JP4490581B2 - ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸およびその使用方法 - Google Patents

ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸およびその使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
(関連出願についての関連資料)
本発明は、1998年4月2日に提出された「パスツレラ・ムルトシダ(PASTEURELLAMULTOCIDA)から得られる特徴的なヒアルロナンシンターゼ」と題される、全体的にここに参照して直ちに組込まれる米国仮特許出願第60/080,414号に関連する。本発明は、1998年10月26日に提出された「ヒアルロナンシンターゼ遺伝子およびその使用」と題される、全体的にここに参照して直ちに組込まれる米国仮特許出願第09/178,851号に対する一部継続でもある。
【0002】
(発明の背景)
1.発明の分野
本発明は、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurellamultocida)から得られるヒアルロナンシンターゼをコードするDNA配列に関する。さらに詳細には、本発明は、外来宿主中でヒアルロナンシンターゼを発現することができるように、組換え構築にかける能力のあるパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurellamultocida)から得られるヒアルロナンシンターゼをコードするDNA配列に関する。本発明は、(1)変化するサイズ分布のヒアルロナンポリマーを作り、(2)置換基または付加塩基糖を組込むヒアルロナンポリマーを作り、(3)新しくそして新規な動物ワクチンを開発し、そして(4)動物の病原体の検出および同定のための新しくそして新規な診断用試験を開発するために、パスツレラ・ムルトシダから得られるヒアルロナンシンターゼをコードするDNA配列を使用する方法にも関する。
【0003】
2.背景技術の簡単な説明
多糖ヒアルロン酸(「HA」)またはヒアルロナンは、構造的そして認識の両方の役割を果たす高等動物の必須成分である。哺乳類および鳥類では、ヒアルロナンは、皮膚、関節滑膜液、および眼球の硝子体液に多量に存在する。ある種の病原性細菌、特にグラム陽性AおよびC群のストレプトコッカス(Streptococcus)およびグラム陰性のパステレラ・ムルトシダA型は、それらの脊椎動物宿主で見られるヒアルロナン分子と同じ化学構造を示すヒアルロナンを含む細胞外莢膜を生じる。この「分子擬態」は、被包多糖に対する強力な抗体応答をさせる試みを阻止する。対照的に、他の細菌によって産生される様々な構造を示す莢膜多糖は、しばしば非常に抗原性がある。ヒアルロナン莢膜も、病原体が貧食作用を含む宿主防御をかわすのを明らかに助ける。
【0004】
歴史的には、この分野の研究者らは、パスツレラ(Pasteurella)から得られるヒアルロナン・シンターゼ(「HAS」)をクローニングまたは同定するのに成功していない。AおよびC群のストレプトコッカスから得られる細菌HAS酵素は同定され、そしてクローニングされている。ストレプトコッカス・ビオゲネス(Streptococcus pyogenes)から得られるHasAは、明確に同定されるべき最初のHASであった。この内在性膜タンパク質は、基質として細胞内UDP−GlcAおよびUDP−GlcNAcを活用する。新生ヒアルロナン鎖は、膜を通して押出されて、細胞外莢膜を形成する。キセノプスタンパク質DG42も、HASと決定された。HAS1、HAS2およびHAS3と称されるDG42のいくつかのヒトおよびネズミ相同体も同定されている。アミノ酸レベルでこれらの分子でクローン化された哺乳類の酵素の中に考慮すべき類似性があるが、しかしそれらは、様々な染色体上にある。P.ムルトシダから得られる特徴的なHASは、ストレプトコッカス、PBCV−1ウイルスまたは高等動物から得られる、先にクローン化された酵素に特には似てはいない一次構造を示す。
【0005】
A98Rと呼ばれるORFを有するウイルス性HASは、ストレプトコッカスの、そして脊椎動物の酵素に28−30%同一であると同定された。PBCV−1(パラメシウム・ブルサリア(Paramecium bursaria)のクロレラウイスル)は、そのクロレラ様緑色藻類宿主の感染の直後に確かなヒアルロナン多糖を産生する。A98Rは、炭化水素ポリマーを産生すると同定された最初にウイルスでコードされる酵素である。
【0006】
家禽コレラの原因媒体であるカーターA型のP.ムルトシダは、米国の家禽産業での経済損失の大きな原因である。被包親株が素早く増え、そして1から2日以内に死をもたらす場合、P.ムルトシダの非莢膜突然変異体は、静脈注射後に、七面鳥の血流で繁殖しない。非莢膜である自然発生的突然変異株も、野生型より伝染性の強さが10倍小さかったが、しかし開示された突然変異体(以降に記述されるとおり)以前の全ての事例で遺伝的欠陥の特性は、知られていなかった。
【0007】
パスツレラの細菌性病原体は、米国農業に酷い損失を生じる。P.ムルトシダの細胞外多糖莢膜は、主要な毒性因子と提示された。A型莢膜は、宿主の体内の正常な多糖と同一であり、したがって、免疫系に見分けがつかない多糖、主にヒアルロナンから構成される。この「分子擬態」は、貧食作用および補体依存性溶解のような宿主防御を妨げる。さらに、ヒアルロナンは、そのポリマーが宿主の体の正常な成分であるので、強力には免疫原性でない。しかし、異なる多糖から構成される他の細菌の莢膜は、通常、免疫応答の主要な標的である。莢膜ポリマーに対して発生される抗体は、しばしば、微生物の排除および長期免疫性の原因である。
【0008】
病原体の毒力の原因である因子を知ることは、聡明にそして有効にその疾病に勝つ方法についての鍵を提供する。A型P.ムルトシダでは、毒力因子の内の1つは、非免疫原性ヒアルロナンの保護的シールト、つまり宿主防御のためのほとんど越えられない防御壁である。いくつかの株は、保護用のヒアルロナン莢膜に依存するように見えないが、しかし、宿主機構を保持するための他の未知の因子を活用する。選択的に、これらの株は、古典的試験によって検出されない、より小さな莢膜を保有する可能性がある。
【0009】
家禽および特に七面鳥については、家禽コレラは、破壊的でありうる。数種の被包株の内のいくつかから1,000個の細胞が、24−48時間で七面鳥を死滅させる。家禽コレラは、北米で経済的に重要な疾病である。1980年代後半に行われた研究では、七面鳥産業における家禽コレラの影響の内のいくつかが示される。すなわち、(i)家禽コレラが、全ての病気の14.7から18%を引起こすこと、(ii)1つの州だけで、年間の損失は、600,000ドルであったこと、(iii)病気の一団を抗生物質で処置するのには、0.40ドル/一羽を費やすこと、そして(iv)感染を防止するための処置には0.12ドル/一羽を費やすことである。
【0010】
A型P.ムルトシダのある種の株は、肺炎の病巣を引起こし、そしてストレスの掛かった家畜に発熱をもたらす。飼育場での体重増における継続した減少は、重大な損失を引起こす。ウシの株は、家禽コレラ株とある程度区別がつくが、しかし、宿主範囲の優位性におけるこれらの差異についての分子的根拠はまだ明らかでない。A型も、ブタでの肺炎の半分の原因となる。D型P.ムルトシダは、ブタでの非常に上位の疾病である萎縮性鼻炎でのその関わり合いについて最もよく知られている。
【0011】
D型莢膜ポリマーは、ある種の型のグルイコサミノグリカンであると思われる未知構造を有する。これは、ヒアルロナンを含むポリマーと同じファミリーである。この疾病は、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)によっても促進されるが、しかしその症状は、両方の細菌種が存在するときなおさら悪い。F型は、家禽コレラ事例の約10%を引起こすと概算される。この場合に、莢膜ポリマーは、ヒアルロナンではなくて、コンドロイチンと称される関連ポリマーである。
【0012】
最近、家禽範囲での疾病防止は、厳密な衛生と同様に、2つの要素、ワクチンおよび抗生物質によって実現される。この分野には多くの血液型があり、そしてワクチンは、全病原体種の限定された部分集合に対してただ有効であるので、最初の選択の有用性は、制限される。死滅細胞のワクチンは、困難な強制注射によって行われ、そして得られる保護は高くない。したがって、この経路は、通常、交配動物のために保留される。さらに有効な生細胞ワクチンは、水供給を介して送出させることができるが、しかし数千の集団に均等に投与するのは困難である。さらに、生の「非毒性」ワクチンは、しばしばそれ自身が疾病を引起こす可能性があるか、そうでなければ鳥は、ストレスがかかるかまたは病気である。この予測不可能の最も共通の理由は、これらの毒性のない株が、未知または特徴づけられていない遺伝子での自発的変異から生じたことである。生および死滅ワクチンへの繰返しの選択的露出を利用するプロトコールは、いくつかの血液型での課題に対してのみ鳥類を保護することができる。
【0013】
第二の疾病防止選択は、抗生物質である。これらは、感染を防止するために補助治療用量で、または感染鳥内で家禽コレラと戦うために高用量で使用される。疾病を有する鳥類の含有率は、薬剤治療で下降しうるが、しかし時期よくそして集中的な処置が必要である。抗生物質の遅れた投与または時期尚早な中止は、しばしば、慢性家禽コレラ、そして不治宣告および需要が逸するに至る膿瘍または病巣を有する病気の鳥になる。さらに、P.ムルトシダの耐性株は、継続して生じ、そして医薬品費用が高いので、この解決法は、長期傾向では魅力的でない。さらに、F型P.ムルトシダは、北米での家禽コレラの5−10%を引起こしうる。A型株に導かれるワクチンは、それが、将来、主要な病原体として現れる場合、この他の莢膜型に対して十分に保護できない。家畜およびブタ産業では、総体的に成功したワクチンはない。予防の抗生物質処置は、体重増での損失を回避するために使用されるが、しかしこの選択は、高価でありそして微生物耐性の問題を被りやすい。
【0014】
本発明では、保護的細菌性ヒアルロナン莢膜を作成するときに含まれる酵素は、遺伝子/DNAレベルで同定された。これらの酵素の同定は、宿主にヒアルロナン生合成をさせない特異的阻害剤で病原体の莢膜合成を遮断することによって疾病介入に至る。例えば、ヒアルロナンまたはP.ムルトシダヒアルロナンシンターゼの制御因子を作るのに使用される基質を擬態する薬剤は、細菌のヒアルロナン多糖の産生を止め、そしてそれにより莢膜形成を遮断する。これは、微生物および宿主系での類似しない影響を示す多くの最近の抗生物質に対する直接相似である。P.ムルトシダヒアルロナンシンターゼおよび脊椎動物ヒアルロナンシンターゼはタンパク質レベルで非常に異なるので、このアプローチ法は好ましい。したがって、その酵素も、反応機構または基質結合部位の上で異なるようである。
【0015】
その保護的莢膜のシールドをいったん奪われたP.ムルトシダは、宿主防御のための明らかにいっそう傷つきやすい標的である。貧食作用は、非莢膜微生物によって容易に巻込まれ、そして破壊される。宿主補体複合体は、細菌の感受性外側膜に到達し、そして引裂く。抗体は、P.ムルトシダ中の体細胞血液型を決定するリポ多糖および表面タンパク質のような、新たに暴露された免疫原に対してさらに容易に発生される。これらの抗体は、免疫応答の上で後に非莢膜細胞に結合することがいっそうできる。したがって、ワクチン注射からの免疫応答は、いっそう効果的であり、そしていっそう費用に効果的である。莢膜阻害薬剤は、家禽コレラの処置に対する実質的付加物である。
【0016】
本発明およびA型P.ムルトシダの莢膜生合成の使用は、他の莢膜血液型の理解の助けとなる。DNAプローブは、DおよびF型が類似の相同体を保有することを立証するためにA型莢膜遺伝子に使用された。
【0017】
高分子量のヒアルロナンも、化粧品から眼科手術までに及ぶ広範な種々の有用な使用法を示す。高粘性についてのその能力およびその高い生物適合性のため、ヒアルロナンは、硝子体液の代替として眼科手術での特定の使用法を見出す。ヒアルロナンは、ヒアルロナンの関節内注射による外傷性関節炎について競走馬を処置するのにも使用されており、髭剃りクリームでは、潤滑剤として、そして種々の化粧品では、高い粘性のその物理化学的特性および長期間湿度を保持するその能力のために使用される。実際に、1997年の8月には、米国食品医薬品局は、影響を及ぼされた関節に直接的にこのような高分子量ヒアルロナンを注射することを通して、重篤な関節炎の処置における高分子量ヒアルロナンの使用を認可した。一般に、使用されるヒアルロナンの分子量が高ければそれだけよい。これは、ヒアルロナン溶液の粘性がその溶液中の個々のヒアルロナンポリマーの分子の平均分子量とともに増加するからである。不幸にも、10までの範囲内のもののような非常に高い分子量のヒアルロナンは、最近利用できる単離手段によって得ることは困難であった。
【0018】
これらまたは他の困難に向けて、純度が高いか、または製造の容易さのような、1つまたはそれ以上の改善された特性を示すヒアルロナンを生成するために使用することができる新規方法および構築物の必要性がある。特に、最近、市販で入手可能であるものより、多量の比較的高い分子量で、比較的純粋なヒアルロナンの生成のための方法論を開発する必要がある。改変された構造を示すヒアルロナン(HAΔmod)と同様に、改変されたサイズ分布を示すヒアルロナン(HAΔサイズ)の生成についての方法論を開発することができる、さらに別の必要性がある。
【0019】
したがって、本発明は、莢膜生合成に含まれるA型P.ムルトシダ遺伝子を機能的に特徴づけ、家禽コレラでの毒力因子として莢膜の役割を評価し、そしてDおよびF型莢膜生合成に関与した相同性遺伝子を得た。この情報で、ワクチンは、HASを産生しない「ノックアウト」P.ムルトシダ遺伝子を利用しながら開発された。これらの非莢膜の非毒性株は、家禽コレラ用のワクチンとして作用するか、発熱をもたらす能力を示す。
【0020】
(発明の要旨)
本発明は、ヒアルロナンを産生する新規HASに関する。種々の分子生物学の技術を使用して、新規HASについての遺伝子は、家禽コレラ病原体A型P.ムルトシダで見出された。パスツレラ.ムルトシダから得られるこの新規HAS(「PmHAS」)を、クローン化し、そして他の種の細菌で機能性があることが示された。
【0021】
したがって、ヒアルロナンの新規源が同定された。PmHASのDNA配列は、破壊バージョンとの相同な組換えによって正常な微生物遺伝子をノックアウトさせた後に、P.ムルトシダ細菌の強力に弱毒化したワクチン株を生成するのにも使用しうる。さらに、PmHASのDNA配列は、家禽、家畜、ヒツジおよびブタの農業病原体である関連P.ムルトシダ型についての診断用細菌型プローブの製造を可能にする。
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その用途について、以下の説明で規定されるか、または図面で例示される構成要素の構築および配列の詳細に限定されないと理解されるべきである。本発明は、他の実施形態、または種々の方法で実施または行う能力がある。さらに、ここに使用される言い回しおよび用語が、説明の目的のものであって、限定として考慮されるべきでないことも理解すべきである。
【0023】
ここで使用される用語「核酸セグメント」および「DNAセグメント」は、相互交換可能に使用され、そして特定の種の総ゲノムDNAなしに単離されたDNA分子に該当する。したがって、ここに使用される場合の「精製」DNAまたは核酸セグメントは、非関連のゲノムDNA、例えば総パスツレラ・ムルトシダまたは例えば哺乳類宿主ゲノムDNAからまだ単離されていないか、またはそれなしに精製されていないヒアルロナンシンターゼ(「HAS」)コーディング領域を含むDNAセグメントに該当する。用語「DNAセグメント」に含まれるのは、DNAセグメントおよびそのようなセグメントの類似のフラグメント、さらに例えばプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスを含めた組換えベクターなどである。
【0024】
同様に、単離または精製PmHAS遺伝子を含むDNAセグメントは、他の自然発生遺伝子またはタンパク質をコードする配列から実質的に単離されたHASコーディング配列を含めたDNAセグメントに該当する。この点で、用語「遺伝子」は、機能性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする単位に該当することが簡便のために使用される。当業者に解釈されるように、この機能的用語は、ゲノム配列、cDNA配列またはその組合せを含む。「他のコーディング配列から実質的に単離された」は、目的の遺伝子、この場合PmHASが、DNAセグメントのコーディング領域の明らかな部分を形成すること、およびDNAセグメントが、大型染色体フラグメントまたは他の機能性遺伝子またはDNAコーディング領域のような自然に生じるコーディングDNAの大部分を含まないことを意味する。もちろん、これは、最初に単離されたときにDNAセグメントに該当し、そして、ヒトの手によってセグメントに後に加えられたか、または意図して残された遺伝子またはコーディング領域を排除しない。
【0025】
原核生物源の使用に関連したある種の利点のため、だれでも原核生物P.ムルトシダからのHAS遺伝子の単離での最高の利点を実感しそうである。そのような利点の1つは、一般的に、真核生物の酵素は、真核生物の宿主でのみ達成されうる明らかな後期翻訳修飾を必要としうることである。これは、得られる任意の真核生物のヒアルロナンシンターゼ遺伝子の適用性を限定する傾向にある。さらに、当業者は、原核生物の酵素遺伝子が使用されると思われる遺伝的操作の時間および容易さの点で別の利点に気づきそうである。これらの追加の利点としては、(a)ゲノムのサイズが比較的小さく、したがって、対応するゲノムライブラリーのスクリーニングの量が減少されるため、原核生物の遺伝子の単離が容易なこと、および(b)原核生物の遺伝子の全てのサイズのコーディング領域が、イントロンの不在によって明らかに小さいため、操作が容易なことが挙げられる。さらに、PmHAS遺伝子(すなわち酵素)の産物が、後期翻訳修飾を必要とする場合、これらは、その遺伝子が由来する類似の原核生物の細胞環境(宿主)で達成されるのが最良である。
【0026】
好ましくは、本発明に関するDNA配列は、さらに、選択組換え宿主中の配列の発現を可能にする遺伝子制御領域を含む。もちろん、使用される制御領域の特性は、一般に、想像される特定の使用法(例えば、宿主クローニング)によって変化する。
【0027】
特定の実施形態では、本発明は、単離DNAセグメントおよびPmHAS遺伝子をコードするDNA配列を組込む組換えベクターに関し、そしてそれは、そのアミノ酸配列内に配列番号1によるアミノ酸配列を含む。さらに、他の特定の実施形態では、本発明は、パスツレラ・ムルトシダHASに対応する、単離DNAセグメントおよびそのアミノ酸配列内にHAS遺伝子またはDNAのアミノ酸配列を含む遺伝子、そして特にHAS遺伝子またはcDNAをコードするDNA配列を組込む組換えベクターに関する。例えば、DNAセグメントまたはベクターが、全長のHASタンパク質をコードするか、またはHASタンパク質を発現するときに使用されることが意図される場合、好ましい配列は、基本的に、配列番号1で規定されるとおりのものである。
【0028】
切断PmHASも、配列番号1で規定されるとおりの好ましい配列の定義の範囲内にはいる。例えば、c末端では、およそ270−272アミノ酸は、その配列から排除される可能性があり、そしてまだ機能するHASを有する。当業者は、PmHASのいずれかの末端から簡単にアミノ酸を除去することは、達成することができる。このような切断配列がまだHASを産生する能力があるかどうかを決定するために、その配列の切断バージョンで、HAS活性について簡単に確認しなければならない。
【0029】
ヒアルロナンシンターゼ活性を示す核酸セグメントは、ここに記述される方法によって単離されうる。用語「基本的に配列番号1で規定されるとおりの配列」は、その配列が、配列番号1の一部に実質的に対応し、そして配列番号1のアミノ酸と一致しないか、またはそれと生物学的に機能性の等価な、比較的少ないアミノ酸を有することを意味する。用語「生物学的に機能性の等価な」は、当業界で十分に理解され、そしてさらにここに詳細に、基本的に配列番号1に規定されるような配列を有し、ヒアルロナンまたはヒアルロナン被覆物を産生する原核生物の能力に関連する遺伝子として定義される。
【0030】
当業界は、核酸セグメントに構造変化(すなわち、保存または半保存アミノ酸置換をコードすること)を起させ、そしてさらに、その酵素または機能性活性を保存する開業医の能力の例が充実している。例えば、(1)Rislerら、「構造的に関連性のあるタンパク質でのアミノ酸置換。パターン認識アプローチ法」、J.Mol.Biol.204巻:1019−1029頁(1988年)[「アミノ酸側鎖の観察される交換性により…、ただ4つの群が概説される;(i)IleおよびVal;(ii)LeuおよびMet、(iii)Lys、ArgおよびGln、および(iv)TyrおよびPhe」];(2)Niefindら、「タンパク質モデル化についてのアミノ酸類似性係数および主鎖折畳みアノールから由来される配列の並び」、J.Mol.Biol.219巻:481−497頁(1991年)[類似性パラメーターは、アミノ酸置換を設計させる];および(3)Overingtonら、「環境特異的アミノ酸置換表:タンパク質折畳みの第三テンプレートおよび検出」、Protein Science、1巻:216−226頁(1992年)[「地域環境の関数として観察される置換のパターンの解析では、区別できるパターンがあることが示される...」、適合性変化が起りうる。]参照。
【0031】
これらの資料および数えられないその他のものでは、当業者は、核酸配列が示されると、その機能性を変化させることなしに、核酸配列に対する置換および変化をなすことができたであろうことが示される。さらに、置換された核酸セグメントは、非常に一致し、そしてその純粋な親に関するそれの酵素的活性を保持する可能性があり、そしてさらにいっそうそこにハイブリッド形成することに失敗しうる。
【0032】
本発明には、P.ムルトシダから得られる酵素的に活性なヒアルロナンシンターゼをコードする核酸セグメントPmHASが開示される。当業者は、本発明の範囲および請求項の外に逸脱することなしに、配列番号2に列記されるPmHAS核酸セグメントに置換が行われうることを予測する。標準化されそして受諾される機能的に等価なアミノ酸置換は、表Aに表される。
【0033】
【表1】
Figure 0004490581
【0034】
本発明の別の好ましい実施形態は、配列番号1によるタンパク質をコードする精製核酸セグメントであり、そして組換えベクターとして定義される。ここで使用される用語「組換えベクター」は、HASタンパク質をコードする核酸セグメント、またはそのフラグメントを含むように改変されたベクターに該当する。組換えベクターは、さらに、上記核酸セグメントをコードするHASに操作的に結合されたプロモーターを含む発現ベクターとして定義することもできる。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態は、HAS遺伝子を含む組換えベクターで組換えられた宿主細胞である。好ましい組換え宿主細胞は、原核生物細胞でありうる。別の実施形態では、組換え宿主細胞は、真核生物の細胞である。ここで使用される用語「操作された」または「組換え」細胞は、HASをコードする遺伝子のような組換え遺伝子が導入された細胞に該当することが意図される。したがって、操作された細胞は、組換えで導入される遺伝子を含まない自然発生の細胞と区別しうる。操作された細胞は、ヒトの手を介して導入された遺伝子または遺伝子類を有するような細胞である。組換えで導入された遺伝子は、cDNA遺伝子の形態であるか、ゲノム遺伝子のコピーのいずれかであるか、または特定の導入遺伝子に自然には結合しないプロモーターに隣接して位置づけられる遺伝子を含む。
【0036】
好ましい実施形態では、ヒアルロナンシンターゼをコードするDNAセグメントは、さらに、特定の宿主によって同類の配列の複製を可能にする、複製の起点または「レプリコン」として機能的に当業界で知られるDNAセグメントを含む。このような起点は、ヒアルロナンシンターゼDNA配列がライゲートされる、染色体外に配置されそして複製するキメラセグメントまたはプラスミドの製造を可能にする。さらに好ましい例では、使用される起点は、バイオテクノロジー用途に適切な細菌宿主での複製の能力のあるものである。しかし、クローニングされたDNAセグメントのいっそうの多才さについては、その使用が達成される他の宿主系(シャトルベクターのような)によって認識される起点を選択的にまたは付加的にさえ使用することが望ましい可能性がある。
【0037】
多数の高等生物でクローニングまたは発現について使用される可能性のあるSV40、ポリオーマまたはウシ乳頭腫ウイルス起点のような他の複製起点の単離および使用は、当業者によく知られている。ある種の実施形態では、本発明は、適切な複製起点と一緒に、そして、選択制御領域の制御下でヒアルロナンシンターゼコーディング遺伝子配列を含む組換え形質転換ベクターの点で定義することができる。
【0038】
したがって、本開示の点で、他の手段が、HAS遺伝子またはcDNAを得るのに使用されうることは、当業者に予測される。例えば、パスツレラの他の株を含めた多数の源から、またはcDNAライブラリーのような真核生物の源から得られる遺伝子またはcDNAの全補体を含むポリメラーゼ連鎖反応またはRT−PCRで産生されたDNAフラグメントを得ることができる。実質的に、任意の分子クローニングアプローチ法は、本発明によるDNAフラグメントの発生のために使用することができる。したがって、一般に、DNA単離に使用される特定の方法での唯一の限定は、単離核酸が、生物学的に機能性の等価なヒアルロナンシンターゼをコードすることである。
【0039】
一旦、DNAが単離されると、それは、選択ベクターと一緒にライゲートされる。実質的に、任意のクローニングベクターを使用して、本発明による利点を認識することができる。典型的に有用なベクターとしては、原核生物に使用するためのプラスミドおよびファージ、そして真核生物に使用するためのウイルス性ベクターさえ挙げられる。例としては、pKK223−3、pSA3、組換えラムダ、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルスおよびレトロウイルスが挙げられる。しかし、特定の利点は、ラクトコッカス(Lactococcus)またはバシルス(Bacillus)株の両方およびイー・コリで複製の能力のあるベクターが使用される場合に最終的に認識されると考えられる。
【0040】
DaoおよびFerrettiのpSA3ベクターまたはTrieu−CuotらのpAT19ベクターによって例示されるもののようなベクターは、イー・コリのような簡便に操作される宿主でクローナルコロニー選択を行い、続いてヒアルロナンの産生用の食用等級のラクトコッカスまたはバシルス株に連続で差戻すことを可能にする。これらは良性で、そしてある種の食品およびバイオテクノロジー製品の生産に使用される十分に研究された生物である。これらは、ヒアルロナン前駆体の到達性を増加させるために遺伝子投与(すなわち、増幅によってヒアルロナンシンターゼ遺伝子の余剰コピーを供すること)および/または追加の遺伝子の封入を通してヒアルロナンを合成するラクトコッカスまたはバシルス株の能力を増すことができる点で有利である。ヒアルロナンを合成する細菌の固有の能力も、ヒアルロナンシンターゼ遺伝子を担持するプラスミドの余剰コピーの形成または増幅を通して増大されうる。この増幅は、プラスミドのコピー数で、したがって、ヒアルロナンシンターゼ遺伝子コピー数で10倍までの増加の要因となることができる。
【0041】
ヒアルロナンシンターゼ遺伝子コピー数を更に増す別の手段は、遺伝子の複数コピーをプラスミドへ挿入することである。別の技術は、HAS遺伝子を染色体DNAに組込ませることを含む。この余剰増幅は、細菌性ヒアルロナンシンターゼ遺伝子のサイズが小さいので、特に適している。ある種の計画では、染色体DNAをライゲートしたベクターが、選択宿主中で挿入DNAを発現する能力のあるベクターの使用を介して、イー・コリのような、クローナルスクリーニングの目的のために選択される宿主に、遺伝子導入するのに使用される。
【0042】
ある種の特定の他の実施形態では、本発明は、基本的に配列番号2に規定されるとおりの核酸配列を、それらの配列内に含む単離DNAセグメントおよび組換えベクターに関する。用語「配列番号2に基本的に規定されるとおり」は、上に記述されるものと同じ意味で使用され、そして核酸配列は、配列番号2の部分に実質的に対応し、そして配列番号2のコドンに同一でないか、または機能的に等価である比較的少数のコドンを有することを意味する。用語「機能的に等価なコドン」は、アルギニンまたはセリンについての6個のコドンのように表Aに規定されるのと同じアミノ酸をコードするコドンに該当してここに使用され、そして生物学的に等価なアミノ酸をコードするコドンにも該当する。
【0043】
アミノ酸および核酸配列は、その配列が、タンパク質発現および酵素活性が考慮される生物学上のタンパク質活性の維持を含めて、上に規定される条件に適合する限り、付加NまたはC末端アミノ酸または5’または3’核酸配列のような付加残基を含み、そしてやはりまだ、ここに開示される配列の内の1つで基本的に規定されるとおりでありうることも分かる。末端配列の付加は、特に、例えば、コーディング領域の5’または3’部分のいずれかの間に挟まる種々の非コーディング配列を含みうるか、または遺伝子内に起ることが知られる種々の内部配列を含みうる核酸配列に行う。さらに、残基は、NまたはC末端アミノ酸から除去することができ、そして、その配列が、同様に上に規定される条件に適合する限り、やはりまだここに開示される配列の内の1つに基本的に規定されるとおりである。
【0044】
保存および半保存置換と同様に遺伝子コードの縮重を可能にするので、配列番号2のヌクレオチドと一致する、約40%と約80%との間、またはより好ましくは、約80%と約90%との間、またはさらに好ましくは、約90%と約99%との間のヌクレオチドを示す配列は、「配列番号2に基本的に規定されるとおり」である配列である。配列番号2に規定されるものと基本的に同じである配列は、標準または低い緊縮ハイブリッド形成条件下で配列番号2の補体を含む核酸セグメントにハイブリッド形成する能力がある配列としても機能的に定義されうる。適切な標準ハイブリッド形成条件は、当業者によく知られており、そしてここに明確に規定される。
【0045】
ここに使用される場合、用語「標準ハイブリッド形成条件」は、実質的に相補な核酸セグメントが、標準ワトソン−クリック塩基対を形成するような条件を記述するのに使用される。pH、温度、塩濃度、ホルムアミドおよびスルホン酸ジメチルのような薬剤の存在、ハイブリッド形成しているセグメントの長さ等のような結合またはハイブリッド形成の特異的を決定する多数の因子が知られている。短い核酸セグメントが、ハイブリッド形成に使用されることが予測されるとき、例えば、ハイブリッド形成のために約14と約100ヌクレオチドとの間のフラグメント、塩および温度の好ましい条件としては、40−50℃で、1.2−1.8×HPBが挙げられる。
【0046】
当然、本発明は、配列番号2に規定される配列に相補であるか、または基本的に相補であるDNAセグメントも包含する。「相補性」がある核酸配列は、標準ワトソン−クリック相補性規則による塩基対の能力のあるものである。ここに使用される場合、用語「相補的配列」は、上に規定されるのと同じヌクレオチド比較によって評価することができるとおり、または配列番号2の核酸セグメントにハイブリッド形成する能力があると規定されるとおり、実質的に相補性がある核酸配列を意味する。
【0047】
コーディング配列それ自身の長さに関係なく、本発明の核酸セグメントは、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、付加制限酵素部位、多クローニング部位、エピトープタグ、ポリヒスチジン領域、他のコーディングセグメント等のような、それらの全長が、相当に変化しうるような他のDNA配列と組合せることができる。したがって、ほとんど任意の長さの核酸フラグメントを、製造の容易さおよび意図される組換えDNAプロトコールでの使用によって好ましく限定される総延長で使用できることが予想される。
【0048】
当然、本発明が、配列番号1および2の特定のアミノ酸および核酸配列に限定されないことも分かる。したがって、組換えベクターおよび単離DNAセグメントは、HASコーディング領域それら自身、塩基コーディング領域での選択された改変または修飾に耐えるコーディング領域を様々に含むことができるか、またはそれらは、HASコーディング領域を含むにもかかわらず、大型ポリペプチドをコードすることができるか、または様々なアミノ酸配列を示す生物学的に機能性の等価なタンパク質またはペプチドをコードしうる。
【0049】
本発明のDNAセグメントは、生物学的に機能性の等価なHASタンパク質およびペプチドを包含する。このような配列は、核酸配列およびその結果コードされるタンパク質内で自然に発生することが知られているコドン縮重および機能的等価の結果として生じうる。選択的に、機能的に等価なタンパク質またはペプチドは、交換されるべきアミノ酸の特性を考慮することに基づいて、タンパク質構造での変化を操作することができる組換えDNA技術の使用を介して作成することができる。ヒトによって設計される変化は、分子レベルでヒアルロナンシンターゼ活性を試験するために、部位依存性突然変異誘発技術の使用、例えば、酵素活性に対するか、またはHASタンパク質の抗原性に対する改善を導入すること、またはHAS突然変異体を試験することを導入することができる。
【0050】
さらに、HASコーディング配列に対する特異的変化は、改変されたサイズ分布または構造形態を示すヒアルロナンを産生するようになることができる。当業者は、HASコーディング配列が、様々なポリマーのサイズおよび/または機能的許容性を示すヒアルロナンを産生する能力が順にある改変されたヒアルロナンシンターゼを産生する方法で操作することができることを予測する。例えば、HASコーディング配列は、ヒアルロナンシンターゼが、改変糖基質特異性を示すような方法で改変されて、その結果ヒアルロナンシンターゼが、先に組込まれなかった糖または糖誘導体のような、様々な構造を組込む新たなヒアルロナン様ポリマーを作成することができる。この新たに組込まれる糖は、様々な機能特性を示す改質ヒアルロナン、小さいかまたは大きいポリマーサイズ/分子量を示すヒアルロナンまたはその両方を生じることができるであろう。そのHASコーディング配列を示された当業者によって予測されるとおり、変化および/または置換を、これらの望まれる特性および/またはサイズ修飾が達成できるようにHASコーディング配列に行うことができる。
【0051】
ここで使用される用語「修飾構造」は、糖または誘導体を含むヒアルロナンポリマーが、天然に生じるヒアルロナン多糖で正常に見られないことを示す。用語「修飾されたサイズ分布」は、生来の酵素で正常に見られないサイズ分布のヒアルロナン分子の合成に該当する。操作されたサイズは、正常なものよりはるかに小さいか、または大きい可能性がある。
【0052】
異なるサイズの様々のヒアルロナン産物は、医薬品送出の領域での使用を示し、そして改変された構造を示す酵素の発生は、異なるサイズのヒアルロナンと混合することができる。新脈管形成および損傷治癒での使用は、約20の単糖のヒアルロナンポリマーが、良好な量で製造することができる場合に潜在的に大きい。小型のヒアルロナンオリゴ糖についての別の特定の使用法は、医療目的で使用される組換え・ヒトタンパク質の安定化にある。このようなタンパク質での主要な問題は、血液からのそれらのクリアランスおよび生物学上の半減期が短いことである。この問題に対する1つの解決策は、タンパク質が循環からあまり早く排除されることを避ける小型分子シールドを結合することである。非常に小さな分子量のヒアルロナンは、この役割に十分に適応し、そして非免疫原性および生物適合性である。医薬品またはタンパク質に付着される大きな分子量のヒアルロナンは、ヒアルロナンの細胞内取り込レセプターを有する細網内皮細胞系を標的にするのに使用できる。
【0053】
この開示を示された当業者は、ヒアルロナンシンターゼによって作られるヒアルロナンポリマーのサイズ分布が、様々のサイズを供するように制御できる数種の方法があることを予測する。第一に、製品サイズの速度論的制御は、温度を減少させ、酵素反応の時間を減少させることによって、そして1種または両方の糖ヌクレオチド基質の濃度を減少させることによって変えることができる。これらの変数のいくらかまたは全てを減らすと、量の少なくそしてサイズの小さなヒアルロナン産物を供与する。これらのアプローチ法の欠点は、生成物の収量も減少され、そして日々またはバッチからバッチ毎の再現性を達成するのが困難である可能性がある。
【0054】
第二は、大型のヒアルロナン産物を合成する酵素の固有の能力の改変である。タンパク質に対する変化は、特異的アミノ酸の置換、欠失および付加(または代謝工程を介しての補欠分子族の導入さえ)を含めた組換えDNA技術によって操作できる。本質的に遅い酵素を生じるこのような変化は、その後、速度論的手段によってヒアルロナンサイズの再現性制御をいっそう可能にできる。最終のヒアルロナンのサイズ分布は、酵素の特定の特徴によって決定され、そしてそれは、配列中の特定のアミノ酸に依存する。ストレプトコッカスの酵素と真核生物のヒアルロナンシンターゼとの間で厳密に保存される20%の残基の内でも、その酵素を作ることができるヒアルロナンポリマーのサイズを制御するか、またはそれに大いに影響を及ぼす特徴的な位置に一組のアミノ酸がある。これらの残基の内のいずれかでの特異的変化は、修飾されたサイズ分布を示すヒアルロナン産物を産生する改質HASを産生できる。ヒアルロナンが放出される前に酵素を作ることができるヒアルロナンの固有のサイズを減らすseHAS、spHAS、pmHASまたはcvHASに対する操作変化は、生来の酵素より小さいかまたは潜在的に大きいサイズのヒアルロナン産物を産生する強力な手段を提供する。
【0055】
最後は、低分子量ヒアルロナンを作成する特異的ヒアルロニダーゼで分解させて作成される大きな分子量のヒアルロナンである。しかし、この実施は、再現性を達成するのが非常に困難であり、そしてだれもが、ヒアルロニダーゼおよび歓迎されない消化産物を除去するためにヒアルロナンを注意深く再度精製しなければならない。
【0056】
構造的に改質されたヒアルロナンは、所望のHASまたはspHAS中の特定のアミノ酸を変化させることによって、ヒアルロナン産物のサイズ分布を変えるより概念的には差異がない。Nアセチル基が失われている(UDP−GlcN)か、または別の化学的に有用な基に置換されているUDP−GlcNAcの誘導体は、特に有用であると予測される。強力な基質特異性は、保存される20%のものの中でアミノ酸の特定の部分集合に依るに違いない。これらの残基の1つまたはそれ以上に対する特異的変化は、生来の酵素より、1つまたはそれ以上の基質と特異性が低く相互作用する機能性シンターゼを作り出す。この改変酵素は、その後、選択的に天然または特定の糖ヌクレオチドを利用して、以下の目的のために様々な化学が使用されることを可能にするように設計された糖誘導体を組込むことができる。すなわち、(i)共有結合する特異的医薬品、タンパク質、または一般のまたは標的にされる医薬品送出、放射性手段のための構造的に改質されたヒアルロナンに対する毒素など、(ii)それ自身、またはゲル、または強力な物理特性を示す他の三次元生物材料を達成するための他の支持体と共有架橋結合するヒアルロナン、および(iii)生物適合性フィルムまたは単層を作る表面と共有結合するヒアルロナンである。
【0057】
本発明は、ヒアルロナンを産生する新規HASに関する。種々の分子生物学技術を使用して、新規HAS用の遺伝子は、家禽コレラ病原体A型のパスツレラ・ムルトシダに見られる。パスツレラ・ムルトシダから得られるこの新たなHASすなわちPmHASは、クローン化され、そして他の種の細菌で機能性があることが示された。PmHASタンパク質は、真正のヒアルロナン多糖を重合する。
【0058】
PmHASで形質転換された組換えイー・コリによって産生される炭化水素は、カートリッジヒアルロナン結合タンパク質によって認識され、そしてヒアルロナンリアーゼ消化に感受性がある。これらの薬剤の両方は、当業者によって、ヒアルロナン多糖に特異的であると考えられる。さらに、UDP−GlcAおよびUDP−GlcNAcの両方は、生体外でのヒアルロナン合成のために必要とされる。アジド−UDP−Glcでなくて、アジド−UDP−GlcAおよびアジド−UDP−GlcNAcは、PmHASに特異的に光組込みされる。ストレプトコッカスのHasAおよびキセノプス(Xenopus)のDG42の場合のように、1つのポリペプチド種PmHASは、2つの区別できる糖基を新生ヒアルロナン鎖に移行することは明らかである。
【0059】
イー・コリ、ネイセリア・メヒンギチジス(Neisseria meningitidis)、およびヘモフィルス・インフルエンザエ(Hemophilus influenzae)を含めた多くの被包グラム陰性細菌は、オペロンで組織化される莢膜生合成の原因である遺伝子のクラスターを保有する。これらのオペロンは、しばしば、(i)糖ヌクレオチド前駆体合成のために必要とされる酵素、(ii)エキソ多糖を重合するグリコシルトランスフェラーゼ、および(iii)多糖輸出に関連したタンパク質をコードする遺伝子を含有する。A型P.ムルトシダヒアルロナン莢膜オペロンは、(i)KfaA類縁体、(ii)ヒアルロナンシンターゼ、および(iii)推定UDP−Glcデヒドロゲナーゼを含む。P.ムルトシダ非莢膜突然変異体HおよびL中のTn916構成要素は、HAS遺伝子に直接介入されないが、しかしむしろKfaA相同遺伝子に配置された。
【0060】
PmHASが、多糖を作るのに必須である少なくとも数種の遺伝子の遺伝子座に存在するので、莢膜遺伝子の内のいずれか1つでの病巣または損傷は、パスツレラのヒアルロナン産生および莢膜形成に影響を及ぼし得る。したがって、隣接遺伝子を破壊することによって、ワクチンを作ることもできる。例えば、UDP−Glcデヒドロゲナーゼを除去または破壊する場合、入手可能なヒアルロナンシンターゼのための前駆体糖はなく、そしてヒアルロナンは作ることができない。さらに、Kfaまたは他の輸送関連の遺伝子を死滅させる場合、それにより微生物によって表面ヒアルロナンを作らない。したがって、天然のパスツレラ微生物中でのヒアルロナンシンターゼの産物、すなわち、ヒアルロナン莢膜は、(a)前駆体形成を破壊するか、または(b)重合機構を破壊するか、または(c)輸送機構を破壊することによって停止させることができる。
【0061】
アミノ酸レベルで、PmHASは、当業者が予測するのと同じくらい他のクローン化HASに類似ではない。2つの強力な短いモチーフ、PmHASの残基477−480でのDGS(S/T)(配列番号19)および残基527−529でのDSDは、HasAに存在する。別の類似のDGS含有モチーフは、PmHASの残基196−198で繰返し見られる。第一のモチーフのDGおよびDSDは、全HASで保存される。しかし、全ての先にクローン化されたHASに見られる数種の完全に保存されたモチーフ((S/G)GPLXXY(配列番号20)、GDDRXLTN(配列番号21)、およびLXQQXRWXKS(Y/F/W)(F/C)RE(配列番号22))は、PmHASには不在である。その代わりに、様々な細菌グリコシルトランスフェラーゼは、P.ムルトシダHASタンパク質の中心部分にある配列といっそう密接に整列する。GlcNAc、ガラクトース、またはGalNAc基を移すことが示されたか、または検出されたこれらの酵素は、PmHASの大まかに3分の1の大きさであり、そしてそれらのアミノ酸末端配列は、PmHASポリペプチドの中央、すなわち残基430−540と一緒に並ぶ。
【0062】
PmHASの第一の420個の残基の区分は、哺乳類のUDP−GalNAc:ポリペプチドGalNAc−トランスフェラーゼの部分とある種の類似性を示す。これらの観察は、PmHAS内の可能なドメイン構造の反映でありうる。PmHASの最後のおよそ340個の残基は、配列データベース中の他の全てと明らかに類似でない。したがって、P.ムルトシダHASは、特徴的であり、そして最も、全ての新たなクラスのHASのプロトタイプのようである。
【0063】
PmHASは、それぞれ、ストレプトコッカスのウイルス、または脊椎動物のHASすなわち、972対417−588残基の大まかに二倍の大きさである。さらに、PmHASおよび他の既知HASの水治療法プロットは類似でない。ワールドワイドウェブ上で当業者に十分に知られそして入手可能なTMPREDプログラムを利用して、PmHASが、ただ2つの候補膜間螺旋状物(残基170と510に中心が置かれる)を有することが推定され、そしてそのタンパク質の両方の末端は、細胞質に配置される。幾何学的に、これらの推定は、P.ムルトシダのポリペプチド(約340残基)の三分の一が細胞質の外側に位置することを暗示する。他方、HASの他のクラスについての様々な位相が、推定される。
【0064】
ストレプトコッカスのHASのレポーター酵素融合解析では、様々の位相配列が、タンパク質のカルボキシルの半分で(i)アミノ酸末端に近い2つの膜間螺旋状物、(ii)推定細胞質ドメイン、続いて(iii)3つの膜結合領域から構成されるこの酵素に存在することが確認される。膜結合領域の間の連結ループは、むしろ短く(4−10残基)、したがって、そのポリペプチド鎖の大半部分は、おそらく、細胞外に露出しない。
【0065】
以下の詳細な実験ステップおよび結果の検討では、本発明が新規で特徴的なPmHASに関することが確認される。
【0066】
1.PmHASの分子クローニング
Tn916挿入突然変異誘発およびプローブ発生を最初に完了した。Tn916を使用して、破壊し、そしてP.ムルトシダのヒアルロナン生合成遺伝子座をタグ付けした。非複製プラスミドpAM150上のTn構成要素を、電気穿孔法によって野生型被包P.ムルトシダ株(ATCC番号15742号)に導入した。改変コロニー形態を、斜め照射での黙視試験によって最初にスクリーニングした。野生型株は、虹色(赤色と緑色の色合い)を表す大型ムコイド(「湿潤」外観)コロニーを形成する。同様に、虹色を欠く「乾燥剤」コロニーを選択し、そして画線接種した。墨汁染色および光顕微鏡を第二のスクリーンとして使用して、被包の状態を評価した。突然変異染色体中のTn構成要素の位置を、サザン分析によってマッピングした。
【0067】
数種の独立に選択した突然変異体から得られるTnを破壊した部位でのDNA配列を、タグ付け染色体DNAの直接ジデオキシ配列分析によって得た。簡便には、Tn916構成要素の12kd部分および突然変異染色体DNAのHhaI消化によって発生されるP.ムルトシダDNAの短い領域から構成されるキメラDNAフラグメントは、アガロースゲル電気泳動によって精製された(野生型HhaIゲノムフラグメントの全ては、7kbより少ないか、または等しい)。キメラ・フラグメントは、33PターミネーターおよびTn916右腕末端プライマー(5’−GACCTTGATAAAGTGTGATAAGTCC−3’(配列番号23))を用いたサイクルシーケンシング反応でテンプレートとしての役割を果たす。配列データを、PCRプライマーを設計するのに使用した。ゲル精製PCR産物を、ベーリング・マンハイム社(Boehringer Mannheim)によって製造され、そして当業者によく知られたハイプライムシステムを活用するジゴキシゲニンで標識した。
【0068】
次のステップは、機能性HAS遺伝子座の単離であった。Sau3Aで部分的に消化した野生型DNAのλライブラリーを、ストラタジーン社(Stratagene)によって製造されるBamHI切断λZap発現ベクターシステムを用いて作成した。プラーク釣り上げ物をジゴキシゲニン標識PCR産物とのハイブリッド形成によってスクリーニングした。エッシェリキア・コリXLI−BlueMRF’を、個々の精製した陽性λクローンおよびExAssistヘルパーファージで同時感染させて、ファージミドを得た。生じたファージミドを、イー・コリXLOLR細胞に遺伝子導入させて、プラスミドを回収した。
【0069】
プラスミドを、ヒアルロナン多糖産生により適切な宿主、すなわちイー・コリK5(株Bi8337−41)に形質転換させた。この株は、ほとんどの実験室株では明らかなレベルで見ることができないヒアルロナン生合成のために必要とされる基質であるUDP−GlcAを産生する。さらに、K5は、イー・コリでの莢膜多糖輸送に不可欠である多くの他の遺伝子を保有する。発現研究に使用される別の宿主は、ポリシアル酸莢膜を産生し、そして全ての同じ一般的莢膜多糖輸送機構をK5として保有するが、高レベルのUDP−Glcデヒドロゲナーゼを有しないK1株の非莢膜誘導体であるイー・コリEV5であった。
【0070】
完全に定義された培地中で育成される候補プラスミドとしたイー・コリ形質転換体の培養物を、細胞ペレットを、摂氏95度で、2分間、8M尿酸、0.01%SDSで抽出したこと以外は先に記述したとおりヒアルロナン多糖産生について試験した。当業者によく知られているファルマシア・バイオテック社(Pharmacia Biotech Inc.)によって製造されるヒアルロナン試験アッセイでは、0.1μg/mlより大きいか、または等しい濃度で、ヒアルロナンを検出するために特異的ヒアルロナン結合タンパク質が使用される。ヒアルロナン濃度の複数測定を平均化した。細菌培養物中のヒアルロナン濃度を、A600値を測定し、そして細菌のμgHA/ml/A600としてデータを表すことによって、細胞数での差異を正常化させた。5.8kb挿入物を有する1つのプラスミドpPm7Aは、ヒアルロナンを産生する能力を有するイー・コリK5を与えた。ベクタープラスミドだけを有する細胞によって産生されるヒアルロナンはなかった。pPmΔ6eと呼ばれるおよそ3.3kb挿入物を含むpPm7Aの切断誘導体は、イー・コリK5に形質転換させるときにヒアルロナンの生合成を指示することができる。したがって、pPmΔ6eDNAに対応するpPm7Aプラスミドの両方の鎖の配列を決定した。我々がPmHASと称する単独の完全な972残基のORFが見出されたが、それは配列番号1で示される。対応のヌクレオチド配列は、配列番号2に示される。
【0071】
その後、組換えP.ムルトシダHASの発現が始められる。pPm7A挿入物中のPmHAS ORFは、推定アミノ末端およびカルボキシル末端の近くの配列(大文字表記のコドン:センス、5’−gcgaattcaaaggacagaaaATGAAcACATTATCACAAG−3’(配列番号24)、およびアンチセンス、5’−gggaattctgcagttaTAGAGTTATACTATTAATAATGAAC−3’(配列番号25);開始および終止コドンはそれぞれ太文字で)に対応するTaqポリメラーゼおよびプライマーを用いて、13サイクルのPCRによって増幅された。コドン2(T→C)を、イー・コリ中のタンパク質産生を増加させるように改変(イタリック小文字)した。プライマーは、発現プラスミドpKK223−3(tacプライマー、ファルマシア社)へのクローニングを促進するEcoRIおよびPstI制限部位(下線付き文字)も含む。生じた組換え構築物pPmHASを、イー・コリSURE細胞(ストラタジーン)に形質転換させ、そしてこの株を、生体外HASアッセイのための膜製造の源として使用した。Log層培養物(LBブロス、摂氏30度)を、収穫前の3時間、0.5mMイソプロピルチオガラクトシドで誘導した。プラスミドを、イー・コリK5にも形質転換させた。生じた株を、光顕微鏡および浮遊密度遠心によって莢膜の存在について試験した。K5細菌培養物は、イソプロピルチオガラクトピラノシド付加が、LBまたは明らかに定義された培地中のヒアルロナン濃度を増加させないので、日常的に誘導されなかった。
【0072】
その後、生来のP.ムルトシダHASの光アフィニティー標識を行った。放射性標識UDP糖類縁体[32P]アジド−UDP−GlcA(3mCi/μMol)および[32P]アジド−UDP−GlcNAc(2.5mCi/μMol)を製造し、そして文献に記述され、そして当業者に知られるとおり精製した。紫外線で照射する(254nm、90秒)前に、氷上で30秒間、50mMトリス、20mMのMgCl、pH7(最終濃度、20μM)中のP.ムルトシダ野生型から得られる膜製品を、いずれかのプローブでインキュベートした。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析の前にそのタンパク質を、5%トリクロロ酢酸で沈殿させた。照射ステップが省かれた場合、組込まれる放射性標識はなかった。特異性対照として、10倍モル過剰の正常なUDP糖を、プローブおよび膜と同時にインキュベートした。[32P]アジド−UDP−Glc(3mCi/μMol)も、別の対照として使用した。
【0073】
数回の巡回の突然変異誘発によって製造されるおよそ8×10Tn含有形質転換体を、コロニー形態での差異についてスクリーニングした。墨汁を用い光顕微鏡によって、小さな虹色でないコロニー(n=4)から得た細胞は、検出可能な莢膜を保有しなかった(非莢膜)のに対して、培地等級分け虹色コロニー(n=8)から得られる細胞は、野性型の約10−25%の直径の莢膜(微細莢膜)を有するようである。同じHindIIIまたはBstXIゲノムフラグメントにマッピングされるTn構成要素を有するHおよびLと称される非莢膜突然変異体の内の2つは、およそ10−3の速度で、野生型コロニー形態に復帰した。各復帰突然変異体中のTn構成要素は、サザン分析によって判断されるとおり、元の位置から削られ、そして異なる新たな位置に再挿入した。他方、全ての非莢膜サブクローンは、元の位置にTn構成要素を保持した。明らかなHAS活性が、突然変異体H細胞から膜製品に検出されるものはなかったのに対して、実質的なHAS活性は、野生型細胞から得られた(それぞれ、0.7対120ピコモルの移入GlcA/mgタンパク質/hより少ないか、または等しい)。これらの知見では、突然変異体HおよびL中のTn構成要素が、実際に、ヒアルロナン生合成遺伝子座を破壊する原因であることが示唆される。
【0074】
2つの非莢膜突然変異体のTn挿入部位の間のギャップに橋渡しするために、突然変異体L染色体DNAテンプレートを用いたPCRは、突然変異体H破壊部位PmHFにある配列に由来するプライマー(5’−CTCCAGCTGTAAATTAGAGATAAAG−3’(配列番号26))、およびTn916の左末端に対応するプライマーであるTnL2(5’−GCACATAGAATAAGGCTTTACGAGC−3’(配列番号27))で行われた。特異的なおよそ1kbのPCR産物を得た。代替的に、PmHR(PmHFの逆補体)またはTn916右腕プライマーが置換される場合、形成される産物はなかった。PCR産物を、ハイブリッド形成プローブとして使用して、P.ムルトシダHASの機能性コピーを得た。
【0075】
およそ10個のプラークをスクリーニングした後、6つの陽性ハイブリッド形成プラークが見られ、そしてこれらのプラークは、プラスミドに変換された。1つのプラスミドpPm7Aは、イー・コリK5が、生体内でヒアルロナンを生成させる(20μgHA/ml/細菌のA600)ことが分かった。対照プラスミドを有するイー・コリK5は、ヒアルロナンを産生しなかった(0.05μgHA/ml/細菌のA600より少ないか、または等しい)。イー・コリXLORまたはイー・コリEV5細胞(UDP−Glcデヒドロゲナーゼ活性を欠く)は、それらがpPm7Aプラスミドを含む場合でさえヒアルロナンを産生しない(0.05μgHA/ml/細菌のA600より少ないか、または等しい)。この遺伝上の証拠は、pPm7Aの挿入物が、機能性UDP−Glcデヒドロゲナーゼ酵素をコードしないことを暗示する。
【0076】
ヒアルロナン生合成(85μgHA/ml/K5細菌のA600)を指示する能力がある最小の挿入物pPmΔ6eを有するpPm7Aプラスミドの切断誘導体は、配列番号1に示されるとおり972残基のタンパク質をコードする単独の完全なORFを含んだ。配列番号1中の明らかなプロモーターは存在しなかったが、太字のヌクレオチド−10から−7に中心をとって標識された推定リボソーム結合部位があり、そしてTMPREDによって推定される2つの推定膜間領域に下線を付けた(残基162−182、および503−522)。配列番号1のPmHASは、ストレプトコッカスHasAの大きさの2倍大きい。このタンパク質は、P.ムルトシダから得られるヒアルロナンシンターゼPmHASである。推定Mは、111,923であり、そして算定等電点は、6.84である。配列番号2は、PmHASについてのヌクレオチド配列である。
【0077】
このPmHASは、タンパク質配列データベースのBLASTP調査での照会として使用された。PmHASの中心の位置(残基436−536)は、ストレプトコッカス、ビブリオ(Vibrio)、ネイセリア(Neisseria)およびスタフィロコッカスを含めた、リポ多糖のエキソ多糖または炭化水素部分を形成する広範な属から得られる細菌のグリコシルトランスフェラーゼに最も相同性がある(最小合計可能性、図1に示されるとおり10−22−10−10)。図1では、P.ムルトシダHASおよび他のグリコシルトランスフェラーゼの配列の列が図面で描かれる。MULTALIN列は、PmHASの中心領域(残基436−536)は、他のエキソ多糖(ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)EpsI、14型エス.ニューモニアエ(S.pneumoniae)Cps14J)、またはリポ多糖の炭化水素部分(エイチ.インフルエンザエLgtD相同)を産生する種々の酵素のアミノ酸末端部分に最も類似する。ほんのわずかの可能性のある実施例が、図1に示される。エス.ピオゲネス(S.pyogenes)HasA(残基61−168)は、PmHASのこの表示領域に対する類似性を限定した。
【0078】
最も注目すべき配列類似性は、DGSTD(配列番号28)およびDXDD(配列番号29)モチーフである。予想外に、0.33の最小の合計可能性を示すHASAを有するストレプトコッカス、ウイルスまたは脊椎動物のHASに対するPmHASの明らかな全体的類似性はなかった。ストレプトコッカスのHasAの唯一の短い領域が、PmHASと共に納得する手段で並び、そして図1に示される。
【0079】
PmHASの最初の半分の少数のセグメントは、哺乳類のUDP−GalNAc:ポリペプチドGalNAc−トランスフェラーゼの部分とも類似である。そのトランスフェラーゼは、およそ10−3の最小の合計可能性を示すムチン型タンパク質のo−グリコシル化を開始させる酵素である(図2)。図2に示されるとおり、PmHASの残基342−383の配列の列は、哺乳類のUDP−GalNAc:ポリペプチドGalNAc−トランスフェラーゼの残基362−404に最も類似である。図1および2の両方で、同一の残基は、太字でそして下線が付されており、そして共通シンボルは、IまたはVで!、N、D、EまたはQのいずれでも#、FまたはYで%である。酸性残基のクラスターは、配列を通してよく保存されている。
【0080】
PmHASの下流の部分的ORF(27残基)は、イー・コリ、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)およびストレプトコッカス・ニューモニアエを含めた細菌から得られる数種のUDP−Glcデヒドロゲナーゼのアミノ末端に非常に類似性がある(67−74%一致)。元来のpPm7Aクローンでの重度の切断は、デヒドロゲナーゼ活性を完全に失う結果になることが予測される。PmHASの上流の他のORF(623残基)は、10−52の最小の総可能性を示す、細胞の外に莢膜多糖を輸送するのに推定的に関与するタンパク質であるイー・コリK5 KfaAタンパク質に非常に相同性がある。
【0081】
PmHASについて推定サイズ972残基(112kDa)は、P.ムルトシダ野生型から得られる膜標品の光アフィニティー標識によって確認された。[32P]アジド−UDP−GlcAおよび[32P]アジド−UDP−GlcNAcプローブの両方が、UV依存性手段でおよそ110kDaのタンパク質に光組込みを行った。図3は、UDP−糖類縁体を有するPmHASの光アフィニティー標識である。[32P]アジド−UDP−GlcAおよび[32P]アジド−UDP−GlcNAcを、野生型P.ムルトシダから単離される膜標品(45μgのタンパク質)とインキュベートさせ、そしてUV光で照射した。10%SDS−PAGEゲルのオートラジオグラム(5日露出)は、図3に示される。両方のプローブは、UV依存性手段でおよそ110kDaのタンパク質を光標識する(「−」レーン)。光組込みの特異性を評価するために、平行のサンプルは、反応混合液が10倍過剰の非標識競合物(それぞれUDP−GlcNAcまたはUDP−GlcA、「+」レーンと記した)を含むこと以外は、同一に処理した。バンドの強さは、「−」レーンに比較して減っている。標準は、kDaで記される。
【0082】
対応の未標識の天然のUDP−糖前駆体との競合は、プローブ光組込みの範囲を下げた。平行する実験で、正常なヒアルロナン前駆体の類縁体である[32P]アジド−UDP−Glcは、この110kDaのタンパク質を標識しなかった。さらに、Tn突然変異体に由来する膜は、このタンパク質へのアジド−UDP−GlcA光取込みの量がないか、または非常に低いかのいずれかを示した。図4に示されるおとり、野生型(W)または種々の非莢膜Tn突然変異体(A、GまたはH)から得られる膜標品(60μgのタンパク質)を、[32P]アジド−UDP−GlcAで光標識にかけた。およそ110kDaのタンパク質の付近にあるオートラジオグラムの領域は、図4に示される。AおよびGサンプル中に光取込みは見られなかった。Hサンプル中の光標識の範囲が小さいのは、この特定の突然変異体で観察される逆行の速度が遅いためである。Wサンプル中の光アフィニティー標識タンパク質のサイズは、クローン化PmHASのORFの推定Mによく対応する。
【0083】
ベクターpKK223−3のみを有する細胞から得られるサンプルでなく、PmHASプラスミドを含むイー・コリSURE細胞に由来する膜は、UDP−GlcAおよびUDP−GlcNAcの両方で供給されるときにヒアルロナンを生体外で合成した(それぞれ、25に対して1.5ピコモルGlcAトランスファー/mgタンパク質/時間より少ないか、または等しい)。UDP−GlcNAcが排除される場合、または二価の金属イオンがEDTAとキレート化される場合、[14C]GlcAの取込みは観察されなかった。組換えHASに由来するHAS活性は、Mn2+がMg2+より少なくとも10倍大きな活性を刺激するので、野生型P.ムルトシダの膜から得られる酵素に類似した。
【0084】
組換えイー・コリの培養物は、標識ヒアルロナン結合タンパク質を利用する放射分析でヒアルロナン多糖の存在についても試験した。PmHASを有するイー・コリK5は、460μgHA/ml/A600を産生した。pKK223−3ベクターのみを有するK5細胞は、ヒアルロナンを産生しなかった(0.05μgHA/ml/A600より少ないかまたは等しい)。比較すると、同じ培地で育成される野生型P.ムルトシダ野生型は、1100μgHA/ml/A600を産生した。PmHASを有するイー・コリK5は、細胞が被包されるこのような高いレベルのヒアルロナンを生じた。図5、パネルAに示されるとおり、墨汁染色を用いた組換えイー・コリの光マイクログラフ(1,000×倍率)は、PmHASを有するイー・コリK5細胞が、細胞の周囲を白色ハロとして表す実質的な莢膜を作ることを示す。
【0085】
組換え株の莢膜の半径は、およそ0.2−0.5μm(0.5μmの細菌細胞幅を呈する)であった。この莢膜は、ヒツジの精巣ヒアルニダーゼまたはストレプトマイセスHAリアーゼのいずれかで処理することによって取除くことができる。図5パネルBで示されるとおり、莢膜材料は、ストレプトマイセスHAリアーゼで簡便に処理することによってイー・コリK5(pPmHAS)細胞から取除かれる。したがって、PmHASは、ヒアルロナン多糖の重合を指示する。
【0086】
生来のK5宿主株も、pKK223−3ベクターを含む形質転換体のいずれも、光学顕微鏡によって測定されるときに、十分に観察しうる莢膜を保有しない。pPmHASを有するK5細胞は、浮遊密度遠心によって被包されるとも思われる。組換え細胞が、58%mパコール(Percoll)クッションの頂上に浮いていたのに対して、ベクター対照細胞またはヒアルロニダーゼ処理組換え細胞は、パコールクッションを通してペレット化した。
【0087】
イー・コリK5中のp/PmHASプラスミドは、組換えヒアルロナンをPmHASで作成するための第一世代系である。他の最適化ベクターおよび/または宿主は、より多くの収量を示し、そしてこれらの多くの最適化ベクターおよび/または宿主は、本発明に使用されることがここに予測される。この開示を与えられると、当業者は、このようなベクターおよび/または宿主を最大限に利用する能力がある。
【0088】
2.PmHASの酵素学的特徴づけ
タンパク質は、ウシの血清アルブミン鎖を利用するクマシン染料結合アッセイによって測定した。多くのムコシドコロニーを形成する非常に毒性のある七面鳥株である、P.ムルトシダ野生型(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション15742)を、摂氏37度で、好気性条件下で、脳/心臓融合培養基で維持した。TnAと称される、小さな「乾燥剤」コロニーを形成したその株の非莢膜突然変異体は、ここに記述される新たに記述されたTn916挿入物の突然変異誘発法によって生成される。
【0089】
HasAを含む組換えプラスミドを用いて、イー・コリからヒアルロナンシンターゼを生成する方法の改善によって、P.ムルトシダから得られる総量の膜を製造した。細胞を、激しく振盪させながら、中間対数期(0.4−0.8A600)まで育成し、そしてその後ヒツジ精巣ヒアルロニダーゼ(シグマV型、20単位/最終mL)を、加えて莢膜を除去した。40分後、細胞を氷上で冷却し、そして遠心によって収穫した(15分間、2000×g)。細胞を、懸濁および遠心の繰返しによって二回洗浄し、そして細胞ペレットを、摂氏−80度で保存できた。特に示されないかぎり、氷上で以下のステップの全てを行った。
【0090】
プロテアーゼ阻害剤ペプスタチンおよびロイペプチンを含有する、20%しょ糖および30mMトリス(pH8.0)の最初の培養量を1/400で、ピペット採取することによって、細胞を再懸濁させた。リソザイム消化(0.1MのEDTA中に4mg/mL酵素の懸濁量の1/10を添加、40分インキュベーション)を使用し、続いて超音波破砕(電力設定3、30秒のオン/オフの3回サイクル、小探針を有するヒートシステムW−380)することによって、細胞溶解を行った。超音波処理ステップの前に、チオグリコール酸ナトリウムをその混合液に添加し(最終濃度0.1mM)、続いてフッ化フェニルメタンスルホニルを添加した。残りの操作全てで、PBSも、新たに加えたチオグリコレートを同じ濃度で含有した。
【0091】
溶解産物を、DnエースおよびRnエース(各々1μg/mL、摂氏4度で10分)で処理し、そして低速遠心分離(1時間、10000×g)によって、細胞破砕物を除去した。上清画分を、PBSで6倍に希釈し、そして膜画分を、超遠心分離(1時間、100000×g)によって回収した。10mMのMgClを含むPBS中での懸濁を繰返し、続いて超遠心分離することによって、ペレットを二回洗浄した。金属特異性研究で使用される膜標品を生成するために、MgClを除外し、そして洗浄ステップの間、0.2mMのEDTAAに交換した。膜標品を50mMトリス(pH7)および0.1mMチオグリコレート中で、1−3mg/mLタンパク質の濃度で懸濁させ、そして摂氏−80度で保存した。
【0092】
糖ヌクレオチド前駆体UDP−[14C]GlcA(0.27Ci/ミリモル、ICN)から由来する放射性標識を、高い分子量の産物に組込むことによって、ヒアルロナンシンターゼ活性を、定常的に検出させた。図面の凡例に記述される種々のアッセイ緩衝液は、0.3mMのDTTも含有した。反応混合液に膜を添加し、摂氏37度でインキュベートすることによって、アッセイ(最終量100μL)を開始させた。1時間後、SDS(最終2%)を添加し、そして混合することによって、反応を終結させた。速度論的研究のために、ペーパークロマトグラフィー(65:35エタノール/1M酢酸アンモニウム(pH5.5)を用い、ワットマン3M)で降下させることによって、産物および前駆体を分離した。ペーパークロマトグラムの起点にあるヒアルロナン多糖を、液体シンチレーション計測の前に水で溶出させた。酵素の量を限定することによって、5%未満の前駆体が消費される条件下で、アッセイを典型的に行った。
【0093】
真正のヒアルロナンへの組込みを実証するための対照は、必要とされる第二の糖ヌクレオチド前駆体を除外すること、またはストレプトマイセス・ヒアルロリチカス(Streptomyces hyalurolyticus)から得られる特異的ヒアルロニダーゼを使用して消化させることを含む。PBS中のセファクリルS−200(ファルマシア社)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーを、最適化アッセイ条件下で、生体外で形成される放射性標識ポリマーの分子量を評価するのに使用した。終結後、カラムにかける前に、それらを、2分間、摂氏95度に加熱し、そして遠心分離(7分間、15000×g)によって等級分けすることを除いて、ペーパークロマトグラフィーに関して、これらのサンプルを処理した。
【0094】
EDTA(0.2mM)を使用して、アッセイ混合液中に存在する任意の金属イオンをキレート化させて、HAS活性の金属依存性を実証した。Mg、Mn、Cu、CoおよびNiを含めた種々の二価金属を、それらの塩化塩として試験した。他の放射性標識前駆体を、一定に、そして飽和濃度で保持しながら、糖ヌクレオチド濃度を滴定することによって、基質のK値を概算した。これらの研究については、UDP−[14C]GlcA前駆体と同様に、UDP−[H]GlcNAc(30Ci/ミリモル、NEN)を使用した。
【0095】
P.ムルトシダ細胞は、十分に目視できる細胞外ヒアルロナン莢膜を生じ、そしてストレプトコッカスのHasAは、膜間タンパク質であるので、家禽コレラ病原体の膜標品を試験した。初期の試験では、超音波処理のみに由来する粗膜画分は、ストレプトコッカスのHAS活性を測定するためのものに類似する条件下で分析されるときに、UDP−GlcNAc依存性UDP−[14C]GlcAを、HA(約0.2ピコモルのGlcA移入(μgのタンパク質)−1−1)に組込む場合、非常に低い濃度を保持した。組換えHasAプラスミドを有するイー・コリから得られる酵素も、最初の単離に対する組換え体であった。これらの結果は、類似の方法によってストレプトコッカスから得られる簡単に検出できる量と対照的であった。
【0096】
超音波処理と共同してプロテアーゼ阻害剤の存在下での氷冷リソザイム処理を用いた選択的製造プロトコールは、グラム陰性細菌の両方の種からのHAS活性の実質的な回収を可能にする。5−10ピコモルのGlcA移入(μgのタンパク質)−1−1の特異的活性は、新規方法で野生型P.ムルトシダの粗膜について日常的に得られた。UDP−GlcNAcの不在下で、UDP−[14C]GlcAから得られる放射性活性(両方の糖前駆体と同一のアッセイの1%未満)で、高い分子量材料に組込まれるものは実質的にない。非莢膜突然変異体から製造される膜TnAは、両方の糖ヌクレオチド前駆体で補足したときに、検出可能なヒアルロナン活性を保有しない。セファクリルS−200カラムを用いたゲル濾過分析では、材料が、空隙体積に溶出するので、生体外合成される14C標識産物の主要部の分子マスが、≧8×10Daであることを示す。このような値は、少なくとも400モノマーから構成されるヒアルロナン分子に対応する。この産物は、ストレプトマイセス・ヒアルロニダーゼ消化に対しても感受性があるが、プロナーゼ処理に対しては耐性がある。
【0097】
HASアッセイのパラメーターを、P.ムルトシダの膜によりUDP−糖の多糖への組込みを最大限にするのに変化させた。ストレプトコッカスのHasAは、Mg2+を必要とし、したがって、この金属イオンは、P.ムルトシダ膜の最初のアッセイに含まれる。P.ムルトシダHASは、トリス型緩衝液中でpH6.5から8.6まで、最大限でpH7で比較的活性がある(図7)。図7には、P.ムルトシダHAS活性のpH依存性が描かれている。膜(38μgのタンパク質)によって触媒されたヒアルロナン多糖への[14C]GlcAの組込みを、種々のpH値(50mMトリス/2−(N−(モルフォリノ)エタンスルホン酸、ビス−トリス/HCl、またはトリス/HCl;主要な緩衝液イオン特異的効果で際立ったものはなかった)で緩衝される反応液中で測定した。インキュベーション混合液は、20mMのMgCl、120μMのUDP−GlcA(4.5×10dpm/アッセイ)、および300μMのUDP−GlcNAcをも含んだ。最適な緩衝液pH7トリスを用いたアッセイの組込みを100%活性に設定した。中性付近で最適な広範なpHが観察された。
【0098】
HAS活性は、少なくとも1時間、中性pHで、インキュベーション時間に関して直線状であった。P.ムルトシダ酵素は、50mMトリス(pH7)および20mMのMgClを含有する反応液に100mMのNaClを添加すると、およそ50%まで糖組込みが減少するので、高いイオン強度で明らかに活性が低かった。
【0099】
P.ムルトシダHASの金属イオン特異性は、pH7で評価された(図8)。図8には、HAS活性の金属依存性が描かれている。ヒアルロナンの産生を、濃度が増加しているMg(円)またはMn(四角)イオンの存在下で測定した。0.2mMのEDTAで再洗浄した膜(46μgのタンパク質)を、50mMトリス(pH7)、120μMのUDP−GlcA(4.5×10dpm/アッセイ)、および300μMのUDP−GlcNAc中の金属イオンの混合液中で、1時間インキュベートした。金属の存在しないバックグランド(22dpm)を、各点から減じた。Mnは、Mgよりいっそう効果的であった。
【0100】
EDTAの存在下、金属不含の条件下で、放射性標識した前駆体の多糖への組込みは、検出可能でなかった(最大のシグナルの<0.5%)。Mn2+は、試験金属(Mg、Mn、Co、CuおよびNi)について最低のイオン濃度で、最高の組込み速度を示した。Mg2+は、10倍高い濃度であるが、Mn2+刺激の約50%を示した。10mMにあるCo2+またはNi2+は、低いレベルの活性を支持したが(1mMのMn2+アッセイのそれぞれ20%または9%)、10mMのCu2+を補足された膜は不活性であった。実際に、10mMのCu2+および20mMのMg2+を膜標品と混合して、多糖への標識の組込みはほとんどなかった(Mgのみの値の<0.8%)。
【0101】
P.ムルトシダHASの当初の特徴づけを、Mg2+の存在下で行った。その糖ヌクレオチド前駆体についての酵素の結合アフィニティーは、見かけのK値を測定することによって評価した。多糖への[14C]GlcAまたは[H]GlcNAcの組込みは、それぞれ、UDP−GlcNAcまたはUDP−GlcAの可変の濃度で監視された(それぞれ図9および図10)。
【0102】
図9では、UDP−GlcNAc濃度へのHAS活性依存性が描かれている。50mMトリス(pH7)、20mMのMgClおよび800μMのUDP−GlcA(14Cの1.4×10dpm)を含む緩衝液中のUDP−GlcNAcの濃度を増やしながら、膜(20μgのタンパク質)を1時間インキュベートした。バックグランド放射性活性(同一のアッセイであるが、UDP−GlcNAcを添加せず)を各点から除した。滴定でのヒアルロナン(平均およそ780dpm/時間)への最高の特異的組込み速度は、100%までの正常化についてVMAXと定義された。
【0103】
図10には、UDP−GlcA濃度へのHAS活性依存性が描かれている。図9に記述されたものと平行な実験では、UDP−GlcNAcの量を1mMのUDP−GlcNAc(Hの2.7×10dpm)で増加させて、同じ一般的緩衝液およびアッセイ条件下でインキュベートした。バックグランド放射性活性(UDP−GlcAを添加しないアッセイ)を各点から除した。データは、図9でのように表される。VMAXでの特異的組込みは、およそ730dpm/時間に平均化した。
【0104】
Mg2+含有緩衝液では、UDP−GlcAについては〜20μM、そしてUDP−GlcNAcについては〜75μMの見かけのK値は、図11に示される滴定データのハンス−ウルフプロット([S]/v対[S])を利用して決定した。図11には、VMAXおよびKのハンス−ウルフプロット評価が描かれている。図9(四角)および図10(円)を生じるために使用される特定の組込みデータを、[S]/v対[S]としてグラフ化した。1/VMAXに対応する平行の斜面では、糖ヌクレオチド前駆体についての最大の速度が、等しかったことが示される。−Kを示すx軸切片は、それぞれ、UDP−GlcNAcおよびUDP−GlcAについては75および20μMのKを得た。
【0105】
両方の糖のVMAX値は、斜面が平衡であるので同じであった。Mg2+を用いたアッセイから得られる結果の比較では、UDP−GlcNAcについてのK値は、〜105μMまで、約25−50%まで増大され、そして最大は、Mn2+の存在下で2−3倍の因子まで増大された。これらの値は、表Iで表される。
【0106】
【表2】
Figure 0004490581
【0107】
先に述べられたとおり、病原体P.ムルトシダおよびエス.ピオゲネス(S.pyogenes)のヒアルロナン莢膜は、宿主防御の回避を助ける毒性因子である。いずれかの細菌源から得られるヒアルロナンシンターゼ酵素は、UDP−糖を利用するが、しかしそれらは、pHおよび金属イオン依存性およびK値に関してある程度異なる速度論的最適条件を有する。両方の酵素は、pH7で最も活性である。しかし、PmHASは、少なくともpH8.6までのpH最適条件のアルカリ側でよく機能する。他方、報告されたところによれば、spHASは、わずかに酸性のpHでいっそう活性を示し、そしてpH7.4以上で比較的不活性である。P.ムルトシダ酵素は、生体外アッセイ条件下で、Mg2+よりいっそう有効にMn2+を利用する。PmHASは、ストレプトコッカスのHasAより密接にUDP−糖を結合する。粗膜中のPmHASについて測定されたK値は、ストレプトコッカスの膜で見られるHASから得られるものより各基質について約2−3倍低い。
【0108】
3.ワクチン接種のためのPmHASの使用
PmHASのDNA配列も、破壊バージョンを用いた相同な組換えによって、正常な微生物遺伝子をノックアウトした後、P.ムルトシダ細菌の潜在的に弱毒化したワクチン株を生成するのに使用することができる。さらに、PmHASのDNA配列は、家禽、家畜、ヒツジおよびブタの農業病原体である関連P.ムルトシダ型についてのプローブの型を決める診断用細菌の生成を可能にする。
【0109】
区別できる莢膜抗原を有する細菌病原体P.ムルトシダの少なくとも5つの異なる型がある。多くはA型株によって引起こされる家禽コレラまたは鳥類パスツレラ症は、市販の家禽での広範で、経済的に損傷を与える疾病である。家禽コレラの急性突発は、通常、鳥類が、ちょうど死の数時間前にしばしば現れる症状として急に死ぬときにのみ検出される。P.ムルトシダの毒性についての分子的根拠については、ほとんど知られていないが、明らかに、病原体の毒性株の内の1つは、多糖莢膜を保有し、そしてそれらのコロニーは、寒天プレート上でムコシドまたは「湿潤」形態を表す。白血球細胞は、細菌を巻込みそして不活性化することに困難を示し、そして補体複合体は、細菌膜と接触して、溶菌を起すことができない。おそらく、家禽コレラの疾病の90−95%の原因であるカーターA型P.ムルトシダの主要な莢膜成分は、多糖ヒアルロナンであり、そしてヒアルロナンは、動物界の実質的に全ての構成要素での免疫応答は是認しない。免疫応答が起るときでさえ、自己免疫反応の影響のため鳥類についての問題がある。A型P.ムルトシダ株は、ブタおよびウシの肺炎性パスツレラ症の主要な原因でもあり、そして家畜に発熱を移す。
【0110】
2つの他のP.ムルトシダ莢膜型、D型およびF型は、あまりよく研究されていないが、しかし北米では優勢な病原体である。F型は、家禽コレラの事例の約5−10%から単離される。D型も、家畜、ヒツジおよびブタでの肺炎の原因である。これらの家畜動物の肺炎の病巣からの単離物は、莢膜型から分析され、そして約25−40%は、D型であり、そして残りはA型であった。さらに、D型株は、ブタの萎縮性鼻炎に密接に関与する。これらのD型およびF型微生物の莢膜は、未知構造を有する様々な多糖から構成されるが、それらは、明らかにコンドロイチンに類似し、脊椎動物の体内で優勢な分子である。(β1,4)GlcA(β1,3)GalNAc単位を繰返すコンドロイタンの一般的な骨格構造は、ヒアルロナンに非常に類似する。したがって、D型およびF型多糖は、免疫原性が乏しいことは驚くべきことでない。
【0111】
典型的には、先の感染(またはワクチン接種)から由来する細菌表面成分に対する抗体は、白血球細胞が、貧食作用中に細菌に付着するための重要な手段である。この特徴は、通常、疾病と戦う上で免疫応答を厳密に効果的にする。したがって、ヒアルロナンまたはコンドロイタン様糖のような非免疫原性ポリマーから構成される莢膜の存在が、宿主防御の全ての層の効力を約束する。ヒトの病原体であるストレプトコッカス・ピオゲネスも、宿主防御からそれ自身を保護するために、分子「擬態」としてヒアルロナン莢膜を使用する。非莢膜性エス.ピオゲネス突然変異体は、血液中で生存できず、そしてマウスでの野生型より100倍毒性が低い。多くの毒性イー・コリ株は、宿主分子を擬態し、そして免疫系をかわす上で細胞を助ける他の多糖から構成される莢膜を保有する。全てのこれらの病原性細菌の莢膜は、疾病に勝つために克服されなければならない賢明な進化適応物である。
【0112】
先の調査は、P.ムルトシダの莢膜および毒性でのその役割に焦点を置いた。A型家禽株に関しては、野生型被包細菌および種々の非莢膜形態を、単離宿主防御(白血球細胞および補体)による生存挑戦に対する、または生きている家禽の感染および死滅を起させるそれらの能力について試験した。非莢膜細胞は、特に、(a)自発的に生じる突然変異体、(b)化学的に誘導された突然変異体、または(c)特異的ヒアルロナン分解酵素であるヒアルロニダーゼ[ヒアルロナンエース]で処理した野生型細菌であった。一般に、莢膜欠損A型細菌は、生体外で宿主防御を単離することによっていっそう十分に死滅される。
【0113】
七面鳥血清は、突然変異体およびヒアルロナンエース処理細胞の両方を死滅させる一方で、野生型細胞は増大した。死滅能力が、細菌とインキュベートする前に血清の加熱またはカルシウムキレート剤処理によって失われるので、補体系は必然的に関与する。その被包野生型細胞は、複合体が結合するが、細胞を溶菌できないことを示す不活性化なしに、血清中の補体のレベルを消費するか、または減少させる。七面鳥マクロファージおよび異好球が、野生型細胞よりいっそう貪欲に非莢膜の毒性およびヒアルロナンエース処理細胞の両方を貧食作用する。
【0114】
生きている動物実験では、自発的突然変異体は、LD50(すなわち、試験動物の50%についての死滅用量)によって評価されるとおり、対応する野生型親株より10から10倍毒性が低かった。この莫大な差異は、A型株による貧食作用での莢膜の重要さを示す。生きている七面鳥での細菌の死も、被包に左右される。唯一野生型細菌が、肝臓で生存した。注射の15から24時間後、野生型細胞は、未被包突然変異体より10倍高い濃度で血液中に見られた。ヒアルロナン莢膜の別の役割は、付着およびコロニー化である。脊椎動物の体内のある種の細胞は、それらの表面に特異的ヒアルロナン結合タンパク質を保有する。潜在的に、細菌は、このタンパク質/ヒアルロナン相互作用を介して宿主に付着することができるであろう。
【0115】
同様に、D型およびF型P.ムルトシダの莢膜は、微生物に貧食作用に対する耐性を供与する毒性因子として関与している。D型またはF型細胞は、コンドロイチナーゼで処理し、それらの微生物は、それらの莢膜を失い、そして生体外でいっそう十分に貧食した。さらに、これらのポリマーは、強力な免疫原性ではない。生体内試験から、被包D型株は、ブタでさらに重篤な鼻内病巣を生じ、そして未被包変異体よりマウスで低いLD50を示した(それぞれ10対107−8)。
【0116】
しかし、上で研究されたAおよびD型突然変異体の場合には、それらの欠陥の遺伝的特性は、知られておらず、そして突然変異をマッピングする容易な方法はなかった。特に、化学的突然変異誘発では、任意の表示された「突然変異体」中で1回以上の突然変異があるようである。さらに、ヒアルロナン産生は、「非莢膜」突然変異体中で完全に根絶されることは示されなかった。コロニー形態学、光学顕微鏡または化学的試験によって検出できない薄い莢膜は、まだ存在する可能性があった。小さな莢膜でさえ検出するために、さらに敏感な放射および浮遊密度アッセイが必要とされる。これらの新たな方法を利用すると、数種の毒性アッセイで使用され、そして非莢膜性であると報告される1つの株は、実際に非常に薄い莢膜を保有する。したがって、真正な非莢膜株からの影響を決定することが重要である。
【0117】
歴史的には、P.ムルトシダの莢膜産生に関与する遺伝子は知られていなかった。関連属ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)中の別の細胞の莢膜遺伝子座を残す数種の遺伝子がマッピングされ、そしてシーケンシングされたが、生合成装置の分子の詳細は、入手可能でなかった。非常によく研究されたグラム陰性生物であるイー・コリでさえ、莢膜形成の遺伝子座が、十分にマッピングされ、そして数種の莢膜型についてのDNA配列が得られたけれども、各々の推定遺伝子産物の正確な役割は、よく理解されてはいない。
【0118】
ストレプトコッカス・ピオゲネスのヒアルロナン生合成遺伝子座のクローニングおよびシーケンシングが報告されている。P.ムルトシダのようなこの微生物は、ヒト防御をかわすためにヒアルロナン莢膜を利用する。ヒアルロナンオペロンは、およそ4kbのDNAで前後に並んで配列される3つの遺伝子を含む。第一の遺伝子hasAは、2つの糖ヌクレオチド前駆体UDP−GlcAおよびUDP−GlcNAcを重合してヒアルロナン多糖を形成する、45.1kDaのヒアルロナンシンターゼをコードする。第二の遺伝子hasBは、UDP−グルコース(UDP−Glc)を、ヒアルロナン生合成のためのUDP−GlcAに変換する45.5kDaのUDP−グルコースデヒドロゲナーゼをコードする。第三の遺伝子hasCは、UTPおよびグルコース−1−ホスフェートからUDP−Glcを形成する34kDaのUDP−グルコースピロホスホリラーゼをコードする。莢膜生合成用のUDP−糖を形成することに打ち込んでいる補助的酵素がある。染色体中のどこにでも残る別の「ハウスキーピング」遺伝子は、細菌の正常な代謝経路のためのUDP−Glcを供給する。UDP−GlcNAcは、細胞壁合成でのその役割のため全ての真正細菌に存在する。したがって、ヒアルロナンシンターゼおよびデヒドロゲナーゼは、異種細菌中のヒアルロナン多糖合成を指示するだた2つの内在性タンパク質である。膜間螺旋状物を有する膜タンパク質であると仮定されるエス.ピオゲネスヒアルロナンシンターゼは、おそらく、ヒアルロナンを重合し、そして細胞の外側に成長する多糖鎖を輸送する両方を行う。
【0119】
上で先に検討されるとおり、P.ムルトシダ中のヒアルロナンの莢膜産生の原因である遺伝子が単離され、そしてシーケンシングされている(例えば、配列番号1および2参照)。この遺伝子は、本発明の一部として開示され、そして請求される。先にも検討されたとおり、P.ムルトシダ莢膜のポリマーは、ジレンマを宿主防御に引起こす。PmHAS遺伝子配列情報を用いて、ヒアルロナン合成遺伝子「ノックアウト」を有する組換えて生成されるP.ムルトシダ株は、P.ムルトシダの細菌莢膜の合成を破壊する。ワクチンとして「ノックアウト」株を用いて、宿主生物が、この分野にある病原体による誘発を防ぐことが可能になる。
【0120】
上で検討されるとおり、多用途で証明されている変異原であるTn916は、種々の明らかに準ランダムな位置でP.ムルトシダの染色体に挿入する。Tnは、電気穿刺を介して「自殺」プラスミド、すなわち、P.ムルトシダで複製できないものの上の細胞に導入された。Tnは集結し、約4,000事象/マイクログラムのDNAの頻度で、プラスミドを飛び去り(jumped off)、そしてゲノムに導入された。生じる子孫は、Tn916から得られるテトラサイクリン耐性遺伝子を保有し、そしてその薬剤によって容易に選択できた。
【0121】
さらに上に検討されるのは、毒性の親株から得られる莢膜生合成で欠けている独立のトランスポゾン突然変異体のパネルが、発生されることであった。およそ10遺伝子導入したコロニーの視覚的および生化学的スクリーニングの組合せを使用した後、2つのクラスの莢膜欠損は、微細莢膜の、または非莢膜の突然変異体を生じることが分かった。第一のクラス(7つの独立な株)は、ヒアルロナンの非常に小さな莢膜を保有し、したがって微細莢膜と称される。被包野生型株は、培地プレート上の虹色コロニーである大型ムコイドを生じ、そして個々の細胞は、光学顕微鏡で測定すると細胞体の直径におよそ等しい厚みを有する莢膜を形成する。比較では、微細莢膜の株は、培地プレート上でいくぶん乾燥剤のようであるより小さな虹色のコロニーを形成する。個々の細胞の莢膜の厚みは、野生型の四分の一(またはそれ未満)の桁数である。
【0122】
4つの突然変異体(4つの独立株)は、培地プレート上で小さな乾燥コロニーを形成する真に非莢膜性であるように見えた。光学顕微鏡によって検出される莢膜はなかった。被包の状態によって、非莢膜株の浮遊密度は、ヒアルロニダーゼ処理によってそれらの莢膜をはがれた野生型細胞と等しかった。これらの株も、ヒアルロナンシンターゼ活性を欠いた。内在性放射標識UDP−糖前駆体を、これらの突然変異体から由来する標品に添加したが、ヒアルロナン多糖は形成されなかった。
【0123】
非莢膜性突然変異体の内の2つTnHおよびTnLは、約10−3の頻度で、興味ある特性を保有し、野生型莢膜表現型を示す偶発的な復帰突然変異体が、培地プレートに現れた。復帰突然変異体細胞は、ヒアルロナン多糖のための光学顕微鏡および放射アッセイによって考えられるとおり、野生型莢膜を保有した。分子上の説明では、時折、Tnが、莢膜遺伝子(付加または欠失した塩基なし)から正確に削り、そして染色体内のどこかほかの所に介入することである。培地プレート上の生じた被包子孫は十分に観察可能である。この可逆的現象は、これらの2つの株の中のTnが、莢膜合成に必要な重要な部位を突然変異させる原因であったという古典的な遺伝的根拠である。しかし、この相対的不安定さのため、Tn由来の突然変異体は、弱毒化ワクチン株に適正でない。ある頻度で、毒性型が生じうる。
【0124】
サザンブロティングを使用して、元来の非莢膜突然変異体と被包復帰突然変異体の両方でTnの位置をマッピングした。TnHおよびTnLは、図12に示されるとおりHindIIIまたはBstXI消化後のパターンによって考えられるのと同じ遺伝子座中にTn構成要素を有する。図12は、Tn突然変異体のサザンブロットマッピングである。莢膜突然変異体、被包復帰突然変異体および対照の寄せ集めから得られる染色体DNAを、HindIIIで消化させた。DNAを、ゲル電気泳動によって分離させ、そしてサザンブロット分析にかけた。Tnプローブは、内部制限部位のため各トランスポゾンについての2つのバンドを認識した(大型の10kbおよび小型の5kbの腕を形成する)。Tnプローブは、Tnなしで親株から得られるDNAとハイブリッド形成しない(レーン0)。非莢膜性突然変異体TnH(H)およびTnL(L)または個々の被包復帰突然変異体(下線付き文字で示される)の別々のコロニーに由来する複数のDNA標品を実行させた。Tnの2個のコピーを通常に有する(予備培養した株の内の1つは、3個のコピーを有した)TnL以外は、全ての突然変異体は、単回のTn構成要素挿入を示した。TnW(W)は、ムコイドTn含有対照株である。23.1、9.4および6.6kb(頂部から底部まで)についてのラムダHindIIIマーカー(λ)の位置を印した。
【0125】
非莢膜性突然変異体HおよびL(ヒアルロナンシンターゼ活性を示さない)、および代表的微細莢膜の突然変異体TnD(D)中のTn構成要素は、同じ位置にマッピングする。ムコイド表現型に対する復帰で、関連のTn構成要素は、それぞれの場合に新たな位置に移動した。突然変異体から得られる破壊DNAを、この遺伝子座から単離し、そしてプローブは、莢膜遺伝子のために生成された。
【0126】
連続配列分析では、TnHおよびTnL挿入がおよそ1kb部分であることが決定された。全ての場合に、これらの突然変異体遺伝子座の復帰突然変異体は、当初の位置でTnを失い、そして異なる位置で新たなTnを得た(すなわち、図12、下線付き文字を有するレーン)。代替的に、被包形態に対する微細莢膜の突然変異体の内のいずれかの観察された復帰は無かった。微細莢膜の突然変異体(TnDによって型分けされた)の全ての原因であるTnは、TnHおよびTnL突然変異体と同じ17キロベースのHindIIIフラグメントにマッピングした。同様に、BstXIでマッピングすることによって、この同時位置決めを確認した。
【0127】
他の非莢膜性突然変異体TnAおよびTnGでは、Tn構成要素は、他の不適切な遺伝子中に配置され、そしてヒアルロナン莢膜遺伝子座に、自発的突然変異によって機能性を失わせた。偶発的で自発的な突然変異が予測されるべきである。実際、ストレプトコッカスの莢膜遺伝子座の同様の研究で、13の株の内12は、自発的突然変異の結果であった。
【0128】
Tn916挿入の突然変異誘発を、P.ムルトシダのヒアルロナン莢膜生合成に関与したDNAを同定し、そしてクローン化するのに使用した。この技術を達成させる上で、3つのステップが使用された。すなわち、(i)Tn916の末端にあるDNAに対応するプライマーを利用するTn挿入部位にある宿主DNAをシーケンシングすること、(ii)新たな配列に基づいた莢膜遺伝子のためのPCRプライマーを設計して、2つのTn構成要素の間のDNAセグメントを増幅すること、および(iii)ハイブリダイゼーションプローブとして莢膜遺伝子座特異的PCR産物を利用する機能性クローンのためにラムダウイルス中にある野生型ゲノムライブラリーをスクリーニングすることである。
【0129】
Tnに隣接するP.ムルトシダDNAを得る上で主要なステップは、ここに参照して完全に組込まれるDeAnglis,P.L.、「パスツレラ・ムルトシダのトランスポゾンTn916挿入性突然変異誘発および破壊部位の直接シーケンシング」、MicrobialPathogenesis(1998年)で完全に記述された最近処方された直接シーケンシング技術を使用することであった。全ての莢膜型から得られるP.ムルトシダ・ゲノムは、制限酵素HhaIについての多くの部位を含む。したがって、消化物中のほとんどすべてのDNAフラグメントは、7キロベース(kb)より小さく、そして図13、レーン「0」に示される。
【0130】
図13には、Tn破壊部位の配列分析についてのキメラDNAテンプレートが表される。この方法を通して、Tn916構成要素によって中断される任意の遺伝子のDNA配列は、迅速にそして直接的に得ることができる。その方法は、Tn構成要素、および制限酵素HhaIに対するA型P.ムルトシダのゲノムの判別感受性で利用する。16kbTn構成要素は、消化で12および4kbフラグメントになる唯一のHhaI部位を有する。したがって、Tn構成要素によって中断された任意の遺伝子は、別の12kbのDNAを有する。HhaIフラグメントのサイズでの増加は、従来のアガロース電気泳動によって残りの染色体DNAからTnタグ付き遺伝子の解像を容易にさせる。この0.7%ゲルは、Tn無しの親株(レーン0)、および数種のTn含有突然変異体(Tn突然変異体レーン)から得られる染色体DNAのHhaI消化パターンを示す。ラムダ/HindIIIマーカー(レーンS)は、kbで印される。およそ13−17kbで移行するキメラTn/ゲノムDNAフラグメント(矢印で印される)は、Tn突然変異体のみで見られる。レーンLは、3つのキメラバンドを有すること、この特定の突然変異体は、3つのTn構成要素を有することに注目されたい(図12参照)。
【0131】
キメラDNAは、単離して、シーケンシングテンプレートとして直接使用されうる。必要とされるクローンまたはPCRはない。アガロースゲル電気泳動によって残りの小さなゲノムフラグメントから十分に分離される、生じる大型キメラDNA分子は、サイクルシーケンシング反応中でテンプレートとしての役割を果たす。Tn916の右腕末端に対応するシーケンシングプライマーは、破壊DNAに外側に伸長を指示する。したがって、突然変異体DNAの破壊部位での配列データは、PCR増幅またはテンプレートDNAをクローニングすることなく、日常的に得ることができる。
【0132】
新たな配列情報は、TnLおよびTnH突然変異体の間のDNAの領域の増幅のためのPCRプライマーを設計するのに使用した。A型P.ムルトシダのヒアルロナン生合成遺伝子座の略図を示す図14に概説されるとおり、特異的な1kb産物を、ハイブリダイゼーションプローブとして使用して、A型P.ムルトシダの莢膜生合成オペロンの5.8kb部分を得た。図14が描くとおり、イー・コリ中のヒアルロナンの生合成を指示できるA型ゲノムDNAクローンの挿入物をシーケンシングした。開放読取り枠が、多糖輸送中に関与されるイー・コリ分子に類似する2つのタンパク質KpsおよびKfaA、すなわち、ヒアルロナン多糖を重合するヒアルロナンシンターゼ、および前駆体形成酵素、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼをコードすることが分かった。元のプラスミドの欠失分析では、無傷のヒアルロナンシンターゼは、異種細菌中のヒアルロナン産生に不可欠であることが示された。TnHおよびTnLに対応する元のTn挿入の位置を、星印で印した。Tn挿入事象は、ヒアルロナンシンターゼおよびデヒドロゲナーゼ遺伝子の下流の発現を終結させる極性の突然変異を明らかに引起こした。したがって、配列分析を使用することによって、イー・コリKfaAに類似である新規PmHASおよび推定多糖輸送相同体の無傷の開放読取り枠が見られた。データでは、UDP−GlcA前駆体を作るUDP−Glcデヒドロゲナーゼ相同体、および別の輸送媒体タンパク質イー・コリkps遺伝子相同体は、ヒアルロナンシンターゼの付近に存在することも示された。
【0133】
P.ムルトシダから得られる単独の110kDaのタンパク質PmHASは、イー・コリ中のヒアルロナン莢膜産生を指示する。プラスミド上でPmHASと共に産生される組込み細胞の莢膜は、毒性の野生型株と同じ厚みであった。莢膜性材料は、特異的ヒアルロナンリアーゼ消化に対するその過敏性、および選択的ヒアルロナン結合タンパク質とのその反応性によって真正なヒアルロナンと考えられた。興味深くは、PmHASは、アミノ酸レベルで他のHASにそれほど類似ではない。
【0134】
P.ムルトシダの安定な同質遺伝子の突然変異体を作るために、ピー.ヘモリチカで使用される突然変異誘発法の修飾を使用した。ヒアルロナンシンターゼの二重交差によって標的にされた不活性化のためのノックアウト・カセットを作成した。プロモーター無しのクロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)を、全PmHAS開放読取り枠(XhoI部位で)の中央に挿入し、P.ムルトシダ中で安定には複製しないプラスミド(pKK223−3)にクローン化させた。プラスミドを、被包野生型株に形質転換させ、そして細胞を、クロラムフェニコールを有する培地に載せた。標的遺伝子へ介入させたとき、無傷のPmHASタンパク質はもはや形成されない。cat遺伝子は、内在性莢膜遺伝子プロモーターによって転写される。下流遺伝子であるUDP−グルコースデヒドロゲナーゼは、影響を及ぼされないにちがいない。したがって、真の同質遺伝子突然変異体が形成される。
【0135】
3つの同質遺伝子の非莢膜性突然変異体が、単離された。これらの突然変異体の内、光学顕微鏡および墨汁染色下で莢膜を有すると検出されたものはなかった。ヒアルロナンシンターゼは、DNAおよび生化学的レベルの両方で破壊された。例えば、表II参照。PmHAS酵素の一部に対して向けられた抗体を用いたウエスタンブロット分析によって、非莢膜のノックアウト突然変異体は、野生型親で見られるPmHAS酵素のものであるおよそ110kDaバンドを失っていた。表II中のデータとの組合せ(多糖産生を欠く)で、機能性PmHASで、ノックアウト株に見られるものはなかった。
【0136】
ある種の領域は、種々の莢膜型の遺伝子の間で共通であるか、または非常に類似する。これは、図15で描かれるDまたはF型DNAのサザンブロット分析で示される。図15で描かれるとおり、A、FまたはD型株から得られる染色体DNAは、HindIIIまたはEcoRI(各プローブについてそれぞれ、右または左レーン)で消化させ、そしてサザンブロットにかけた。A型から得られるkfaA相同体(K)またはヒアルロナンシンターゼ(H)遺伝子のいずれかの領域に対応するジゴキシゲニン標識PCR産物プローブを、他の莢膜型の細菌中の相同な配列を検出するのに使用した(星印の付いたバンド)。KfaA相同体は、FおよびD型の両方に現れる。非常に類似なシンターゼ相同体は、F型で見られたが、D型では見られなかった。プローブは、ライブラリーをスクリーニングするのに適切である。ラムダ/HindIII標準を、キロベースで印す。
【0137】
F型は、両方のプローブに類似する領域を示す一方で、D型は、輸送媒体タンパク質プローブにのみ類似した。図16に示されるとおり、PCRを、A型配列に対応する数種の組のプライマーと共に使用して、DまたはF型ゲノムDNAを増幅した。A型プライマーを用いた異種DNAのPCRは、図16に描かれている。A型株のkfaA相同遺伝子(パネルA)またはヒアルロナンシンターゼ遺伝子(パネルB)に対応する種々のプライマー対を、様々の莢膜型と共に、数種の他のP.ムルトシダ株から単離されるゲノムDNAを増幅するのに使用した。Taq酵素を用いて40サイクル(94℃、30秒;42℃、30秒;72℃、60秒)のポリメラーゼ連鎖反応を行った。
【0138】
反応混合物を、1%アガロースゲル上で分離させ、そしてエチジウム(レーン:A、A型;D、D型;F、F型;0、テンプレートなしの対照)で染色した。標準(S)は、100bpラダーであり、1および0.5kbバンドは、矢印で印をする。P−Iプライマー対は、全ての3つの莢膜型のための産物を示すが、しかしD型産物は、他の産物より小さい。P−IIおよびP−III対は、AおよびF型DNAのみを増幅する。対照的に、P−IVおよびP−V対は、A型のみを増幅する。AおよびF型莢膜遺伝子座が、D型より互いにいっそう類似するようである。P−Iプライマー対から得られるPCR産物は、他の型から得られる莢膜遺伝子座のための優れたハイブリダイゼーションプローブとして役割を果たす。
【0139】
プライマーの全ての組合せが、異種テンプレートDNAを有するPCR産物を得るとはかぎらない。ヒアルロナンシンターゼまたは莢膜多糖輸送媒体の類縁体をコードするF型遺伝子の0.2−1kb部分を増幅した。さらに増幅されたのは、輸送媒体タンパク質をコードするD型ゲノムの1kb領域であった。数種のPCR産物の配列分析は、同質のなお区別しうる配列を示した。全体で、このデータは、AおよびF型株が、互いにいっそう関連し、そしてD型に類似しないことを示唆する。AおよびF型KfaA相同体およびイー・コリKfaAの配列比較は、図17に示される。P−Iプライマーの組(図16参照)を用いたF型DNAの増幅によって生成されるPCR産物を、ゲル精製し、そして元のプライマーの内の一つでシーケンシングした。AおよびF型配列は、アミノ酸レベルで非常に類似性があることが分かった。タンパク質配列のこの部分配列では、この領域で、配列が、いくつかのミスマッチを伴いおおかた同一であることが示された(差異は、図17で下線を付された)。全体で、P.ムルトシダ配列は、イー・コリKfaAタンパク質と全く相同であり、そしてそれは、多糖輸送に関与する(同一の残基は、図17で太字にする)。これらのPCR産物は、DまたはF型ゲノムライブラリーから得られる機能性莢膜遺伝子座を得るためのハイブリダイセーションプローブとして有用でもある。クローン化DNAも、遺伝子ノックアウトプラスミドの構築を可能にする。ここで、生じる突然変異体株は、毒性アッセイまたはワクチンに有用である。
【0140】
P.ムルトシダの細菌莢膜の産生は、少なくとも以下のステップを含む。すなわち、(i)糖ヌクレオチド前駆体の合成、(ii)莢膜多糖を形成する前駆体の重合、および(iii)莢膜組立てが起る細胞外空間への多糖の輸出または輸送である。もちろん、酵素レベルまたは酵素活性を制御する潜在的制御遺伝子または因子があるが、しかし焦点は、その経路の主要な構造的酵素にある。イー・コリでは、この工程についての酵素をコードする候補2型莢膜遺伝子は、細菌染色体上の単独部位で共に配置される。様々な構造を有する莢膜を作るイー・コリ株は、上のステップ(i)および(ii)のための酵素を変化させるが、しかし全ては、ステップ(iii)についての共通輸送/輸出機構を共有するようである。
【0141】
エス.ピオゲネスで、単一の内在性膜酵素が、前駆体糖を重合し、そして膜を越えてヒアルロナン多糖を輸送することが知見された。A型P.ムルトシダは、細菌の莢膜産生のための3つの生合成ステップの各々に関与する4つの異なる遺伝子を有する(図14参照)。タンパク質レベルでのイー・コリ相同体に対するP.ムルトシダの多糖輸送媒体の類似性で、ある種の他の莢膜遺伝子の一般的機能性も、これら2つの種と類似性がありうることが示唆される。
【0142】
家禽コレラでの毒性因子としての莢膜の役割が、評価された。細菌莢膜および毒性の研究に対抗される落し穴および警告を避けるために、定義した突然変異体を、野生型微生物と比較した。破壊された莢膜遺伝子を有する同質遺伝子のA型突然変異体を、生体内で生きている家禽を感染させるのと同様に、生体外で宿主防御を予め存在するか、予備免疫することを避けるそれらの能力について試験した。ここに上で記述される方法によって、安定な同質遺伝子の突然変異体を生成した。プラスミド上のPmHAS遺伝子の破壊バージョン(図18参照)および相同の組換えを使用して、ヒアルロナン莢膜を作る能力を失った組換えP.ムルトシダ株を作り出した。株は、さらに、DNAおよび生化学レベルの両方で分析した。我々は、サザンブロットおよびPCR分析の両方により、機能性ヒアルロナンシンターゼ遺伝子を、catカセット破壊を含む欠損遺伝子に換えられることを知見した(図19参照)。
【0143】
遺伝子破壊の確認は、図19で示される。パネルAは、サザンブロット分析である。種々の株から得られる染色体DNAを、HindIIIで消化し、0.7%アガロースゲルで分離し、そしてニトロセルロースに移した。ブロットを、P.ムルトシダHAS遺伝子プローブとハイブリッド形成させた。PmHAS遺伝子中の内部HindIII制限部位のため、2つのバンドを検出した。レーンMは、ムコイド形質転換体であり、レーンKOは、非莢膜のノックアウト突然変異体であり、レーンPは親株である。670bpのcatカセットの添加は、KOレーン上の上部バンドのサイズ移行を起させる(矢印で印される)。
【0144】
図19のパネルBは、PCR分析である。種々の株から得られる細胞溶解産物中のDNAを、PmHASのXhoI部位を挟む一対のオリゴヌクレオチドプライマーを用いた35サイクルのPCRによって増幅させた。正常の野生型遺伝子から得られるアンプリコンの長さは、650塩基対である。PCR反応物は、1%アガロースゲル上で分離され、そして臭化エチジウムで可視化させた。レーンMは、ムコイド形質転換体である。レーンKOは、非莢膜のノックアウト突然変異体である。レーンPは、親株である。レーンCは、クローン化PmHASプラスミド対照である。そしてレーンSは、サイズ標準である。ノックアウト突然変異体テンプレートによって産生されるPCR産物は、およそ1,300bpである(矢印で印を付けた)。このバンドは、670bpのcatカセットおよびPmHASに由来する650bpから構成される。野生型アンプリコンで、ノックアウト株の反応物で検出されるものはなく、したがって、二重乗換現象によって導かれる相同な組換えが生じた。
【0145】
さらに、ヒアルロナン多糖のための敏感な放射性化学アッセイを利用して、突然変異体株はヒアルロナンを産生しないことが分かったが、種々の株のヒアルロナン産生を列記する表IIに示される。
【0146】
【表3】
Figure 0004490581
【0147】
表IIに列記される株は、ここに上で概略される特異的放射アッセイを用いてヒアルロナン多糖の存在について試験される種々の株の一夜培養物であった。分光光度計によって培養物を正常化させ、そしてデータは、600nmでの1.0の吸光度で培養物中のヒアルロナンの濃度として表された。野生型親またはムコイドの被包形質転換体は、実質的な量のヒアルロナンを合成した。対照的に、検出可能なヒアルロナンで、非莢膜のノックアウト突然変異体(KO)によって産生されるものはない。したがって、毒性での莢膜の役割を評価できるであろう。使用される方法論は、P.ムルトシダの他の突然変異体を構築するのにも使用できるであろうし、そして本発明の開示を示された当業者は、このような手法を達成できるであろう。
【0148】
動物試験は、相補突然変異体対照および野生型A型P.ムルトシダに対するその突然変異体の生体内病原性を比較した。A型パスツレラ・ムルトシダATCC15742(家禽コレラを起す)のノックアウト株は、毒性試験のために、アイオワ州エイムス(Ames,Iowa)にあるUSDAリサーチ・ステーションに届けられた。標的とされた相同の組換えを用いて、ノックアウト株の莢膜生合成を破壊し、そしてノックアウト株は、1,000倍少ない毒性であることが推定された。
【0149】
毒性試験は、ワクチン株としてKO株の安全性を調べるために行った。七面鳥の卵を、クリーン条件下で孵化させ、そして2週齢まで育成させた。若鶏に種々の濃度の細菌(野生型親またはノックアウト株のいずれか)を注射した。細菌数は、プレート塗布後の分光学およびコロニー計測によって計測した。動物に筋肉内に注射し、そして生物学的混合ペンに載せた。接種した若鶏(10倍ステップで約80から10個の細菌までの範囲における細菌投与当たり6または7の群)を観察した。一般的外観、活性のレベルおよび罹患率を6日間調べた。死亡または瀕死の鳥を、解剖し、そして病巣、腫瘍の存在、および臓器不全について調べた。
生体内実験の結果は、表IIIに要約される。
【0150】
【表4】
Figure 0004490581
【0151】
この型の試験の要点は、病原体の被包に関して感染の一般的傾向を評価することであった。各決定について、白色七面鳥を、滴定量の細菌IMを接種した。七面鳥の症状および死を測定し、そして突然変異体の相対的毒性を比較するために表に表した。保護試験は、免疫した七面鳥が、野生型毒性生物による誘発を生き延びることができるかを決定するために実行する。
【0152】
家畜およびウサギを感染するA型ノックアウト株も、製造された。免疫された動物が、野生型毒性生物での誘発に生き延びることができるかどうかを決定する保護試験と同様に、これらのノックアウト株の病原性の両方を決定するために、試験は、生体内で行われた。
【0153】
2つの主要な型の保護実験を行った。最初に、消極的免疫化を行う。1匹のニワトリに、潜在性ワクチンKO株を感染させ、そしてその血清のサンプル(保護的抗体を有する)を、接種後約1−2週に取る。この血清または誘導された精製抗体を、実験を受けたことのないニワトリに注射する。実験を受けたことのないニワトリを、野生型株で誘発させる。保護的抗体を受ける場合、トリは、ほかの致命的野生型細菌での誘発に生き残る。
【0154】
第二に、有効な免疫化を行う。この場合に、同じニワトリは、強力なワクチンKO株で連続して感染させ、そして数週間後、トリを、正常に致命的用量の野生型細菌で検証した。この場合に、抗体依存性および細胞依存性免疫を試験する。
【0155】
本発明を使用して、多糖の親密な構造的類似性のために種々の被包型のP.ムルトシダの莢膜遺伝子座での類似性があることが推定される。本発明は、相同なF型P.ムルトシダ遺伝子(「PmCS」)にも関する。PmCS配列情報は、配列番号3で供される。F型遺伝子は、A型遺伝子とおよそ85%同一であり、そして配列比較は、図20で示される。この相同性は、図15、図16および図17に示されるとおり、サザンブロッティングおよびPCRによって、クローン化A型莢膜遺伝子とDおよびF型ゲノムの特定の領域との間のDNAレベルで見られる。ラムダファージ中のF型ゲノムDNAのライブラリーを、スクリーニングして、相同な莢膜遺伝子座を単離した。ラムダファアージ中のD型ゲノムDNAのライブラリーを、スクリーニングして、相同な莢膜遺伝子座を単離し、そして当業者は、D型莢膜遺伝子座が、AおよびF型と正確に同じ方法で測定することができることを予測し理解する。AおよびF型PmHAS配列は、89%類似である。
【0156】
PCR産物のハイブリダイゼーションプローブ(図16)を使用し、HAS相同体およびKfa相同体を結合することによって、F型多糖シンターゼ遺伝子を得た。F型株から得られるゲノムDNAおよびKfaから得られる適切なプライマーおよびシンターゼ領域を用いて、3kbアンプリコンを産生した。この材料を、ジゴキシゲニンで標識させ、そしてクローン、および続いてラムダZAP発現ライブラリー中のF型ゲノムDNAライブラリーから得られるプラスミドを得るのに使用した(A型クローニングについて記述されるとおり)。陽性でハイブリッド形成するクローンをシーケンシングした。A型ヒアルロナンシンターゼ遺伝子PmHASの場合のように、イー・コリ中のpKK223−3(ファルマシア)ベクター中の発現によって、機能を調べた。この酵素は、生体外で、UDP−GalNAcおよびUDP−GlcAを、コンドロイチン分子について予測されるとおりの高い分子量のポリマーに組込んだことが分かった。
【0157】
莢膜の多糖シンターゼを、抗体およびウエスタンブロット分析で監視した。シンターゼ酵素の共有される相同な領域(12−20アミノ酸残基)に対応する合成ペプチドに対する抗体を発生させた。ウエスタンブロットでは、A型およびF型P.ムルトシダの両方が、SDS−PAGEによって、免疫反応性の110kDaタンパク質を有することが確認された。
【0158】
図21は、生来の、そして組換えPmHASタンパク質のウエスタンブロット分析である。イー・コリ中で作成される生来のPmHASおよび種々の組換え切断PmHAS由来のタンパク質を、SDS−PAGEゲル上で比較した。組換えサンプルについては、総溶解産物(T)、膜(M)および細胞質(C)を、抗−PmHAS抗体を用いたウエスタンブロッティングにかけた。生来のパスツレラ・ムルトシダに見られる元のタンパク質(Pm、レーンW;矢印で印された)が約110kDaに移行する。ノックアウト・ワクチン株(KOレーン)は、このバンドを失っている。生来のPmHASおよびカルボキシル末端の一部を失う組換えバージョン(PmΔCC)は、ヒアルロナンシンターゼ活性を有した。他の切断構築物は、不活性であった。
【0159】
4.診断用途でのPmHASの使用
本発明は、その分野でA、DおよびF型P.ムルトシダまたはピー.ヘモリチカの同定を促進する有用なプローブの産生にも関する。特定の株が、動物に存在するという診断は、最近、制限分析の後、血液学、凝集またはDNAフィンガープリンティングによって決定される。先の2つの方法は、問題が多く、頻繁に誤った同定を生じ、そして抗血清をタイプ分けする源によって変化する。カーター型A、DおよびF型の莢膜血液学は、これらのポリマーが、免疫原がこのように乏しいので抗体さえ使用しない。実際に、酵素的消化またはアクリフラビンとの細胞凝集に関与する困難なアッセイを、日常的に使用する。DNAフィンガープリンティングは、正確であるが、しかし、それは、ファイル上の莫大な型の株の集約的知識に依存する。莢膜特異的プライマーの組は、特に、最小限の取扱いで、そして予備培養なしに、半日で病原性単離物を同定する迅速で容易なPCR分析を使用することによって、これらの疫学的研究を十分に行うのに使用される。一旦、病原体が同定されると、抗生物質またはワクチンの選択に、いっそう洗練された決定をなすことができる。
【0160】
P.ムルトシダの型を素早く確かめる莢膜DNA情報の使用法の有用性は、最近のタイプ分け方法についての問題の点で明らかである。ハイブリダイゼーションまたはPCR基礎のタイプ分けのいずれかが、実施でき、敏感で、そして迅速であると想像される。1つの特定の実施形態は、その特徴の長所により、適切なハイブリダイセーション条件下で際立たせることができる(例えば、相補的遺伝子およびプローブは、ハイブリッド形成してシグナルを生じる一方で、別の莢膜型から得られる同一でない遺伝子は、ハイブリッド形成せず、したがって、シグナルが得られない)、適切に標識されたか、またはタグ付けされたシンターゼDNAプローブ(または、莢膜型の中で異なる莢膜遺伝子座遺伝子を伸長させることによって)を保持することである。別の特定の実施形態は、莢膜型を区別できるPCRプライマーを設計することである。正しいサイズのアンプリコンは、特定の莢膜型を示す。別の際立った莢膜型を示すアンプリコンはない。
【0161】
技術の最近の現状で、単回反応で区別できるそして異なるサイズのバンドを示すいくつかのPCRプライマー対が想像できる。このような複合法は、多くの反応を同時に行うことを可能にする。種々の莢膜生合成遺伝子座、特にシンターゼのDNA配列の知識は、これらの試験が種々の病原性株を迅速に区別させる。
【0162】
したがって、本発明によって、上に規定される目的および利点を十分に満足させるP.ムルトシダの単離およびシーケンシングされたPmHASおよびノックアウト株を作成および使用する方法を供することのようである。本発明は、それらの特定の実施形態に関連して記述されているが、多くの改変、修飾および変動が、当業者に明らかであるという証拠である。したがって、付随の請求項の概念および広範な範囲内に入る全てのこのような改変、修飾および変動を受け入れることが意図される。
【0163】
【配列表】
Figure 0004490581
【0164】
Figure 0004490581
【0165】
Figure 0004490581
【0166】
Figure 0004490581

【図面の簡単な説明】
【図1】 PmHASのP.ムルトシダおよび他の細菌から得られる他のグリコトランスフェラーゼの部分的配列図である。図1におけるPmHAS配列は、配列番号10であり、図1におけるEpsI配列は、配列番号11であり、図1におけるCps14E配列は、配列番号12であり、図1におけるLgtD配列は、配列番号13であり、図1におけるSpHasA配列は、配列番号14であり、そして図1における共通配列は、配列番号15である。
【図2】 哺乳類UDP−GalNAc:ポリペプチドGalNAc−トランスフェラーゼ(配列番号17)の残基362−404に比較した場合のPmHASの残基342−383の配列図(配列番号16)である。図2における共通配列は、配列番号18である。
【図3】 PmHASのUDP−糖類縁体を用いた光アフィニティー標識研究のオートラジオグラム表示である。
【図4】 PmHASの種々のTn突然変異体でのPmHASの減少されたか、または不在の光アフィニティー標識を表すオートラジオグラムである。
【図5】 組換え・イー・コリ(E.coli)でのヒアルロナン産生を表示する光マイクログラフを示す。
【図6】 PmHASの構築および発現ベクターへのそのサブクローニングを図で表す。
【図7】 PmHAS活性のpH依存性を示す。
【図8】 HAS活性の金属依存性を示す。
【図9】 UDP−GlcNAc濃度でのHAS依存性を示す。
【図10】 UDP−GlcA濃度でのHAS依存性を示す。
【図11】 VMAXおよびKのハンス−ウルフプロット評価である。
【図12】 Tn突然変異体のサザンブロットマッピングである。
【図13】 Tn破壊部位の配列分析のためのキメラDNAテンプレートを示す。
【図14】 A型P.ムルトシダのヒアルロナン生合成遺伝子座の部分の図表表示である。
【図15】 A型莢膜遺伝子プローブでの種々の莢膜型のP.ムルトシダのサザンブロット分析である。
【図16】 種々のA型プライマーを用いたA型DNAおよび異種DNAのPCRの電気泳動図である。
【図17】 A型(配列番号5)およびF型(配列番号4)KfaA相同体およびイー・コリ(配列番号6)KfaAの部分的配列比較である。
【図18】 野生型HAS遺伝子対ノックアウト変異体遺伝子の概略図である。
【図19】 サザンブロットおよびPCR分析による非莢膜性のノックアウト突然変異体の分子生物学的確認である。
【図20】 A型およびF型P.ムルトシダの配列比較である。図20におけるPmHAS配列は、配列番号7であり、図20におけるPmCS配列は、配列番号8であり、そして図20における共通配列は、配列番号9である。
【図21】 生来の、そして組換えPmHASタンパク質のウエスタンブロット分析である。

Claims (9)

  1. パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)からの酵素的に活性なヒアルロナンシンターゼをコードするコード領域を含む精製核酸セグメントであって、
    (a) 配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸セグメント;
    (b) 配列番号2に示す塩基配列を有する核酸セグメント;及び、
    (c) 配列番号2に示す塩基配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸セグメント
    の少なくとも1つを含む精製核酸セグメント。
  2. プラスミド、コスミド、ファージ、又はウイルスベクターから成る群から選択される組換えベクターであって、請求項1に記載した精製核酸セグメントをさらに含む組換えベクター。
  3. 請求項2に記載した組換えベクターを含む原核細胞である、組換え宿主細胞。
  4. 請求項2に記載した組換えベクターを含む真核細胞である、組換え宿主細胞。
  5. 宿主細胞がヒアルロナンを産生する、請求項3又は4に記載した組換え宿主細胞。
  6. 請求項3から5の何れか1つに記載した組換え宿主細胞を培地で増殖させ、ヒアルロナンを分泌させるステップと;
    分泌されたヒアルロナンを回収するステップと
    を含む、ヒアルロナンを生産するための方法
  7. ヒアルロナンを回収する前記ステップが、分泌されたヒアルロナンを培地から抽出することを含む、請求項に記載した方法
  8. 抽出したヒアルロナンを精製するステップをさらに含む、請求項6又は7に記載した方法。
  9. 酵素的に活性なヒアルロナンシンターゼポリペプチドを含む精製組成物であって、
    (a) 配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチド;
    (b) 配列番号2に示すヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチド;及び、
    (c) 配列番号2に示す塩基配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸セグメントをコードするポリペプチド
    の少なくとも1つを含む精製組成物
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