JP4494586B2 - 脊椎動物の膵臓のインビトロ系での形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、膵臓のインビトロ形成方法、より詳しくは、脊椎動物の原腸胚の原口上唇部をレチノイン酸で処理し、その後培養することを特徴とする膵臓のインビトロ形成方法や、インビトロで誘導した膵臓や、インビトロで誘導した膵臓を利用した膵臓に起因する疾病の診断・治療に有用な物質のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
すべての多細胞動物の発生は受精にはじまり、細胞分裂(卵割)と細胞分化を経て、多くの組織とバランスのとれた体制をもつ個体として完成されるが、このような分化のプロセスはきわめて複雑であり、誘導現象と呼ばれる重要な細胞間の相互作用が多段階にわたって行われていると考えられ、そして、もっとも重要なのは「形作りを支配する分子」の解明といわれており、またこのような研究の材料として、主に両生類胚がよく用いられるが、体づくりの基本的な法則はすべての脊椎動物に共通であり、相同な遺伝子は異なった生物種においてもきわめて類似した機能をもつことが知られている。
【0003】
従来より、両生類の胚は実験発生学においてきわめて重要な材料とされ、多くの研究がなされてきている。その理由は、体外で受精と発生をおこない、卵が大きいために胚手術が可能で、経時的変化を容易に観察できることにある。両生類の原腸胚の原口上唇部は特殊な領域であり、他の胚の腹側にこれを移植すると頭部もしくは胴尾部を含む二次胚が誘導され、このことから、原口上唇部は胚の体制を決定し形態形成の中心として働く領域として形成体(organizer)と名付けられており、形成体は原腸陥入のあいだに予定外胚葉へと働きかけて中枢神経を誘導し、それ自身は背側の中胚葉及び前方内胚葉に分化することはよく知られている。
【0004】
一方、膵臓はほとんどの脊椎動物、すなわち哺乳類、鳥類、は虫類、両生類に共通した組織形態と発生様式を示す内分泌、および外分泌器官であり、発生過程においては、内胚葉から背側原基と腹側原基が生じ、これらが融合して膵臓が形成されることが知られている(Development 121, 1569-1580, 1995)。
【0005】
胚発生の過程では内胚葉の近傍には中胚葉が存在し、膵臓の分化には内胚葉に対する間充織からの作用が必要であるとされてきた(Dev. Biol. 4, 242-255, 1962)。また最近の研究から、ニワトリの膵臓形成には脊索の関与が必要であり、背索が近傍の内胚葉におけるShhの発現を抑制することによって膵臓が分化するが、脊索の作用によって膵臓へ分化するのは膵臓予定域の内胚葉であり、膵臓予定域以外の内胚葉では脊索が共存しても膵臓には分化しないことが報告されている(Deveiopment 124, 4243-4252, 1997、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 13036-13041, 1998、Genes and Dev. 12, 1705-1713, 1998)。
【0006】
また、遺伝子レベルでの研究では、マウスの膵臓原基で発現するipf−1やpdx−1として知られているホメオボックス遺伝子が膵臓の形成過程に必須であり、ipf−1のジーンターゲッティング実験から、この遺伝子をもたないマウス胚は膵臓を欠損することが報告されている(Nature 371, 606-609, 1994)。しかし、この遺伝子を欠損しても膵臓の原基は形成され、グルカゴン陽性細胞の存在も確認されている(Development 122, 983-995, 1996)。また、アフリカツメガエルの胞胚の植物極細胞はPDX−1のホモログで膵臓特異的転写因子であるXlHbox8と小腸上皮のマーカーであるIFABPのどちらも発現するが、内胚葉でのTGF−β系のシグナルを阻害すると,XlHbox8の発現が阻害されることが知られている(Development 122, 1007-1015, 1996)。
【0007】
他方、レチノイン酸は前後軸に沿った胚のパターンニングに対する調節因子であること(Nature 340, 140-144, 1989、Development 112, 945-958, 1991、Dev. Biol. 192, 1-16, 1997、Zool. Sci. 15, 879-886, 1998)や、このレチノイン酸がツメガエル胚における前方神経組織を後方化させ、中胚葉の発達において影響を及ぼすこと(Genes Dev. 5, 175-187, 1991、Develop. Growth. Differ. 35, 123-128, 1993)が知られている。また、ツメガエルアニマルキャップ細胞(animal cap cell)にアクチビンの投与量を変化させて処理することにより脊索、筋肉、間充織及び体腔上皮のようなほとんどの中胚葉組織を誘導することができること(Roux's Arch. Dev. Biol. 198, 330-335, 1990、Nature 347, 391-394, 1990、Roux's Arch. Dev. Biol. 200, 230-233, 1991)や、アクチビンと共処理するレチノイン酸の投与量を変化させることにより、アニマルキャップ細胞から分化する脊索、筋肉及び前腎のような中胚葉組織を側後方化させること(Develop. Growth. Differ. 35, 123-128, 1993)が報告されている。
【0008】
内胚葉性器官に対するレチノイン酸の作用については、発生段階22〜32のツメガエル胚をレチノイン酸で処理すると、腸、肝臓、胃などの消化器官の形態が異常になると、Dixonらにより報告されているが、レチノイン酸で処理した発生段階22〜32のツメガエル胚の膵臓は正常に形成され、内胚葉特異的マーカーであるXlHbox8の発現にも影響がみられないことも報告されている(Dev. Genes Evol. 208, 318-326, 1998)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来、特定の臓器をインビトロで特異的に誘導することは非常に困難とされ、また、膵臓においてもその複雑な分化・形成機構はいまだ明らかになっていない。本発明の課題は、膵臓の分化・形成機構に関しての知見を得ることができる、発生工学あるいは臓器工学上有用なインビトロ誘導膵臓や、インビトロで誘導した膵臓が実際に生体内でも機能できるかどうかを評価することができる移植用膵臓や、より高等な動物の膵疾患の診断・治療への道を拓くインビトロ誘導膵臓を、人工的に膵臓予定域以外の原腸胚から高率に誘導しうる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本来、インビトロで培養すると脊索や筋肉、あるいは咽頭などを形成し、膵臓を形成しない初期原腸胚の原口上唇部、すなわち、背側中胚葉組織や前端部内胚葉組織となる部域を、アフリカツメガエル初期原腸胚から切り出しレチノイン酸で処理した後、BSAを含むスタインバーグ溶液中でこれらの外植体を培養することにより、その発生運命を膵臓へと変化させ、形態的かつ機能的な膵臓をインビトロで高率で形成しうることを見い出した。また、高率で膵臓を分化形成させるには、レチノイン酸を一時的に作用させることが有効であり、継続的なレチノイン酸の処理は膵臓分化を高率に誘導せず、また、原口上唇部を切り出してから0〜15時間前培養し、レチノイン酸処理を行うことが有効であり、膵臓を高率に分化誘導しうることができることを見い出した。本発明はこれら知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち本発明は、インビトロにおいて、脊椎動物の胞胚又は原腸胚(インビボで産生されるヒトの胞胚又は原腸胚を除く)の植物極側部分の全部若しくは一部をレチノイン酸で処理し、その後培養することを特徴とする脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法(請求項1)や、胞胚又は原腸胚の植物極側部分の全部若しくは一部が、胞胚の背側植物極領域若しくは原腸胚の原口上唇部であることを特徴とする請求項1記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法(請求項2)や、脊椎動物が、両生類に属する動物であることを特徴とする請求項1又は2記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法(請求項3)や、両生類に属する動物が、アフリカツメガエルであることを特徴とする請求項3記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法(請求項4)や、原腸胚として、原腸が形成される前の初期原腸胚を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法(請求項5)や、原口上唇部として、原腸胚から切り出された原口上唇部を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法(請求項6)や、レチノイン酸による処理を、原腸胚から切り出されて0〜15時間前培養した原口上唇部に対して行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法(請求項7)や、レチノイン酸による処理が、10-5M以上の濃度のレチノイン酸での0.5〜5時間の処理であることことを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法(請求項8)に関する。
【0012】
また本発明は、請求項1〜8のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法により得られたインビトロで誘導した膵臓を用いることを特徴とする膵臓の機能低下又は機能異常を治癒しうる物質のスクリーニング方法(請求項9)や、請求項1〜8のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法により得られたインビトロで誘導した膵臓を用いることを特徴とする膵臓の機能低下又は機能異常を検出しうる物質のスクリーニング方法(請求項10)に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法としては、インビトロにおいて、脊椎動物の胞胚又は原腸胚の植物極側部分の全部若しくは一部をレチノイン酸で処理し、その後培養して、インビトロで膵臓を分化・誘導しうる方法であれば特に制限されるものではない。また、本発明の膵臓のインビトロ形成方法における膵臓としては、インビトロ誘導膵臓臓器の他、膵臓特異的な分子マーカー遺伝子、例えばインスリン遺伝子、ipf−1やpdx−1等のホメオボックス遺伝子、pdx−1のホモログで膵臓特異的転写因子であるXIHbox8遺伝子等の発現能を有する外植体や、生体膵臓と類似の細胞形態を有する外植体や、生体膵臓と類似の分泌腺様構造を有する外植体も便宜上含まれる。
【0014】
上記脊椎動物としては、膵臓を有する哺乳類、鳥類、は虫類、両生類に属する動物であれば特に制限されるものではないが、膵臓の分化・形成機構に関しての発生工学あるいは臓器工学上有用な知見を得るレベルにおいては、その取り扱いが比較的簡単で、かつ現在までの発生工学あるいは臓器工学上の知見が豊富な両生類に属する動物、特にアフリカツメガエルを好ましい脊椎動物として例示することができる。
【0015】
上記胞胚としては、中〜後期胞胚を用いることが好ましく、かかる中〜後期胞胚としては、アフリカツメガエルにおける発生段階8〜9の中〜後期胞胚を具体的に挙げることができる。また、上記原腸胚としては、後生動物の発生において胞胚に次ぐ発生段階にある胚で、1層の壁(胞胚葉)が内外2層の壁(胚葉)になる過程の、原腸が形成される前の初期原腸胚(early gastrula)を用いることが好ましく、かかる初期原腸胚としては、アフリカツメガエルにおける発生段階10〜11の原腸胚を具体的に挙げることができる。このアフリカツメガエルにおける発生段階は、文献(Nieuwkoop, P. D., Faber, J., 1956. Nomal Table of Xenopus laevis. North-Holland Pub. Co. Amsterdam.)記載の定めた基準によって判断することができる。そして、上記胞胚又は原腸胚の植物極側部分の全部若しくは一部として、胞胚の背側植物極領域若しくは原腸胚の原口上唇部を用いることが好ましい。
【0016】
上記原口上唇部としては、原腸胚、好ましくは初期原腸胚の原口上唇部を少なくとも含むものであればどのようなものでもよいが、初期原腸胚等から常法により切り出された原口上唇部を用いるが好ましく、原腸胚から切り出した原口上唇部に対しては、前培養を15時間以内、好ましくは5時間以内した後、レチノイン酸による処理を行うことが好ましい。
【0017】
また、上記レチノイン酸による処理条件、例えば処理濃度や処理時間としては、インビトロにおいて、脊椎動物の原腸胚の原口上唇部を処理した後、培養することにより膵臓を分化・誘導しうる処理条件であれば特に制限されるものではないが、例えば、処理濃度としては10-5M以上、好ましくは10-4M〜10-3Mの濃度でのレチノイン酸処理を、処理時間としては0.5〜24時間、好ましくは0.5〜5時間のレチノイン酸処理を挙げることができる。レチノイン酸は水溶性でないので、エタノールやジメチルスルホキシド(DMSO)等に一旦溶解させた後、生理食塩水で希釈して用いることが好ましい。
【0018】
本発明のインビトロで誘導した膵臓は、上記の膵臓のインビトロ形成方法により得られるものであれば特に制限されるものではなく、前記のように、インビトロ誘導膵臓臓器の他、膵臓特異的な分子マーカー遺伝子の発現能を有する外植体や、生体膵臓と類似の細胞形態を有する外植体や、生体膵臓と類似の分泌腺様構造を有する外植体も含まれる。また、本発明のスクリーニング方法は、かかるインビトロで誘導した膵臓を用いた診断や治療等に有用な遺伝子、ペプチド、タンパク質等の物質、例えば膵臓の機能低下又は機能異常を治癒しうる物質や膵臓の機能低下又は機能異常を検出しうる物質等をスクリーニングする方法であれば特に制限されることはなく、例えば、本発明により得られるインビトロ誘導膵臓の膵細胞に被検物質をインジェクションし、インスリン等のマーカー分子の発現能を対照と比較することにより、膵臓の機能を亢進又は抑制する物質をスクリーニングすることができる。
【0019】
【実施例】
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1(原腸胚の部域別培養と膵臓予定域)
オスとメスのアフリカツメガエルの背側リンパ嚢にそれぞれ600IUのhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン;Gestron;デンカ製薬、日本)を注入し、これらアフリカツメガエルを交配させて卵を得た。これら初期原腸胚(early gastrula)[発生段階10;発生段階は文献(Nieuwkoop, P. D., Faber, J., 1956. Nomal table of Xenopus laevis (Daudin). North-Holland Pub. Co. Amsterdam.)記載の定めた基準によって判断した。]を、4.5%のシステイン塩酸塩(pH7.8)を含んだスタインバーグ溶液(SS:58.00mMのNaCl、0.67mMのKCl、0.34mMのCa(NO32、0.83mMのMgSO4、3.00mMのHEPES及び100mg/lのカナマイシン硫酸塩;pH7.4)中で脱ゼリーを行い、卵黄膜をピンセット(watchmaker's tweezers)で除去した。
【0020】
上記アフリカツメガエル初期原腸胚(発生段階10)の植物極側部分を以下の部域ごとに切り分けて培養した。すなわちアフリカツメガエル初期原腸胚の赤道部分を含まないように植物極側部域を切り出し、その部分の全部(Whole)を含む部域と、背腹軸に垂直に3分割(Dorsal, Intermediate, Ventral)した各部域と、背腹軸に平行に3分割(Left, Center, Right)した各部域と、さらに、背腹軸に平行に3分割した中央部分の背側部域のみ(Center-Dorsal)をそれぞれ切り出し、これらの部域を1mg/mlのBSA(ウシ血清アルブミン;A−7888,シグマ社製)を含むスタインバーグ溶液で10日間培養した。これら培養した部域をブアン液で3時間固定し、エタノール及びキシレンにて脱水処理し、これらの部域をパラフィン包埋し、6μmの厚さで薄切した小片をヘマトキシリン・エオシンで染色し、分化した組織を光学顕微鏡にて観察・検定した。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
Figure 0004494586
【0022】
上記の結果から、背側部分を多く含む部域(Dorsal, Center)からは、眼やセメント腺などの頭部構造がよく分化するが、ほとんど背側部分のみからなる部域(Center-Dorsal)からは頭部構造の形成はみられず、脊索や筋肉、軟骨といった背側中胚葉組織が分化することがわかった。背側部分を多く含む部域(Dorsal, Center)にもこれらの組織が形成されているため、頭部構造は背側中胚葉組織から二次的に誘導されたものと考えられる。
【0023】
背腹軸に垂直に3分割(Dorsal, Intermediate, Ventral)した場合には、背側部域からは脊索や筋肉といった背側中胚葉が、腹側部域からは体腔上皮や血球といった腹側中胚葉組織が分化した。背腹軸に平行に3分割(Left, Center, Right)した場合には、中央部分から頭部構造がよく分化し、前腎の分化率が低いこと以外は3部域とも共通して背側から腹側にわたるほぼすべての中胚葉組織が分化することがわかった。また、内胚葉組織に関しては、背側部位を含む部域(Dorsal, Center)からは腸上皮や胃腺の形成率が他の部域のものより低い傾向が見られた。
【0024】
本来、膵臓となる予定域は原腸期においては胚の背側左右側部とされている。本実施例の内胚葉の部域別培養実験により背腹軸に平行に3分割した胚の左右側部から最も高い割合で膵臓が形成されることが確認された(Left、Right)。しかし、これらの部域でも膵臓形成率は100%ではなく、40〜50%であった。このように、背腹軸に平行に3分割した場合、最高50%程度の割合で左右側部から膵臓が形成されたが、これに対して、背腹軸に垂直に3分割した場合(Dorsal, Intermediate, Ventral)、どの部域も膵臓形成率は低く20%以下であり、植物極側部域全部(Whole)においても膵臓形成率は低かった(18%)。このことから、膵臓予定域は胚の左右側部であり、膵臓予定域が膵臓へと分化する過程には、最も背側の部分の共存による膵臓形成の抑制、腹側部分の共存の必要性、あるいは背腹軸方向に沿ったすべての部域の必要性が示唆された。Henryらによると、発生段階8〜9の背側植物極細胞は膵臓特異的転写因子であるXlHbox8と小腸表皮のマーカーであるIFABPのどちらも発現するが、腹側植物極細胞はIFABPのみ発現し、XlHbox8は発現しないと報告しており(Development 122, 1007-1015, 1996)、この報告から、背側植物極細胞が膵臓へと分化することがわかる。以上のことから、上記報告では植物極側部域を背・腹に二分し、本実施例では3分割して膵臓へと分化させている点で異なるが、胞胚から初期原腸胚期の膵臓予定域は植物極側部域のうちの背側の左右側部であると考えられる。
【0025】
実施例2(レチノイン酸による原口上唇部からの膵臓形成)
アフリカツメガエル初期原腸胚(発生段階10)から0.3mm×0.3mmの大きさの原口上唇部(背側中胚葉と前方内胚葉の予定域である部分)を切り出し、1mg/mlのBSAを含むスタインバーグ溶液中で20℃、10日間培養すると、脊索や筋肉といった背側中胚葉や咽頭上皮などの前方内胚葉組織や神経組織が分化した[表2及び図1A,B(参考写真1参照)]。また、この部分を切り出した直後に表2に示す各濃度のレチノイン酸で3時間処理し、実施例1におけると同様に、20℃で10日間培養してレチノイン酸処理を施さなかった場合と比較した。分化した組織を光学顕微鏡にて観察・検定した結果を表2に示す。なお、図1A,図1B中のnotは脊索を、musは筋肉を、mesは間充織を、epiは表皮をphaは咽頭上皮をそれぞれ表す。
【0026】
【表2】
Figure 0004494586
【0027】
これらの結果から、レチノイン酸濃度が高くなるにつれ、神経組織、筋肉、軟骨の分化率は低下することがわかった。一方、脊索はレチノイン酸の濃度によらず、どの条件でも高率に分化していた。また、レチノイン酸濃度が高くなると腸上皮と膵臓の形成が認められるようになり、その分化率はレチノイン酸の濃度とともに上昇していた。膵臓分化率は10-4M程度でほぼプラトーに達し、全検体中の70〜90%の外植体が膵臓を形成しており、この割合は正常胚の予定膵臓域を含む部域を培養した場合(40〜50%)よりも高率で形成できることがわかった。また、レチノイン酸濃度が10-5Mのときには、前腎と胃腺の形成も確認できた。この方法を用いることにより、正常胚の膵臓予定域を用いた場合よりも十分高い割合で、インビトロにおいて膵臓の形成を再現できることから、膵臓の分化・形成を解明する実験系としての利用が期待できる。
【0028】
上記10-4Mのレチノイン酸溶液で処理後10日間培養した組織切片をヘマトキシリン・エオシンで染色し光学顕微鏡により組織像を観察したところ、膵臓が高率で形成されるときには、ほとんどの場合、脊索と腸上皮の形成を伴っており、膵臓と脊索は腸上皮によって周囲を取り囲まれていること[図1C,D(参考写真1参照);panは膵臓を、intは腸上皮を、notは脊索をそれぞれ表す。]がわかった。なお、腸は生体内で観察されるような管状の形態をとっておらず、生体の腸内腔が外植体の外側にあたるように形成されているため、表2には腸上皮をカウントした結果が示されている。また、この腸内腔が外植体の外側にあたり、外植体内に脊索と膵臓を包含していることから、これらは生体での配置と合致しているといえる。このとき観察した膵臓は、三角形の細胞がいくつか集合して互いに接してこれらの内側に小空間を有した分泌腺状の構造を示し、これらが多数集合して生体で観察される膵臓と同様の形態を呈していた。かかる分泌腺構造を構成する細胞の核は底辺側にかたよって存在していることから、生体の膵臓の細胞と共通していることがわかった。
【0029】
さらに、原口上唇部を10-4Mのレチノイン酸で処理し、BSAを含むスタインバーグ溶液で20℃、10日間培養した上記外植体を以下のように処理し、電子顕微鏡にて観察した。上記培養した外植体を緩衝液I(3%のパラホルムアルデヒド、2.5%のグルタルアルデヒド、0.1Mのカコジル酸塩;pH7.4)で1日間固定させた。この固定した外植体を、緩衝液Iで洗浄し、続いて緩衝液II(1%のOsO4及び0.1Mカコジル酸塩;pH7.4)で2時間固定し、緩衝液IIで洗浄した後、エタノール及びアセトンにて脱水処理し、エポキシ樹脂に包埋した。この包埋した外植体を極薄切片に切断し、酢酸ウラニル及びクエン酸鉛によりダブル染色し、透過型電子顕微鏡(JEM−200CX;JOEL社製)で観察した(図2:参考写真2参照)。この結果、複数の細胞が集合してその内側に空洞(腺腔)を有し、この空洞付近の細胞内に多数の外分泌顆粒が存在するのが確認でき(図2A)、外植体中には外分泌腺構造や外分泌顆粒のほか、内分泌顆粒の存在も認められた(図2B,C)。なお、図2A、図2B、図2C中のスケールバーはそれぞれ、1、1、0.1μmを表し、Luは腺腔を、Nは核を、図2A中の矢印は外分泌顆粒を、図2B中の矢印は内分泌顆粒をそれぞれ意味する。
【0030】
また、上記光学顕微鏡により咽頭と腸はどちらとも外植体の外皮を構成する内胚葉性上皮として観察された。これらは、生体でみられるように消化管内腔を内側にした管状の形態はとっておらず、消化管内腔が外植体の外側にあたる。また、咽頭と腸はどちらも内胚葉性上皮であるが、咽頭上皮は細胞高が低く立方体状の細胞が並んだ形態を示すのに対し、腸上皮は細胞高が高く、縦長の細胞が並んで上皮を構成していることが知られている。そこで、細胞の縦/横の比が3以下の場合を咽頭上皮とし、3以上の場合を腸上皮としてカウントした(表2)。ここで腸上皮として分類した組織は、生体の食道や十二指腸の形態と類似していた。これら内胚葉性上皮は生体において口から肛門までつながっているため、その形状も徐々に変化し、また、胃腺など特徴的な構造を持たない消化管の各部分を形状のみから判断して細かく分類することは困難である。したがって、ここでは内胚葉性上皮の厚さから咽頭上皮と腸上皮とに分類することにした。顕微鏡観察ではレチノイン酸濃度が高まるにつれ腸上皮の形成率は上昇し、咽頭上皮は減少してゆく傾向がみられた。しかし、これらのカウントは外植体中に占める比率に関係なく、少量でも存在すればカウントするため、高濃度レチノイン酸処理における咽頭上皮の分化率は実際に観察した印象よりも高い数値となっている。
【0031】
なお、レチノイン酸粉末は水溶性でないためエタノールやDMSOにいったん溶解させてこれを1mg/mlのBSAを含むスタインバーグ溶液で希釈して用いている。そのため、組織分化に対するDMSOの影響を調べることを目的として、1mg/mlのBSAを含むスタインバーグ溶液に最終濃度で1%となるようにDMSOを加え、上記と同様に20℃で10日間原口上唇部を培養してみた(表2)。その結果、1%のDMSOのみでは膵臓や腸上皮の形成は誘導されないことが確認されたことから組織分化に影響しないことがわかった。
【0032】
実施例3(膵臓特異的遺伝子の発現)
レチノイン酸で処理した外植体における組織特異的な遺伝子発現を調べた。10-4Mレチノイン酸で処理した原口上唇部、あるいは無処理の原口上唇部を3日間培養した後、それぞれの原口上唇部から全RNAを抽出し、逆転写酵素(GIBCO BRL社製)を用いてcDNAを合成した。得られたcDNA(2μg/μl)1μlに対して、PCR反応を行い、膵臓に特異的な遺伝子であるインスリン(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 7679-7683, 1991)とXlHbox8(PDX1のホモログ)(Dev. Biol. 171, 240-251, 1995)の発現パターンや、神経マーカー遺伝子であるNCAM(神経細胞接着因子)や筋肉マーカー遺伝子であるα骨格筋アクチン(筋肉特有のアクチン:ms−actin)の発現パターンを調査・比較した。なお、ローディイングコントロールとしてEF−1α(延長因子1α)を用いた。PCR反応における各遺伝子のプライマーの組合せとしては、インスリン[insulin−F:5′−ATGGCTCTATGGATGCAGTG−3′(配列番号1)、insulin−R:5′−AGAGAACATGTGCTGTGGCA−3′(配列番号2)]、XlHbox8[XlHbox8−F:5′−CCTACAGCAACCCCTTGGTA−3′(配列番号3)、XlHbox8−R:5′−GGGCTCTTGTGTAGGCTGTC−3′(配列番号4)]、NCAM[NCAM−F:5′−CACAGTTCCACCAAATGC−3′(配列番号5)、NCAM−R:5′−GGAATCAAGCGGTACAGA−3′(配列番号6)]、ms−actin[ms−actin−F:5′−AACAGCAGCTTCTTCCTCAT−3′(配列番号7)、ms−actin−R:5′−TACACAGAGCGACTTGAACA−3′(配列番号8)]、EF−1α[EF−1α−F:5′−TTGCCACACTGCTCACATTGCTTGC−3′(配列番号9)、EF−1α−R:5′−ATCCTGCTGCCTTCTTTTCCACTGC−3′(配列番号10)]、をそれぞれ用いた。
【0033】
上記cDNA(20ng/μl)5μlに、DDWを76μl、10×Ex bufferを10μl、2.5mMのdNTPs mixを8μl、5U/μlのExTaqを0.5μl、100μMの上記各プライマーを0.5μl加え、全量100μlでPCR反応を行った。サーマルサイクルのプログラムは、最初のみ94℃で4分間変性させ、その後94℃で30秒間熱変性させ、58℃で1分間伸張させ、72℃で1分間アニーリングするというサイクルを23〜30回繰り返し、最後に72℃で9分間アニーリングを行った。その後、PCR増幅産物をアガロースゲル(1.5%)電気泳動法により分離した後、サザンハイブリダイゼーションにより検出した(図3:参考写真3参照)。なお、ポジティブコントロールとして発生段階41の正常胚(whole embryo)を用いた。
【0034】
上記図3の結果から、無処理の原口上唇部[dorsal lip(−RA)]ではNCAMとms−actinは強く発現しており、インスリンとXlHbox8においては多少の発現が認められたが非常に弱かった。一方、レチノイン酸で処理した外植体[dorsal lip +RA]では、NCAMとms−actinの発現は抑制され、インスリンとXlHbox8の発現が強く促進されていた。これらのことから、無処理の原口上唇部からは神経や筋肉が形成されるが膵臓は分化せず、レチノイン酸処理すると神経や筋肉の形成は抑制され、膵臓分化が誘導されることがわかった。
【0035】
実施例4(レチノイン酸処理時間の影響)
薬物処理の強度は濃度と時間に影響されることから、まず、膵臓形成をレチノイン酸の濃度のみから論じられるようにするため、レチノイン酸溶液中で培養することにより時間的な影響を排除し、上記実施例2記載の原口上唇部をレチノイン酸で処理する時間を3時間から10日間に延長し、表3に示されている各濃度のレチノイン酸処理による膵臓形成への影響を調べてみた。これらの結果から、膵臓と前腎以外の組織に関しては、組織の分化様式はレチノイン酸で3時間処理した外植体とほぼ同様であることがわかった。すなわち、培養液中にレチノイン酸が存在することにより、神経、筋肉、軟骨の形成率が低下し、腸上皮の形成率が上昇することがわかった。しかし、膵臓と前腎に関してはどの濃度のレチノイン酸処理においても組織分化は高率に誘導されなかった。この結果をレチノイン酸で3時間処理した結果と比較すると、3時間処理の場合における10-6M及びその付近の濃度のレチノイン酸処理と同様に膵臓の形成率は10%程度にとどまり、高率に膵臓が形成されることはなかった。このことから、継続的にレチノイン酸で暴露させると膵臓の形成が抑制されると考えられた。また、3時間処理の場合で膵臓が高率に形成される濃度、10-4Mのレチノイン酸処理も行ったが、この濃度ではすべての外植体が培養中に死亡した。
【0036】
【表3】
Figure 0004494586
【0037】
1960年に岡田により、内胚葉系器官の分化には中胚葉の作用が必要であると報告されている(Roux's Arch 152, 1-21, 1960)。この報告から、レチノイン酸の継続的な処理による膵臓形成の抑制は、内胚葉に対する直接的な効果と中胚葉に対する間接的な効果が考えられる。しかし、中胚葉組織の分化様式は、3時間処理と継続処理でほぼ同様の傾向を示すため、中胚葉に対する間接的な抑制作用の可能性は低いと推測される。また、原口上唇部から高率に膵臓を形成させるためには、レチノイン酸で一時的に作用させることが必要で、長期間の暴露は膵臓形成を抑制するのだと考えられる。正常発生における膵臓形成の過程では、先ず肝岐腸(liver diverticulum)の形成により肝臓と膵臓の予定域が周辺部域から隔離され、その一部が膵臓へと分化する。そのことから、正常な膵臓発生においても何らかのシグナルに継続的にさらされないことが必要であるという可能性も考えられる。
【0038】
実施例5(レチノイン酸処理のタイミング)
上記の実施例から、レチノイン酸処理によって初期原腸胚の原口上唇部の本来の発生運命を変更できることが明らかとなった。特に内胚葉性器官に関しては、正常発生において他の胚葉由来の器官よりも形成が遅いことから、その分化の決定時期も遅いことが予想される。レチノイン酸処理は初期原腸胚から切り出した直後に行い、3時間の処理することが膵臓形成に対して有効であることがわかった(表2)。次に原口上唇部を切り出してからレチノイン酸で処理するまでの時間を様々な時間に変化させることにより、レチノイン酸の膵臓誘導作用が有効な時期を明らかにし、原口上唇部中の内胚葉性器官の決定時期を推測した。
【0039】
アフリカツメガエルの初期原腸胚から原口上唇部を切り出し、0、5、15、25時間前培養した後、それぞれ10-4Mのレチノイン酸で処理した。このレチノイン酸の処理時間は処理のタイミングの影響を厳密に解析できるように1時間とし、BSAを含むスタインバーグ溶液中で10日間培養したのち分化した組織を検定した(表4)。これらの結果から、切り出してから0及び5時間前培養したものでは原口上唇部から膵臓が形成されていたが、15及び25時間前培養したものにおいては膵臓は形成されなかった。その他の組織に関しては、0及び5時間後前培養したものでは脊索、間充織のほか、腸上皮が形成されたが、15時間以上前培養した後にレチノイン酸処理したものは、腸上皮の形成が抑制され、表皮、体腔上皮、咽頭上皮の分化率が上昇していた。
【0040】
【表4】
Figure 0004494586
【0041】
以上のことから、膵臓形成に対するレチノイン酸の効果は原口上唇部を切り出た直後から5〜15時間までの前培養に限られ、15時間以上の前培養ではレチノイン酸の作用は失効することがわかった。この時期に原口上唇部のレチノイン酸に対する反応能の消失と、内胚葉性器官の発生運命の決定がなされると考えられる。また、原腸胚期から5〜15時間前培養したものは発生段階12〜発生段階18にあたり、正常発生の過程でも内胚葉性器官の発生運命はこの期間に決定されるのではないかと推測された。実際、正常発生では、発生段階13の頃に肝岐腸が形成され、肝臓や膵臓といった内胚葉性の器官の分化・形成が始まることから、正常発生とインビトロでの内胚葉性器官の形成(決定)の時期はほぼ一致していると考えることができ、この点からも本実験系は膵臓形成に関する研究において有用に利用することができると期待される。
【0042】
【発明の効果】
糖尿病などの成人病に対してインスリンをはじめとする膵臓の働きは極めて重要であるが、膵臓の複雑な分化・形成機構はいまだ明らかになっていない。本発明によると、膵臓をインビトロで高率に作出することができるので、発生工学あるいは臓器工学上有用な膵臓の分化・形成機構に関しての知見を得ることができるばかりでなく、高等な動物の膵疾患の診断・治療への道を拓くことができる。
【0043】
【配列表】
Figure 0004494586
Figure 0004494586
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Figure 0004494586
Figure 0004494586

【図面の簡単な説明】
【図1】原口上唇部のレチノイン酸3時間処理により分化する光学顕微鏡組織像を示す図である。
【図2】原口上唇部のレチノイン酸3時間処理により分化する電子顕微鏡組織像を示す図である。
【図3】原口上唇部のレチノイン酸3時間処理による遺伝子発現の変化を示す図である。

Claims (10)

  1. インビトロにおいて、脊椎動物の胞胚又は原腸胚(インビボで産生されるヒトの胞胚又は原腸胚を除く)の植物極側部分の全部若しくは一部をレチノイン酸で処理し、その後培養することを特徴とする脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法。
  2. 胞胚又は原腸胚の植物極側部分の全部若しくは一部が、胞胚の背側植物極領域若しくは原腸胚の原口上唇部であることを特徴とする請求項1記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法。
  3. 脊椎動物が、両生類に属する動物であることを特徴とする請求項1又は2記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法。
  4. 両生類に属する動物が、アフリカツメガエルであることを特徴とする請求項3記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法。
  5. 原腸胚として、原腸が形成される前の初期原腸胚を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法。
  6. 原口上唇部として、原腸胚から切り出された原口上唇部を用いることを特徴とする請求項2〜5のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法。
  7. レチノイン酸による処理を、原腸胚から切り出されて0〜15時間前培養した原口上唇部に対して行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法。
  8. レチノイン酸による処理が、10-5M以上の濃度のレチノイン酸での0.5〜5時間の処理であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法により得られたインビトロで誘導した膵臓を用いることを特徴とする膵臓の機能低下又は機能異常を治癒しうる物質のスクリーニング方法。
  10. 請求項1〜8のいずれか記載の脊椎動物の膵臓のインビトロ形成方法により得られたインビトロで誘導した膵臓を用いることを特徴とする膵臓の機能低下又は機能異常を検出しうる物質のスクリーニング方法。
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