JP4499344B2 - 樹脂組成物とそれを用いたプリプレグ,積層板および多層プリント回路板 - Google Patents

樹脂組成物とそれを用いたプリプレグ,積層板および多層プリント回路板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高周波信号に対応するための誘電損失の小さな多層プリント回路板、導体付積層板、プリプレグ、並びに、これらに用いる難燃性で低誘電正接の樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、PHS,携帯電話等の情報通信機器の信号帯域,コンピュータのCPUクロックタイムはGHz帯に達し、高周波数化が進行している。
【0003】
電気信号の誘電損失は、回路を形成する絶縁体の比誘電率の平方根,誘電正接および使用される信号の周波数の積に比例する。そのため、使用される信号の周波数が高いほど誘電損失が大きくなる。
【0004】
誘電損失は、電気信号を減衰させて信号の信頼性を損なうので、これを抑制するために絶縁体には誘電率,誘電正接の小さな材料を選定する必要がある。絶縁体の低誘電率化および低誘電正接化には、分子構造中の極性基の除去が有効である。こうしたものとしては、フッ素樹脂,硬化性ポリオレフィン,シアネートエステル系樹脂,硬化性ポリフェニレンオキサイド,アリル変性ポリフェニレンエーテル,ジビニルベンゼンまたはジビニルナフタレンで変性したポリエーテルイミド等が提案されている。
【0005】
例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂は、誘電率,誘電正接共に低く、高周波信号を扱う基板材料に使用されている。これに対して、有機溶剤に可溶で取り扱い易い、非フッ素系の低誘電率で低誘電正接の樹脂も種々検討されてきた。
【0006】
例えば、特開平8−208856号公報のポリブタジエン等のジエン系ポリマーをガラスクロスに含浸して過酸化物で硬化した例、特開平10−158337号公報のノルボルネン系付加型重合体にエポキシ基を導入し、硬化性を付与した環状ポリオレフィンの例がある。
【0007】
また、特開平11−124491号公報のシアネートエステル,ジエン系ポリマーおよびエポキシ樹脂を加熱してBステージ化した例、特開平9−118759号公報のポリフェニレンオキサイド,ジエン系ポリマーおよびトリアリルイソシアネートからなる変性樹脂の例がある。
【0008】
また、特開平9−246429号公報のアリル化ポリフェニレンエーテルおよびトリアリルイソシアネート等からなる樹脂組成物の例がある。
【0009】
さらに、特開平5−156159号公報のポリエーテルイミドとスチレン,ジビニルベンゼンまたはジビニルナフタレンとをアロイ化した例がある。さらにまた、特開平5−78552号記載のジヒドロキシ化合物とクロロメチルスチレンからウイリアムソン反応で合成した例えばヒドロキノンビス(ビニルベンジル)エーテルとノボラックフェノール樹脂からなる樹脂組成物の例等が挙げられる。
【0010】
一方、前述の絶縁材料には、適用製品の安全性の観点から難燃化が必須の事項である。従来から赤燐,燐酸エステル,含窒素化合物,ハロゲン化物,金属水和物,金属酸化物等の難燃剤の添加が検討されてきた。例えば、メラミン等の窒素化合物,ポリオールおよび有機リン酸エステルを複合して用いる特開平4−117442号公報の例がある。
【0011】
金属酸化物を用いた特開平9−104821号公報や、金属水和物とチタン酸カリウムを用いた例、リン化合物と含窒素化合物を用いた特開2000−26553号公報、赤燐と金属水和物を用いた特開2000−106041号公報がある。
【0012】
また、ハロゲン化物を用いた特開平6−106676号公報など多数の例が挙げられる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような低誘電率,低誘電正接材を用いて難燃化を図った材料においても、今後の高周波機器に対応するためには誘電特性が十分ではない。
【0014】
本発明の目的は、従来材に比べて優れた誘電特性を有する多官能スチレン化合物を含む低誘電正接の樹脂組成物の低誘電率および低誘電正接性を損なうことなく、難燃化を図った難燃性の樹脂組成物を提供することにある。
【0015】
また、上記樹脂組成物を用いたプリプレグ,積層板および多層プリント回路板を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
多官能スチレン化合物の硬化物は極めて低い誘電率と誘電正接を有し、その値は測定周波数10GHzにおいて誘電率が約2.5、誘電正接が0.002未満である。
【0017】
上記特性を損なわずに樹脂組成物の硬化物に、難燃性を付与する難燃剤を種々検討した結果、組成物中にブロム化合物を添加した場合、難燃性が付与できることを確認した。特に、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、1,2−ビス(テトラブロモフタルイミド)エタンは、構造中に極性基を持たないこと、および、Br含有率が高いことから、その添加量が少なくても難燃効果が高く、誘電率への影響が少ない。
【0018】
さらにアンチモン系化合物を添加することによって、ブロム化合物の添加量を一層低減することができる。なお、本発明の樹脂組成物はプリプレグ,積層板,多層プリント回路板に加工することができる。
【0019】
次ぎに本発明の樹脂組成物およびその硬化物について説明する。本発明の樹脂組成物は、式〔1〕
【0020】
【化2】
Figure 0004499344
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭化水素を、R2,R3,R4は互いに異なってもよい水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を、R5,R6,R7,R8は異なってもよい水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を、nは2以上の整数を表す)で示される多官能のスチレン基を有する重量平均分子量1000以下の架橋成分を含み、かつ、ブロム化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物である。
【0021】
上記ブロム化合物は特に制限はないが、ブロム含有率が高く難燃効果が高い1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、1,2−ビス(テトラブロモフタルイミド)エタンが好ましい。その添加量は、組成物中の樹脂成分を100重量部として1〜30重量部とすることが望ましく、本範囲で十分な難燃性を得ることができる。
【0022】
上記範囲よりもブロム化合物の添加量が少ない場合は、十分な難燃効果が得られない場合があり、また、上記範囲よりも添加量が多いと誘電特性の低下、耐熱性の低下等の問題を生じる場合がある。
【0023】
また、難燃助剤としてアンチモン化合物を添加することによって、ブロム化合物の添加量を低減することができる。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン,四酸化アンチモン,五酸化アンチモン,アンチモン酸ソーダが挙げられる。その添加量は0.1〜10重量部の範囲が好ましい。この範囲よりも添加量が少ないと難燃性の向上が認められない場合があり、逆に多いと誘電特性が低下する場合がある。
【0024】
本発明の組成物では、さらに高分子量体を添加することによって、樹脂組成物に成膜性,強度,伸び,接着性を付与することができる。
【0025】
該高分子量体としてはブタジエン,イソプレン,スチレン,メチルスチレン,エチルスチレン,ジビニルベンゼン,アクリル酸エステル,アクリロニトリル,N−フェニルマレイミドおよびN−ビニルフェニルマレイミドの少なくとも一種からなる重合体,置換基を有していてもよいポリフェニレンオキサイド,並びに脂環式構造を有するポリオレフィン等が挙げられる。
【0026】
上記高分子量体の添加量には特に制限はないが、架橋成分が5〜95重量部,高分子量体が95〜5重量部の範囲が好ましい。この範囲内で強度,伸び,接着力の向上等目的に応じて組成を調整できる。特に好ましい範囲としては架橋成分が50〜80重量部、高分子量体が50〜20重量部の範囲で、これにより高分子量体が架橋性の官能基を有していない場合でも耐溶剤性が保たれる。
【0027】
さらに、本発明の樹脂組成物にはスチレン基を重合し得る硬化触媒、または、スチレン基の重合を抑制し得る重合禁止剤を添加することによって、熱硬化効率の向上,保存安定性の向上を図ることができる。
【0028】
本発明に用いられる多官能スチレン化合物は硬化触媒を添加しなくとも硬化することができるが、硬化触媒を添加することによって、多官能スチレン化合物の硬化を促進することができる。これにより低温での硬化が可能となる。
【0029】
その添加量としては誘電率,誘電正接に影響を与えない範囲に設定することが好ましく、組成物中の樹脂成分の総量を100重量部に対し0.0005〜10重量部とすることが望ましい。
【0030】
スチレン基の重合を開始し得るカチオンまたはラジカル活性種を、熱または光によって生成する硬化触媒を以下に示す。
【0031】
カチオン重合開始剤としてはBF4、PF4、AsF6、SbF6を対アニオンとするジアリルヨードニウム塩,トリアリルスルホニウム塩および脂肪族スルホニウム塩が挙げられる。こうしたものとして旭電化工業製SP−70、172、CP−66、日本曹達製CI−2855、2823、三新化学工業製SI−100LおよびSI−150L等の市販品を使用することができる。
【0032】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインおよびベンゾインメチルのようなベンゾイン系化合物,アセトフェノンおよび2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンのようなアセトフェノン系化合物,チオキサントンおよび2,4−ジエチルチオキサントンのようなチオキサンソン系化合物,4,4'−ジアジドカルコン,2,6−ビス(4'−アジドベンザル)シクロヘキサノンおよび4,4'−ジアジドベンゾフェノンのようなビスアジド化合物、アゾビスイソブチルニトリル、2,2−アゾビスプロパン、m,m'−アゾキシスチレンおよびヒドラゾンのようなアゾ化合物、並びに、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジクミルパーオキシドのような有機過酸化物等が挙げられる。
【0033】
特に、官能基を持たない化合物の水素引き抜きを生じ、架橋成分と高分子量体間の架橋をもたらし得る有機過酸化物またはビスアジド化合物を添加することが望ましい。
【0034】
重合禁止剤は、本発明の組成物の保存安定性を増す働きをするもので、その添加量は誘電特性、硬化時の反応性を著しく阻害しないような範囲であることが好ましい。組成物中の樹脂成分の合計100重量部に対して、0.0005〜5重量部とすることが望ましい。重合禁止剤を前記範囲で添加すると、保存時の余計な架橋反応を抑制でき、また、硬化時に著しい硬化障害をもたらすこともない。
【0035】
こうした重合禁止剤としては、ハイドロキノン,p−ベンゾキノン,クロラニル,トリメチルキノン,4−t−ブチルピロカテコール等のキノン類および芳香族ジオール類が挙げられる。
【0036】
本発明の組成物は、有機または無機のクロスまたは不織布に含浸し、乾燥させることによりプリプレグとして用いる。プリプレグの基材については特に制限はなく、各種ガラスクロス,ガラス不織布,アラミド不織布および多孔質PTFE等を用いることができる。
【0037】
プリプレグは、樹脂組成物を用いて作製したワニスに、基材となるクロスまたは不織布を浸漬することで含浸し、これを乾燥することにより作製される。含浸後の乾燥条件は樹脂組成物にもよるが、例えば、溶媒としてトルエンを使用した場合は、80〜130℃,30〜90分程度乾燥することが好ましい。
【0038】
本発明のプリプレグに電解銅箔等の導体箔を重ね、加熱プレス加工することによって、表面に導体層を有する積層板を作製する。銅箔の厚さは12〜36μm程度が好ましい。プレス加工の条件は用いる樹脂組成物によるが、例えば、高分子量体としてポリフェニレンエーテルを使用した場合には、150〜240℃、1〜5MPaで1〜3時間成形するのが好ましい。
【0039】
上記積層板の導体層を通常のエッチング法によって配線加工し、これを前記プリプレグを介して複数積層し、加熱プレス加工によって多層化し、多層プリント回路板を作製する。このようにして得られた多層プリント回路板は誘電率,誘電正接が低く,難燃性を有する。即ち、伝送特性と安全性に優れた多層プリント回路板となる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を実施例、並びに、比較例を示して説明する。なお、説明中に部とあるのは、特に断りのない限り重量部を指す。
【0041】
表1,2に本発明の実施例と比較例の組成およびその特性を示す。
【0042】
【表1】
Figure 0004499344
【表2】
Figure 0004499344
以下に実施例および比較例に使用した試薬の名称,合成方法,ワニスの調製法および硬化物の評価方法を説明する。
【0043】
(1) 1,2−ビス(ビニルフェニル)エタン(BVPEと呼ぶ)の合成
BVPEは、以下に示す公知の方法で合成した。500mlの3つ口フラスコにグリニャール反応用粒状マグネシウム(関東化学製)5.36g(220mmol)を採り、滴下ロート、窒素導入管およびセプタムキャップを取り付けた。窒素気流下、スターラによってマグネシウム粒を攪拌しながら、系全体をドライヤーで加熱脱水した。
【0044】
乾燥テトラヒドロフラン300mlをシリンジに採り、セプタムキャップを通じて注入した。溶液を−5℃に冷却後、滴下ロートを用いてビニルベンジルクロライド(VBC、東京化成製)30.5g(200mmol)を、約4時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃/20時間攪拌を続けた。反応終了後、反応溶液をろ過して残存マグネシウムを除き、エバポレータで濃縮した。
【0045】
該濃縮溶液をヘキサンで希釈し、3.6%塩酸水溶液で1回、純水で3回洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで脱水した。
【0046】
脱水溶液をシリカゲル(和光純薬製ワコーゲルC300)/ヘキサンのショートカラムに通して精製し、真空乾燥してBVPEを得た。得られたBVPEはm−m体(液状)、m−p体(液状)、p−p体(結晶)の混合物であり、収率は90%であった。1H−NMRによって構造を調べたところ、その値は文献値と一致した(6H−ビニル:α−2H、6.7ppm、β−4H:5.7、5.2ppm、8H−アロマティック:7.1〜7.35ppm、4H−メチレン:2.9ppm)。このBVPEを架橋成分として用いた。
【0047】
(2) その他の試薬
▲1▼ 高分子量体;PPE:アルドリッチ製、ポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド
▲2▼ 難燃剤;
SAYTEX8010:アルべマール浅野(株)製、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン
SAYTEX BT−93:アルベマール浅野(株)製、1,2−ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン
▲3▼ 難燃助剤;三酸化アンチモン:関東化学製
▲4▼ 硬化触媒;25B:日本油脂製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3
(3) ワニスの調製法
所定量の高分子量体,架橋成分およびブロム化合物,三酸化アンチモン,クロロホルムをボールミルにて約8時間攪拌して溶解,分散することによって樹脂組成物のワニスを調製した。
【0048】
(4) 樹脂板の作製
前記ワニスをPETフィルムに塗布して乾燥後、これを剥離してポリテトラフロロエチレン製のスペーサ内に所定量入れ、ポリイミドフィルムおよび鏡板を介し、真空下で加熱,加圧して硬化物の樹脂板を得た。加熱条件は120℃/30分、150℃/30分、180℃/100分で、プレス圧力1.5MPaの多段階加熱とした。樹脂板の大きさは70mm×70mm×1.5mmとした。
【0049】
(5) プリプレグの作製
プリプレグは、前記ワニスをガラスクロス(日東紡製#2116)に含浸し、室温にて約1時間、90℃で60分間乾燥することにより作製した。
【0050】
(6) プリプレグ硬化物の作製
積層板とした際の特性を知るため、前記のプリプレグを10枚重ねて真空下、加熱および加圧して模擬基板を作製した。加熱条件は120℃/30分、150℃/30分、180℃/100分、プレス圧力1.5MPaの多段階加熱とした。模擬基板は70mm×70mm×1.5mmとした。
【0051】
(7) 誘電率および誘電正接の測定
誘電率、誘電正接の測定は、空胴共振器摂動法(アジレントテクノロジー製、8722ES型ネットワークアナライザー、関東電子応用開発製空胴共振器)によって、10GHzでの値を観測した。
【0052】
(8) 難燃性
難燃性は、サンプルサイズ70mm×3mm×1.5mmの試料を用いてUL−94規格に基づき実施し、平均燃焼時間と最大燃焼時間を観測した。
【0053】
〔比較例1〕
比較例1は、ブロム化合物を添加していない樹脂組成物から作製した樹脂板である。誘電特性は優れているものの、難燃剤を含んでいないため難燃性を有していなかった。
【0054】
〔実施例1〜3〕
実施例1〜3は、所定の組成物に種々の配合比でブロム化合物を添加した。ブロム化合物であるSAYTEX8010を添加したことによって、比較例1に比べて燃焼時間が短くなることが分かった。この時、誘電率は2.51〜2.53、誘電正接は0.0028〜0.003と低い値を示した。これにより優れた誘電特性を有する難燃性の樹脂組成物が得られることが分かった。
【0055】
〔実施例4〜6〕
実施例4〜6は、比較例1の樹脂組成物にブロム化合物を種々の量添加した組成物から樹脂板を作製した。ブロム化合物であるSAYTEXBT−93を添加することにより難燃性が向上することが確認された。この時、誘電率は2.52〜2.55、誘電正接は0.0026〜0.0032と低い値であった。これにより、優れた誘電特性を有する難燃性樹脂組成物が得られることが分かった。
【0056】
〔実施例7〕
実施例1のワニスを用いてプリプレグを作製した。作製したプリプレグはタックフリー性を有していた。本プリプレグを10枚重ね合わせて真空下、加熱,加圧してプリプレグ硬化物を作製した。
【0057】
本プリプレグ硬化物の樹脂含有量は35wt%であった。UL−94規格に従って難燃性試験を実施したところ、平均燃焼時間は0.3秒、最大燃焼時間は0.4秒とV−0相当の難燃性を得られることが分かった。また、誘電率は3.12,誘電正接は0.0041であった。
【0058】
本プリプレグに用いた樹脂組成物は優れた溶融流動性を有し、多層プリント回路板の層間接着剤として好適に用いることができる。
【0059】
〔実施例8〕
実施例7のプリプレグの両面に電解銅箔の粗面を張り付け、真空下で加圧,加熱して両面銅張積層板を作製した。加熱条件は120℃/30分、150℃/30分、240℃/100分、プレス圧力1.5MPaとした。
【0060】
銅箔とプリプレグは良好な接着性を示した。これにより低誘電損失の多層プリント回路板の作製が可能となった。
【0061】
〔実施例9〕
図1は、本発明の多層プリント回路板の作成工程の一例を示す模式断面図である。
【0062】
工程(A)では、実施例8と同様にして得た樹脂基板1の両面に電解銅箔2を張り付けた両面銅張積層板の片面にフォトレジスト3(日立化成工業製 HS425)をラミネートしてフォトレジスト3の全面に露光した。
【0063】
次いで、フォトレジスト3を貼っていない一方の面にフォトレジスト3(日立化成工業製 HS425)をラミネートしてテストパターンを露光し、未露光部分のフォトレジストを1%炭酸ナトリウム液で現像した。
【0064】
工程(B)では、硫酸5%,過酸化水素5%のエッチング液により、露出した銅箔をエッチング除去して、両面銅張積層板の片面に導体配線を形成した。
【0065】
工程(C)では,3%水酸化ナトリウム溶液で残存するフォトレジスト3を除去し、片面に配線を有する配線基板を得た。同様にして2枚の配線基板を作製した。
【0066】
工程(D)では、二枚の配線基板の配線側の面に実施例8のプリプレグ4を挟み、真空下、加熱,加圧して多層化した。加熱条件は120℃/30分、150℃/30分、240℃/100分、プレス圧力1.5MPaの多段階加熱とした。
【0067】
工程(E)では、作製した多層板の両面の外装銅にフォトレジスト3(日立化成製HS425)をラミネートしてテストパターンを露光し、未露光部分のフォトレジストを1%炭酸ナトリウム液で現像した。
【0068】
工程(F)では、硫酸5%、過酸化水素5%のエッチング液により露出した銅箔をエッチング除去し、3%水酸化ナトリウム溶液で残存するフォトレジストを除去して外装配線6を形成した。
【0069】
工程(G)では、内層配線5と外装配線6を接続するスルーホール7をドリル加工で形成した。
【0070】
工程(H)では、配線基板をめっき触媒のコロイド溶液に浸して、スルーホール7内および基板表面にめっき触媒8を付着形成した。
【0071】
工程(I)では、めっき触媒8を活性化処理後、無電解めっき(日立化成工業製 CUST2000)により、約1μmの種膜9を設けた。
【0072】
工程(J)では、フォトレジスト(日立化成工業製 HN920)を配線基板の両面にラミネートした。
【0073】
工程(K)では、スルーホール7部分および配線基板の端部をマスクして露光後、3%炭酸ナトリウムで現像して開孔部10を設けた。
【0074】
工程(L)では、配線基板の端部に電極11を設け、電解めっきによりスルーホール7部分にめっき銅12を約18μm形成した。
【0075】
工程(M)では、電極部分11を切断除去し、残存するフォトレジストを5%水酸化ナトリウム水溶液で除去した。
【0076】
工程(N)では、硫酸5%、過酸化水素5%のエッチング液に配線基板を浸して約1μmエッチングし、種膜9を除去することで多層プリント回路板を得た。得られた多層プリント回路板は低誘電率,低誘電正接で、かつ、高い難燃性を示した。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、誘電率、誘電正接が低く、難燃性の硬化物を与える樹脂組成物が得られる。本樹脂組成物は、高周波用電気部品の絶縁材料に好適であり、高周波信号用多層プリント回路板用のプリプレグ,積層板へ用いた場合、低誘電損失と難燃性とが両立できると云う優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層プリント回路板の作製工程の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…樹脂基板、2…電解銅箔、3…フォトレジスト、4…プリプレグ、5…内層配線、6…外層配線、7…スルーホール、8…めっき触媒、9…種膜、10…開孔部、11…電極、12…めっき銅。

Claims (8)

  1. 1,2−ビス(ビニルフェニル)エタンを架橋成分とし、樹脂成分の総量を100重量部としたとき50〜95重量部含み、かつ難燃剤として1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、または、1,2−ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン含有し、高分子量体としてポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシドを含むことを特徴とする低誘電正接樹脂組成物。
  2. 前記低誘電正接樹脂組成物がアンチモン化合物を含有する請求項1記載の低誘電正接樹脂組成物。
  3. 前記アンチモン化合物が三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモンまたはアンチモン酸ソーダである請求項2に記載の低誘電正接樹脂組成物。
  4. 前記低誘電正接樹脂組成物が、スチレン基を重合し得る硬化触媒またはスチレン基の重合を抑制し得る重合禁止剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の低誘電正接樹脂組成物。
  5. 前記低誘電正接樹脂組成物中の樹脂成分の総量を100重量部として、前記難燃剤の添加量が1〜30重量部、アンチモン化合物の添加量が0.1〜10重量部、硬化触媒の添加量が0.0005〜10重量部であり、重合禁止剤の添加量が0.0005〜5重量部である請求項に記載の低誘電正接樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の低誘電正接樹脂組成物を、有機又は無機のクロス又は不織布に含浸、乾燥してなることを特徴とするプリプレグ。
  7. 請求項6に記載のプリプレグまたはその硬化物の少なくとも片面に導体層が設けられていることを特徴とする積層板。
  8. 請求項7に記載の積層板の導体層に配線加工を施した後、プリプレグを介して該積層板を2枚以上積層、接着したことを特徴とする多層プリント回路板。
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