以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る記録媒体の移動制御方法が適用されるインクジェット記録装置の概要を示す構成図、図2はその構成ブロック図である。図中、Hは記録ヘッドであり、ここでは例えばYMCK4色の各色に対応した4つのヘッドh1〜h4からなるものを示しているが、記録ヘッドHを構成するヘッドの数は特に限定されない。
各ヘッドh1〜h4の下面には、多数のノズル(図示せず)が記録ヘッドHの主走査方向と直交する方向に沿って一列に配列されており、各ヘッドh1〜h4の各ノズルからそれぞれ所定のタイミングでインクを微小液滴状のインク滴として、図1における下方向に吐出制御することで、このノズル面に対向配置される記録媒体P上に画像データに基づく所望の画像を記録する。
画像データは、外部のPC(パーソナルコンピュータ)からI/F部11及び画像展開部12を介して画像メモリ13に一旦格納されており、制御部10が画像展開部12を制御することで画像メモリ13から読み出され、画像展開部12において所定の並び順に展開し直された後、ヘッド駆動部14に送られる。ヘッド駆動部14は、各ヘッドh1〜h4から上記画像展開部12によって展開された画像データに応じてインク滴を吐出することにより、記録媒体P上に所定の画像を記録する。
記録ヘッドHは、図示しないキャリッジに搭載されており、制御部10によって駆動制御される主走査駆動部15によって主走査モータ16が駆動され、図1に示す主走査方向に沿ってキャリッジが往復移動することにより、各ヘッドh1〜h4が一体となって往復移動可能とされている。本実施形態では、これら制御部10、主走査駆動部15、主走査モータ16によって記録ヘッド移動手段を構成している。
記録媒体Pは、副走査モータ18によって回転駆動される駆動ローラと該駆動ローラに対向配置された従動ローラとからなる一対の送りローラR1、R2の間に挟持されており、制御部10によって駆動制御される副走査駆動部17によって副走査モータ18が駆動されることで、記録ヘッドHの走査方向と直交する副走査方向(図1の左方向)に沿って搬送されるようになっている。本実施形態では、これら制御部10、副走査駆動部17、副走査モータ18、送りローラR1、R2によって本発明の記録媒体移動手段を構成している。
ここで、本実施形態に係るインクジェット記録装置では、記録ヘッドHを、上記記録ヘッド移動手段によって主走査方向に沿って移動させる過程で、上記制御部10によりヘッド駆動部14が駆動制御されることによって、少なくともいずれか一つのノズルからインク滴を吐出させて、記録媒体P上に所定のマークMを記録するように制御している。本実施形態では、これら制御部10、ヘッド駆動部14、記録ヘッドHによって本発明のマーク記録手段を構成している。
記録媒体Pに記録されるマークMは、上記マーク記録手段によって記録可能であり、また、後述するマーク検出手段によって検出可能なものであればどのような形態のものであってもよいが、ここでは、主走査方向に沿って一定長さ(例えば1.0mm)を有する直線状のライン(線)として記録されるようにしている。マークMをこのようなライン状のマークとすれば、記録ヘッドHを主走査方向に沿って1走査する過程で容易に記録することができ、また、後述するマーク検出手段による検出が正確に行え、これにより記録媒体Pの移動をより精度良く行うことができる。
また、記録媒体P上においてマークMを記録する領域は、画像に影響を与えないようにするために、図3に示すように、記録媒体Pの副走査方向に沿う両側部にそれぞれ印画を行わない非印画領域を有する「縁あり画像」を記録する場合には、この記録媒体Pの印画領域から外れた非印画領域にマークMを記録することが好ましい。この場合、両側部の各非印画領域のそれぞれにマークMを記録してもよいが、いずれか一方の非印画領域のみ、具体的には後述するマーク検出手段が設けられる側のみに記録すればよい。
マークMを記録する際は、常に、決められたヘッドの決められたノズルからインク滴を吐出する。本実施形態に示すように複数のヘッドh1〜h4からなる記録ヘッドHを用いてマークを記録する場合、マークMを記録するヘッドは、いずれか一つのヘッド(例えばヘッドh4)であればよく、また、インク滴を吐出するノズルは、一つのヘッドのうちの少なくともいずれか一つのノズルであればよい。
従って、このマークMの記録態様は種々考えられるが、例えば、図4の(a)に示すように、一つのヘッドの一つのノズルから一つのマークMのみを記録する態様、(b)に示すように、一つのヘッドにおける隣接する複数のノズルのうちの一つおきのノズル(ここでは2つのノズル)から一度にマークMを記録する態様、(c)に示すように、一つのヘッドにおける隣接する複数のノズル(ここでは4つのノズル)から一度に複数のマークMを記録する態様が挙げられる。特に、この図4(c)に示すように、複数のノズルから一度に複数のマークMを記録するようにすると、マークMの検出精度の確度をより増すことができるため、本発明においては好ましい態様である。なお、図中の黒丸はマーク検出器19から記録媒体P上に出射された検出光である。また、これらは縁あり画像を記録する場合のマークMの記録態様を示している。
マークMを記録する際の色は、複数色のインクを複数ヘッドを用いて画像記録するものにあっては、Y(イエロー)のインクを用いて記録すると、記録媒体P上においてマークMが目立ちにくくなるために好ましい。また、複数のヘッドから濃淡それぞれのインクを吐出可能としたものでは、淡色のYインクを用いると、より目立ちにくくなるために好ましい。
図1、図2に示すように、記録ヘッドHの主走査方向に沿ういずれか一方の端部には、本発明のマーク検出手段としてのマーク検出器19が設けられている。このマーク検出器19は、図5(a)に示すように、筐体191内に、開口192を通して記録媒体P表面に向けて略垂直に検出光を照射する発光素子193と、該検出光を記録媒体Pの表面に集光収束する集光レンズ194と、開口195を介して上記検出光が記録媒体P表面で反射した反射光を集光収束する集光レンズ196と、該集光レンズ196により集光された検出光を受光する受光素子197とを備えた反射型の光学式センサからなり、記録媒体P上に照射された検出光が、移動している記録媒体P上のマークMを通過した時の光量変化を検出することで、このマークMを検出するようになっている。マーク検出器19からの出力信号は、後述する増幅部21及びA/D変換部22を経て制御部10に入力される。
マークMがYインクにより記録されている場合には、このマーク検出器19に使用される発光素子193としては、マークMの検出を良好に行えるように青色LED(波長460nm〜500nm)を用いることが好ましく、また、受光素子197には青色、即ち上記青色LEDが発する波長の光に感度を有する受光素子であることが好ましい。このような受光素子197には一般にフォトセンサが用いられる。
このマーク検出器19は、記録媒体Pの有無、即ち記録媒体Pが記録ヘッドHによる記録位置まで搬送されているか否かを検出するための記録媒体検出手段としてのセンサを兼用していることは好ましい態様であり、この記録媒体検出手段としてのセンサを兼用することで、部品点数が削減され、コストの低減化を図ることができる。
また、本実施形態に示すように、記録ヘッドHと共に主走査方向に沿って往復移動するように構成されるマーク検出器19の場合、記録媒体Pに対する記録ヘッドHの双方向の位置合わせを行うための双方向位置検出手段としてのセンサを兼用していることも好ましい態様である。即ち、記録ヘッドHは主走査方向に沿って移動する際に、このマーク検出器19によって記録媒体Pの両側縁の位置を検出することで、記録ヘッドHの双方向の位置合わせを行うことができ、マーク検出器19をこのためのセンサとして兼用することで、上記同様、部品点数が削減され、コストの低減化を図ることができる。
もちろん、マーク検出器19は、上記記録媒体検出手段としてのセンサと上記双方向位置検出手段としてのセンサの両方を兼用していると、更に部品点数の削減を図り得るために好ましい。
なお、図5(a)に示すマーク検出器19は、発光素子193から出射されて受光素子197において受光される検出光の光軸L1、L2が、副走査方向に沿って角度θを持って対向するように配置されているが、これに限らず、図5(b)に示すように、記録媒体Pの表面に対して主走査方向に沿って斜めとなるように配置されるようにしてもよい。すなわち、発光素子193と受光素子197は、光軸L1とL2が角度θを持って主走査方向に沿って対向するように配置される。このように検出光の光軸L1、L2が記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)と直交する主走査方向に沿って斜めとなることで、マークMが主走査方向に長いライン状である場合に、その主走査方向に長いマークMの副走査方向のライン幅の影響を受けにくくなり、受光素子197によって誤差の少ない検出が可能となる。
マーク検出器19によって記録媒体P上のマークMが検出されることによって出力された出力信号は、図2に示す増幅部(AMP)21において所定の信号レベルに増幅され、次いでA/D変換部22に送られる。A/D変換部22は、増幅部21によって増幅されたアナログの出力信号をデジタル変換処理し、制御部10に出力する。
一方、本実施形態では、記録媒体Pの位置を検出するため、位置情報検出手段を構成するロータリーエンコーダ(図示せず)及びエンコーダセンサ20が設けられており、図2に示すように、エンコーダセンサ20によって、副走査モータ18の駆動によって回転駆動される一対の送りローラR1、R2の回転に同期して出力されるロータリーエンコーダのパルス数が検出される。エンコーダセンサ20によって検出されたパルス数は、一対の送りローラR1、R2の回転量に対応した記録媒体Pの位置情報20aとして制御部10に出力される。このロータリーエンコーダは、送りローラR1、R2、副走査モータ18のいずれかの回転に同期するように設けられていればよい。
ここで制御部10は、上記エンコーダセンサ20から出力される位置情報20aの出力のタイミングで、A/D変換器22にA/D変換を行う指令を出力することで、増幅部21から送られるアナログの出力信号をA/D変換部22でA/D変換し、デジタルの出力値をサンプリング入力値として入力するように制御を行う。
図6は、このサンプリングの様子を示すタイムチャートである。図中、(a)は、図2において増幅部21からA/D変換部22に出力されるマーク検出器19からのアナログの出力信号であり、(b)は、制御部10からA/D変換器22に出力されるサンプリングのタイミング信号であり、(c)は、エンコーダセンサ20から制御部10に出力される位置情報20aのパルス信号である。ここでは、図4(a)に示すように、一つのヘッドのうちの1つのノズルからインク滴を吐出することにより記録媒体P上に記録したマークMを検出する場合を示している。
マークMが特定のノズルから特定のタイミングで記録されるようにすれば、そのおおよその位置は予め判っているため、記録媒体Pを移動させる際のロータリーエンコーダのパルス数をエンコーダセンサ20によってカウントすることにより、マークMがマーク検出器19によって検出される近傍まで近づいたかどうかを検知することができる。制御部10によるA/D変換部22の出力値のサンプリングは、エンコーダセンサ20によってロータリーエンコーダのパルス数をカウントすることにより、マーク検出器19によってマークMが検出されると予測される位置の直前から開始する。
この位置情報20aとサンプリングされた出力値のデータ(以下、サンプリングデータともいう。)は、制御部10内の所定の記憶領域に格納される。
制御部10は、そのサンプリングデータから、マーク検出器19からの出力信号のピークの位置を探し出すことによってマークMの中心位置を検出する。このサンプリングデータは、エンコーダセンサ20からの位置情報20aに同期しているため、そのピークの位置に対応する位置情報20aから、マーク検出器19の検出光が一つのマークMを通過した際の中心位置、すなわちマークMの副走査方向に沿う中心位置を検出することができる。このマーク検出器19によるマークMの位置は、A/D変換部22においてA/D変換されたサンプリングデータのピーク位置によって検出されるため、記録媒体Pのコックリングによる影響や、プラテンへの吸着状態の変動による影響を受けることがなく、検出の信頼性を向上させることができる。この検出されたマークMの中心位置の位置情報は、制御部10内の所定の記憶領域に格納される。
図2に示すように、制御部10には演算部101が設けられており、マークMの中心位置を検出した時点で、この演算部101により、記録媒体Pの移動を開始してから最終的に適正な位置に移動完了させるまでの目標移動量(ピーク値算出移動量)を算出する。
記録媒体Pの1回の移動を開始する場合、最終的に目標とする記録媒体Pの位置よりも手前の位置にマークMが存在する。また、マークMの検出されるおおよその位置は記録媒体Pの移動開始時に判っているため、記録媒体Pの移動を開始してからマークMを実際に検出した位置までの移動量(Lmark-true)に対して、そのマークMの検出位置から次の印画を行うために適正な位置となるまでの移動量として+αの移動量(Lyobun)だけ加算した後、記録媒体Pの移動を停止させればよいことになる。この+αの移動量(Lyobun)は、マークMを検出した位置情報の示す位置から記録媒体Pをエンコーダのパルスのカウント数で何カウント移動させれば次の印画を行うために適正な位置となるまで移動するかの移動量であり、マークMが特定のノズルから特定のタイミングで記録されることから予め判っている値である。
すなわち、上記ピーク値算出移動量は、記録媒体Pの移動を開始してから上記の通りマークMを実際に検出した位置までの移動量(Lmark-true)と、このマークMの現実の位置から更に移動させて次の印画を行うために適正な位置となるまでの移動量(Lyobun)との合算の移動量(Lmark-true+Lyobun)である。この移動量(Lyobun)に相当するカウント数は、予め制御部10の所定の領域に記憶されている。
また、図2に示すように、制御部10には記憶部102が設けられており、記録媒体Pの移動を開始してから、記録媒体Pを目標の位置までほぼ適正に移動完了させることができるであろうと予測される目標移動量である予測移動量(Lyosoku)が予め記憶されている。この予測移動量(Lyosoku)は、上記演算部101において算出される目標移動量としてのピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)にほぼ一致する移動量である。
この記憶部102に記憶される予測移動量(Lyosoku)は、使用される記録媒体種毎に有していることが好ましい。この記録媒体種としては、例えば紙、プラスチックシート、紙の片面又は両面をプラスチックフィルムで被覆した積層シート等の種類の他、記録媒体の厚みの種類等が挙げられる。また、紙の中でも普通紙、アート紙、コート紙、キャスト紙等の種類に分けるようにしてもよい。
更に、記憶部102に記憶される予測移動量(Lyosoku)は、記録モード毎に有していることも好ましい。記録モードとしては、例えば、解像度のモードとして、360dpiで記録する低解像度モードと760dpiで記録する高解像度モード等が挙げられる。
このような記録媒体種毎又は記録モード毎に予測移動量(Lyosoku)を記憶しておくことで、この予測移動量(Lyosoku)によって記録媒体Pを移動させる場合でも、使用される記録媒体種又は記録モード毎に応じてそれぞれ最適な移動量で精度良く移動させることができる。使用される記録媒体種又は記録モードの選択は、例えばユーザーの設定操作により行うことができる。
この記憶部102は書き換え可能なメモリによって構成されており、上記予測移動量(Lyosoku)を書き換えることができるようになっている。
更に、図2に示すように、制御部10には比較スイッチ103が設けられており、上記演算部101によって算出されたピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)と上記記憶部102に予め記憶されている予測移動量(Lyosoku)とを比較し、その結果により、記録媒体Pを移動させるために副走査駆動部17に出力する駆動信号を、上記ピーク値算出移動量に基づく駆動信号又は上記予測移動量に基づく駆動信号のいずれかに選択的に切り替える。この比較スイッチ103は、本発明における比較手段及び切り替え手段に相当する。
次に、画像記録方式の一例である図7に示すブロック印画方式の説明図を用いて、本発明における記録媒体Pの具体的な動作について説明する。ここでは説明の便宜上、複数のヘッドh1〜h4を備えた記録ヘッドHのうちの一つのヘッド(図7中ではこれを符号hとする)の動作のみに着目し、記録媒体は図示省略して説明する。
図7に示すブロック印画方式は、No.1ノズルからNo.mノズルまでのノズル数mのヘッドhを用いて、各ノズル間の隙間を4パスで埋めていくことで1ブロックを印画する場合の印画方式を例示している。ここではヘッドhを主走査方向に沿う図示右方向への移動(スキャン)時にインク滴を吐出して印画を行うものとして説明しており、図中、特にNo.1ノズルを●(黒丸)で示し、その他のノズルを○(白丸)で表現している。
ヘッドhのn回目のスキャン(これをnスキャンと表現する)において、各ノズルからインク滴を吐出してm本のラインを印画した後、続いて同一ヘッドhによりn+1スキャンを行うべく、記録媒体移動手段の動作によって記録媒体を副走査方向に所定量移動させる。図7では説明の便宜上、この記録媒体の移動をヘッドhのnスキャン目の位置からn+1スキャン目の位置への図示右下方向への移動によって表現している。
この印画方式では、n+1スキャン目では、ヘッドhのNo.1ノズルにより印画されるラインが、nスキャン目のNo.2ノズルによって印画されたラインに隣接するように記録媒体が移動され、n+2スキャン目では、ヘッドhのNo.1ノズルにより印画されるラインが、n+1スキャン目のNo.2ノズルによって印画されたラインに隣接するように記録媒体が移動され、n+3スキャン目では、ヘッドhのNo.1ノズルにより印画されるラインが、n+2スキャン目のNo.2ノズルによって印画されたラインに隣接するように記録媒体が移動され、n+4スキャン目では、ヘッドhのNo.1ノズルにより印画されるラインが、n+3スキャン目のNo.2ノズルによって印画されたラインに隣接するように記録媒体が移動される。ここで、例えばnスキャンからn+1スキャンへの移動時に、No.1ノズルにより印画されるラインをnスキャン時のNo.2ノズルにより印画されたラインに隣接するようにしているのは、4パスによって印画される隣接する4本のラインが、同一のノズルから吐出されるインク滴によって印画されないようにし、ヘッドhのノズルから吐出されるインク滴の着弾ずれによる誤差等にばらつきを持たせるためである。
以上4回の動作(4パス)によって、nスキャン目に印画されたライン間の隙間はすべて埋められ、これにより1ブロックの印画が終了する。この4パス動作時の記録媒体の移動は、比較的短い小距離の移動であるが、4パスによって1ブロックの印画が終了すると、次に2ブロック目の印画を上記同様の動作によって行うために、記録媒体を、図示するようにヘッドhによるn+4スキャン目の位置まで移動させる。このときの移動は比較的長い大距離の移動となる。
例えば、ヘッドhのノズル数を128個、ノズル間隔を140μmとすると、上記のように4パス動作を行う場合、そのうちの3回の記録媒体の移動は、140+140/4=175μmとなる小距離の移動となり、4回目毎に、(128−4)×140+140/4=17395μmとなる大距離の移動となる。
従来ではこの大距離移動時に、送り誤差によってブロック間に白スジが発生する等の画像品質の劣化が見られたが、ここでは、印画中に、少なくともいずれか一つのノズルから上記した通りマークMを記録媒体上に記録しておき、以下の動作によって記録媒体を精度良く移動させるようにしている。なお、マークMの記録は、大距離移動の前、例えば上記ブロック印画の場合には1ブロック印画中に、少なくとも1つ記録されればよく、また、特定のノズルから特定のタイミングで記録されるようにすれば、印画中のいずれのタイミングで行うようにしてもよい。図7では、1ブロック印画中の最初のスキャン時に、ヘッドhにおける副走査方向に沿う最も後端側に位置するNo.mノズルから主走査方向に沿って一定長さを有する一つのライン状のマークMを非印画領域に記録した場合を示している。
図8は、記録媒体の大距離移動時、例えば図7に示したヘッドhによる1ブロック印画時の最終のn+3スキャン目から次のブロック印画時の最初のn+4スキャン目への制御動作を示すフローチャートである。このフローチャート及び図1、図2及び図7を参照しつつ更に制御動作を説明する。
4パスによる1ブロックの印画が終了すると、制御部10は副走査駆動部17を駆動制御して副走査モータ18を高速で駆動させ、マークMが記録された位置が記録ヘッドHの近傍に設けられているマーク検出器19の近傍まで来るように、記録媒体Pを副走査方向に沿って高速で移動させる(S1)。
記録媒体Pを移動する際のロータリーエンコーダのパルス数をエンコーダセンサ20によってカウントすることにより、マークMがマーク検出器19によって検出される近傍まで近づいたかどうかを検知することができる。このようにして制御部10は、ロータリーエンコーダのパルス数のカウントにより、マークMがマーク検出器19によって検出される近傍まで記録媒体Pが移動したことを検知すると(S2)、マーク検出器19によってマークMを正確に検出するために、今度は副走査モータ18の駆動を低速に切り替え、記録媒体Pを低速で移動させる(S3)。このようにマークMが検出される近傍までは記録媒体Pを高速で移動させ、検出近傍まで来たときに低速で移動させるようにすることは、マークMを正確に検出可能としながらも移動時間を短縮でき、これにより記録時間の短縮化を図ることができるために好ましい態様である。
記録媒体Pの移動時は、記録ヘッドHはマーク検出器19から出射される検出光が記録媒体P(ここでは記録媒体Pの非印画領域)に記録されたマークMの上を通過する位置に待機しており、マーク検出器19により検出されたアナログの検出信号は、まず、増幅部21によって増幅された後、A/D変換部22へ送られ、デジタル信号に変換される。制御部10は、マークMが検出されると予測される位置の直前から、位置情報20aの出力のタイミングで、マーク検出器19からのアナログの出力信号をA/D変換部22でA/D変換し、各出力値のサンプリングデータに対応するエンコーダセンサ20からの位置情報20aを入力していき、この位置情報20aとA/D変換でサンプリングされた出力値とを、制御部10内の所定の記憶領域に記憶する。
記録媒体Pが副走査方向に所定距離移動すると、やがてマーク検出器19はマークMを通過する。このとき制御部10は、位置情報20aに対するサンプリングデータから、サンプリングのピーク値に対応する位置情報を検出する(S4)。
このピーク値の位置情報が検出されると(上記ステップS4においてYESの場合)、その検出されたピーク値の位置情報は、制御部10内の所定の記憶領域に格納される(S5)。
このようにして検出されたピーク値の位置情報はマークMの中心位置であることから、この時点で制御部10は、この位置情報を記録媒体Pを大距離移動させる際の基準位置とし、演算部101において、記録媒体Pの大距離の移動を開始してからこの基準位置までの移動量(Lmark-true)と、この基準位置から更に記録媒体Pを移動させて次のブロックを印画する際の最初のスキャン(図7のn+4スキャン目)を行うための適正な位置までの移動量(Lyobun)との合算の移動量であるピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)を算出する。
続いて、制御部10は、比較スイッチ103において、演算部101において算出された上記ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)と記憶部102に予め記憶されている予測移動量(Lyosoku)とを比較する(S6)。この時点では、最終的な目標位置である次のブロックを印画する際の最初のスキャン(図7のn+4スキャン目)を行うための適正な位置まで未だ達していないため、制御部10では、ここから実際に記録媒体Pを移動させるための最終的な目標移動量は、ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)によるものとするか、予測移動量(Lyosoku)によるものとするかを比較スイッチ103において比較して決定する。
この比較スイッチ103における移動量の比較は、ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)と予測移動量(Lyosoku)との差分の値(X=ピーク値算出移動量−予測移動量)を算出し、その結果を予め設定されている設定値Yと比較することによって行われる。
例えば、図9(a)に示すように、ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)と予測移動量(Lyosoku)との差分の値Xが0か又は極めて小さい場合は、マーク検出器19によって記録媒体P上のマークMがほぼ適正に検出されたものであることが判断されるが、図9(b)に示すように、記録媒体P上の実際のマークMの記録位置よりもかなり手前の位置に例えば汚れ等が付着しており、マーク検出器19によってこれをマークとして誤検出してしまった場合、上記ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)は予測移動量(Lyosoku)に比較して小さな値となり、その差分の値Xはマイナスとなる。従って、上記設定値Yは、マイナスの或る一定値を基準値として設定しておき、この設定値Yよりも小さい場合にはマーク誤検出として判断するようにしておけばよい。
この設定値Yは、記録媒体Pの目標移動量に応じて適宜決定されるが、例えば目標移動量の0.5%程度マイナスとなる値に設定しておくことができる。
なお、マーク検出器19によってマークMを検出するまでの間に記録媒体Pに滑りが発生した場合、エンコーダのパルス数のカウント値よりも実際の記録媒体Pの移動量が小さくなる結果、マークMを検出するまでのエンコーダのパルス数が大きくなり、上記ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)は予測移動量(Lyosoku)に比較して大きな値となり、その差分の値Xはプラスとなるが、その後、マークMを通過することにより検出がなされるため、そのとき検出されたマークMの位置から残りの移動量(Lyobun)を移動させればよいことになる。従って、上記差分の値Xが0を越えてプラスになる場合は、全体としての記録媒体Pの移動量はピーク算出移動量(Lmark-true+Lyobun)に基づいて移動させればよい。従って、上記設定値はマイナスの或る一定値Yを基準値として有していればよい。この設定値Yは制御部10内の所定の記憶領域に予め記憶されている。
そして、制御部10では、上記比較スイッチ103において、上記差分の値Xをこの設定値Yと比較し、X≧Y(又はX>Y)である場合は、マーク検出器19によって記録媒体P上のマークMがほぼ適正に検出されたものであると判断できる。また、X<Y(又はX≦Y)である場合は、マーク誤検出と判断でき、このままピーク算出移動量(Lmark-true+Lyobun)によって記録媒体Pを移動させたのでは、図9(b)からも明らかなように、次のブロックの印画を行うための正確な位置まで移動させることができないので、全体としての記録媒体Pの移動量は予測移動量(Lyosoku)に基づいて移動させた方がよいと判断できる。
そこで、制御部10は、ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)と予測移動量(Lyosoku)との比較の結果、その差分の値Xが上記設定値Yに対してX≧Y(又はX>Y)の条件を満たすかどうかを判断する(S7)。そして、この条件を満たしていれば(上記ステップS7においてYESの場合)、制御部10は、マークMはマーク検出器19によって正確に検出されているものと判断し、比較スイッチ103において、副走査駆動部17を駆動するための駆動信号を上記ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)に基づいて出力するように切り替え、副走査モータ18を駆動させることにより、記録媒体Pを上記ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)に相当する距離だけ移動させた後停止させる(S8)。これにより記録媒体Pは、ヘッドhによって次のブロックを印画する際の最初のスキャン(図7のn+4スキャン目)を行うための適正な位置まで移動される。
マーク検出器19から実際に記録媒体P上に記録されたマークMを検出した位置までの距離は、一度調整されてしまえば、マーク検出器19とマークMの記録位置で固定されているため、周囲の環境や送りローラR1、R2等の機構的誤差によらず一定である。従って、記録媒体Pを副走査方向に、ヘッド長に近い大距離移動させる場合でも、少量の移動誤差しか生じないことになり、大距離の移動に対し、飛躍的に送り誤差を低減することができるようになる。これにより記録ヘッドHにより次のブロックの印画を開始しても、先に印画されたブロックとの間に白スジ等の発生なく印画を行うことができる。
次いで、比較スイッチ103においてピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)と予測移動量(Lyosoku)とを比較した結果、上記ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)が選択された場合、続いて制御部10は、上記ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)を、予め記憶されている上記予測移動量(Lyosoku)に加算し、その平均値を求めることにより、新たな予測移動量を算出する(S9)。制御部10は、ここで算出された新たな予測移動量(Lyosoku)を、比較スイッチ103における次回の比較の際に用いられる予測移動量とし、記憶部102に記憶されている従来の予測移動量をこの新たな予測移動量に変更更正する。
ここで、このようなステップS9を設けておくことにより、予測移動量(Lyosoku)の値を限りなく正確な移動量に一致させることができるようになる。これにより、後述するように、比較スイッチ103において予測移動量(Lyosoku)が選択され、この予測移動量(Lyosoku)に基づいて記録媒体Pを移動させなくてはならない場合が発生しても、限りなく適正な移動量に近い移動量で記録媒体Pを移動させることができ、マークMの誤検出等の不測の事態が発生した場合でも画像品質を大きく低下させることなく印画を継続させることができるようになる。
なお、この記憶部102に記憶されている予測移動量(Lyosoku)の値を変更更正する場合に用いられる上記ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)は、予測移動量(Lyosoku)に対して一定値以下の誤差を有するものに限定されることが好ましい。すなわち、上記ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)の値が既に記憶されている予測移動量(Lyosoku)の値に対して上記範囲内にある場合にのみ、その予測移動量(Lyosoku)の値を変更更正するようにする。この予測移動量(Lyosoku)は、何度もマークMの検出を行い、実際に記録媒体Pを移動させた移動量の平均値となるべきものであるから、このように変更更正することによって、ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)に限りなく一致させることができ、予測移動量(Lyosoku)に基づいて記録媒体Pを移動させる場合でも限りなく正確な移動を実現できるようになる。この一定値は目標移動量に応じて適宜決められるが、例えば予測移動量に対して±0.2%〜±0.3%程度とすることができる。
このようにして予測移動量(Lyosoku)を変更更正した後、マークMの検出による正常移動動作を終了する。
一方、上記ステップS7において、ピーク値算出移動量(Lmark-true+Lyobun)と予測移動量(Lyosoku)との比較の結果が、その差分の値Xがマイナスとなり、且つ、設定値Yを下回るような大きなマイナスの差分を有している場合(上記ステップS7においてNOの場合)、制御部10は、マークMを誤検出したものと判断し、比較スイッチ103において、副走査駆動部17を駆動するための駆動信号を上記予測移動量(Lyosoku)に基づいて出力するように切り替え、副走査モータ18を駆動させることにより、記録媒体Pを上記予測移動量(Lyosoku)に相当する距離だけ移動させた後停止させる(S11)。これにより記録媒体Pは、予測移動量(Lyosoku)に基づいて、ヘッドhによって次のブロックを印画する際の最初のスキャン(図7のn+4スキャン目)を行うために適正であろうと予測される位置まで移動される。
従って、なんらかの原因により、マーク検出器19によってマークを誤検出した場合であっても、予め記憶された予測移動量(Lyosoku)に基づいて、適正であろうと予測される位置まで移動させることができるので、マーク検出の測定不良の場合でも、予測移動量に基づいてほぼ適正な位置まで記録媒体を移動させることができ、画像品質の低下を軽減し、高品質の画像の印画が可能である。
なお、ここでは、上記ステップS3において記録媒体Pを低速で移動を開始させた後、マークMを通過したであろうと予測されるに十分な所定量を移動させ(S10)、その後もマークMを検出することによるピークの位置が検出できない場合(上記ステップS10においてYESの場合)も、制御部10は比較スイッチ103において、副走査駆動部17を駆動するための駆動信号を上記予測移動量(Lyosoku)に基づいて出力するように切り替え、副走査モータ18を駆動させることにより、記録媒体Pを上記予測移動量(Lyosoku)に相当する距離だけ移動させた後停止させる(S11)ようにしている。これによれば、何らかの原因によってマークMが消えてしまったり、記録できなかったことにより、マーク検出器19によって検出できなかったりした場合でも、予測移動量(Lyosoku)に基づいて、ヘッドhによって次のブロックを印画する際の最初のスキャン(図7のn+4スキャン目)を行うために適正であろうと予測される位置まで記録媒体Pを移動させることができる。
その後は、マークMの異常検出(非検出を含む)による移動動作を終了する。
以上の説明では、マークMは、図2に示したように、記録媒体P上の印画領域から外れた非印画領域に記録されるようにしたが、記録媒体Pの幅一杯にまで画像記録が行われる「縁なし画像」を形成する場合には、記録媒体Pの全面が印画領域となるため、非印画領域にマークMを記録してこれを検出する上記態様は利用できない。このため、「縁なし画像」を形成する場合には、このマークMは、記録ヘッドHの主走査によって記録される領域よりも、記録媒体Pの搬送方向上流側に記録されることが好ましい。
記録ヘッドHの主走査によって記録される領域よりも記録媒体Pの搬送方向上流側は、記録ヘッドHによって未だ記録が行われていない領域であり、この領域にマークMが記録されれば、その後、記録媒体Pが副走査方向に搬送されることによって、マーク検出器19がマークM上を通過する際に、このマークMを検出することが可能である。しかも、その後、記録ヘッドHの主走査によって画像が記録されることにより、上記マークMを画像中に埋めてしまい、画像中において視認しづらくすることができる。
マークMを記録ヘッドHの主走査によって記録される領域よりも記録媒体Pの搬送方向上流側に記録する場合に好ましいインクジェット記録装置の概要について、図10を用いて説明する。なお、図1と同一符号の部位は同一構成を示しているので、ここでの説明は省略する。
図10に示すように、4つのヘッドh1〜h4からなる記録ヘッドHのうち、インク滴を吐出することにより記録媒体PにマークMを記録するためのノズルを有するヘッド(ここではヘッドh4とするが、特に問わない。)は、他のヘッドh1〜h3に対して、記録媒体Pの搬送方向(副走査方向)の上流側に所定量(D)ずれて設けられている。このずれ量Dは、多くなると書き出し書き終わりでのオーバーヘッドが多くなり、印画時間に悪影響を与えるため、マークMを記録するためのヘッドh1の1ノズル間隔分以上であり、好ましくは1ノズル間隔分以上N/5ノズル間隔分以下とすることである。但し、Nは1ヘッド当たりのノズル数とする。
このように記録ヘッドHのうちのマークMを記録するためのノズルを有するヘッドh4が、他のヘッドh1〜h3に対して記録媒体Pの搬送方向上流側に1ノズル間隔分以上ずれて設けられていることにより、このヘッドh4によって、記録媒体Pの搬送方向上流側に、そのずれ量D分だけ先行的にマークMが記録される。このように先行的にマークMが記録される領域は、記録媒体P上において未だ記録が行われていない領域であるため、記録媒体Pが副走査方向に搬送されることで、マーク検出器19によって検出が可能となる。そして、その後、記録ヘッドHが主走査されることによって、記録媒体P上に記録されたマークMは画像中に埋められることになる。
このようにしてマークMが記録される領域は、「縁なし画像」の印画領域内であるため、その後の記録ヘッドHの主走査によって画像中に埋められるとはいえ、画像への影響を極力少なくする意味でも、マークMはマーク検出器19によって検出するに足る十分小さなエリアに記録されるべきである。このように十分小さなエリアにマークMを記録するには、マークMを記録するためのノズルに対応するデータを、主走査方向に沿ってマークMを記録するに必要な距離だけ吐出にすることが好ましい。
なお、縁なし画像を記録する場合のマークMの記録態様を図11に示す。この縁なし画像を記録する場合のマークMの記録態様も、(a)に示すように、一つのヘッドの一つのノズルから一つのマークMのみを記録する態様、(b)に示すように、一つのヘッドにおける隣接する複数のノズルのうちの一つおきのノズル(ここでは2つのノズル)から一度にマークMを記録する態様、(c)に示すように、一つのヘッドにおける隣接する複数のノズル(ここでは4つのノズル)から一度に複数のマークMを記録する態様が挙げられる。
送り精度を確保する目的でマークMを複数記録した場合には、マーク検出器19による検出光のスポット径は、各マークMの副走査方向に沿う間隔よりも小さくし、マークMを記録するノズルに対応するデータを、主走査方向に沿ってマークMを記録するに必要な距離だけ吐出にすることが好ましい。これにより、マークMは十分小さなエリアに記録されると共に、複数のマークMの各々を検出光によって確実に検出することが可能となる。これらノズルの制御は、制御部10(図2に示す)によって行われる。
このように「縁なし画像」の印画領域内にマークMを記録する場合のマークMの検出動作及び記録媒体Pの移動動作も、上記「縁あり画像」の非印画領域にマークMを記録した場合と同様に行われる。
以上説明した本発明に係るインクジェット記録装置における記録媒体Pの位置情報の検出には、ロータリーエンコーダのパルス数をカウントするものに限らず、副走査モータ18にステッピングモータを使用した場合には、そのステッピングモータに印加するステップパルス数をカウントすることによって行うようにしてよい。
また、マークMを記録するマーク記録手段は、画像記録を行うための記録ヘッドHを兼用するものに限らず、記録媒体Pの搬送方向に沿う方向において、マーク検出手段に対して一定の配置関係を維持できるように配設されるものであれば、記録ヘッドHとは別体の独立した構成であってもよい。この場合、マークMを記録する位置は、記録媒体Pの画像記録面に限らず、その裏面側であってもよい。このとき、マーク検出手段も記録媒体Pの画像記録面の裏面側に配置されることはもちろんである。