JP4486004B2 - 河川汚濁負荷推定システム、方法、およびプログラム - Google Patents

河川汚濁負荷推定システム、方法、およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、河川汚濁負荷推定技術に関し、特に所定の河川観測点における河川汚濁負荷量を、その上流地域における降水量と河川観測点における河川汚濁負荷量に基づき推定する河川汚濁負荷推定技術に関する。
近年、自然の水循環系に対する環境負荷の増大が問題となっている。河川事業では、河川の環境保全事業において河川の水質汚濁を管理することが重要視されており、河川観測点において河川汚濁負荷量を正確に把握することが必要とされている。
河川汚濁負荷量を把握する方法として、河川への流入水について汚濁負荷量を計測する方法が考えられる。この際、河川水質に影響を与える汚濁負荷は、その河川の上流域で日常堆積するノンポイント(非点源)汚濁負荷と、下水処理場からの処理水などのポイント(点源)汚染負荷に大別される。
ポイント汚染負荷については下水処理場などで計測できるが、このような設備を通らずに降雨時に直接河川に流入するノンポイント汚濁負荷を計測することは困難である。
これに対して、従来、任意の水循環解析モデル(WEP:Water and Energy transfer Process)モデルを用いて、雨水によるノンポイント汚濁負荷の影響を考慮した分布型汚濁負荷流出モデルを構築する河川汚濁負荷推定技術が提案されている(例えば、非特許文献1,2参照)。このような河川汚濁負荷推定技術では、任意の河川観測点における河川汚濁負荷量を推定する場合、所望の推定河川汚濁負荷量に影響を与える降雨地域すなわち降雨影響範囲を正確に特定する必要がある。従来の河川汚濁負荷推定技術で用いるモデルの多くは、河川流域の地形標高データから、当該流域の落水線を作成して、降雨影響範囲を決定している(例えば、非特許文献3参照)。
http://www.pwri.go.jp/jpn/introduction/project/h13/seika_h13_03.htm#3_2、「都市河川流域における水・物質循環に関する研究」、独立行政法人土木研究所 賈仰文ほか、「WEPモデルと組み合わせる分布型汚濁負荷流出モデルの構築と検証」、2001年研究発表会要旨集、水文・水質源学会、pp44-45、2001年8月 http://www.pwri.go.jp/team/suiri/yata-r/3-1.htm、「WEPモデル(水循環解析ツール)の紹介」、独立行政法人土木研究所
しかしながら、このような従来技術では、河川上流域のうち河川観測点での汚濁負荷に影響を与える降雨影響範囲を正確に決定しておらず、結果として河川汚濁負荷量を精度よく推定できないという問題点があった。
河川水質に対するノンポイント(非点源)汚濁負荷は、地表面を介して中小の支河川から流入する雨水に大きく影響を受ける。この際、雨水の流入経路は地表面だけでなく、例えば地下の水脈を介して山尾根の反対にある支河川へ流入する経路など、把握不可能な他の流入経路を経由する場合も多く、このような複雑な流入経路からの雨水についても考慮する必要がある。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、河川観測点における河川汚濁負荷に対する降雨影響範囲を正確に決定でき、結果として河川汚濁負荷量を精度よく推定できる河川汚濁負荷推定システム、方法、およびプログラムを提供することを目的としている。
このような目的を達成するために、本発明にかかる河川汚濁負荷推定システムは、河川流域内の各地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと任意の河川観測点での河川流量の時系列変化を示す河川流量データとをパターンマッチング分析するパターンマッチング分析部と、この分析結果に基づき河川観測点における河川汚濁負荷に影響する降雨影響範囲を決定する降雨影響範囲決定部とを有する降雨影響範囲決定装置と、降雨影響範囲決定装置で決定された降雨影響範囲内の任意の特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量データと河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データとを含む履歴データを用いて推定モデルを作成する推定モデル作成部と、所望の推定対象時点より前の期間における、特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量パラメータと河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量パラメータとを含む推定条件データから、推定対象時点における河川観測点での推定河川汚濁負荷量を推定モデルを用いて推定する出力推定部とを有する推定装置とを備えている。
この際、パターンマッチング分析部で、各地区の降水量データと河川流量データとのパターン一致度をそれぞれ算出し、降雨影響範囲決定部で、各地区のうちパターン一致度がしきい値以上となった地区を降雨影響範囲とするようにしてもよい。
また、パターンマッチング分析部で、降水量データとして、各計測時点から任意の積算期間にわたって遡って積算した降水量を各計測時点の降水量とする積算降水量データを積算期間ごとにそれぞれ算出し、降雨影響範囲決定部で、各地区のうち任意の積算期間におけるパターン一致度がしきい値以上となった地区を降雨影響範囲とするようにしてもよい。
また、パターンマッチング分析部で、降水量データと河川流量データの時間位置を順次シフトさせて両者のパターン一致度をそれぞれ算出し、これらパターン一致度のうち最大パターン一致度を両者のパターン一致度とするようにしてもよい。
また、推定モデル作成部で、任意の時点より前の期間における、特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量データおよび河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データを含むモデル入力データと、当該時点における河川観測点での河川汚濁負荷量を示すモデル出力データとの組からなる複数の履歴データに基づいて、これら1つ以上の履歴データを代表する入力値と出力値との組からなる複数の事例データを生成し、これら事例データを用いた事例ベースから推定モデルを作成し、出力推定部で、推定条件データと一致または類似する入力値を持つ事例データを推定モデルの事例ベースから検索し、検索した事例データの出力値に基づき当該推定条件データに対応する河川汚濁負荷量を算出するようにしてもよい。
また、推定モデル作成部で、降雨影響範囲内で雨が降っていない非雨天時における河川観測点での河川汚濁負荷量に関する非雨天成分を推定する非雨天汚濁負荷推定モデルと、降雨影響範囲内のいずれかで雨が降っている雨天時における河川観測点での河川汚濁負荷量に関する雨天成分を推定する雨天汚濁負荷推定モデルとを生成し、出力推定部で、非雨天時には非雨天成分を河川観測点での河川汚濁負荷量として出力し、雨天時には非雨天成分と雨天成分の和を河川観測点での河川汚濁負荷量として出力するようにしてもよい。
また、本発明にかかる河川汚濁負荷推定方法は、任意の推定条件データから河川観測点での推定河川汚濁負荷量を推定する河川汚濁負荷推定システムで用いられる河川汚濁負荷推定方法であって、河川流域内の各地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと任意の河川観測点での河川流量の時系列変化を示す河川流量データとをパターンマッチング分析するパターンマッチング分析ステップと、この分析結果に基づき河川観測点における河川汚濁負荷に影響する降雨影響範囲を決定する降雨影響範囲決定ステップと、降雨影響範囲決定装置で決定された降雨影響範囲内の任意の特定地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データとを含む履歴データを用いて推定モデルを作成する推定モデル作成ステップと、所望の推定対象時点より前の期間における、特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量パラメータと河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量パラメータとを含む推定条件データから、推定対象時点における河川観測点での推定河川汚濁負荷量を推定モデルを用いて推定する出力推定ステップとを備えている。
また、本発明にかかるプログラムは、任意の推定条件データから河川観測点での推定河川汚濁負荷量を推定する河川汚濁負荷推定システムのコンピュータに、河川流域内の各地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと任意の河川観測点での河川流量の時系列変化を示す河川流量データとをパターンマッチング分析するパターンマッチング分析ステップと、この分析結果に基づき河川観測点における河川汚濁負荷に影響する降雨影響範囲を決定する降雨影響範囲決定ステップと、降雨影響範囲決定装置で決定された降雨影響範囲内の任意の特定地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データとを含む履歴データを用いて推定モデルを作成する推定モデル作成ステップと、所望の推定対象時点より前の期間における、特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量パラメータと河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量パラメータとを含む推定条件データから、推定対象時点における河川観測点での推定河川汚濁負荷量を推定モデルを用いて推定する出力推定ステップとを実行させる。
本発明によれば、降雨影響範囲決定装置により、河川流域内の各地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと任意の河川観測点での河川流量の時系列変化を示す河川流量データとがパターンマッチング分析されて、この分析結果に基づき河川観測点における河川汚濁負荷に影響する降雨影響範囲が決定され、推定装置により、降雨影響範囲内の任意の特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量データと河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データとを含む履歴データを用いて推定モデルが作成され、所望の推定対象時点より前の期間における、特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量パラメータと河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量パラメータとを含む推定条件データから、推定対象時点における河川観測点での推定河川汚濁負荷量が推定モデルを用いて推定される。
これにより、地表面での流入経路や下水道だけでなく、把握不可能な他のすべての流入経路を考慮した降雨影響範囲を決定できる。
したがって、河川観測点の河川汚濁負荷に影響を与える特定地区の降水量を過不足なく用いて所望の河川汚濁負荷量を推定することができ、極めて高い精度で河川汚濁負荷量を推定できる。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[河川汚濁負荷推定システム]
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかる河川汚濁負荷推定システムについて説明する。図1は、本発明の一実施の形態にかかる河川汚濁負荷推定システムの構成を示すブロック図である。
この河川汚濁負荷推定システムは、所定の推定モデルを用いて、河川流域での降水量と河川観測点での河川汚濁負荷量とから、河川観測点における新たな河川汚濁負荷量をリアルタイムで推定するシステムであり、降雨影響範囲決定装置10と推定装置20とから構成されている。
降雨影響範囲決定装置10は、全体として、入力された処理情報に対して演算処理を行うことにより所望の情報を出力するパーソナルコンピュータなどの情報処理装置からなり、河川流域内の各地区における降水量と河川観測点での河川流量とから、河川観測点での河川汚濁負荷に影響する降雨影響範囲を決定する機能を有している。
推定装置20は、全体として、入力された処理情報に対して演算処理を行うことにより所望の情報を出力するパーソナルコンピュータなどの情報処理装置からなり、降雨影響範囲決定装置で決定された降雨影響範囲内の特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量データと河川観測点の河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データとを含む履歴データを用いて推定モデルを作成する機能と、所望の推定対象時点より前の期間における、特定地区での降水量パラメータと河川観測点での河川汚濁負荷量パラメータとを含む推定条件データから推定対象時点における河川観測点での推定河川汚濁負荷量を推定モデルを用いて推定する機能を有している。
本実施の形態は、降雨影響範囲決定装置10により、河川流域内の各地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと任意の河川観測点での河川流量の時系列変化を示す河川流量データとをパターンマッチング分析し、この分析結果に基づき河川観測点における河川汚濁負荷に影響する降雨影響範囲を決定するようにしたものである。
なお、本実施の形態で推定する河川汚濁負荷量としては、COD(化学的酸素要求量)、BOD(生物化学的酸素要求量)、またはこれに類似する汚濁負荷指標の総量(単位時間あたり)を推定するものとし、推定モデル作成処理や推定処理にも、所望の汚濁負荷指標と同一種類の河川汚濁負荷量データを用いる。
また、本実施の形態では、河川流量はそのほとんどが雨水であると見なしている。また、降雨から1ヶ月以上の長期を経て河川に流入する地下水については降雨との因果関係を特定できず、本発明のような十数時間程度の推定スパンでは取り扱う必要がないと判断し処理対象外とした。また、河川表面からの蒸発分については非常に少なく誤差の範囲であることから対象外とした。
また、本実施の形態において、非雨天時とは、河川観測点の降雨影響範囲全域にわたって降雨が観測されていない状態をいい、雨天時とは、河川観測点の降雨影響範囲内のいずれかで降雨が観測されている状態、およびその降雨の影響が及ぶ時間をいう。また全天時とは、非雨天時および雨天時を含めた状態をいう。
[降雨影響範囲決定装置]
次に、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかる河川汚濁負荷推定システムで用いられる降雨影響範囲決定装置の構成について詳細に説明する。
降雨影響範囲決定装置10には、機能部として、入力部11、パターンマッチング分析部12、および降雨影響範囲決定部13が設けられている。
これら機能部は、専用回路部や演算処理部、または記憶部により実現される。このうち、演算処理部はCPUやDSPなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、マイクロプロセッサ内部や周辺回路のメモリあるいは記憶部からプログラムを読み込んで実行することにより各種機能部を実現する。また、記憶部はハードディスクやメモリなどの記憶装置からなり、専用回路部や演算処理部での処理動作に用いる各種処理情報やプログラムを記憶する。
入力部11は、専用インターフェース回路部からなり、外部の装置または記録媒体から降雨影響範囲処理に用いる処理情報その他のデータを取り込む機能と、取り込んだデータを記憶部(図示せず)へ保存する機能とを有している。
この入力部11で取り込まれる主な処理情報としては、降水量データ41と河川流量データ42とからなる履歴データ40がある。
降水量データ41は、河川観測点30の上流側河川流域の各地区で計測された降水量の時系列変化を示すデータである。これら地区は、河川流域に設定した候補エリアをメッシュ状に区画して設けられている。河川流量データ42は、河川汚濁負荷推定の対象となる河川の河川観測点30で計測された河川流量の時系列変化を示すデータである。
なお、各地区の降水量データ41は、一般的な気象データを提供する提供機関から所望のパラメータを入手すればよく、例えば気象庁からは少なくとも1時間周期で、また河川情報センターからは10分周期でそれぞれ提供されている。また、河川流量データ42は、面速式流量計測方法など公知の計測方法で計測したものを用いればよい。
パターンマッチング分析部12は、演算処理部からなり、入力部11により取り込まれた各地区の降水量データと河川流量データとのパターン一致度をそれぞれ算出することにより両者をパターンマッチング分析する機能と、この際、降水量データとして各計測時点から任意の積算期間にわたって遡って積算した降水量を各計測時点の降水量とする積算降水量データを積算期間ごとにそれぞれ算出する機能と、降水量データと河川流量データの時間位置を順次シフトさせて両者のパターン一致度をそれぞれ算出しこれらパターン一致度のうち最大パターン一致度を両者のパターン一致度とする機能とを有している。この際、パターンマッチング分析としては、パターン一致度として両者の相関値を求める相関分析のほか、DPマッチング(Dynamic Programming:動的計画法)分析など、一般的な分析手法を用いればよい。
降雨影響範囲決定部13は、演算処理部からなり、各地区のうちパターンマッチング分析部12で算出されたパターン一致度がしきい値以上となった地区を降雨影響範囲とする機能と、各地区のうち任意の積算期間におけるパターン一致度がしきい値以上となった地区を降雨影響範囲とする機能と、決定した降雨影響範囲を構成する各地区すなわち特定地区を示す識別情報を降雨影響範囲決定情報43として出力する機能とを有している。
[推定装置]
次に、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかる推定装置の構成について詳細に説明する。
推定装置20には、入力部21、推定モデル作成部23、適応学習部25、および出力推定部26が設けられている。
これら機能部は、専用回路部や演算処理部、または記憶部により実現される。このうち、演算処理部はCPUやDSPなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、マイクロプロセッサ内部や周辺回路のメモリあるいは記憶部からプログラムを読み込んで実行することにより各種機能部を実現する。また、記憶部はハードディスクやメモリなどの記憶装置からなり、専用回路部や演算処理部での処理動作に用いる各種処理情報やプログラムを記憶する。
入力部21は、専用インターフェース回路部からなり、外部の装置または記録媒体から推定モデル作成処理や河川汚濁負荷推定処理に用いる処理情報その他のデータを取り込む機能と、取り込んだデータを記憶部(図示せず)へ保存する機能とを有している。
この入力部21で取り込まれる主な処理情報としては、降雨影響範囲決定装置10から出力された降雨影響範囲決定情報43、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aや雨天汚濁負荷推定モデル24Bの作成処理に用いる履歴データ50、および河川汚濁負荷推定処理に用いる推定条件データ60がある。
履歴データ50は、気象データ51および河川汚濁負荷量データ52から構成されている。
気象データ51は各地区において計測された降水量、気温、さらには日照などの気象環境に関する情報の時系列変化を示す時系列データであり、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aや雨天汚濁負荷推定モデル24Bの作成時にモデル入力データとして用いられる。
河川汚濁負荷量データ52は、河川汚濁負荷推定の対象となる河川の河川観測点30で計測された河川汚濁負荷量の時系列変化を示す時系列データであり、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aや雨天汚濁負荷推定モデル24Bの作成時にモデル入力データおよびモデル出力データとして用いられる。
推定条件データ60は、推定装置20で推定する河川汚濁負荷量を規定する変数値であり、気象パラメータ61と河川汚濁負荷量パラメータ62から構成される。
気象パラメータ61は、履歴データ50の気象データ51に対応するものであり、河川汚濁負荷の推定に用いる特定地区で計測されたあるいは予報された降水量、気温、さらには日照などの気象環境に関する情報の時系列データが用いられる。
河川汚濁負荷量パラメータ62は、履歴データ50の河川汚濁負荷量データ52に対応するものであり、河川汚濁負荷推定の対象となる河川観測点30で計測された河川汚濁負荷量の時系列変化を示す時系列データが用いられる。
推定モデル作成部23は、演算処理部からなり、入力部21で取り込まれて記憶部へ保存された履歴データ22に基づいて、推定条件データ60に対応する推定河川汚濁負荷量を推定するための非雨天汚濁負荷推定モデル24Aと雨天汚濁負荷推定モデル24Bを作成する機能と、作成した各推定モデルを記憶部へ保存する機能とを有している。
このうち、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aは、河川観測点30での河川汚濁負荷量のうち非雨天時に観測される非雨天成分を推定するための推定モデルである。また雨天汚濁負荷推定モデル24Bは、河川観測点30での河川汚濁負荷量のうち雨天時において非雨天成分から増加する雨天成分を推定するための推定モデルである。
非雨天汚濁負荷推定モデル24Aと雨天汚濁負荷推定モデル24Bは、非線形ブラックボックス推定モデルからなる。非線形ブラックボックス推定モデルは、対象の詳細な構成を数式化して同定する物理モデルとは異なり、対象の詳細な構成を把握することなく、対象の入出力データに基づき同定する推定モデルである。推定モデル作成部23で作成する推定モデルの構成とその作成技術については、非線形ブラックボックス推定モデルに関する公知のモデリング技術を利用すればよい。
このような非線形のブラックボックス推定モデルには、事例ベース、ファジー推論ベース、さらにはニューラルネットワークなどを用いたモデルがある。特に、事例ベース推論モデルでは、位相(トポロジー)の概念に基づき、システムの入出力関係の連続性が成り立つ一般的な対象に適用可能な公知のモデリング技術である(例えば、特許2632117号公報など参照)。本実施の形態では、この事例ベースを非雨天汚濁負荷推定モデル24Aと雨天汚濁負荷推定モデル24Bとして用いる場合を例として説明する。
適応学習部25は、演算処理部からなり、河川観測点30で計測された降水量や河川汚濁負荷量を含む履歴データ50に基づき、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aおよび雨天汚濁負荷推定モデル24Bを改訂する機能を有している。
非雨天汚濁負荷推定モデル24Aや雨天汚濁負荷推定モデル24Bとして事例ベースを用いた場合、適応学習部25は、事例ベースを構成する各事例データのうち、これら履歴データ50に対応する事例データの出力値を、この履歴データ50の出力値により所定の比率で変更する。なお、履歴データ50に対応する事例データが存在しなかった場合、適応学習部25は、履歴データ50を新たな事例データとして非雨天汚濁負荷推定モデル24Aや雨天汚濁負荷推定モデル24Bへ追加する。
出力推定部26は、演算処理部からなり、入力部21から入力された特定地区での降水量の時系列データや河川観測点30での河川汚濁負荷量の時系列データを含む推定条件データ60から、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aを用いて非雨天成分を推定する機能と、雨天汚濁負荷推定モデル24Bを用いて雨天成分を推定する機能と、非雨天時には非雨天成分をそのときの推定河川汚濁負荷量70として出力する機能と、雨天時には非雨天成分と雨天成分の和をそのときの推定河川汚濁負荷量70として出力する機能とを有している。
また、出力推定部26は、事例ベースを構成する各事例データから推定条件データ60に類似する類似事例データを検索する機能と、検索された1つ以上の類似事例データの出力値を、それぞれの類似事例データと推定条件データ60との類似度に基づき演算し、推定条件データ60に対応する非雨天成分や雨天成分を推定する機能とを有している。
[降雨影響範囲決定動作]
次に、図2を参照して、本発明の一実施の形態にかかる降雨影響範囲決定装置での降雨影響範囲決定動作について説明する。図2は、本発明の一実施の形態にかかる降雨影響範囲決定装置での降雨影響範囲決定処理を示すフローチャートである。
降雨影響範囲決定装置10の演算処理部(図示せず)は、オペレータの推定要求操作に応じて、図2の降雨影響範囲決定処理を開始する。
まず、入力部11は、外部装置や記録媒体、あるいはオペレータの入力操作に応じて履歴データ40を取り込み、記憶部へ保存する(ステップ100)。図3は、履歴データとして取り込まれる降水量データ41であり、各地区での降水量の時系列変化を示している。図4は、履歴データとして取り込まれる河川流量データ42であり、河川観測点での河川流量の時系列変化を示している。
次に、パターンマッチング分析部12は、予め積算時間として指定されている例えば1時間〜16時間のいずれか未処理の積算期間Tを選択し(ステップ101)、入力部11で取り込んだ河川流量データ42について、各計測時点tにおける河川流量Q(t)から積算期間Tにわたって遡って積算した河川流量Qa(T,t)を各計測時点tの河川流量とする積算河川流量データQa(T)を算出する(ステップ102)。
図5は、積算河川流量データを示す説明図であり、図5(a)は履歴データ40として入力された河川流量データ42を示しており、1時間あたりの河川流量(T=1時間と同じ)から構成されている。図5(b)は積算時間T=3時間のときに算出された積算河川流量データを示しており、計測時点tごとに過去3時間あたりの河川流量が合計された積算河川流量から構成されている。なお、図5(a)のように、入力された河川流量データ42の単位計測期間(1時間)と積算時間(T=1時間)が一致する場合、積算処理を省略して河川流量データ42をそのまま積算河川流量として利用すればよい。
続いて、パターンマッチング分析部12は、河川観測点30の河川流域に設定した候補エリア内の各地区のうち、いずれか未処理の地区Pを選択し(ステップ103)、前述した河川流量の場合と同様に、当該地区Pの降水量データ41について、各計測時点tにおける降水量W(P,t)から積算期間Tにわたって遡って積算した降水量Wa(P,T,t)を各計測時点tの降水量とする積算降水量データWa(P,T)を算出する(ステップ104)。
次に、パターンマッチング分析部12は、算出した積算河川流量データQa(T)と積算降水量データWa(P,T)のパターンマッチング処理を行い、そのマッチングの度合いを示す指標として、両者の最大パターン一致度Cmax(P,T)を算出する(ステップ105)。この際、図6に示すように、いずれか一方、例えば積算降水量データWa(T,P)を時間軸上で順次シフトさせて両者のパターン一致度C(T,P)をそれぞれ求め、その最大パターン一致度Cmax(P,T)を両者のパターン一致度として選択する。また、分析する積算河川流量データQa(T)と積算降水量データWa(P,T)としては、数年間にわたって計測した河川流量および降水量のデータ列をそれぞれパターンとして用いる。
パターンマッチング分析部12は、このようにして、任意の区間Pについてパターンマッチング処理を行った後、河川観測点30の河川流域に設定した候補エリア内のすべての地区についてパターンマッチング処理が終了したか判断し(ステップ106)、未処理の地区が存在する場合には(ステップ106:NO)、ステップ103へ戻って未処理の地区に対するパターンマッチング処理を繰り返す。
一方、すべての地区に対するパターンマッチング処理が終了した場合(ステップ106:YES)、各積算期間のすべてについてパターンマッチング処理が終了したか判断し(ステップ107)、未処理の積算期間が存在する場合には(ステップ107:NO)、ステップ101へ戻って未処理の積算期間に対するパターンマッチング処理を繰り返す。
そして、すべての積算期間に対するパターンマッチング処理が終了した場合(ステップ107:YES)、各地区のうち、任意の積算期間Tでの最大パターン一致度Cmax(P,T)がしきい値Cth以上となった地区Pを、河川観測点30での河川汚濁負荷に影響を与える降雨影響範囲を構成する特定地区として選択し(ステップ108)、これら特定地区を示す識別情報を降雨影響範囲決定情報43として推定装置20へ出力し(ステップ109)、一連の降雨影響範囲決定処理を終了する。
図7は、積算期間T=1時間の場合の各地区のパターン一致度マップである。図8は、積算期間T=16時間の場合の各地区のパターン一致度マップである。この場合、候補エリア31内にメッシュ状設けた地区ごとに、それぞれの最大パターン一致度が色でランク分け表示されている。
特に、図7の場合、最大パターン一致度の最高ランク地区32が河川観測点30の付近に集中しているが、ある程度距離のある地区も含まれていたり、距離的に近い地区でも影響の少ない地区も存在しており、複雑な流入経路の存在が推察できる。また、図8の場合、最大パターン一致度の最高ランク地区32が河川観測点30から離れた地域(山間部)に分散して一様に分布していないことから、山尾根を超える地下水脈など、把握不可能な複雑な流入経路の存在が推察できる。
図9は、パターンマッチング分析結果を示す降雨影響範囲マップである。図7や図8に示した各積算時間のパターン一致度マップから、その最高ランク地区32を特定地区としてそれぞれ選択し、各積算時間の特定地区を合成(論理和)することにより降雨影響範囲33を決定した場合が示されている。
[推定モデル作成動作]
次に、図10および図11を参照して、本発明の一実施の形態にかかる推定装置での推定モデル作成動作について説明する。図10は、本発明の一実施の形態にかかる推定装置での推定モデル作成処理を示すフローチャートである。図11は、本発明の一実施の形態にかかる推定装置での推定モデル作成動作にかかるフロー図である。
推定装置20の演算処理部(図示せず)は、オペレータの推定モデル作成要求操作に応じて、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aおよび雨天汚濁負荷推定モデル24Bを作成するため、図10の推定モデル作成処理を開始する。ここでは、推定条件データ60から推定河川汚濁負荷量70を推定するブラックボックス推定モデルとして、事例ベースを用いる場合を例として説明する。
まず、入力部21は、外部装置や記録媒体、あるいはオペレータの入力操作に応じて、各地区に関する気象データ51および河川汚濁負荷量データ52からなる履歴データ50を取り込み、記憶部(図示せず)へ履歴データ22として保存する(ステップ110)。また、入力部21は、降雨影響範囲決定装置10からの降雨影響範囲決定情報43を取り込み、記憶部へ保存する。
次に、推定モデル作成部23は、記憶部の降雨影響範囲決定情報43に基づいて、履歴データ22の気象データ51のそれぞれに付与されている当該地区の識別情報を参照して降雨影響範囲33を構成する特定地区に関する気象データ51を履歴データ22から選択するとともに、履歴データ22から河川汚濁負荷量データ52を選択し(ステップ111)、選択した気象データ51と河川汚濁負荷量データ52から、モデル入力データとモデル出力データとの組(履歴)を、それぞれの時刻ごとに作成する。
例えば、図11では、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aを作成するために、履歴データ22から選択した気象データ51と河川汚濁負荷量データ52から、モデル入力データ27Aとモデル出力データ27Bを導出して組27Cを作成する。この際、組27Cは、単位時間間隔の時刻T0,T1,…,T9,T10,T11,…について順にシフトさせた期間ごとに、例えば時刻T0〜T9、時刻T1〜T10…ごとに作成する。
例えば、時刻T0〜T9については、モデル入力データ27Aとして、時刻T0〜T9における特定地区A〜Nのそれぞれの降水量(時系列データ)と、時刻T0〜T9における河川観測点30での非雨天時の河川汚濁負荷量(時系列データ)と、降雨影響範囲33の全域にわたり非雨天が時刻T9まで継続している期間長を示す非雨天経過時間とを用いる。
なお、推定モデル作成部23や後述の出力選択手段26Cなどにおける雨天/非雨天の判定については、河川観測点の降雨影響範囲全域にわたって降雨が観測されていない状態を非雨天と判定し、河川観測点の降雨影響範囲内のいずれかで降雨が観測されている状態およびその降雨の影響が及ぶ時間を雨天と判定する。降雨の影響が及ぶ時間は地区ごとに異なるため、例えば降雨影響範囲決定装置でのパターンマッチングの分析結果などに基づき、各地区ごとに予め設定しておけばよい。
この際、非雨天時の河川汚濁負荷量は、降雨影響範囲33内の全特定地区で降水量がゼロの期間における河川観測点30での河川汚濁負荷量を用いればよく、時刻T0〜T9内に雨天期間がある場合、その期間における非雨天時河川汚濁負荷量データついてはデータなしとする。また、非雨天経過時間は、降雨影響範囲33内の全特定地区の降水量データから導出してもよく、履歴データ50として外部装置から取得してもよい。また、モデル出力データ27Bとしては、時刻T0における河川観測点30での非雨天時の河川汚濁負荷量を非雨天成分として用いればよい。
また、雨天汚濁負荷推定モデル24Bを作成するために、履歴データ22から選択した気象データ51と河川汚濁負荷量データ52から、モデル入力データ28Aとモデル出力データ28Bを導出して組28Cを作成する。この際も非雨天汚濁負荷推定モデル24Aと同様に、組28Cは、単位時間間隔の時刻T0,T1,…,T9,T10,T11,…について順にシフトさせた期間ごとに、例えば時刻T0〜T9、時刻T1〜T10…ごとに作成する。
例えば、時刻T0〜T9については、モデル入力データ28Aとして、時刻T0〜T9における特定地区A〜Nのそれぞれの降水量(時系列データ)、日照時間(時系列データ)、気温(時系列データ)と、時刻T0〜T9における河川観測点30での河川汚濁負荷量(時系列データ)とを用いる。また、モデル出力データ28Bとして、河川観測点30での時刻T10の雨天時における河川汚濁負荷量の増分を示す雨天成分を用いる。この雨天成分としては、例えば非雨天時における河川観測点30での河川汚濁負荷量の平均値あるいは直前値から、時刻T10の雨天時における河川観測点30での河川汚濁負荷量を減算することにより求められる。
なお、組として用いるモデル入力データとモデル出力データの時間位置関係にずれがあってもよい。例えば、上記時刻T0〜T9の場合、モデル入力データとして用いる時系列データの最後尾データの時刻T9とモデル出力データの時刻T10とが単位時間間隔で隣接している場合を例として説明したが、モデル出力データの時間位置が時刻T11以降であってもよい。
この際、特定地区ごとに、そのモデル入力データとモデル出力データの時間位置を順次シフトしてそれぞれパターン一致度を求め、最大パターン一致度が得られた際の時間シフト量に基づき、当該特定地区のモデル入力データとモデル出力データを対応させて組27C,28Cを作成してもよい。これにより、より精度の高い推定モデルを作成することができる。
また、降雨影響範囲33を構成するすべての特定地区をモデル作成の対象としてもよいが、これら特定地区のうちから選択した1つ以上の地区をモデル作成の対象としてもよい。例えば、各特定地区のモデル入力データとモデル出力データのパターン一致度を求め、そのパターン一致度の大きい特定地区をモデル作成の対象とすればよい。これにより、モデル入力データ数さらには推定条件データ数を削減できるため推定モデルの規模を縮小でき、モデル作成時さらにはモデル推定時の処理負担を大幅に軽減できるとともに、推定誤差の要因となる地区のデータを排除することができ、より精度の高い推定モデルを作成することができる。
このようにして組27Cをそれぞれ作成した後、推定モデル作成部23は、これら1つ以上の組(履歴)27Cを代表する入力値と出力値との組からなる複数の事例データを生成し、これら事例データを用いた事例ベースから非雨天汚濁負荷推定モデル24Aを作成する(ステップ112〜114)。また、組28Cをそれぞれ作成した後、推定モデル作成部23は、これら1つ以上の組(履歴)28Cを代表する入力値と出力値との組からなる複数の事例データを生成し、これら事例データを用いた事例ベースから雨天汚濁負荷推定モデル24Bを作成し(ステップ112〜114)、一連の推定モデル作成処理を終了する。なお、事例ベース作成の詳細な処理手順は以下で説明する。
[事例ベース]
次に、図12および図13を参照して、本発明の一実施の形態にかかる推定装置で推定モデルとして用いる事例ベースについて説明する。図12は、本発明の一実施の形態にかかる推定装置で用いる事例ベースの作成を示す説明図である。図13は、事例ベースにおける類似度の定義を示す説明図である。
事例ベース推論(CBR:Case-Based Reasoning)とは、入出力関係の定性的な意味づけを行うことなく、学習データから所定のアルゴリズムに則って入出力間の関係付けを行うブラックボックスモデリングの1つであり、与えられた問題に類似する過去の事例を直接利用して所望の解を導く手法である。
本実施の形態では、このような事例ベース推論のうち、TCBM(Topological Case-Based Modeling)を用いる場合を例として説明する。
TCBMは、推論の対象における入出力関係に連続性が成り立つことを前提条件として、事例ベース推論の枠組みを用いるモデリング手法であり、その特徴は、数学の位相論(トポロジー)における連続写像の概念に基づいて、出力の解像度すなわち出力誤差許容幅に応じた事例ベースと、各事例間の関係を示す類似度とを定義した点にある。
図12(a)に示すように、対象から過去に得られた履歴データとして、モデル入力データx1,x2とモデル出力データyとの組が複数得られた場合、これら履歴データは、図12(b)に示すように入力空間に配置される。
ここで、事例ベースに求められる推定誤差すなわち出力誤差許容幅εが与えられた場合、図12(c)に示すように、この出力誤差許容幅εを用いて入力空間をメッシュと呼ばれる部分区間に分割して量子化することにより、出力近傍の大きさに対応する入力近傍すなわち事例を定義できる。
この際、図12(d)に示すように、同一メッシュに複数の履歴データが振り分けられた場合、当該事例を代表する出力値として各履歴データのモデル出力データyの平均値が用いられるとともに、当該事例を代表する入力値としてそのメッシュの中央値が用いられ、各履歴データが1つの事例として統合される。
これにより、すべての事例について、当該事例のメッシュに振り分けられた各履歴データのモデル出力データと当該事例の出力値との誤差が、出力誤差許容幅εを満足することになる。
また、類似度とは、事例ベースが持つ入力空間に設けられた各メッシュのうち、各事例が新規の推定条件すなわち入力データに対応するメッシュとどの程度の類似性を有しているか示す尺度である。
図13では、入力データに対応する中央メッシュに事例が存在すれば、その事例と入力データとは「類似度=0」であると定義されている。また、中央メッシュの1つ隣に存在する事例とは「類似度=1」となり、以降、中央メッシュから1メッシュずつ離れていくごとに類似度が1ずつ増加していく。
したがって、推定を行う場合、類似度iの事例による推定値は、(i+1)×出力許容幅以内の精度を持つことになる。このとき、推定を行う入力値に対してうまく両側の事例が使用された場合は、(i+1)×出力許容幅よりもよい精度の出力値である場合が予想される。また、推定を行う値に対して片側の事例のみが使用された場合は、(i+1)×出力許容幅程度の精度であることが、入出力の連続性のもとに予想される。
推定モデル作成部23では、このようなモデリング手法を用いて、各組27Cをそのモデル入力データ27Aの値に基づき入力空間にプロットし(図10:ステップ112)、出力誤差許容幅εに応じた大きさのメッシュで入力空間を分割して量子化する(ステップ113)。
そして、各メッシュのうち1つ以上の履歴データが振り分けられたメッシュを事例として選択し、そのメッシュ内の履歴データを代表する入力値および出力値を算出して、これら入力値および出力値の組からなる事例データから事例ベースを構成し(ステップ114)、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aとして記憶部へ保存する。
また、各組28Cについても同様にして、そのモデル入力データ28Aの値に基づき入力空間にプロットし(図10:ステップ112)、出力誤差許容幅εに応じた大きさのメッシュで入力空間を分割して量子化する(ステップ113)。
そして、各メッシュのうち1つ以上の履歴データが振り分けられたメッシュを事例として選択し、そのメッシュ内の履歴データを代表する入力値および出力値を算出して、これら入力値および出力値の組からなる事例データから事例ベースを構成し(ステップ114)、雨天汚濁負荷推定モデル24Bとして記憶部へ保存する。
[河川汚濁負荷推定動作]
次に、図14および図15を参照して、本発明の一実施の形態にかかる推定装置での河川汚濁負荷推定動作について説明する。図14は、本発明の一実施の形態にかかる推定装置での河川汚濁負荷推定処理を示すフローチャートである。図15は、本発明の一実施の形態にかかる推定装置での河川汚濁負荷推定動作にかかるフロー図である。
推定装置20の出力推定部26には、機能手段として、非雨天成分推定手段26A、雨天成分推定手段26B、および出力選択手段26Cが設けられている。非雨天成分推定手段26Aは、推定条件データ60から導出した非雨天推定条件データ60Aに基づき非雨天汚濁負荷推定モデル24Aを用いて非雨天成分70Aを推定する機能を有している。雨天成分推定手段26Bは、推定条件データ60から導出した雨天推定条件データ60Bに基づき雨天汚濁負荷推定モデル24Bを用いて雨天成分70Bを推定する機能を有している。出力選択手段26Cは、推定対象時点の非雨天/雨天に応じて河川観測点30での河川汚濁負荷量を選択出力する機能を有している。
推定装置20の演算処理部(図示せず)は、オペレータの推定要求操作に応じてあるいは定期的に、図14の河川汚濁負荷推定処理を開始する。以下では、時刻T90〜T99における推定条件データ60から時刻T100における河川観測点30での河川汚濁負荷量を推定する場合を例として説明する。
まず、入力部21は、外部装置や記録媒体、あるいはオペレータの入力操作に応じて、時刻T90〜T99について各特定地区で計測されまたは各特定地区でのデータとして予報された降水量(時系列データ)、日照時間(時系列データ)、気温(時系列データ)を含む気象パラメータ61、および時刻T90〜T99について河川観測点30で計測または予報された河川汚濁負荷量データ(時系列データ)を含む河川汚濁負荷量パラメータ62からなる推定条件データ60を取り込み、記憶部(図示せず)へ保存する(ステップ120)。
出力推定部26は、非雨天成分推定手段26Aにより、記憶部に保存されている推定条件データ60を読み込み、前述の推定モデル生成処理の際に用いたモデル入力データ27Aと同様にして、時刻T90〜T99における特定地区A〜Nのそれぞれの降水量(時系列データ)、時刻T90〜T99における河川観測点30での非雨天時の河川汚濁負荷量(時系列データ)、降雨影響範囲33の全域にわたり非雨天が時刻T99まで継続している期間長を示す非雨天経過時間などの、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aでの検索に必要な非雨天推定条件データ60Aを推定条件データ60から導出し、記憶部の非雨天汚濁負荷推定モデル24Aの事例ベースから、非雨天推定条件データ60Aと類似する入力値の事例データを検索する(ステップ121)。
そして、検索により得られた類似事例データと非雨天推定条件データ60Aとの類似度に基づいて、各類似事例データの出力値を演算することにより非雨天推定条件データ60Aに対する非雨天成分70Aを推定する(ステップ122)。
ここで、出力選択手段26Cは、推定対象時点T100が非雨天と予想される場合(ステップ123:NO)、この非雨天成分70Aを時刻T100における河川観測点30での河川汚濁負荷量として出力し(ステップ124)、一連の河川汚濁負荷推定処理を終了する。
例えば、図15では、時刻T90〜T99における、特定地区A〜Nのそれぞれの降水量(時系列データ)、日照時間(時系列データ)、気温(時系列データ)、河川観測点30での河川汚濁負荷量、降雨影響範囲33全域での非雨天経過時間とからなる推定条件データ60が取り込まれる。
そして、推定条件データ60から導出した非雨天推定条件データ60Aと類似する入力値を持つ事例データが類似事例データとして非雨天汚濁負荷推定モデル24Aの事例ベースから検索されて、検索された類似事例データの出力値から時刻T100における河川観測点30での非雨天成分が推定され、推定対象時点が非雨天と予測される場合、この非雨天成分70Aが時刻T100における河川観測点30での推定河川汚濁負荷量70として出力される。
一方、推定対象時点T100が雨天と予想される場合(ステップ123:YES)、出力推定部26は、雨天成分推定手段26Bにより、記憶部に保存されている推定条件データ60を読み込み、前述の推定モデル生成処理の際に用いたモデル入力データ28Aと同様にして、時刻T90〜T99における特定地区A〜Nのそれぞれの降水量(時系列データ)、日照時間(時系列データ)、気温(時系列データ)、時刻T90〜T99における河川観測点30での河川汚濁負荷量(時系列データ)などの、雨天汚濁負荷推定モデル24Bでの検索に必要な雨天推定条件データ60Bを推定条件データ60から導出し、記憶部の雨天汚濁負荷推定モデル24Bの事例ベースから、雨天推定条件データ60Bと類似する入力値の事例データを検索する(ステップ131)。
そして、検索により得られた類似事例データと雨天推定条件データ60Bとの類似度に基づいて、各類似事例データの出力値を演算することにより雨天推定条件データ60Bに対する雨天成分70Bを推定する(ステップ132)。
ここで、出力選択手段26Cは、推定対象時点T100が雨天と予想されるため、非雨天成分推定手段26Aで推定した非雨天成分70Aと、雨天成分推定手段26Bで推定した雨天成分70Bとを合成し、その和を時刻T100における河川観測点30での河川汚濁負荷量として出力し(ステップ133)、一連の河川汚濁負荷推定処理を終了する。
例えば、図15では、推定条件データ60から導出した雨天推定条件データ60Bと類似する入力値を持つ事例データが類似事例データとして雨天汚濁負荷推定モデル24Bの事例ベースから検索され、検索された類似事例データの出力値から時刻T100における河川観測点30での非雨天成分が推定され、推定対象時点が雨天と予測される場合、非雨天成分70Aと雨天成分70Bの和が時刻T100における河川観測点30での推定河川汚濁負荷量70として出力される。
なお、出力推定部26において、COD(化学的酸素要求量)、BOD(生物化学的酸素要求量)などの河川汚濁負荷量を推定した後、その推定対象時点における河川観測点30での河川流量を取得して、当該河川汚濁負荷量を河川流量で除算することにより、推定対象時点における汚濁負荷の濃度すなわち河川水質を算出出力してもよい。なお、河川流量については、外部装置あるいは当該河川汚濁負荷推定システムに設けた河川流量推定装置で、降雨影響範囲33での降水量に基づき推定対象時点における河川観測点30での河川流量を推定したものを用いればよい。
図16は、本実施の形態にかかる推定装置による河川汚濁負荷推定結果を示すグラフである。推定河川汚濁負荷量70は、降雨影響範囲33内の任意の特定地区で計測された気象データ51に基づいて推定した河川観測点30での河川汚濁負荷量(COD総量値)である。実際に河川観測点30で実測した実測河川汚濁負荷量(COD総量値)71と推定河川汚濁負荷量70とがほとんど重なってプロットされており、極めて高い精度で河川汚濁負荷量が推定されていることがわかる。
また、推定対象時点が非雨天の場合には、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aで推定された非雨天成分(非雨天COD総量値)70Aを推定河川汚濁負荷量70とし、推定対象時点が雨天の場合には、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aで推定された非雨天成分70Aと雨天汚濁負荷推定モデル24Bで推定された雨天成分(雨天COD総量値)70Bとの和を推定河川汚濁負荷量70としている。
このため、河川流量があまり変化しない非雨天の期間だけでなく、河川流量が大きく変化する雨天の期間についても精度よく推定されている。
なお、本実施の形態にかかる非雨天汚濁負荷推定モデル24Aと雨天汚濁負荷推定モデル24Bは、入力された推定条件データ60からリアルタイムで河川汚濁負荷量を推定するモデルである。すなわち所望時刻における河川汚濁負荷量を、その所望時刻までの所定期間に計測された各地区の気象データや河川観測点での河川汚濁負荷量から推定する。したがって、将来の所望時刻における河川汚濁負荷量を予測する場合、その所望時刻までの所定期間における各地区の気象データや河川観測点での河川汚濁負荷量が必要となる。このような場合は、一般的な気象データを提供する提供機関から予報として提供されているデータや、所望時刻まで順に推定した推定河川汚濁負荷量を用いればよい。
このように、本実施の形態は、降雨影響範囲決定装置10により、河川流域内の各地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと任意の河川観測点での河川流量の時系列変化を示す河川流量データとをパターンマッチング分析し、この分析結果に基づき河川観測点における河川汚濁負荷に影響する降雨影響範囲を決定するようにしたので、支河川への雨水の流入経路を明確化することなく、河川観測点における河川汚濁負荷に対する降雨影響範囲を決定できる。
これにより、地表面での流入経路や下水道だけでなく、把握不可能な他のすべての流入経路を考慮した降雨影響範囲を決定できる。
したがって、推定装置20により、降雨影響範囲内の任意の特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量データと河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データとを含む履歴データを用いて推定モデルを作成し、所望の推定対象時点より前の期間における、特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量パラメータと河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量パラメータとを含む推定条件データから、推定対象時点における河川観測点での推定河川汚濁負荷量を推定モデルを用いて推定することにより、河川観測点の河川汚濁負荷に影響を与える特定地区の降水量を過不足なく用いて所望の河川汚濁負荷量を推定することができ、極めて高い精度で河川汚濁負荷量を推定できる。
また、本実施の形態では、パターンマッチング分析の際、各地区の降水量データと河川流量データとのパターン一致度をそれぞれ算出し、各地区のうちパターン一致度がしきい値以上となった地区を降雨影響範囲とするようにしたので、複雑な数式や処理を用いることなく、高い精度で降雨影響範囲を決定できる。
また、パターンマッチング分析の際、降水量データとして、各計測時点から任意の積算期間にわたって遡って積算した降水量を各計測時点の降水量とする積算降水量データを積算期間ごとにそれぞれ算出し、各地区のうち任意の積算期間におけるパターン一致度がしきい値以上となった地区を降雨影響範囲とするようにしたので、特定地区から河川観測点までの雨水到達の遅れとその積分効果を考慮して降雨影響範囲を決定できる。
また、パターンマッチング分析の際、降水量データと河川流量データの時間位置を順次シフトさせて両者のパターン一致度をそれぞれ算出し、これらパターン一致度のうち最大パターン一致度を両者のパターン一致度とするようにしたので、特定地区から河川観測点までの流入経路やその流入経路による雨水到達の遅れを詳細に把握するための情報および分析処理を必要とすることなく、降水量および河川流量のみを用いて降雨影響範囲を決定できる。
また、推定装置において、任意の時点より前の期間における、特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量データおよび河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データを含むモデル入力データと、当該時点における河川観測点での河川汚濁負荷量を示すモデル出力データとの組からなる複数の履歴データに基づいて、これら1つ以上の履歴データを代表する入力値と出力値との組からなる複数の事例データを生成し、これら事例データを用いた事例ベースから推定モデルを作成し、推定条件データと一致または類似する入力値を持つ事例データを推定モデルの事例ベースから検索し、検索した事例データの出力値に基づき当該推定条件データに対応する河川汚濁負荷量を算出するようにしている。
これにより、過去に経験した事例(問題と解答)を事例ベースとして蓄積し、システムの入出力関係を内包する入出力事例を用いているため、入出力関係を表すための特殊なモデルを必要としない。したがって、過去に計測した履歴データを用意するだけで、その履歴データに起因する推定精度を持つ推定モデルを容易に作成することができる。
また、検索した類似事例の出力値(解答)から、新たに入力された推定条件(問題)に対する推定河川汚濁負荷量(解答)を算出しているため、推定条件と一致する事例データが存在しない場合でも、類似事例の類似度に応じた推定精度で、所望の推定河川汚濁負荷量を得ることができる。
また、本実施の形態では、推定装置20において、所望の河川汚濁負荷量を推定するための推定モデルとして、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aと雨天汚濁負荷推定モデル24Bを作成し、推定対象時点が非雨天の場合には、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aで推定された非雨天成分70Aを推定河川汚濁負荷量70とし、推定対象時点が雨天の場合には、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aで推定された非雨天成分70Aと雨天汚濁負荷推定モデル24Bで推定された雨天成分70Bとの和を推定河川汚濁負荷量70とするようにしたので、河川流量があまり変化しない非雨天の期間だけでなく、河川流量が大きく変化する雨天の期間についても精度よく推定できる。
非雨天の場合、河川流量に大きな変化がなく、雨水による汚濁負荷が河川汚濁負荷へ与える影響がほとんどないため、河川汚濁負荷は一定と見なされることが多いが、非雨天が続くと風などの雨水以外の要因により汚濁負荷が増加して河川汚濁負荷へ与える影響が増大する。図17は、非雨天時の河川汚濁負荷量の変化を示すグラフであり、例えば、降雨影響範囲33全域の総降水量81が少ない非雨天期間82において、河川汚濁負荷量(COD量)80が増大していることがわかる。
本実施の形態では、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aのモデル入力データとして、非雨天経過時間を用いているため、このような非雨天時における汚濁負荷の増大を河川汚濁負荷量の推定に導入することができ、精度よく河川汚濁負荷量を推定できる。
また、雨天の場合、河川流量が増大して雨水による汚濁負荷が河川汚濁負荷へ与える影響が大きくなるため、非雨天時の推定モデルでは推定誤差の増加に繋がる。本実施の形態では、このような雨天時に増加する汚濁負荷を推定する雨天汚濁負荷推定モデル24Bを、非雨天汚濁負荷推定モデル24Aとは別個に設けて推定するようにしたので、河川流量があまり変化しない非雨天の期間だけでなく、河川流量が大きく変化する雨天の期間についても高い精度の河川汚濁負荷推定を実現できる。
なお、本実施の形態にかかる図14の河川汚濁負荷推定処理では、推定対象時点が雨天の場合のみ雨天成分70Bを算出する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、非雨天/雨天にかかわらず、非雨天成分70Aと雨天成分70Bの両方を推定しておき、推定対象時点が非雨天の場合には、非雨天成分70Aを所望の河川汚濁負荷量として出力し、雨天の場合には、非雨天成分70Aと雨天成分70Bとの和を所望の河川汚濁負荷量として出力してもよい。
[実施の形態の拡張]
以上の実施の形態では、降雨影響範囲決定装置10と推定装置20とが別個の装置で構成されている場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば1つのパーソナルコンピュータでこれら降雨影響範囲決定装置10と推定装置20を実現してもよい。
あるいは、ネットワークを介して1つの降雨影響範囲決定装置10と複数の推定装置20とを接続し、1つの降雨影響範囲決定装置10で、各推定装置20が推定処理の対象とする個々の河川流域について、それぞれの最適な降雨影響範囲を決定するようにしてもよい。これにより、効率よく河川汚濁負荷推定システムを構築することができる。
また、推定装置20における推定モデル作成時に、推定モデル作成部23により、降雨影響範囲決定情報43で指定された特定地区の履歴データを選択する場合を例として説明したが、入力部21で全地区の履歴データ50を取り込んだ際に、各履歴データに付与されている当該地域の識別情報を参照して降雨影響範囲決定情報43で指定された特定地区の履歴データを選択してもよい。
また、入力部21で履歴データ50を取り込む際、外部装置や記録媒体から各履歴データに付与されている当該地域の識別情報を参照して降雨影響範囲決定情報43で指定された特定地区の履歴データを選択して取り込んでもよい。あるいは履歴データ50として降雨影響範囲決定情報43で指定された特定地区の履歴データ50のみを外部装置で選択して推定装置20へ入力するようにしてもよい。
また、各地区については、河川流域内の各計測ポイントに対応して設けてもよいが、複数の計測ポイントを統合して設けてもよい。この場合は、統合の対象となる計測ポイントで計測された降水量や気温の統計値、例えば平均値や代表値などそれぞれ算出し、当該地区の降水量や気温として用いればよい。
また、以上の実施の形態では、降水量や河川汚濁負荷量に加えて非雨天経過時間、気温、日照時間などをモデル入力データとして推定モデルを作成する場合を例として説明したが、モデル入力データがこれらデータに限定されるものではなく、他のデータをモデル入力データとして加えて、より精度の高い河川汚濁負荷推定を実現することもできる。
また、以上の実施の形態では、降雨影響範囲決定装置10での降雨影響範囲決定動作と推定装置20での推定動作とが個別に実行される場合を例として説明したが、これら動作を連携させてもよい。
例えば、1回あるいは複数回の推定動作が終了するたびに、推定装置20の出力推定部26から降雨影響範囲決定装置10へ降雨影響範囲決定動作の開始を指示するようにしてもよい。
あるいは、適用学習部25により、推定値と後から入力された対応する実測値とを比較して推定誤差を求め、この推定誤差がしきい値を上回った時点で降雨影響範囲決定装置10へ降雨影響範囲決定動作の開始を指示するようにしてもよい。
これにより、常に正確な降雨影響範囲に基づき河川汚濁負荷量を予測することができ、高い推定精度が得られる。
本発明の一実施の形態にかかる河川汚濁負荷推定システムの構成を示すブロック図である。 本実施の形態にかかる降雨影響範囲決定装置での降雨影響範囲決定処理を示すフローチャートである。 履歴データとして用いる降水量データ例である。 履歴データとして用いる河川流量データ例である。 積算河川流量データを示す説明図である。 パターンマッチング分析を示す説明図である。 各地区のパターン一致度マップ例(積算期間T=1時間)である。 各地区のパターン一致度マップ例(積算期間T=16時間)である。 パターンマッチング分析結果を示す降雨影響範囲マップである。 本実施の形態にかかる推定装置での推定モデル作成処理を示すフローチャートである。 本実施の形態にかかる推定装置での推定モデル作成動作にかかるフロー図である。 本実施の形態にかかる推定装置で用いる事例ベースの作成を示す説明図である。 事例ベースにおける類似度の定義を示す説明図である。 本実施の形態にかかる推定装置での河川汚濁負荷推定処理を示すフローチャートである。 本実施の形態にかかる推定装置での河川汚濁負荷推定動作にかかるフロー図である。 本実施の形態にかかる推定装置による河川汚濁負荷推定結果を示すグラフである。 非雨天時の河川汚濁負荷量の変化を示すグラフである。
符号の説明
10…降雨影響範囲決定装置、11…入力部、12…パターンマッチング分析部、13…降雨影響範囲決定部、20…推定装置、21…入力部、22…履歴データ、23…推定モデル作成部、24A…非雨天汚濁負荷推定モデル、24B…雨天汚濁負荷推定モデル、25…適応学習部、26…出力推定部、26A…非雨天成分推定手段、26B…雨天成分推定手段、26C…出力選択手段、27A…モデル入力データ(非雨天)、27B…モデル出力データ(非雨天)、27C…組(非雨天)、28A…モデル入力データ(雨天)、28B…モデル出力データ(雨天)、28C…組(雨天)、30…河川観測点、31…候補エリア、32…特定地区、33…降雨影響範囲、40…履歴データ、41…降水量データ、42…河川流量データ、43…降雨影響範囲決定情報、50…履歴データ、51…気象データ、52…河川汚濁負荷量データ、60…推定条件データ、60A…非雨天推定条件データ、60B…雨天推定条件データ、61…気象パラメータ、62…河川汚濁負荷量パラメータ、70…推定河川汚濁負荷量、70A…非雨天成分、70B…雨天成分、71…実測河川汚濁負荷量、80…河川汚濁負荷量、81…総降水量、82…非雨天期間。

Claims (8)

  1. 河川流域内の各地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと任意の河川観測点での河川流量の時系列変化を示す河川流量データとをパターンマッチング分析するパターンマッチング分析部と、この分析結果に基づき前記河川観測点における河川汚濁負荷に影響する降雨影響範囲を決定する降雨影響範囲決定部とを有する降雨影響範囲決定装置と、
    前記降雨影響範囲決定装置で決定された降雨影響範囲内の任意の特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量データと前記河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データとを含む履歴データを用いて推定モデルを作成する推定モデル作成部と、所望の推定対象時点より前の期間における、前記特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量パラメータと前記河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量パラメータとを含む推定条件データから、前記推定対象時点における前記河川観測点での推定河川汚濁負荷量を前記推定モデルを用いて推定する出力推定部とを有する推定装置と
    を備えることを特徴とする河川汚濁負荷推定システム。
  2. 請求項1に記載の河川汚濁負荷推定システムにおいて、
    前記パターンマッチング分析部は、前記各地区の降水量データと前記河川流量データとのパターン一致度をそれぞれ算出し、
    前記降雨影響範囲決定部は、前記各地区のうち前記パターン一致度がしきい値以上となった地区を降雨影響範囲とする
    ことを特徴とする河川汚濁負荷推定システム。
  3. 請求項1に記載の河川汚濁負荷推定システムにおいて、
    前記パターンマッチング分析部は、前記降水量データとして、各計測時点から任意の積算期間にわたって遡って積算した降水量を各計測時点の降水量とする積算降水量データを積算期間ごとにそれぞれ算出し、
    前記降雨影響範囲決定部は、前記各地区のうち任意の積算期間におけるパターン一致度がしきい値以上となった地区を降雨影響範囲とする
    ことを特徴とする河川汚濁負荷推定システム。
  4. 請求項2または請求項3に記載の河川汚濁負荷推定システムにおいて、
    前記パターンマッチング分析部は、前記降水量データと前記河川流量データの時間位置を順次シフトさせて両者のパターン一致度をそれぞれ算出し、これらパターン一致度のうち最大パターン一致度を両者のパターン一致度とすることを特徴とする河川汚濁負荷推定システム。
  5. 請求項1に記載の河川汚濁負荷推定システムにおいて、
    前記推定モデル作成部は、任意の時点より前の期間における、前記特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量データおよび前記河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データを含むモデル入力データと、当該時点における前記河川観測点での河川汚濁負荷量を示すモデル出力データとの組からなる複数の履歴データに基づいて、これら1つ以上の履歴データを代表する入力値と出力値との組からなる複数の事例データを生成し、これら事例データを用いた事例ベースから前記推定モデルを作成し、
    前記出力推定部は、前記推定条件データと一致または類似する入力値を持つ事例データを前記推定モデルの事例ベースから検索し、検索した事例データの出力値に基づき当該推定条件データに対応する河川汚濁負荷量を算出する
    ことを特徴とする河川汚濁負荷推定システム。
  6. 請求項1に記載の河川汚濁負荷推定システムにおいて、
    前記推定モデル作成部は、前記降雨影響範囲内で雨が降っていない非雨天時における前記河川観測点での河川汚濁負荷量に関する非雨天成分を推定する非雨天汚濁負荷推定モデルと、前記降雨影響範囲内のいずれかで雨が降っている雨天時における前記河川観測点での河川汚濁負荷量に関する雨天成分を推定する雨天汚濁負荷推定モデルとを生成し、
    前記出力推定部は、前記非雨天時には前記非雨天成分を前記河川観測点での河川汚濁負荷量として出力し、前記雨天時には前記非雨天成分と前記雨天成分の和を前記河川観測点での河川汚濁負荷量として出力する
    ことを特徴とする河川汚濁負荷推定システム。
  7. 任意の推定条件データから河川観測点での推定河川汚濁負荷量を推定する河川汚濁負荷推定システムで用いられる河川汚濁負荷推定方法であって、
    河川流域内の各地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと任意の河川観測点での河川流量の時系列変化を示す河川流量データとをパターンマッチング分析するパターンマッチング分析ステップと、
    この分析結果に基づき前記河川観測点における河川汚濁負荷に影響する降雨影響範囲を決定する降雨影響範囲決定ステップと、
    前記降雨影響範囲決定装置で決定された降雨影響範囲内の任意の特定地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと前記河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データとを含む履歴データを用いて推定モデルを作成する推定モデル作成ステップと、
    所望の推定対象時点より前の期間における、前記特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量パラメータと前記河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量パラメータとを含む推定条件データから、前記推定対象時点における前記河川観測点での推定河川汚濁負荷量を前記推定モデルを用いて推定する出力推定ステップと
    を備えることを特徴とする河川汚濁負荷推定方法。
  8. 任意の推定条件データから河川観測点での推定河川汚濁負荷量を推定する河川汚濁負荷推定システムのコンピュータに、
    河川流域内の各地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと任意の河川観測点での河川流量の時系列変化を示す河川流量データとをパターンマッチング分析するパターンマッチング分析ステップと、
    この分析結果に基づき前記河川観測点における河川汚濁負荷に影響する降雨影響範囲を決定する降雨影響範囲決定ステップと、
    前記降雨影響範囲決定装置で決定された降雨影響範囲内の任意の特定地区における降水量の時系列変化を示す降水量データと前記河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量データとを含む履歴データを用いて推定モデルを作成する推定モデル作成ステップと、
    所望の推定対象時点より前の期間における、前記特定地区での降水量の時系列変化を示す降水量パラメータと前記河川観測点での河川汚濁負荷量の時系列変化を示す河川汚濁負荷量パラメータとを含む推定条件データから、前記推定対象時点における前記河川観測点での推定河川汚濁負荷量を前記推定モデルを用いて推定する出力推定ステップと
    を実行させるプログラム。
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