JP4482247B2 - 自動音質音量調整音響システムおよびその音質音量調整方法 - Google Patents

自動音質音量調整音響システムおよびその音質音量調整方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室内などの音場にいる人に耳障りな音を発生することなく伝達関数を測定する自動音質音量調整音響システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、百貨店やスーパーなどの売場、工場、レストランなどの室内空間で案内放送やBGM放送のため音響システムが使用されているが、その室内のノイズ(騒音)はそこにいる人の状況などにより変わるため一定の音質音量の放送では聞き取り難くなる場合がある。
【0003】
そのため、例えば、室内のノイズに応じて放送する音質音量を調整するものがある。
【0004】
図5は、従来の自動音質音量調整音響システム30のブロック図を示す。
【0005】
この自動音質音量調整音響システム30は、室内空間の音場に音源信号に加えノイズがある場合、そのノイズに応じて音源信号の音質音量を制御するものである。
【0006】
図6は、自動音質音量調整音響システム30に使用する音質音量調整器40のブロック図を示す。
【0007】
図5および図6により自動音質音量調整音響システム30につき説明する。
【0008】
音源31より出力される音楽や音声などの音源信号はミキサ32でミキシングされ、イコライザなどの周波数特性制御手段41によって周波数特性が変更され、ボリュームなどの音量制御手段42によって音量が調整され、増幅器33を介し天井39に取り付けられたスピーカー34より出力される。
【0009】
音源信号はまた、音源信号分析手段43に入力し、予め定めた複数の周波数帯域に分析され、マスキング量算出手段44に入力する。
【0010】
マイクロホン35はスピーカー34の設置してある近傍の天井39に設けられ、マイクロホン35によって検出された検出ノイズ信号は、ノイズ分析手段45によって予め定めた複数の周波数帯域に分析され、マスキング量算出手段44に入力する。
【0011】
マイクロホン35によって検出されたノイズ信号には、周囲のノイズ以外にスピーカー34によって出力された音源信号も含まれる。そのため、マスキング量算出手段44は、音源信号分析手段43によって分析された音源信号に、スピーカー34からマイクロホン35までの伝達ロス分を補正する重み付けをした後、ノイズ分析手段45によって分析された信号から補正した音源信号を周波数帯域ごとに減算することによって室内で発生するノイズ信号のみを算出する。音源信号の重み付けは、スピーカー34からマイクロホン35までの伝達関数を基にして行う。
【0012】
伝達関数は、自動音質音量調整音響システム30を設置したときなどに予め伝達関数測定手段50により測定する。
【0013】
このノイズ信号により所定のマスキング量が決定され、このマスキング量が設定されたマスキング量設定手段46により周波数特性制御手段41と音量制御手段42とが制御される。マスキングとは、ある音が他の音によって聴こえにくくなる現象のことであり、マスキング量の分だけ音が聞こえにくくなっているといえる。いいかえると、マスキング量とはそのようにして聴こえにくくなった音をもとの音の大きさで聴こえるようにするのに必要な増幅量である。したがって、周波数帯域ごとに算出したマスキング量分だけ音源信号のゲインを上げれば、ノイズが無いときと同じ音質音量で聴けるように再生することができる。
【0014】
図7は、自動音質音量調整音響システム30で使用する従来の伝達関数測定手段50のブロック図を示す。
【0015】
従来の伝達関数測定手段50は、全帯域のノイズ信号を発生し増幅器33を介しスピーカー34より出力する全帯域ノイズ発生器51と、全帯域ノイズ発生器51よりの、全帯域ノイズ信号を入力し予め定めた複数の周波数帯域ごとに分析する全帯域ノイズ分析部52と、マイクロホン35によって検出した検出ノイズ信号を予め定めた複数の周波数帯域ごとに分析する検出ノイズ分析部54と、全帯域ノイズ分析部52よりの全帯域ノイズ信号と検出ノイズ分析部54よりの検出ノイズ信号とを入力し伝達関数を算出する伝達関数算出部53とで構成され、伝達関数の測定が行われていた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記したごとく従来の自動音質音量調整音響システム30は、周囲ノイズが存在または変化しても、予め測定した伝達関数を使用し周囲ノイズがないときと同じ音質音量で聴こえるように再生を行っているが、伝達関数の測定は、伝達関数測定手段50により全帯域ノイズ信号をスピーカー34より拡声して測定を行っている。そのため、S/N比を十分に確保して精度を高く測定するためには伝達関数の測定時に大きなノイズ音量を発生することが必要でその室内にいる人にとって耳障りなものとなっていた。
【0017】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、室内などの音場にいる人に耳障りな音を発生することなく音場の伝達関数を測定する画期的な自動音質音量調整音響システムを提供するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動音質音量調整音響システムは、それぞれ周波数帯域の異なる予め定めた複数の帯域ノイズ信号を順次発生しスピーカーより出力する帯域ノイズ発生部と、前記スピーカーの音場に設けられたマイクロホンによって検出される検出ノイズ信号を予め設定した複数の帯域フィルタによりろ波し複数の周波数帯域ごとに分析する検出ノイズ分析部と、前記帯域ノイズ発生部よりの前記帯域ノイズ信号と前記検出ノイズ分析部よりの前記検出ノイズ信号とを入力し前記スピーカーより前記マイクロホンまでの伝達関数を算出し、さらに前記帯域フィルタの通過特性に応じ前記算出した伝達関数を補正する伝達関数算出部とを備え、前記補正後の伝達関数を用い前記音場のノイズに応じた音質音量の制御を行うこととした。
【0021】
この構成により、伝達関数の測定時の拡声音を大幅に低減し室内などの音場にいる人に耳障りな音を発生することなく伝達関数を測定することができると共に伝達関数をさらに補正し、高精度の伝達関数を得ることができる。
【0022】
また、本発明の自動音質音量調整音響システムは、前記帯域ノイズ信号の周波数帯域ごとに対応して前記検出ノイズ分析部の前記周波数帯域を設定することとした。
【0023】
この構成により、検出ノイズ分析部で的確な周波数帯域の分析ができ、室内などの音場にいる人に耳障りな音を発生することなく伝達関数を測定することができる。
【0026】
また、本発明の自動音質音量調整方法は、それぞれ周波数帯域の異なる予め定めた複数の帯域ノイズ信号を帯域ノイズ発生部より順次発生しスピーカーより出力させるステップと、前記スピーカーの音場に設けられたマイクロホンによって検出される検出ノイズ信号を検出ノイズ分析部により予め設定した複数の帯域フィルタによりろ波し複数の周波数帯域ごとに分析するステップと、前記帯域ノイズ発生部よりの前記帯域ノイズ信号と前記検出ノイズ分析部よりの前記検出ノイズ信号とを入力し前記スピーカーより前記マイクロホンまでの伝達関数を算出し、さらに前記帯域フィルタの通過特性に応じ前記算出した伝達関数を補正するステップと、前記補正後の伝達関数に基づいて前記スピーカーに出力されるべき信号の音質および音量の調整を行うステップとを備えることとした。
【0027】
この方法により、伝達関数の測定時の拡声音を大幅に低減し室内などの音場にいる人に耳障りな音を発生することなく伝達関数を測定することができると共に伝達関数をさらに補正し、高精度の伝達関数を得ることができる。
【0028】
さらに、本発明の自動音質音量調整方法は、前記帯域ノイズ信号の周波数帯域ごとに対応して前記検出ノイズ分析部の前記周波数帯域を設定することとした。
【0029】
この方法により、検出ノイズ分析部で的確な周波数帯域の分析ができ、室内などの音場にいる人に耳障りな音を発生することなく伝達関数を測定することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0031】
図1は、本発明の第1実施形態の自動音質音量調整音響システムに使用する伝達関数測定手段10のブロック図を示す。
【0032】
図1に示すように、伝達関数測定手段10は、それぞれ周波数帯域の異なる予め定めた複数の帯域ノイズ信号を順次発生し増幅器33を介しスピーカー34より出力する帯域ノイズ発生部11と、帯域ノイズ発生部11より発生する帯域ノイズ信号の帯域幅と対応する複数の帯域フィルタ(Band Pass Filter 以下、BPF)14Aが設けられマイクロホン35によって検出した検出ノイズ信号を予め定めた複数の周波数帯域ごとに分析する検出ノイズ分析部14と、帯域ノイズ発生部11よりの帯域ノイズ信号と検出ノイズ分析部14よりの検出ノイズ信号とを入力し伝達関数を算出する伝達関数算出部13とで構成する。
【0033】
伝達関数は、帯域ノイズ発生器11より予め定めた複数の帯域ノイズ信号を順次発生し増幅器33を介しスピーカー34より出力し、検出ノイズ分析部14にてスピーカー34の音場に設けられたマイクロホン35によって検出した検出ノイズ信号を帯域ノイズ発生器11よりの帯域ノイズ信号と対応させ予め定めた複数の周波数帯域ごとに分析し、伝達関数算出部13で帯域ノイズ発生部11よりの帯域ノイズ信号と検出ノイズ分析部14よりの検出ノイズ信号とを順次入力して測定が行われる。
【0034】
従って、伝達関数測定手段10は、予め定めた複数の帯域ノイズ信号を順次発生し増幅器33を介しスピーカー34より出力するため、全帯域ノイズを用いる場合と比べて測定時の拡声音を大幅に低減し室内などの音場にいる人に耳障りな音を発生することなく伝達関数を測定することができる。
【0035】
また、自動音質音量制御装置30は、音源信号の音質音量を、検出した音源信号の特性および周囲ノイズの特性により変更することで、周囲ノイズが存在してもまた周囲ノイズが変化しても、周囲ノイズがないときと同じ状況で聴こえるように再生することができる。
【0036】
図2は、本発明の第2実施形態の自動音質音量調整音響システムに使用する伝達関数測定手段20のブロック図を示す。
【0037】
図2に示すように、伝達関数測定手段20は、それぞれ周波数帯域の異なる予め定めた複数の帯域ノイズ信号を順次発生し増幅器33を介しスピーカー34より出力する帯域ノイズ発生部21と、帯域ノイズ発生部21より発生する帯域ノイズ信号の帯域幅と対応する複数のBPF24Aが設けられマイクロホン35によって検出した検出ノイズ信号を複数の周波数帯域に分析する検出ノイズ分析部24と、帯域ノイズ発生部21よりの帯域ノイズ信号と検出ノイズ分析部24よりの検出ノイズ信号とを入力し伝達関数を算出し伝達関数補正部23Aにて補正する伝達関数算出部23とで構成し、伝達関数算出部23で算出する伝達関数をさらに検出ノイズ分析部24で使用するBPF24Aの通過特性に応じて補正するものである。
【0038】
伝達関数は、帯域ノイズ発生器21より予め定めた複数の帯域ノイズを順次発生し増幅器33を介しスピーカー34より出力し、検出ノイズ分析部24にてスピーカー34の音場に設けられたマイクロホン35によって検出した検出ノイズ信号を帯域ノイス信号と対応させ予め定めた複数の周波数帯域に分析し、伝達関数算出部23で帯域ノイズ発生部21よりの帯域ノイズ信号と検出ノイズ分析部24よりの検出ノイズ信号とを順次入力して伝達関数を算出し、さらに算出した伝達関数を伝達関数補正部23Aで補正し測定が行われる。
【0039】
図3は、検出ノイズ分析部24で使用するBPF24Aの通過特性を示す。
【0040】
図3に示すように、BPF24Aはn個のBPF1、2、3、…nを備え、通過特性は台形形状を示す。
【0041】
そのため、他の帯域のノイズ信号も通過させることがあり、伝達関数の測定に高精度が要求される場合には補正する必要がある。
【0042】
この算出した伝達関数の補正は、伝達関数算出部23でBPF1、2、3、…nの通過特性と数1により行う。
【0043】
この伝達関数の補正の計算を検出ノイズ分析部24で使用するBPFを8個とした場合に、BPF4で通過される帯域4の補正計算例により説明する。
【0044】
図4は、BPFkの一般的な通過特性を示し、表1は、8個の帯域1〜帯域8に区分した帯域4のBPF4の通過特性を具体的な数値で示したものである。
【0045】
表2は、伝達関数のWeight[k]を8個の帯域毎に測定したものである。数1に表1および表2の具体的数値を適用して計算を行うと、帯域4の補正後の伝達関数W[4]は、数2に計算結果を示すように−4.1dbとなり、補正前の伝達関数の5dbに対し補正が行われる。他の帯域についても同様にして伝達関数の補正を行うことができる。
【0046】
【表1】
Figure 0004482247
【0047】
【表2】
Figure 0004482247
【0048】
【数1】
Figure 0004482247
【0049】
【数2】
Figure 0004482247
【0050】
従って、伝達関数測定手段20は、予め定めた複数の帯域ノイズ信号を順次発生し増幅器33を介しスピーカー34より出力するため、測定時の拡声音を大幅に低減し室内などの音場にいる人に影響を及ぼすことなく伝達関数を測定することができると共に、伝達関数をさらに検出ノイズ分析部24で使用するBPF24Aの通過特性に応じて補正し高精度の伝達関数を得ることができる。
【0051】
なお、上記実施例では自動音質音量調整音響システムを室内に設置する例について述べたが、これに限定されることなく野外に設置し使用することもできる。
【0052】
また、スピーカー34とマイクロホン35は同一平面上にある必要はなく、マイクロホン35によってスピーカー34の音場を検出できればどこにあってもよい。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、音響システムの自動調整を行う際に、伝達関数の測定時の拡声音を大幅に低減でき、室内などの音場にいる人に耳障りな音を発生することなく伝達関数を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の自動音質音量調整音響システムに使用する伝達関数測定手段のブロック図
【図2】本発明の第2実施形態の自動音質音量調整音響システムに使用する伝達関数測定手段のブロック図
【図3】検出ノイズ分析部で使用する帯域フィルタの通過特性を示す図
【図4】帯域フィルタの一般的な通過特性を示す図
【図5】従来の自動音質音量調整音響システムのブロック図
【図6】自動音質音量調整音響システムに使用する音質音量調整器のブロック図
【図7】自動音質音量調整音響システムで使用する従来の伝達関数測定手段のブロック図
【符号の説明】
10、20 伝達関数測定手段
11、21 帯域ノイズ発生部
13、23 伝達関数算出部
14、24 検出ノイズ分析部
14A、24A 帯域フィルタ
23A 伝達関数補正部
33 増幅器
34 スピーカー
35 マイクロホン

Claims (4)

  1. それぞれ周波数帯域の異なる予め定めた複数の帯域ノイズ信号を順次発生しスピーカーより出力する帯域ノイズ発生部と、
    前記スピーカーの音場に設けられたマイクロホンによって検出される検出ノイズ信号を予め設定した複数の帯域フィルタによりろ波し複数の周波数帯域ごとに分析する検出ノイズ分析部と、
    前記帯域ノイズ発生部よりの前記帯域ノイズ信号と前記検出ノイズ分析部よりの前記検出ノイズ信号とを入力し前記スピーカーより前記マイクロホンまでの伝達関数を算出し、さらに前記帯域フィルタの通過特性に応じ前記算出した伝達関数を補正する伝達関数算出部とを備え、
    前記補正後の伝達関数を用い前記音場のノイズに応じた音質音量の制御を行うことを特徴とする自動音質音量調整音響システム。
  2. 前記帯域ノイズ信号の周波数帯域ごとに対応して前記検出ノイズ分析部の前記周波数帯域を設定することを特徴とする請求項1に記載の自動音質音量調整音響システム。
  3. それぞれ周波数帯域の異なる予め定めた複数の帯域ノイズ信号を帯域ノイズ発生部より順次発生しスピーカーより出力させるステップと、
    前記スピーカーの音場に設けられたマイクロホンによって検出される検出ノイズ信号を検出ノイズ分析部により予め設定した複数の帯域フィルタによりろ波し複数の周波数帯域ごとに分析するステップと、
    前記帯域ノイズ発生部よりの前記帯域ノイズ信号と前記検出ノイズ分析部よりの前記検出ノイズ信号とを入力し前記スピーカーより前記マイクロホンまでの伝達関数を算出し、さらに前記帯域フィルタの通過特性に応じ前記算出した伝達関数を補正するステップと、
    前記補正後の伝達関数に基づいて前記スピーカーに出力されるべき信号の音質および音量の調整を行うステップとを備えたことを特徴とする自動音質音量調整方法。
  4. 前記帯域ノイズ信号の周波数帯域ごとに対応して前記検出ノイズ分析部の前記周波数帯域を設定することを特徴とする請求項3に記載の自動音質音量調整方法。
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