図1は、本発明の第1の実施の形態に係る商品開発システムを実現するコンピュータ1の構成を示す図である。商品開発システムは、新規な商品の開発に際して様々な局面にて利用されるシステムであり、その動作に着目した場合、互いに関連する2つのシステム(以下、「第1システム」および「第2システム」という。)の組み合わせとして捉えることができる。
第1システムでは、開発すべき商品の仕様(以下、「商品仕様要素」という。)として要求される要求条件の入力に応じて、商品に含まれる複数の部品や材料の仕様(以下、「部品仕様要素」という。)に対して要求される条件が出力される。
第2システムでは、商品の製造に係る複数の製造プロセスの仕様(以下、「プロセス仕様要素」という。)が第1システムにより出力される複数の部品仕様要素に関連づけられており、複数のプロセス仕様要素に要求される要求条件の入力に応じて、商品開発において目標とされる複数の目標要素(商品を製造する設備の仕様、製造プロセスを経る前の各部品の仕様や材料の特性、および、商品の製造に利用される補助部材の仕様等の商品の開発に際して目標となる要素)に対して要求される条件が出力される。
コンピュータ1は各種演算処理を行うCPU11、基本プログラムを記憶するROM12および各種情報を記憶するRAM13をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、情報を記憶する固定ディスク14、画像等の各種情報の表示を行うディスプレイ15、操作者からの入力を受け付けるキーボード16aおよびマウス16b(以下、「入力部16」と総称する。)、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体8から情報の読み取りを行う読取装置17、並びに、インターネット等の通信網に接続された通信部18が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
コンピュータ1には、事前に読取装置17を介して記録媒体8からプログラム141が読み出され、固定ディスク14に記憶される。そして、プログラム141がRAM13にコピーされるとともにCPU11がRAM13内のプログラムに従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、コンピュータ1が商品開発システムとしての動作を行う。また、固定ディスク14には、コンピュータ1による後述の処理の際に利用される入出力構造情報81の集合が格納される。
図2は1つの入出力構造情報81の構造を示す図である。入出力構造情報81には、後述の入力側の要素(以下、「入力要素」という。)を特定するための1つの入力要素ID811、および、出力側の複数の要素(以下、「出力要素」という。)をそれぞれ特定するための複数の出力要素ID812が含まれており、各出力要素ID812には入力要素ID811との組み合わせに応じて予め定められた入出力関係情報813が関連づけられる。ここで、入出力関係情報813とは、入力情報と出力情報との関係を示すテーブルや数式、あるいは、情報の集合であるデータベース等であり、例えば、理論的に求められたり、実験や他の商品の製造データから得られるもの、あるいは、複雑な対応関係や形式的な対応関係を示すテーブル等である。なお、入出力構造情報81に含まれる出力要素ID812の数は1つであってもよい。
図3はコンピュータ1のCPU11がプログラム141に従って動作することにより、CPU11、ROM12、RAM13、固定ディスク14等が実現する商品開発システムの機能構成を示すブロック図であり、処理部2の入出力構造設定部21および入出力構造22は主としてCPU11の演算処理により実現されるものであり、要求条件メモリ23および出力メモリ24はRAM13(固定ディスク14であってもよい。)の一部であり、表示制御部25はCPU11やインターフェイス回路等により実現される機能を示す。なお、処理部2の機能の全部または一部は専用の電気的回路やメモリにより実現されてもよい。
入出力構造設定部21は、固定ディスク14から入出力構造情報81が入力されることにより、入出力の演算を行う入出力構造22の各種パラメータを設定する。入出力構造22は、入出力構造情報81の入力要素ID811が示す入力要素への情報の入力に応じて、各出力要素ID812に関連づけられた入出力関係情報813に基づいて演算を行い、この出力要素ID812が示す出力要素に演算結果を出力するものである。入力要素への入力情報は要求条件メモリ23に記憶され、各出力要素に対する演算結果(出力情報)は出力メモリ24に記憶される。また、表示制御部25は、出力メモリ24に記憶された出力情報を必要に応じてディスプレイ15に表示する。
後述するように、入出力構造22への入力情報は入力要素に要求される要求条件であり、出力情報は入力された要求条件を満たすために出力要素に要求される条件であることから、入出力関係情報813は実質的に所定の評価手法を前提として入力要素の要求条件と出力要素の条件とを明瞭に関係づける情報であるといえる。
図4は商品開発システムによる処理の流れを示す図である。商品開発システムによる処理では、まず、開発対象となる商品および最終的な目標である目標要素に応じた入出力構造情報81の集合が準備される(ステップS11)。なお、以下の説明では、開発すべき商品がビデオゲーム機であり、開発に係る最終的な目標が、ビデオゲーム機の製造設備の仕様、製造プロセスを経る前のビデオゲーム機の各部品の仕様(すなわち、第1システムにより出力された部品仕様要素に対して製造プロセスの仕様を反映した各部品(例えば、実際に組み立てられる部品以外に、ビデオゲーム機の製造時に使用される接着剤や処理液等の材料や製造に利用される補助部材等を含む。)の仕様であり、以下、「拡張部品仕様要素」という。)であるものとする。
図6および図7は、ビデオゲーム機の開発に関する入出力構造情報81に含まれる入力要素ID811および出力要素ID812が示す要素(図6および図7において実線の矩形にて示す。)を示す図であり、図6は第1システムに係る要素を示し、図7は、第2システムに係る要素を示す。図6および図7中では、入力要素と出力要素とが実線にて結ばれて入出力構造を示す。図6と図7とは一連の図であり、図7において図6の一部を重複して示している。
図6に示す第1システムにおいて一点鎖線310にて囲む複数の要素のそれぞれは、ビデオゲーム機が満たすべき仕様を示す商品仕様要素30に関連づけられたビデオゲーム機の機能(ビデオゲーム機が満たすべき仕様を実現するための機能)を示す機能要素31であり、一点鎖線320にて囲む複数の要素のそれぞれは、ビデオゲーム機に含まれる部品の仕様(ビデオゲーム機の機能を実現するための部品の仕様)を示す部品仕様要素32である。
なお、ここでの「仕様」とは「機能」の上位の概念を指しており、例えば、商品の使用環境(屋内)、対象年齢(10歳以上)、接続対象(家庭用テレビジョンシステムの外部入力端子)、インターネット接続の通信プロトコル等を指すが、仕様と機能とは厳密に区別可能である必要はない。ただし、仕様は定量化される必要はないが、機能は数値的に定量化可能であるものとする。また、図6では商品仕様要素30を1つのブロックにて抽象的に図示しているが、各仕様が個別の要素として、あるいは、幾つかの仕様の集合が1つの要素として取り扱われてもよい。
図7に示す第2システムにおいて一点鎖線330にて囲む複数の要素のそれぞれは、ビデオゲーム機の製造プロセスの仕様を示すプロセス仕様要素33であり、各製造プロセスにおいて使用される部品の部品仕様要素32に関連づけられる。一点鎖線340にて囲む複数の要素のそれぞれは、各製造プロセスを実現するための条件を示すプロセス条件要素34であり、一点鎖線350にて囲む複数の要素のそれぞれは、ビデオゲーム機の開発に係る目標要素35である。
図6および図7において、実線にて結ばれた左側の要素が1つの入出力構造22における入力要素であり、右側の少なくとも1つの要素が出力要素である。すなわち、図6に示す商品仕様要素30および商品仕様要素30から矢印にて直接的に関連づけられる少なくとも1つの機能要素31、並びに、1つの機能要素31およびその機能要素31から矢印にて直接的に関連づけられる少なくとも1つの部品仕様要素32が、それぞれ、第1システムにて利用される1つの入出力構造情報81の入力要素ID811が示す入力要素、および、少なくとも1つの出力要素ID812が示す出力要素である。
また、図7に示す1つのプロセス仕様要素33およびそのプロセス仕様要素33から矢印にて直接的に関連づけられる少なくとも1つのプロセス条件要素34、並びに、1つのプロセス条件要素34およびそのプロセス条件要素34から矢印にて直接的に関連づけられる少なくとも1つの目標要素35が、それぞれ、第2システムにて利用される1つの入出力構造情報81の入力要素ID811が示す入力要素、および、少なくとも1つの出力要素ID812が示す出力要素である。さらに、1つの部品仕様要素32およびその部品仕様要素32から矢印にて直接的に関連づけられる少なくとも1つのプロセス仕様要素33が、それぞれ、第1システムと第2システムとを関連づける1つの入出力構造情報81の入力要素ID811が示す入力要素、および、少なくとも1つの出力要素ID812が示す出力要素である。
なお、図6および図7は、実際の入出力要素の配列よりも理解を容易とするために大幅に簡略化したものであり、図6および図7中において直接的に関連づけられている入力要素と出力要素とは、図示省略の他の中間要素を介して間接的に関連づけられる場合もある。例えば、機能要素31を入力要素とし、部品仕様要素32とは異なる中間要素を出力要素とする入出力構造、および、その中間要素を入力要素とし、部品仕様要素32を出力要素とするもう1つの入出力構造が設けられ、機能要素31に要求される要求条件の入力に応じて中間要素に要求される条件が出力され、出力された条件がその中間要素に要求される要求条件としてもう1つの入出力構造に入力された結果、部品仕様要素32に要求される条件が出力される場合もある。また、商品の仕様や製造プロセスによっては、図6中の商品仕様要素30と部品仕様要素32とが機能要素31を介さず直接的に関連づけられる場合もあり、図7中のプロセス仕様要素33と目標要素35とがプロセス条件要素34を介さず直接的に関連づけられる場合もある。
入出力構造情報81の集合が準備されると、入力部16を介して少なくとも1つの商品仕様要素30として要求される要求条件の操作者による入力が第1システムにおいて受け付けられ(ステップS12)、商品仕様要素30に関連づけられて要求条件メモリ23に記憶される。なお、商品仕様要素30に対する要求条件は必ずしも操作者により入力される必要はなく、例えば、通信部18を介して他のコンピュータから取得され入力されてもよい。
商品仕様要素30に要求される全ての要求条件が入力されると、第1システムにおいて、機能要素31に要求される条件の取得が行われる(ステップS13)。図5は、ステップS13、並びに、後述のステップS14〜S17にて行われる各要素に要求される条件の取得に係る入出力処理の流れを示す図である。
図5に示すように、第1システムによる機能要素31に要求される条件の取得では、要求条件が準備されたビデオゲーム機の商品仕様要素30(複数の要素を含む場合には、少なくとも1つの商品仕様要素)が注目要素として設定され(ステップS21)、注目要素を示す入力要素ID811を含む1つの入出力構造情報81が固定ディスク14から読み出されて入出力構造設定部21に入力され、入出力構造22が設定される(ステップS22)。例えば、入力要素ID811に基づいてビデオゲーム機の使用環境を示す商品仕様要素30が入力要素に設定され、出力要素ID812に基づいて使用環境に関連づけられた商品の機能(画質、音声出力特性、発熱量、耐環境性)に係る機能要素31が出力要素に設定され、出力要素ID812に関連づけられた入出力関係情報813が参照可能に準備される。
続いて、要求条件メモリ23に記憶されている商品仕様要素30に対する要求条件が入出力構造22に入力される。そして、1つの出力要素ID812に関連づけられた入出力関係情報813に従って演算が行われ、あるいは、入出力関係情報813が示すテーブルが参照されて求められた結果が、この出力要素ID812が示す機能要素31に関連づけられて出力メモリ24に記憶される。例えば、商品仕様要素30が使用環境であり、機能要素31が画質である場合、使用環境が屋内である旨が要求条件として入出力構造22に入力され、1つの入出力関係情報813が示すテーブルを参照して出力要素である画質の解像度やコントラスト等の仕様に関する条件が特定される。特定された条件は、操作デバイスを示す部品仕様要素32に関連づけられて出力メモリ24に出力される。
また、他の出力要素ID812についても同様に、関連づけられた入出力関係情報813に基づいて演算等が行われ、他の出力要素ID812が示す機能要素31(例えば、音声出力特性)に関連づけて、部品仕様要素32に要求される条件(例えば、最大音量)が出力メモリ24に記憶される(ステップS23)。
1つの商品仕様要素30を入力要素とする入出力構造22による処理が終了すると、次に他の商品仕様要素30が注目要素として設定され、注目要素を示す入力要素ID811を含む入出力構造情報81が入出力構造設定部21に入力されて入出力構造22が設定される(ステップS24,S21,S22)。そして、同様の入出力処理が行われる。例えば、入力要素が対象年齢である場合、対象年齢の範囲(例えば、10歳以上)が要求条件として入出力構造22に入力され、1つの入出力関係情報813が示すテーブルを参照して対象年齢の範囲に基づいて要求される操作安全性レベルが特定される。特定された条件は、操作安全性を示す機能要素31に関連づけられて出力メモリ24に出力され、また、他の出力要素についても、同様に要求される条件が特定されて出力メモリ24に記憶される(ステップS23)。
このようにして、入力要素ID811が商品仕様要素30を示す全ての入出力構造情報81に対してステップS21〜S23が繰り返され、ビデオゲーム機の機能を示す複数の機能要素31に要求される全ての条件が出力されて、各機能について要求される条件が決定される(ステップS24)。
なお、出力要素(機能要素31)に要求される条件の決定においては、複数の入力要素(商品仕様要素30)を含む入出力構造情報81が利用されてもよく、この場合、入出力構造22には複数の商品仕様要素30に要求される要求条件が入力され、少なくとも1つの商品仕様要素30に要求される要求条件に基づいて、少なくとも1つの機能要素31に要求される条件が出力される(以下、同様。)。
機能要素31に要求される全ての条件が取得されると、取得された条件が出力メモリ24から要求条件メモリ23に入力された後、第1システムにおいて、部品仕様要素32に要求される条件の取得が行われる(図4:ステップS14)。上述のように、部品仕様要素32に要求される条件の取得においても、図5に示す入出力処理が行われる。まず、1つの機能要素31が注目要素として設定され、注目要素を入力要素ID811とする入出力構造22が設定される(ステップS21,S22)。例えば、入力要素ID811に基づいて発熱量を示す機能要素31が入力要素に設定され、出力要素ID812に基づいて発熱量に関連づけられた複数の部品(回路基板および電源)の仕様に係る部品仕様要素32が出力要素に設定され、出力要素ID812に関連づけられた入出力関係情報813(ここでは、数式であるものとする。)が参照可能に準備される。
続いて、要求条件メモリ23に記憶されている機能要素31に対する要求条件が入出力構造22に入力される。そして、1つの出力要素ID812に関連づけられた入出力関係情報813に従って演算が行われ、演算結果がこの出力要素ID812が示す部品仕様要素32に関連づけられて出力メモリ24に記憶される。例えば、機能要素31が発熱量であり、部品仕様要素32が回路基板である場合、発熱量に要求される要求条件である発熱量の上限が入出力関係情報813が示す所定の数式に当てはめられて演算が行われ、演算結果である回路基板に要求される条件(例えば、消費電力の上限)が回路基板に関連づけて出力メモリ24に出力される。また、他の出力要素ID812が示す部品仕様要素32(電源)についても、要求される条件(例えば、最大出力)が求められて出力メモリ24に記憶される(ステップS23)。
1つの機能要素31を注目要素とする上記入出力処理(ステップS21〜S23)が終了すると、次に他の機能要素31を入力要素として入出力構造22が設定され(ステップS24,S21,S22)、同様の入出力処理が行われる。例えば、入力要素が操作安全性の機能要素31である場合、操作安全性に対して所定の基準にて予め定められた操作安全性レベルが要求条件として入出力構造22に入力され、1つの入出力関係情報813が示すテーブルを参照して操作安全性レベルから出力要素である操作デバイスの耐衝撃性や形状等の仕様に関する条件が特定される。特定された条件は、操作デバイスを示す部品仕様要素32に関連づけられて出力メモリ24に出力される。他の出力要素である部品仕様要素32(筐体)についても、同様に要求される条件が特定されて出力メモリ24に記憶される(ステップS23)。
このようにして、入力要素ID811が機能要素31を示す全ての入出力構造情報81に対してステップS21〜S23が繰り返され、ビデオゲーム機を構成する複数の部品仕様要素32に要求される条件が出力され、条件に最も適した各部品の仕様(部品の種類や条件等)が第1システムにより最終的に決定される(ステップS24)。なお、入出力構造22からの出力は部品の仕様の集合であってもよく、この場合、1つの部品仕様要素32に出力される部品の仕様の複数の集合の論理積(さらにはランク付け)により商品に最も適した仕様が特定されてもよい。
部品仕様要素32に要求される全ての条件が取得されると、取得された条件が出力メモリ24から要求条件メモリ23に入力された後、第1システムと第2システムを関連づける連結システムにおいて、プロセス仕様要素33(すなわち、商品を製造する製造プロセス)に要求される条件の取得が行われる(図4:ステップS15)。上述のように、プロセス仕様要素33に要求される条件の取得においても図5に示す入出力処理が行われる。まず、1つの部品仕様要素32を入力要素とする入出力構造22が設定される(ステップS21,S22)。例えば、使用ケーブルが入力要素に設定され、組立方法および結線方法が出力要素に設定されて、組立方法および結線方法のそれぞれに関連づけられた入出力関係情報813が参照可能に準備される。
続いて、要求条件メモリ23に記憶されている部品仕様要素32に対する要求条件が入出力構造22に入力され、入出力関係情報813に従って求められたプロセス仕様要素33に要求される条件が出力メモリ24に記憶される。例えば、部品仕様要素32がコネクタであり、プロセス仕様要素33が結線方法である場合、コネクタに要求される要求条件としてコネクタの大きさの上限が入力され、結線方法に要求される条件としてコネクタの種類が求められて出力される。また、他の出力要素である組立方法についても、要求される条件(例えば、コネクタの固定方法)が求められて出力メモリ24に記憶される(ステップS23)。
その後、入力要素ID811が部品仕様要素32を示す全ての入出力構造情報81に対してステップS21〜S23が繰り返され、ビデオゲーム機の製造プロセスに係る複数のプロセス仕様要素33に要求される条件が出力メモリ24に出力される(ステップS24)。出力されたプロセス仕様要素33に要求される条件は、出力メモリ24から要求条件メモリ23に入力される。なお、プロセス仕様要素33に要求される要求条件は、上述の連結システムによる入出力処理により求められるのみならず、必要に応じて、操作者により入力部16から入力されて第2システムにおいて受け付けられてもよい。
プロセス仕様要素33に要求される全ての要求条件が取得されると、第2システムにおいて、プロセス条件要素34に要求される条件の取得が行われる(図4:ステップS16)。プロセス条件要素34に要求される条件の取得においても、図5に示す入出力処理が同様に行われる。まず、1つのプロセス仕様要素33を入力要素とする入出力構造22が設定される(ステップS21,S22)。例えば、結線方法が入力要素に設定され、組立条件および結線条件が出力要素に設定されて、組立条件および結線条件にそれぞれ関連づけられた入出力関係情報813が参照可能に準備される。
続いて、要求条件メモリ23に記憶されているプロセス仕様要素33に対する要求条件が入出力構造22に入力され、入出力関係情報813に従って求められたプロセス条件要素34に要求される条件が出力メモリ24に記憶される。例えば、プロセス仕様要素33が結線方法であり、プロセス条件要素34が結線条件である場合、結線方法に要求される要求条件としてコネクタの種類が入力され、結線条件に要求される条件として結線時における使用ケーブルを差し込む力の上限が求められて出力メモリ24に出力される(ステップS23)。
その後、入力要素ID811がプロセス仕様要素33を示す全ての入出力構造情報81に対してステップS21〜S23が繰り返され、ビデオゲーム機の製造に係る製造プロセスの条件である複数のプロセス条件要素34に要求される条件が出力メモリ24に出力され、条件に最も適した製作精度やプロセス手順等のプロセス条件が決定される(ステップS24)。
プロセス条件要素34に要求される全ての条件が取得されると、取得された条件が出力メモリ24から要求条件メモリ23に入力された後、第2システムにおいて、目標要素35に要求される条件の取得が行われる(図4:ステップS17)。目標要素35に要求される条件の取得においても、図5に示す入出力処理が同様に行われる。まず、1つのプロセス条件要素34を入力要素とする入出力構造22が設定される(ステップS21,S22)。例えば、組立条件が入力要素に設定され、ビデオゲーム機を組み立てる組立設備の仕様、組立設備により組み立てられる前の回路基板、操作デバイス、電源、コネクタ、使用ケーブルおよび筐体、並びに、ビデオゲーム機の組立に用いられる接着剤等(以下、単に「部品」と呼ぶ。)の仕様である拡張部品仕様要素が出力要素に設定されて、それぞれの出力要素に関連づけられた入出力関係情報813が参照可能に準備される。
続いて、要求条件メモリ23に記憶されているプロセス条件要素34に対する要求条件が入出力構造22に入力され、入出力関係情報813に従って求められた目標要素35に要求される条件、すなわち、組立設備の仕様や回路基板や接着剤等に関する仕様である拡張部品仕様要素に要求される条件が各目標要素35に関連づけられて出力メモリ24に出力される(ステップS23)。さらに、結線条件を入力要素とする入出力構造22についても入出力構造情報81の設定が行われ(ステップS24,S21,S22)、ビデオゲーム機の結線を行う結線設備の仕様、並びに、結線設備により結線される前のコネクタおよび使用ケーブルの拡張部品仕様要素である各目標要素35に要求される条件が出力メモリ24に出力される(ステップS23)。
このように、プロセス条件要素34に要求される全ての要求条件の入力に応じて各目標要素35に要求される条件が出力され、出力された条件に最も適した各設備の仕様や各部品の拡張部品仕様が第2システムにより最終的に決定される(ステップS24)。その後、表示制御部25により各設備の仕様、および、拡張部品仕様が出力メモリ24から読み出されてディスプレイ15に表示され(図4:ステップS18)、この仕様に合わせて開発が進められることにより、所望の機能を満足するビデオゲーム機の製造が実現される。
なお、上述のように、第1システムの機能要素31が省略されて商品仕様要素30と部品仕様要素32とが直接的に関連づけられる場合には、図4中のステップS13が省略され、入力要素を商品仕様要素30とし、出力要素を部品仕様要素32として図5のステップS21〜S24に示す入出力処理が行われる。また、第2システムのプロセス条件要素34が省略される場合には、図4中のステップS16が省略され、入力要素をプロセス仕様要素33とし、出力要素を目標要素35として同様の入出力処理が行われる。
一方、第1システムおよび第2システムの各要素は、中間要素を介して間接的に関連づけられている場合もあり、例えば、第1システムにおいて、商品仕様要素30と機能要素31との間に1つ以上の中間要素が介在する場合、商品仕様要素30と中間要素とを関連づける入出力構造群において図5のステップS21〜S24に示す入出力処理が行われた後、(2以上の中間要素が介在する場合には、中間要素と他の中間要素とを関連づける入出力構造群において同様の入出力処理が繰り返され、その後、機能要素31に直接的に関連づけられる)中間要素と機能要素31とを関連づける入出力構造群において同様の入出力処理が行われる。機能要素31と部品仕様要素32との間、プロセス仕様要素33とプロセス条件要素34との間、あるいは、プロセス条件要素34と目標要素35との間に中間要素が介在する場合も同様の入出力処理が行われる。
以上のように、コンピュータ1では、入出力構造情報81が処理部2に順次入力されることにより、少なくとも1つの商品仕様要素30と複数の部品仕様要素32とを直接または間接的に関連づけた入出力構造群(すなわち、商品の仕様に係る入出力構造群)である第1システムが構築され、また、複数のプロセス仕様要素33と複数の目標要素35とを直接または間接的に関連づけた入出力構造群(すなわち、商品の製造プロセスに係る入出力構造群)である第2システムが構築され、さらに、第2システムのプロセス仕様要素33を第1システムの部品仕様要素32に関連づける入出力構造群が構築される。
このため、開発する商品の仕様と商品を構成する部品の仕様との関係、さらに、部品の仕様に関連する製造プロセスの仕様と目標となる条件(商品を製造する設備の仕様、および、部品の拡張部品仕様)との関係を明確化し、商品開発における開発時間の短縮や、寸法精度割付等の設計条件の最適化、さらに設計後の不具合に対する原因究明の迅速化を実現し、商品開発の効率化が実現される。
また、第2システムにおいて複数のプロセス仕様要素33と複数のプロセス条件要素34とが直接または間接的に関連づけられ、さらに、複数のプロセス条件要素34と複数の目標要素35とが直接または間接的に関連づけられているため、製造プロセスの仕様と目標となる条件との関係を、製造プロセスの条件を介して的確に把握することができる。これにより、製造工程設計の時間短縮、製造条件の最適化、および、製造時の不具合に対する原因究明の迅速化も実現される。
そして、このような商品開発システムを利用することにより完成度の高い商品設計やプロセス設計が可能となり、開発した商品の製造開始時であっても製造歩留まりを高くすることができる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る商品開発システムについて説明する。第2の実施の形態に係る商品開発システムは、図1に示す構成と同様の構成を有するコンピュータにより実現され、第1の実施の形態に係る商品開発システムと同様に、新規な商品の開発に際して様々な局面にて利用されるシステムである。以下、第2の実施の形態に係るコンピュータおよびその構成について、第1の実施の形態と同様のものには図1と同符号を付す。第2の実施の形態に係る商品開発システムは、第1の実施の形態に係る商品開発システムの第1システムおよび第2システムを備え、さらに、第2システムの目標要素35に含まれる複数の拡張部品仕様要素のそれぞれに関連づけられる複数の第3システム、および、各第3システムに関連づけられる第4システムを備える。
第3システムおよび第4システムはそれぞれ、第1システムおよび第2システムと同様の機能を有し、第3システムは、第2システムにより決定される目標要素35のうちの複数の拡張部品仕様要素のいずれかを商品仕様要素とする第1システムと同様の入出力構造群を有するシステムであり、第4システムは、第3システムにより出力される複数の部品仕様要素に関連づけられた第2システムと同様の入出力構造群を有するシステムである。
以下、第2の実施の形態に係る商品開発システムによる処理について、開発すべき商品がビデオゲーム機であるものとして説明する。なお、第1の実施の形態に係る商品開発システムと重複する部分については説明を簡略化する。
図8は、ビデオゲーム機の開発に関する入出力構造情報81に含まれる入力要素ID811および出力要素ID812が示す要素(図8において実線の矩形にて示す。)の一部を示す図である。図8では、図7に示す第2システムに係る目標要素35に含まれる回路基板の拡張部品仕様(以下、拡張部品仕様要素を他の目標要素35と区別するために「拡張部品仕様要素35a」という。)を、第1システムの商品仕様要素30に相当する要素とする第3システム、および、第3システムに関連づけられる第4システムに係る複数の要素を示す。図8中では、図6および図7と同様に、入力要素と出力要素とが実線にて結ばれて入出力構造を示す。
図8では、二点鎖線360にて囲む入出力構造群が第3システムを示し、二点鎖線370にて囲む入出力構造群が第4システムを示す。第3システムにおいて一点鎖線310にて囲む複数の要素のそれぞれは、拡張部品仕様要素35aに関連づけられた回路基板の機能を示す機能要素351であり、一点鎖線320にて囲む複数の要素のそれぞれは、回路基板に含まれる部品の仕様を示す部品仕様要素352である。また、第4システムにおいて一点鎖線330にて囲む複数の要素のそれぞれは、回路基板の製造プロセスの仕様を示すプロセス仕様要素353であり、各製造プロセスにおいて使用される部品の部品仕様要素352に関連づけられる。一点鎖線340にて囲む複数の要素のそれぞれは、各製造プロセスを実現するための条件を示すプロセス条件要素354であり、一点鎖線350にて囲む複数の要素のそれぞれは、回路基板の開発に係る目標要素355である。なお、図8は、実際の入出力要素の配列よりも理解を容易とするために大幅に簡略化したものである。
第2の実施の形態に係る商品開発システムでは、まず、ビデオゲーム機の開発に係る入出力構造情報81の集合が準備された後(図4:ステップS11)、第1システムにおいてビデオゲーム機の商品仕様要素30(図6参照)への要求条件が受け付けられ(ステップS12)、ビデオゲーム機の機能要素31に要求される条件が取得される(ステップS13)。続いて、機能要素31に要求される要求条件の入力に応じて、ビデオゲーム機を構成する複数の部品の仕様を示す部品仕様要素32のそれぞれに要求される条件が取得される(ステップS14)。
次に、連結システムにおいて、部品仕様要素32に要求される要求条件の入力に応じて、ビデオゲーム機の製造プロセスに係るプロセス仕様要素33(図7参照)に要求される条件が取得される(ステップS15)。このとき、プロセス仕様要素33に要求される要求条件は、必要に応じて、操作者により入力部16から入力されて第2システムにおいて受け付けられてもよい。
さらに、第2システムにおいて、プロセス仕様要素33に要求される要求条件の入力に応じて、プロセス条件要素34に要求される条件が取得される(ステップS16)。そして、プロセス条件要素34に要求される要求条件の入力に応じて、目標要素35であるビデオゲーム機の各製造設備の仕様や各部品の拡張部品仕様として要求される条件が取得される(ステップS17)。
第1システムおよび第2システムによりビデオゲーム機の目標要素35に要求される条件が取得されると、各部品の拡張部品仕様要素35aに関連づけられる第3システムおよび第4システムによる処理が順次行われる。第3システムおよび第4システムによる処理の流れは、図4に示すステップS12〜S17と同様(ただし、ステップS12における商品仕様要素の代わりに拡張部品仕様要素が用いられる。)であり、以下、ビデオゲーム機の回路基板を例にとって説明する。まず、第2システムにより取得された回路基板に要求される条件が出力メモリ24から要求条件メモリ23に入力され、第3システムにより受け付けられる(ステップS12)。このとき、拡張部品仕様要素35aである回路基板に要求される要求条件の一部は、必要に応じて、操作者により入力部16から入力されて第3システムにおいて受け付けられてもよい。
続いて、拡張部品仕様要素35aに要求される要求条件の入力に応じて、回路基板の機能を示す複数の機能要素351(回路基板の大きさ、発熱量および耐環境性)に要求される条件が取得される(ステップS13)。次に、機能要素351に要求される要求条件の入力に応じて、回路基板を構成する複数の部品の仕様を示す部品仕様要素352(プリント基板およびチップ)のそれぞれに要求される条件が取得される(ステップS14)。
回路基板の部品仕様要素352に要求される全ての条件が取得されると、第3システムと第4システムとを関連づける連結システムにおいて、部品仕様要素352に要求される要求条件の入力に応じて、回路基板の製造プロセスに係るプロセス仕様要素353(実装方法、チップ配列方法)に要求される条件が取得される(ステップS15)。例えば、部品仕様要素352に要求される要求条件として実装されるチップの種類やプリント基板の材質等が入力され、実装方法に要求される条件として、異方導電性樹脂フィルム(ACF(Anisotropic Conductive Film))を介してチップをプリント基板に押圧しつつ加熱することにより実装する実装方法が取得される。また、プロセス仕様要素353に要求される要求条件の一部は、操作者により必要に応じて入力されて第4システムにおいて受け付けられてもよい。
続いて、第4システムにおいて、プロセス仕様要素353に要求される要求条件の入力に応じて、プロセス条件要素354(実装時の加熱条件、加圧条件および実装順序)に要求される条件が取得される(ステップS16)。例えば、プロセス仕様要素353に要求される要求条件としてACFを用いた実装方法が入力され、加熱条件に要求される条件として実装時の加熱温度の上限値が取得される。
そして、プロセス条件要素354に要求される要求条件の入力に応じて、目標要素355である回路基板の実装設備の仕様、並びに、プリント基板、チップ、および実装プロセスにて利用される接合部材(ACF)等の拡張部品仕様として要求される条件が取得される(ステップS17)。
以下、第2システムにより出力される各拡張部品仕様要素について、それぞれに関連づけられる第3システムおよび第4システムによる上記処理(ステップS12〜S17)が順次繰り返され、各設備の仕様、および、各部品の拡張部品仕様が決定された後、表示制御部25によりこれらの仕様が出力メモリ24から読み出されてディスプレイ15に表示され(ステップS18)、これらの仕様に合わせて開発が進められることにより、所望の機能を満足するビデオゲーム機の製造が実現される。
第2の実施の形態に係る商品開発システムでは、商品の開発に係る各要素、および、各要素を関連づける第1〜第4システムが、表示制御部25により様々な表現形式にてディスプレイ15に表示される。
図9は、ディスプレイ15の画面表示の一例を示す図であり、第3システムにおける拡張部品仕様要素と、第1システムにおいて拡張部品仕様要素に対応する部品仕様要素32とを対応づけて第1システムおよび第3システムが表示される画面表示151を示す。画面表示151では、商品仕様要素30と商品を構成する部品仕様要素32とが機能要素31を介して関連づけられ、さらに、各部品仕様要素32と各部品を構成する部品仕様要素352とが機能要素351を介して関連づけて表示される。このような画面表示151(を出力したもの)を商品の開発に係る者が検討することにより、商品の開発における諸条件を商品を構成する部品に重点をおいて把握することができる。
図10は、ディスプレイ15に表示される画面表示の他の例を示す図であり、第2システムおよび第4システムが製造プロセスの順序に従いつつ表示される画面表示152を示す。画面表示152では、商品仕様要素30と商品の製造プロセスに係る目標要素35(商品を製造する製造設備の仕様、および、商品の製造に用いられる部品の拡張部品仕様)とが、プロセス仕様要素33およびプロセス条件要素34を介して関連づけられ、さらに、目標要素35に含まれる各拡張部品仕様要素35aと各部品の製造プロセスに係る目標要素355(各部品を製造する製造設備の仕様、および、各部品の製造に用いられる部品の拡張部品仕様)とが、プロセス仕様要素353およびプロセス条件要素354を介して関連づけられる。このような画面表示152(を出力したもの)を商品の開発に係る者が検討することにより、商品の開発における諸条件を商品の製造プロセスに重点をおいて把握することができる。
以上のように、コンピュータ1では、商品の仕様に係る入出力構造群である第1システム、および、商品の製造プロセスに係る入出力構造群である第2システムに加えて、第2システムにより求められた各部品の拡張部品仕様に係る入出力構造群である第3システム、および、各部品の製造プロセスに係る入出力構造群である第4システムが構築されるため、商品の仕様設計に係る条件と製造プロセスに係る条件との関係をより詳細に明確化し、商品開発の効率化が実現される。そして、このような商品開発システムを利用することにより完成度の高い商品設計やプロセス設計が可能となり、開発した商品の製造開始時であっても製造歩留まりを高くすることができる。また、設計時や製造時の不具合の原因究明も、より詳細に行うことができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
上記実施の形態では、開発対象の商品がビデオゲーム機である場合について説明してきたが、商品開発システムは、他の様々な商品の開発に際しても利用可能である。例えば、開発対象の商品がプラスチック製品である場合には、第1システムにおいて、プラスチック製品の商品仕様要素30に要求される要求条件の入力に応じて耐久性等の機能要素31に要求される条件が出力され、機能要素31に要求される要求条件に基づいてプラスチック製品を形成する材料を示す部品仕様要素32に要求される条件(例えば、材料の種類を示す型番)が出力される。そして、第2システムにおいて、プラスチック製品を形成する形成プロセスのプロセス仕様要素33に入力される要求条件に基づいて、プラスチック製品の形成プロセスにて利用される金型の仕様等を示す目標要素35に要求される条件が最終的に出力される。
入出力構造情報81には入出力関係情報813が出力要素ID812に関連づけられ、入出力構造22は実質的にテーブルや数式、データベース等の入出力の関係を示す情報の集合を有するが、1つの出力要素ID812に1つの入出力関係情報813が関連づけられる必要はなく、例えば、複数の出力要素ID812に1つの入出力関係情報813が関連づけられることにより、1つの入出力関係情報813から複数の出力要素に要求される条件が求められてもよい。
商品開発システムでは、開発する商品の仕様と商品を構成する部品の仕様との関係、さらに、部品の仕様に関連する製造プロセスの仕様と目標となる条件との関係をさらに明確化するために、商品の部品を構成する下位部品の仕様および製造プロセスに係る第1システムおよび第2システムと同様の構造を備える複数の入出力構造群がさらに設けられ、第4システムの目標要素355に関連づけられてもよく、さらに下位の部品についてこれらのシステムが繰り返し設けられてもよい。