JP4487046B2 - 脂質含量の高い真核微生物及び該微生物を用いた脂質の製造方法 - Google Patents

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本発明は、高い脂質含量を有する真核微生物、及びこれを用いた脂質の製造方法に関するものである。
酵母サッカロミセス・セレビシェは、遺伝子工学技術が確立され、全ゲノム配列も決定されているなどの利点から、遺伝子組み換え技術を利用した物質生産の宿主として盛んに用いられている。また、古来より醸造に用いられるなど産業上重要な微生物であり、菌体そのものも栄養価のあるものとして食用できるものである。
中性脂質は、食用や工業用に様々な用途があり、産業上の供給源としては、植物種子中に含まれるものが主なものである。含まれる脂肪酸の種類によって、生理活性、物性なども異なっており、異なった用途に用いられている。このうち、生理活性をもつ高度不飽和脂肪酸の多くは通常の植物油には含まれず、その生産手段が限られているため、それらの高度不飽和脂肪酸を生産する微生物、藻類などの探索が行われてきた。近年は、さらにこれらの生物由来の高度不飽和脂肪酸の合成酵素である不飽和化酵素、鎖長延長酵素の遺伝子の同定が進み、それらの遺伝子を利用して、高度不飽和脂肪酸を生産させる試みもなされている。
高度不飽和脂肪酸の合成酵素遺伝子を発現させる宿主としては、植物そのものも試みられているが、多細胞生物ゆえに高度不飽和脂肪酸を効率よく生産させることは現時点ではむずかしい。これに対して、単細胞の真核生物であり、遺伝子レベルでの情報も豊富な酵母サッカロミセス・セレビシェは、容易に遺伝子を導入することができることから、合成酵素遺伝子の反応を検出するための宿主として、頻繁に用いられている。
しかしながら、この酵母は、その菌体成分のうち、脂質の占める割合は5%程度で、他の脂質蓄積微生物や植物種子油に比べて、生産性は低いために、遺伝子組み換え技術などを用いて、脂質を生産させることは実用的ではない状況である。これまで、培養条件等の改良によってトリアシルグリセロール(トリグリセリド)の含量を増加させる報告があるが(非特許文献1参照)、大きな増加は見られていない。また、培養中に脂肪酸を加えてこれらを取り込ませることによって、酵母の脂質含量を増加させることも報告されているが(非特許文献2参照)、脂肪酸を加えることにより培養コストは増加してしまう。
これまでに、カロチノイド(非特許文献3,特許文献1参照)、スクアレン(特許文献2,3参照)、エルゴステロール(特許文献4参照)などの脂質を遺伝子レベルの改変によって酵母に生産させた報告があるが、トリアシルグリセロールを主とした貯蔵中性脂質の増加を遺伝子レベルの改変によって、行った報告は少ない。また、トリアシルグリセロールの合成酵素であるジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ、リン脂質:ジアシルグリセロールトランスアシラーゼについては、出芽酵母においても遺伝子が同定され、それらの遺伝子の過剰発現も報告されており(非特許文献4、5参照)、トリアシルグリセロールなどの中性脂質の含量の多少の増加は見られるが、充分なものとはいえない。
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本発明の課題は、真核微生物、特に、酵母サッカロミセス・セレビシェの特定の遺伝子の変異させることにより、トリアシルグリセロールなどの脂質を高含量で含む菌株を取得し、及びこれを用いて脂質を製造する点にある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、トランスポゾンを挿入させた変異ライブラリーを用いて、酵母サッカロミセス・セレビシェを変異させて、リピッドボディの形態及び脂質の蓄積量などを指標にして変異株をスクリーニングした後、その変異株のトランスポゾン挿入位置の同定により変異遺伝子を決定した。さらに、酵母のそれらの遺伝子の破壊株を作成し、これらの遺伝子破壊株において、トリアシルグリセロールなどの脂質含量が増加していることを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下のとおりである。
(1) サッカロミセス・セレビシェのIRA2遺伝子、PRE9遺伝子、SNF2遺伝子、SPT21遺伝子、PHO90遺伝子の一種以上が、破壊または機能低下しているサッカロミセス・セレビシェの変異株を培地に培養し、培養菌体から脂質を採取することを特徴とする、脂質の製造方法。
(2) 遺伝子の破壊が、栄養要求性を相補するマーカー遺伝子の挿入によるものであることを特徴とする、上記(1)に記載の製造方法。
(3) マーカー遺伝子がHIS3、URA3またはLEU2遺伝子であることを特徴とする、上記(2)に記載の製造方法。
(4) 窒素源欠乏培地で培養することを特徴とする、上記(3)に記載の製造方法。
本発明は、サッカロミセス・セレビシェをはじめとする真核微生物において、高い脂質含量を有する変異株を創出するものであり、該変異株を使用することにより脂質生産を効率よく行うことができる。また、真核微生物には、サッカロミセス セレビシェ等にみられるように従来から醸造食品等の生産に用いられる微生物も多く、この点からも安全な脂質生産手段として有望である。さらに、例えばサッカロミセス・セレビシェでの変異株の創出には、サッカロミセス・セレビシェそのもののマーカー遺伝子を利用することができるので、この場合には異種のDNAは導入されておらず、菌体そのものを利用する際には遺伝子組み換え体とは見なされない点も、その利用形態を広げるものである。
本発明において、菌体中の脂質含量を増大させるために変異を導入する遺伝子の決定は、トランスポゾンを挿入させた変異ライブラリーを用いて、酵母サッカロミセス・セレビシェを変異させて、リピッドボディの形態及び脂質の蓄積量を指標にして変異株をスクリーニングし、さらにスクリーニングされた変異株においてトランスポゾンのゲノム遺伝子上の挿入位置を同定するとともに、 実際に酵母サッカロミセス・セレビシェにおいて、該トランスポゾン挿入位置の遺伝子を破壊し、これにより脂質含量が増大することを確認して決定したものである。これにより決定された遺伝子は、酵母サッカロミセス・セレビシェIRA2 遺伝子(YOL081w, ras GTPase activator)、PRE9 遺伝子(YGR135w, proteasome endopeptidase)、SNF2遺伝子(YOR290c, RNA polymerase II transcription factor)、SPT21遺伝子(YMR179w, regulator of transcription of Pol II promoter)、PHO90遺伝子(YJL198w, phosphate transporter)の5種である。
本発明の変異株は、これらのうちの一つの遺伝子を変異したものでもよいし、さらに2つ以上の遺伝子を変異させたものでもよい。また、本発明においては、サッカロミセス・セレビシェ以外の真核微生物、例えば、 糸状菌等の真核微生物における、上記5種の遺伝子とそれぞれ相同性があり、かつ同一機能を有する遺伝子を一種以上変異させてもよい。
本明細書にいう変異とは、上記5種の遺伝子あるいはこれらと相同性を有する遺伝子を破壊あるいは変異させて、その機能を欠失または低下させることをいう。したがって、変異株とはこれら遺伝子の機能が完全に欠失した菌株のみならず、遺伝子の機能が低下している菌株も含む。
本発明において、該遺伝子の変異株を取得する方法は、例えば後述の実施例にあげたようなNucleic Acids Res. 26, 860 (1998) に記載されている方法等によって行うことができる。この方法は、HIS3, URA3などのマーカー遺伝子の両端に、該遺伝子の上流、下流それぞれ200〜300bp領域をもつようなDNA断片を、PCR、ライゲーションなどを組み合わせて作成し、このDNA断片を用いて出芽酵母を形質転換することにより、このDNA断片が該遺伝子上流部分と下流部分で相同組み換えを起こし、該遺伝子の中心部分がマーカー遺伝子で置き換えられて、該遺伝子を破壊する方法である。
しかし、その他の方法でも該遺伝子の機能を欠失あるいは低下させることができるのであれば、使用可能である。これらには、該遺伝子を単離したのち、適当な制限酵素で切断し、そこにマーカー遺伝子を挿入して得た断片で形質転換を行う方法、マーカー遺伝子を該遺伝子の一部を含むような長いプライマーを用いたPCRで増幅し、形質転換を行う方法、あるいは突然変異剤などによりランダムに変異を起こさせて、該遺伝子が変異したものをスクリーニングする方法等がある。
遺伝子破壊の際に、変異対象の遺伝子に挿入する遺伝子としては、遺伝子が破壊された変異株を選別するのための、マーカーとなる遺伝子を用いるのがよい。これらには抗生物質耐性遺伝子、栄養要求性変異を相補する(その栄養源を必要としなくなる)遺伝子などが挙げられるが、サッカロミセス・セレビシェの栄養要求性変異を相補する遺伝子を用いれば、異種のDNAを含ない変異体を創出することができる。栄養要求性を相補する遺伝子としては、例えば、HIS3、URA3、LEU2が挙げられる。HIS3は、ヒスチジン要求性変異を相補する遺伝子で、ヒスチジン合成に必要なイミダゾールグリセロールリン酸デヒドラターゼをコードする。URA3は、ウラシル要求性変異を相補する遺伝子で、ウラシル合成に必要なオロチジン5‘リン酸デカルボキシラーゼをコードする。LEU2は、ロイシン要求性変異を相補する遺伝子で、ロイシン合成に必要な3−イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素をコードする。
本発明においては、上記4種の遺伝子あるいはこれと相同性を有する遺伝子が破壊あるいは機能低下した変異株を培養するための培地として、例えば後述の実施例に挙げたようなSD培地(グルコースを炭素源とし、イーストナイトロジェンベースを窒素源とし、要求アミノ酸を加えた)を用いることができるが、培地の炭素源、窒素源の種類、培養温度、培養時間などについては、脂質含量が高くなるのに最適な条件を適宜選択することができる。これらの条件としては、培地の窒素源の量が重要で、変異株の生育可能な範囲で窒素源欠乏培地を使用すれば変異株中の脂質含量を向上させることができる。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
〔実施例1〕
脂質含量を高める変異遺伝子の同定
酵母サッカロミセス・セレビシェにトランスポゾンを用いた挿入ライブラリーを作用させて突然変異株を作成した。mTn-lacZ/LEU2トランスポゾン(Seifert, H.S. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83, 735 (1986))を用いて作成されたライブラリー(Burns, N. et al. Genes Dev. 8, 1087 (1994))は、Yale Genome Analysis Centerより分与をうけた。このライブラリーをNotIで切断後、Gietz, D. et al. Nucleic Acids Res. 20, 1425 (1992) に記載された方法を用いて酵母サッカロミセス・セレビシェD451-3a株(MATa leu2-3 leu2-114 ura3 can1)(Hosaka, K. et al. J. Bacteriol. 172, 2005 (1990))を形質転換した。すなわち、100μl のこの株のコンピテントセルあたり10μl (100mg)のサーモンテスティスDNA、ライブラリー0.3μgを加えて、ロイシンを含まない選択培地で増殖してきたコロニーをmTn-lacZ/LEU2トランスポゾンが挿入された酵母変異株として集菌した。
mTn-lacZ/LEU2トランスポゾン挿入された酵母変異株は、パーコール(アマシャムバイオサイエンス)を含む10 mM リン酸バッファー(pH 7.0), 0.15M KCl中に懸濁し、30000gで1時間超遠心を行い、密度勾配によって酵母を分離した。脂質が増加している変異株では密度が軽くなることを想定し、大多数の酵母細胞が存在するバンドよりも密度が軽い部分を分取し、ロイシンを含まないSD選択培地(20g/lグルコース、6.7g/l yeast nitorgen base w/o amino acids、20μg/ml ウラシル、20g/l寒天)で増殖してきたコロニーについてスクリーニングを行った。
スクリーニングは、コロニーを窒素源欠乏培地(20g/lグルコース、1.7g/l yeast nitorgen base w/o amino acids and ammonium sulphate、0.1gあるいは1g/lの硫酸アンモニウム、20μg/ml ウラシル)中で30℃、3日培養したものを顕微鏡観察あるいは脂質量の分析により行った。顕微鏡観察は、菌体を0.5μg/mlナイルレッドを含む10 mM リン酸緩衝液(pH 7.0), 0.15M KClで30℃1分染色した後、10 mM リン酸緩衝液(pH 7.0), 0.15M KClで2回洗浄し、共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss)で観察した。脂質の蓄積部位であるリピッドボディ(リピッドパーティクル)はナイルレッドで染色されて蛍光を発するため、その量が野生株に比べて多いあるいは形態が大きくなっているような株(リピッドボディ形成変異株)(lbf (lipid body formation) 変異株)をスクリーニングした。
このようにして選抜されたコロニーについて、さらにトリアシルグリセロール量によるスクリーニングを行った。コロニーを上記と同様に培養後、菌体に3mlクロロホルム/メタノール(1:2)を加えて室温で1時間程度放置し、脂質を抽出させた後、さらに1mlクロロホルム、1ml水を加えて二相分配し、下層のクロロホルム層に回収されるものを総脂質とした。この総脂質を濃縮し、シリカゲルG薄層クロマトグラフィー(メルク)にアプライして、クロロホルム/アセトン/メタノール/酢酸/水(50:20:10:10:5)で8cm展開して後、乾燥させヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(80:40:1)で先端まで展開した。乾燥後、2%硫酸銅を含む13%硫酸溶液をプレートに噴霧し、110℃で1時間加熱して、脂質のスポットを黒化させて検出した。その結果、野生株に比べてトリアシルグリセロール、ステロールエステルなどの貯蔵脂質が有意に増加しているものをスクリーニングした。
得られた酵母変異株 (lbf1−5)について、挿入部位の遺伝子の同定は、Seifert, H.S. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83, 735 (1986)らに記載されたようにして行った。酵母変異株に挿入されたmTn-lacZ/LEU2トランスポゾンと一部相同性をもつpRSQ2-URA3プラスミド(Yale Genome Analysis Centerより分与)で変異株を形質転換し、酵母のトランスポゾン挿入部位に大腸菌の複製開始点(ori)、アンピシリン耐性遺伝子をもつpRSQ2-URA3プラスミドを挿入させた。形質転換は、酵母形質転換キット(S.c. EasyComp Transformation kit、Invitrogen社製)を用いた。
ウラシル、ロイシンを含まないSD選択培地(20g/lグルコース、6.7g/l yeast nitorgen base w/o amino acids、20g/l寒天)で増殖するコロニーを形質転換株とした。これらの形質転換株をYPD培地(2%グルコース、1%酵母エキス、2%ポリペプトン)で30℃、1夜培養し、菌体よりゲノムDNAを抽出キット(Genとるくん、タカラ社製)を用いて抽出した。得られたゲノムDNAを制限酵素400U EcoRI (ニッポンジーン社製)により37℃、overnight反応させて切断し、得られたDNA断片を、ライゲーションキット(20000U T4 DNA ライゲース、ニッポンジーン社製)で16℃16時間反応させた。
導入されたori領域、アンピシリン耐性遺伝子を含むトランスポゾン挿入部位とその5‘側の酵母ゲノムDNAを含む断片がライゲーションにより環状プラスミドとなると、大腸菌の形質転換の際に、アンピシリン耐性の選択培地で増幅させることができる。大腸菌の形質転換は、JM109(ニッポンジーン社製)のコンピテントセルを用いて行った。アンピシリン耐性の形質転換株より、上記組成のプラスミドをプラスミド抽出キット(キアゲン社製)により精製した。精製したプラスミドの塩基配列は、シークエンシングプライマーとして、LacZdeltaプライマー(5’-CTGCAAGGCGATTAAGTTGG-3‘)を用い、Cy5.5ダイターミネーターサイクルシークエンシングキット(ベリタス社製)により決定した。プラスミドの塩基配列の決定により、トランスポゾン挿入部位の5’側の酵母ゲノム配列が明らかになり、出芽酵母の全ゲノム配列のデータベースを参照することによって、挿入部位を決定した。その結果は表1のとおりである。
〔実施例2〕
変異遺伝子の破壊による脂質含量の高い酵母変異株の作成
酵母サッカロミセス・セレビシェのYPH499株(MATa ura3-52 lys2-801 ade2-101 trp1-Δ63 his3-Δ200 leu2-Δ1、ATCC76625 )を用い、該変異遺伝子の破壊株を作成した。
遺伝子の破壊は、Nikawa, J. and Kawabata, M. Nucleic Acids Res. 26, 860-861 (1998)に記載されたPCRを用いた方法に基づいて行った。
5つの遺伝子の破壊に用いたプライマーは以下の表2のとおりである。
まず、酵母サッカロミセス・セレビシェのゲノムDNAより、5つの遺伝子の上流側200-300bp及び下流側200-300bpをPCRにより増幅するように、プライマー1,2,3,4を設計した。すなわち、プライマー1と2により上流側の遺伝子断片を増幅し、プライマー3,4により下流側の遺伝子断片を増幅した。この時のPCRの増幅条件は、1 unit Taq polymerase (タカラ社製)、0.2 mM dNTP mixture、0.5μM プライマー(1,2の組み合わせあるいは3,4の組み合わせ)、10ng ゲノムDNAを2 mM MgCl2を含む添付のバッファー中で反応させた(全反応液20ml)。増幅条件は、95℃で3分間反応させた後、95℃x30秒/55℃x30秒/72℃x1分を1サイクルとして25回繰り返すことで行った。
反応後は、サンプルをアガロース電気泳動にかけ、染色後、紫外線照射して予定の位置にバンドが現れることを確認した(以後も同様)。この遺伝子断片は、Taq polymeraseを用いるためにA残基が1つ余計に付加されているので、これに栄養要求性を相補するマーカー遺伝子として、HIS3, URA3の3‘末端にTが付加された遺伝子断片とライゲーションを行った。HIS3, URA3の3‘末端にTが付加されたものは、pT-URA3、pT-HIS3プラスミド(九州工業大学仁川研究室より分与)を制限酵素5U Eam1105I(タカラ社製)で切断して作成した。
ライゲーションは、T4-ligaseを用いたライゲーションキット(ニッポンジーン社製)で16℃、90分反応させた。得られた反応液は、そのままプライマー1とマーカー遺伝子のプライマー2あるいはマーカー遺伝子のプライマー1とプライマー4の組み合わせによりPCRを行い、各遺伝子の上流断片とマーカー遺伝子あるいはマーカー遺伝子と各遺伝子の下流断片が融合したDNA断片をPCRにて増幅した。増幅条件は、上記のPCRと同様であるが、伸長時間を72℃x2分とした。得られた増幅断片は、アガロース電気泳動で分離した後、切り出し、ゲルからのDNA抽出キット(キアゲン社製)を用いて精製した。各遺伝子について得られた2つのDNA断片を、共通するマーカー遺伝子部分によりアニーリングさせた。アニーリングは、94℃10分後、60分の間に37℃まで直線的に温度を低下させ、さらに37℃で10分培養した。
この時の反応液の組成は、その後PCR反応を行うために、同量の2つのDNA断片に、0.2mM dNTP mixture, Taq反応バッファーを加えた。アニーリング後、1 unit Taq polymerase (タカラ社製)、0.5μMプライマー(1,4の組み合わせ)を加え、伸長時間を72℃x2分とした以外は上記と同様の条件でPCRを行った。
このようにして得られたDNA断片は、マーカー遺伝子の両端に破壊したい遺伝子の上流部分と下流部分をもち、酵母を形質転換すると、相同性組み換えにより、標的の遺伝子部分と置き換わって、その遺伝子の機能を欠失させる。 形質転換は、YPH499株に酵母形質転換キット(S.c. EasyComp Transformation kit、Invitrogen社製)を用いて行った。遺伝子破壊の確認は、遺伝子破壊された領域より外側に設計したプライマー5,6を用いたPCRにより、野生株で増幅されるDNA断片と異なり、作成したマーカー遺伝子を含むDNA断片から予測される大きさが増幅されることにより確認した。なお、最初の遺伝子破壊はHIS3を含むDNA断片により行い、得られた破壊株を用いてさらに二重変異株を取得する場合は、URA3を含むDNA断片により行った。
得られた変異株は、SD培地(20g/lグルコース、1.7g/l yeast nitorgen base w/o amino acids and ammonium suflate、5g/l ammonium sulfate, 60μg/mlロイシン、20μg/mlウラシル、40μg/mlアデニン、40μg/mlトリプトファン、30μg/mlリジン、20μg/mlヒスチジン)あるいはSD窒素欠乏培地(20g/lグルコース、1.7g/l yeast nitorgen base w/o amino acids and ammonium sulfate、0.1g/l ammonium sulfate, 60μg/mlロイシン、20μg/mlウラシル、40μg/mlアデニン、40μg/mlトリプトファン、30μg/mlリジン、20μg/mlヒスチジン)中で30℃、120rpmのロータリーシェーカーで培養した。
充分に定常期に達した菌体(4日培養)について、乾燥重量、全脂肪酸量を測定した。乾燥重量は、菌体を遠心分離によりペレットにしたものを105℃で3時間加熱した後、その重量を測定した。全脂肪酸量は、上記のように乾燥した菌体に1 ml 10%塩酸メタノール、0.5 mlジクロロメタンを加えて60℃で3時間反応させた後、内部標準として250 nmol heptadecanoic acid methyl esterを加え、さらに1 ml ヘキサン、2 ml飽和食塩水を加えて、二層分配したヘキサン層をガスクロマトグラフィー(Shimadzu GC-17A、TC-70カラム)にアプライし、含有脂肪酸量を測定し、内部標準との比により、全脂肪酸量を算出した。
その結果は、表3のように窒素源を欠乏して脂質蓄積しやすい培養条件にした場合と、表4のように窒素源が豊富な通常の培養条件にした場合と両方で、全脂肪酸量が前者で最大1.34倍増加する変異株、後者で最大1.66倍増加した変異株を得ることができた。また、脂質含量も前者で最大1.96倍、後者で最大2.11倍増加した変異株を得ることができた。特に、窒素源が欠乏した培養条件(表3)では、ΔPRE9,ΔSNF2,ΔSPT21, 二重変異株であるΔPHO90/SNF2,ΔPHO90/SPT21で全脂肪酸量、脂質含量ともに増加していた。
一方、窒素源が豊富な通常の培養条件(表4)では、ΔSNF2,ΔSPT21, 二重変異株であるΔPRE9/SNF2,ΔPRE9/SPT21,ΔPHO90/SNF2,ΔPHO90/SPT21で全脂肪酸量、脂質含量ともに増加していた。また、ΔIRA2は、増殖が比較的悪く、表3では全脂肪酸量ではむしろ野生株よりも低いが、脂質含量は高く、いずれの条件でも野生株の2倍程度の増加が見られた。
培養時間は、表3,4で示した4日が通常は至適であったが、以下の表5に示されるように、ΔSNF2,ΔPRE9/SNF2,ΔPHO90/SNF2などでは、その後も脂質量が増加した(表5)。以上の結果から、見出したリピッドボディ形成に関わる遺伝子の1種類以上の破壊株によって脂肪酸量、脂質含量が増加することが見出された。

Claims (4)

  1. サッカロミセス・セレビシェのIRA2遺伝子、PRE9遺伝子、SNF2遺伝子、SPT21遺伝子、PHO90遺伝子の一種以上が、破壊または機能低下しているサッカロミセス・セレビシェの変異株を培地に培養し、培養菌体から脂質を採取することを特徴とする、脂質の製造方法。
  2. 遺伝子の破壊が、栄養要求性を相補するマーカー遺伝子の挿入によるものであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
  3. マーカー遺伝子がHIS3、URA3またはLEU2遺伝子であることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
  4. 窒素源欠乏培地で培養することを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
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