JP3152818B2 - 音環境疑似体験装置及び音環境解析方法 - Google Patents

音環境疑似体験装置及び音環境解析方法

Info

Publication number
JP3152818B2
JP3152818B2 JP25593893A JP25593893A JP3152818B2 JP 3152818 B2 JP3152818 B2 JP 3152818B2 JP 25593893 A JP25593893 A JP 25593893A JP 25593893 A JP25593893 A JP 25593893A JP 3152818 B2 JP3152818 B2 JP 3152818B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sound
time
analysis
volume
data
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP25593893A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH07168587A (ja
Inventor
左千男 長光
常子 岡田
麻友美 酒井
久 児玉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP25593893A priority Critical patent/JP3152818B2/ja
Publication of JPH07168587A publication Critical patent/JPH07168587A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3152818B2 publication Critical patent/JP3152818B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、リスニングルームやコ
ンサートホール等の室内音響設計を行う際、コンピュー
タシミュレーションによって音響性能を予測し、体験に
よって確認することが可能な音環境疑似体験装置に関す
る。さらに、本発明は、空間の音響特性を解析するため
の室内音響解析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、AV(オーディオ・ビジュアル)
関連機器の高機能・高性能化が著しく進展したことによ
って、良質の音楽や映像を一般家庭において広く楽しむ
ことが可能となってきている。特に、”ホームシアタ
ー”と呼ばれるように、家庭内でも映画館やコンサート
ホールと同様な臨場感あふれるムービーフィルムや音楽
を鑑賞することが流行しつつある。このために、一般の
家庭において、十分な音響設計や遮音設計を施した部屋
の設置が望まれている。
【0003】しかしながら、実際の住宅環境を考慮する
と、専用のリスニングルームを設けることは困難であ
り、例えばリビングルームとリスニングルームとを兼用
させることが現実的である。そこで、今後は、種々の家
具や電子機器が配置されるリビングルームの居住性や美
観も考慮し、リビングルーム等を十分な音響設計、遮音
設計を施した空間として実現する要求が高まる傾向にあ
る。
【0004】従来、音響設計は、設計対象の室の音響特
性データを求め、これに基づいて室の仕様を評価するこ
とが行われている。そして、音響特性データの算出方法
として、実験的手法や解析的手法が用いられていた。実
験的手法としては、例えば、実際の部屋のモデルを作成
し、このモデル室内においてインパルス応答データを直
接実測して音響特性を求める方法がある。しかし、この
手法は、作業工数や費用の観点から一般家庭用に普及さ
せることは困難である。
【0005】また、解析的手法としては、コンピュータ
シュミレーションによる音響特性を求める方法がある。
この方法は、多様な条件に応じた出力が得られること、
精密な解析が可能なこと、出力結果の加工が容易なこ
と、及び設計作業へのフィードバックが容易なこと等か
ら、近年、急速に実用化されている。室内音場解析の3
次元コンピュータシミュレーションは、音の波動性を考
慮した数値解析法と、波動性を無視した幾何音響理論に
基づく解法とに大別される。
【0006】数値解析法の代表的な方法は、有限要素法
(FEM)あるいは境界要素法(BEM)である。FE
MやBEMは、定常音場の支配方程式であるヘルムホル
ツ方程式を解くことにより、音響固有モードや音圧分布
を計算する手法である。この方法は、音の波動性を考慮
していることによって回折現象や干渉現象を解析するこ
とができるが、エコータイムパターン計算等の非定常計
算が困難であるという問題を有している。特に、高周波
の音を対象とする解析においては、計算に必要な格子数
が莫大となり、コンピュータのメモリが不足し、同時に
計算時間がかかり過ぎるため、実用上解析は不可能であ
った。
【0007】一方、音線法や虚像法等の幾何音響的手法
は、壁面において音線が幾何的反射することを前提に計
算を行うものである。この方法は、数値解析法に比べて
メモリの制約による問題は生じないが、音の波長より短
い寸法の室内では、幾何的反射が正確に行われないた
め、計算精度が悪くなる。したがって、家庭用リスニン
グルームのような小空間における低周波数音の解析は困
難であった。また、音線の追跡計算が長時間に及ぶと、
計算量が膨大となることから、室内音響特性の重要な要
素である残響時間は、SabineやEyringの式
等を用いて近似されている。このために、機器や凹凸が
存在する複雑な空間を計算対象とした場合には、計算に
誤差が生じるという問題を有していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】さらに、最近では、音
響特性データに基づいて音場を再現し、人に試聴させる
ことによって室内の音環境を疑似体験させることを意図
した音環境疑似体験装置と称されるものが実現されてい
る。広義の疑似体験装置として、例えば、実際のモデル
空間を設置し、その内部に配置したスピーカから音を出
力して体験者に試聴させるシステムがある。しかし、こ
のようなシステムは、家庭用としては不適当である。
【0009】他の疑似体験装置がUSP4,731,84
8に示されている。この装置は、入力したオーディオ信
号に残響効果を加味して出力信号を生成し、ヘッドフォ
ンに再生出力するものである。この装置においては、遅
延回路を用いてオーディオ信号から分流した信号を反射
音の時間遅れを加味した残響信号として生成し、入力信
号とこの残響信号とを合成して信号を出力する。しかし
ながら、この装置は、高次の反射音を考慮していないた
めに、実際の音と比較して、違和感を感じることがあ
る。また、仮想音源や体験者の位置等の情報は、指示デ
ータとして操作者が入力する必要があり、再生動作の即
時性に欠けるとともに、対象空間に形状的制約があると
いう問題があった。
【0010】従って、本発明の目的は、実際の部屋やモ
デルを使用することなく、任意の空間内での音環境を再
現することが可能な音環境疑似体験装置を提供すること
である。また、本発明の他の目的は、体験者が移動した
り、頭の向きを変えたりした場合の音響特性の変化を考
慮した再生音の生成が可能な音環境疑似体験装置を提供
することである。
【0011】さらに、本発明の他の目的は、高次回反射
音の影響を考慮した室内音響特性の算出が可能な音環境
解析方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】1の発明に係る音環境
疑似体験装置は、疑似体験の対象となる仮想空間を特定
するモデル情報を用いて幾何音響学的手法によって前記
仮想空間のエコータイムパターンを複数の周波数帯域毎
に算出するエコータイムパターン算出手段と、前記エコ
ータイムパターン算出手段によって算出された前記複数
の周波数帯域毎のエコータイムパターンそれぞれに各周
波数帯域毎のバンドパスフィルタを畳み込むことによっ
て各周波数帯域毎の応答を算出し、それら応答を合成す
ることによってインパルス応答を算出するインパルス応
答算出手段と、無響音の音源データに前記インパルス応
答算出手段によって算出された前記インパルス応答を畳
み込んで再生音データを生成する再生音生成手段と、前
記再生音生成手段によって生成された前記再生音データ
を音信号に変換した後に音として出力する出力手段とを
備える。
【0013】2の発明に係る音環境疑似体験装置は、
1の発明に対し、前記エコータイムパターン算出手段
は、さらに、前記仮想空間の形状、壁面の物性データ等
の解析条件データを受け取り、壁面を所定の区画に区分
することによって分割解析面を設定するとともに、音源
及び受音点を前記仮想空間内の任意の位置に設定する解
析データ設定手段と、前記仮想空間内の任意の位置に設
定した音源から放射される放射音の受音点への到達音の
音量の時系列データを算出する時系列データ算出手段
と、前記時系列データ算出手段が算出した到達音の音量
の時系列データに対して所定の補間操作を施してエコー
タイムパターンに変換するデータ変換手段とを備えてい
る。
【0014】3の発明に係る音環境疑似体験装置は、
2の発明に対し、さらに、無響音の音源データを入力
するためのドライソース入力手段と、周囲から人間の頭
部に向かって入射する音が頭部の形状及び耳の位置によ
って受ける変化を示す頭部伝達関数を格納する頭部伝達
関数格納手段とを備え、前記再生音生成手段は、前記ド
ライソース入力手段から入力された前記音源データに前
記インパルス応答算出手段によって算出された前記イン
パルス応答と、前記頭部伝達関数格納手段から読み出し
た前記頭部伝達関数とを畳み込むことによって再生音デ
ータを生成する。
【0015】4の発明に係る音環境疑似体験装置は、
3の発明に対し、さらに、前記仮想空間内における体
験者の頭部の位置又は頭部の向きの内の少なくとも一方
の情報を検出する位置情報検出手段を備えており、前記
再生音生成手段は、前記位置情報検出手段が検出した位
置情報に該当する前記インパルス応答と前記頭部伝達関
数とを抽出して前記音源データに畳み込む。
【0016】5の発明に係る音環境疑似体験装置は、
1の発明に対し、さらに、周囲から人間の頭部に向か
って入射する音が頭部の形状及び耳の位置によって受け
る変化を示す頭部伝達関数を格納する頭部伝達関数格納
手段と、前記インパルス応答算出手段によって求められ
たインパルス応答と前記頭部伝達関数格納手段から読み
出した頭部伝達関数とを畳み込むことによって頭部の方
向毎に合成応答を算出する合成応答生成手段とを備え、
前記再生音生成手段は、無響音の音源データに前記合成
応答生成手段によって算出された前記合成応答を畳み込
むことによって再生音データを生成する。
【0017】6の発明に係る音環境疑似体験装置は、
無響音の音源データにインパルス応答データを畳み込む
ことによって再生音データを生成する音場再生手段と、
前記音場再生手段によって生成された前記再生音データ
を音信号に変換した後に音として出力する出力手段とを
備える音環境疑似体験装置であって、前記音場再生手段
は、さらに、無響音の音源データを入力するためのドラ
イソース入力手段と、周囲から人間の頭部に向かって入
射する音が頭部の形状及び耳の位置によって受ける変化
を示す頭部伝達関数を格納する頭部伝達関数格納手段
と、疑似体験の対象となる仮想空間内における体験者の
頭部の位置又は頭部の向きの内の少なくとも一方の情報
を検出する位置情報検出手段と、前記位置情報検出手段
が検出した位置情報に該当するインパルス応答と頭部伝
達関数とを抽出して前記音源データに畳み込むことによ
って再生音データを生成する再生音生成手段と備えてい
る。
【0018】7の発明に係る音環境解析装置は、解析
対象の解析空間の形状、大きさ等の室情報を入力する室
情報入力手段と、音源の位置、音圧等の音源情報を入力
する音源情報入力手段と、受音点の数、位置等の受音点
情報を入力する受音点情報入力手段と、解析空間を構成
する面を解析すべき所定面数に分割する解析面分割手段
と、前記解析空間に配置された前記音源から放射された
複数の音線が前記解析空間の前記所定受音点に直接ある
いは前記分割面に反射しつつ到達した場合の各音線に対
する音量を前記分割面の少なくとも形態係数と吸音率と
から算出し、その音量をその到達時間における所定の時
間間隔毎に足し合わせることによりグループ化を行い、
前記受音点における到達音量の時系列情報を求める時系
列情報算出手段と、前記所定の受音点でのグループ化し
た到達音量を、その時間間隔内に到達する音線数を持っ
て各グループ毎に平均化することにより音場再生を可能
とする音場再生用データに変換する音場再生用データ変
換手段とを備えている。
【0019】8の発明に係る音環境解析装置は、解析
対象の解析空間の形状、大きさ等の室情報を入力する室
情報入力手段と、音源の位置、音圧等の音源情報を入力
する音源情報入力手段と、受音点の数、位置等の受音点
情報を入力する受音点情報入力手段と、解析空間を構成
する面を解析すべき所定面数に分割する解析面分割手段
と、前記解析空間に配置された前記音源から放射された
複数の音線が前記解析空間の前記所定受音点に直接ある
いは前記分割面に反射しつつ到達した場合の各音線に対
する音量を前記分割面の少なくとも形態係数と吸音率と
から算出し、その音量をその到達時間における所定の時
間間隔毎に足し合わせることによりグループ化を行い、
前記受音点における到達音量の時系列情報を求める時系
列情報算出手段と、前記所定の受音点でのグループ化し
た到達音量を、その時間間隔内に到達する音線数を持っ
て各グループ毎に平均化することにより音場再生を可能
とする音場再生用データに変換する音場再生用データ変
換手段と、前記平均化した各グループの音量を時間軸に
対して補間を行う音場再生用データ補間手段とを備えて
いる。
【0020】9の発明に係る音環境解析放置は、解析
対象の解析空間を構成する面をいくつかの面に分割し、
前記解析空間内の所定の音源より音線を放射し、分割さ
れた各面に到達する音量を分割された前記各面の少なく
とも形態係数と吸音率とから計算し、前記所定の音源か
ら放射された音がその面に至るまでの時間を求め、更に
その入射された音量に基づき、その面における反射音量
を計算し、さらに、この反射音量を新音源として、同様
の計算をすることによって、所定の受音点に到達する音
の時系列情報を求める音環境解析装置において、前記各
分割面における反射音量を計算する際、前記分割面によ
る反射が所定回数を超えた後は、入射してくる音を、所
定の時間間隔で累積し、その後その累積された音を一度
に反射させる。
【0021】10の発明に係る音環境解析装置は、
9の発明に対し、分割面における反射音量が、所定の限
界値以下になれば、その面からの反射をさせないことを
特徴とする。11の発明に係る音環境解析装置は、
9または10の発明に対し、所定の時間間隔は、前記
解析空間の残響時間の予測値に基づき算出された所定の
設定時間の前と後で異なっており、後の時間間隔は前の
時間間隔より長いことを特徴とする。
【0022】12の発明に係る音環境解析装置は、
10または11の発明に対し、全ての反射音量が前記
限界値以下になった際、前記各分割面の残存する音エネ
ルギーの一部又は全部を加算し、前記受音点における音
の時系列情報に足し込み、前記受音点に至る到達時間の
遅いものから早いものへ順に前記時系列情報を積分する
ことを特徴とする。
【0023】13の発明に係る音環境解析装置は、解
析対象空間の形状、壁面の物性データ等の解析条件と、
壁面を所定の区画に区分された分割解析面と、音源と受
音点とを設定する条件設定手段と、前記音源から放射さ
れた放射音が前記解析対象空間内の任意の位置に設定さ
れた前記受音点に到達する到達音の音量の時系列データ
を、前記到達音が前記受音点に入射する方向毎に、およ
び前記音源の周波数帯域毎に算出する時系列データ算出
手段と、前記到達音の音量の時系列データに所定の補間
操作を施してエコータイムパターンを算出するエコータ
イムパターン算出手段とを備えている。
【0024】14の発明に係る音環境解析装置は、
13の発明に対し、前記時系列データ算出手段は、前記
音源から放射される音線が直接受音点に到達する直接音
の音量データ算出手段と、前記音源から放射される音線
が前記分割解析面で反射する回数が所定回数以下の反射
音が前記他の分割解析面及び前記受音点に到達する低次
反射音の音量データ算出手段と、前記音源から放射され
る音線が前記分割解析面で反射する回数が所定回数以上
の反射音が前記受音点に到達する高次反射音の音量デー
タを算出する手段と、前記受音点の音量データを所定の
時間間隔毎に足し合わせて時系列データを算出する手段
とを備えている。
【0025】15の発明に係る音環境解析装置は、
14の発明に対し、前記高次反射音の音量データ算出手
段は、前記低次反射音の音量データ算出手段によって算
出された前記分割解析面における音量データを所定の時
間間隔毎に積算して新たな音源を設定し、この音源から
放射される新たな放射音が到達する分割解析面への到達
音量を算出する処理を繰り返し行うことを特徴とする。
【0026】16の発明に係る音環疑似体験装置は、
疑似体験の対象となる仮想空間内の任意の位置に設定し
た受音点において、各周波数帯域毎のエコータイムパタ
ーンを幾何音響学的手法を用いて算出する手段と、前記
エコータイムパターンに各周波数帯域毎のバンドパスフ
ィルタを畳み込むことによって各周波数帯域毎の応答を
算出して合成することによってインパルス応答を算出す
る手段と、体験者の位置情報を検出する手段と、音源の
ドライソースを受け取り、前記ドライソースに対して、
検出された前記位置情報に対応する前記インパルス応答
及び周囲から人間の頭部に向かって入射する音が頭部の
形状及び耳の位置によって受ける変化を示す頭部伝達関
数を畳み込むことによって再生音データを生成する手段
と、再生音データを音信号に変換した後に音として出力
する手段とを備えている。
【0027】17の発明に係る音環疑似体験装置は、
16の発明に対し、前記位置情報を検出する手段は、
前記位置情報として、体験者の移動位置と頭部の向きの
情報を検出することを特徴とする。18の発明に係る
音環疑似体験装置は、16の発明に対し、前記位置情
報を検出する手段は、前記位置情報として、体験者の頭
部の向きを検出することを特徴とする。
【0028】
【作用】1の発明において、エコータイムパターン算
出手段は、解析対象の空間に関する条件を用いて幾何音
響学的手法を用いて解析対象空間のエコータイムパター
ンを算出する。インパルス応答算出手段は、この算出さ
れたエコータイムパターンを用いて各周波数帯域毎の応
答を算出し、さらに応答を合成することによってインパ
ルス応答を算出する。再生音生成手段は、無響音の音源
データに算出されたインパルス応答を畳み込んで再生音
データを生成する。生成された再生音データは音声に変
換されて出力手段から音声出力される。
【0029】また、2の発明において、エコータイム
パターン算出手段の解析データ設定手段は、解析対象空
間の形状、壁面の物性データ等の解析条件データを受け
取り、壁面を所定の区画に区分することによって分割解
析面を設定するとともに、音源及び受音点を解析対象空
間内の任意の位置に設定する。時系列データ算出手段
は、解析対象空間内の任意の位置に設定した音源から放
射される放射音の受音点への到達音の音量の時系列デー
タを算出する。そして、データ変換手段が、到達音の音
量の時系列データに対して所定の補間操作を施してエコ
ータイムパターンに変換する。
【0030】3の発明の音場再生手段において、ドラ
イソース入力手段は、無響音の音源データを入力する。
すると、再生音生成手段は、入力された音源データにイ
ンパルス応答と、頭部伝達関数格納手段から読み出した
頭部伝達関数とを畳み込むことによって再生音データを
生成する。4の発明の音場再生手段において、位置情
報検出手段は、解析対象空間内における体験者の頭部の
位置又は頭部の向きの内の少なくとも一方の情報を検出
する。そして、再生音生成手段は、位置情報検出手段が
検出した位置情報に該当するインパルス応答と頭部伝達
関数とを抽出して音源データに畳み込む。
【0031】5の発明において、合成応答生成手段
は、インパルス応答算出手段によって求められたインパ
ルス応答と頭部伝達関数格納手段から読み出した頭部伝
達関数とを畳み込むことによって頭部の方向毎に合成応
答を算出する。そして、再生音生成手段は、無響音の音
源データに合成応答を畳み込むことによって再生音デー
タを生成する。
【0032】6の発明において、音場再生手段は、無
響音の音源データにインパルス応答データを畳み込むこ
とによって再生音データを生成する。この音場再生手段
によって生成された再生音データは音声に変換され出力
手段から出力される。さらに、音場再生手段において、
ドライソース入力手段は、無響音の音源データを入力す
る。位置情報検出手段は、解析対象空間内における体験
者の頭部の位置又は頭部の向きの内の少なくとも一方の
情報を検出する。再生音生成手段は、検出された位置情
報に該当するインパルス応答と頭部伝達関数とを抽出し
て音源データに畳み込むことによって再生音データを生
成する。
【0033】7の発明において、室情報入力手段は、
解析対象の解析空間の形状、大きさ等の室情報を入力す
る。音源情報入力手段は、音源の位置、音圧等の音源情
報を入力する。受音点情報入力手段は、受音点の数、位
置等の受音点情報を入力する。解析面分割面手段は、解
析空間を構成する面を解析すべき所定面数に分割する。
時系列情報算出手段は、解析空間に配置された音源から
反射される音線が解析空間の所定受音点に直接あるいは
分割面に反射しつつ到達する音量をその到達時間毎に所
定の時間間隔を持ってグループ化を行うことにより、受
音点における到達音量の時系列情報を求める。そして、
音場再生用データ変換手段は、所定の受音点でのグルー
プ化した到達音量を、その時間間隔内に到達する音線数
を持って各グループ毎に平均化することにより音場再生
を可能とする音場再生用データに変換する。
【0034】8の発明において、室情報入力手段は、
解析対象の解析空間の形状、大きさ等の室情報を入力す
る。音源情報入力手段は、音源の位置、音圧等の音源情
報を入力する。受音点情報入力手段は、受音点の数、位
置等の受音点情報を入力する。解析面分割手段は、解析
空間を構成する面を解析すべき所定面数に分割する。時
系列情報算出手段は、解析空間に配置された音源から反
射される音線が解析空間の所定受音点に直接あるいは分
割面に反射しつつ到達する音量をその到達時間毎に所定
の時間間隔を持ってグループ化を行うことにより、受音
点における到達音量の時系列情報を求める。音場再生用
データ変換手段は、所定の受音点でのグループ化した到
達音量を、その時間間隔内に到達する音線数を持って各
グループ毎に平均化することにより音場再生を可能とす
る音場再生用データに変換する。音場再生用データ補間
手段は、平均化した各グループの音量を時間軸に対して
補間を行う。
【0035】9の発明においては、解析対象の解析空
間を構成する面をいくつかの面に分割し、解析空間内の
所定の音源より音線を放射し、分割された各面に到達す
る音量を計算し、所定の音源から放射された音がその面
に至るまでの時間を求め、更にその入射された音量に基
づき、その面における反射音量を計算し、さらに、この
反射音量を新音源として、同様の計算をすることによっ
て、所定の受音点に到達する音の時系列情報を求める音
環疑似体験装置において、各分割面における反射音量を
計算する際、分割面による反射が所定回数を超えた後
は、入射してくる音を、所定の時間間隔で累積し、その
後その累積された音を一度に反射させることとする。
【0036】10の発明において、分割面における反
射音量が、所定の限界値以下になれば、その面からの反
射は行われないものと仮定する。11の発明において
は、所定の時間間隔は、解析空間の残響時間の予測値に
基づき算出された所定の設定時間の前と後で異なってお
り、後の時間間隔は前の時間間隔より長い。
【0037】12の発明においては、全ての反射音量
が限界値以下になった際、各分割面の残存する音エネル
ギーの一部又は全部を加算し、受音点における音の時系
列情報に足し込み、受音点に至る到達時間の遅いものか
ら早いものへ順に時系列情報を積分する。13の発明
において、まず、解析対象空間の形状、壁面の物性デー
タ等の解析条件と、壁面を所定の区画に区分された分割
解析面と、音源と受音点とを設定する。次に、音源から
放射された放射音が解析対象空間内の任意の位置に設定
された受音点に到達する到達音の音量の時系列データ
を、到達音が受音点に入射する方向毎に、および音源の
周波数帯域毎に算出する。さらに、到達音の音量の時系
列データに所定の補間操作を施してエコータイムパター
ンを算出する。
【0038】14の発明において、時系列データ算出
ステップは、まず、音源から放射される音線が直接受音
点に到達する直接音の音量データを算出する。次に、音
源から放射される音線が分割解析面で反射する回数が所
定回数以下の反射音が他の分割解析面及び受音点に到達
する低次反射音の音量データを算出する。さらに、音源
から放射される音線が分割解析面で反射する回数が所定
回数以上の反射音が受音点に到達する高次反射音の音量
データを算出する。さらに、受音点の音量データを所定
の時間間隔毎にグループ化して時系列データを算出す
る。
【0039】15の発明において、高次反射音の音量
データ算出ステップは、低次反射音の音量データ算出に
よって算出された分割解析面における音量データを所定
の時間間隔毎に積算して新たな音源を設定し、この音源
から放射される新たな放射音が到達する分割解析面への
到達音量を算出する処理を繰り返し行う。16の発明
においては、まず、解析対象空間内の任意の位置に設定
した受音点において、各周波数帯域毎のエコータイムパ
ターンを幾何音響学的手法を用いて算出する。次に、エ
コータイムパターンに各周波数帯域毎のバンドパスフィ
ルタを畳み込むことによって各周波数帯域毎の応答を算
出して合成することによってインパルス応答を算出す
る。さらに、体験者の位置情報を検出する。さらに、音
源のドライソースを受け取り、ドライソースに対して、
検出された位置情報に対応するインパルス応答及び頭部
伝達関数を畳み込むことによって再生音データを生成す
る。そして、再生音データを音声に変換して出力する。
【0040】17の発明においては、位置情報とし
て、体験者の移動位置と頭部の向きの情報を検出する。
18の発明においては、位置情報として、体験者の頭
部の向きを検出する。
【0041】
【実施例】以下、本発明の実施例について図を用いて詳
細に説明する。図1は、本発明の第1実施例による音環
境解析方法の処理を示すフローチャートである。図1に
おいて、Aの工程は、初期反射音解析工程であり、Bの
工程は、高次反射音解析工程である。
【0042】まず、Aの工程について説明する。図1を
参照して、最初に入力しておいた解析対象となる空間を
構成する壁等の個体表面を、図2に示すように、いくつ
かのパッチ(面)4に分割し(図1のステップS1
1)、それぞれの面4に番号をつける(図2では、例え
ば、i面、j面、k面)。次に、図2において、音源S
1から放射された音が各分割面4に到達する形態係数
(例えば、i面に対する形態係数Fsi)、各面4から受
音点以外の各面4に到達する形態係数(例えば、i面か
らj面に対する形態係数はFij)、各面4から受音点R
2に到達する形態係数(例えば、j面から受音点R2に
到達する形態係数はFjR)を計算する(図1のステップ
S12)。
【0043】これらの形態係数の計算方法は、温熱環境
や光環境における輻射計算に用いられる放射熱線追跡法
に基づいている。まず、音源S1より音線を所定の本数
放射し、分割された各面4の中から、各音線の到達する
面4を探索し(例えばi面)、その面4に到達する音量
を計算し、音源S1からその面4に到達する音の割合
(形態係数Fsi)を求める。この計算を繰り返し、音源
S1から全分割面4に対する形態係数を求める。次に、
音源以外の各分割面4(例えばi面)の到達音量を音源
として、上述のようにしてi面以外の他の分割面4(例
えばj面)に到達する音量を計算し、新たに音源とした
i面からj面への形態係数Fijを求める。この計算を全
分割面4にわたって繰り返し、面間の形態係数を全て求
める。最後に、各分割面4から(例えばk面)受音点R
2に対する形態係数FkRを同様にして求め、この計算を
全分割面4にわたって繰り返すことにより、エコータイ
ムパターンの計算に必要な全ての形態係数を得る。
【0044】次に、エコータイムパターンの計算を行う
工程に入る。まず、音源S1からどの分割面4にも当た
ることなく、直接受音点R2に到達する直接音の音量を
求める(図1のステップS13)。これは、音源〜受音
点間距離(図2ではr)の逆2乗則に基づいて計算する
ものである。同時に、音源〜受音点間距離を音速で割る
ことにより、その到達時間を求める。
【0045】続いて、音源S1から放射された音がいく
つかの分割面を経て受音点R2に至る反射音の音量及び
到達時間を計算する(図1のステップS14)。これら
の反射音は、前工程ステップS12で求めた各形態係数
の演算によって求められる。すなわち、ここでは、まず
音源S1から一つの分割面4を経て受音点R2に到達す
る1次反射音の計算を行う。例えば、図2において、音
源S1からi面4を経て受音点R2に至る音の場合、形
態係数はFsi×FiRとなり、この形態係数とi面4の吸
音率αiとを音源S1から放射される全音量にかけるこ
とにより、受音点R2に到達する音量P1が求められ
る。また、直接音と同様、音源〜i面間、i面〜受音点
間の距離を求め、これらを足し合わせたものを音速で割
ることにより、1次反射音の到達時間を計算する。これ
らのことを全ての分割面4に対して繰り返した後、更
に、音源S1から二つの分割面4を経て受音点R2に到
達する2次反射音についての計算を、1次反射音と同様
の方法で計算する。例えば、図2において、音源S1か
らi面4、j面4を経て受音点R2に到達する音の場
合、形態係数は、Fsi×Fij×FjRとなり、これとi面
4、j面4それぞれの吸音率αi、αjとを音源S1か
ら放射される全音量にかけることにより、受音点R2に
到達する音量P2が求められる。また、到達時間は、音
源〜i面間、i面〜j面間、j面〜受音点間の距離を足
し合わせ、音速で割ることによって求められる。k面4
も経由する3次反射音の音量P3及び到達時間も同様に
して計算する。
【0046】図3は、Bの高次反射音解析工程を表す模
式図である。図3に示すように、Aの工程で低次反射音
解析を行った後(図1のステップS11〜S14)、各
分割面に到達している音量を、分割面に到達した時間に
対応させ、その到達時間毎に予め設定した時間Δt間隔
でm個のグループに分け、同じグループに分けられた音
量はそれらを足し合わせる。ここでΔtを小さくするほ
ど、高精度な計算ができる。その後、Δt毎にまとめた
音量を次回の反射における新たな音源として、あるグル
ープの音量をそのグループに対応する時刻にn個の全て
のパッチから射出し、低次反射音計算と同様に計算を進
め、所定の受音点に到達する音、及び次の分割面に到達
する音量の授受を計算する(図1のステップS15)。
【0047】上記の処理をm個全てのグループについて
行い、全ての分割面に到達する音量が予め設定された規
定値以下になり次第、計算を終了する(図1のステップ
S16)。この手法により、従来は音線が壁面で反射す
る毎に反射音線が幾何級数的に激増していたのが、反射
を繰り返しても反射音線はn(全分割数)×m(全グル
ープ数)で一定であり、よって高次反射音まで応答計算
が可能となる。
【0048】図4は、本発明にかかる第2実施例の音環
境解析方法の処理を示すフローチャートである。図4に
おいて、まず解析空間の容積、表面積及び壁面平均吸音
率から、Eyringの予測式を用いて残響時間を計算
し、計算精度を高めるため、予め設定した時間を前述の
計算された残響時間に足した時間を新たに設定時間とす
る(図4のステップS21)。工程Aは、初期反射音計
算工程であり(図4のステップS22〜S25)、また
工程Bは、前述の設定時間に至るまで、上述の第1実施
例と同様の処理を行うものであり(図4のステップS2
6)、工程Cは、計算時間が設定時間を超えた後(図4
のステップS27)に行われるB工程移行の高次反射音
解析工程である。A工程及びB工程は、本発明にかかる
第1実施例と同様の処理工程なので、動作についての説
明を省略する。
【0049】次に、Cの工程では、Bの工程で使用し
た、音量のグルーピング時間Δtよりも長い時間間隔Δ
t′を用いてB工程と同様の計算を行う(図4のステッ
プS28)。その後、全ての分割面に到達する音量が予
め設定した規定値以下になり次第、計算を終了する(図
4のステップS29)。この手法では、設定時間を区切
りに、受音点に到達する音の時系列情報の傾きに大きく
影響するB工程では、解析時間間隔Δtを可能な限り小
さくして計算を行なうことによって計算精度を高め、更
に時系列情報の傾きにはさほど影響しないが、時系列情
報の絶対値を得るのに欠かせないC工程では、Δtより
も大きいΔt′を用いて処理を進めることによって、優
れた計算精度を保持しつつ、計算速度を向上でき、また
Δtでは計算機のメモリの関係上不可能であった更に高
次反射音までの計算が可能となる。
【0050】図5は、本発明にかかる第3実施例におい
て(処理の流れを示すフローチャートは省略する)、本
発明の第1又は第2実施例で求めた、所定の受音点にお
ける音の時系列情報に、各分割面の残存音量を足し込む
様子を示したものである。図5において、本発明の第1
又は第2の手法によって、音量が所定の受音点に到達す
る時間ta〜tbまでの応答計算を行い、受音点におけ
る時系列情報を求める(図5における細線)。次に、t
b以降、各分割面に残っている音量を到達時間に関係な
く足し合わせる(図5における斜線で囲んだ部分)。そ
の後、その合計した音量をta〜tbまでの時系列情報
に足し込み(図5における太線)、受音点におけるエコ
ータイムパターンを得る。最終的にエコータイムパター
ンをtbからtaに向かって積分することにより、残響
特性を求めることができる。この手法により従来はEr
yingの予測式等を用いて計算していた残響時間に比
べ、非常に高精度な残響時間が得られる。
【0051】図6は、本発明にかかる実施例において、
計算に用いた空間モデルの模式図である。図に示すよう
に、5.4m×3.6m×2.25m の12畳程度の直方
体の部屋(解析空間)30に無指向性の音源1、及び受
音点R2が設置されている。部屋30の各壁面には、窓
や扉の他に、吸音材、反射材が貼ってあり、それぞれの
部材の部屋全体に占める面積の割合と吸音率とから、平
均吸音率は約0.26となる。この平均吸音率と容積及
び表面積とから、Eryingの式を用いて残響時間を
計算すると、約280msecとなる。残響時間の実測
値は約340msecであり、予測値は実測値に比べて
約18%の誤差を有する。このモデルを約400の面に
分割し、設定時間までの時間間隔△tを0.1 mse
c、その後の時間間隔△t′を5msecとし、それら
の区切りの時間をEryingの式で求めた値の30%
増しの360msecとして応答計算を行った。
【0052】その結果、100次反射、500msec
まで応答計算が可能であり、この計算によって得られた
エコータイムパターンより、図7に示すような残響特性
を得た。音源から受音点に直接到達する直接音のエネル
ギーに比べ、−60dB減衰するまでの時間、すなわち
残響時間は、図7より約310msecとなり、実測値
との誤差は約9%と非常に精度のよい値が得られた。
【0053】以上のように、従来の手法では不可能とさ
れていた高次反射音までの応答計算が可能となり、長時
間にわたって所定の受音点におけるエコータイムパター
ンが計算できる。又、高次反射音解析の後、残存エネル
ギーをエコータイムパターンに足し込み、これを積分す
ることによって、高精度な残響特性が得られる。更に、
Eyringの式等から求めた予測値を解析時間間隔幅
の制御に利用することにより、優れた計算精度を保持し
つつ、計算の高速化が図れる。その結果、高精度な残響
時間予測が可能となる。従って、低音域を含めた広範囲
の音域にわたって、高性能な音響特性が要求されるリス
ニングルーム等の設計に大いに役立つ。
【0054】なお、上記実施例では、入射してくる音
を、所定の時間間隔で累積し、その後累積された音を一
度に反射させるまでの反射の回数、すなわち、低次反射
音の計算を3次まで行うようにしたが、これに限らず、
解析速度が確保できれば0回、1回、又は2回等であっ
てもよく、また、計算能力の許す範囲であれば、4回な
どであってもよい。
【0055】また、上記実施例では、最終的な反射音計
算の打ち切りの判断となる規定値に音のエネルギーを用
いたが、これに限らず、例えば、計算回数、計算時間な
どを規定値として用いてもよい。また、上記実施例で
は、具体例における解析空間の面の分割数を約400と
したが、分割数はこれに限定されるものではなく、解析
空間の大きさ、その他の条件等により変更してもよいこ
とは言うまでもない。
【0056】また、上記実施例では、解析処理をコンピ
ュータを用いてソフトウェア的に実現したが、これに代
えて、同様の機能を有するハードウェアを用いて行うよ
うにしても勿論よい。次に、本発明の第4実施例につい
て説明する。本発明の第4実施例による音環境疑似体験
装置は、現実の部屋等をモデル化した仮想空間を用いて
音響特性を算出し、その音響特性を用いて現実的な立体
感のある音を再生して出力する装置である。そして、体
験者は、この音環境疑似体験装置によって再生された音
を聞くことによって、現実の室内で音を聞く状態を疑似
体験することができる。
【0057】図8に示すように、音環境疑似体験装置
は、音環境解析部1と、音場再生部2と、出力部3とか
ら構成される。音環境解析部1は、対象空間の音響特性
をシミュレーションによって解析してエコータイムパタ
ーンを算出する。音場再生部2は、エコータイムパター
ンを用いてインパルス応答データを算出し、体験したい
音の無残響音をインパルス応答データを用いてリアルタ
イムに連続音信号に再生する。
【0058】出力部3は、ヘッドホンあるいはVR(Vi
rtual Reality)装置を有し、音場再生部2によって生
成された連続音信号を音に変換して出力する。上記した
構成を有する音環境疑似体験装置の概略動作について以
下に説明する。本装置は、人が室内で立ったり、座った
り、歩いたり、あるいは顔の向きを変えたりした場合の
音の聞こえ方の変化を再生することができる。そして、
具体的には、音環境解析部1において、室内の各位置、
各方向および音源の各周波数に対するエコータイムパタ
ーンを求める。そして、音場再生部2において、エコー
タイムパターンを用いてインパルス応答を算出する。さ
らに、インパルス応答を用いてソース音を加工して立体
感のある再生音信号を生成し、出力部3に出力する。
【0059】以下、各部毎にその構成と動作を順次説明
する。まず、音環境解析部1の詳細な構成が図9に示さ
れる。音環境解析部1は、室情報入力部11と、音源情
報入力部12と、受音点情報入力部13と、解析面分割
部14と、エコータイムパターン計算部15と、メモリ
18とを備え、さらにエコータイムパターン計算部15
は、時系列情報算出部16と、データ変換部17とを備
えている。
【0060】音環境解析部1の動作について図9〜図1
5を参照して説明する。この音環境解析部1は、(1)
解析空間内の任意の位置毎に、(2)解析空間内に設定
された受音点に対して入射する音の入射方向毎に、
(3)予め定めた複数の周波数帯域を有する音源毎にエ
コータイムパターンを算出する。
【0061】まず最初に、室情報入力部11から、解析
対象となる空間の形、大きさ、壁の吸音率等の室内モデ
ル情報を入力する(ステップS100)。次に、受音点
入力部13から、室内の受音点(人の頭部)の位置情報
を入力する(ステップS110)。さらに、受音点入力
部13から受音点への音の入射方向を入力する(ステッ
プS120)。
【0062】さらに、音源情報入力部12から、音源の
周波数、音量等の音源情報を入力する(ステップS13
0)。さらに、解析面分割部14は、解析対象空間を構
成する壁等の固体表面をいくつかの面に分割し、それぞ
れの分割面に参照番号を付加する。分割面は、その一辺
の長さが、音源から発生する音の波長より短い矩形領域
に設定される。また、室情報入力部11から入力された
壁の吸音率を用いて各分割面毎に吸音率を設定する。受
音点は、人の頭の形状を近似した、例えば12面体に設
定される(ステップS140)。
【0063】上記の処理によって設定された解析空間モ
デルの一例が図12に示されている。ある解析処理例に
おいては、分割面は一つの壁面を約400に分割して設
定される。また、音源の周波数を500Hzとした場
合、分割面の短辺の長さは45cmに設定される。そし
て、分割面iには吸音率αi、分割面jには吸音率αj
が付加される。
【0064】また、壁材の吸音率データは、一般的にオ
クターブバンド毎に求められている場合が多い。したが
って、音源の周波数は、例えば1/8オクターブバンド
毎に設定して入力される。解析空間モデルが設定される
と、エコータイムパターンの算出処理が開始される(ス
テップS200)。
【0065】先ず、時系列情報算出部16は、各分割面
毎に形態係数を算出する(ステップS210)。形態係
数は、音源と音源から放射された音が直接到達する各分
割面との組合せ、一つの分割面とその分割面から反射し
た音が到達する他の分割面との組合せ、分割面と分割面
から反射した音が到達する受音点との組合せについて求
められる。 これらの形態係数の計算方法は、例えば温
熱環境における輻射計算や、照明計算等に用いられる、
放射熱線追跡法に基づいている。 (1)音源Sと分割面iとの組合せに対する形態係数F
SC まず、音源Sから全方位に向かって均等に放射する複
数、例えば10万本の音線を想定する。そして、各音線
が放射された方向に沿って、各音線が到達する分割面を
探索する。図12に示す解析空間モデル10において
は、音線SRskは、分割面kに到達し、音線SRsi1、
SRsi2は、分割面iに到達する。
【0066】次に、音源から分割面に到達した到達音の
音量P1 を算出し、音源の音量Psに対する音量P1 の
割合P1 /Psを算出する。この音量比が音源Sの分割
面に対する形態係数FSCとして求められる。この計算を
全ての分割面に対して行い、音源Sから全分割面に対す
る形態係数を求める。 (2)各分割面間の形態係数FCC 音源から分割面に到達した音を新たな音源として、上記
(1)と同様の方法を用いて他の分割面に到達する音の
到達音量を算出し、両分割面間の形態係数FCCを求め
る。 (3)分割面と受音点Rとの組合せに対する形態係数F
CR さらに、各分割面から受音点に対する形態係数FCRを同
様にして求める。
【0067】これらの計算により、受音点における到達
音量時系列情報の計算に必要な全ての形態係数が得られ
る。形態係数が求められると、音源から受音点に到達す
る音の音量の時系列データを計算する。音源から放射さ
れる音は、直接受音点に到達する直接音と、分割面で反
射した後、受音点に到達する反射音に区別される。
【0068】まず最初に、直接音の到達音量を求める。
解析空間モデル10においては、音線SRSRに沿って放
射される音が直接音に該当する。受音点Rにおける音量
Prは、音源Sと受音点Rとの距離を用いて逆2乗則に
基づいて求められる。同時に、到達時間TRは、音源S
と受音点Rの間の距離を音速で割ることにより求められ
る(ステップS220)。
【0069】続いて、反射音の音量を計算する(ステッ
プS230)。各音線毎の反射音の音量計算は、反射回
数が1回増える毎に、計算すべき反射音の線数が分割面
数倍になり、幾何級数的に増加するため、計算の実行が
計算結果を格納するメモリ容量の制約によって制限され
る。従って、ここでは、低次回の反射音と高次回の反射
音とを区別し、各々異なった方法で音量計算を行う。な
お、解析空間モデル10においては、反射回数が3回以
下を低次回、4回以上を高次回と規定する。
【0070】まず、音源Sから放射された音が3面以下
の分割面で反射して受音点Rに到達した時の到達音量を
計算する。これらの到達音量は、前ステップS210に
おいて求めた各形態係数を用いて算出される。 (1次反射音)解析空間モデル10において、音源Sか
ら分割面kを経て受音点Rにいたる1次反射音(SRs
k、SRkr)の計算には、音源Sと分割面kとの間の形
態係数FsC1 と分割面kと受音点Rとの間の形態係数F
C1R、および分割面kに付与された反射率αkが使用さ
れる。そして、受音点Rにおける音量PR2は、下式で求
められる。
【0071】 PR2 = FsC1 × FC1R × (1−αk) × Ps また、直接音と同様、音源Sと分割面k間、分割面k面
と受音点R間の距離を求め、これらの距離の和を音速で
割ることにより、1次反射音の到達時間T2 を計算す
る。上記の計算を全ての1次反射音に対して行う。 (2次反射音)解析空間モデル10において、音源Sか
ら二つの分割面i、jを経て受音点Rに到達する2次反
射音の受音点Rにおける音量Pr2は、音源Sと分割面i
との間の形態係数Fscと分割面iと分割面jとの間の形
態係数FCC2 と分割面jと受音点Rとの間の形態係数F
C2R および、分割面i、kに付与された反射率αi 、α
k を用いて、下式で求められる。
【0072】 Pr2 = Fsc×FCC2×FC2R×(1−αi)×(1ーαk)×Ps また、2次反射音の到達時間T3 は、音源Sと分割面i
間、分割面iと分割面j間、分割面jと受音点R間の距
離を足し合わせ、音速で割ることによって求められる。 (3次反射音)さらに、3次反射音に対しても、上記の
方法と同様の方法を用いて受音点の音量と到達時間を求
める。
【0073】次に、4次反射音以降の反射音計算につい
ては、高次回反射音計算方法を適用する。以下、図13
を参照して説明する。 (高次回反射音計算)まず、前回の3次反射音計算が終
わった時点で、各分割面、例えば分割面nでは、図14
(a)に示すような到達音の時系列データが算出されて
いる。そこで、到達音量の時系列データを所定の時間間
隔Δtでグループ化する。一例として、このΔtを0.
1ミリ秒に規定する。
【0074】次に、グループ化した音量をΔt毎に足し
合わせ、図14(b)に示すような加算音量時系列デー
タを作成する。そして、次回の反射計算に対して、この
加算音量時系列データを有する分割面を新たな音源と設
定する。この新たな音源は、実際にはΔt間に到達する
n本の音線を1本の音線で置き換えている。そして、置
き換えた音線は、n本の音線の音量の総和に等しい音量
を有している。
【0075】さらに、各分割面から他の分割面及び受音
点に放射される音線を設定し、低次回反射の場合と同様
の方法を用いて、他の分割面及び受音点の到達音量及び
到達時間を計算する。このような計算は、全ての分割面
が保持する音量が規定値、例えば、音源からの全放射音
量Psの1/10000以下になるまで繰り返し行われ
る(ステップS250)。
【0076】この間、受音点Rにおいては、音源Sから
直接あるいは複数の分割面を経て多量の音が到達する。
この状態が図15(a)に模式的に示されている。到達
した音線は、分割面における高次回反射音計算と同様
に、所定の時間間隔(例えば高次回反射音計算で用いた
Δt)を用いてグループ化される。そして、各グループ
時間Δt内に複数の音線が到達する場合、これらの数を
カウントし、さらに複数の音線の有する音量を足し合わ
せる(ステップS260)。
【0077】ステップS250において、各分割面にお
ける残存音量が所定値以下になった場合、各分割面に残
存する音量を全て加算し、上記のステップで求められた
受音点における音量の時系列情報に加算する(ステップ
S260)。以上の処理によって、図15(b)に示さ
れるような受音点における到達音量の時系列データが算
出される。
【0078】次に、データ変換部17は、到達音量平均
化処理及びデータ補間処理を行って、グループ化された
音量の時系列データからエコータイムパターンを生成す
る。まず、データ変換部17は、図15(b)に示すグ
ループ化された音量データを平均化して図15(c)に
示す平均化音量データを算出する。平均化は、グループ
化された受音点到達音量をその時間内に到達した音線の
数で割ることにより行われる。例えば、図15(b)に
おける第3のグループの時間内(Δt=0.1ミリ秒で
あるから、第3のグループとは、0.2〜0.3ミリ秒
の間となる)に受音点に到達した全音量をPm、この時
間内に到達した音線数をN(=3)とすると、変換前の
音量Pmを有する1本の音線データSRrを到達した音
線数Nで割ることによって、Pm/Nの音量を有する平
均音線データSRaが算出される。(ステップS27
0)。
【0079】次に、データ変換部17は、到達音量の補
間処理を行う。補間方法の一つの例は、図15(c)に
示すように、まず、あるグループ時間間隔の中間点に上
記のステップで求められた平均音線データを仮定する。
そして、この平均音線データの先端を直線で結んで直線
近似する。そして、この近似曲線を用いて各時間間隔内
に到達したN本の音線データを求める。この補間操作に
よって、図15(c)に示されるような直線近似された
エコータイムパタンが作成される(ステップS28
0)。なお、この補間は、直線補間に限定されるもので
はない。例えば、曲線近似を用いて補間してもよく、ま
た、グループ化された各音線の到達時間を考慮した重み
付けを行って補間処理を行ってもよい。
【0080】なお、グループ化に用いる時間間隔Δt
は、CD等の音響機器のサンプリング周波数に対応した
値を使用するのが最も適している。具体的には、CDの
場合には44.1KHzに対応して、Δt=22.7マ
イクロ秒とする。以上の処理によって算出されたエコー
タイムパターンは、メモリ18に格納される。
【0081】次に、音場再生部2及び出力部3の構成に
ついて説明する。図16に示されるように、音場再生部
2は、音環境解析部1によって求められたエコータイム
パターンをメモリ18から読み込み、インパルス応答を
計算するインパルス応答計算部21と、出力部3を構成
するVR装置の位置情報検出部31が検出する体験者の
室内での位置情報を読み込む位置情報入力部22と、予
め求められた頭部伝達関数を格納する頭部伝達関数格納
部23と、試聴する音のドライソース(無響室で録音さ
れた音)を入力するためのドライソース入力部24と、
ドライソースデータに対してインパルス応答データ及び
頭部伝達関数データをDSP(DigitalSignal Processo
r)による畳み込み演算を施して連続音の再生信号を生
成する再生音生成部25とを備えている。
【0082】インパルス応答計算部21は、さらに図1
7に示されるように、室内の各位置毎、各入射方向毎、
各帯域毎のエコータイムパターンデータを読み込むエコ
ータイムパターンの入力部41と、各帯域毎にバンドパ
スフィルタの畳み込み演算を行う畳み込み演算部42
と、各帯域の応答を合成することによってインパルス応
答を算出するインパルス応答算出部43と、各位置・入
射方向毎のインパルス応答を出力するインパルス応答出
力部44と、インパルス応答データを格納するメモリ4
5とを備えている。
【0083】また、出力部3は、再生音生成部25から
出力された連続音の再生信号に基づいて体験者の耳に再
生音を出力する、例えばヘッドフォン等の音声出力装置
32を備える。位置情報検出部31は、例えばVPL
Research Inc. およびPOLHEMUS
Inc.のRB2システム(Reality Buil
t for 2::商品名)のEyePhoneシステ
ムを用いて実現される。EyePhoneは、体験者の
頭頂部に取り付けたセンサーを用いて頭の位置、向きを
測定し、測定した位置情報をリアルタイムに音場再生部
2側へ出力する。
【0084】次に、音場再生部2及び出力部3の動作に
ついて説明する。まず、インパルス応答計算部21は、
エコータイムパターン計算部15で算出されたエコータ
イムパターンを用いてインパルス応答を算出する。この
インパルス応答データは、室内の各位置、頭部の向き
(音の入射方向)毎に算出される。図18を参照して、
まず、メモリ18からエコータイムパターンデータを順
次読み込む(ステップS300)。エコータイムパター
ンは、前述したように、室内の音響物性データに規制さ
れ、例えば1/8オクターブバンド毎に出力されるとす
る。また、エコータイムパターンは、室内の各位置毎、
各入射方向毎、各帯域毎に読み込まれる。
【0085】次に、各帯域毎のエコータイムパターンに
バンドパスフィルタを畳み込むことによって各周波数帯
域毎の応答を算出する。さらに、各帯域毎に求められた
応答を加算する。この演算によって、室内の各位置、入
射方向毎のインパルス応答データが算出される(ステッ
プS320)。算出されたインパルス応答データは、例
えばメモリ45に格納される。
【0086】インパルス応答データが求められると、今
度は音場の再生処理に移行する。図19を参照して、音
場再生部2は、VR装置の位置情報検出部31が検出す
る室内の位置及び頭部の方向情報を位置情報入力部22
からリアルタイムに読み込む(ステップS400)。イ
ンパルス応答入力部41は、位置情報入力部42から読
み込まれた位置情報(室内位置、入射方向)に該当する
インパルス応答データをインパルス応答計算部3(メモ
リ45)から読み込む(ステップS410)。
【0087】さらに、所定の位置における人間の頭部方
向に対して、その頭部伝達関数データを頭部伝達関数格
納部43から読み込む(ステップS420)。ここで、
頭部伝達関数は、周囲から頭部に向かって入射する音
が、人間の頭部の形状及び耳の位置等の条件によって変
化する状態を表すもので、予め算出され、頭部伝達関数
格納部43に格納されている。
【0088】再生音生成部45は、再生したい音楽等の
ドライソースをドライソース入力部24から受け取り、
位置情報入力部22から与えられる体験者の位置や頭の
向き等の情報を用いて、これらの情報に該当するインパ
ルス応答データと頭部伝達関数データとを直列にDSP
を用いて畳み込み演算する(ステップS430)。この
演算によって、連続音信号が生成される。
【0089】生成された信号は、リアルタイムに音声出
力装置52に出力される(ステップS440)。以上の
動作によって、体験者は、音声出力装置52により、あ
たかも実際の室内にいるような立体音響を聞くことがで
きる。さらに、第5実施例による音環境疑似体験装置の
構成が図20に示される。第5実施例による音環境疑似
体験装置は、音環境解析部1にエコータイムパターン計
算部15及びインパルス応答計算部21を含んでいる。
そして、解析対象空間のインパルス応答データは、例え
ば、あらかじめ専用のコンピューティング・サーバを使
用して室内の各位置毎に算出され、メモリに格納され
る。
【0090】また、音場再生部2は、リアルタイムに与
えられる体験者の位置情報に基づいて、該当するインパ
ルス応答データ及び頭部伝達関数をメモリから読み出
し、ドライソースから立体音響データをリアルタイムに
再生する。さらに、第6実施例による音環境疑似体験装
置の構成が図21に示される。この装置における合成応
答データ算出部26は、頭部の方向毎に、つまり首振り
方向に対応する頭部伝達関数と、音が頭部側へ入射する
入射方向に対応するインパルス応答データとを畳み込
み、音の入射方法毎にインパルス応答データと頭部伝達
関数が合成された合成応答データを予め算出する。
【0091】そして、再生音生成部24は、頭部の方向
毎の合成応答データをDSP上にてリアルタイムでドラ
イソースに畳み込む。このように構成すると、室内にお
ける各位置毎・入射方向毎のインパルス応答データと頭
部伝達関数データを直列にDSPにより畳み込み演算す
る場合と比較して、取り扱う頭部の方向の数に逆比例し
て、使用するDSPの数を減少させることができる。
【0092】また、上記の実施例については、さらに以
下の様な種々の変形例が適用できる。第4、第5及び第
6実施例による音環境疑似体験装置は、体験者が立った
り座ったり、歩き回ったり、あるいは顔の向きを変えた
場合の音の変化を再現するように構成されている。しか
し、これらの状態の内の少なくとも一つの状態を再現で
きるように構成してもよい。例えば、 (1)体験者が移動しない場合 インパルス応答データは、室内の1点に固定された受音
点についてのみ算出すればよい。また、体験者の位置情
報を検出するための位置情報検出部31及び位置情報入
力部22は不要となる。
【0093】(2)体験者が座ったまま、あるいは立っ
たまま顔の向きのみを変える場合 インパルス応答データは、室内の1点に固定された受音
点についてのみ算出すればよい、また、位置情報検出部
31は、顔の回転角情報のみを検出すればよい。 (3)体験者が立ったまま移動する場合 ウォークスルーする人間の耳の高さが特定できるので、
室内各位置でのデータは、基本的に2次元データとして
求めることができる。
【0094】また、本発明に関して、音源は複数個存在
していても動作可能であり、その音源が移動しても原理
的には受音点への入射方向毎のインパルス応答データが
追加されるのみである。さらに、上記の実施例による装
置は、室内空間を対象としているが、開放空間に対して
もコンピュータシミュレーションによるエコータイムパ
ターンの計算が可能である。従って、そのようなエコー
タイムパターンの計算手法を使用することによって、本
発明の音環境疑似体験装置を開放空間に適用することも
可能である。
【0095】このように、本発明は、対象とする空間に
おける音の多次回反射の計算が可能であり、算出される
音量の時系列情報から残響時間の予測を高精度に行うこ
とができる。さらに、任意の位置、及び人の首方向に対
して、エコータイムパターンの算出からインパルス応答
データへの変換まで行うことができる。これにより、V
R装置を用いたリアルな音場再生が可能となった。
【0096】この結果、本発明の音環境疑似体験装置を
用いた設計の効率化、あるいは提案型営業の支援を効果
的に行うことができる。
【0097】
【発明の効果】1乃至6の発明に係る音環境疑似体
験装置は、室内の任意の位置における受音点への入射方
向毎のインパルス応答を、各入射方向毎の頭部伝達関数
とともに、音源のドライソースに対し、室内の位置情報
および受音点での頭部方向情報に基づいて畳み込むこと
により、室内の任意の位置における任意の方向に対する
音場再生を行い、室内ウォークスルーおよび首振り動作
に同期した再生音場を得るので、室内ウォークスルーお
よび室内の任意の位置で頭部を振ったときの、実際によ
り則した臨場感溢れる立体音場の線型の効率化と、これ
を提案しての営業をリアルな疑似体験をもって推進する
ことができる。
【0098】また、7乃至18の発明においては、
各分割面における反射音量を計算する際、分割面による
反射が所定回数を超えた後は、入射してくる音を、所定
の時間間隔で累積し、その後その累積された音を一度に
反射させることとしたので、高次反射音までの計算が可
能となり、音環境の解析精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例による音環境解析方法の処
理の流れを示すフローチャートである。
【図2】音源から放射された音線が受音点に至るまでを
表した反射音線図である。
【図3】本発明の第1実施例における高次反射音計算を
示す模式図である。
【図4】本発明の第2実施例による音環境解析方法の処
理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第3実施例の分割面の残存音エネルギ
ーを時系列情報に付加する処理を示す図である。
【図6】本発明の第1乃至第3実施例による音環境の計
算に用いた解析空間モデルの模式図である。
【図7】本発明の実施例における残響特性の計算結果を
示す図である。
【図8】本発明の第4実施例による音環境疑似体験装置
の概略の全体構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第1実施例の音環境解析部の構成を示
すブロック図である。
【図10】図9に示す音環境解析部の動作を示すフロー
チャートである。
【図11】図10のフローチャートにおけるエコータイ
ムパターンの算出動作を示すサブフローチャートであ
る。
【図12】エコータイムパタン計算部15において使用
される解析空間モデルの一例を示す模式図である。
【図13】エコータイムパターン計算部15において使
用される解析空間モデルの一例を示す模式図である。
【図14】解析空間モデルの分割面における到達音量の
時系列データの一例を示す時系列データ図であり、
(a)は、実際の到達音量を示し、(b)は、グループ
化された到達音量を示している。
【図15】解析空間モデル内の受音点における到達音量
の時系列データを概念的に示した時系列データ図であ
り、(a)は、実際の到達音量を示し、(b)は、グル
ープ化された到達音量を示し、(c)は、補間された到
達音量の時系列データ(エコータイムパターン)を示し
ている。
【図16】図8に示す音環境疑似体験装置の音場再生部
2と出力部3の詳細な構成を示すブロック図である。
【図17】図16に示す音場再生部2のインパルス応答
計算部21の詳細な構成を示すブロック図である。
【図18】図17に示すインパルス応答計算部21の動
作を示すフローチャートである。
【図19】図16に示す音場再生部2の動作を示すフロ
ーチャートである。
【図20】本発明の第5実施例による音環境疑似体験装
置の構成を示すブロック図である。
【図21】本発明の第6実施例による音環境疑似体験装
置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 音環境解析部 2 音場再生部 3 出力部 11 室情報入力部 12 音源情報入力部 13 受音点情報入力部 14 解析面分割部 15 エコータイムパターン計算部 16 時系列情報算出部 17 データ変換部 21 インパルス応答計算部 22 位置情報入力部 23 頭部伝達関数格納部 24 ドライソース入力部 25 再生音生成部 31 位置情報検出部 32 音声出力装置 41 エコータイムパターン入力部 42 畳み込み演算部 43 インパルス応答算出部 44 インパルス応答出力部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 児玉 久 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−73081(JP,A) 特開 平1−120999(JP,A) 日本音響学会平成3年度春季研究発表 会講演論文集▲II▼,1−4−7,橋 本修外「有限音線積分法を用いた音場合 成手法における拡散音成分のとり扱いに ついて」,(平成3年3月発行) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10K 15/00 - 15/12 H04S 1/00 - 7/00

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 解析対象の解析空間の形状、大きさ等の
    室情報を入力する室情報入力手段と、 音源の位置、音圧等の音源情報を入力する音源情報入力
    手段と、 受音点の数、位置等の受音点情報を入力する受音点情報
    入力手段と、 解析空間を構成する面を解析すべき所定面数に分割する
    解析面分割手段と、 前記解析空間に配置された前記音源から反射される複数
    の音線が前記解析空間の前記所定受音点に直接あるいは
    前記分割面に反射しつつ到達した場合の各音線に対する
    音量を前記分割面の少なくとも形態係数と吸音率とから
    算出し、その音量をその到達時間毎における所定の時間
    間隔毎に足し合わせることを持ってグループ化を行うこ
    とにより、前記受音点における到達音量の時系列情報を
    求める時系列情報算出手段と、 前記所定の受音点でのグループ化した到達音量を、その
    時間間隔内に到達する音線数を持って各グループ毎に平
    均化することにより音場再生を可能とする音場再生用デ
    ータに変換する音場再生用データ変換手段とを備えたこ
    とを特徴とする、音環境解析装置。
  2. 【請求項2】 解析対象の解析空間の形状、大きさ等の
    室情報を入力する室情報入力手段と、 音源の位置、音圧等の音源情報を入力する音源情報入力
    手段と、 受音点の数、位置等の受音点情報を入力する受音点情報
    入力手段と、 解析空間を構成する面を解析すべき所定面数に分割する
    解析面分割手段と、 前記解析空間に配置された前記音源から反射されるた複
    数の音線が前記解析空間の前記所定受音点に直接あるい
    は前記分割面に反射しつつ到達した場合の各音線に対す
    る音量を前記分割面の少なくとも形態係数と吸音率とか
    ら算出し、その音量をその到達時間毎における所定の時
    間間隔毎に足し合わせることを持ってグループ化を行う
    ことにより、前記受音点における到達音量の時系列情報
    を求める時系列情報算出手段と、 前記所定の受音点でのグループ化した到達音量を、その
    時間間隔内に到達する音線数を持って各グループ毎に平
    均化することにより音場再生を可能とする音場 再生用デ
    ータに変換する音場再生用データ変換手段と、 前記平均化した各グループの音量を時間軸に対して補間
    を行う音場再生用データ補間手段とを備えたことを特徴
    とする、音環境解析装置。
  3. 【請求項3】 解析対象の解析空間を構成する面をいく
    つかの面に分割し、前記解析空間内の所定の音源より音
    線を放射し、分割された各面に到達する音量を分割され
    た前記各面の少なくとも形態係数と吸音率とから計算
    し、前記所定の音源から放射された音がその面に至るま
    での時間を求め、更にその入射された音量に基づき、そ
    の面における反射音量を計算し、さらに、この反射音量
    を新音源として、同様の計算をすることによって、所定
    の受音点に到達する音の時系列情報を求める音環境解析
    方法において、 前記各分割面における反射音量を計算する際、前記分割
    面による反射が所定回数を超えた後は、入射してくる音
    を、所定の時間間隔で累積し、その後その累積された音
    を一度に反射させることとすることを特徴とする音環境
    解析方法。
  4. 【請求項4】 分割面における反射音量が、所定の限界
    値以下になれば、その面からの反射をさせないことを特
    徴とする請求項3記載の音環境解析方法。
  5. 【請求項5】 所定の時間間隔は、前記解析空間の残響
    時間の予測値に基づき算出された所定の設定時間の前と
    後で異なっており、後の時間間隔は前の時間間隔より長
    いことを特徴とする請求項3、又は4記載の音環境解析
    方法。
  6. 【請求項6】 全ての反射音量が前記限界値以下になっ
    た際、前記各分割面の残存する音エネルギーの一部又は
    全部を加算し、前記受音点における音の時系列情報に足
    し込み、前記受音点に至る到達時間の遅いものから早い
    ものへ順に前記時系列情報を積分することを特徴とする
    請求項4、又は5記載の音環境解析方法。
  7. 【請求項7】 解析対象空間の形状、壁面の物性データ
    等の解析条件と、壁面を所定の区画に区分された分割解
    析面と、音源と受音点とを設定する条件設定ステップ
    と、 前記音源から放射された放射音が前記解析対象空間内の
    任意の位置に設定された前記受音点に到達する到達音の
    音量の時系列データを、前記到達音が前記受音点に入射
    する方向毎に、および前記音源の周波数帯域毎に算出す
    る時系列データ 算出ステップと、 前記到達音の音量の時系列データに所定の補間操作を施
    してエコータイムパターンを算出するエコータイムパタ
    ーン算出ステップとを備えたことを特徴とする、音環境
    解析方法。
  8. 【請求項8】 前記時系列データ算出ステップは、 前記音源から放射される音線が直接受音点に到達する直
    接音の音量データ算出ステップと、 前記音源から放射される音線が前記分割解析面で反射す
    る回数が所定回数以下の反射音が前記他の分割解析面及
    び前記受音点に到達する低次反射音の音量デー タ算出ステップと、前記音源から放射される音線が前記
    分割解析面で反射する回数が所定回数以上の反射音が前
    記受音点に到達する高次反射音の音量データを算出する
    ステップと、 前記受音点の音量データを所定の時間間隔毎にグループ
    化し足し合わせて時系列データを算出するステップとを
    備えたことを特徴とする、請求項7記載の音環境解析方
    法。
  9. 【請求項9】 前記高次反射音の音量データ算出ステッ
    プは、前記低次反射音の音量データ算出ステップで算出
    された前記分割解析面における音量データを所定の時間
    間隔毎に積算して新たな音源を設定し、この音源から放
    射される新たな放射音が到達する分割解析面への到達音
    量を算出する処理を繰り返し行うことを特徴とする、請
    求項8記載の音環境解析方法。
  10. 【請求項10】 疑似体験の対象となる解析対象空間内
    の任意の位置に設定した受音点において、各周波数帯域
    毎のエコータイムパターンを幾何音響学的手法を用いて
    算出するステップと、 前記エコータイムパターンに各周波数帯域毎のバンドパ
    スフィルタを畳み込むことによって各周波数帯域毎の応
    答を算出して合成することによってインパルス応答を算
    出するステップと、 体験者の位置情報を検出するステップと、 音源のドライソースを受け取り、前記ドライソースに対
    して、検出された前記 位置情報に対応する前記インパル
    ス応答及び周囲から人間の頭部に向かって入射する音が
    頭部の形状及び耳の位置によって受ける変化を示す頭部
    伝達関数を畳み込むことによって再生音データを生成す
    るステップと、 再生音データを音声に変換した後に音として出力するス
    テップとを備えたことを特徴とする、音環境解析方法。
  11. 【請求項11】 前記位置情報を検出するステップで
    は、前記位置情報として、体験者の移動位置と頭部の向
    きの情報を検出することを特徴とする、請求項10記載
    の音環境解析方法。
  12. 【請求項12】 前記位置情報を検出するステップで
    は、前記位置情報として、体験者の頭部の向きを検出す
    ることを特徴とする、請求項10記載の音環境解析方
    法。
JP25593893A 1992-10-13 1993-10-13 音環境疑似体験装置及び音環境解析方法 Expired - Fee Related JP3152818B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25593893A JP3152818B2 (ja) 1992-10-13 1993-10-13 音環境疑似体験装置及び音環境解析方法

Applications Claiming Priority (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP27424892 1992-10-13
JP4-274248 1992-10-13
JP483693 1993-01-14
JP5-221101 1993-09-06
JP22110193 1993-09-06
JP5-4836 1993-09-06
JP25593893A JP3152818B2 (ja) 1992-10-13 1993-10-13 音環境疑似体験装置及び音環境解析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH07168587A JPH07168587A (ja) 1995-07-04
JP3152818B2 true JP3152818B2 (ja) 2001-04-03

Family

ID=27454169

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP25593893A Expired - Fee Related JP3152818B2 (ja) 1992-10-13 1993-10-13 音環境疑似体験装置及び音環境解析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3152818B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003022078A (ja) * 2001-07-05 2003-01-24 Yamaha Corp 遮音性能改善方法、音響室、音響室の設計方法、散乱体の設計方法、散乱体の設計装置
JP3956804B2 (ja) * 2002-08-23 2007-08-08 ヤマハ株式会社 音環境予測データ作成方法、音環境予測データ作成用プログラムおよび音環境予測システム
JP4780497B2 (ja) * 2003-11-17 2011-09-28 学校法人日本大学 信号受信装置及び方法
JP2007003989A (ja) * 2005-06-27 2007-01-11 Asahi Kasei Homes Kk 音環境解析シミュレーションシステム
KR100899836B1 (ko) * 2007-08-24 2009-05-27 광주과학기술원 실내 충격응답 모델링 방법 및 장치
US8150051B2 (en) * 2007-12-12 2012-04-03 Bose Corporation System and method for sound system simulation
JP5224613B2 (ja) * 2010-09-29 2013-07-03 英明 吉田 音場補正システム及び音場補正方法
JP5879199B2 (ja) * 2012-05-22 2016-03-08 日本放送協会 残響応答生成装置およびそのプログラム
US9596555B2 (en) 2012-09-27 2017-03-14 Intel Corporation Camera driven audio spatialization
JP2024060836A (ja) * 2022-10-20 2024-05-07 株式会社日立製作所 音響特性解析システム及び音響特性解析方法

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
日本音響学会平成3年度春季研究発表会講演論文集▲II▼,1−4−7,橋本修外「有限音線積分法を用いた音場合成手法における拡散音成分のとり扱いについて」,(平成3年3月発行)

Also Published As

Publication number Publication date
JPH07168587A (ja) 1995-07-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5467401A (en) Sound environment simulator using a computer simulation and a method of analyzing a sound space
Savioja Modeling techniques for virtual acoustics
JP5285626B2 (ja) 音声空間化及び環境シミュレーション
KR102502383B1 (ko) 오디오 신호 처리 방법 및 장치
Valimaki et al. Fifty years of artificial reverberation
Svensson et al. Computational modelling and simulation of acoutic spaces
JPH08272380A (ja) 仮想3次元空間音響の再生方法および装置
JP4620468B2 (ja) オーディオ信号を再生するためのオーディオ再生システムおよび方法
CN111107482A (zh) 修改房间特性以通过耳机进行空间音频呈现的系统和方法
JP3152818B2 (ja) 音環境疑似体験装置及び音環境解析方法
Tsingos et al. Soundtracks for computer animation: sound rendering in dynamic environments with occlusions
Tsingos et al. Validating acoustical simulations in the Bell Labs Box
Novo Auditory virtual environments
Svensson Modelling acoustic spaces for audio virtual reality
JP2003061200A (ja) 音声処理装置及び音声処理方法、並びに制御プログラム
Georgiou Modeling for auralization of urban environments: incorporation of directivity in sound propagation and analysis of a framework for auralizing a car pass-by
Schröder et al. Through the hourglass: A faithful audiovisual reconstruction of the old montreux casino
Rabenstein et al. Acoustic rendering of buildings
JP2846162B2 (ja) 音場シミュレータ
Agus et al. Energy-Based Binaural Acoustic Modeling
Ziemer et al. Spatial Acoustics
Roper A room acoustics measurement system using non-invasive microphone arrays
Xu et al. Perceived width evaluation on interpolated line sources in a virtual urban square
Lokki et al. Virtual acoustics
Cruz-Barney et al. Prediction of the spatial informations for the control of room acoustics auralization

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees