JP4482647B2 - 浮体型水力発電装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、浮体型水力発電装置に係わり、特に、河川の水流或いは潮流の持つ運動エネルギーを電力等の動力に変換する小規模発電装置で、ダムや取り込み水路等の土木構造物による水落差を作るのではなく、水流中に係留した浮体に水車を設置して発電する浮体型水力発電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
古くから双胴型ボートの左右中心面に下かけ式水車を設置した装置が主として東南アジア地域で知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した下かけ式水車は、水車を構成する水かきの一部しか水中に浸されていないため、大型にもかかわらす小出力である。また、下かけ式水車は、流速が大きくなるに従って、出力である機械エネルギーが増大する。このため、流速が所定流速を超えると、発電機の定格を超えた水車の出力である機械エネルギーが発電機に供給され、発電機が破損してしまう恐れがあった。
【0004】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、小型大出力化を図ると共に、水車が出力する機械エネルギーの定格を超えた増大を抑制することができる浮体型水力発電装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、水面上に係留にされていると共に、流速が大きくなるに従って、流れ方向の一端側が浮揚する浮体と、前記浮体の前記浮揚する部分底面に取り付けられた水車とを備えたことを特徴とする浮体型水力発電装置に存する。
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、水面上に係留されていると共に、流速が大きくなるに従って、流れ方向の一端側が浮揚する浮体と、前記浮体の前記浮揚する部分底面に取り付けられた水車と、を備え、前記流速が所定流速を越えると、前記浮体の一端側の浮揚によって前記水車の一部が水上に露出するように、前記水車が前記浮体に取り付けられていることを特徴とする浮体型水力発電装置に存する。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の浮体型水力発電装置であって、前記浮体は、浮体姿勢に係わらず、一定位置に浮力中心がある浮体前部と、前記浮体前部に対して流れ方向の下流側に設けられる浮体後部とを有し、前記浮体後部の下面側に前記水車が取り付けられていることを特徴とする浮体型水力発電装置に存する。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、浮体が、浮体姿勢に係わらず、一定位置に浮力中心がある浮体前部と、浮体前部に対して流れ方向の下流側に設けられる浮体後部とから構成されている。そして、水車は浮体後部の下面側に取り付けられている。従って、水車設置位置と浮体前部又は後部重量から求められる係留点を適切に選ぶことにより、簡単に、所定流速を超えると、浮体の一端側である浮体後部の浮揚によって水車が水上に露出し始め、その後流速の増加に従ってさらに浮体後部が浮揚して露出部分が大きくなるようにすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の浮体型水力発電装置の側面図であり、(b)は、天面図であり、(c)は、正面図である。これらの図に示すように、浮体型水力発電装置は、水面上に係留されている浮体10と、この浮体10の下面に取り付けられた水車20とから構成されている。
【0016】
上記浮体10は、流体の流れ方向Y1に沿って円弧状の艇体底面形状を持つ双胴型であり、浮体姿勢に係わらず一定位置に浮力中心がある浮体前部11と、この浮体前部11の流れ方向Y1下流側に設けられるおおむね平面状の底面を持つ浮体後部12とから構成されている。水車20は、上述した浮体後部12の底面に取り付けられている。この水車20は、図2に示す図1の簡略A−A線断面図に示すように、回転軸21と、回転軸21回りに設けられた断面略円弧上の翼22とからなるサボニウス型の水車である。
【0017】
また、図中30はサボニウス型水車20の回転軸速度を増速するための増速器とこれに直結した発電機である増速器発電機であり、40はこの浮体10の係留点である。この浮体10は、例えば河川の両岸に築いた保留基点からケーブル等をV字状にして河川の中央の最流速位置に保留されている。
【0018】
次に、上述した構成の浮体型水力発電装置の流速と浮体姿勢との関係について、図3を参照して以下説明する。
図3(a)は流速が所定流速よりも低い時、浮体型水力発電装置に働く力を示し、(b)は流速が所定流速と等しい時、浮体型水力発電装置に働く力を示し、(c)は流速が所定流速を超えた時、浮体型水力発電装置に働く力を示す。
【0019】
この浮体10の浮体姿勢は、水車20に働く水の抵抗力である水車部抵抗Y2が係留点40廻りに作る頭下げモーメントM1と、係留点40より下流側の各部重量(図中下方向矢印で示す力)が係留点40廻りに作る頭上げモーメントM2との関係によって決まる。
【0020】
つまり、同図(a)に示すように、流速が所定流速よりも低いときは、水車部抵抗Y2が小さい。このため、浮体10は、浮体後部12側に傾いた状態で、水車部抵抗Y2が係留点40回りに作る頭下げモーメントM1と、浮体後部重量Y3及び水車・増速器発電機重量Y4が作る頭上げモーメントM2とが平衡状態となる。同図(a)に示す状態では、主として浮体後部12が浮力を発生して全重量を支える。
【0021】
一方、同図(b)に示すように、流速が所定流速と等しくなると、水車部抵抗Y2が大きくなり、これに伴って水車部抵抗Y2が係留点40回りに作る頭下げモーメントM1が大きくなる。このため、浮体10は、同図(a)に示す状態に比べて浮体後部12側が浮揚すると共に、浮体前部11側が沈み、浮体後部12が水面Hと略平行な状態で、水車部抵抗Y2が係留点40回りに作る頭下げモーメントM1と、浮体後部重量Y3及び水車・増速器発電機重量Y4が係留点40回りに作る頭上げモーメントM2とが平衡状態となる。同図(b)に示す状態では、主として浮体前部11が浮力を発生して全重量を支える。
【0022】
さらに、同図(c)に示すように、流速が所定流速を超えると、水車部抵抗Y2がさらに大きくなり、これに伴って水車部抵抗Y2が係留点40回りに作る頭下げモーメントM1がさらに大きくなる。このため、浮体10は、同図(b)に示す状態に比べて浮体後部12側がさらに浮揚すると共に、浮体前部11側がさらに沈み、浮体後部12が水面上に浮揚した状態で、水車部抵抗Y2が係留点40回りに作る頭下げモーメントM1と、浮体後部重量Y3及び水車・増速器発電機重量Y4が係留点40回りに作る頭上げモーメントM2とが平衡状態となる。同図(c)に示す状態では、浮体前部11が全重量を支える。
【0023】
上記浮体前部11は浮体姿勢に係わらず浮力中心が一定位置となるため、浮体後部12側が浮揚しても係留点40回りに浮体前部11の頭下げモーメントM1が発生することがない。このため、わずかな水車部抵抗Y2の増加であっても、大きく浮体後部12を浮揚させることができる。
【0024】
以上、図3についての説明から明らかなように、流速が所定速度よりも低い時には、浮体型水力発電装置は浮体後部12側に傾いているため、水車20全体を水中に浸して作動させることができる。一方、所定流速を超えると、浮体後部12の浮揚によって水車20が水上に露出し始め、その後流速の増加に従って浮体後部12がさらに浮揚して露出部分が大きくなる。つまり、所定流速を超えた後は、流速が大きくなるに従って、水車20の水中部作動面積を減少させることができる。
【0025】
従って、図4に示すように、点線で示す従来では、所定流速(流速比1)を超えても、水車20の出力が増大し続けるのに比べて、実線で示す本発明の浮体型水力発電装置によれば、所定流速を超えた後の水車20の出力増大を抑えることができる。
【0026】
また、上述した浮体前部11の先端は図5に示すように先細りさせ、先端部分の浮力を減じて所定流速を超えると浮体後部12の浮揚がより一層進むようにして、一層の出力増大を抑えることが考えられる。
【0027】
なお、上述した実施形態では、水車20としてサボニウス型を用いて説明していたが、例えば、クロスフロー型のタービンを用いたり、スクリュー型であって発電機を伝動軸により駆動するものを用いることも考えられる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、水車を浮体の下面に取り付けることにより、流体が所定流速以下のときは、水車全体を水中に浸して作動させることができるので、小型大出力化を図ることができる。しかも、水車を浮揚する部分下面に取り付けることにより、所定流速を超えると、浮体の一端側の浮揚によって水車が水上に露出し始め、その後流速の増加に従ってさらに浮体の一端側が浮揚して露出部分が大きくなるようにすることができる。つまり、所定流速を超えた後は、流速が大きくなるに従って、水車の水中部作動面積を減少させることにより出力の増大を抑制することができるので、水車が出力する機械エネルギーの定格を超えた増大を抑制することができる浮体型水力発電装置を得ることができる。
【0030】
請求項2記載の発明によれば、水車設置位置と浮体前部又は後部重量から求められる係留点を適切に選ぶことにより、簡単に、所定流速を超えると、浮体の一端側である浮体後部の浮揚によって水車が水上に露出し始め、その後流速の増加に従ってさらに浮体後部が浮揚して露出部分が大きくなるようにすることができるので、構成の簡略化を図った浮体型水力発電装置を得ることができる。
【0031】
請求項3記載の発明によれば、サボニウス或いはクロスフロー型タービンの水車において、小型大出力化を図ると共に、水車が出力する機械エネルギーの定格を超えた増大を抑制することができる浮体型水力発電装置を得ることができる。
【0032】
請求項4記載の発明によれば、スクリュー型であって発電機を伝動軸により駆動する水車において、小型大出力化を図ると共に、水車が出力する機械エネルギーの定格を超えた増大を抑制することができる浮体型水力発電装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の浮体型水力発電装置の側面図であり、(b)は天面図であり、(c)は正面図である。
【図2】図1に示す水車20の簡略A−A線断面図である。
【図3】(a)は流速が所定流速よりも低い時、浮体型水力発電装置に働く力を示し、(b)は流速が所定流速と等しいとき、浮体型水力発電装置に働く力を示し、(c)は流速が所定流速を超えた時、浮体型水力発電装置に働く力を示す説明図である。
【図4】流速対所定流速比と水車20の出力対定格出力比との関係を示すグラフである。
【図5】(a)は図1の浮体型水力発電装置を構成する浮体前部11の先端形状の天面図であり、(b)は側面図である。
【符号の説明】
10 浮体
11 浮体前部
12 浮体後部
20 水車
Claims (2)
- 水面上に係留されていると共に、流速が大きくなるに従って、流れ方向の一端側が浮揚する浮体と、
前記浮体の前記浮揚する部分底面に取り付けられた水車と、を備え、
前記流速が所定流速を越えると、前記浮体の一端側の浮揚によって前記水車の一部が水上に露出するように、前記水車が前記浮体に取り付けられている
ことを特徴とする浮体型水力発電装置。 - 請求項1記載の浮体型水力発電装置であって、
前記浮体は、浮体姿勢に係わらず、一定位置に浮力中心がある浮体前部と、前記浮体前部に対して流れ方向の下流側に設けられる浮体後部とを有し、
前記浮体後部の下面側に前記水車が取り付けられている
ことを特徴とする浮体型水力発電装置。
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