JP2014054239A - 脂質生産性の高い形質転換酵母 - Google Patents

脂質生産性の高い形質転換酵母 Download PDF

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Abstract

【課題】高い脂質生産性を有する形質転換酵母を提供すること、及び当該形質転換酵母を用いた効率の良い脂質の製造方法を提供する。
【解決手段】ESA1遺伝子が機能低下しているサッカロミセス・セレビシェ、例えば、染色体上でESA1の隣に位置するDGA1遺伝子のORF中の少なくとも3’末端領域を含む領域が破壊、又は欠失されているサッカロミセス・セレビシェを宿主とし、DGAT遺伝子が導入された形質転換酵母、及び、前記形質転換株を用いた、脂質の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、高い脂質生産性を有する形質転換酵母及び当該形質転換酵母を用いた効率的な脂質の製造方法に関するものである。
酵母サッカロミセス・セレビシェは、遺伝子工学技術が確立され、全ゲノム配列も決定されているなどの利点から、遺伝子組み換え技術を利用した物質生産の宿主として盛んに用いられている。また、古来より醸造に用いられるなど産業上重要な微生物であり、菌体そのものも栄養価のあるものとして食用できるものである。
一方、中性脂質は、食用や工業用に様々な用途があり、産業上の供給源としては、植物種子中に含まれるものが主なものである。含まれる脂肪酸の種類によって、生理活性、物性なども異なっており、異なった用途に用いられている。
近年、遺伝子工学技術及び脂肪酸の合成酵素遺伝子の同定の進展とともに、油糧植物などを遺伝子改変して、有用脂肪酸を生産させることが検討されている。特に、生理活性をもつ高度不飽和脂肪酸の多くは通常の植物油に含まれず、その生産手段が限られているため、高度不飽和脂肪酸を生産する微生物、藻類などの不飽和化酵素、鎖長延長酵素の遺伝子を利用して、高度不飽和脂肪酸を生産させる試みが活発になされている。
脂肪酸の合成酵素遺伝子を発現させる宿主としては、植物そのものも試みられているが、多細胞生物ゆえに目的脂肪酸を効率良く生産させることはそれほど容易ではない。これに対して、単細胞の真核生物であり、遺伝子レベルでの情報も豊富な酵母サッカロミセス・セレビシェは、容易に遺伝子を導入することができることから、合成酵素遺伝子の反応を検出するための宿主として、頻繁に用いられている。
しかしながら、この酵母は、その菌体成分のうち、脂質の占める割合は5%程度で、他の脂質蓄積微生物や植物種子油に比べて生産性が低いために、遺伝子組み換え技術を用いて、有用脂肪酸を生産させることは実用的ではない状況である。そこで、遺伝子組み換えにより、脂質含量を増加させた酵母を作製すれば、有用脂肪酸を生産するための宿主として有用であると考えられる。また、出芽酵母の脂肪酸がパルミチン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸が主であり、このような飽和と二重結合1つの不飽和脂肪酸はバイオディーゼルとしての品質に適していることから、脂質含量が増加すれば、バイオディーゼルとしての用途も考えられる。
脂質生産のための遺伝子改変としては、既に、主要な貯蔵脂質であるトリアシルグリセロール(TAG)の合成酵素であるジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)の遺伝子を昆虫細胞や大豆に(特許文献1)、あるいは酵母やシロイヌナズナに導入したり(特許文献2,特許文献3)、他のTAG合成酵素であるジアシルグリセロール:ホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼの遺伝子を酵母やシロイヌナズナに導入して(特許文献4)、TGの含量を増加させる事が試みられており、TAGの含量の多少の増加が報告されている。また、酵母以外の微生物でも、Cryptococcus curvatusにピルビン酸デカルボキシラーゼを介するアセチルCoA合成経路の酵素とTAG合成酵素の遺伝子を導入して脂質含量を増加させたり(特許文献5)、高度不飽和脂肪酸を合成する遺伝子を発現させたYarrowia lipolyticaのTAG合成酵素遺伝子を逆に破壊して、高度不飽和脂肪酸の含量を増加させる(特許文献6)ことが報告されている。
最近、発明者らは、DGAT遺伝子を、酵母のSNF2(転写因子)遺伝子破壊株に導入して、脂質含量が30%程度まで増加することを報告している(特許文献7)。
しかし、野生株に比べれば顕著に高い脂質含量が得られたものの、培養液あたりの脂質生産量は実用レベルにはまだ充分ではなかった。
WO00/01713 WO00/36114 WO2008/006207 WO00/60095 WO2011/161317 WO2006/052912 特許第4803584号 特許第4487046号 特開2011−103836号公報 特許第5004083号
Smith,E.R.et al.,Proc.Natl.Acad.USA 95,3561(1998) Decker,P.V.et al.,Genetics 178,1209 (2008) Nikawa,J.& Kawabata,M.,Nucleic Acids Res.,26,860(1998) Ratledge,C.Microbial lipids (Ratledge,C.andWilkinson,S.G.,eds),vol.2,pp.567-668,Academic Press,London(1989) Winzeler,E.A.et al.,Science 285,901(1999) Voss,A.K.& Thomas,T.,BioEssays 31,1050(2009) Guan,K.-L.& Xiong,Y.,Trend Biochem.Sci.36,108(2011) Kamisaka,Y.et al.,Biochem.J.408,61(2007) Kamisaka,Y.et al.,Appl.Microbiol.Biotechnol.88,105(2010)
本発明の課題は、TAG合成酵素であるDGATを導入する酵母破壊株の検討、導入するDGAT改変体の検討、高濃度の炭素源を含む培養条件の検討を行って、TAGなどの脂質を高含量に含む酵母形質転換株を取得し、この株を用いて脂質を製造する点にある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、TAG合成酵素であるDGATの遺伝子であるDGA1の破壊株を宿主として、N末端29残基を欠失したDGA1蛋白質をコードするDGA1変異体(DGA1ΔN2)(図1)を発現させることによって得られた形質転換株を得、当該形質転換株を高濃度の炭素源で培養することによって、脂質含量を45〜50%程度にまで増加させることができ、脂質生産性の顕著な向上に成功した。さらに、DGA1の破壊株について、脂質生産性の向上に効果的に働く要因に関する検討の結果、DGA1の破壊によって、DGA1蛋白質が発現されないことが重要ではなく、酵母染色体上で破壊されたDGA1の隣に位置するESA1(ヒストンアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子)(図2)がDGA1遺伝子の破壊の影響をうけて、細胞内のヒストンアセチルトランスフェラーゼ機能が低下したことによるものであることを見出した。詳細には、以下の通りである。
本発明者らは以前、脂質合成を抑制する遺伝子として、トランスポゾン挿入変異により、サッカロミセス・セレビシェのSNF2遺伝子を同定し、SNF2遺伝子の破壊株が野生株より脂質生産性が向上することを見出しており(特許文献8)、当該SNF2遺伝子破壊株にDGA1遺伝子を導入して過剰発現させることで、脂質含量を30%程度まで増加させることができるという知見を得ている(特許文献7)。また、本発明者らは、発現産物のN末端29残基が欠失するように改変した改変DGA1遺伝子(DGA1ΔN2)の方が、SNF2遺伝子破壊株に導入して発現させる場合には、もとのDGA1遺伝子を用いる場合に比べて、細胞破砕液でのDGAT活性が顕著に増加することも見出している(特許文献9)。
以上の知見をもとに、SNF2遺伝子の破壊株に改変遺伝子DGA1ΔN2を発現させることで、顕著に増加したDGAT酵素活性に基づき脂質含量も大幅に増加することを予想したが、その増加程度は酵素活性の増加ほど顕著ではなかった。さらに、SNF2遺伝子の破壊株は、高濃度の炭素源を資化する能力がやや低く、高濃度炭素源での培養による脂質生産性の向上には効果的ではなかった。そこで、改変DGA1遺伝子(DGA1ΔN2)がより効果的に働く破壊株を新たに検討したところ、DGA1遺伝子そのものの破壊株に導入することによって脂質生産性を有意に向上させることを見出した。さらに解析を進め、DGA1遺伝子の破壊株が脂質生産性に与える影響は、DGA1蛋白質が発現されないことではなく、酵母染色体上でDGA1遺伝子の隣に位置するヒストンアセチルトランスフェラーゼをコードするESA1遺伝子の発現がDGA1遺伝子破壊の影響をうけて、細胞内のヒストンアセチルトランスフェラーゼ機能が低下するためであることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔10〕に示す通りである。
〔1〕 ESA1遺伝子が機能低下しているサッカロミセス・セレビシェに、DGAT(ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ)遺伝子が導入されていることを特徴とする、高脂質生産性を有する形質転換サッカロミセス・セレビシェ。
〔2〕 前記ESA1遺伝子の機能低下が、染色体上でESA1の隣に位置するDGA1遺伝子のORF中の少なくとも3’末端領域を含む領域が破壊又は欠失されていることによって誘起されることを特徴とする、前記〔1〕に記載の形質転換サッカロミセス・セレビシェ。
〔3〕 前記導入するジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ遺伝子が、下記(a)〜(c)から選択されたいずれかのアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とする、前記〔1〕又は〔2〕に記載の形質転換サッカロミセス・セレビシェ;
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、そのN末端側2番目から37番目までのいずれかのアミノ酸残基が欠失しているアミノ酸配列、
(c)(a)もしくは(b)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、付加されているアミノ酸配列。
〔4〕 前記(b)に記載のアミノ酸配列が、配列番号4,6,8のいずれかから選択されたアミノ酸配列であることを特徴とする、前記〔3〕に記載の形質転換サッカロミセス・セレビシェ。
〔5〕 前記ESA1遺伝子が機能低下しているサッカロミセス・セレビシェにおいて、さらにLEU2遺伝子が導入されていることを特徴とする、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の形質転換サッカロミセス・セレビシェ。
〔6〕 前記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の形質転換サッカロミセス・セレビシェを培養し、培養した細胞から脂質を採取することを特徴とする、脂質の製造方法。
〔7〕 高濃度の炭素源を含む培地で培養することを特徴とする、前記〔6〕に記載の製造方法。
〔8〕 窒素源欠乏培地で培養することを特徴とする、前記〔6〕に記載の製造方法。
〔9〕 完全培地、栄養要求性培地ではない培地で培養することを特徴とする、前記〔6〕に記載の製造方法。
〔10〕 ロイシンを添加した培地で培養することを特徴とする、前記〔6〕〜〔9〕のいずれかに記載の製造方法。
本発明は、脂質蓄積性として知られるモルティエレラ属糸状菌、リポミセス属酵母などの微生物の脂質含量と同様レベルのサッカロミセス・セレビシェを提供することができる。サッカロミセス・セレビシェの脂肪酸は、飽和と二重結合1つをもつパルミチン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸などで占められており、二重結合が多い不安定な脂肪酸を含んでいないことから、ディーゼル油代替としても使用できる。また、サッカロミセス・セレビシェは遺伝子レベルでの知見が蓄積している取り扱いやすい宿主微生物であり、遺伝子改変等により有用な脂質を合成できるポテンシャルを有しているが、その脂質生産性は低かったため、有用な脂質合成用の宿主微生物としてほとんど注目されてこなかった。本発明によって脂質生産性が大幅に改善されることが示されたことで、有用脂質の生産性の向上に大きな貢献をすることができる。
サッカロミセス・セレビシェのDGA1蛋白質(以下Dga1pと略す。変異DGA1蛋白質も同様に略す)のN末端欠失変異体のアミノ酸一次構造を模式的に示したものである。Dga1pは418個のアミノ酸残基からなる蛋白質であるが、そのN末端側、23残基、29残基、37残基を欠失し、メチオニンを付加させた変異体が、それぞれDga1ΔN1p、Dga1ΔN2p、Dga1ΔN3pである。 サッカロミセス・セレビシェの第15染色体に位置するDGA1遺伝子の近傍の遺伝子地図を示したものである。DGA1の5’側には、ENV9が存在し、3’側には、ESA1が存在する。また、Δdga1-1、Δdga1-2株において、DGA1遺伝子がURA3遺伝子で置き換えられて破壊された領域についても示している。 サッカロミセス・セレビシェBY4741株の野生株、Δdga1株にDga1ΔN2pを過剰発現させた形質転換株を培養した時のESA1のmRNAの相対発現量を示したものである。発現量はRT-qPCRで測定し、TUB1をリファレンス遺伝子として補正した値で、同一条件の2つのRNAサンプルについて、3回ずつ計6回行った測定結果の平均及び標準偏差を示している。
1.本発明の宿主微生物となるESA1遺伝子が機能低下したサッカロミセス・セレビシェについて
本発明は、主要な貯蔵脂質であるTAGの合成酵素であるDGATを、ESA1遺伝子の機能低下(ESA1遺伝子の発現系が影響をうけたことによる機能低下)したサッカロミセス・セレビシェに発現させて、TAGを主要とする脂質を効率的に生産する形質転換株及び生産方法を提供するものである。ここで、「ESA1遺伝子の機能低下」の典型的な場合とは、染色体上のESA1遺伝子領域近傍の変異などにより、ESA1遺伝子発現量に明確な変化が生じる場合があげられる。例えば、隣接するDGA1遺伝子のORF中の3’末端側に近い領域を含むDGA1遺伝子が部分的に破壊された場合があげられる。
なお、一般に「脂質」というときは、水に不溶で有機溶媒に可溶な多様な化合物の総称をいうが、本発明において「脂質」というときには、それらのうち脂肪酸が共有結合した化合物(すなわち脂肪酸アシル基を含むもの)を指す。特に微生物で蓄積される主要な脂質であるTAG(トリアシルグリセロール)を指す。好ましくは、含まれる脂肪酸の炭素数が14から22で、不飽和結合の数が0から6のものを指す。なお、脂肪酸としては水酸基、エポキシ基などで修飾されている場合も含まれる。
サッカロミセス・セレビシェのESA1遺伝子は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を有して、転写制御に重要な役割を持つことが知られており、その破壊株は生育できない、すなわちESA1は必須遺伝子であることが報告されている(非特許文献1)。したがって、発現したESA1蛋白質の機能を低下させる場合には、生育が阻害されない程度に行わなければならない。具体的には、ESA1遺伝子自体を変異させずに、染色体上の隣接する領域、例えば、隣接する遺伝子であるDGA1遺伝子のESA1遺伝子に近い3’末端側領域を含むように破壊するなどの場合が例示される。
従来から、ESA1蛋白質の変異体を産生するサッカロミセス・セレビシェ変異株であって、その生育が阻害されない変異株がいくつか取得されている(非特許文献2)。このようなESA1蛋白質変異体を産生するサッカロミセス・セレビシェ変異株のうちには、ESA1蛋白質機能が低下した変異株も含まれており、これらのESA1蛋白質機能が低下し、かつ生育阻害のない変異株も、当然に本発明のDGAT遺伝子を導入するための宿主微生物として用いることができる。
上述のように、本発明の目的に沿った形でESA1遺伝子の発現に影響を与えるものとして、ESA1遺伝子の染色体上の隣に位置するDGA1遺伝子の破壊が挙げられる。DGA1遺伝子が破壊された細胞株では、一時的に(培養後1〜2日程度)ESA1遺伝子の発現を阻害し、細胞株がESA1蛋白質発現量を回復するまでの約1〜2日の間、ESA1蛋白質発現量が大幅に低下する。ここで、「DGA1遺伝子の破壊」というとき、DGA1遺伝子の発現が一時的ではなく恒常的に阻害されている状態を指すが、DGA1遺伝子のORFの特に3’末端側の領域を選択マーカーを含むコンストラクトで置き換えた破壊株が望ましい。なお、ESA1遺伝子側に近い3’末端側領域は完全に破壊される必要があるが、反対側の5’末端側領域は残っていても影響はない。その際の破壊株を取得する方法は、既に記載された方法(非特許文献3、特許文献8)等によって行うことができる。
例えば、マーカー遺伝子の両端に、破壊しようとする対象遺伝子の上流域、下流域の配列を付加したDNAを作成し、該DNAを用いて宿主を形質転換することにより、導入したDNAが、破壊しようとする遺伝子の上流と下流域部分で、相同的組み替えを起こし、対象遺伝子を破壊することができる。対象遺伝子が破壊された変異株は、マーカー遺伝子の発現による形質変化により識別できる。
本発明においては、その他の手法でも、遺伝子の機能を欠失あるいは低下させることができるものであれば使用可能である。これらには、上記破壊対象遺伝子を単離した後、適当な制限酵素で切断し、該切断部位にマーカー遺伝子を挿入して得た断片を用いて形質転換する方法、マーカー遺伝子を、破壊対象遺伝子の一部含むプライマーを用いてPCRにより増幅し、形質転換する方法、あるいは突然変異剤などにより、ランダム変異を生じさせて、対象遺伝子が変異したものをスクリーニングする方法等がある。
マーカー遺伝子としては、アミノ酸などの栄養要求性変異を相補する遺伝子や抗生物質薬剤耐性遺伝子などがあげられるが、サッカロミセス・セレビシェのLEU2遺伝子あるいはそれと相同性を有する他の生物の遺伝子をマーカーとするベクターを含むことが望ましい。何種類かのプラスミドを共存させる場合は、LEU2以外のマーカー遺伝子は、発現させる微生物の形質転換株が選別できるのであれば、どのようなものを用いてもよい。LEU2をマーカー遺伝子として使用しない場合は、LEU2あるいはロイシン合成経路の他の酵素遺伝子及び他の生物でのこれらと相同性を有する遺伝子を、他のマーカー遺伝子をもつベクターで発現させることが、脂質生産性の向上に寄与する。なお、LEU2は、ロイシン要求性変異を相補する遺伝子で、ロイシン合成に必要な3-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素をコードする。
2.本発明において導入するDGAT遺伝子及びその形質転換方法について
本発明におけるDGATの発現手法は、通常のサッカロミセス・セレビシェの形質転換方法に従う。染色体外で複製するベクター中に組み込んで行っても、染色体内に組み込まれるベクター中に組み込んで行ってもよく、DGAT遺伝子を含有する組み換えベクターを用いて上記ESA1遺伝子が機能低下したサッカロミセス・セレビジェを形質転換する。
導入するDGAT遺伝子は、典型的にはサッカロミセス・セレビシェ由来であって、主要な貯蔵脂質であるトリアシルグリセロール(TAG)を合成する酵素をコードするDGA1遺伝子であり、そのORF全長遺伝子を用いるよりも、DGAT蛋白質において、そのN末端を数十残基欠失させた蛋白質(以下、N末端側配列欠失 DGAT蛋白質ともいう。)をコードする遺伝子を用いる方が、得られる組換え酵素蛋白質の酵素活性が高い。なお、DGATは、主要なTAG合成酵素なので、「TAG合成酵素」と表現することもある。DGATは種間での保存性が高いので、導入するDGAT遺伝子はどの生物由来のDGAT遺伝子を用いてもよいが、本発明の実施例では、酵母由来のDGA1遺伝子及びその改変体を用いている。
したがって、本発明のDGAT(主要なTAG合成酵素)遺伝子は、下記の(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列であって、TAG合成酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子として表現することができる。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列。
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、そのN末端側2番目から37番目までのうちいずれかのアミノ酸配列が欠失しているアミノ酸配列。
ここで、2番目から23〜37番目のいずれかのアミノ酸までの配列が欠失されていることが好ましい。
(c)(a)もしくは(b)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、付加されているアミノ酸配列。
なお、1もしくは数個とは、1〜10個まで、好ましくは1〜5個のアミノ酸を指す。
3.形質転換細胞の培養方法について
本発明においては、DGAT遺伝子を発現させた形質転換株を培養するための培地として、例えば後述の実施例に挙げたようなSD培地(グルコースを炭素源とし、イーストナイトロジェンベースを窒素源とし、要求栄養素を加えた培地)を用いる事ができるが、DGAT遺伝子を染色体外で複製するベクターで発現させる場合であっても、YPD培地(グルコースを炭素源とし、酵母エキス、ペプトンを含む培地)のようなベクターを維持するために必要な選択栄養素を含む完全培地でも遺伝子が脱落する恐れはなく、ある程度の脂質生産性を示すことができる。
培地の炭素源、窒素源の種類、培養温度、培養時間などについては、脂質生産性が高くなるのに最適な条件を適宜選択する事ができる。これらの条件としては、培地の窒素源の量が重要で、形質転換株の生育可能な範囲で窒素源欠乏培地を使用すれば、形質転換株の脂質生産性を向上させることができる。また、培地中にロイシンを要求する酵母株については、通常よりも高濃度のロイシンを加えることによって、脂質生産性を向上させることができる。さらに、培地に高濃度の脂肪酸を加えると、形質転換株の高い脂肪酸取り込み能によって、細胞内に取り込まれ、細胞内での脂質含量が極めて高い株を作成することができる。このような脂肪酸を含む培地での培養によって、形質転換する株には本来存在しない脂肪酸を高濃度取り込ませることができる。
4.産生脂肪酸の採取方法及び測定方法
本発明のESA1遺伝子が機能低下したサッカロミセス・セレビシェにDGA1遺伝子もしくはそのN末端欠失遺伝子を発現させた形質転換株を、通常のサッカロミセス・セレビシェの培養条件で培養することで、その培養菌体内に大量の脂質(後述(表4)のようにほぼ90%がTAG)が蓄積される。当該脂質は、培養菌体を破砕し、クロロホルム、メタノールなどの有機溶媒によって抽出することにより簡単に分離・精製することができる。
また、脂質を脂肪酸メチルエステルなどに誘導体化した後、ガスクロマトグラフで分析することで、得られた脂質中の脂肪酸組成を調べることができる。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
〔実施例1〕 酵素活性の高いN末端の29残基が切断されたDGAT蛋白質を発現させた出芽酵母サッカロミセス・セレビシェ形質転換株の取得
(1−1)コンストラクトDGA1ΔN2を含むベクターの作製
本発明者らは、酵母サッカロミセス・セレビシェの形質転換株を用いて、脂質含量がこれまでの30%程度(特許文献7)から更に増加させるために検討を行った。既に報告しているように、Δsnf2株にN末端29残基を欠失した活性の高い変異Dga1pを発現させると、DGAT酵素活性が顕著に高くなることを見出しているので(特許文献9)、この変異Dga1pを利用して脂質生産性の高い形質転換株の取得を試みた。
N末端29残基を欠失した活性の高いDga1pは、既に報告しているタグ付き(特許文献9)ではなく、活性がより高いタグがない形のものを使用した。その発現のためのコンストラクトDGA1ΔN2(配列番号5)(図1)は以下のようにして作製した。
まず、DGA1遺伝子(配列番号1)をpL1091-5ベクター(2μmを複製開始部位とするマルチコピーベクターで、インサート遺伝子の発現にグルコース培地で高発現のADH1プロモーターをもち、酵母での選択マーカーとしてURA3遺伝子を持ち、大腸菌での選択マーカーとしてアンピシリン耐性遺伝子をもつベクター)に組み込んだベクターpL1091-5/DGA1を、既に報告したようにして作製した(特許文献7)。これをテンプレートとして、(表1)のDGA1ΔN2用のプライマー(配列番号9,10)を用いたPCRを行った。
Figure 2014054239
この5’側のプライマーは、既に決定されているゲノムDNA配列にもとづいて、Dga1pのN末端29残基が欠失した変異蛋白質Dga1ΔN2p(ただし、開始コドンであるメチオニンは改めて先頭に付加)をコードするDGA1ΔN2を増幅できるように設計され、その末端に制限酵素HindIII認識部位を含んでいる。3’側のプライマーは、pL1091-5のマルチクローニングサイトの3’側の領域から増幅するためのプライマーで、このPCRによってDGA1ΔN2とpL1091-5のマルチクローニングサイトの3’側を含んだ領域を増幅した。その際にインサートの3’側にXbaI認識部位を含んでいる。この時のPCR増幅条件は、0.4 units DNA polymerase(KOD plus,Toyobo社製)、0.2mM dNTP mixture、0.5μMプライマー、10ng pL1091-5/DGA1(テンプレートDNA)を、1mM MgCl2を含む添付の緩衝液中で反応させた(全反応液 20μl)。増幅条件は、94℃で2分間反応させた後、94℃(15秒間)/57℃(30秒間)/68℃(90秒間)を1サイクルとして25回くり返すことで行った。
反応液は、0.7%アガロースゲル電気泳動にかけ、エチジウムブロマイド染色後、紫外線照射して、予期した約1.3kbpの単一バンドが得られたことを確認した。増幅したDGA1ΔN2を含むコンストラクトは、PCR purification kit(キアゲン社製)により、プライマーなどを除いて、精製した。
得られたコンストラクトは、HindIII、XbaI(ニッポンジーン社製)による制限酵素処理を行って、両端がHindIII切断による粘着性末端及びXbaI切断による粘着性末端を作成した。これをpL1091-5にクローニングするために、pL1091-5も同様にHindIII,XbaIで切断し、PCR purification kitにより、制限酵素で切断された低分子のオリゴヌクレオチドを除いた後、ライゲーションによりインサート遺伝子をベクターに組み込んだ。ライゲーションは、ベクター:インサート比が1/1〜1/10程度になるように混合し、DNAライゲーション酵素(Ligation high、Toyobo社製)を用いて16℃で1時間〜3時間反応させて行った。
ライゲーションしたベクターの大腸菌への形質転換は、大腸菌JM109株コンピテントセル(ECOS、ニッポンジーン社製)を用いて行った。ライゲーション反応液をコンピテントセルに加え、氷中で5分間インキュベートした後、42℃45秒の熱ショックを加え、アンピシリンを含むLB寒天培地にまいて、37℃で1晩培養後のアンピシリン耐性のコロニーの有無を確認した。得られたコロニーのうち、インサート遺伝子のはいったベクターを検出するために、表1に示したプライマー(配列番号16,配列番号10)を用いてコロニーPCRを行った。インサート遺伝子のはいったベクターで形質転換されていた大腸菌は、シングルコロニーにした後、アンピシリンを添加したLB培地中で37℃で一晩培養した。得られた大腸菌に含まれるベクターを、プラスミド抽出キット(QIAprep Spin Miniprep Kit,キアゲン社製)を用いて精製し、DGA1ΔN2をサブクローニングしたベクターを取得した。なお、インサート領域は、表1に示したプライマー(配列番号17,配列番号10)を用いて塩基配列を決定してDGA1ΔN2が予定通りクローニングされたことを確認した。
(1−2)酵母Δsnf2株を宿主とした形質転換株の検討
DGA1ΔN2をクローニングしたベクター(pL1091-5/DGA1ΔN2)を用いて、サッカロミセス・セレビシェBY4741野生株(Mat a leu2Δ0 his3Δ1 ura3Δ0 met15Δ0)(インビトロジェン社製)及びΔsnf2株(Mat a leu2Δ0 his3Δ1 ura3Δ1 met15Δ0 SNF2::kanMX4)(インビトロジェン社製)を形質転換した。形質転換は、酵母形質転換キット(S.c.EasyComp Transformation Kit,インビトロジェン社製)を用いて行った。pL1091-5/DGA1ΔN2と、LEU2のマーカー遺伝子をもつベクター(pL1177-2)で形質転換して、マーカー遺伝子により合成が可能になる栄養素(20mg/lウラシル及び60mg/lロイシン)を含まないSD寒天培地(20g/l グルコース、6.7g/l yeast nitrogen base w/o amino acids、20mg/lヒスチジン、20mg/lメチオニン、20g/l寒天)で増殖してくるコロニーを取得し、これをさらにシングルコロニーにして形質転換株として用いた。
このようにして得られたpL1091-5/DGA1ΔN2とpL1177-2で形質転換した株及び以前取得したpL1091-5/DGA1とpL1177-2で形質転換した株(特許文献7)を用いて、液体培地中で30℃、120rpmのロータリーシェーカーで培養した。培地は、窒素源が欠乏した、異なるグルコース濃度の培地として、2%GSD(20g/l グルコース、1.7g/l yeast nitrogen base w/o amino acids and ammonium sulfate、1g/l ammonium sulfate、20mg/lヒスチジン、20 mg/lメチオニン)あるいは、10%GSD(100g/l グルコース、1.7g/l yeast nitrogen base w/o amino acids and ammonium sulfate、5g/l ammonium sulfate、20mg/lヒスチジン、20mg/lメチオニン)を用いた。両者の炭素源/窒素源比(C/N比)が一定になるように、10%GSDではammonium sulfateの量を5倍にした。培養は、主に4日間、7日間行った。
培養後、菌体を遠心分離(3000rpm,5分)によって沈降させ、105℃で3時間加熱して、その乾燥重量を測定した。さらに、乾燥させた菌体に、1ml 10%塩酸メタノール、0.5mlジクロロメタンを加えて60℃で3時間反応させて脂肪酸メチルエステルを生成させた後、内部標準として250 nmol heptadecanoic acid methylesterを加え、さらに1mlヘキサン、2ml飽和食塩水を加えて、二層分配した。この時のヘキサン層にきた脂肪酸メチルエステルを、ガスクロマトグラフ(島津製 GC-17A,TC-70カラム)で測定し、内部標準との比により、全脂肪酸量を算出した。(表2)及び(表3)として、それぞれ2%グルコース含有培地及び10%グルコース含有培地での各形質転換株の細胞乾燥重量、全脂肪酸量、全脂肪酸含量(脂質含量)を示す。
Figure 2014054239
Figure 2014054239
その結果、野生株では活性型のDga1ΔN2pの発現でDga1pよりも若干脂質含量が増加したが、Δsnf2株の特に7日培養では有意な増加は認められなかった(表2,3)。この原因としては、Δsnf2株ではDga1pを発現させても活性型のDga1ΔN2pに内在的に変換される(特許文献9)ことが考えられる。また、2%グルコース培養では、Δsnf2株の乾燥重量は野生株の2倍程度あるのに対し、10%グルコース培養では大きな差はなく、脂肪酸量についてもそれほどの優位性を示していない。7日間培養後に培地に残存するグルコース量を、グルコースアッセイキット(グルコーステストワコー、和光純薬)で測定すると、pL1091-5/DGA1ΔN2とpL1177-2で形質転換したΔsnf2株では、20.3±3.9g/lのグルコースが残存しており、これは同じベクターで形質転換した野生株の3.3±0.4に比べて高い。これは、SNF2がグルコースの代謝に関与しており、Δsnf2株では10%という高濃度のグルコースを消費する能力に欠けているためと推測される。以上の結果より、Δsnf2株は、活性型のDga1ΔN2pの高い酵素活性を脂質含量の増加に結び付けることができず、また高濃度のグルコースでの脂質生産には適当ではないことが示された。
(1−3)DGA1遺伝子破壊株を宿主とした形質転換株
そこで、活性型のDga1ΔN2pの高い酵素活性を脂質含量の増加につなげることができ、高濃度のグルコースでの脂質生産に適当な株の探索を行った。その結果、DGA1遺伝子そのものの破壊株(BY4741Δdga1株)(Mat a leu2Δ0 his3Δ1 ura3Δ0 met15Δ0 DGA1::kanMX4)(インビトロジェン社製)に発現させることによって、10%グルコース存在下で高い脂質生産性を示すことが見出された(表2,3)。Δdga1形質転換株は、2%グルコース培養では、野生株と同様に乾燥重量はΔsnf2株ほど高くなく、脂質含量も野生株よりも高いもののΔsnf2株には及ばなかった(表2)。一方、10%グルコース培養では、乾燥重量及び脂肪酸量が、野生株、Δsnf2株よりも高く、活性型のDga1ΔN2pの発現株の7日間培養では、脂質含量が45%に達した(表3)。この脂質含量は、脂質蓄積性の酵母、糸状菌などが増殖がよい状態で示す脂質含量に匹敵し(非特許文献4)、出芽酵母での脂質生産のキャパシティーを最大限に発揮させることができたと考えられた。また、Δdga1株では、Dga1ΔN2pの発現株の脂肪酸量、脂質含量がDga1pの発現株に比べて有意に高く、Dga1ΔN2pの高い酵素活性を脂質含量の増加に効率的に変換することができたと考えられる。なお、Dga1ΔN2pの発現株では、7日間培養後には、培地中のグルコースをすべて消費していた。また、培養4日目から7日目までは脂質含量は増加したが、さらに培養を継続して10日間培養すると、脂質含量は逆に低下した(表3)。
Δdga1株をpL1091-5/DGA1ΔN2,とpL1177-2で形質転換した脂質含量45%程度の株について、さらに脂質組成を調べた。脂質抽出は、酵母菌体をクロロホルム/メタノール(2:1)中でガラスビーズ(No.02、東新理興製)存在下でホモジナイザー(日本精機製)により破砕して行った。抽出された脂質は、シリカゲル60のTLCプレート(メルク社製)にアプライし、ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(80:40:1)を展開溶媒として、各脂質クラスに分離した。TAG、ステロールエステル、ジアシルグリセロール、遊離脂肪酸、極性脂質(リン脂質などを全て含むTLCプレートの原点部分)をかきとり、既に記載したようにしてガスクロマトグラフにより、各脂質に含まれる脂肪酸を定量した。
脂質クラスを定量した結果、(表4)のようにTAGが全脂質の90%程度を占める主要脂質として脂質含量の増加に貢献していることが見い出された。
Figure 2014054239
Δdga1株にDga1ΔN2pを発現させた株は、野生株にDga1ΔN2pを発現させた株と比べて、染色体由来のDGA1遺伝子が存在するか否かが違うだけのはずであり、ベクター由来のDGA1変異体遺伝子を発現させていることを考えれば、両者にこのような顕著な脂質含量の差が生じることは、予想できないことであった。そこで、両者の差を説明するものとして、Δdga1株にDga1ΔN2pを発現させた株では存在しない全長のDga1pが、逆にDga1ΔN2pの活性発現などに阻害的に働く可能性について検討した。しかし、Δdga1株にDga1ΔN2pとともにDga1pを発現させた形質転換株ではむしろ脂質含量がさらに増加する(表5)ことから、この可能性は否定された。なお、Δdga1株にDga1ΔN2pを発現させて充分にDGAT活性を増加させているにもかかわらず、さらにDga1pを発現させると脂質含量が増加することから、脂質含量の増加には依然DGAT活性が律速になっていることが示唆された。
Figure 2014054239
そこで、次にΔdga1株では本当にDGA1遺伝子が破壊されているだけの影響しか受けていないのかどうかを検討した。用いた遺伝子破壊株(BY4741)は、遺伝子ORFの全長をカナマイシン耐性遺伝子を含む遺伝子破壊カセットで置き換えて作成しており(非特許文献5)、この領域が失われることによって、染色体上の隣の遺伝子の発現に何らかの影響を与える可能性が考えられる。実際に、遺伝子の発現には遺伝子ORFの5’側の領域と3’側の領域が、プロモーター、ターミネーター、エンハンサーなどとして関与することが知られている。そこで、DGA1の近隣の遺伝子をデータベース(例えば、http://www.yeastgenome.org/)で調べると、5‘側にはENV9(液胞機能に関わるたんぱく質をコードする遺伝子)が、3’側にはESA1(ヒストンアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子)が位置していることが見出された(図2)。そこで、Δenv9株(Mat a leu2Δ0 his3Δ1 ura3Δ1 met15Δ0 ENV9::kanMX4)(インビトロジェン社製)にDga1ΔN2pを発現させた形質転換株を作製したが、脂質含量の増加は認められなかった(表5)。
一方、ESA1は必須遺伝子であり、全長破壊株は取得できないので、Δdga1株にDga1ΔN2pとともにEsa1pを共発現させて、その影響を検討した。ESA1は、表1のプライマー(配列番号11、配列番号12)を用いて出芽酵母のゲノムDNAより5‘側にBamHI認識部位、3’側にSacI認識部位をもつコンストラクトとして、KODplus酵素を用いたPCRにより増幅した。反応条件は基本的にDGA1ΔN2の増幅の際に示したものと同様であるが、溶液のMgCl2濃度は1.2mMで、アニーリング温度は60℃を用いた。増幅されたコンストラクトは、既に示したような制限酵素処理、ライゲーションによりpL1177-2にクローニングした。そして得られたEsa1pをDga1ΔN2pと共発現させた形質転換株では、脂肪酸量及び脂質含量が有意に減少し、野生株にDga1ΔN2pを発現させた形質転換株の値に近づくことが見出された(表5)。この結果は、Δdga1株ではゲノム由来のEsa1pが生育に影響を与えない程度の何らかの機能低下を起こしており、ベクター由来のEsa1pを発現させることによって、その機能低下に依存する脂質含量の増加を打ち消すことができたと考えられた。
さらに、これらの株の脂肪酸組成を調べると、野生株に比べて、Dga1ΔN2pを発現させたΔdga1株では、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)などの飽和脂肪酸が低下し、パルミトオレイン酸(16:1)が増加したが、Δdga1株にDga1pをDga1ΔN2pと共発現させても変化がないのに対し、Esa1pを共発現させると、野生株とほぼ同様な脂肪酸組成に変化した(表6)。
Figure 2014054239
この結果からも、Δdga1株と野生株の表現型の相違は、DGA1の発現の有無ではなく、ESA1の発現の何らかの相違によるものであることが示された。Esa1pは、ヒストンをアセチル化して遺伝子制御したり、代謝酵素をアセチル化して代謝を制御したりすることが報告されているが(非特許文献6、非特許文献7)、脂肪酸組成、脂質含量を変化させる報告例はなく、その機構は不明である。また、Esa1pの機能低下の実態も現時点で不明である。
Δdga1株にDga1ΔN2pを発現しない場合には、Dga1pが全く発現していないので当然であるが、脂質含量は野生株とほぼ同様に低く、Dga1ΔN2pによって脂質含量の増加が誘起されることが確認された(表5)。その脂肪酸組成はDga1ΔN2pを発現した株と同様に飽和脂肪酸が低く、不飽和脂肪酸(この場合にはオレイン酸も)が高くなっており(表6)、この表現型は脂質含量の高低にある程度影響はされるものの、依存しているのではなく、DGA1の全長破壊に伴うEsa1pの機能低下に伴うものであることが確認された。
さらに、Esa1pと同じMYSTファミリーのヒストンアセチルトランスフェラーゼに属するSas2pについても、Dga1ΔN2pによる脂質含量の増加に対する負の効果があるかどうかを、Δsas2破壊株(Mat a leu2Δ0 his3Δ1 ura3Δ1 met15Δ0 SAS2::kanMX4)(インビトロジェン社製)にDga1ΔN2pを発現させて検討した。その結果、Δsas2形質転換株では野生株に比べて1.5倍程度の脂肪酸量、脂質含量の増加が認められ、ヒストンアセチル化酵素活性がDga1ΔN2pによる脂質含量の増加に抑制的であることが示された(表5)。
しかしながら、その程度はEsa1pの発現が低下したΔdga1株には及ばず、また、Δdga1株特有の脂肪酸組成の変化も示さなかった(表6)。
以上の結果から、Esa1pの効果は、Esa1pのヒストンアセチル化酵素の特異性に基づくものであると考えられた。
次に、Δdga1株にDga1ΔN2pを発現させた形質転換株について、培養条件の検討を行った。炭素源であるグルコースの濃度をC/N比を保ったまま変化させると、10%以外でも5%、15%で野生株にDga1ΔN2pを発現させた形質転換株よりも脂肪酸量、脂質含量ともに顕著に高いことが見出された(表7)。特に5%グルコース存在下では、4日培養でグルコースを完全に消費し、脂質含量も45%近く達するなど効率的な脂質生産を示した。一方、15%グルコース存在下では、7日培養後の培地のグルコースが、野生株、Δdga1株それぞれ、66.1±4.5g/l、47.2±8.8g/lであり、グルコースの消費が充分でないことを示している。Δdga1株では、乾燥重量、脂肪酸量ともに10%グルコースの場合よりも減少しており、グルコースの資化能の限界が影響していると考えられた。
Figure 2014054239
窒素源については、その欠乏によって脂質含量が増加することは既に報告しており(特許文献7、8)、今回の培養条件も当初よりこれまでのC/N比をもとに窒素源欠乏培地で行ってきた。10%グルコース存在下で、窒素源である硫安の濃度を変化させた結果を表8に示す。硫安を増加させると予想どおり脂質含量が低下するのに対し、硫安をさらに低下させて1g/l程度にしても乾燥重量は大きく低下せず、脂質含量も高いままであった。0.1g/lにまで低下させると乾燥重量が低下した。以上の結果より、Δdga1株にDga1ΔN2pを発現させた形質転換株は、広い範囲の低い窒素源濃度で、高い脂質生産性を示すことが見出された。
Figure 2014054239
本研究で取得した出芽酵母株は、選択マーカーであるURA3やLEU2を有するベクターで形質転換したものである。従って、基本的にはウラシルやロイシンを含まない合成培地を用いることになる。しかしながら、構成化合物がわかっている合成培地は価格的にも割高であり、かつ酵母の生育の点からも不利である。YPD培地のように天然から抽出したyeast extractなどを含む完全培地で培養できれば、それらの問題を解決できる。通常、ウラシル、ロイシンを含む完全培地で培養すると、URA3やLEU2を有するベクターは酵母にとって不必要になり、長期的には脱落してしまうが、7日程度の短期間培養するのであれば、そのまま保持されてインサートの遺伝子が発現されることが知られている。そこで、この点を確認するために、YPD培地で培養して、脂質含量を調べてみた(表9)。
Figure 2014054239
通常のYPD培地では増殖はよいものの脂質含量は低かったが、窒素源を低下させるために、yeast extractとpeptoneの量を減らした窒素源欠乏YPD培地では30%程度の高い脂質含量を示した。この培地でもコントロールベクターで形質転換したΔdga1株では脂質含量が低いことから、pL1091-5/DGA1ΔN2は、培養中脱落せずにDga1ΔN2pを発現していることが示された。なお、培養条件についてはさらに検討を加えることによって、脂質生産性がさらに上がった条件を見出すことができると考えられる。
既に発明者等が報告しているように(特許文献7,非特許文献8)、ロイシン要求性変異を相補するLEU2(ロイシン合成に必要な3-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素をコードする遺伝子)の発現は、野生株及びΔsnf2株の増殖及び脂質蓄積を向上させるが、Δdga1株でも同様な効果が認められるかどうか確認した。そのために、野生株、Δdga1株をpL1091-5/DGA1ΔN2のみで形質転換し、窒素源欠乏SD培地を用い、培地中に添加するロイシン量を変えて培養した(表10)。
Figure 2014054239
その結果、Δdga1株でも野生株と同様に、通常用いられている60mg/lの添加では乾燥重量が低く、500mg/l以上の高濃度のロイシンの添加によって、LEU2を選択マーカーとしてもつpL1177-2で形質転換した株と同等の乾燥重量を示した。一方、脂質含量についてはロイシンの濃度を上げると増加するものの、pL1177-2で形質転換した株と同等の45%程度(表3)までは達しなかった。すなわち、高濃度のロイシンではLEU2の発現を完全に相補することはできなかった。これは、培地に高濃度のグルコースを用いているためかもしれない。以上の結果より、Δdga1株でもLEU2の発現は増殖、脂質含量の増加に効果的であり、高濃度のロイシンでも部分的にそれを相補できることが見出された。
〔実施例2〕 酵素活性の高いN末端の23あるいは37残基が切断されたDGAT蛋白質を発現させた出芽酵母サッカロミセス・セレビシェ形質転換株の取得
既に本発明者らが報告しているように(特許文献9)、Dga1pのN末端側29残基の欠失以外にも、23残基の欠失(Dga1ΔN1p、図2参照)や37残基の欠失(Dga1ΔN3p、図2参照)でもDGAT活性の増加が認められている。そこで、これらのDGA1の変異体をpL1091-5にクローニングして、Δdga1株を形質転換し、脂質生産への影響を検討した。DGA1ΔN1、DGA1ΔN3は、(表1)に示すプライマー(前者は配列番号13及び15、後者は配列番号14及び15)を用いて、既に作製したベクターpYES2/NTC/DGA1(特許文献10、非特許文献8)をテンプレートとしてPCRにより増幅した。反応条件は基本的にDGA1ΔN2の増幅の際に示したものと同様であるが、アニーリング温度は60℃を用いた。増幅後は、HindIIIとXbaIによりコンストラクトを切断し、pL1091-5にクローニングし、得られたベクターで野生株、Δdga1株を形質転換した。
Δdga1株にこれらのDga1p変異体を発現させた株を10%グルコース存在下で培養すると、Dga1ΔN2pほどではないが、野生株に比べて脂質含量の増加が認められた(表11)。
Figure 2014054239
DGAT活性は、Dga1ΔN1p、Dga1ΔN3p、Dga1ΔN2pの順に増加する(特許文献10、非特許文献9)ので、それに対応して脂質含量も増加していた。以上の結果より、Dga1ΔN2p以外のN末端領域欠失のDga1p変異体でも、Δdga1株に発現させることによって、脂質含量が顕著に高い形質転換株を取得できることが見出された。
〔実施例3〕 酵素活性の高いN末端の29残基が切断されたDGAT蛋白質を異なるΔdga1株に発現させて得られる出芽酵母サッカロミセス・セレビシェ形質転換株の取得
活性の高いDga1ΔN2pを発現させる宿主として、BY4741Δdga1株(DGA1のORF全体がkanMX4で置換されている)の代わりに、栄養要求性マーカーであるURA3を用いてDGA1を破壊した株を作成して用いた。そのために、PCRによって表1のプライマー(配列番号18,19,20)を用いてDGA1破壊用のコンストラクトを作成した。配列番号18,19は、DGA1のORFの3’末端側を36bp残した株(Δdga1-1株)を作製するコンストラクトを増幅するために用い、配列番号18,20は、DGA1のORFの3’末端側を完全に破壊した株(Δdga1-2株)を作製するコンストラクトを増幅するために用いた(図2参照)。なお、いずれの破壊株でもDGA1のORFの5’末端側は、81bpが残っている。増幅は、KODplus酵素を用い、基本的には既述の条件で行ったが、テンプレートはURA3をクローニングしたプラスミド(pT-URA3)を用い、プライマー濃度は0.25μMを用い、1.2mM MgCl2を含む緩衝液中で、94℃で2分間反応させた後、94℃(15秒間)/55℃(30秒間)/68℃(90秒間)を1サイクルとして30回くり返した。増幅されたコンストラクトは、PCR purification kit(キアゲン)で精製し、既に述べた形質転換法を用いて、サッカロミセス・セレビシェBY4741野生株に導入した。コンストラクトの両端がDGA1のORFと相同性を有していることから、その領域で染色体のDGA1と相同組み換えを起こし、DGA1のORFの大半がURA3で置き換えられた2種類の破壊株を取得した。破壊株よりゲノムDNAを抽出(ISOPLANT、ニッポンジーン)してテンプレートとし、表1のDGA1のORFの外側の配列をプライマー(配列番号21,22)として用いてPCRを行い、DGA1のORFの破壊を確認した。
得られたDGA1の破壊株については、さらに5-フルオロオロチン酸(5-FOA)に対する耐性株を取得した。5-FOAは、ウラシル合成系によってウラシルアナログになり、ウラシル合成系が働いている株は致死となる。このことを利用して、ウラシル非要求性株を5-FOAを含む培地にまいて、5-FOA存在下で生育できるようにウラシル合成系に変異がはいったウラシル要求性株をスクリーニングすることができる。培地は、ヒスチジン、メチオニン、ロイシン、ウラシルを含むSD培地に、0.1%5-FOAを含むものを用いた。得られた耐性株(これを最終的なΔdga1-1、Δdga1-2株とする)はウラシル要求性を確認し、BY4741Δdga1株と同様に、pL1091-5,pL1177-2ベクターで形質転換を行った。
得られた形質転換株を10%グルコース存在下の窒素源欠乏SD培地で培養し、脂質含量を測定した(表12)。その結果、DGA1のORFのほぼ全域を破壊しているΔdga1-1株、Δdga1-2株を比較すると、驚いたことには、5’末端側は残っていてもESA1遺伝子側に近い側の3’末端の全域を破壊しているΔdga1-2株にDga1ΔN2pを過剰発現させると、Δdga1株とほぼ同様な顕著な脂質含量の増加が認められたのに対して、3’末端の36bpが残されているΔdga1-1株の場合は、Dga1ΔN2pを過剰発現させても、Δdga1株(ORF全体がカナマイシン耐性遺伝子で破壊されている)のような45%程度の脂質含量は得られなかった。このことは、染色体上のESA1遺伝子近傍のESA1遺伝子発現に影響を与える染色体領域の破壊が重要であることを実証するものである。染色体上のDGA1がほぼ破壊されているΔdga1-1株にDga1ΔN2pを過剰発現させても、脂質含量の顕著な増加が認められないことから、染色体由来のDga1pが発現しないことが、脂質含量の増加につながるわけではないことが再確認された。また、Δdga1-1株とΔdga1-2株の差であるDGA1の3’末端の36bpの存在の有無によって、Dga1ΔN2pによる脂質蓄積の程度が顕著に変化することは、このDNA領域と相互作用する因子がある可能性を示唆するものでもある。なお、Dga1ΔN2pを過剰発現していない株では脂質含量は低いことから、脂質含量の増加の原因はDga1ΔN2pの過剰発現によるものであると解される。
また、形質転換株の脂肪酸組成を調べると、Δdga1-2株ではDga1ΔN2pを発現しているかどうかに関わらず、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)などの飽和脂肪酸が低下し、パルミトオレイン酸(16:1)が増加し、Δdga1株の形質転換株と同様な脂肪酸組成を示した(表13)。一方、Δdga1-1株ではそのような特徴的な脂肪酸組成は認められず、脂肪酸組成と脂質蓄積の程度との関連性がこれらの株でも認められた(表12)。
Figure 2014054239
Figure 2014054239
〔実施例4〕 酵素活性の高いN末端の29残基が切断されたDGAT蛋白質を出芽酵母サッカロミセス・セレビシェに発現させて得られる形質転換株におけるESA1遺伝子の発現
BY4741株の野生株、Δdga1株にDga1ΔN2pを発現させた形質転換株で、実際にESA1の発現が変化しているかを、RT-qPCRで測定した。これらの形質転換株を窒素源欠乏SD培地で培養した時の培養日数ごとにRNAを抽出した。RNAの抽出は、フェノール/クロロホルム抽出を利用した抽出キット(RiboPure-Yeast;アンビオン社製)を用い、最後にDNaseIでDNAを分解して、高純度のRNAを調製した。抽出したRNA中のESA1のmRNAの発現量は、Two-stepのRT-qPCRキット(EXPRESS SYBR GreenER;インビトロジェン社製)を用いて、RNA1μgから逆転写酵素(Super Script VILO)でcDNAを合成し、RNA10ngに相当するcDNAを用いて増幅反応を行った。増幅は、リアルタイムPCR装置(Mx3000P、ストラタジーン社製)を用いて解析した。リファレンス遺伝子としては、TUB1を用い、異なるサンプル間で一定に発現しているTUB1の発現量との相対比を算出して、ESA1の発現量を補正した。その結果、野生株に比べてΔdga1株では、培養初期からESA1発現量の顕著な低下が観察され、その低下は培養2日目頃まで続くことが見出された(図3)。この培養当初から2日までの顕著な発現量の低下は、培養途中での細胞状態の変化による二次的な影響ではなく、DGA1のORFの破壊の直接の影響であると考えられる。その後の培養3日目以降となると、逆にΔdga1株で発現が上昇し野生株での発現を上回っているが、これは、必須遺伝子であるESA1に対しての恒常性維持機構が働きESA1の発現量の低下を補うためにESA1の発現量を増強する制御機構が働いた結果であると推測される。このように、DGA1遺伝子のORFの破壊によりESA1の発現に影響を与えることが示され、特に培養初期でのESA1のmRNA発現量の低下が示されたことは、改めて、DGA1遺伝子の破壊がDga1ΔN2pの高い酵素活性を脂質含量の増加につなげるために適切な細胞内の環境を整えるのに重要であることを確認できた。

Claims (10)

  1. ESA1遺伝子が機能低下しているサッカロミセス・セレビシェに、DGAT(ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ)遺伝子が導入されていることを特徴とする、高脂質生産性を有する形質転換サッカロミセス・セレビシェ。
  2. 前記ESA1遺伝子の機能低下が、染色体上でESA1の隣に位置するDGA1遺伝子のORF中の少なくとも3’末端領域を含む領域が破壊又は欠失されていることによって誘起されることを特徴とする、請求項1に記載の形質転換サッカロミセス・セレビシェ。
  3. 前記導入するジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ遺伝子が、下記(a)〜(c)から選択されたいずれかのアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の形質転換サッカロミセス・セレビシェ;
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、そのN末端側2番目から37番目までのいずれかのアミノ酸残基が欠失しているアミノ酸配列、
    (c)(a)もしくは(b)のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、付加されているアミノ酸配列。
  4. 前記(b)に記載のアミノ酸配列が、配列番号4,6,8のいずれかから選択されたアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項3に記載の形質転換サッカロミセス・セレビシェ。
  5. 前記ESA1遺伝子が機能低下しているサッカロミセス・セレビシェにおいて、さらにLEU2遺伝子が導入されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の形質転換サッカロミセス・セレビシェ。
  6. 請求項1〜5のいずれか記載の形質転換サッカロミセス・セレビシェを培養し、培養した細胞から脂質を採取することを特徴とする、脂質の製造方法。
  7. 高濃度の炭素源を含む培地で培養することを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
  8. 窒素源欠乏培地で培養することを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
  9. 完全培地、栄養要求性培地ではない培地で培養することを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
  10. ロイシンを添加した培地で培養することを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の製造方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015146778A (ja) * 2014-02-07 2015-08-20 国立研究開発法人産業技術総合研究所 酵母を用いたパルミトオレイン酸生産
US10053714B2 (en) 2015-07-28 2018-08-21 Samsung Electronics Co., Ltd. Acid-tolerant yeast cell, method of producing organic acid using the same, and method of producing the yeast cell

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