JP4492512B2 - 筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
このうち、圧縮行程噴射モード(圧縮リーン噴射モード)では、ピストンが上昇する途中で燃料を噴射するモードであって、ピストンが圧縮行程上死点近傍にあるときに点火プラグへ向けて燃料を噴射して、この燃料に直接点火するようにした噴射モード(スプレーガイド噴射モード)と、圧縮行程の上死点前に燃料を噴射し、ピストンの上昇により燃料を点火プラグ近傍に集めて点火するモード(ウォールガイド噴射モード)とをそなえたものが公知である。
一方、吸気行程噴射モードでは、燃料の予混合により燃焼室全体の空燃比状態を均一化しながら、安定した着火と確実な火炎伝播を実現して十分な高出力を得られるように運転を行なうことができる。なお、吸気行程噴射モードには、空燃比を理論空燃比(ストイキオ)近傍として大きな出力を得られるようにしたストイキオモードと、空燃比をストイキオよりも希薄(例えばA/F15〜20)にして燃費の向上を図るリーンモードと、急加速時等に一時的に空燃比をストイキオよりも濃化(リッチ)にするエンリッチモード等が設けられている。
ここで、図7はスプレーガイド噴射モード時の燃焼特性を示す図であり、横軸は燃料噴射時期、縦軸は点火時期である。図示するように、この運転モードでは、A/Fを小さくするほど(すなわちリッチ化するほど)、燃焼安定領域を示す面積が小さくなり燃焼安定性が低下する。したがって、上述のように負荷増大時に空燃比をリッチ化すると、却って失火を招いてエンジン回転数の変動が生じ、やがて失火によりエンジンがストールするおそれがある。
そこで、排気浄化触媒を速やかに活性化温度まで昇温する必要があるが、このときに吸気行程噴射で燃料噴射を実行するとA/Fが比較的リッチに設定されているため、排気中に残存する酸素が低下しており、したがって、触媒昇温のために追加燃料噴射を実行しても追加燃料が完全に燃焼せずに、排気浄化触媒の昇温が速やかに行われないという課題がある。また、この場合吸気行程噴射を実行しているため、燃費が良くないという課題がある。
火する第2の燃料噴射モードとを切り換える制御手段と、該内燃機関の始動時に所定の運転条件が成立すると排気浄化触媒の昇温制御を実行する触媒昇温制御手段とをそなえ、該制御手段は、該第所定の運転条件が成立したことが判定されると、該燃料噴射モードを該第2の燃料噴射モードに設定し、該所定の運転条件が成立するのは、該内燃機関の冷態始動時から所定時間以内であって、且つ該内燃機関の冷却水温が所定の温度範囲内であって、且つ該内燃機関が無負荷運転状態であって、且つ燃料の圧力が所定圧力以上である場合であることを特徴としている(請求項1)。
また、該所定時間が該内燃機関の冷却水温に基づいて設定されるのが好ましい(請求項4)。
つまり、圧縮行程噴射モードはもともと空燃比が吸気行程噴射モードに比べると大幅にリーンであるので、排気中の酸素濃度が高くなる。したがって、触媒昇温制御が必要な場合には、圧縮行程噴射である第2の燃料噴射モードを実行することにより、触媒昇温用に燃料を多めに供給した際に、燃料が安定して酸化反応(燃焼)し、触媒の昇温を図ることができる。また、圧縮行程噴射モードを実行することにより、燃費性能の向上を図ることができる。
図示するように、このエンジン1の燃焼室3は、シリンダヘッド8の下面と、シリンダ7の壁面と、ピストン2の頂面とにより形成されている。また、シリンダヘッド8には燃料噴射弁(以下、単にインジェクタという)4が取り付けられている。このインジェクタ4は、その先端側が燃焼室3に臨むように配設されており、このインジェクタ4から燃焼室3内に直接燃料が噴射されるようになっている。
また、シリンダヘッド8の中央よりもやや偏倚した位置に点火プラグ5が取り付けられている。そして、インジェクタ4と点火プラグ5は、少なくともインジェクタ4から供給される燃料が直接点火プラグ5の先端に到達可能なように燃料噴射方向や点火プラグ5の突き出し量等が設定されている。
また、上記コントローラ11の入力側にはエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ15、エンジン負荷としての吸気量を検出するエアフローセンサ(AFS)16、アクセルの開度を検出するアクセル開度センサ(APS)17が接続されている。
また、吸気行程噴射モードが選択されると、吸気行程噴射用インジェクタ制御手段13からインジェクタ4に対する制御信号が出力されて、インジェクタ4の作動が制御される。この場合には、吸気行程にあるときに燃料噴射を行い、燃焼室内にエンジン1の運転状態に応じた空燃比の混合気を形成して燃焼を行う。
なお、本実施形態においては、燃料噴射を開始するタイミングを変更することでこれら2つのモード(スプレーガイド噴射モード及びウォールガイド噴射モード)を切り換えることができる。
次に、本発明の要部について説明する。図4はスプレーガイド噴射モードとウォールガイド噴射モードとの特性について説明する図であって、横軸が燃料噴射時期、縦軸が点火時期を示しており、安定した燃焼を得られる領域を空燃比(A/F)毎に示している。
このようなスプレーガイド噴射モードでは空燃比が25〜40と非常にリーンであるため燃費の向上を図ることができるものの、アイドリング時には僅かな負荷の変動に対しても影響を受けやすくなり、回転変動が生じやすくなる。
そこで、負荷が増大すると空燃比をリッチ化しても安定した燃焼が得られるウォールガイド噴射モードに切り換えられるようになっている。
そこで、排気浄化触媒を速やかに活性化温度まで昇温する必要があるが、このような冷態始動時は吸気行程噴射モードで燃料噴射を実行すると、空燃比A/Fが比較的リッチに設定されるため排気中に残存する酸素が少なくなる。したがって、触媒昇温のために追加燃料噴射を実行しても追加燃料が完全に燃焼せずに、排気浄化触媒の昇温が速やかに行われない。また、吸気行程噴射では燃費低減効果が得られない。
以下、詳細に説明すると、図1に示すように、コントローラ11には触媒の昇温制御を実行する触媒昇温制御手段20が設けられている。また、コントローラ11には上述したエンジン回転数センサ15やエアフローセンサ16のほかに、エンジン1の始動を検出するイグニッションスイッチ21、アクセルオフを検出するアイドルスイッチ22、エンジン冷却水の温度Twを検出する水温センサ23、車両の走行速度を検出する車速センサ24、燃料の圧力Pを検出する燃圧センサ24が接続されている。
すなわち、上述のように、冷態始動時から所定時間t1以内、且つ冷却水温が所定の温度範囲内であって、且つアイドル運転の時には、比較的空燃比のリーンなウォールガイド噴射モードに設定することで排ガス中の酸素濃度が高まり、追加燃料噴射(2段燃焼)等の昇温制御を実行したときに追加燃料が安定して燃焼して、触媒を速やかに昇温することができるようになる。
なお、冷態始動時であっても、水温Twが所定の範囲以下(Tw≦10℃)であったり、所定の範囲以上(Tw≧50℃)である場合には、このようなウォールガイド噴射モードの選択及び触媒昇温制御は実行されない。これは水温Twが所定の温度範囲以下であれば、潤滑油やATFの粘性抵抗が大きすぎて、ウォールガイド噴射モードで燃料噴射を実行してもエンジン回転数が低下するおそれがあるからである。また、所定の温度範囲以上であれば、冷態始動とはいえ、通常の運転で速やかに水温が上昇してすぐに触媒が昇温されると考えられるからである。
そして、触媒昇温制御手段21でカウントされるタイマが第2の所定時間t2に達すると、ウォールガイド噴射モード+触媒昇温制御が終了し(或いは中止され)、本来のエンジンの運転状態に応じた燃料噴射モードが設定される。
まず、イグニッション21の検出情報と水温センサ23からの情報に基づいて冷態始動直後であるか否かを判定する(ステップS1)。なお、具体的にはイグニッションオンからの経過時間が予め設定された時間(第1の所定時間t1)以内であって、且つ水温Twが所定温度(80℃)未満であると冷態始動直後と判定する。
冷却水温度Twが所定の温度範囲内であれば、車速センサ24から情報に基づき車両が停止しているか否かを判定するとともに(ステップS4)、燃圧センサ25からの情報に基づいて燃料圧力が所定圧力以上かを判定する(ステップS5)。
そして、上述の各ステップS1〜S6が全てYesである場合には、第1の所定運転条件が成立しているか否かに関わらず、燃料噴射モードを圧縮行程噴射のウォールガイド噴射モードに設定する(ステップS7)。
また、このような2段燃焼はステップS1〜S6のいずれかがNoとなるまで実行される。そして、ステップS1〜S6のいずれかにおいてNoとなると、触媒の昇温制御を終了するとともに、ステップS9に進み、通常運転が実行される。
以上詳述したように、本発明の一実施形態に係る筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、燃費性能の向上を図りながらも冷態始動時における排気浄化触媒の早期の昇温を図ることができる。
また、冷却水が所定温度範囲内にある場合にのみ、ウォールガイド噴射モードと2段燃焼(触媒昇温制御)とを実行するので、以下のような利点がある。つまり、冷却水が所定温度範囲以下(10℃以下)の場合には、触媒昇温に時間がかかりすぎ、冷態時にこのような長い時間において圧縮行程噴射を実行すると、出力トルクが負荷(主に作動油やATFの粘性抵抗)に負けて燃焼が不安定となるおそれがある。
また、所定温度範囲以上(50℃以上)であれば、あえて触媒の昇温制御を実施しなくても、通常の運転で速やかに活性化温度まで昇温するので、このような温度のときには、追加の燃料供給を実行しないことで、さらなる燃費の向上を図るようにしている。
2 ピストン
3 燃焼室
4 インジェクタ(燃料噴射弁)
5 点火プラグ
6 凹部
7 シリンダ
8 シリンダヘッド
11 コントローラ(制御手段)
12 燃料噴射モード切り換え手段
13 吸気行程噴射用インジェクタ制御手段
14 圧縮行程噴射用インジェクタ制御手段
15 エンジン回転数センサ(エンジン回転数検出手段)
20 触媒昇温制御手段
Claims (5)
- 筒内に燃料を直接噴射して点火プラグにより着火する筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
該内燃機関の圧縮行程時に該燃料を噴射する圧縮行程噴射モードとして、圧縮行程上死点近傍において燃料プラグに向けて燃料を噴射するとともに、該燃料に直接点火する第1の燃料噴射モードと、圧縮行程時に該第1の燃料噴射モードの燃料噴射タイミングよりも早期のタイミングで燃料を噴射するとともに、ピストンの上昇により該燃料を点火プラグ近傍に集めて点火する第2の燃料噴射モードとを切り換える制御手段と、
該内燃機関の始動時に所定の運転条件が成立すると排気浄化触媒の昇温制御を実行する触媒昇温制御手段とをそなえ、
該制御手段は、該所定の運転条件が成立したことが判定されると、該燃料噴射モードを該第2の燃料噴射モードに設定し、
該所定の運転条件が成立するのは、該内燃機関の冷態始動時から所定時間以内であって、且つ該内燃機関の冷却水温が所定の温度範囲内であって、且つ該内燃機関が無負荷運転状態であって、且つ燃料の圧力が所定圧力以上である場合である
ことを特徴とする、筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 該触媒昇温制御手段は、該排気浄化触媒の昇温制御実行時には、該内燃機関の膨張行程において追加燃料噴射を実行する
ことを特徴とする、請求項1記載の筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 該制御手段は、該所定の運転条件が成立したことが判定されると所定時間だけ該燃料噴射モードを該第2の燃料噴射モードに設定するとともに、触媒昇温制御手段は、該所定時間だけ触媒昇温制御を実行する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 該所定時間が該内燃機関の冷却水温に基づいて設定される
ことを特徴とする、請求項3記載の筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 該第2の燃料噴射モードでは、リーン領域で該第1の燃料噴射モードよりも過濃側の空燃比に設定される
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の筒内噴射型内燃機関の燃料噴射制御装置。
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