JP4485233B2 - 鞘状酸化鉄粒子の生産方法、及びその利用 - Google Patents

鞘状酸化鉄粒子の生産方法、及びその利用 Download PDF

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Description

本発明は、鞘状酸化鉄粒子の生産方法、及び該生産方法によって生産される鞘状酸化鉄粒子、並びに改良型バイオ浄水法に関するものである。より具体的には、鉄細菌を用いるバイオ浄水法において生じる凝集物から、高純度な鞘状酸化鉄粒子を生産・回収する方法、さらには上記鞘状酸化鉄粒子生産・回収工程を含むことによって、従来廃棄処分していた凝集物から有効な資源(特に鉄資源)を回収することができる改良型バイオ浄水法に関するのものである。
現在、上水道の原水の浄化は、主にポリ塩化アルミニウム(以下、PAC)を凝集剤として添加し、原水中の不純物を凝集沈殿させた後、塩素消毒する所謂「急速濾過浄水法」が一般的に行なわれている。当該浄水法はその高い処理能力という大きなメリットはあるものの、得られた浄水の塩素臭・腐敗臭の問題、残存する溶解性Alの人体への影響、浄化によって生成される莫大な量の凝集沈殿物の埋め立て・廃棄の問題等の種々大きな問題を抱えている。
一方、砂層で原水を濾過するだけの所謂「緩速濾過浄水法」が知られている。当該浄水法は、PAC等の凝集剤を用いることなく、砂層の表面に微生物膜形成させ、砂層で濾過するという単純な工程で、良質な水を得ることができるため安全かつ、安価な浄水方法として注目されている。特にその鉄凝集除去能力から、レプトシリックス( Leptothrix )属、ガリオネラ( Gallionella )属等の鉄細菌を用いた浄水方法、及び浄水装置等が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし当該浄水方法においても、絶対的な処理能力が低いこと、濾過を継続すると懸濁質が生物濾過膜上に堆積して濾過池が閉塞してしまうこと、天然色素成分の分解に限界があり、色が残存してしまうこと等の問題点がある。
そこで近年、上記緩速濾過浄水法の改良法として、所謂「中速濾過浄水法」が開発され、実用化されている(例えば、特許文献2、及び非特許文献1参照)。中速濾過浄水法は、濾過層の洗浄方式としてダイレクト表洗方式を用いることで、濾過層の閉塞を防ぎ濾過速度の長期維持が可能である。
ところで、上記鉄細菌を用いた浄水方法によって生ずる凝集沈殿物には、含水酸化鉄として鉄(Fe)が多量に含まれる。また当該凝集沈殿物は微生物の分別作用によって鉄の純度が比較的高められた沈殿層が選抜して利用が可能なこと、沈殿物層上に急速濾過浄水法によって生じた凝集沈殿物とは異なり凝集剤の混入が無いこと等の理由から、鉄資源としての有効利用の可能性を秘めている。さらには、当該凝集沈殿物には、特異な構造をもった中空繊維状の酸化鉄(鞘状酸化鉄粒子)が含まれている。かかる鞘状酸化鉄粒子は、鉄細菌が原水中の鉄イオンをはじめとする種々のイオンを凝集する際に生成する構造物であって、鉄細菌を用いた浄水方法における浄化の基本原理を担う物質である。
当該鞘状酸化鉄粒子は、鉄資源としての利用はもとより、中空状であることから断熱材や保温材としての利用、その色と繊維状であることから剥離し難い顔料としての利用が可能である。またその構成粒子が超常磁性を有すことが推察されており、磁気冷却冷媒等の用途が期待されている。
かかる鞘状酸化鉄の生産方法として、鉄粉と鉄細菌とを用いて生産する方法が既に知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開平1−266897号公報(公開日:平成1年(1989)10月24日) 特開平7−100491号公報(公開日:平成7年(1995)4月18日) 特開平10−338526号公報(公開日:平成10年(1998)12月22日) 田村 太喜男、綱井 孝司、石丸 豊、中田 章雅、「鉄バクテリアを利用した生物濾過法による地下水中の除鉄・除マンガンの開発」、水道協会雑誌、第68巻、第6号(第777号)、平成11年6月、pp.2−pp.13
上記鉄細菌が生成する鞘状酸化鉄粒子を鉄資源として有効利用、特にその特異な構造及び特性を利用した用途、すなわち断熱材・磁気冷却冷媒等に利用する場合には、ある程度の高純度がもとめられる。したがって、上記緩速(中速)濾過浄水法で得られた凝集沈殿物(逆洗水)を有効活用するためには、当該鞘状酸化鉄粒子のみを分離・回収する方法が必要となる。しかしながら、凝集沈殿物中において該鞘状酸化鉄粒子は、複雑に絡み合い塊状となっている。このために塊の内部に含まれる他の凝集沈殿物(不純物)を分離するのが困難である。現在のところ、鞘状酸化鉄粒子の有効な分離・回収方法は開発されていない。よって、結局上記緩速(中速)濾過浄水法で得られた凝集沈殿物(逆洗水)は、PAC等の凝集剤を用いて凝集沈殿させ、回収した凝集沈殿物を埋め立て廃棄している。それゆえ上記緩速(中速)濾過浄水法は、資源の有効利用の観点においては十分な浄水方法とはなっていない。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は緩速(中速)濾過浄水法をはじめとする微生物(鉄細菌)を用いた浄水方法(以下、バイオ浄水法)において生成される凝集沈殿物から、鞘状酸化鉄粒子を高純度に分離・回収する方法を開発し、鞘状酸化鉄粒子の生産方法を提供することにある。さらには、上記鞘状酸化鉄粒子の生産方法の利用方法の一例として、バイオ浄水時に生ずる凝集沈殿物(逆洗水)から鞘状酸化鉄粒子の生産(回収)工程を加えた改良型浄水法を実現することにある。
本発明者等は上記課題を解決すべく、鞘状酸化鉄粒子が繊維状であるという性質に着目して鞘状酸化鉄粒子の回収方法について鋭意検討を行なった。その結果、和紙の紙漉きで用いられる粘剤をバイオ浄水時に生ずる凝集沈殿物に作用させることによって、鞘状酸化鉄粒子が分散し、塊化(バルキング)を解消することが可能であることを発見した。かかる分散液を適当なポアサイズ(メッシュサイズ)のネット等で濾過すれば、鞘状酸化鉄粒子を高純度で回収することができる。したがって本発明は上記結果に基づき完成されたものである。
すなわち本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法は、鉄細菌を用いたバイオ浄水法によって生じた凝集沈殿物と、分散剤とを作用させることを特徴としている。上記構成によれば、上記凝集沈殿物中に存在する鞘状酸化鉄粒子のバルキングを解消することができる。それゆえ鞘状酸化鉄粒子と該鞘状酸化鉄粒子にからみついた不純物を分離することでき、該鞘状酸化鉄粒子を高純度で回収し生産することができる。
さらに本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法は、上記鉄細菌が、レプトシリックス属細菌( Leptothrix sp. )であることを特徴としている。上記レプトシリックス属細菌は、バイオ浄水法の濾過層における優勢菌であり、特に該鉄細菌が生成する鞘状酸化鉄粒子は、内径約1.0μm、外径約1.2μmの中空を有し、ほぼ均一なものであること、その構成粒子が超常磁性を有していること等、優れた特性を有する鞘状酸化鉄粒子を生産することができる鉄細菌である。それゆえ、上記レプトシリックス属細菌を用いたバイオ浄水法により得られる凝集沈殿物を用いることによって、優れた特性を有し、かつ広範な用途に利用可能な鞘状酸化鉄を生産することが可能である。
また本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法は、上記分散剤が、ノリウツギ抽出液またはトロロアオイ抽出液であることを特徴としている。上記ノリウツギ抽出液またはトロロアオイ抽出液は、天然物素材であるとともに、分散作用にも優れている。それゆえ、安全かつ高効率をもって鞘状酸化鉄粒子の生産を行なうことができる。
一方、本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子は、上記の鞘状酸化鉄粒子の生産方法により生産されることを特徴としている。上記生産方法により得られる鞘状酸化鉄粒子は、不純物が少なく高純度である。さらには、均質な中空繊維状であり、その構成粒子は超常磁性を有している等、優れた特性を有している。それゆえ本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子は、該鉄鉱資源のみならず、断熱材・保温材・難剥離性赤色顔料・磁気冷却冷媒・磁気共鳴画像診断法(MRI)造影剤の前駆体等の広範な用途に利用が可能である。
本発明にかかる浄水方法は、鉄細菌を用いてなるバイオ浄水法において、上記バイオ浄水法の浄水過程において生成される凝集沈殿物と、分散剤とを作用させる工程を含むことを特徴としている。上記構成によれば、これまで埋め立て廃棄していた上記凝集沈殿物から、鉄資源を有効利用可能な形で回収することができる。それゆえ、資源の有効利用の観点から優れた浄水方法を提供することが可能となる。
また本発明にかかる浄水方法は、上記分散剤が、ノリウツギ抽出液またはトロロアオイ抽出液であることを特徴としている。上記ノリウツギ抽出液またはトロロアオイ抽出液は、天然物素材であるとともに、分散作用にも優れている。それゆえ、安全かつ高効率に鉄資源を回収することが可能となる。それゆえ資源の有効利用性、及び安全性の観点から優れた浄水方法を提供することが可能となる。
本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法、及び本発明にかかる浄水方法によれば、これまで有効な分離回収方法が無かったために埋め立て廃棄するしかなかったバイオ浄水法の凝集沈殿物から、鉄資源として有効利用可能な鞘状酸化鉄粒子を生産することができる。また、本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子は、鉄鉱資源のみならず、断熱材・保温材・難剥離性赤色顔料・磁気冷却冷媒・MRI用造影剤の前駆体等の広範な用途に利用が可能である。
それゆえ本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法、本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子、及び本発明にかかる浄水方法によれば、資源の有効利用性・安全性に優れた浄水方法等を提供することが可能となる。
本発明の効果をより具体的に説明すれば、岡山県内で年間約2,000〜4,000t廃棄されている浄水沈殿物を数tオーダーにまで減少させることができる。さらには当該浄水沈殿物から、年間約50t(純鉄換算)の鉄資源を有効利用可能な形で回収することができる(発明者等試算結果より)。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
<1.本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法>
本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法は、鉄細菌を用いたバイオ浄水法によって生じた凝集沈殿物と、分散剤とを作用させることを特徴としている。
(1−1)バイオ浄水法
本発明における「バイオ浄水法」とは、PAC等の凝集剤の凝集効果のみを利用して原水中の不純物を除去する急速濾過浄水法とは対照的に、微生物の浄化作用によって不純物を除去させる方法である。ここで微生物の浄化作用によって不純物を除去させる方法としては、例えば鉄細菌等の微生物が有する凝集作用を利用して原水中の不純物を凝集沈殿させ除去する方法が挙げられる。また微生物を用いて浄水を行なうこと以外は特に限定されるものではなく、既述の砂層の表面に微生物膜形成させ、砂層で原水を濾過するだけの所謂「緩速濾過浄水法(自然濾過法)」であっても、濾過層の閉塞を防ぎ濾過速度を維持するために濾過層の洗浄を行なう、所謂「中速濾過浄水法」であってもよい。
本発明はバイオ浄水法によって生じた沈殿を用いて鞘状酸化鉄粒子を生産する事を目的とするため、当該バイオ浄水法に用いる微生物は、原水中に存在する鉄イオン等を用いて鞘状酸化鉄粒子生成する能力を有する微生物、すなわち鉄細菌を用いる必要がある。上記鉄細菌は、鞘状酸化鉄粒子生成する能力を有する細菌であれば特に限定されるものではなく、例えばトキソシリックス属細菌( Toxothrix sp. )・レプトシリックス属細菌( Leptothrix sp. )・クレノシリックス属細菌( Crenothrix sp. )・クロノシリックス属細菌( Clonothrix sp. )・ガリオネラ属細菌( Gallionella sp. )・シデロカプサ属細菌( Siderocapsa sp. )・シデロコッカス属細菌( Siderococcus sp. )・シデロモナス属細菌( Sideromonas sp. )・プランクトミセス属細菌( Planktomyces sp. )等が挙げられる。特にレプトシリックス属細菌は、バイオ浄水法の濾過層における優勢菌であり、該菌が生成する鞘状酸化鉄粒子は、内径約1.0μm、外径約1.2μmの中空を有し、ほぼ均一なものであること、その構成粒子が超常磁性を有していること等、優れた特性を有する鞘状酸化鉄粒子を生産することができる鉄細菌であるため、本発明にかかる鞘状酸化鉄の生産方法においては特に好ましい鉄細菌であるといえる。
なお、本発明において「バイオ浄水法」は、上述と同じ作用によって原水中の鉄イオン等を凝集させて除去する現象自体を含む意味であり、真に浄水を目的とした実用規模での浄水の実施のみを含むものではなく、実験室レベルの小規模実施をも含む意味である。
(1−2)バイオ浄水法によって生じた凝集沈殿物
上記分散剤を作用させる凝集沈殿物は、既述のバイオ浄水法において原水中の鉄イオン等が鉄細菌の凝集作用によって凝集し、塊状となって沈殿したものである。ただし、本発明でいう凝集沈殿物は、鉄細菌の凝集作用によって、原水中の不純物が凝集していれば足り、特に沈降(沈殿)していない凝集物をも含む意味である。すなわち本発明でいう凝集沈殿物は、水等において浮遊状態であっても、また洗浄等によって沈殿物が再懸濁された懸濁液状態であってもよい。さらには水分を蒸発させた乾燥状態であってもよい。
また凝集沈殿物の取得方法は、特に限定されるものではなく、浄水施設における濾過層上に堆積した沈殿物を掻きとってもよいし、緩速(中速)濾過浄水法における逆洗水(洗浄水)であってもよい。また別途濾過装置で濾別した濾過残渣であってもよいし、遠心分離機で取得した沈殿であってもよい。さらには自然沈降により沈降した凝集沈殿物を、デカンテーションにより得た沈殿物であってもよい。
(1−3)分散剤
本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法に用いる分散剤は、バイオ浄水法において生じる凝集沈殿物中に含まれる鞘状酸化鉄粒子の塊化(バルキング)を解消することができるものであれば特に限定されるものではなく、天然物であっても合成物であってよい。本発明者らは、鞘状酸化鉄粒子が繊維状であること、粒子同士が絡み合って塊化(バルキング)する等、紙原料の植物繊維と類似する性質を有することに着目して検討を行なった。その結果、和紙の製造に用いられる「ネリ」と呼ばれる粘剤を用いることによって、鞘状酸化鉄粒子の塊化(バルキング)を解消できることを発見した。したがって本発明に用いられる分散剤には、製紙業に一般的に用いられている、抄紙用粘剤が好適に用いることが可能である。抄紙用粘剤としては、例えば和紙の紙漉きに使用されるノリウツギ(糊空木;Hydrangea paniculata)抽出液・トロロアオイ(黄蜀葵;Abelmoschus manihot ( Hibiscus manihot ))抽出液等の植物由来抄紙用粘剤(「ネリ」)や、微生物が生産する多糖類を有効成分とする抄紙用粘剤(例えば、特開平8−325986号公報参照)や、ノニオン性抄紙用粘剤等の合成抄紙用粘剤(例えば、特開2003−253587号公報、及び特開2000−290892号公報参照)等が挙げられる。このうちノリウツギ抽出液・トロロアオイ抽出液等の植物由来抄紙用粘剤は、分散能力が高いこと、及び環境リスク等の安全性が高い等の観点から、特に好ましい分散剤であるといえる。その他、本発明において利用可能な分散剤としては、多糖類、ポリウロニド、アルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体、ポリメタリン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等が利用可能である。
(1−4)凝集沈殿物と分散剤との作用原理、及び作用方法
本発明において鞘状酸化鉄粒子同士のバルキング解消の原理は、上述のとおり和紙の製造(紙漉き)原理に基づいている。以下、和紙の製造(紙漉き)原理を例にして、本発明における凝集沈殿物と分散剤との作用を説明する。
紙漉きの手法、特に「流し漉き」は日本独特の技術で、この手法に欠かせないものが「ネリ」と呼ばれる粘剤である。ネリは、紙原料の繊維が不規則に絡み合って塊状になるのを防ぎ、分散・浮遊させる効果があり、これにより繊維が均等に絡み合い、均質で丈夫な和紙が出来上がる。ネリは植物性粘液で原料としては、既述のノリウツギ・トロロアオイ等がある。かかるネリの作用は、化学的には次のように解明されている。ネリは、複雑な構造の多糖類分子が多くの水分子を吸着した親水コロイド溶液である。その高分子は、概して長く水中に伸びて相互に網目状に絡み合って広がっている。かかるネリと紙原料の植物繊維とを作用させると、植物繊維表面に存在する水和したセルロースやヘミセルロースにネリの長い高分子が吸着し、植物繊維を覆う状態となる。このため、繊維全体が一つの大きな水和層に包まれ、繊維の同士の直接接触による凝集が防がれ、分散状態となる。
上記ネリ(粘剤)は本発明でいう分散剤にあたり、上記植物繊維が本発明でいう鞘状酸化鉄粒子にあたる。発明者等の解析によると、鞘状酸化鉄粒子は、α−FeOOH( Goethite )及びγ−FeOOH( Lepidocrocite )からなり、その表面に水酸基を有する。それゆえ鞘状酸化鉄粒子同士は、水酸基による水素結合によりバルキングを起こしているものと考えられる。上記のネリと同様の作用によって、粒子同士の水素結合を阻害することができれば、バルキングを解消することができるということになる。バルキングを解消することができれば、塊化した鞘状酸化鉄粒子に保持されている泥、砂等の不純物を容易に分離することができる。
次に凝集沈殿物と分散剤との作用方法について説明する。作用方法は、凝集沈殿物と分散剤とが水等の適当な溶媒中で接触し、分散剤の分散効果が得られる条件であれば特に限定されるものではない。簡単には、凝集沈殿物と分散剤とを適当な割合で水に懸濁し、所定時間、静置または振とうしながら作用させればよい。なお凝集沈殿物と分散剤とが接触する頻度が高く、分散効果がより顕著に得られるという点で振とうしながら作用させることが好ましい。また作用温度についても特に限定されるものではないが、0℃以上25℃以下で行なうことが好ましく、5℃以上15℃以下がさらに好ましい。また作用時間の好ましい条件については、凝集沈殿の状態、分散剤の分散能力、分散剤の濃度、凝集沈殿物と分散剤との混合割合等によって異なるため、適宜好ましい条件を検討して適用すればよい。一般的には30分間以上7日間(168時間)以内が好ましく、2時間以上1日間(24時間)以下がさらに好ましい。作用時間が短かすぎると十分な分散効果が得られず、逆に長すぎると作業効率が落ちるからである。また、凝集沈殿物と分散剤の混合割合の好ましい条件についても、凝集沈殿の状態、分散剤の分散能力、分散剤の濃度等によって異なるため、適宜好ましい条件を検討して適用すればよい。本発明者等は後述する実施例において、中速濾過浄水法で得られた凝集沈殿物とノリウツギ抽出液との作用条件(静置時間)について検討を行なっている。
次に上記凝集沈殿物と分散剤の作用後の溶液(以下、分散液と称する)から鞘状酸化鉄粒子を回収する方法について説明する。回収方法は、繊維状の鞘状酸化鉄粒子と泥・砂等の不純物とを分離することができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、鞘状酸化鉄粒子を通さず、不純物のみを通すポアサイズ(メッシュサイズ)を持ったメッシュ,フィルター,紙漉きで用いられる簀子状ネット等に、上記分散液を通じればよい。ここで、回収に用いられるメッシュ等のポアサイズ(メッシュサイズ)の好ましい条件であるが、鞘状酸化鉄の状態、不純物の種類等によって異なるため、適宜好ましい条件を検討して適用すればよい。なおポアサイズ(メッシュサイズ)を大きくすれば、回収時間を短縮することができるが、回収率は下がる。逆にポアサイズ(メッシュサイズ)を小さくすれば回収率は上がるが、回収時間は長くなる。本発明者等の検討によれば、中速濾過浄水法で得られた凝集沈殿物とノリウツギ抽出液との分散液から、鞘状酸化鉄粒子の回収を行なう場合、ポアサイズ(メッシュサイズ)は、約1mm×1mm以下が好ましいということがわかった。本発明者等は後述する実施例において、中速濾過浄水法で得られた凝集沈殿物とノリウツギ抽出液との分散液から、鞘状酸化鉄粒子の回収を行なっている。また上記回収方法によるケイ素、リン等の不純物の除去を確認している。
<2.本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子>
本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子は、上述の本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法によって生産されるものである。したがって、上記本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法によって生産されるものであれば、特に限定されるものではない。
(2−1)本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の解析
本発明者等は、本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子、特にレプトシリックス属細菌によって生成される鞘状酸化鉄粒子について詳細に分析を行なっている。図2〜図5に本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法によって生産した鞘状酸化鉄粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果、及び図6に走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果を示している。図2は、13,500倍のTEM観察結果であり、鞘状酸化鉄粒子の全体を示している。TEM観察によれば、レプトシリックス属細菌によって生成される鞘状酸化鉄粒子は、粒子長(繊維長)約10μm〜100μmであった。また同図及び図6のSEM観察結果(50,000倍)によれば、内口径が約1.0μm・外口径が約1.2μmの中空子繊維状であるということがわかった。またレプトシリックス属細菌によって生成される鞘状酸化鉄粒子は、上記の大きさでありほぼ均一なものであった。
一方図3は図2のA部分の拡大図(30,000倍)であり、図4は図3のB部分の拡大図(300,000倍)であり、図5は図4のC部分の拡大図(1,500,000倍)である。上記観察によれば、鞘状酸化鉄粒子は約5〜10nmの微粒子が凝集して構成されていることがわかる。また図5中「1」の部分について電子線回析を行なったところ、明瞭な回折斑点が見られないことから、上記微粒子は非晶質であると推察される(図7参照)。
また、図5中「1」及び「2」の部分について、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を行なった結果を、それぞれ図8(a)及び図8(b)に示す。図8(a)及び(b)によれば鞘状酸化鉄粒子を構成する微粒子の主成分は、鉄(Fe)及び酸素(O)であることがわかった。なお同図中Cuは、試料支持台由来のピークである。
また、試料振動型磁力計(VSM)を用いて鞘状酸化鉄粒子の磁化曲線を調べた結果、正の磁化率を持つ2種以上の磁性体の存在が示唆された(図9参照)。さらには、鞘状酸化鉄粒子のメスバウアースペクトル分析を行った結果を図10に示す。実線は、鞘状酸化鉄粒子のメスバウアースペクトルを示し、破線で示したものがα−FeOOH( Goethite )のフィッティングカーブを示し、一点鎖線で示したものがγ−FeOOH( Lepidocrocite )のフィッティングカーブを示している。上記フィッティングによって鞘状酸化鉄粒子は、超常磁性オキソ水酸化鉄であるα−FeOOH及びγ−FeOOHで構成されていることがわかった。これまで鉄細菌が生成する鞘状酸化鉄粒子は、α−Fe23で構成されているといわれていたが、その詳細については不明であった。よって上記鞘状酸化鉄粒子がα−FeOOH及びγ−FeOOHで構成されているという結果は、本発明者等が得た新規知見である。
(2−2)本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の用途
本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子は、上記のごとく2種類のオキソ水酸化鉄により構成されていることがわかった。さらに本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子は、不純物を除去しているため高純度である。よって鉄鉱石に混ぜて利用することで高品位の鉄鉱原料に利用することが可能である。また中空繊維状であり、かつ人体無害であるため、モルタル・セメント等に混ぜ込むことで、代替アスベストとして断熱材・保温材として利用が可能である。また、赤色で繊維状であるため、難剥離性の赤色顔料として利用が可能である。
さらには、超常磁性を示すα−FeOOH及びγ−FeOOHで構成されており、鞘状酸化鉄粒子を構成する微粒子がナノサイズであるため、磁気冷却の冷媒としての利用が可能である。また上記物性により、MRI造影剤の前駆体として利用可能である。
その他、中空状微粒子であるため、触媒の担体として利用可能である。またドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用も可能である。
<3.本発明にかかる浄水法>
本発明にかかる浄水法は、鉄細菌を用いてなるバイオ浄水法において、上記バイオ浄水法の浄水過程において生成される凝集沈殿物と、分散剤とを作用させる工程を含むことを特徴としている。すなわち上記本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産を行なう工程(生産工程)を、従来のバイオ浄水法に追加した浄水法である。当該工程を含むことにより、これまで鉄資源のみならず種々広範な用途に利用可能な鞘状酸化鉄粒子を含みながら、その有効な回収手段が無かったために埋め立て廃棄していた廃棄物から、有用な物質を安価に取り出すことが可能となる。それゆえ本発明にかかる浄水法は、資源の有効利用の観点、廃棄物削減の観点から非常に優れた浄水法であるといえる。なお、鞘状酸化鉄粒子生産工程を加える従来のバイオ浄水法とは、鉄細菌を用いた所謂バイオ浄水法であれば特に限定されるものではなく、例えば既述の「緩速濾過浄水法」であっても「中速濾過浄水法」であってもよい。また上記分散剤としては、特に限定されるものではなく、既述の分散剤を適宜選択して用いればよい。ただし、人体・環境等への安全性の観点からは、天然物由来であるノリウツギ抽出液またはトロロアオイ抽出液であることが好ましい。
図1及び図11を用いて本発明にかかる浄水方法をより具体的に説明する。なお、本発明にかかる浄水法は、以下に説示する浄水方法に限定されるものではない。まず図11を用いて従来の緩速濾過浄水法を説明する。図11は、緩速濾過浄水法の装置及び工程を示す模式的に示す図である。まず浄水工程において、浄水層1に原水が原水流入口10から流入する。この時逆洗水排出口12は閉じている。流入した原水に存在する鉄(Fe)、マンガン(Mn)等の不純物は、浄水層に存在する鉄細菌によって凝集し、凝集沈殿物2となる。凝集沈殿物2は濾材3によって濾過され、濾材3を通過した浄水は浄水流出口11から流出する。上記浄水工程によって浄水が得られる。ただし上記浄水工程を継続すると、濾材3上面に凝集沈殿物2が堆積し、濾材3の閉塞を引き起こす。そこで次に逆洗浄工程を行なう。逆洗浄工程においても、原水流入口10から原水を浄水槽1に流入させる。ただし、この時浄水流出口11を閉じて、逆洗水排出口12を開けておく。そうすることで、濾材3上面に堆積した凝集沈殿物2が原水によって洗い流され、逆洗水として逆洗水排出口12から排出される。かかる逆洗水は逆洗水流入口13を通って凝集沈殿槽20に貯められる。次にPAC流入口14から凝集剤のPACが凝集沈殿槽20に投入され、逆洗水に含まれる不純物を再び凝集沈殿させる(凝集工程)。その後、一定期間静置し、自然乾燥を行なった後、廃棄物として埋め立て廃棄がなされる。上述の浄水工程で生成される凝集沈殿物2には、既述のとおり有効な鉄資源である鞘状酸化鉄粒子が多量に含まれている。しかし最終的には、PACによって凝集沈殿を行ない廃棄物として処分されている。
次に図1を用いて本発明にかかる浄水方法の一例を説明する。図1は、本発明にかかる浄水方法の一例における装置、及び工程を模式的に示す図である。図1における浄水工程及び逆洗浄工程は、図11で説明したものと同様である。逆洗浄工程で得られた凝集沈殿物2を含む逆洗水は、逆洗水流入口13から回収槽21に貯められる。次に分散剤投入口19より投入された分散剤(ノリウツギ抽出液・トロロアオイ抽出液等)が、分散剤流入口15を通って回収槽21に投入される。回収槽21では凝集沈殿物2と分散剤とが作用して分散液となる。かかる分散液を適当なポアサイズ(メッシュサイズ)の簀子状ネット16に通すことによって、目的とする鞘状酸化鉄粒子4が簀子状ネット16上に残り、不純物と分散剤とを含む液体(通過液)が簀子状ネット16を通過する。上記通過液を不純物5と分散剤とに分離することによって、分散剤は再び分散剤流出口17を通って再利用される。上記説示した生産工程によって、鞘状酸化鉄粒子4のみを回収し、生産することができる。
以下本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔凝集沈殿物からの鞘状酸化鉄粒子の回収〕
(方法)
中速濾過浄水法で得られた凝集沈殿物の1.0g(含水)に、ノリウツギ抽出液20ml、またはコントロールとして蒸留水20mlを加え、攪拌後、1時間、または4時間、または8時間、または1日(24時間)、または2日間(48時間)、または3日間(72時間)、または4日間(96時間)静置した。なお、上記凝集沈殿物は、京都府城陽市の浄水場より入手した。またノリウツギ抽出液は、備中和紙抄造家の丹下 哲夫氏から入手した(ノリウツギ抽出液の調製方法の概略については、『丹下 哲夫著、手漉和紙の出来るまで』参照)。
所定時間静置後の試料は、図12に示す装置によって濾過を行なった。より具体的には、ガラス管31の底面に、3種類のポリプロピレン製ネット32(株式会社NBC製、品番:PP18(メッシュサイズ;1.59mm×1.59mm)、PP24(メッシュサイズ;1.27mm×1.27mm)、PP30(メッシュサイズ;1.02mm×1.10mm))をそれぞれ設置し、ガラス管の上面から試料を20ml投入した。通過液はビーカー33によって受け、濾過後ネット32上に残ったものを鞘状酸化鉄粒子34とした。この時得られた鞘状酸化鉄粒子34の重量測定、及びエネルギー分散型分光分析(EDS)による組成分析を行なった。EDS装置は(FALCON社製、EDAX)を用いて行ない、加速電圧15keV、working Distans 15mm、take off 30°の条件で分光スペクトルを取得した。
(結果)
図13(a)に凝集沈殿物にノリウツギ抽出液、または蒸留水を加えた直後の様子を示した。また図13(b)に凝集沈殿物にノリウツギ抽出液、または蒸留水を加え2時間静置した後の様子を示した。また図13(c)に凝集沈殿物にノリウツギ抽出液、または蒸留水を加え6時間静置した後の様子を示した。なお各図中、右がノリウツギ抽出液を添加した試料で、左がコントロールとして蒸留水を加えた試料の様子を示している。蒸留水を加えた試料(左)に比して、ノリウツギ抽出液(右)を添加した試料は、鞘状酸化鉄粒子同士がほぐれ、鞘状酸化鉄粒子の繊維状態がはっきりとあらわれている。よってノリウツギ抽出液の分散効果が確認できた。また静置時間を長くするにつれて、鞘状酸化鉄粒子は自然に沈降してくる様子がわかる。
このようにして静置した各試料を図12に記載の装置を用いて濾過を行ない、この時得られた鞘状酸化鉄粒子の重量を調べた。その結果を表1〜3に示す。
Figure 0004485233
Figure 0004485233
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表1はPP18を用いて濾過した際の結果を示し、表2はPP24を用いて濾過した際の結果を示し、表3はPP30を用いて濾過した際の結果を示す。まず表1に示すPP18を用いた濾過では、ほとんど鞘状酸化鉄粒子を回収することができなかった。これは、メッシュのサイズが大きすぎたために、鞘状酸化鉄粒子がネットを通過してしまったものと考えられる。また表2に示すPP24を用いた濾過では、ノリウツギ抽出液を加えて1日〜4日間静置した試料について鞘状酸化鉄粒子の回収が確認された。そのうち2日間静置した試料から、最も多量の鞘状酸化鉄粒子を回収することができた。また表3に示すPP30を用いた濾過では、ノリウツギ抽出液を加えた全ての試料について鞘状酸化鉄粒子の回収が確認され、その回収量はPP24を用いたものよりも多かった。以上の結果より、ノリウツギ抽出液を分散剤として凝集沈殿物に加えることで、確かに目的物である鞘状酸化鉄粒子を回収することが可能となることがわかった。また今回検討した3種類のネットのうち、最もメッシュサイズの小さかったPP30が鞘状酸化鉄粒子の回収に最も適しているということがわかった。
次に図14に上記で回収した鞘状酸化鉄粒子と、回収前の凝集沈殿物についてEDSによる組成分析を行なった結果を示す。図14(a)は、各サンプルのEDSスペクトルパターンを示し、実線が回収前の凝集沈殿物の結果であり、破線が回収した鞘状酸化鉄粒子の結果を示す。また図14(b)は、EDSの結果に基づき各組成成分を半定量により求め円グラフにしたものである。図14の結果によれば、回収後の鞘状酸化鉄粒子の組成はケイ素(Si)、リン(P)等の組成比が減少し、鉄(Fe)の組成比が増加していた。よって、上記操作による回収の効果を確認することができた。すなわち本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の製造方法によって、バイオ浄水法で生じた凝集沈殿物から鞘状酸化鉄粒子を生産・回収することができるということがわかった。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子の生産方法、及び本発明にかかる浄水方法によれば、これまで有効な分離回収方法が無かったために埋め立て廃棄するしかなかったバイオ浄水法の凝集沈殿物から、鉄資源として有効利用可能な鞘状酸化鉄粒子を生産することができる。それゆえ、資源の有効利用の観点において特に優れた浄水方法を提供することができ、国・地方自治体等の水道事業等に有効に利用することが可能である。
また本発明にかかる鞘状酸化鉄粒子は、鉄鉱資源に可能であるため製鉄業において利用が可能である。また断熱材・保温材・難剥離性赤色顔料等に利用可能であるため、土木・建築業に利用可能である。その他、磁気冷却冷媒等に利用が可能であるため、家電をはじめとする電気機器産業にも利用可能である。さらには、化学反応の触媒用担体として利用が可能であるため化学工業・製薬業・食品産業等に利用が可能である。またMRI造影剤の前駆体、DDSに応用可能であるため医療産業等にも利用が可能である。
以上のように本発明は広範な用途に利用が可能であり、非常に有用である。
本発明にかかる浄水方法の一例を説明する模式図である。 鞘状酸化鉄粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果(倍率13,500倍)を示す写真図である。 鞘状酸化鉄粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果(倍率30,000倍)を示す写真図である。 鞘状酸化鉄粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果(倍率300,000倍)を示す写真図である。 鞘状酸化鉄粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果(倍率1,500,000倍)を示す写真図である。 鞘状酸化鉄粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果(倍率50,000倍)を示す写真図である。 図5中「1」の部分について電子線回析を行なった結果を示す図である。 (a)は図5中「1」についてエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を行なった結果を示す図であり、(b)は図5中「2」についてEDXを行なった結果を示す図である。 試料振動型磁力計(VSM)を用いて鞘状酸化鉄粒子の磁化曲線を調べた結果を示す図である。 鞘状酸化鉄粒子のメスバウアースペクトル分析を行った結果を示す図である。 従来の緩速濾過浄水法を説明する模式図である。 実施例において使用した濾過装置を示す模式図である。 (a)は凝集沈殿物にノリウツギ抽出液または蒸留水を加えた直後の様子を示す写真図であり、(b)は凝集沈殿物にノリウツギ抽出液または蒸留水を加え2時間静置した後の様子を示す写真図であり、(c)は凝集沈殿物にノリウツギ抽出液または蒸留水を加え6時間静置した後の様子を示す写真図である。 (a)は実施例において回収した鞘状酸化鉄粒子と回収前の凝集沈殿物の各々についてのエネルギー分散型分光分析(EDS)スペクトルパターンを示す図であり、(b)は各試料についての成分組成を示す円グラフである。
符号の説明
1 浄水槽
2 凝集沈殿物
3 濾材
4 鞘状酸化鉄粒子
5 不純物
10 原水流入口
11 浄水流出口
12 逆洗水排出口
13 逆洗水流入口
14 PAC流入口
15 分散剤流入口
16 簀子状ネット
17 分散剤流出口
18 不純物排出口
19 分散剤投入口
20 凝集沈殿槽
21 回収槽
31 ガラス管
32 ネット
33 ビーカー
34 鞘状酸化鉄粒子

Claims (10)

  1. 鞘状酸化鉄粒子を生成する能力を有する鉄細菌を用いたバイオ浄水法によって生じた鞘状酸化鉄粒子を含有する凝集沈殿物と、分散剤とを溶媒中で作用させて分散液を得る工程、および
    当該分散液から鞘状酸化鉄粒子と不純物とを分離し、当該鞘状酸化鉄粒子を回収する工程を含むことを特徴とする鞘状酸化鉄粒子の生産方法。
  2. 上記鞘状酸化鉄粒子を生成する能力を有する鉄細菌が、トキソシリックス属細菌( Toxothrix sp. )、レプトシリックス属細菌( Leptothrix sp. )、クレノシリックス属細菌( Crenothrix sp. )、クロノシリックス属細菌( Clonothrix sp. )、ガリオネラ属細菌( Gallionella sp. )、シデロカプサ属細菌( Siderocapsa sp. )、シデロコッカス属細菌( Siderococcus sp. )、シデロモナス属細菌( Sideromonas sp. )、およびプランクトミセス属細菌( Planktomyces sp. )のいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の鞘状酸化鉄粒子の生産方法。
  3. 上記鞘状酸化鉄粒子を生成する能力を有する鉄細菌が、レプトシリックス属細菌(Leptothrix sp.)であることを特徴とする請求項1に記載の鞘状酸化鉄粒子の生産方法。
  4. 上記分散剤が、ノリウツギ抽出液またはトロロアオイ抽出液であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の鞘状酸化鉄粒子の生産方法。
  5. 鞘状酸化鉄粒子を生成する能力を有する鉄細菌を用いてなるバイオ浄水法において、
    上記バイオ浄水法の浄水過程において生成され、鞘状酸化鉄粒子を含有する凝集沈殿物と、分散剤とを溶媒中で作用させて分散液を得る工程、および
    当該分散液から鞘状酸化鉄粒子と不純物とを分離し、当該鞘状酸化鉄粒子を回収する工程を含むことを特徴とする浄水方法。
  6. 上記分散剤が、ノリウツギ抽出液またはトロロアオイ抽出液であることを特徴とする請求項5に記載の浄水方法。
  7. 上記鞘状酸化鉄粒子を生成する能力を有する鉄細菌が、トキソシリックス属細菌(Toxothrix sp. )、レプトシリックス属細菌( Leptothrix sp. )、クレノシリックス属細菌( Crenothrix sp. )、クロノシリックス属細菌( Clonothrix sp. )、ガリオネラ属細菌( Gallionella sp. )、シデロカプサ属細菌( Siderocapsa sp. )、シデロコッカス属細菌( Siderococcus sp. )、シデロモナス属細菌( Sideromonas sp. )、およびプランクトミセス属細菌( Planktomyces sp. )のいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の浄水方法。
  8. 上記鞘状酸化鉄粒子を生成する能力を有する鉄細菌が、レプトシリックス属細菌(Leptothrix sp.)であることを特徴とする請求項5または6に記載の浄水方法。
  9. 上記鞘状酸化鉄粒子を含有する凝集沈殿物は、凝集剤を含有しない凝集沈殿物である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の鞘状酸化鉄粒子の生産方法。
  10. 上記鞘状酸化鉄粒子を含有する凝集沈殿物は、凝集剤を含有しない凝集沈殿物である、請求項5ないし8のいずれか1項に記載の浄水方法。
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