JP5224613B2 - 音場補正システム及び音場補正方法 - Google Patents

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Description

本発明は、劇場やホールなどの音場を補正するための音場補正システム及び音場補正方法に関する。
劇場やホールなどの音響空間において、スピーカから発せられた音響は、観客席などの聴取点に達するまでに、スピーカの特性による影響や、室内の温度や湿度の影響や、壁面による反射や屈折の影響などを受ける。その結果、音源からアンプを介してスピーカに入力される音響信号と、スピーカから発せられた音を収音した収音信号との間に周波数特性のずれが生じる。このような周波数特性のずれが生じると、音源からの音響と実際に聴取者が聴く音響との間に乖離が生じる。そこで、このような音響空間の影響による周波数特性のずれを補正するための音場補正が従来から行われている。なお、以下、本明細書でいう音場とは、電気音響を含んだ音場であり、本明細書でいう音場補正とは、電気音響の補正を指すものである。
図1は、従来の音場補正を行うための音場補正システムの構成例を示す図である。同図に示すように、従来の音場補正システム100は、音源110とスピーカ140との間の信号回路に設置した音響イコライザ(主観的補正イコライザ)120を備えて構成されており、スピーカ140から音場102へ放出された音響を自身の耳で聴いた音響技術者が、音響イコライザ120を手動調整することで行われている。そして、この音響イコライザ120の調整は、音響技術者が自身の主観に基づいて行っていた。なお、図1の符号130は、音響信号を増幅するためのパワーアンプである。
しかしながら、上記のような音響技術者の主観に頼る音場補正の効果は、音響技術者の経験や技量に依存するところが非常に大きい。そのため、この方法では、劇場やホールなどの音場において、必ずしも適切な音場補正が行われているとは限らないという問題があった。そして、音響技術者の主観に基づく音場補正が適切に行われていなかった場合、当該劇場やホールなどの音場が最適な状態に調整されず、演者と聴取者との間にいわば音の紗幕のようなものができてしまうおそれがある。このことにより、当該劇場やホールの音響が不完全なものとなってしまい、聴衆(観衆)に十分な満足感を与えられない懸念がある。
そこで、上記のような音響技術者の主観に頼る音場補正以外に、音響信号の測定結果に基づく客観的な音場補正を行う必要がある。図2は、従来の他の音場補正システムの構成例を示す図である。同図に示す音場補正システム100−2は、音響信号を出力する音源110と、音源110から出力された音響信号を主観的に調整するための音響イコライザ(主観的補正イコライザ)120と、音源110から出力された音響信号を測定結果に基づいて客観的に調整するための他の音響イコライザ(物理量補正イコライザ)123と、音響イコライザ120,123によって調整された音響信号を増幅するパワーアンプ130と、パワーアンプ130によって増幅された音響信号を音響として音場102に放出するためのスピーカ140と、スピーカ140から音場102に放出された音響を収音する収音マイク150とを備えていると共に、客観的な音場補正に必要な音響の比較測定を行うための手段として、FFTアナライザ(測定手段)170を備えている。また、FFTアナライザ170による測定結果を表示するためのディスプレイ装置171が設けられている。
FFTアナライザ170は、音響イコライザ123による補正がかかっていない状態(音響イコライザ123が無補正の状態)で、音源110から出た音響信号L1と、スピーカ140から音場102に放出された音波を収音マイク150で収音した収音信号L4とをFFTアナライザ170に入力し、それらの信号波形を比較する測定を行う。そして、このFFTアナライザ170による測定結果に基づいて、音響イコライザ123を調整することで、スピーカ140から放出される音響をフラットな状態に補正することが行われている。ここでいうスピーカ140から放出される音響がフラットな状態とは、FFTアナライザ170で音響信号L1の信号波形と収音信号L4の信号波形とを比較測定したときに、それらのスペクトルが同等で、かつ位相変移が(所定の基準値よりも)なだらかになっている状態を指すものである。以下、本明細書中では、この状態を「物理的にフラットな状態」と呼ぶこととする。このような補正技術によって、劇場やアリーナあるいは屋外などの聴取環境の音場補正が行われている。
なお、上記のような音響の比較測定結果に基づく客観的な音場補正は、音響イコライザ123などの音響調節機器を音響技術者が手動操作することで調整するようにしてもよいし、測定結果に基づく自動制御が可能な装置によって自動的に行うことも可能である。特許文献1、2には、自動的な制御によって音響を物理的にフラットな状態に補正するための音場補正装置が開示されている。特許文献1に記載の音場補正装置は、音場内の聴取点において音響信号を聴取し、これを電気信号に変換して出力すると共に音響信号として出力するソース側信号の周波数特性と、聴取された信号の周波数特性との比較を所定周波数帯域毎に求め、該周波数特性の比較に基づいて音場補正を実行するようになっている。
また、特許文献2に記載の音場補正装置は、収音信号および調整音響信号に基づいて音響周波数特性を測定し、測定された音響周波数特性が目標音響周波数特性になるように音響信号を調整するための音響調整データを算出し、算出した音響調整データに応じて音響信号を調整するように構成されている。これらの音場補正装置によれば、音響信号の周波数特性とスピーカから発せられた音響を収音した収音信号の周波数特性との比較に基づいて周波数特性を補正することで、音場に放出される音響を物理的にフラットな状態に補正することが可能である。
特開平5−181489号公報 特開2005−49688号公報
しかしながら、実際の音場において聴取者に届く音響の聞こえ方は、聴取者が受ける心理音響に基づく作用、あるいは音が伝わる聴覚器官(外耳道など)の形状や頭部周辺(頭部や顔面など)の形状に基づく影響に大きく左右されるのが実情である。そのため、上記のような測定結果に基づいて音響を物理的にフラットな状態にする音場補正では、劇場やホールなどの空間において、聴取者にとってより違和感が少なく自然な音響として聴こえる状態への音場補正を実現できている訳ではないという問題がある。
すなわち、音場の音響状態を聴取者が真に満足できるレベルに補正するための要素には、心理音響に基づく影響あるいは音が伝わる聴覚器官や頭部周辺の形状に基づく影響など、聴取者の感覚的あるいは身体的な面に働きかける要素が多分に含まれている。そのため、測定結果に基づいて音響を物理的にフラットな状態にする音場補正を行うのみでは不十分であり、その補正結果に対して、さらに、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状や頭部伝達関数に基づく重み付けを考慮した適切な補正を加えることで、はじめて、聴取者にとってより違和感が少なく自然な音響として聞こえる状態への補正を達成することができると考えられる。そのため、劇場やホールの音響に対する聴取者(観衆)の満足度を向上させるには、現在行われている音場補正の手法に対して、さらなる改善を加えることが必要である。
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、劇場やホールなどの音場補正において、音場補正に携わる音響技術者の技量や機器の使用環境などに関わらず、聴取者が真に満足できるレベルでの音場補正を実現できるようにするための音場補正システム及び音場補正方法を提供することにある。
本発明にかかる音場補正システムは、音源(10)と、音源(10)からの音響を音場(2)に出力する拡声手段(40)と、拡声手段(40)で音場(2)に出力された音響を収音する収音手段(50)と、音源(10)から出た音響信号(L1)の特性と、収音手段(50)で収音した収音信号(L4)の特性とを入力してそれらを比較測定する測定手段(70)と、測定手段(70)で比較測定した結果(S0)に基づいて、音源(10)と拡声手段(40)との間に配置した第1音響補正手段(23)で音響信号(L1)の特性を調整することで、音場(2)に放出される音響の信号として、比較測定結果(S0)の特性がフラットな状態となるように補正した第1補正音響信号(S1)を出力する音場補正システム(1)において、音源(10)と第1音響補正手段(23)との間に配置した第2音響補正手段(22)に対して、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けが含まれた所定の感覚量重み付け補正(M)を入力し、当該感覚量重み付け補正(M)を第1補正音響信号(S1)に重ね合わせる処理を行うことで、音場(2)に放出される音響の信号として、第1補正音響信号(S1)に対して聴取者の感覚的あるいは身体的な要素を考慮した補正を加えてなる第2補正音響信号(S2)を出力するように構成したことを特徴とする。
また、本発明にかかる音場補正方法は、音源(10)から出た音響信号(L1)の特性と、拡声手段(40)で音場(2)に出力された音源(10)からの音響を収音手段(50)で収音した収音信号(L4)の特性とを測定手段(70)に入力して、それらを比較測定した結果(S0)を出力するステップ(ST1)と、測定手段(70)で比較測定した結果(S0)に基づいて、音源(10)と拡声手段(40)との間に配置した第1音響補正手段(23)で音響信号(L1)の特性を調整することで、音場(2)に出力される音響の信号として、比較測定結果(S0)の特性がフラットな状態となるように補正した第1補正音響信号(S1)を出力するステップ(ST3)と、音源(10)と第1音響補正手段(23)との間に配置した第2音響補正手段(22)に対して、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けが含まれた所定の感覚量重み付け補正(M)を入力し、当該感覚量重み付け補正(M)を第1補正音響信号(S1)に重ね合わせる処理を行うことで、音場(2)に放出される音響の信号として、第1補正音響信号(S1)に対して聴取者の感覚的あるいは身体的な要素を考慮した補正を加えてなる第2補正音響信号(S2)を出力するステップ(ST6)と、を有することを特徴とする。
本発明にかかる音場補正システム又は音場補正方法は、音源(10)と第1音響補正手段(23)との間に配置した第2音響補正手段(22)に対して、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けが含まれた所定の感覚量重み付け補正(M)を入力することで、第1音響補正手段(23)で物理的にフラットな状態に補正された第1補正音響信号(S1)に対して、聴取者の感覚的あるいは身体的な要素を考慮した補正を加えてなる第2補正音響信号(S2)を出力するものである。これにより、物理的にフラットな状態の音場に対して、聴取者の感覚的あるいは身体的な要素を考慮したいわば感覚的な補正を加えることができる。このような補正を加えることで、劇場やホールなどの音場における音響を、物理的にフラットな状態と比較して、聴取者にとってより違和感が少なく自然な音響として聞こえる状態(いわゆる感覚的にフラットな状態)となるように補正することが可能となる。その結果、音響に対する聴取者の満足度を効果的に向上させることができるので、劇場やホールにおける演者と聴取者を心理的に強く結び付けることができる。また、演者と聴取者が心理的に強く結び付くことにより、演者のパフォーマンスアップが期待できる。
また、本発明にかかる音場補正システム又は音場補正方法では、上記の感覚的にフラットな状態への音場補正は、第2音響補正手段(22)に対して所定の感覚量重み付け補正(M)を入力し、当該感覚量重み付け補正(M)を物理的にフラットな状態の第1補正音響信号(S1)に重ね合わせる処理を行うことで実施可能である。そのため、音場補正を行う際、劇場やホールなど現場での機器の調整などに要する時間が短くて済むという利点がある。これにより、従来の課題であった音場補正における時間的制約及びコスト不足の問題を改善することができる。
また、この音場補正システム又は音場補正方法では、第2音響補正手段(22)に入力するための所定の感覚量重み付け補正(M)は、現場での音場補正を行う前にあらかじめ用意されている補正用のデータを使用可能である。そのため、当該感覚量重み付け補正(M)を用いて行う音場補正では、補正結果のばらつきを無くすことが可能である。したがって、異なる劇場やホールの音場補正であっても、また、異なる音響技術者の操作による音場補正であっても、常に一定の補正結果を得ることができ、音場補正結果の再現性を高めることができる。また、そのことによって音響技術者の地位向上にも資することとなる。
また、上記の音場補正システム又は音場補正方法では、感覚量重み付け補正(M)の波形は、ラウドネス曲線を基準として、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けによる修正を加えた修正曲線で表される波形であり、当該修正曲線は、周波数に対する振幅の値が3kHz,6kHz,12kHzの点あるいはその近傍にそれぞれディップを有すると共に、2kHz近傍から12kHz近傍にかけて次第に振幅の値が減少する傾向を有する曲線であることが望ましい。感覚量重み付け補正(M)として、上記のような曲線で表される波形を有する信号を用いることで、聴取者の感覚的あるいは身体的な要素を考慮した感覚的な補正が行えるので、物理的フラットな状態と比較して、聴取者にとってより違和感が少なく自然な音響として聞こえる状態への音場補正を達成できる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
本発明にかかる音場補正システム及び音場補正方法によれば、劇場やホールなどの空間の音場補正において、音響技術者の技量や機器の使用環境などに関わらず、聴取者が真に満足できるレベルの音場補正を実現することができる。
従来の音響技術者の主観に基づく音場補正を行うための音場補正システムの構成例を示すブロック図である。 従来の測定結果に基づいて音響を物理的にフラットな状態に補正するための音場補正システムの構成例を示すブロック図である。 本発明の一実施形態にかかる音場補正を行うための音場補正システムの構成例を示すブロック図である。 音場補正システムによる音場補正の手順を示すフローチャートである。 第1音響信号と収音信号との比較測定の結果を示すグラフである。 物理量補正イコライザによる修正分の信号波形を示すグラフである。 物理量補正イコライザによる補正が行われた状態での第1音響信号と収音信号との比較測定の結果(第1補正音響信号)の波形を示すグラフである。 感覚量重み付け補正の波形を示すグラフである。 感覚量重み付け補正の波形を出力するためのパラメータの一例を示す表である。 感覚量補正イコライザによる補正が行われた状態での第3音響信号と収音信号との比較測定の結果(第2補正音響信号)の波形を示すグラフである。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、背景技術の説明でも述べたが、本実施形態の説明においては、音場が「物理的にフラットな状態」であるというときは、後述する物理量補正イコライザ23による補正が行われた結果、後述するFFTアナライザ70で音響信号L1と収音信号L4とを比較測定したときに、それらのスペクトルが同等で、かつ位相変移が(所定の基準値よりも)なだらかになっている状態(比較測定結果の信号波形がフラットな状態)の音場を指すものとする。また、音場が「感覚的にフラットな状態」であるというときは、上記の物理的にフラットな状態の音場に対して、後述する感覚量補正イコライザ22によって、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状や頭部伝達関数に基づく重み付けを考慮した所定の補正が加えられた結果の音場を指すものとする。
図3は、本発明の一実施形態にかかる音場補正システムの全体構成例を示すブロック図である。同図に示す音場補正システム1は、音響信号を出力する音源10と、音源10から出力された音響信号を調整するための音響イコライザ20と、音響イコライザ20によって調整された音響信号を増幅するパワーアンプ30と、パワーアンプ30によって増幅された音響信号を音響として音場2に放出するためのスピーカ(拡声手段)40と、スピーカ40から音場2に放出された音響を収音する収音マイク(収音手段)50と、収音マイク50によって収音された音響の音響信号を増幅するマイクロホンアンプ60とを備えて構成されている。
なお、詳細な図示は省略するが、音源10には音響信号の出力が可能な機器が含まれており、当該機器から出た音響信号は、ミキサなどの調節機器を経て出力される。また、パワーアンプ30は、音源10から出て音響イコライザ20によって調整された音響信号を増幅するようになっている。なお、本実施形態では、音源10からの音響を音場2に放出するための手段としてパワーアンプ30およびスピーカ40を備えているが、このような音響を出力する手段の具体的構成はあくまでも一例であり、音響を放出することができるものであれば、他の構成であってもよい。
本実施形態の音場補正システム1が備える音響イコライザ20には、主観的補正イコライザ21と、感覚量補正イコライザ(本発明に係る第2音響補正手段に相当)22と、物理量補正イコライザ(本発明に係る第1音響補正手段に相当)23とが含まれている。そしてここでは、主観的補正イコライザ21と感覚量補正イコライザ22と物理量補正イコライザ23は、音源10からの音響信号が伝わる信号回路において、音源10に近い側からこの順番に設置されている。各々の音響イコライザ20は、詳細な図示は省略するが、具体的には、CPU(Central Processing Unit)あるいはDSP(Digital Signal Processor)などを有するパラメトリックイコライザあるいはバンドパスフィルタなどによって構成されている。
本実施形態の音場補正システム1では、上記の主観的補正イコライザ21、感覚量補正イコライザ22、物理量補正イコライザ23は、いずれも音響技術者が手動により操作することで、音源10から出た音響信号に対する調整を行うようになっている。そして、主観的補正イコライザ21、感覚量補正イコライザ22、物理量補正イコライザ23は、いずれも初期状態では入力した音響信号を無補正の状態で出力するようになっている。その一方で、音響技術者が各音響イコライザ20を操作して音響の調整を行うことで、所定の状態に補正された音響信号が出力されるようになっている。なお、感覚量補正イコライザ22において、上記のように入力した音響信号を無補正の状態で出力するには、入力した音響信号に対して後述する感覚量重み付け補正Mをバイパスさせておくようにする。これ以外にも、初期状態から入力した音響信号に対して感覚量重み付け補正Mを重ね合わせるようにしてもよい。
音場2は、スピーカ40からの音響が放出されるコンサート会場やホールなどの音響空間である。また、収音マイク50は、スピーカ40からの音響によって形成される音場2の所定の聴取点に設置されている。具体的には、収音マイク50は、劇場やホール内における客席あるいはその近傍などに設置されている。収音マイク50は、音場2の複数箇所に設置されていてよい。収音マイク50からの収音信号は、マイクロホンアンプ60を介してFFTアナライザ70に送られる。
音源10からの音響信号と、スピーカ40から音場2に放出された音響の音響信号(収音信号)との周波数特性を比較測定するための手段として、FFTアナライザ(測定手段)70が設けられている。FFTアナライザ70には、物理量補正イコライザ23に入力する前の音響信号(以下、「第1音響信号」という。)L1と、物理量補正イコライザ23から出力されてパワーアンプ30に入力する前の音響信号(以下、「第2音響信号」という。)L2と、感覚量補正イコライザ22に入力する前の音響信号(以下、「第3音響信号」という。)L3と、収音マイク50によって収音された音響がマイクロホンアンプ60で増幅された音響信号(以下、「収音信号」という。)L4とがそれぞれ別の経路で入力され、これら各信号L1,L2,L3,L4を比較測定できるようになっている。
FFTアナライザ70は、入力した第1音響信号L1、第2音響信号L2、第3音響信号L3、及び収音信号L4が有する時間軸データをFFT(Fast Fourier Transform)を用いて周波数軸データ(スペクトルデータ)に変換して比較する機能を有している。
また、FFTアナライザ70による測定結果を表示するための表示手段71が設けられている。表示手段71は、FFTアナライザ70に接続されたディスプレイ装置などで構成されている。この表示手段71には、FFTアナライザ70によって第1音響信号L1又は第2音響信号L2又は第3音響信号L3と収音信号L4とがFFTを用いて変換された結果、これらの信号に含まれる音響周波数毎のレベルや差分特性などの比較測定結果が表示されるようになっている。音場補正システム1を操作する音響技術者は、この表示手段71に表示された比較測定結果に基づいて物理量補正イコライザ23を調整することで、後述する物理的フラットな状態への音場補正を行うことができる。
なお、第1音響信号L1は、FFTアナライザ70に入力される前に第1遅延回路81で所定時間だけ遅延され、第2音響信号L2は、FFTアナライザ70に入力される前に第2遅延回路82で他の所定時間だけ遅延され、第3音響信号L3は、FFTアナライザ70に入力される前に第3遅延回路83でさらに他の所定時間だけ遅延されるようになっている。第1遅延回路81及び第2遅延回路82及び第3遅延回路83で第1、第2、第3音響信号L1,L2,L3を遅延させる遅延時間は、第1、第2、第3音響信号L1,L2,L3がFFTアナライザ70に入力された時点から、音場2および収音マイク50を介して出力された収音信号L4がFFTアナライザ70に入力されるまでの時間となるようにする。これにより、第1、第2、第3音響信号L1,L2,L3と収音信号L4との位相タイミングを合わせることが可能となる。また、後述するように、第1遅延回路81で所定の遅延をかけることで、第1音響信号L1と第2音響信号L2の位相タイミングを合わせることも可能となる。
音場補正システム1では、音源10から出た音響信号(原信号)は、主観的補正イコライザ21と感覚量補正イコライザ22と物理量補正イコライザ23とをこの順に通過して、パワーアンプ30に送られる。音響信号が主観的補正イコライザ21、感覚量補正イコライザ22、物理量補正イコライザ23を通過する際、所定の調整が加えられることで、音場補正が行われる。この音場補正の詳細については後述する。こうして、補正された音響信号に基づく音響がスピーカ40から音場へ放出される。
次に、上記構成の音場補正システム1による音場補正の手順(方法)について説明する。ここでは、本実施形態にかかる音場補正システム1を用いて、劇場やホールなどの音場補正を行う場合を例に説明する。図4は、音場補正の全体の手順を説明するためのフローチャートである。
〔FFTアナライザによる音響測定〕
この音場補正では、まず、FFTアナライザ70による音響の比較測定を行う(ステップST1)。この比較測定の具体的手順について説明すると、図3に示す構成の音場補正システム1において、物理量補正イコライザ23による補正がかかっていない状態で、FFTアナライザ70には、第1音響信号L1と、収音マイク50で収音した音響に基づく収音信号L4との両方が入力される。FFTアナライザ70では、これら第1音響信号L1と収音信号L4とがFFTを用いて変換される。その結果、これらの信号に含まれる音響周波数毎のレベルや差分特性などの比較測定結果が表示手段71に表示される。図5は、ここで得られた第1音響信号L1と収音信号L4との比較測定の結果(補正前音響信号S0)を示すグラフである。同図のグラフでは、縦軸は振幅(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。この点は、以下の他のグラフでも同じである。この比較測定の結果は、音源10からの原音響に基づく音響信号(第1音響信号)L1と、聴取者が実際に劇場やホール内で聴いている音響に基づく音響信号(収音信号)L4との周波数特性の相違を示している。なお、同図のグラフに示す測定結果は、音源10から発せられる原音響として音場補正用のピンクノイズを用いた場合の測定結果の一例である。
〔物理的フラットな状態への補正〕
次に、FFTアナライザ70による比較測定結果の判断を行う(ステップST2)。そして、当該比較測定結果の判断に基づいて、物理量補正イコライザ23で音源10からの原信号を調整することで、音場2に放出される音響を物理的にフラットな状態にする音場補正を行う(ステップST3)。その後、再度、FFTアナライザ70による音響の比較測定を行い(ステップST4)、当該補正後の測定結果の判断(確認)を行う(ステップST5)。ここまでのステップST2〜ST5で、物理的フラットへの音場補正が行われる。以下、この手順について詳細に説明する。
音場補正システム1を操作する音響技術者は、表示手段71に表示されたFFTアナライザ70による比較測定の結果(図5のグラフ)S0を見ながら、物理量補正イコライザ23を操作して周波数帯域ごとの振幅を調整することで、物理的フラットな状態への音場補正を行う。具体的には、音響信号L1が有する周波数特性のピークを下げてディップを上げるように調整することで、音場2の影響を受けた収音信号L4におけるピーク・ディップを有する特性カーブとは対称となる調整用の音響信号を加える補正を行う。図6は、ここでの補正で音響信号L1に対して重ね合わせられる調整用の信号の波形(物理量補正イコライザ23による修正分の信号波形)を示すグラフである。なお、実際には、比較測定の結果(図5のグラフ)における例えば山(上に凸)になっている箇所を物理量補正イコライザ23で下げるように調整するのであるが、操作上見易いように、山になっている箇所を下げる操作が上下逆向きに表示されるような逆表示機能が用いられる。以上により、スピーカ40から音場2に放出される音響が物理的にフラットな状態となるように補正される。
なお、物理量補正イコライザ23では、実際には、物理量補正イコライザ23の前後から取り出された第1音響信号L1と第2音響信号L2とを比較して確認しながら調整を行う。この場合、物理量補正イコライザ23がデジタル機器であると、第1音響信号L1に対して第2音響信号L2が遅延して出力される。したがって、第1音響信号L1と第2音響信号L2の時間軸を合わせるために、第1遅延回路81で第1音響信号L1に対して第2音響信号L2に合うような所定の遅延をかける必要がある。
図7は、物理量補正イコライザ23による補正が行われた状態での第1音響信号L1と収音信号L4とをFFTアナライザ70で比較測定した結果を示すグラフである。同図のグラフに示すように、物理的フラットへの補正が行われた状態での第1音響信号L1と収音信号L4との比較測定結果(第1補正音響信号S1)の周波数特性は、低周波数域と高周波数域を除く中間の周波数域における振幅が0dB付近におさまっており、周波数に対する振幅の波形がほぼフラットな特性となるように補正されている。
上記のような物理量補正イコライザ23の調整で物理的にフラットな状態への音場補正を行う手法自体は、既に公知のものである。しかしながら、従来技術の説明でも述べたように、物理量補正イコライザ23の調整による物理的フラットな状態への音場補正だけでは、劇場やホールなどの空間において、聴取者にとってより違和感が少なく自然な音響として聴こえる状態への音場補正は達成できないのが現状である。そこで、本実施形態の音場補正では、上記の物理量補正イコライザ23による物理的にフラットな状態への音場補正に加えて、下記の感覚量補正イコライザ22による感覚的にフラットな状態への音場補正をさらに行うようにしている。
〔感覚的フラットな状態への補正〕
上記の物理量補正イコライザ23による物理的にフラットな状態への音場補正を行った後、感覚量補正イコライザ22で原信号に対してさらに調整を加える(ステップST6)。このステップST6で、感覚的フラットな状態への音場補正が行われる。この感覚量補正イコライザ22による音場補正では、上記の物理量補正イコライザ23によって補正された物理的フラットな状態の音響信号に対して、さらに、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けを考慮した所定の補正が加えられる。この音場補正は、具体的には、感覚量補正イコライザ22に対して、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けが含まれた所定の感覚量重み付け補正Mを入力し、当該感覚量重み付け補正Mを物理的フラットな状態に補正された第1補正音響信号S1に重ね合わせる処理によって行われる。
図8は、感覚量重み付け補正Mの波形を示すグラフである。また、図9は、図8のグラフに示された感覚量重み付け補正Mの波形を出力するためのパラメータの一例を示す表である。なお、図9の表に示すパラメータは、特定の機器に入力するためのデータの一例であり、ここでは、当該特定の機器として、ヤマハ(株)製パラメトリックイコライザYDP-2006を用いた場合の例を示している。なお、感覚量重み付け補正Mの波形を出力するためのパラメータは、入力する機器に応じて変わるものであり、他の機器では、図9に示すものとは異なる数値になる場合がある。
ここで、感覚量補正イコライザ22に入力する感覚量重み付け補正Mに対して、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けの情報がどのように盛り込まれているかについて、詳細に説明する。本願発明の発明者は、図8に示す感覚量重み付け補正Mが有する波形の曲線(傾き)を具体的に決定するにあたって、既に公知であるラウドネス曲線を基に修正を加えた曲線を検証することで、聴取者にとってより違和感が少なく自然な音響として聞こえる状態への音場補正が可能な信号を得るための研究・実験を繰り返した。図8に示す感覚量重み付け補正Mの波形データは、このような研究・実験の結果として導き出されたものである。
すなわち、感覚量補正イコライザ22に対して、ラウドネス曲線を基に修正を加えた曲線の波形データを入力することで、物理的フラットな状態の音響信号と重ね合わせて出力し、当該出力に基づく音響の試聴と調整を繰り返し行うことで、物理的にフラットな状態と比較して、聴取者にとってより違和感が少なく自然な音響として聞こえるための音響信号を見出した。こうして、図9の表に示すパラメータにたどり着き、それを感覚量補正イコライザ22(パラメトリックイコライザ)で信号波形として出力したものが、図8に示す感覚量重み付け補正Mの波形(曲線)である。
したがって、図8に示す感覚量重み付け補正Mの波形曲線は、ラウドネス曲線との相関性(関連性)、外耳道の共振周波数との相関性、頭部伝達関数(Head Related Transfer Function,HRTF)との相関性をそれぞれ有している。ここでいう外耳道の共振周波数とは、人間の外耳道内で共振を起こすための周波数を意味する。なお、「日本音響学会編,『音響工学講座(1) 基礎音響工学』,コロナ社,1990年」(以下、「非特許文献」という。)によれば、外耳道とは、内部を鼓膜で閉じられた3000Hz付近に共振を持つ管である。
また、頭部伝達関数とは、音源から耳に至るまでの音の伝達特性のことである。すなわち、頭部周辺の空間からの音が頭部及び耳を経由して鼓膜に至るまでの間に周波数に応じて音圧レベルが変化する。この周波数特性を相対音圧レベル(dB)で示したものが頭部伝達関数である。この頭部伝達関数は、人間の頭部や顔面の形状などの要素で決まる伝達関数である。なお、上記の非特許文献のp.246には、頭部伝達関数の例が掲載されている。
具体的に、図8に示す感覚量重み付け補正Mの波形曲線とラウドネス曲線との相関性は、図8に示す感覚量重み付け補正Mの波形曲線における全体に見られるが、特に中低音域の曲線に良く現れている。また、外耳道の共振周波数との相関性は、図8に示す感覚量重み付け補正Mの波形曲線における3kHzの点あるいはその近傍、およびその偶数次高調波である6kHz,12kHzの点あるいはその近傍に現れている。具体的には、感覚量重み付け補正Mの波形曲線が3kHz,6kHz,12kHzそれぞれの近傍にディップを有する曲線になっている点である。また、頭部伝達関数との相関性は、ラウドネス曲線にもその相関性が見られるものであるが、図8に示す感覚量重み付け補正Mの波形曲線における特に高音域の部分に良好に現れている。
本実施形態における感覚量補正イコライザ22による感覚的フラットへの音場補正は、物理量補正イコライザ23によって補正された物理的フラットな波形を有する音響信号に対して、図8のグラフに示す感覚量重み付け補正Mを重ね合わせることで、劇場やホールなどの空間において、聴取者にとってより違和感が少なく自然な音響として聴こえる状態の音場を実現するものである。図10は、感覚量補正イコライザ22による補正が行われた状態での第3音響信号L3と収音信号L4とをFFTアナライザ70で比較測定した結果を示すグラフである。同図のグラフに示される感覚的にフラットな状態に補正された音響信号(第2補正音響信号S2)の波形は、図8に示す感覚量重み付け補正Mが重ね合わせられた結果、図7に示す物理的フラットな状態に補正された音響信号(第1補正音響信号S1)の波形と比較して、高音域の利得が低くなっており、かつ、3kHz,6kHz,12kHzそれぞれの近傍にディップを有している。
本実施形態の音場補正は、上記の感覚的にフラットな音場をコンサートホールや劇場など色々な場所やいろいろな機材の組み合わせで再現できるようにするための手法である。すなわち、FFTアナライザ70による音響信号の比較測定結果に基づいて物理量補正イコライザ23を調整することで、物理的フラットな音場を実現し、その状態の音響信号(第1補正音響信号S1)に対して、図8に示す波形を有する感覚量重み付け補正Mを重ね合わせることで、物理的にフラットな状態の音場と比較して、聴取者にとってより違和感が少なく自然な音響として聴こえる音場を得られるようにするものである。
そして、本実施形態の感覚量補正イコライザ22による音場補正は、上記の感覚量重み付け補正Mのデータを感覚量補正イコライザ22に入力することで行われる。したがって、感覚的にフラットな状態への音場補正は、特定のハードウェアに依存することなく、上記の感覚量重み付け補正Mのデータ、あるいは当該データを含むソフトウェアさえあれば、感覚量重み付け補正Mのデータを汎用の音響調節機器などに入力することでも実施可能である。
〔主観的判断による補正〕
上記の手順で感覚的フラットな状態への補正を行った後、音響技術者が、当該音場の音響に対して自身の主観に基づいた主観的判断を行う(ステップST7)。そして、当該主観的判断に基づいて、主観的補正イコライザ21で原信号に対してさらに調整を加える。このステップST8で、主観的判断による音場補正が行われる。以下、この主観的判断による音場補正について説明する。
主観的補正イコライザ21による音場補正は、劇場やホールの音響を自身の耳で聴いた音響技術者が、自身の主観的判断に基づいて、主観的補正イコライザ21を操作することで、物理量補正イコライザ23による補正に加えて感覚量補正イコライザ22による補正がなされた状態の音響信号(第2補正音響信号S2)に対して、さらなる補正を加えるものである。これにより、感覚量補正イコライザ22による調整で得られた感覚的にフラットな状態の音場に対して、当該劇場やホールで行われる演目の種類、発音源(演奏される楽器の音又は講演者や歌手の声など)の種類やその収音方法などに合わせた補正を加えることで、演目などに応じたいわば芸術的な判断に基づいて音響を最適化することを意図した音場補正が行われる。
この主観的判断による音場補正も、それ自体は既に公知の手法であり、劇場やホールなどの音場補正においては、音響技術者が音響を聴きながら主観的補正イコライザ21(グラフィックイコライザやパラメトリックイコライザ)を微調整することが行われている。しかしながら、既述のように、この主観的補正イコライザ21による音場補正の効果は、音響機器を操作する音響技術者の経験や技量に依存するところが大きい。そのため、上記の物理的にフラットな状態の音場に対してこの主観的判断による音場補正を行うだけでは、劇場やホールなどの空間において、必ずしも聴取者にとってより違和感が無く自然な音響として聴こえる状態への音場補正がなされているとは限らない。そこで、本実施形態の音場補正システム1による音場補正では、主観的補正イコライザ21による音場補正に先立って、上記の感覚量補正イコライザ22による音場補正を行うことで、感覚的にフラットな音場を実現するようにしている。
以上説明したように、本実施形態の音場補正システム1を用いた音場補正によれば、物理的にフラットな状態の音場に対して、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けが含まれた感覚的な補正を加えることができる。このような補正を加えることで、劇場やホールなどの音場における音響を聴取者にとってより違和感が少なく自然な音響として聞こえる状態(感覚的にフラットな状態)となるように補正することが可能となる。その結果、音響に対する聴取者の満足度を効果的に向上させることができるので、劇場やホールにおける演者と聴取者を心理的に強く結び付けることができる。また、演者と聴取者が心理的に強く結び付くことにより、演者のパフォーマンスアップが期待できる。
また、本実施形態の音場補正システム1による音場補正では、感覚量補正イコライザ(第2音響信号調整手段)22による感覚的にフラットな状態への音場補正は、感覚量重み付け補正Mのデータを感覚量補正イコライザ22に入力するだけで行うことが可能である。そのため、音場補正を行う際、劇場やホールなど現場での機器の調整に要する時間が短くて済むという利点がある。これにより、従来の課題であった音場補正における時間的制約及びコスト不足の問題を改善することができる。
また、この音場補正システム1による音場補正では、感覚量補正イコライザ22に入力するための感覚量重み付け補正Mは、現場での音場補正を行う前にあらかじめ用意されている補正用のイコライザ又はフィルタを使用可能である。そのため、当該感覚量重み付け補正Mを用いて行う音場補正では、音響信号に対する補正結果のばらつきを無くすことが可能である。したがって、異なる劇場やホールの音場補正であっても、また、異なる音響技術者の操作による音場補正であっても、常に一定の補正結果を得ることができ、音場補正結果の再現性を高めることができる。また、そのことによって音響技術者の地位向上にも資することとなる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、音響イコライザ20に含まれる主観的補正イコライザ21と感覚量補正イコライザ22と物理量補正イコライザ23とがそれぞれ異なるハードウェアで構成されている場合を示したが、これら音響イコライザ20に含まれる主観的補正イコライザ21と感覚量補正イコライザ22と物理量補正イコライザ23それぞれが行う音場補正処理(主観的判断に基づく音場補正、感覚的フラットへの音場補正、物理的フラットへの音場補正)は、上記実施形態に示す以外にも、共通のハードウェア(パラメトリックイコライザとしての機能を備えたコンピュータなど)に対する操作で行うことができるように構成してもよい。
また、感覚量補正イコライザ22に入力する感覚量重み付け補正Mの波形曲線は、図8に示すものが基本的な形状であるが、場合によっては、同図に示す波形とは若干異なる波形となる場合もあり得る。例えば、人間の外耳道の共振周波数は、人種によって若干異なるという説があり、それを考慮した場合は、3kHz,6kHz,12kHz(特に3kHz)のディップの位置は、図8に示す波形に対して低周波数側又は高周波数側へ若干変位させる必要があることも考えられる。
1 音場補正システム
2 音場
10 音源
20 音響イコライザ
21 主観的補正イコライザ
22 感覚量補正イコライザ(第2音響補正手段)
23 物理量補正イコライザ(第1音響補正手段)
30 パワーアンプ
40 スピーカ(拡声手段)
50 収音マイク(収音手段)
60 マイクロホンアンプ
70 FFTアナライザ(測定手段)
71 表示手段
81 第1遅延回路
82 第2遅延回路
83 第3遅延回路
L1 第1音響信号(音響信号)
L2 第2音響信号(音響信号)
L3 第3音響信号(音響信号)
L4 収音信号
M 感覚量重み付け補正
S0 補正前音響信号
S1 第1補正音響信号
S2 第2補正音響信号

Claims (2)

  1. 音源と、
    前記音源からの音響を音場に出力する拡声手段と、
    前記拡声手段で前記音場に出力された音響を収音する収音手段と、
    前記音源から出た音響信号の特性と、前記収音手段で収音した収音信号の特性とを入力してそれらを比較測定する測定手段と、
    前記測定手段で比較測定した結果に基づいて、前記音源と前記拡声手段との間に配置した第1音響補正手段で前記音響信号の特性を調整することで、前記音場に放出される音響の信号として、前記比較測定結果の特性がフラットな状態となるように補正した第1補正音響信号を出力する音場補正システムにおいて、
    前記音源と前記第1音響補正手段との間に配置した第2音響補正手段に対して、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けが含まれた所定の感覚量重み付け補正を入力し、当該感覚量重み付け補正を前記第1補正音響信号に重ね合わせる処理を行うことで、前記音場に放出される音響の信号として、前記第1補正音響信号に対して聴取者の感覚的あるいは身体的な要素を考慮した補正を加えてなる第2補正音響信号を出力するように構成し
    前記感覚量重み付け補正の信号波形は、ラウドネス曲線を基準として、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けによる修正を加えた修正曲線で表される波形であり、
    当該修正曲線は、周波数に対する振幅の値が3kHz,6kHz,12kHzの点あるいはその近傍にそれぞれディップを有すると共に、2kHz近傍から12kHz近傍にかけて次第に振幅の値が減少する傾向を有する曲線である
    ことを特徴とする音場補正システム。
  2. 音源から出た音響信号の特性と、拡声手段で音場に出力された音源からの音響を収音手段で収音した収音信号の特性とを測定手段に入力して、それらを比較測定した結果を出力するステップと、
    前記測定手段で比較測定した結果に基づいて、前記音源と前記拡声手段との間に配置した第1音響補正手段で前記音響信号の特性を調整することで、前記音場に出力される音響の信号として、前記比較測定結果の特性がフラットな状態となるように補正した第1補正音響信号を出力するステップと、
    前記音源と前記第1音響補正手段との間に配置した第2音響補正手段に対して、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けが含まれた所定の感覚量重み付け補正を入力し、当該感覚量重み付け補正を前記第1補正音響信号に重ね合わせる処理を行うことで、前記音場に放出される音響の信号として、前記第1補正音響信号に対して聴取者の感覚的あるいは身体的な要素を考慮した補正を加えてなる第2補正音響信号を出力するステップと、を有し、
    前記感覚量重み付け補正の信号波形は、ラウドネス曲線を基準として、心理音響に基づく重み付けあるいは聴覚器官の形状又は頭部伝達関数に基づく重み付けによる修正を加えた修正曲線で表される波形であり、
    当該修正曲線は、周波数に対する振幅の値が3kHz,6kHz,12kHzの点あるいはその近傍にそれぞれディップを有すると共に、2kHz近傍から12kHz近傍にかけて次第に振幅の値が減少する傾向を有する曲線である
    ことを特徴とする音場補正方法。
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