乳化型粉末樹脂を用いることにより、着色モルタル又は着色コンクリートの基材への密着性を向上することができるとともに、水で混練することにより施工が可能となる。
以上のように構成された着色骨材は例えば次のような工程を経て製造される。まず初めに骨材を収容容器に収容し、撹拌装置としてのミキサーにより撹拌を行いながら、前記着色塗料を塗装器具としてのスプレーによって骨材の表面に均一になるように噴霧する。次に該骨材の表面に着色塗料が均一に付着した状態で、乾燥装置としての振動乾燥機を用いることによって骨材に振動を与えながら、熱源としての熱風をあてて骨材を乾燥させる。このようにして着色骨材を得る。
以上のように製造された着色モルタルは次のように施工される。まず始めに、施工現場において着色モルタルを混練水としての水と混合し、圧送機としてのモルタルポンプを用いて、基材としての鉄骨構造体の外表面に被覆厚10mmで吹付け施工する。施工後、普通ポルトランドセメントの水和反応により、着色モルタルが硬化し、着色モルタルによって被覆された鉄骨構造体を得る。
前記混練水量は着色モルタル100重量部に対して、好ましくは30〜150重量部、より好ましくは50〜120重量部、最も好ましくは60〜100重量部である。この範囲にあるとき、着色モルタルに適度な流動性を付与することができるとともに、水の界面張力によって鉄骨構造体への付着力を付与することができる。混練水量が30重量部未満の場合には、着色モルタルは流動性に欠けるため吹付が困難になるとともに、付着力が低下する。逆に150重量部を超える場合には、流動性が過多となり、タレが生じて所定の被覆厚を形成するための吹付施工回数が増加する。
前記着色モルタルの組成中、水硬性結合材100重量部に対する混練水量は好ましくは200〜1000重量部、より好ましくは300〜900重量部、最も好ましくは400〜800重量部である。この範囲にあるとき、水と混練して硬化した後の着色モルタルの緻密性が疎となるため、水に溶けた水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等の可溶性成分がコンクリート表面に染み出しやすくなる。このため、該可溶性成分が空気中の二酸化炭素と十分に反応することができ、反応の結果として生じた水に難溶な炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等をモルタル又はコンクリート表面に均一に沈着させることができる。また、着色モルタルの緻密性が疎であることにより、可溶性成分の大部分がモルタル又はコンクリート表面に溶出するため、それ以上の溶出を抑制することができ、着色モルタルの発色の均一性に優れる。
前記着色モルタルの組成中、水硬性結合材100重量部に対する混練水量が200重量部未満である場合には、水と混練して硬化した後の着色モルタルが緻密になるため、可溶性成分がコンクリート表面に染み出しにくくなる。そのため白華が徐々に進行し、発色の均一性が十分でない。逆に1000重量部を超える場合には、着色モルタルの圧縮強度が低下してしまうおそれがある。
前記圧送機はモルタルポンプに限らず、着色モルタルを圧力により排出するものであれば任意に設定することができる。圧送機を使用することにより、施工速度を向上することができる。
前記施工は吹付けに限らず、コテ塗り、ハケ塗り等、建築仕上材の施工に用いられる通常の施工方法を用いることができる。また、着色モルタルを水と混練して板状に成形し、ビス等により基材としての鉄骨構造体に固定しても良い。
以上のようにして施工された着色モルタルは、その組成中に着色骨材を含有していることにより、モルタルの表面に着色骨材を点在させることができる。このため、発色の鮮明度に優れるとともに、組成中における骨材の充填比率が最適であるために圧縮強度に優れているので、外部からの衝撃を受けた場合でも欠落を生じるおそれが小さい着色モルタルを得ることができる。
前記着色モルタルが火災時の燃焼熱にさらされた場合には、該着色モルタルの組成中、吸熱骨材としての水酸化アルミニウムの脱水反応により、基材としての鉄骨構造体の温度上昇を抑制し、該構造体が崩壊に至るまでの時間を延長することができる。
本実施形態は以下に示す効果を発揮することができる。
・前記着色モルタル又は着色コンクリートが着色骨材を含有していることにより、濃い発色を得るために粒子径が小さな着色顔料を多量に使用する必要がないため、モルタル又はコンクリート中の骨材比率を最適に調整することができ、圧縮強度に優れている。
・前記着色骨材が細骨材のみであることにより、施工時のコテ押さえ等によって、硬化前のモルタル又はコンクリート表面に圧力がかかった場合において、モルタル又はコンクリート表面に露出する表面積が大きいため、着色骨材の相対的な使用量を抑制することができる。
・前記着色骨材の粒子径が40〜4000μmであることにより、着色モルタル又は着色コンクリートの発色性に優れている。
・前記骨材の外表面を着色塗料によって被覆することにより、モルタル又はコンクリートの表面に着色された部分を点在させることができるため発色の鮮明度に優れるとともに、着色塗料は骨材の表面に薄く被覆されるので、着色顔料の使用量を抑制することができる。
・前記着色塗料が撥水性であることにより、着色骨材の外表面が水硬性結合材としてのセメントスラリーによって被覆されることを抑制することができるため、より発色を鮮明にすることができる。
・前記骨材として吸熱骨材を用いることにより、着色モルタル又は着色コンクリートが火災時の燃焼熱にさらされた場合でも、吸熱骨材が燃焼熱を吸収することによって、着色モルタル又は着色コンクリートの温度上昇を抑制することができる。
なお、本発明の前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・前記着色モルタル又は着色コンクリートに空気連行剤(AE剤)を混合しても良い。
このように構成した場合、着色モルタル又は着色コンクリート中に小さな空気泡を形成させることができるため、着色モルタル又は着色コンクリートが凍結融解を繰り返した場合において、含有水の凍結による膨張圧を緩和することができ、風化を抑制することができる。
・前記着色モルタル又は着色コンクリートに減水剤を混合しても良い。
このように構成した場合、所定の作業性を得るために必要な水量及びセメント量を減らすことできるため、着色モルタル又は着色コンクリートの硬化による収縮を小さくすることができる。
・前記着色モルタルが吸熱骨材を含有する場合において、該吸熱骨材の外表面を着色塗料で被覆することによって着色骨材としても良い。
このように構成した場合、吸熱骨材が燃焼熱を吸収することによって、耐火被覆材によって被覆されている鉄骨構造体の温度上昇を抑制することができるため、耐火性能に優れる。また、吸熱骨材の外表面が着色塗料で被覆されていることにより、吸熱骨材が火災時の燃焼熱を効率的に吸収することができ、温度の上昇による吸熱反応の発現が早まるとともに発色性に優れる。
・前記着色モルタルに吸水樹脂粉末を含有させても良い。
このように構成した場合、着色モルタルを水と混練した場合において、吸水樹脂粉末が多量の水分を吸収することによって、着色モルタルの乾燥を抑制することができる。このことにより、着色モルタルの組成中、モルタル又はコンクリート中に含まれる水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等の可溶性成分の大部分を水に溶出させることができるため、これ以上の白華の進行を抑制することができるとともに、白華を均一にすることができる。したがって、均一な発色を得ることができる。
次に、前記実施形態から把握される請求項に記載した発明以外の技術的思想について、それらの効果と共に記載する。
(1)吸水樹脂粉末を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の着色耐火被覆材料。
このように構成した場合、着色モルタルを水と混練した場合において、吸水樹脂粉末が多量の水分を吸収することによって、着色モルタルの乾燥を抑制することができる。
以下、前記実施形態を具体化した実施例及び比較例について説明する。
試験に使用した着色モルタルの組成は以下の通りである。
試験に使用した着色モルタルの組成:水硬性結合材としての白色ポルトランドセメント100重量部、骨材としてのパーライト100重量部、着色吸熱骨材としての外表面が着色された水酸化アルミニウム100重量部、粉末樹脂5重量部、アクリル樹脂繊維10重量部、増粘剤5重量部。なお、前記水酸化アルミニウムの100重量部のうち、着色に使用した着色塗料の乾燥重量は3重量部であり、該着色塗料1重量部の組成中、着色顔料が占める割合は0.1重量部であった。
まず初めに、該着色モルタル320重量部を所定の混練水で「JIS R 5201−1997 8.3.1 セメントペーストの練混ぜ」に準拠して混練し、混練後のモルタルペーストを「JIS R 5201−1997 10.1(2) モルタル供試体成形用型」に記載されているモルタル供試体成形用型に型詰めして成形した。その後、20℃、90RH%の養生室内で28日間養生した後に脱型して試験体とした。評価は相対評価とし、発色が均一なものを○、発色が不均一なものを×、どちらともいえないものを△として評価した。また、「JIS R 5201−1997 10.6.1 圧縮強さ」に準拠して圧縮強度も測定した。
(実施例1)
実施例1の試験体の混練水量は着色モルタルの組成中、水硬性結合材100重量部に対して200重量部であった
試験の結果、発色の均一性は△、圧縮強度は1.1N/mmであった。
(実施例2)
実施例2の混練水量は着色モルタルの組成中、水硬性結合材100重量部に対して300重量部であった
試験の結果、発色の均一性は○、圧縮強度は1.1N/mmであった。
(実施例3)
実施例3の混練水量は着色モルタルの組成中、水硬性結合材100重量部に対して900重量部であった
試験の結果、発色の均一性は○、圧縮強度は1.0N/mmであった。
(実施例4)
実施例4の混練水量は着色モルタルの組成中、水硬性結合材100重量部に対して1000重量部であった
試験の結果、発色の均一性は○、圧縮強度は0.7N/mmであった。
(比較例1)
比較例1の試験体の混練水量は着色モルタルの組成中、水硬性結合材100重量部に対して100重量部であった。
試験の結果、発色の均一性は×、圧縮強度は1.1N/mmであった。
(比較例2)
比較例2の混練水量は着色モルタルの組成中、水硬性結合材100重量部に対して1100重量部であった。
試験の結果、発色の均一性は○、圧縮強度は0.3N/mmであった。
なお、本明細書に記載されている技術的思想は以下に示す発明者により創作された。
段落番号[0001]〜[0071]に記載されている技術的思想は加藤圭一により創作された。また、願書に添付した特許請求の範囲、明細書の著作者は加藤圭一である。

Claims (2)

  1. 水硬性結合材と骨材とを含有するモルタル又はコンクリートにおいて、前記骨材にその外表面を着色塗料によって被覆されている着色骨材を使用するものであって、前記骨材の一部又は全部が水酸化アルミニウムであり、該水酸化アルミニウムの一部又は全部が着色骨材であることを特徴とする着色モルタル又は着色コンクリート。
  2. 前記水硬性結合材100重量部に対する混練水量が200〜1000重量部であることを特徴とする請求項1に記載の着色モルタル又は着色コンクリート。
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