JP4483207B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子及び表示装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子及び表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機薄膜、有機薄膜の作製方法、有機エレクトロルミネッセンス素子及び表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)は、自己発光型デバイスであり、高視野角、高コントラスト、高速応答性等の利点を有することから、近年、実用化を含めた開発が盛んになっている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を、陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、さらに、自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0004】
ところが、前記陰極や陽極等の電極間に介在する発光層等の有機化合物含有層は、外気に含まれる水分や酸素などの影響により欠陥が発生しやすく、耐久性の点で問題があった。
【0005】
このような水分の侵入などの影響を抑えるために、中空の金属缶を接着剤で有機EL素子の基板に有機化合物含有層(発光層等、電子輸送層、正孔輸送層等)を被覆するように封止する方法や封止機能を有する保護膜を有機EL素子の外表面に保護膜として、窒化シリコン、窒化アルミニウム等の窒化物や二酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の酸化物からなる薄膜が、真空蒸着、スパッタ、減圧プラズマCVD等により設けられたり、紫外線硬化型アクリル系樹脂や紫外線硬化型エポキシ樹脂等を塗布した後、紫外線硬化することにより重合膜が設けられたりしていた。
【0006】
前記金属缶で封止する方法は部品点数の増加、素子の厚みが増してしまう、また、有機EL素子の構成する前記有機化合物含有層は、機械的硬度、熱的強度が低い上、溶剤によってもダメージを受けやすいことから、素子を構成する基板を加熱する必要がある方法や溶剤を用いる保護膜の形成は好ましい方法とは言えない。
【0007】
上記のような問題点を解決するために、熱CVD法で、ポリパラキシリレンまたはポリクロパラキシリレンの保護膜を形成する方法(例えば、非特許文献1参照。)が検討され、また、減圧下でポリパラキシリレンの保護膜を形成する方法が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
しかしながら、特にリン光性化合物を発光層に含有する有機EL素子においては、特に水分の存在による素子寿命の低下が顕著であり、現在のところ、実用的に十分な素子寿命を実現できていないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−313559号公報
【0010】
【非特許文献1】
応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会会誌Vol.11、p20(2000)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水分に対する封止性が高い有機薄膜、該有機薄膜の作製方法、該有機薄膜を有し、長寿命である有機エレクトロルミネッセンス素子及び表示装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成1〜により達成された。
【0013】
1.基材上に少なくとも発光層及び保護膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該保護膜が大気圧または大気圧近傍の圧力下、対向する電極間に下記一般式(2)で表される化合物を含む反応性ガスを供給する工程、該電極間に高周波電圧を印加することにより該反応性ガスを励起させる工程、保護膜形成前の有機エレクトロルミネッセンス素子を、励起した前記反応性ガスに晒す工程を経て、該保護膜形成前の有機エレクトロルミネッセンス素子上に形成された有機薄膜であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化C】
Figure 0004483207
〔式中、R 〜R 10 は、各々独立に水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を表し、R 11 、R 12 は、各々独立にアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す。m2、n2は、各々独立に0〜4の整数を表す。〕
【0014】
2.前記一般式(2)で表される化合物が、下記1−1または1−2で表される化合物であることを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化D】
Figure 0004483207
【0015】
3.前記保護膜が、金属酸化物、金属酸窒化物または窒化物を含むことを特徴とする前記1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0016】
4.前記保護膜が、前記電極間に、100Hzを超えた周波数で、且つ、0.1W/cm以上の電力を供給される工程を経て作製されたことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0018】
5.前記発光層がリン光性化合物を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0019】
6.前記リン光性化合物がイリジウム化合物、オスミウム化合物、パラジウム化合物、ロジウム化合物または白金化合物であることを特徴とする前記に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0020】
7.前記リン光性化合物がイリジウム化合物であることを特徴とする前記に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0021】
8.前記1〜8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者等は、上記の問題点を種々検討した結果、請求項1に記載のように、大気圧または大気圧近傍の圧力下、対向する電極間に前記一般式(1)で表される化合物を含む反応性ガスを供給する工程、該電極間に高周波電圧を印加することにより該反応性ガスを励起させる工程、基材を励起した前記反応性ガスに晒す工程を経て、該基材上に形成されたことを特徴とする有機薄膜が、水、大気やガス中の水分に対する封止性が高く、該有機薄膜を保護膜として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子、特に発光層中にリン光性化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化に著しく効果があることを見いだした。
【0023】
本発明の有機薄膜が従来公知の手法により形成された膜に比べて、高い水分封止性を有し、その結果、有機EL素子の長寿命化に効果があることについて、詳細は不明であるが、本発明者等は、大気圧プラズマCVD法により形成された保護膜が、従来の熱CVD法による膜より極めて緻密に形成されるためと考えている。
【0024】
《有機薄膜》
本発明の有機薄膜について説明する。
【0025】
本発明の有機薄膜は、後述する、大気圧プラズマ法により作製される。具体的には、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間に前記一般式(1)または(2)で表される化合物を含む反応性ガスを供給し、該電極間に高周波電圧が印加され、励起した反応性ガスにより、基材の表面が晒されて有機薄膜が形成される。
【0026】
本発明に記載の効果を得るためには、上記の反応性ガス中の主成分として前記一般式(1)または(2)で表される化合物が含まれることが必須要件である。ここで、主成分とは、反応性ガス中の保護膜形成材料全体の中で、前記一般式(1)または(2)で表される化合物が50質量%以上を占めることである。
【0027】
《一般式(1)で表される化合物》
前記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0028】
一般式(1)において、L1、L2で各々表される主鎖を構成する原子数が2〜4の2価の基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基等が挙げられる。
【0029】
ここで、主鎖を構成する原子数が2〜4とは、2価の基を形成する原子群の中で、置換基の部分を除いた原子数が2〜4であることを示す。
【0030】
例えば、上記のエチルエチレン基では、置換基としてエチル基を有するが、主鎖を構成する2価の基はエチレン基であり、この場合、主鎖を構成する原子数は2であると計算する。
【0031】
一般式(1)において、R1、R2で各々表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、(t)ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、トリフルオロメチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシル基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、メチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。
【0032】
上記の中でも好ましいのは、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子であり、特に好ましいのは、アルキル基、アラルキル基、ハロゲン原子である。また、これらの基は更に置換基を有してもよい。尚、m1、n1が2以上の時には、複数のR1、R2は、互いに縮合して更に環形成してもよい。
【0033】
《一般式(2)で表される化合物》
前記一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0034】
一般式(2)において、R3〜R10、R11、R12で各々表される置換基は、上記一般式(1)のR1、R2で各々表される置換基と同義である。
【0035】
以下に、一般式(1)または(2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0036】
【化3】
Figure 0004483207
【0037】
本発明に係る上記一般式(1)または(2)で表される化合物は、J.Chem.Soc.p3261(1953)、Chem.Lett.p13(1989)、J.Org.Chem.vol34,p2366(1969)、J.Org.Chem.vol46,p1043(1981)、J.Org.Chem.vol58,p1827(1993)等の文献を参照して合成可能である。
【0038】
(有機薄膜の用途)
本発明の有機薄膜は、後述する大気圧プラズマ法により作製されるが、薄膜でも雰囲気中の水分に対する封止性が高いという機能を有するので、本発明の有機EL素子のように、陰極として活性の高い合金材料を用いるため、空気中の水分や酸素との反応による腐食や酸化が生じやすい素子の保護膜として好ましく用いられる。
【0039】
(有機薄膜の膜厚)
本発明の有機薄膜が本発明の有機EL素子の保護膜として用いられる場合、膜厚としては、10nm〜1mmの範囲が好ましく、更に好ましくは、100nm〜10μmの範囲である。
【0040】
《有機薄膜の作製方法》
本発明の有機薄膜の製造方法は、薄膜でも空気中(雰囲気中ともいう)の水分に対する封止性が高いという機能を付与するためには、大気圧プラズマ法(大気圧プラズマCVD法等ともいう)で膜形成することが必須条件である。
【0041】
大気圧プラズマ法を用いて、本発明の有機薄膜の形成する為には、前記一般式(1)または(2)で表される化合物を主成分として含む反応性ガスが用いられる。前記化合物を反応性ガスに導入する方法は、限定はないが、本発明では、加熱容器に所定の化合物を入れ、アルゴンガス等の不活性ガスの存在下に、昇華または化合物の分子上ガスが生成するのに必要な温度まで加熱し、ガス中の成分として導入することが好ましい。
【0042】
上記反応性ガスを用いて有機薄膜を形成する際には、周期表の第18族元素(原子ともいう)または窒素ガス、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等から選ばれる元素を含む不活性ガスをや窒素ガスを併用することが好ましい。
【0043】
ここで、不活性ガスと反応性ガスの合計量を100%と設定した場合、用いられる不活性ガスの割合は、90.0質量%以上が好ましく、更に好ましくは、90.0質量%〜99.9質量%の範囲である。
【0044】
本発明の有機薄膜の作製方法で使用されるプラズマ製膜装置(大気圧プラズマ製膜装置)について、図1〜図6に基づいて説明する。図中、符号Fは基材の一例としての長尺フィルムである。
【0045】
本発明において好ましく用いられる放電プラズマ処理は大気圧又は大気圧近傍で行われる。大気圧近傍とは、前述のように20kPa〜110kPaの圧力を表し、更に好ましくは93kPa〜104kPaである。
【0046】
図1は、プラズマ製膜装置に備えられたプラズマ放電処理室の1例を示す。図1のプラズマ放電処理室10において、フィルム状の基材Fは搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極25に巻き回されながら搬送される。ロール電極25の周囲に固定されている複数の固定電極26はそれぞれ円筒から構成され、ロール電極25に対向させて設置される。
【0047】
プラズマ放電処理室10を構成する放電容器11はパイレックス(R)ガラス製の処理容器が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウム又はステンレスのフレームの内面にポリイミド樹脂等を貼り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。
【0048】
ロール電極25に巻き回された基材Fは、ニップローラ15、15、16で押圧され、ガイドローラ24で規制されて放電容器11内部に確保された放電処理空間に搬送され、放電プラズマ処理され、次いで、ガイドローラ27を介して次工程に搬送される。本発明では、真空系ではなくほぼ大気圧に近い圧力下で放電処理により製膜できることから、このような連続工程が可能となり、高い生産性をあげることができる。
【0049】
尚、仕切板14、14は前記ニップローラ15、15、16に近接して配置され基材Fに同伴する空気が放電容器11内に進入するのを抑制する。この同伴される空気は、放電容器11内の気体の全体積に対し、1体積%以下に抑えることが好ましく、0.1体積%以下に抑えることがより好ましい。前記ニップローラ15及び16により、それを達成することが可能である。
【0050】
尚、放電プラズマ処理に用いられる混合ガスは、給気口12から放電容器11に導入され、処理後のガスは排気口13から排気される。
【0051】
ロール電極25はアース電極であり、印加電極である複数の固定電極26との間で放電させ、当該電極間に前述したような反応性ガスを導入してプラズマ状態とし、前記ロール電極25に巻き回しされた長尺フィルム状の基材を前記プラズマ状態の反応性ガスに曝すことによって、反応性ガス由来の膜を形成する。
【0052】
前記電極間には、100Hzを超え150MHz以下の周波数で0.1W/cm2〜50W/cm2の電力を印加するのが好ましい。
【0053】
尚、電極における電圧の印加面積(cm2)は放電が起こる範囲の面積のことである。
【0054】
又、電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であってもよいが、製膜速度が大きくなることから、サイン波であることが好ましい。
【0055】
このような電極としては、金属母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。少なくとも固定電極26とロール電極25のいずれか一方に誘電体を被覆すること、好ましくは、両方に誘電体を被覆することである。誘電体としては、非誘電率が6〜45の無機物であることが好ましい。
【0056】
電極25、26の一方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に固体誘電体を設置した場合の固体誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から、0.5mm〜20mmが好ましく、特に好ましくは1mm±0.5mmである。この電極間の距離は、電極周囲の誘電体の厚さ、印加電圧の大きさを考慮して決定される。
【0057】
又、基材を電極間に載置或いは電極間を搬送してプラズマに曝す場合には、基材を片方の電極に接して搬送出来るロール電極仕様にするだけでなく、更に誘電体表面を研磨仕上げし、電極の表面粗さRmax(JIS B 0601)を10μm以下にすることで誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ放電状態を安定化出来る。更に、誘電体の熱収縮差や残留応力による歪みやひび割れをなくし、且つ、ノンポーラスな高精度の無機誘電体を被覆することで大きく耐久性を向上させることができる。
【0058】
又、金属母材に対する誘電体被覆による電極製作において、前記のように、誘電体を研磨仕上げすることや、電極の金属母材と誘電体間の熱膨張の差をなるべく小さくすることが必要であるので、母材表面に、応力を吸収出来る層として泡混入量をコントロールして無機質の材料をライニングすることが好ましい。特に材質としては琺瑯等で知られる溶融法により得られるガラスであることがよく、更に導電性金属母材に接する最下層の泡混入量を20〜30体積%とし、次層以降を5体積%以下とすることで、緻密且つひび割れ等の発生しない良好な電極ができる。
【0059】
又、電極の母材に誘電体を被覆する別の方法として、セラミックスの溶射を空隙率10vol%以下まで緻密に行い、更にゾルゲル反応により硬化する無機質の材料にて封孔処理を行うことがあげられる。ここでゾルゲル反応の促進には、熱硬化やUV硬化がよく、更に封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、より一層無機質化が向上し、劣化のない緻密な電極ができる。
【0060】
図2(a)及び図2(b)はロール電極25の一例としてロール電極25c、25Cを示したものである。
【0061】
アース電極であるロール電極25cは、図2(a)に示すように、金属等の導電性母材25aに対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体25bを被覆した組み合わせで構成されているものである。セラミック被覆処理誘電体を1mm被覆し、ロール径を被覆後200φとなるように製作し、アースに接地する。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工しやすいので、更に好ましく用いられる。
【0062】
或いは、図2(b)に示すロール電極25Cの様に、金属等の導電性母材25Aへライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体25Bを被覆した組み合わせから構成してもよい。ライニング材としては、珪酸塩系ガラス、硼酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩系ガラス、バナジン酸塩ガラスが好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工しやすいので、更に好ましく用いられる。
【0063】
金属等の導電性母材25a、25Aとしては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスが好ましい。
【0064】
又、尚、本実施の形態においては、ロール電極の母材は冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用している(不図示)。
【0065】
更に、ロール電極25c、25C(ロール電極25も同様)は、図示しないドライブ機構により軸部25d、25Dを中心として回転駆動される様に構成されている。
【0066】
図3(a)には固定電極26の概略斜視図を示した。又、固定電極は、円筒形状に限らず、図3(b)の固定電極36の様に角柱型でもよい。円柱型の電極26に比べて、角柱型の電極は放電範囲を広げる効果があるので、形成する膜の性質などに応じて好ましく用いられる。
【0067】
固定電極26、36いずれであっても上記記載のロール電極25c、ロール電極25Cと同様な構造を有する。すなわち、中空のステンレスパイプ26a、36aの周囲を、ロール電極25(25c、25C)同様に、誘電体26b、36bで被覆し、放電中は冷却水による冷却が行えるようになっている。誘電体26b、36bは、セラミック被覆処理誘電体及びライニング処理誘電体のいずれでもよい。
【0068】
尚、固定電極は誘電体の被覆後12φ又は15φとなるように製作され、当該電極の数は、例えば上記ロール電極の円周上に沿って14本設置している。
【0069】
図4には、図3(b)の角型の固定電極36をロール電極25の周りに配設したプラズマ放電処理室30を示した。図4において、図1と同じ部材については同符号を伏して説明を省略する。
【0070】
図5には、図4のプラズマ放電処理室30が設けられたプラズマ製膜装置50を示した。図5において、プラズマ放電処理室30の他に、ガス発生装置51、電源41、電極冷却ユニット55等が装置構成として配置されている。電極冷却ユニット55は、冷却剤の入ったタンク57とポンプ56とからなる。冷却剤としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が用いられる。
【0071】
図5のプラズマ放電処理室30内の電極間のギャップは、例えば1mm程度に設定される。
【0072】
プラズマ放電処理室30内にロール電極25、固定電極36を所定位置に配置し、ガス発生装置51で発生させた混合ガスを流量制御して、給気口52より供給し、放電容器11内をプラズマ処理に用いる混合ガスで充填し不要分については排気口より排気する。
【0073】
次に電源41により固定電極36に電圧を印加し、ロール電極25はアースに接地し、放電プラズマを発生させる。ここでロール状の元巻き基材FFからロール54、54、54を介して基材が供給され、ガイドロール24を介して、プラズマ放電処理室30内の電極間をロール電極25に片面接触した状態で搬送される。このとき放電プラズマにより基材Fの表面が放電処理され、その後にガイドロール27を介して次工程に搬送される。ここで、基材Fはロール電極25に接触していない面のみ放電処理がなされる。
【0074】
又、放電時の高温による悪影響を抑制するため、基材の温度を常温(15℃〜25℃)〜200℃未満、更に好ましくは常温〜100℃内で抑えられるように必要に応じて電極冷却ユニット55で冷却する。
【0075】
又、図6は、本発明の膜の形成方法で用いることができるプラズマ製膜装置60であり、電極間に載置できない様な性状、例えば厚みのある基材61上に膜を形成する場合に、予めプラズマ状態にした反応性ガスを基材上に噴射して薄膜を形成するためのものである。
【0076】
図6のプラズマ製膜装置において、35aは誘電体、35bは金属母材、65は電源である。金属母材35bに誘電体35aを被覆したスリット状の放電空間に、上部から不活性ガス及び反応性ガスからなる混合ガスを導入し、電源65により高周波電圧を印加することにより反応性ガスをプラズマ状態とし、該プラズマ状態の反応性ガスを基材61上に噴射することにより基材61表面に膜を形成する。
【0077】
図5の電源41、図6の電源65などの本発明の膜の形成に用いるプラズマ製膜装置の電源としては、特に限定はないが、ハイデン研究所製インパルス高周波電源(連続モードで使用100kHz)、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用出来る。
【0078】
また、酸素源として酸素ガス以外にオゾン、二酸化炭素、水(水蒸気)等を用いてもよいし、窒素源としてシラザンや窒素ガス以外に、アンモニア、窒素酸化物等を用いてもよい。
【0079】
本発明の有機薄膜の空気中の水分に対する封止性を高めるためには、以下に記載の金属酸化物、金属酸窒化物または窒化物を含む膜(層ともいう)を設けることが好ましい。
【0080】
《金属酸化物、金属酸窒化物または窒化物を含む膜》
本発明に係る金属酸化物、金属酸窒化物または窒化物を含む膜について説明する。
【0081】
本発明に係る金属酸化物、金属酸窒化物、窒化物としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、ITO(酸化インジウム錫)、アルミナ等の金属酸化物、窒化珪素、窒化チタン等の窒化物(本発明に係る窒化物は、金属窒化物をも窒化物のカテゴリーに入る)、酸窒化珪素、酸窒化チタン等の金属酸窒化物等が挙げられる。
【0082】
本発明に係る金属酸化物、金属酸窒化物に用いられる金属としては、遷移金属のみならず、珪素のような半金属も含まれる。
【0083】
本発明に係る金属酸化物、金属酸窒化物または窒化物を含む膜(層)についても、本発明の有機薄膜の形成に用いられた大気圧プラズマ法を用いることが好ましい。
【0084】
これらの金属酸化物、金属酸窒化物または窒化物を形成するための反応性ガスとしては、例えば有機金属化合物、金属水素化合物を用いることができ、該化合物は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わないが、気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
【0085】
有機金属化合物としては、上記酸化珪素膜を形成するためには腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、例えば、下記一般式(3)〜(7)で表される化合物が好ましい。
【0086】
【化4】
Figure 0004483207
【0087】
式中、R21〜R26は、水素原子または1価の基を表す。n1は自然数を表す。
一般式(3)で表される化合物の例としては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン等が挙げられる。
【0088】
【化5】
Figure 0004483207
【0089】
式中、R31、R32は、水素原子または1価の基を表す。n2は自然数を表す。
一般式(4)で表される化合物の例としては、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0090】
一般式(5)
(R41nSi(R424-n
式中、R41、R42は、水素原子または1価の基を表す。nは、0から3までの整数を表す。
【0091】
一般式(5)で表される、有機珪素化合物の例としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0092】
【化6】
Figure 0004483207
【0093】
式中、Aは、単結合または2価の基を表す。R51〜R55は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、アミノ基またはシリル基を表す。R51およびR52、R54およびR55は縮合して環を形成していてもよい。
【0094】
一般式(6)において、Aとして好ましくは単結合あるいは、炭素数1〜3の2価の基である。R54およびR55は縮合して環を形成していてもよく、形成される環としては例えばピロール環、ピペリジン環、ピペラジン環、イミダゾール環等を挙げることができる。R51〜R53は好ましくは水素原子、メチル基またはアミノ基である。
【0095】
一般式(6)で表される化合物の例としては、アミノメチルトリメチルシラン、ジメチルジメチルアミノシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、1−トリメチルシリルピロール、1−トリメチルシリルピロリジン、イソプロピルアミノメチルトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、アニリノトリメチルシラン、2−ピペリジノエチルトリメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、1−トリメチルシリルイミダゾール、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、2−アミノエチルアミノメチルジメチルフェニルシラン、3−(4−メチルピペラジノプロピル)トリメチルシラン、ジメチルフェニルピペラジノメチルシラン、ブチルジメチル−3−ピペラジノプロピルシラン、ジアニリノジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン等があげられる。
【0096】
一般式(6)において、特に好ましい化合物は一般式(7)で表されるものである。
【0097】
【化7】
Figure 0004483207
【0098】
式中、R61からR66はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基または芳香族複素環基を表す。
【0099】
一般式(7)においてR61からR66は気化の容易性の観点から好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基であり、より好ましくはR61からR63のうちすくなくとも2つおよびR64からR66のうち少なくとも2つがメチル基のものである。
一般式(7)で表される化合物の例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等が挙げられる。
【0100】
《有機EL素子の構成層》
本発明の有機EL素子の構成層について説明する。
【0101】
本発明において、有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1000nm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
【0102】
《陰極》
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1000nm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0103】
次に、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる、注入層、正孔輸送層、電子輸送層等について説明する。
【0104】
《注入層》:電子注入層、正孔注入層
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記のごとく陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び、陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0105】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0106】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0107】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0108】
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜100nmの範囲が好ましい。
【0109】
阻止層は、上記のごとく、有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば特開平11−204258号、同11−204359号、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0110】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層であり、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0111】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層であり、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0112】
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。
【0113】
正孔輸送層、電子輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
本発明の有機EL素子においては、発光層のホスト、発光層に隣接する正孔輸送層、発光層に隣接する電子輸送層すべての材料の蛍光極大波長が415nm以下であることが好ましい。
【0114】
《発光層》
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子および正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であっても良い。
【0115】
発光層に使用される材料(以下、発光材料という)は、蛍光またはリン光を発する有機化合物または錯体であることが好ましく、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
【0116】
このような発光材料は、主に有機化合物であり、所望の色調により、例えば、Macromol.Synth.,125巻,17〜25頁に記載の化合物等を用いることができる。
【0117】
発光材料は、発光性能の他に、正孔輸送機能や電子輸送機能を併せ持っていても良く、正孔輸送材料や電子輸送材料の殆どが、発光材料としても使用できる。
【0118】
発光材料は、p−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でも良く、さらに前記発光材料を高分子鎖に導入した、または前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用しても良い。
この発光層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。発光層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この発光層は、これらの発光材料一種又は二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。本発明の有機EL素子の好ましい態様は、発光層が二種以上の材料からなり、その内の一種が本発明の化合物であるときである。
【0119】
また、この発光層は、特開昭57−51781号公報に記載されているように、樹脂などの結着材と共に上記発光材料を溶剤に溶かして溶液としたのち、これをスピンコート法などにより薄膜化して形成することができる。このようにして形成された発光層の膜厚については、特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm〜5μmの範囲である。
【0120】
発光層の材料が2種以上であるとき、主成分をホスト、その他の成分をドーパントという。その場合、主成分であるホスト化合物に対するドーパントの混合比は好ましくは質量で0.1質量%〜15質量%未満である。
【0121】
(ホスト化合物)
「ホスト化合物(単にホストともいう)」とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物(単に、ドーパントともいう)」という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。更に、発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。
【0122】
発光層のホスト化合物は、有機化合物または錯体であることが好ましく、本発明においては、好ましくは蛍光極大波長が415nm以下である。ホスト化合物の極大波長を415nm以下にすることにより可視光、特にBGR発光が可能となる。
【0123】
つまり蛍光極大波長を415nm以下にすることにより、通常のπ共役蛍光もしくは燐光材料において、π−π吸収を420nm以下に有するエネルギー移動型のドーパント発光が可能である。また415nm以下の蛍光を有することから非常にワイドエネルギーギャップ(イオン化ポテンシャル−電子親和力、HOMO−LUMO)であるので、キャリアトラップ型にも有利に働く。
【0124】
このようなホスト化合物としては、有機EL素子に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができ、また後述の正孔輸送材料や電子輸送材料の殆どが発光層ホスト化合物としても使用できる。
【0125】
ポリビニルカルバゾールやポリフルオレンのような高分子材料でもよく、さらに前記ホスト化合物を高分子鎖に導入した、または前記ホスト化合物を高分子の主鎖とした高分子材料を使用してもよい。
【0126】
ホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0127】
(ドーパント)
次にドーパントについて述べる。
【0128】
原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをドーパントに移動させることでドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはドーパントがキャリアトラップとなり、ドーパント化合物上でキャリアの再結合が起こりドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、ドーパント化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
【0129】
ここで本発明に記載のリン光性化合物は、リン光量子収率が、25℃において0.001以上であるものであり具体的には、重金属錯体系化合物であり、好ましくは元素の周期表で第8族〜第10族の金属を中心金属とする錯体系化合物であり、さらに好ましくは、オスニウム、イリジウム、パラジウム、ロジウムまたは白金錯体系化合物である。
【0130】
例えば、350nm〜440nmの領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物をホスト化合物として用い、緑の波長領域にリン光をもったイリジウム錯体を用いることで緑領域に電界発光する有機EL素子を得ることが出来る。
【0131】
また別の形態では前記のように、ホスト化合物としての蛍光性化合物Aとリン光性化合物の他に、リン光性化合物からの発光の極大波長よりも長波な領域に、蛍光極大波長を有するもう一つの蛍光性化合物Bを少なくとも1種含有する場合もあり、蛍光性化合物Aとリン光性化合物からのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光性化合物Bからの発光を得ることも出来る。
【0132】
以下に、本発明で用いられるリン光性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。これらの化合物は例えば、Inorg.Chem.40巻、1704−1711に記載の方法等により合成できる。
【0133】
【化8】
Figure 0004483207
【0134】
【化9】
Figure 0004483207
【0135】
【化10】
Figure 0004483207
【0136】
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0137】
正孔輸送材料としては、特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0138】
正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0139】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0140】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0141】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0142】
また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
【0143】
また、本発明においては正孔輸送層の正孔輸送材料は415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、正孔輸送材料は、正孔輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
【0144】
この正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0145】
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0146】
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、下記の材料が知られている。
【0147】
さらに、電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0148】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0149】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0150】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0151】
電子輸送層に用いられる好ましい化合物は、415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、電子輸送層に用いられる化合物は、電子輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
【0152】
この電子輸送層は、上記電子輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この電子輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0153】
《基体(基板、基材、支持体等ともいう)》
本発明の有機EL素子に係る基体としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また、透明のものであれば特に制限はないが、好ましく用いられる基板としては例えばガラス、石英、光透過性樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい基体は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
【0154】
樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられ特にゼオノア(商品名日本ゼオン(株)製)、アートン(商品名JSR(株)製)或いはアペル(商品名三井化学(株)製)といったノルボルネン系(またはシクロオレフィン)樹脂が好ましい。
【0155】
樹脂フィルムの表面には、無機物もしくは有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよい。被膜の具体例としては例えばゾルーゲル法により形成されたシリカ層、ポリマーの塗布等により形成された有機層(たとえば、重合性基を有する有機材料膜に紫外線や熱等の手段で後処理を施した膜を含む)、金属酸化物、金属酸窒化物または窒化物、DLC膜等が挙げられる。
【0156】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光の室温における外部取り出し効率は1%以上であることが好ましく、より好ましくは2%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
【0157】
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用してもよい。
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
【0158】
まず適当な基体上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層の有機化合物薄膜を形成させる。
【0159】
この有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法またはスピンコート法が特に好ましい。さらに層ごとに異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6Pa〜10-2Pa、蒸着速度0.01nm〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0160】
これらの層の形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施してもかまわない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0161】
また、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0162】
このようにして得られた有機EL素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0163】
本発明の有機EL素子を用いた多色表示装置は、表示デバイス、ディスプレー、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレーにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることにより、フルカラーの表示が可能となる。
【0164】
表示デバイス、ディスプレーとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
【0165】
発光光源としては家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではない。
【0166】
また、本発明に係る有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。
【0167】
このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
【0168】
《表示装置》
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用しても良いし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用しても良い。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでも良い。または、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0169】
【発明の実施の形態】
本発明の有機EL素子から構成される表示装置の一例を図面に基づいて以下に説明する。
【0170】
図8は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
【0171】
ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
【0172】
制御部Bは、表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
【0173】
図9は、表示部Aの模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
【0174】
図においては、画素3の発光した光が、白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
【0175】
配線部の走査線5及び複数のデータ線6は、それぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。
【0176】
画素3は、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を、適宜、同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0177】
次に、画素の発光プロセスを説明する。
図10は、画素の模式図である。
【0178】
画素は、有機EL素子100、スイッチングトランジスタ110、駆動トランジスタ120、コンデンサ130等を備えている。複数の画素に有機EL素子100として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
【0179】
図10においては、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ110のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ110のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ110の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ130と駆動トランジスタ120のゲートに伝達される。
【0180】
画像データ信号の伝達により、コンデンサ130が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ120の駆動がオンする。駆動トランジスタ120は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子100の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子100に電流が供給される。
【0181】
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ110の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ110の駆動がオフしてもコンデンサ130は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ120の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子100の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ120が駆動して有機EL素子100が発光する。
【0182】
すなわち、有機EL素子100の発光は、複数の画素各々の有機EL素子100に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ110と駆動トランジスタ120を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子100の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
【0183】
ここで、有機EL素子100の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。
【0184】
また、コンデンサ130の電位の保持は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
【0185】
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
【0186】
図11は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図11において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
【0187】
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。
【0188】
パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子が無く、製造コストの低減が計れる。
【0189】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0190】
実施例1
《有機EL素子OLED−Aの作製》
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製:NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をiso−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0191】
この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、ステンレス鋼製の長方形穴あきマスクを設置した。一方、5つのモリブデン製抵抗加熱ボートに、α−NPD、CBP、Ir−1、BC、Alq3をそれぞれ入れ真空蒸着装置に取付けた。
【0192】
次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で透明支持基板に膜厚50nmの厚さになるように蒸着し、正孔注入/輸送層を設けた。
【0193】
さらに、CBPの入った前記加熱ボートとIr−1の入ったボートをそれぞれ独立に通電してCBPとIr−1の蒸着速度が100:7になるように調節し膜厚30nmの厚さになるように蒸着し、発光層を設けた。
【0194】
ついで、BCの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で厚さ10nmの電子輸送層を設けた。更に、Alq3の入った前記加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で膜厚40nmの電子注入層を設けた。
【0195】
次に、真空槽をあけ、マスクを替え、モリブデン製抵抗加熱ボートにマグネシウム3gを入れ、タングステン製の蒸着用バスケットに銀を0.5g入れ、再び真空槽を2×10-4Paまで減圧した後、マグネシウム入りのボートに通電して蒸着速度1.5nm/秒〜2.0nm/秒でマグネシウムを蒸着し、この際、同時に銀のバスケットを加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で銀を蒸着し、前記マグネシウムと銀との混合物から成る陰極(200nm)を形成し、有機EL素子OLED−Aを作製した。
【0196】
【化11】
Figure 0004483207
【0197】
《有機EL素子OLED−1の作製》:本発明
有機EL素子OLED−A上にマスクをかけ、図7に示すような保護膜(膜厚800nm)を形成した。保護膜の形成は、下記保護膜形成用反応性ガス1を用い図6に示すプラズマ放電装置を用いて周波数13.56MHz、1W/cm2を印加して保護膜を形成し、有機EL素子OLED−1とした。
【0198】
(保護膜形成用反応性ガス1)
不活性ガス:アルゴン 99.75体積%
反応性ガス:化合物1−1 0.25体積%(容器に入れ250℃に加熱し250℃のアルゴンガスを流して気化)
《有機EL素子OLED−2の作製》:本発明
有機EL素子OLED−1の作製において、保護膜形成用反応性ガス1の反応性ガス用の化合物1−1の代わりに、化合物1−2を用いて保護膜(膜厚800nm)を形成した以外は同様にして、有機EL素子OLED−2を作製した。
【0199】
《有機EL素子OLED−3の作製》:本発明
有機EL素子OLED−2の作製において、保護膜形成用反応性ガス1の反応性ガス用の化合物1−1の代わりに、化合物1−2を用いて保護膜(膜厚800nm)を形成し、次いで、化合物1−1を含む保護膜形成用反応性ガス1を用いて保護膜(膜厚800nm)を更に積層した以外は同様にして、有機EL素子OLED−3を作製した。
【0200】
《有機EL素子OLED−4の作製》:本発明
有機EL素子OLED−2の作製と同様にして、化合物1−2を含む保護膜形成用反応性ガスを用いて保護膜(膜厚800nm)を形成した。引き続き、下記珪素酸化物保護膜形成用反応性ガスを用いて珪素酸化物の保護膜(膜厚200nm)を形成し、有機EL素子OLED−4を作製した。
【0201】
但し、珪素酸化物保護膜形成用反応性ガスを用いる場合の印加条件は、周波数13.56MHz、10W/cm2に設定した。
【0202】
(珪素酸化物保護膜形成用反応性ガス)
不活性ガス:アルゴン 98.25体積%
反応性ガス:水素ガス 1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気0.25体積%(アルゴンガスにてバブリング)
《有機EL素子OLED−5の作製》:比較例
第1室、第2室、第3室を有する3連の温度調整可能な真空チャンバを用意し、第1室に化合物1−1を入れ、第3室の基板ホルダーに上記の有機EL素子OLED−Aおよびマスクを固定した後、第1室を1×10-2Pa、設定温度170℃、第2室を1×10-2Pa、設定温度650℃、第3室を1×10-2Pa、設定温度25℃にし、形成される保護膜が厚さ800nmになるまでその状態を保った。
【0203】
《有機EL素子OLED−6の作製》:比較例
有機EL素子OLED−5の作製において、化合物1−1に換えて化合物1−2を用いた以外は同様にして有機EL素子OLED−6を作製した。
【0204】
得られた有機EL素子OLED−1〜6の各々を下記のように評価した。
《発光評価及び素子寿命の評価》
得られた有機EL素子OLED−1〜6では、初期駆動電圧3Vで電流が流れ始め、発光層のドーパントであるリン光性化合物からの緑色の発光を観測した。
【0205】
有機EL素子OLED−1〜6について、温度23℃の条件下で、2.5mA/m2の定電流で駆動した時の輝度の半減する時間(hr)を測定した。
【0206】
ここで、輝度の半減する時間は、有機EL素子OLED−5を100とした時の相対値で表した。発光輝度[cd/m2]の観測は、ミノルタ製CS−1000を用いた。得られた結果を表1に示す。
【0207】
【表1】
Figure 0004483207
【0208】
表1から、従来のスパッタ法で作製された保護膜を有する、比較の有機EL素子OLED−5、6と比較して、大気圧プラズマ法(大気圧プラズマCVD法)で作製された、本発明の有機薄膜を保護層に用いた、本発明の有機EL素子OLED−1〜4は、各々発光寿命が長く、雰囲気中の水分に対する封止性が極めて高く、素子の劣化が効果的に抑制され、非常に長寿命の有機EL素子が得られることが判る。
【0209】
また、本発明の有機薄膜上に更に珪素酸化物膜を積層した、本発明の有機EL素子OLED−4は素子寿命が更に飛躍的に向上することがわかった。
【0210】
実施例2
《フルカラー表示装置の作製》
(青色発光素子の作製)
実施例1の有機EL素子OLED−4の作製において、正孔注入/輸送層にα−NPDの代わりに、m−MTDATXAを用い、発光層に、CBP+Ir−1の代わりにTCTA+Ir−10(蒸着速度が100:7になるように調節)を用い、電子輸送層にBCを用い、引き続きフッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して、陰極バッファー層、陰極を各々形成した以外は同様にして、青色発光素子を作製した。
【0211】
(緑色発光素子の作製)
上記の青色発光素子の作製において、発光層にTCTA+Ir−10の代わりに、TCTA+Ir−1(蒸着速度が100:7になるように調節)を用いた以外は同様にして、緑色発光素子を作製した。
【0212】
(赤色発光素子の作製)
上記の青色発光素子の作製において、TCTA+Ir−10の代わりに、TCTA+Ir−9(蒸着速度が100:7になるように調節)を用いた以外は同様にして、赤色発光素子を作製した。
【0213】
【化12】
Figure 0004483207
【0214】
上記で作製した、各々赤色、緑色、青色発光素子を同一基板上に並置し、図8に記載のような形態を有するアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製し、図9には、作製した前記表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。即ち、同一基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。前記複数画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に各赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示装置を作製した。
【0215】
該フルカラー表示装置を駆動することにより、高耐久性を有し、且つ、鮮明なフルカラー動画表示が得られることが判った。
【0216】
実施例3
実施例1の有機EL素子OLED−4の作製において、発光層をホストであるCBPとドーパントであるIr−9及びIr−14の蒸着速度が100:1:10になるように調整して共蒸着を行い層形成した以外は同様にして、有機EL素子OLED−7を作製した。
【0217】
得られた有機EL素子OLED−7に10V直流電圧を印加したところ、ほぼ白色の発光を得ることが出来た。
【0218】
【発明の効果】
本発明により、水分に対する封止性が高い有機薄膜、該有機薄膜の作製方法、該有機薄膜を有し、長寿命である有機エレクトロルミネッセンス素子及び表示装置を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマ放電処理室の一例を示す図である。
【図2】ロール電極の一例を示す図である。
【図3】固定電極の概略斜視図である。
【図4】角型の固定電極をロール電極25の周りに配設したプラズマ放電処理室を示す図である。
【図5】プラズマ放電処理室が設けられたプラズマ製膜装置を示す図である。
【図6】プラズマ製膜装置の別の一例を示す図である。
【図7】本発明の有機EL素子の層構成の一例を示す概略図である。
【図8】有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。
【図9】表示部Aの模式図である。
【図10】画素の模式図である。
【図11】パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。
【符号の説明】
10、30 プラズマ放電処理室
25、25c、25C ロール電極
26、26c、26C、36、36c、36C 電極
25a、25A、26a、36a 金属等の導電性母材
25b、26b、36b セラミック被覆処理誘電体
25B ライニング処理誘電体
41 電源
51 ガス発生装置
12 給気口
13 排気口
55 電極冷却ユニット
FF 元巻き基材
15、16 ニップローラ
24、27 ガイドローラ
F 基材フィルム
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
81 基板
82 ITO透明導電膜(透明電極)
83 有機EL層
84 陰極
85 保護膜
100 有機EL素子
110 スイッチングトランジスタ
120 駆動トランジスタ
130 コンデンサ
A 表示部
B 制御部

Claims (8)

  1. 基材上に少なくとも発光層及び保護膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該保護膜が大気圧または大気圧近傍の圧力下、対向する電極間に下記一般式(2)で表される化合物を含む反応性ガスを供給する工程、該電極間に高周波電圧を印加することにより該反応性ガスを励起させる工程、保護膜形成前の有機エレクトロルミネッセンス素子を、励起した前記反応性ガスに晒す工程を経て、該保護膜形成前の有機エレクトロルミネッセンス素子上に形成された有機薄膜であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0004483207
    〔式中、R 〜R 10 は、各々独立に水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を表し、R 11 、R 12 は、各々独立にアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す。m2、n2は、各々独立に0〜4の整数を表す。〕
  2. 前記一般式(2)で表される化合物が、下記1−1または1−2で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0004483207
  3. 前記保護膜が、金属酸化物、金属酸窒化物または窒化物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記保護膜が、前記電極間に、100Hzを超えた周波数で、且つ、0.1W/cm以上の電力を供給される工程を経て作製されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記発光層がリン光性化合物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記リン光性化合物がイリジウム化合物、オスミウム化合物、パラジウム化合物、ロジウム化合物または白金化合物であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 前記リン光性化合物がイリジウム化合物であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
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