JP4491662B2 - テトラブロモビスフェノールaの製造方法 - Google Patents

テトラブロモビスフェノールaの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂用難燃剤として広く使用されているテトラブロモビスフェノールA(以下TBAと記す。)の製造方法に関する。詳しくは、臭素を含むTBAのメタノール溶液から直接高品質のTBA結晶を取得する効果的・効率的な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
TBAは通常、低級アルキルアルコール、ハロゲン化炭化水素等の有機溶媒を用い、ビスフェノールAと臭素との反応により製造される。その際、取り扱いが容易で、特に不純物の生成が比較的少ないことから、工業的溶媒としてメタノールが選ばれ、また臭素は理論量に対し若干過剰に用いられる。
【0003】
例えば、特公昭41−3376号公報には、好適なアルコールとしてメタノールを用い、該メタノール溶液中のビスフェノールAに対して理論量以上の臭素を反応させ、次いで反応液の温度を高め、副生する臭化水素と残留臭素をメタノールと反応させ臭化メチルとして蒸留回収した後、TBAのメタノール溶液に水を添加してTBA結晶を晶析させる方法が開示されている。
【0004】
また、特開昭53−20494号公報にも、メタノール溶媒中のビスフェノールAを臭素化して得た反応液の温度を高め、残留臭素を臭化水素と共に臭化メチルとして回収する方法が開示されている。そしてこの方法では、TBAのメタノール溶液に硫酸を添加して、TBA結晶を晶析させている。硫酸を添加すると、水を添加する場合と比較して着色の少ないTBA結晶が得られると、同公報には述べられている。
【0005】
上述したこれらの方法はいずれも過剰臭素を溶媒であるメタノールと反応させ臭化メチルとして回収している。この臭化メチルはかつては有用な副産物であり、燻蒸剤等として利用されたが、近年オゾン層破壊の原因物質とされ、その生成の回避が望まれている。
【0006】
この臭化メチル併産法に代わる方法としては、反応液の過剰臭素を一旦還元して臭化水素にした後、TBAを晶析させる方法が知られている。
【0007】
特開平2−196747号公報には、メタノール溶液中のビスフェノールAを臭素化して得た反応液の残留臭素をヒドラジン水溶液を用いて臭化水素に還元した後、水を添加してTBA結晶を晶析させる方法が開示されている。この方法は臭化メチルを併産することが無く、地球環境上好ましい方法といえる。また、ヒドラジンによって残留臭素を完全に還元でき臭化水素に変換できる。さらに、水添加によって効率良くTBAを晶析できる。しかしながら、残留臭素をヒドラジン水溶液で還元した後、水を添加してTBAを晶析させる二工程を必須としており、プロセス及び操作が煩雑となる。
【0008】
特開平2−270833号公報には、メタノール溶液中のビスフェノールAを臭素化して得た反応液を加温して残留臭素を臭化メチルとして回収し、更に回収できなかった残留臭素を亜硫酸ナトリウムで還元した後、水添加等の常法でTBAを晶析させる方法が開示されている。この亜硫酸ナトリウムでも残留臭素を還元でき、臭化水素と硫酸ナトリウムにできる。しかしながら、この方法においても臭素の還元とTBAの晶析の二工程が必要であり、プロセス及び操作が煩雑になる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来技術の特徴は、ビスフェノールAの臭素化反応液からTBAを晶析させる前に残留臭素を除去し、未反応臭素を含有しない系からTBA結晶を製造することであるが、環境問題やプロセス及び操作の煩雑さから、工業的な方法としては未だ満足できるものではなかった。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、合成樹脂用難燃剤として、生命や構造物の保安上有益で全世界的に広く利用されているTBAの効果的、効率的、且つ経済的な製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
臭素存在下でTBAを晶析すると、TBA結晶に臭素が取り込まれ、品質が著しく低下するため、臭素を含んだTBAのメタノール溶液からのTBAの直接晶析はこれまで不可能とされてきた。本発明者らは、上述した背景に鑑み、臭素を含んだTBAのメタノール溶液から高品質のTBA結晶を合理的に晶析させる方法について、鋭意検討した。
【0012】
その結果、臭素を含んだTBAのメタノール溶液、還元剤、及び水を各々別々に連続して晶析槽に添加することにより、臭素の取り込みがなく、高品質で且つ結晶成長の良いTBA結晶が得られるという、驚くべき新事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち本発明は、臭素を含んだTBAのメタノール溶液と還元剤と水を、各々別々に連続して晶析槽に供給し、臭素の還元とTBAの晶析を同時に行うことを特徴とするTBAの製造方法である。
【0014】
以下本発明を更に詳細に説明する。
【0015】
本発明において、臭素を含んだTBAのメタノール溶液とは、臭素、TBA及びメタノールを含有する溶液をいう。すなわち主成分は、臭素、TBA及びメタノールであり、それらの組成は、通常、それぞれ1〜5重量%、10〜30重量%及び89〜65重量%である。これら以外に少量の水や臭素化有機物を含んでいても良い。
【0016】
本発明において、臭素を含んだTBAのメタノール溶液としては、ビスフェノールAをメタノール溶媒中で臭素を用いて臭素化した反応液がより好ましい対象となる。
【0017】
メタノール溶媒としては、メタノールを主成分とし、水等の臭素化反応に直接関与しない成分を含んでいても良い。例えば、メタノール又は15重量%以下の水を含有するメタノール水溶液が挙げられ、これにビスフェノールAを溶解し、化学量論以上の臭素を加え反応させTBAを生成させる。水の含有量が15重量%を越えると臭素化反応の途中で、生成したTBAが結晶として析出する場合があり、このとき、臭素を取り込み結晶が着色するため好ましくない。
【0018】
反応溶媒中のビスフェノールAの濃度は、格別の限定はないが、通常5〜30重量%程度で実施される。
【0019】
臭素化反応温度は通常30℃以下で実施される。これは、溶媒メタノールと副生する臭化水素との反応生成物である臭化メチルの生成を抑えるためである。
【0020】
また、反応に使用される臭素の使用量は、通常ビスフェノールAに対して4.0〜5.0(モル比)であり、好ましくは4.1〜4.5(モル比)である。4.0未満ではTBAの収率が低下し、5.0を超えると過剰臭素による副反応が起こりやすくなる。
【0021】
こうして得られた、臭素を含んだTBAのメタノール溶液の代表的な組成は、TBA 10〜25重量%、トリブロモビスフェノールA 0.5〜1重量%、臭化水素酸 5〜15重量%、水 0〜5重量%、残留臭素 1〜5重量%、メタノール 55〜75重量%である。
【0022】
本発明は、臭素を含んだTBAのメタノール溶液、還元剤及び水を、各々別々に連続して晶析槽に供給し、臭素の還元とテトラブロモビスフェノールAの晶析を同時に行うことを必須とする。
【0023】
本発明において、臭素を含んだTBAのメタノール溶液と還元剤と水を、各々別々に連続して供給する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、それぞれを一般的な定量ポンプで供給すれば良い。
【0024】
本発明において、晶析槽としては、特に限定するものではなく、具体的には、DTB型(Draft−Tube−Baffled−type)、DP型(Double−Propeller−type)晶析装置等の運搬層型、一般的な攪拌層型である完全混合槽型、Crystal−Oslo型晶析装置等の分級層型等の連続式晶析装置が用いられる。
【0025】
本発明において、還元剤としては、臭素を臭化水素に還元できるものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、ヒドラジン、ヒドロキシアミン等の窒素系還元剤、硫化物、水硫化物、イオウ、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜二チオン酸塩、亜硫酸ガス等のイオウ系還元剤、ナトリウムボロハイドライド等の水素化物等が挙げられる。これらを単独又は二種以上混合して使用してもよい。臭素との反応性、析出するTBA結晶の品質、入手のし易さ、操作性、そして経済性から、好ましくはヒドラジン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、及び亜硫酸ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種が用いられる。これらの還元力は強く、速やかに残留臭素を臭化水素に還元できる。使用する還元剤の濃度について特に限定は無く、飽和水溶液でも希薄水溶液でもよく、亜硫酸ガスではそのままガス状で導入しても良い。
【0026】
還元剤の添加量は、TBAのメタノール溶液中の残留臭素に対して若干還元当量以下、例えば、0.95程度でも構わないが、還元当量以上であることが好ましく、この場合、残留臭素を完全に臭化水素に転化でき、より高品質のTBA結晶を得ることができる。より好ましい添加量は1.05〜1.30倍還元当量である。
【0027】
還元剤と残留臭素は酸化還元反応する。ヒドラジンを用いる場合は次の反応式で進む。
【0028】
24+2Br2→4HBr+N2
亜硫酸ナトリウムを用いる場合は次の反応式で進む。
【0029】
Na2SO3+Br2+H2O→2HBr+Na2SO4
還元剤添加量の調節は定量ポンプで行っても良いが、TBA晶析時の母液の酸化還元電位で制御しても良く、この場合運転操作は容易で、その精度は高く、より好ましい方法である。酸化還元電位による制御では、600mV(vsSCE)以下が好ましく、600mV以下では母液中に臭素は存在せず、完全に臭化水素に転化でき、また、析出した結晶に臭素は取り込まれず、高品質のTBA結晶を得ることができる。還元剤投入量が残留臭素の還元当量未満である場合、600mVより高い酸化還元電位を示し、臭素が一部未還元で残り、その一部がTBA結晶に移行し、品質がやや低下する。還元剤の添加量が多くても、TBA結晶品質に特に問題はないが、経済性が低下する。好ましい、還元剤添加量は前記の1.05〜1.30倍当量であり、酸化還元電位にして約550〜約400mVである。
【0030】
本発明において、酸化還元電位の測定方法としては、特に限定するものではないが、例えば、白金、金電極と比較電極の組み合わせや、それらが組み合わさった複合電極等、一般的に用いられる酸化還元電極を用いて測定すればよい。
【0031】
還元剤の添加と共に水も同時に連続して添加する。水はTBAの晶析に対して貧溶媒として作用し、その添加量によりメタノールに溶解しているTBAの析出量を調節できる。水の添加量が多い場合はTBA結晶の回収率は高くなり、99%以上、99.9%にもできるが、反面、結晶成長は低下し、その粒径は小さく、また結晶の純度がやや低下する。水の添加量が少ない場合、TBAの結晶成長は向上し、200μm以上の単一結晶が容易に得られ、また、その結晶品質は向上するが、反面、TBA結晶の回収率が低くなる。
【0032】
水の添加量は、晶析槽内の母液の水分濃度に対応し、この水分濃度を基に設定するのが好ましい。当然の事ながら母液中の水分濃度はTBAのメタノール溶液中の水分、還元液中の水分にも関係する。
【0033】
母液中の水分濃度としては、TBAの回収率や結晶成長より適宜決めることができ、特に限定しないが、通常20〜60重量%以下で好適に操作できる。
【0034】
水の添加は、TBAのメタノール溶液や還元剤とは別に行うが、その一部又は全部を予め、TBAのメタノール溶液や還元剤に加えておくこともできる。TBAのメタノール溶液に加える場合は、TBA結晶が析出しない範囲であり、還元剤が水溶性の時、これに全量加えてもよい。こうして臭素を含むTBAのメタノール溶液と還元剤、そして水が別々に連続して晶析槽に添加され、晶析槽内で臭素の還元とTBAの晶析が同時になされる。
【0035】
ここでの温度は、特に限定しないが、10〜40℃、更には20〜35℃が好ましい。低温では結晶の成長性が低下し、結晶粒径が小さくなる。そしてTBA結晶の濾過性が悪化し、濾過時間の延長、結晶洗浄効率の低下(品質の低下)などを招く。一方、高温では結晶の成長性は大きいもののメタノールの蒸発、SO2等の還元ガスの揮散などの課題がある。
【0036】
還元及び晶析時の攪拌は、TBAスラリーが均一流動できる強度で良く、特に制限はない。また、スラリーの滞在時間は通常0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間である。短いと生産性は大きくなるが結晶成長は低下する。長いと結晶成長は良く、粒径の大きいTBA結晶が得られる。5時間以上では、結晶成長の向上効果は殆ど無くなる。むしろ生産性の低下が大きくなる。
【0037】
臭素を含んだTBAのメタノール溶液と還元剤、及び水を別々に連続して晶析槽に供給し、臭素の還元とTBA晶析を行うが、ここで得られるTBAのスラリーは連続的に抜き出しても、また晶析槽に一杯になった後、全量又は一部抜き出しても良い。前者は連続導入・連続抜き出しの形式となり、後者は連続導入・間欠抜き出し(半回分式)の形式となる。運転操作性、生産性から前者が好ましい。
【0038】
こうしてTBA結晶の晶析スラリーが得られるが、通常このスラリーから遠心濾過機、加圧濾過機等で固液分離し、TBA湿ケークと濾液を得る。TBA結晶の破砕抑制、結晶の洗浄性向上等から遠心濾過機を用いるのが好ましい。また、TBA湿ケークはメタノールと水の混合溶液で洗浄するのが好ましく、TBA結晶の溶解を抑制しつつ、付着母液を十分除くことができる。その後、通常の方法で乾燥して製品とする。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の方法を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、%は重量に基づくものである。
【0040】
<臭素の分析法>
(1)溶液中の臭素(TBAのメタノール溶液、TBA晶析母液)
溶液に5%KI水溶液を加え沃素を遊離させ、デンプン水溶液を指示薬とし0.1N亜二チオン酸ナトリウム水溶液による滴定法にて定量した。
【0041】
(2)TBA結晶中の臭素
TBAをクロロベンゼンに溶解し、0.1%硫酸水溶液により洗浄後、クロロベンゼン中の遊離の臭素をヒドラジン水溶液で還元し、臭素イオンとして水相に抽出して、硝酸銀水溶液による電位差滴定法により定量した。
【0042】
<メタノールAPHA>
TBA結晶をメタノールに溶解し、20%溶液を調製し、APHA色度標準液と比色して定量した。
【0043】
調製例1 TBAメタノール溶液の製造
攪拌翼,温度計を設置し、ジャケット及び抜き出し口付き3Lセパラブルフラスコの液温を15℃に保ちながら、12%ビスフェノールAのメタノール溶液(水3.5%を含む)を280g/Hr、臭素を100g/Hrで連続フィードした。そして液量を2.3kgに調節しながら反応液を抜き出し口から連続的に抜き出し、これをTBAメタノール液として実施例、比較例に供した。
【0044】
TBAメタノール溶液の組成は、TBA 20.2%、トリブロモビスフェノールA 0.5%、臭化水素酸 12.3%、水 2.3%、臭素 1.9%、メタノール 62.8%であった。
【0045】
実施例1
撹拌翼,温度計,酸化還元電極を設置し、ジャケット及び抜き出し口を備えた1Lガラス製晶析槽に、温度を30℃に保ちながら、TBAメタノール溶液 600g/Hr、水 360g/Hr、及び14%亜硫酸ナトリウム水溶液 69g/Hr(臭素に対して1.05当量)を別々に同時に連続導入した。晶析槽内の酸化還元電位は470〜480mV(vsSCE)を示し、スラリー濃度11.7%のTBAスラリーが得られた。晶析によるTBA結晶の回収率は99.7%であり、このスラリーを抜き出し口より連続的に抜き出した。スラリーはブフナーロートにて吸引濾過、その湿結晶をメタノール水溶液により洗浄、そして乾燥してTBAを得た。TBAは白色で平均粒径100μm、その純度は99.6%、臭素は検出されず、SO4 2-は0.1ppm以下であった。又、このTBAを20%に溶解したメタノール溶液の色度はAPHA10以下であった。
【0046】
実施例2
14%亜硫酸ナトリウム水溶液の代わりに32%ヒドラジン水溶液を用いる以外、実施例1と同様の操作でTBA晶析を行った。尚、32%ヒドラジン水溶液は3.8g/Hr(臭素に対して1.05当量)で連続供給した。操作は容易で晶析時の酸化還元電位は470〜480mV(vsSCE)を示し、晶析によるTBAのスラリー濃度は12.6%、晶析によるTBA結晶の回収率は99.6%であった。乾燥して得たTBAは白色で、平均粒径100μm、その純度は99.7%と高く、臭素は検出されなかった。又、このTBAの20%メタノール溶液の色度はAPHA10以下であり、高品質であった。
【0047】
実施例3
TBAメタノール溶液を600g/Hr、水を360g/Hrを同時に連続導入し、亜硫酸ナトリウム水溶液の代わりに、ボンベより亜硫酸ガスを1.7L/Hrで導入する以外、実施例1と同様の操作で晶析を行った。亜硫酸ガス量はTBAメタノール水溶液中の臭素量に対して1.05当量倍であり、晶析スラリーの酸化還元電位は450〜500mV(vsSCE)であった。還元と晶析の操作は容易で、晶析によるTBAのスラリー濃度は12.5%、晶析によるTBA結晶の回収率は99.6%であった。TBA結晶の乾燥品は白色で、平均粒径100μm、その純度は99.6%と高く、臭素は検出されなかった。又、このTBAの20%メタノール溶液の色度はAPHA10以下で着色はなく高品質であった。
【0048】
比較例1
14%亜硫酸ナトリウム水溶液の代わりに水を用いる以外、実施例1と同様の操作でTBAの晶析を行った(還元剤を使用しない晶析)。酸化還元電位はおよそ750mV(vsSCE)、TBAのスラリー濃度は11.7%、晶析によるTBA結晶の回収率は99.7%であった。得られたTBA結晶は著しく黄色に着色しており、乾燥品の純度は99.6%、臭素含有量は高く、16ppmであった。そして、このTBAの20%メタノール溶液の色度はAPHA290で着色大であることが裏付けられた。
【0049】
比較例2
実施例1と同様の装置を用い、TBAメタノール溶液を600g/Hr、32%ヒドラジン水溶液を3.8g/Hr(臭素に対して1.05当量)で連続供給し、液温を30℃に保った。ここではTBA結晶の析出は無く、臭素化反応での過剰臭素は完全に臭化水素に還元されていた。次に実施例1と同様の装置を用い、これに臭素を還元した前記TBA溶液を603g/Hr、水を417g/Hrで晶析槽に連続挿入した。そしてこの晶析槽からスラリー濃度12.6%のTBAのスラリーを抜き出し口より連続的に抜き出した。晶析によるTBA結晶の回収率は99.6%、乾燥品は白色で純度は99.6%、臭素は検出されず、TBAの20%メタノール溶液の色度はAPHA10以下であった。しかし、還元と晶析の二工程を要し装置の数は2倍で、操作は煩雑であった。
【0050】
比較例3
実施例1と同様の装置を用い、晶析槽にTBAメタノール溶液を600g張り込み、攪拌下、30℃で水を360g/Hr、14%亜硫酸ナトリウム水溶液を69g/Hrで同時に1時間、一定流量で連続導入した。導入開始約10分後からTBA結晶の析出が始まり、1時間後にはスラリー濃度11.7%、析出率99.6%のTBAスラリーが1028g得られた。このスラリーを固液分離後、メタノール水溶液で洗浄、そして乾燥してTBAを得た。TBAは淡黄色を呈し、その純度は99.5%、臭素含有量は5ppmであった。又、このTBAの20%メタノール溶液の色度はAPHA180と高値であった。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、臭素を含んだTBAのメタノール溶液から高品質TBAを効果的、効率的に、且つ経済的に晶析させ得る。以下、その効果を列記する。
【0052】
(1)臭素の還元とTBAの晶析を同時に行い、1段操作でTBA結晶が得られる。
【0053】
(2)得られるTBA結晶は結晶成長大で、その取り扱いは容易で且つ高品質である。
【0054】
(3)汎用で安価な還元剤が使用でき、又1段操作で装置、操作がシンプルであることから経済性が高い。

Claims (4)

  1. ビスフェノールAをメタノール溶媒中で臭素を用いて臭素化して得られる、臭素を含んだテトラブロモビスフェノールAのメタノール溶液と還元剤と水を、各々別々に連続して晶析槽に供給し、臭素の還元とテトラブロモビスフェノールAの晶析を同時に行うことを特徴とするテトラブロモビスフェノールAの製造方法。
  2. 還元剤が、ヒドラジン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、及び亜硫酸ガスからなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のテトラブロモビスフェノールAの製造方法。
  3. 還元剤の添加量が、テトラブロモビスフェノールAのメタノール溶液中の臭素に対して還元当量以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテトラブロモビスフェノールAの製造方法。
  4. テトラブロモビスフェノールAの晶析を、酸化還元電位が600mV(vsSCE)以下で行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のテトラブロモビスフェノールAの製造方法。
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